2004年12月分


・本
 『天涯の蒼』/永瀬隼介(実業之日本社)
 『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』/桜庭一樹(富士見書房)
 『王狼たちの戦旗(上・下)』/ジョージ・R・R・マーティン(早川書房)
 『漆黒の王子』/初野晴(角川書店)
 『天城一の密室犯罪学教程』/天城一(日本評論社)
 『All You Need Is Kill』/桜坂洋(集英社)


2004-12-31.

・おおみそか。今年はいろんなことがありました……来春に帰郷して実家に出戻ることになるくらい。ハハハ。

『処女はお姉さまに恋してる』マスターアップ

 正月は安泰だな。

ニトロプラスの『天使ノ二挺拳銃』体験版をプレー。

 なんだか評判が微妙なので自分の目で確かめようとDLしてみました。なるほど、確かにシステムはLittlewitchのFFDと似ているところはある。ただ、こちらは多少絞っているにせよテキスト量、特に地の文が多いので、あっちに比べるとテンポがもっさりしている印象を受けますね。声が付いているのはあまり気にならないけれど。Littlewitch作品は極力説明文を排して、絵の動きやセリフ、効果音だけで話を展開させる趣向でしたから、いざプレーしてみるとあまり似ている感じがしない。うーん、これはFFDというよりも今は亡きProject-μの「ノベルシアター」に近いような。

 ストーリーは「プロローグ+第一章の冒頭」ってくらいでやや短め。全体のストーリーを窺わせる要素も特になく、これだと終盤で盛り上げるのが難しい気はします。テキストは比較的、肌に合いました。キレの良い短文が積み重ねられていくので読んでいて疲れない。「物凄い勢いでハマる」ことはないにしても、「気が付けばのめり込んでいる」くらいは期待できるかも。ごく順当に購入予定の枠へ入りました。まあ、これ以上は延びないでしょうし……延びないといいな。

・去年もやったので一年の趣味生活総括をやってみます。

[小説]

第一位 『王狼たちの戦旗(上・下)』
第二位 『疾走』
第三位 『導きの星(全4巻)』

 総合はこんなところでしょうか。4位以下は決めるのが難しいので3位まで。今年は『疾走』で決まりかと思ってましたけど、年末に読み終わった『王狼たちの戦旗』があっさり玉座を乗っ取ってしまいました。こんなに面白いのに、“氷と炎の歌”が海外ファンタジー市場の中であまり目立っていないことが悲しい。それはさておき、部門ごとで見ていくと。

[小説−ジャンル:ミステリ]

第一位 『硝子のハンマー』
第二位 『螢』
第三位 『生首に聞いてみろ』
第四位 『黄金色の祈り』
第五位 『漆黒の王子』

 比較的本格寄りのもので、サスペンス性を重視したものとか冒険要素の強いものは別枠にしてあります。6位以下は大差ないので5位まで。上位3作は「待ちに待った期待作」で占められました。『暗黒館の殺人』は厚さに怯んで、買ったのに手が出せなかった。1位に選んだ『硝子のハンマー』は本格の書き手でさえ軽く流してしまう細部まで徹底的にこだわった意欲作。セキュリティの仕組みをねちっこく追及する手際に痺れました。『螢』は序盤こそ退屈だったものの結末ですべてを挽回した一作。やはり麻耶は麻耶。精緻でいてヒネくれた構成が楽しい。『生首に聞いてみろ』はこのミスや本ミスでも1位を獲得した作品。彫像の薀蓄がトリビアとして終わるのではなくキチンと作品に繋がって機能するあたりは心地よい。どれも待った甲斐のある作品でした。

 『黄金色の祈り』は青春小説の色合いが濃く、輝かしさとは無縁な日々が哀しくもあり滑稽でもあった。ラストシーンは印象的。『漆黒の王子』は上位3作と違った意味で待ちに待った作品。新人の受賞後第一作なので、発売が近くなってからようやくタイトルが発表されたものですから。謎解き要素ありのヤクザ・バイオホラー。冗談みたいな構想ではあるが面白い。他にも『海のオベリスト』『鬼に捧げる夜想曲』『本格推理委員会』『天城一の密室犯罪学教程』あたりは挙げておきたいかな。『冷たい校舎の時は止まる(上・中・下)』『監獄島(上・下)』も悪くはなかったけど、読んでいて必要以上に長いと感じたのがネックに。あと、ワーストは『極限推理コロシアム』で異存ありません。割と良作に恵まれて、少なくとも去年よりは豊作でした。

[小説−ジャンル:ライトノベル]

第一位 『バッカーノ!1931(鈍行編・特急編)』
第二位 『終わりのクロニクル(1下〜2下)』
第三位 『Dクラッカーズ(7-1・7-2)』
第四位 『皇国の守護者(1〜8)』
第五位 『デルフィニア戦記(9〜18)』
第六位 『ブライトライツ・ホーリーランド』
第七位 『風よ。龍に届いているか(上・下)』
第八位 『カオス レギオン(01〜02)』
第九位 『アプラクサスの夢』
第十位 『されど罪人は竜と踊る(4〜5)』

 ランキングは20位まで拡大してもいいくらいだけど割愛。『バッカーノ!1931』はクライム・ムービー的ストーリーをライトノベルのキャラとノリでやってくれた快作。走行する列車を舞台に絡み合う思惑。去年のうちに読んでおけば良かった。『終わりのクロニクル』『エアリアルシティ』までで川上稔を見限りかけていた当方の目を覚まさせたシリーズ。根源的な「概念」でかつての異世界同士が鬩ぎ合う、壮大な設定が熱い。『Dクラッカーズ』は年明け早々に完結。ドラッグをキメて悪魔を召喚するヤバげな設定。富士ミスという僻地を土壌に見事大輪をなした異例のシリーズでした。『皇国の守護者』は新刊のペースが落ちてきていることでファンを苦しませているシリーズ。精巧な戦記にしてアクの強い主人公が織り成す独特の味。なんとなく読み出して当方まで待望という名の地獄に落ちてしまいました。『デルフィニア戦記』『十二国記』『流血女神伝』と並んで有名な少女レーベル・ファンタジー大作。トボけた性格の王と「中身は男」の女神。十二〜と流血〜も持っていることは持っているのでそのうち読まないと。

 六位以下で特筆したいのは『ブライトライツ・ホーリーランド』『風よ。龍に届いているか』『アプラクサスの夢』の3作。BLHは巨大ロボットじみた菩薩像が白毫からビームを出したりする、「やりすぎ」感の強いオカルト・サイバーパンクですが、今でも手元においていつでも読み返せるようにしています。この文章センスは何度読んでも神経がビリビリする。風龍はウィザードリィのノベライズですが、ライトノベルにおけるファンタジーとしても白眉の出来。魔術にさえロジックがある。BLHとはまた異なった意味合いでビリビリ来ました。WIZ小説は『隣り合わせの灰と青春』『砂の王』も良かった。『アプラクサスの夢』は“A/Bエクストリーム”の3作目。『灼眼のシャナ』が人気を博して復活したシリーズであり、一読「復活して良かった」と痛切に思える内容。渋く、燃えて、文章にクセがあり、いささか設定過多。万人受けはしない気もしますが、シャナと比べるならA/Bの方が好み。

 ランク外作品でも、『ディバイデッド・フロント2』『空ノ鐘の響く惑星で(2〜5)』『七姫物語 第二章』『9S(1〜4)』『All You Need Is Kill』『ヴぁんぷ!』『幽霊には微笑を、生者には花束を』『斬魔大聖デモンベイン 機神胎動』『ストレイト・ジャケット(1〜6)』『Kishin−姫神−(全5巻)』『ブラックランド・ファンタジア』『さよならトロイメライ(1〜3、短編集)』『よくわかる現代魔法(1〜3)』『とある魔術の禁書目録(1〜4)』『ホーンテッド!』『神様家族(2〜5)』『ゼロの使い魔(1〜2)』『ネペンテス』『電波的な彼女』『平井骸惚此中ニ有リ(1〜3)』……と大漁。

[小説−ジャンル:冒険小説、サスペンス、ホラー]

第一位 『ミステリー・ウォーク(上・下)』
第二位 『山尾悠子作品集成』
第三位 『黄金の島(上・下)』
第四位 『新宿・夏の死』
第五位 『6ステイン』
第六位 『綺譚集』
第七位 『ヨットクラブ』
第八位 『天涯の蒼』
第九位 『砦なき者』
第十位 『グラスホッパー』

 だいたいミステリ作品で固まっています。そろそろ書くのが面倒になってきたので省エネで行きますと、『ミステリー・ウォーク』は初マキャモンにして一気に虜にされた、青春要素濃厚のホラー小説。小さい頃、町の外へ伸びる道はどこまでも続く気がした。『山尾悠子作品集成』はSF寄りですが個人的な感覚ではここ。「破壊王」連作に代表される絢爛で鉱物的なカタストロフ的世界にクラクラしました。甘さはゼロ。「傳説」がお気に入り。『黄金の島』は今年読んだ冒険小説としては一番か。熱く泥臭く生々しいストーリーに魅せられた。『新宿・夏の死』『6ステイン』『綺譚集』『ヨットクラブ』『砦なき者』はいずれも短編集(中編を含んでいるものもあるが)で、それぞれ作者の持ち味を活かしたキレよい作品ばかり入ってます。ランク外では『ポリスマン』『闇先案内人』『魔笛』『深紅』『ラッシュライフ』『リピート』『Fake』『呪禁官』(文庫では『呪禁捜査官』)の8作も良かった。

[小説−ジャンル:SF、ファンタジー]

第一位 『王狼たちの戦旗(上・下)』
第二位 『導きの星(全4巻)』
第三位 『復活の地(全3巻)』
第四位 『永遠の森』
第五位 『ペロー・ザ・キャット全仕事』

 あまり数をこなさなかったので5位まで。少ない割に粒寄りとなったジャンル。『王狼たちの戦旗』は個人的に「今年最高」と断言しても構わない傑作。圧倒の2000枚でした。『導きの星』はシミュレーションゲームでもやるみたいに一つの星の文化を支えていく設定が面白かった。作者の確かな熱意を感じます。『復活の地』は同じ小川一水の作品。「災害復興」というSFにしては地味なテーマの割にしっかり盛り上がる。『永遠の森』は「博物館惑星」という設定を活かした読後感のキレイな連作短編集。「美しい」という感情を再確認する。『ペロー・ザ・キャット全仕事』はサイボーグ猫に精神憑依して大冒険、というコンセプトがツボにハマった。「今は、蛮勇こそが真の勇気だ」。他にも、時空を越えて幾度となく引き裂かれる恋人たちの『ライオンハート』、年の差バカップルが軌道エレベーターで大暴れする『火星ダーク・バラード』、碇シ○ジをスライドした少年がなんとなく成り上がる『福音の少年』、「血を流す薔薇」のイメージとイェルサレムの空気が強烈な『鎮魂歌』、女子高生が新素材を発明して世界が変わる『ふわふわの泉』が気に入りました。

[小説−ジャンル:その他]

第一位 『疾走』
第二位 『幽霊人命救助隊』
第三位 『輪違屋糸里(上・下)』
第四位 『手紙』
第五位 『重力ピエロ』
第六位 『さよなら妖精』
第七位 『君の名残を』
第八位 『七月七日』
第九位 『太陽の塔』
第十位 『源にふれろ』

 上に挙げたジャンルのどれにも当てはめにくい作品を寄り集め。一つ残らずオススメしたいくらいの良作揃い。艱難辛苦を駆け抜けてひたすら走り続けることに固執する『疾走』、幽霊たちが必死に自殺志願者を説得して回る『幽霊人命救助隊』、人間臭い壬生浪士の面々を芸妓の視点で描く『輪違屋糸里』、兄が殺人者となってしまったがために弟の人生が狂っていく『手紙』、「春が二階から落ちてきた」という序文のインパクトが強い『重力ピエロ』、ユーゴスラヴィアからやったきた少女・マーヤとの出会いと別れを描く『さよなら妖精』、現代の高校生たちが源平の時代にタイムスリップして戦乱の世を生き抜く『君の名残を』、日系二世の主人公が米軍に所属してサイパン戦に従事する『七月七日』、「クリスマス・ファシズム」というジョークが切実に響く京大生のダメライフ『太陽の塔』、ほんの数十ページ読んだだけで早くも「こんな青春小説が読みたかったんだ!」と感動してしまった『源にふれろ』。いずれも読後にズンと胸に来る感触があります。いや、『太陽の塔』はそうでもないか。次点は『武揚伝』『ロッキン・ホース・バレリーナ』『パンク侍、斬られて候』『世界のすべての七月』『夜のピクニック』『みんな元気。』など。

・うーん、小説の項だけで書き疲れた……他の話題は来年に回すとします。

 ではみなさま、よいお年を。


2004-12-29.

・年末の友は『ヘルシング(7)』。なんて素敵にグラン・ギニョレスク。メインキャラ以外は出てきたページで即死しても不思議ではない阿鼻叫喚百鬼夜行の大英帝国蹂躙ストーリーです。構図といいコントラストといい、全編に渡って美しい。というか相変わらず描き込み過ぎ。セラスが元婦警であることを久々に思い出せつつ奮戦と脱力の血肉紀行。基本的にヤバい言動しかしていない狂信カソリック者マックスウェルくんも元気良くブチ切れてブリテン島をお庭に楽しく殺し遊んでいる。そして前世紀からずっと悪の象徴であるナチス・ドイツ兵たちは今世紀も仲良く嬉々として鬼気迫り、溌剌とむごたらしく活躍する寸法。悪趣味な人間なら何度でも読み返したくなる一冊ですね。

Littlewitch新作『少女魔法学』公式サイト公開

 やっとOHPでの情報が出てきました。「育成アドベンチャー」とのことで、例のデジタルコミックみたいなシステム「FFD」がどうなるかは分かりませんが、ゲームパートでプレー時間を稼ぐ構成になりそうですね。期待と不安が半々かな。

・桜坂洋の『All You Need Is Kill』読了。

 『よくわかる現代魔法』で「コンピュータによって魔法を再現する」という設定を器用に活かしている作者が初めて物す単発長編。殺伐と煤けた雰囲気を放つタイトルや表紙イラスト、それに神林長平が帯で推薦していることからも察せられる通り、『現代魔法』とは一線を画した内容になっています。萌えの要素は「皆無」とまで行かないにしても、「ない」と見積もった方が実情に添う。ハナから泥まみれの装甲服の中で小便と鼻水を垂れ流して怯える主人公が出てくるくらいですから。

 設定に凝ると言いますか、プロットづくりに器用さが垣間見えるあたりは『現代魔法』と変わらない。中核をなすネタはあらすじとかでバラされていますけど、なるべくそうした事前情報を閉ざして読むと一層楽しめます。この感想でもネタは割らない方向で書こうかと。必然的に短くなっちゃいますが。

 エンターテインメントの戦争映画はもちろん爆発シーン豊富な戦場が一番の見所となる(『フルメタルジャケット』はやや例外)もので、当然このAYNIKも『プライベート・ライアン』ばりに過酷な場面から幕を上げるわけですが、いくら戦争モノといっても戦場の風景ばかり垂れ流していてはストーリーがつくれない。前後に位置する「兵士たちの日常」が物語に緩急を設ける要所となっていきます。本作において戦争の目的や敵の正体なんかは一応明かされるものの割とどうでもよい部分であり、華となる「戦場」と箸休めになる「日常」が交互するリズム、死に近づいたり遠ざかったりする感覚がメイン。隅々まで気配りの利いた芸の細かさは本当に「器用」と言いたくなるくらいで、ある意味とてもスケールが小さい話なのに、その「小ささ」が気になるどころか愛しくなってきます。

 一つのジャンルに立つ里程標となりうるほどの革新性はない。決してベタじゃないし、ズレているところが面白いんですけど、一方で「お約束」に支配されている面もある。頭から尻まで寸法が取られ、図面を引いたみたいに自覚の行き届いた造りとなっていることが評価を「器用」の域に留めている気もします。けれど、面白かった。読み終わってから目次を見直すと更に。特に何かを期待せず、「なんとなく」手に取って読むことができれば幸せな作品。


2004-12-27.

・イヴからクリスマスにかけては犬江さんトコ飛鳥さんトコのチャットに同時参加した焼津です、こんばんは。魔界とカオス界。ザ・二股。修羅場スキーなので「二股」「刃傷沙汰」というワードはとても目に心地よいです。「推定会議」の方は途中で落ちてしまいましたが、過去ログを見るとあの後も盛り上がっていたようで羨ましい。というかネガネ率高いですね。当方もメガネ野郎ですけど。

「Outer World:第02話」(きゃっとぼっくす。)

 「Magical Girl Supplement」一作目としての個別タイトルは「Outer World」に決定したとのこと。遂に本格的な戦闘シーンへ。読む際、『深紅の雨傘』は番傘をイメージしました。絵的に映えるので。決して緋雨閑丸(*´Д`)ハァハァなわけではなく。

2月28日発売の『ザ・スニーカー』はニトロプラス特集

 古橋秀之のデモベ短編……楽しみだ。

戯画の『パルフェ』、公式サイト公開

 通称「ショコラ2」。同じスタッフで取り掛かっているうえ、世界観も共通。ストーリーも連続していて、「続編」と捉えてもいいらしい。まだ情報が出たばかりなのでのんびり様子を見ますか。

Littlewitchの新作『少女魔法学』に期待しつつ年は更けゆく。


2004-12-25.

・ドメインに「adolescence」の入ったメールが届いたので「もしやPsyKaさん?」と思って開いたらただのエロスパムでした。こんばんは、焼津です。スパムっぽい件名だったから一瞬捨てそうになったなー、ハッハーと笑った直後だけに悔しさ二倍。

・そんなこんなでホームアローンなイヴ。『クレイジーヘヴン』を読んで頭をヘヴらせつつ、スレイヤーの曲を流して執筆作業に耽りました。クリスマスへの鬱憤が転化されたせいか筆の進みは大変よろしいです。二重丸。

・久々にラピュタ視聴。やはりボール・ミーツ・ガールなアドヴェンチャーとしては不朽の名作かと。ムスカのセリフも切れ味抜群。子供の頃に聞いた「見ろ、人がゴミのようだ」は見事なトラウマでした。それにしてもあのロボットの発信音は地震速報に聞こえてちょっとビクッとします。

・で、今はこちらのチャットにお邪魔中。ラピュタを夢中で見ていて参加に遅れました。クリスマス・ファシズムの圧政に耐えかねた若きレジスタンスたちの憂愁と苦悩に満ちた寂しい集いです。厳密に言えば寂しさを吹き飛ばすための集い。一応議題はありますが、ほとんど雑談に近い状態。

『苺ましまろ』アニメ化「MOON PHASE」経由)

 そういえば、原作の4巻がなかなか出ないなぁ……もういい頃合なのに。


2004-12-23.

『天城一の密室犯罪学教程』読了。かの有名なアマチュア探偵作家の、初となる商業単行本。デビューから50年以上も経ってのことだから、もはや一つの「事件」ですね。何度かアンソロジーで見かけていますので、かなりアクの強い作風をしていることは知ってましたけど、「毒草/摩耶の場合」のパートが凄い凄い。「殺人現場の道化師」と蔑まれる摩耶正が逆説を駆使して密室事件を高速解決する手際といい、明かされる珍トリックといい、これが「このミス第3位」って書店で山積みに大いにプッシュされても──「いいのか」「いいんだ」と言いたくなります。

 やはり白眉は「高天原の犯罪」か。死体発見→警察踏み込むの件が一種異常なテンションを醸している。トリック自体はバカっぽいし、既に類例も出ていますけど。他では「盗まれた手紙」が良かった。コアとなるネタはさしたるものじゃないのに、それを弁証法推理で巧く調理している。チェスタトンにハマっていた中高生の頃を思い出す一冊でした。

『Fate/hollow ataraxia』、タイトル表記ミス

 「atraxia」はスペルミスなのかわざとなのか、と意見が分かれていましたが前者で確定。OHPの情報は発売を告知する程度のものに留まり、詳しい情報はまだまだ不明。

「Magical Girl Supplement」第01話公開(きゃっとぼっくす。)

 リレー小説「魔法少女忌譚修」外伝。魔法少女〜本編が閉鎖空間を舞台にしたストーリーであるのに対比して、閉鎖空間の外、町にもたらされる影響を綴っていくというコンセプトの模様です。第01話は本編のストーリーが始まる前に遡り、正統派タイプの魔術師を主人公に描いていく。激しいバトルはこれからみたいなので期待します。

チャット「第2回 推定会議」、24日午後10時より開始。

 クリスマスはイブともども空き空きなので参加しようかと。少し遅れるかもですが。今回は割と人数が揃いそうな気配ですので、話題も弾むものと思われます。興味のある方は是非どうぞ(と主催者でもないくせに誘う)。


2004-12-21.

・本屋で『星界の戦旗4』を見かけた。手にとってみた。幻ではなかった。でも軽かった──ということで購入した焼津です、こんばんは。紙質の薄いハヤカワとはいえ今回はいつも以上に薄い。年単位で待たせてこの仕打ちとは実にファン泣かせ。いや、本は厚さじゃない、中身、うん、そう、中身ですね。内容に期待します。しかし他にも4冊買ったので後回しになるかも。

・ネタがないので、サンタ絵リンクなぞしてみる。

 ダブルサンタの仁義なきパンモロ(InnK)
 今、そこにいるサンタ(Crazy Clover Club)
 薄手のサンタがプレゼント袋を庇う(ソラノト)

 思いつきなのですぐに打ち止め。

『ままらぶ』『まぶらほ』『まほらば』『マブラヴ』、どれも今はほとんど触れていないのに素で見分けられる技能に少し悲しくなった深夜。ネコミミ待ち。


2004-12-19.

・クリスマスファシズムを実感せずにはいられない今日この頃。そういえば森見登美彦の新刊がいつの間にか出ていますね。事前には全然察知していませんでした。版元が太田出版とはなぁ……道理でアンテナに引っ掛からなかったはずだ。

成田良悟、新連載『世界の中心、針山さん』開始。

 第一話はジャンル[魔女っ娘]とのこと。少し興味をそそられる。

『School Rumble(7)』、読み終わりました。前巻の体育祭編はラブコメ成分がちょっと落ちて不満だったけれど、その反動があってか今回はより一層濃厚に。相変わらずどいつもこいつも勘違いを加速させて実に面白い状況をセッティングします。真正面からラブコメをやっているわけでもなく、むしろラブコメのパロディに近い位置にある作品なのに、下手なラブコメよりも大いに盛り上がる。「笑顔で核攻撃」の件とか、修羅場スキーにはおいしゅうございました。「双方それまで」な次回予告絵も期待をそそる。1巻を読んでた頃はこんな内容の話になるとは思わなかったけれど、今では「先が気になるマンガ」の一つ。

・あと『俺に撃たせろ!』で火浦功を初体験中。なんとなく手を出せないでいた作家ですが、気紛れで読んでみた一ページ目がツボに入って即購入。「俺の名は、アルツ・ハマー」って。しかも彼の事務所には『ここに入るもの、全ての希望を捨てよ』という看板が掛かっているとか。まるで『殺人鬼探偵』のところみたいですね。ともあれ、ミッキー・スピレーンを読んだことのない当方も一瞬で虜にされました。軽妙でいてそこはかとなく悲哀を感じる文章がおいしゅうございます。

・そして現在こちらのチャットにお邪魔中。


2004-12-17.

・14万ヒット達成。ありがとうございます。『砂の王』が面白くて古川日出男に興味を抱いているところの焼津です、こんばんは。ベニー松山がキッカケでWIZ小説を読み出しましたけど、なかなかアタリが多くて嬉しい。

TYPE MOON新作『Fate/hollow atraxia』「皇帝φ機構」経由)

 ファンディスクと見る向きが有力な模様。まだ情報が錯綜していますね。

『雲のむこう、約束の場所』、来年2月にDVD化「MOON PHASE」経由)

 随分と早い気がしますが、最近の映像作品はこんなものなのかな? DVDはあまり買わないのでよく分からない。

 ストーリーには不満が残ったものの、映像美は見ていて思わず溜息が漏れるクラスの質感。「アニメで情景を描く」ことの意味を徹底させた作品につき、迷わずオススメします。まだ上映している劇場と、これから上映する予定の劇場もいくつかありますね。

「白と黒の境界線」更新

 「ツインテールで白黒ウェイトレスで紅目でベルト多数」なゴルファー絵。関係ないですが「ゴルフ」とか「ゴルファー」って言葉、どことなく重厚で威嚇的な響きがありますね。

チャット「推定会議1.7」、12月18日PM09:00〜

 参加する予定。今回こそは暴走を控えようかと。無理か。無理っぽいですね。

・ニュース10の海外ファンタジー特集で“氷と炎の歌”がチラリとも出てこなかったけど泣かない。


2004-12-15.

・喉がいがらっぽい焼津です、こんばんは。風邪ひかないよう温かくしています。

・文庫化してみると意外に薄かった『煙か土か食い物』にビックリ。新書一段組だったから見た目が多少厚くなっていたんだろう……と思うものの、よもやこれほどとは。調べてみたら新書の方がページ数多いし。ミステリーだ。それはそれとして、文庫のカラーがピンク。清涼院と一緒ですね。

『planetarian』、一時販売停止

 「焦って購入する必要もないかな」と様子見していたらこの始末……orz

 まだ積ゲーや積本は山ほどありますし、実際はそれほど痛手じゃないですけど、「いつでも買える」と思っていたものが買えなくなると差し当たって必要じゃなくてもなんか悔しくなる心理。

『魔界天使ジブリ−ル -episode2-』、公式サイトオープン

 特に話題として取り上げた記憶はありませんが、当方は『魔界天使ジブリ−ル』が結構好きです。『ふたごえっち』の頃はまだそれほど好みじゃなかった空中幼彩の絵が目覚しい勢いで素晴らしくなっていたので速攻買い。この2もたぶん購入するかと。


2004-12-13.

・惰眠は素晴らしい。と休日をダメに過ごした焼津です、こんばんは。買い込んだカレーパンが美味しい。

「魔法少女忌譚修」、第6話更新。

 執筆者は高昂さん。ヒロインである咲夜が懸命に頑張るなか、やっと第四のプレイヤーが参戦し、駒が揃った状態になりました。続く第7話は当方とsfさんが担当する予定。具体的にはsfさんが「第四のプレイヤー」に関するパートを手掛け、当方はそれ以外を。出来上がったものを組み合わせ、添削し合って全体の構成を整えるつもりでいます。まだプロット段階で詳しいことは未定。

・初野晴の『漆黒の王子』読了。

 地上で着実に進行していく「寝ている間に急死する」暴力団組員の連続怪死事件と、地下に築かれた十七世紀アムステルダム調の暗黒コミュニティ。二つを結ぶのは、「ガネーシャ」──インド神話の神を騙る謎の存在。

 砂の城の哀れな王に告ぐ。
 私の名はガネーシャ。王の側近と騎士達の命を握る者。
 要求はひとつ。
 彼ら全員の睡眠を私に差し出すこと。

 異様なムードに包まれたサスペンス長編。漂う雰囲気は『リング』を源流とする現代ホラーに近しいものなのに、巻き込まれる対象がヤクザ。クライム・ノベルというかバイオレンス小説的な要素も入ってきているわけです。ヤクザ+改造ヒーローな『Hyper Hybrid Organization 00』とかヤクザの娘+魔法少女な『ばいおれんす・まじかる』に比べればそれほど浮いた印象は受けませんが、生体移植をテーマにした前作と同様、ミステリの境界線に位置するタイプの話となっています。メフィスト賞とかファウストとはまた違った意味合いで。

 地上のパートと地下のパート、それぞれの繋がりをほのめかす材料はチラホラと出てきますが、「これが具体的にどう接合していくのか」が読むうえでのポイントとなります。組長代行の働きによってゴリゴリの武闘派ヤクザに発展し、周りとの軋轢を強烈に生み出している藍原組で原因不明の不審死が連続する一方、忘れ去られた暗渠の中で、名前を捨てかつてのオランダ・アムステルダムに因んだ職業名で呼び合う── <王子> 、<時計師> 、<ブラシ職人> 、<画家> といった具合に──集団の社会を、ふとしたことから紛れ込んでしまった記憶喪失者の視点で綴る旅行記めいたストーリーが展開する。上は問答無用のバイオレンス、下は個性バリバリの住人たちによるファンタジー。クイズで出されても到底分からない。

 さすがにこの「接合」はやはり難しかったといいますか、強引でした。手つきが粗い。「そう来るのか」とワクワクさせられたものの、どうにもまとめ切れなかった生煮え感が漂います。物語のキーとなる要の謎も、勘がいい人だと簡単に分かってしまいかねないほど危なげ。ちなみに当方は最後までサッパリ気づきませんでした。何を偉そうに。発想としては面白いし、生地も練られています。伊達に時間は掛かっていない。それでもまだ、「巧い」とは言い辛いですね。正直、微妙です。しかしこのワンダーなミステリ感覚は読む価値があるかと。

 よくこんなことを思いついて書き上げるまでに至ることができたなぁ、と感心せずにはいられない一作。ヤクザとホラーとファンタジーを織り込んだサスペンス・ミステリなんてそうそう思いつかない。個人的には前作同様気に入りました。でも、前作同様に微妙な感じでもあります。タイトルになっている「漆黒の王子」とか、もっと掘り下げてほしかったところがある一方で、それほど重要な気がしないところに多くの筆を割いている。いまいち行動原理の分からない主要キャラもいました。アンバランスな印象が拭えない。けれど幕切れの美しさには魅せられる。このセンスは磨き方次第でもっと鋭利な武器になると思います。


2004-12-11.

『舞−HiME』もオープニングでたまげたましたが、『ローゼンメイデン』は更に大変なことになっていました。木曜の深夜はなんて危険。

『空の境界』、トーハンの年間ベストセラーランキング「新書−ノベルス」部門で第1位

 なんだかんだで売れましたね。

・ジョージ・R・R・マーティンの『王狼たちの戦旗(上・下)』読了。

「おう、真実をお求めですか? 用心してください、奥さま。人々はしばしば真実を切望するといいます。しかし、それが食卓に出されたときには、めったにその味を好む人はいないと、ティリオンはいいます」

 凄まじく読み応えがあり、且つ鳥肌の立つほど面白い戦記ファンタジーでした。中世イギリス、それも薔薇戦争をモデルにした本作は上下巻それぞれ1冊だけでも原稿用紙1000枚を超えるであろう分量。それが尽きてもなお「読み足らない、もっと続きを」と願わずにはいられぬ白熱のストーリー。2巻を待ち続けた渇望が潤いで酬いられると同時に3巻へ焦がれる気持ちとなって更に膨れ上がるとは、なんて残酷な。

 2年前に刊行された『七王国の玉座(上・下)』の続編にして“氷と炎の歌”第2弾となる作品ですが、その「半端じゃなさ」は単純に分量そのものだけでなく、巻末に列挙されている膨大な人物名からも窺い知ることができます。いちいち数えちゃいませんけど、100人じゃ利かない数ですよ。余裕で。話の区切りごとに視点人物が変わる構成になっており、「語り手」に近い役割となる彼らはほぼ固定されていますがそれだけで10人に迫る勢い。もちろん視点に合わせて舞台も北部・南部・最北部・東の大陸へところころ変わりますから、ぼんやりしていると話の筋を見失いそうになってしまう。気の抜けない造りです。

 これだけ書くと読むのが面倒臭そうに見えますが、自ら「王」を名乗る若者たちとそれを擁立する諸公たちとが対立して戦乱絵巻を繰り広げる様はまさに群雄割拠を地で行っており、「いくつもの陣営が鎬を削り火花を散らす」といった展開の連続を叙事詩的にではなく、むしろ歴史において脇役の位置を強いられた人々の目線から語っていく生々しさに一度触れたら、もはや没頭する以外の選択肢はなくなります。確かに横文字名前ばかりでややこしいし、3桁もの人名は覚え切れませんが、卓越したストーリーテリングはそれを補って余りあるものかと。

 矮躯と醜貌のために「一寸法師」「小鬼」と蔑まれ諧謔を利かせつつも陰謀の糸を張り巡らせる女王の弟ティリオン、密輸業者でありながらも篭城戦の際に包囲を掻い潜って食料(タマネギと魚の塩漬け)を調達した功績から密輸の罪を贖うために五指を切り落とされた後に騎士として叙任された「タマネギ騎士」のダヴォス、そして名前は頻出するけど今回あまり出番のなかった「王殺し(キングスレイヤー)」ジェイム──ティリオンの兄で、上に引用したセリフは彼のもの──など、クセのあるキャラたちが紡ぎ出す魅力は単純に「カッコイイ」とは言えないにしてもなんだかワクワクする類の匂いを放っています。私情と約定と損得勘定が鬩ぎ合う猥雑な心理的葛藤も実に美味しい。みんながみんな、場面場面で「こいつ、殺してやろうか」と割と本気の誘惑に駆られてグッと堪えるあたりに背信・下克上・簒奪なんでもありの殺伐とした妙味を感じて舌鼓を打ってしまう。

 タイトルにもある「戦旗」が幾多ものシーンで諸公の紋章とともに描写され、やむことなき闘争劇の死臭に満ち溢れた狭間で血と泥に汚されながらも動乱の風を孕んで翻る壮麗なイメージは中世的世界の貪欲さをこの上もなく立ち上らせる。下巻における海上戦──オールというオールが突き出され水面を叩き、投石と矢雨と燃え上がる炎が空の色を塗り替え、角と角がぶつかり合っては木材が軋みを上げて破砕するガレー船バトルのスペクタクルは特に印象的でした。国内海外を問わず、「いま一番面白いファンタジーは何と思うか?」と訊かれたら迷わずこれを推したいところ。なんかベタ褒めオンリィでろくな感想になっていないことは自分でも分かりますけれど、当方が夢中になって寝食を減らしつつ読み耽らざるを得なかったことは冬の寒気よりも冷厳な事実です。次巻もまた2、3年は待たされそうですが、こればかりは最後まで追いかけ続けたい所存。


2004-12-09.

・迎撃のスホーイ、とばかりにリンク返し。PsyKaさんの「AdolescenceLost」と蕨海月さんの「きゃっとぼっくす。」、両方とも「そのうち張ろう」と思いつつ延び延びになっていたところです。先日の飛鳥彼方さんトコで行われたチャットで楽しく会話させてもらいました。PsyKaさんの熱い語りぶりは忘れようもなく。もはや「語り派」認定。ちなみにサイト名の「Adolescence」を見るたび劇場版ウテナを思い出しています。蕨海月さんはチャットでsfさんに次いでイジられまくれ、果てにはネタ上で半ば異性化扱いを受けることに。考え方次第ではとてもオイシイ役どころでした。あの時間帯は「海月」が「くらげ」ではなく「みづき」になっていたのかもしれない。ところで、知人に「海月」が「くらげ」と読めることを知らず娘の名前に付けた奴が(以下脱線につき省略)。

・昨日は高昂さん@ふぁいあぼーるの誕生日。日付変わっちゃいましたけどおめでとうございます。ところで「ふたなり娘は与え、奪いたもう」と言われます。何をって、それはもちろんホワイト修精えk(ry 掛けるか掛けられるかはコインの表と裏。

『Answer Dead』延期(12月17日→1月14日)

「右手のクリスマス、左手のエロゲー、どちらかを選べ」
「違うな。アンサーEnkiだ」

 アンデッド、おまえもか。一応は期待作だっただけに無念。ああ、どいつもこいつも砂とか水みたいに指の隙間からこぼれ逃げていく。

『あらしのよるに』が長編アニメ化「MOON PHASE」経由)

 それぞれ一匹の狼と羊が嵐の夜、真っ暗闇の中で出会い、互いが捕食者と被食者の関係にあることも知らず楽しげに会話する……という地点から始まる連作絵本『あらしのよるに』。主人公二匹の関係を別の何かに置き換えて読むのも面白いですが、そのまま読んでも充分にイケる出来でした。児童向けアニメは最近あまり見ないけど、これなら少し見たいかも。


2004-12-07.

飛鳥彼方さんのところのチャット(推定会議)に参加して徹夜した焼津です、こんばんは。深夜のチャットに特有の「その時その場に居合わせた者しか分からない熱気」に包まれ、大盛況となってました。ひとりが壊れ出すとふたりが壊れ出し、残る面々も理性の崩壊を始めて収拾がつかなくなるという例のパターンです。以前も似たような経験をしたことがありますが、今回はなまじディープなネタがあっさり通じてしまう分、一層歯止めが利かなくなっていた気がしますね。

 最初は割と猫を被ってレスしていた当方も時間経過とともにハイになってだんだん地が出て行った次第。なんか「黒幕」とか言われちゃってますし。ともあれ楽しかったので次回も都合が付けば参加する所存であります。

『planetarian』ダウンロード販売開始。

 プログラムをDLしてインスト→ユーザー登録する→ライセンスキーを購入する、という手順の模様。更に「ユーザー登録時にご利用したパソコンでしか、ご購入とご利用ができない仕様となっております」とのこと。原理的に欠品が出ない仕様ですし、焦って購入する必要もないかな。プレーしたくなったときに買うとします。

・『このミステリーがすごい!2005』の第1位が『     』で、『本格ミステリ・ベスト10 2005』の第1位が『     』。納得と驚きが半々です。面白いとは思いましたが、まさかトップに躍り出るとは。何にせよ、めでたい。


2004-12-05.

・「シャア」を逆に読むと「アシャ」→「朝」。つまり「朝専用」は「シャア専用」を指しているんだよ! だって赤いし! と賞味期限ぶっちぎりのネタを振る舞って周囲の寒気を一層厳しくした焼津です、こんばんは。“氷と炎の歌”のスターク家ばりに冬がやってきました。

『ショコラ』スタッフによる戯画の新作

 最近出たアレの評判が諸事情につき不穏な様相を帯びている戯画。それはさておきこの便宜上『ショコラ2』というべき新作、ストレートにcurioを舞台とした続編なのか、それともぱじゃまソフトにおける『パティシエなにゃんこ』と『プリンセスうぃっちぃず』みたいな関係になるのか。

今月新書化する『熊の場所』「Locked Room」経由)

 さりげに意表をつかれました。

・桜庭一樹の『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』読了。

 魚くさ──もとい漁港として有名な鳥取県境港市を舞台にした少女一人称型青春ストーリー。『ゲゲゲの鬼太郎』で知られる水木しげるの出身地でもあり、妖怪ブロンズ像が並ぶ「水木しげるロード」があったり、妖怪の絵を描いた一両編成の電車が走ったりしているところですね。

 転入生はお約束みたいに可愛い顔をした女の子だったけれど、「海野藻屑」という明らかにトチ狂った名前で、「ぼくはですね、人魚なんです」とほざく頭のオカシイ奴だった。クラス中のほとんどがヒくなかで、あたしは静かに聞き流した。どうでもよかった。なのに、なぜかそんな藻屑に目をつけられ、付きまとわれるハメになった。妄想癖があって、会話を噛み合わせることもできず、常時持ち歩いているミネラルウォーターをことあるごとにガブガブと飲んで口の端から涎みたく垂れ流し、ペットボトルをあたしの背中に投げつけては片足を引きずりながら追ってくる少女。父をなくし兄がひきこもりで母が必死にパートの仕事をしているあたしは家系を助けるために高校へ進まないで自衛隊に行くつもりだった。欲しいのは、世界とか社会とか現実とか周りを取り巻くいろんなものと真っ向から遣り合うための実弾。でもいつの間にか藻屑のバラ撒く脆い砂糖菓子の弾丸で蜂の巣ならぬ蜂蜜にされてべたべたと甘ったるくなっている自分に気づいてしまい……。

 「青春は戦争だ」というテーマが『推定少女』と共通しており、同系統の作品と捉えることも可能だが、ファンタジーめいた要素は希薄で、あれ以上に悲惨というか過酷な内容。作風は「ちょっとギラギラした感じの白倉由美」とでも言えばいいのか。少女趣味を加速させて器用に「お約束」を迂回しつつ焦燥感に満ちた思春期のカオスを描き出しています。……えーと、つまり説明になっていない説明を説明ということにしなければ説明できないタイプの話です。

 割と作風が変わりやすく、アタリハズレのふらつきが大きい作家だけに普段からこういうノリをしているわけじゃないのですが、ともあれこれに限っては舞城王太郎や西尾維新に近しいテイストだか成分だか毒素だかが混入されていて、200ページ弱の少ない分量とも相乗し、サクッと一気に読めます。テーマもあるしストーリーもあるしちょっとした試みも仕込まれていますが、基本は勢い任せで真っ直ぐな弾道を描きますから、当たるときはバッチリ当たりますし、外れるときは思い切りあさっての方向に飛んでいきます。イラストのロリっぽさも、照準合っているんだか合っていないんだか微妙。あくまで当方個人に関する範囲でのみ書けば『推定少女』を超えるアタリでしたし、桜庭作品において一、二を争うスマッシュヒットだったと思います。ただ傑作と請け合えるかといえばそうでもなく、粗さやクサさは目に付く。それでもなお推したい不思議な魅力。

 必中とは行かないにしても、撃ち出された後で確実に何かが残る一発でした。あらかじめ救いがないことを明記しているだけに、スッキリした後味を求める人にはオススメできません。アドゥレセンスなサバイバルを楽しめる人にだけプッシュ。


2004-12-03.

・週末は寝るためにある。睡眠の補充を心待ちにしている焼津です、こんばんは。土日よ、早くお出でませい。

『トリプルプレイ助悪郎』は雑誌連載「Locked Room」経由)

 「月刊少年シリウス」?

@「ファンタジー」をメインに
A講談社のファンタジー・児童小説を漫画化
B「ファウスト」との連動企画

 とのことですが、載っているラインナップは今のところピンと来ないですね。続報待ちとします。

「白と黒の境界線」、久々に更新

 新刊の表紙絵。イリヤの透明な表情がグッときます。

・永瀬隼介の『天涯の蒼』読了。

 顔を上げ、天空の彼方を眺めている。その視線の先を追った。朝陽の上方、鮮やかな蒼の光が一本の槍になり、中天へ向かって伸びていた。
 (中略)
 しばらく二人して眺めた。太陽が昇るにつれ、蒼の光は強烈な陽光に飲み込まれるように、薄く朧になっていった。

「正義ってやつはな──」
 男は頬を緩めて苦笑した後、続けた。
「これが案外、いいもんなんだ」

 元刑事にして現私立探偵──冤罪事件の責任を一身に負わされ、警察から放逐された男。組織の中に「正義」という幻を見て、盲従のままに愚かさを重ねた彼が、ふたたび組織と対峙する。湿っぽくて矜持も乏しい、厳密にはハードボイルドと言えない内容だけど、「ハードボイルド」の響きから連想されるテイストを抱いた一作です。カッコ悪いけどカッコいい。

 煤けた雰囲気の話を書かせればお手の物、と個人的に見做している作者だけあって今回も大した煤けっぷりです。かつてはホープとして将来を期待された主人公が、見込み捜査の失敗によって無実の容疑者を死に追いやってしまい、免職、社会的抹殺、家庭崩壊の憂き目に遭って燻るだけ燻っていく、なかなか気の滅入る設定。発端となった風俗嬢殺害事件の真犯人が暴力団・北星会と絡んでいるという情報を得て捜査権もないのに執念に衝き動かされて事件を洗い出す。そんな彼が辿り着く真相とは……。

 花村萬月や梁石目、馳星周に新堂冬樹といった流行りの面々に比べればドギツイ展開も少なく、煤けている割に意外とキレイな感じがする作風です。率直に言えば華に欠ける。しかし、こうした「煤けてるのにライト」なところが読みやすく、適度にこちらの興味を引きつけてくれる具合で、当方としては結構好き。色町でヤクザに絡まれた──と思ったらそれは以前の同業者たちだった、ってな調子で面識のある強面刑事たちに「けっ、落ちぶれたもんだな」と蔑まれ節々が痛むほど足蹴にされるシーンを仕込んだりなど、心憎いばかりに嫌らしい小技の利かせ方が実にツボだ。

 強烈な個性は一切ないものの、「どん底まで落ちた男が惨めったらしく懸命に這いずり回る」タイプの話としては手堅くまとまっていて楽しめました。ただしこの主人公、ネチネチと嫌味を吐く陰湿な性格になっていますので、「そこまで堕ちられるとちょっと……」という人にはオススメしがたい。基本的にヘタレですし。代わりに、ヘタレた言動の中に堕ちたゆえのふてぶてしさ、強かさが覗くあたりを見所とできる人には是非とも推したい。とりあえずタイトルは今までの作品の中で一番気に入りました。

・思いついたようにさりげなくリンクを更新。「てけーり」。りゅーが弟さんによるSSおよびオリジナル小説は量・質ともに素晴らしいものがあります。もっと早く張りたかったのですがついつい忘れていました。


2004-12-01.

・気が付けば一年の最終月。歳を取るごとに時間の流れが早く感じられる焼津です、こんばんは。今月は忙しくなりそうです。

『ロストチャイルド』発売日延期

 ここまで来て細かい日程が決まらないんだから多分そうだろうなとは思いましたが、はふう。

・今月の予定。ダラダラと書き連ねます。

本の購入予定

 『クレイジーヘヴン』/垣根涼介(実業之日本社)
 『終わりのクロニクル4(上)』/川上稔(メディアワークス)
 『とある魔術の禁書目録4』/鎌池和馬(メディアワークス)
 『ROOM NO.1301 #4』/新井輝(富士見書房)
 『さよならトロイメライ Novellette』/壱乗寺かるた(富士見書房)
 『春季限定いちごタルト事件』/米澤穂信(東京創元社)
 『星界の戦旗4』/森岡浩之(早川書房)
 『SchoolRumble(7)』/小林尽(講談社)
 『カオス レギオン05』/冲方丁(富士見書房)
 『BLACK BLOOD BROTHERS2』/あざの耕平(富士見書房)
 『地獄のババぬき』/上甲宣之(宝島社)
 『ALL YOU NEED IS KILL』/桜坂洋(集英社)
 『ゼロの使い魔3』/ヤマグチノボル(メディアファクトリー)
 『ホーンテッド!2』/平坂読(メディアファクトリー)
 『銃姫3』/高殿円(メディアファクトリー)
 『三月、七日。〜その後のハナシ〜』/森橋ビンゴ(エンターブレイン)
 『HELLSING(7)』/平野耕太(少年画報社)
 『鬼哭街』/虚淵玄(角川書店)
 『白貌の伝道師』/虚淵玄(ニトロプラス)

 先月買いすぎた&急な出費が響いたことも響いて金銭的ピンチ。お値段の張るハードカバーを抑えて、文庫本を多めにした布陣。19冊中14冊が文庫で2冊がマンガ。しかしそれでもまだ数が多いので、状況次第で遅延策を取って月の後半まで購入を控えるつもり。

 『クレイジーヘヴン』は著者にとってかれこれ6冊目となる本。3冊目の『ワイルド・ソウル』は小説賞のトリプル受賞を果たして大いに注目されたみたいですが、続く4冊目、5冊目は比較するとパッとしない印象ですね。そろそろドカンと盛り返して欲しい。『終わりのクロニクル』と『とある魔術の禁書目録』、『ROOM NO.1301』、それから『星界の戦旗』、どれも「4」に縁がありますな。タイトルには含まれないものの『さよならトロイメライ Novellette』もシリーズ4冊目。終わクロが前巻から5ヶ月、とあるとROOMとさよトラが3ヶ月で、星界が45ヶ月です。約一冊ファン泣かせな仏契野郎が紛れ込んでいます。

 『春季限定いちごタルト事件』は地味ながらミステリとライトノベルの融合を成功させている作家として密かな人気を集め、『さよなら妖精』で根強い支持を得た米澤穂信の書き下ろし新作。確か連作形式で送る「日常の謎」(殺人などショッキングな犯罪事件を眼目とせず、日常生活の中で遭遇するちょっとした不思議をミステリの手法で解くジャンル)だったと思います。スクランはもはや言わずと知れた「いまどき珍しいほどベタベタなラブコメを何気に志向しているギャグ漫画」。地味に好き。カオレギはこれが最終巻。今年の冲方は思ったよりおとなしかったですね。BBBは吸血鬼ストーリーで最終候補に残り、「読者の要望が強ければ出版されるかも」とほのめかしながらも、結局ほのめかしただけになってしまったあざの耕平にとってどうやら念願らしいシリーズ。実はまだ1巻読んでないです。

 『地獄のババぬき』はリストの中で一番浮いたタイトルですが、作者は『そのケータイはXXで』の人。「命を賭けたババぬき勝負!!」とのことです。前作は全体的に雰囲気がチープながらもサスペンスの盛り上げ方は尋常じゃなくて、割と新作を期待していました。『ALL YOU NEED IS KILL』は巻を追うごとに面白くなっていく『よくわかる現代魔法』の作者の新作で、挿絵は安倍吉俊。当方的に、買うしかない。『ゼロの使い魔3』はツンデレヒロインと適度にバカで適度に燃える主人公が美味しいファンタジー。MF文庫Jの新しい看板となりつつある様子。『ホーンテッド!』は明るく脳天気に悪趣味な要素をサラリと調理する勢いが清々しく、また作風が西尾っぽいので失われた『ネコソギラジカル』の補充分とします。

 『銃姫』は完結してから読み出そうと思っているシリーズ。3巻は都合2ヶ月延期しました。どうせ積むつもりなのであまり気にならなかったけど。『三月、七日。〜その後のハナシ〜』は『三月、七日。』のアフターストーリー。キレイに終わっていたので蛇足になるんじゃ……という不安はありますが、あの雰囲気は好みなので行っときます。ヘルシングは漫画の中で一、二を争うほど続きが気になっているシリーズ。最近漫画をあまり読まないんで母数自体が少ないというオチはあるにせよ、楽しみであることに変わりはない。『鬼哭街』は選択肢のないデジタル・ノベルをそのまま小説化してしまうという暴挙を果たすノベライズ。普通、逆ですよね。でも紙映えするテキストと思いますから個人的には嬉しい。『白貌の伝道師』は虚淵初のオリジナル小説。楽しみですが、どうか新作ゲームのシナリオに関しても楽しみにさせてください……。

ゲームの購入予定

 『魔法はあめいろ?』(Sirius)
 『AnswerDead』(Le.Chocolat)
 『Peace@Pieces』(ユニゾンシフト)
 『ショコラ 〜maid cafe ”curio”〜”Re-order”〜』(戯画)

 先月はなんだかんだで新作を1本も買わなかった。今月もそうなる可能性は低くない。『ロストチャイルド』(たまソフト)は前述の如くですし。まほあめは体験版のノリがなかなかよろしかったので評判次第で査収。答死は略すと「アンデッド」になりますがそれはどうでも良く、前情報を見る限りでは微妙な感じで躊躇い中。同じように発売前は微妙だった『Paradise Lost』も蓋を開けてみれば良作でしたので、切ろうとも決断できない。しばし様子見。ぴすぴすはいとうのいぢ絵に惹かれるのみで本編への期待が薄い……しかもさりげなく延期している。これも様子見で。ショコラは追加要素の詳細が判明してから態度を決めようかと。

 えー、要するに消極的な監視態勢で臨むつもりです。ロスチャが出ないとなれば「何がなんでも買わなくちゃ」なソフトはありません。それに買ったところでプレーできるのは年末年始に差し掛かるまでってことになりそうです。

SSの予定

 青息吐息で危うい連載「ガールズ・ドント・クライ」、先月はなんとか2話分更新できましたが、今月はまだ目処が立ちません。年末に第5話の更新を予定していますが、うまくいくかどうか。

 とはいえ意外なところでも期待を寄せてくださる方がいることに、望外の喜びを感じております。まだまだ頑張ったり頑張らなかったりしようかと。


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