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リレー小説「魔法少女忌譚修」(第13話−10/12)


2023-12-08.

総合書店「honto」、本の通販サービスを終了へ ネットサービス縮小 大日本印刷が発表(ITmedia NEWS)

 12月1日のニュースなので今更ではあるが、お知らせを確認していなかったせいで数日遅れでビックリするハメになってしまった。hontoはbk1時代から使っていた通販サイトなので「遂に、か……」って溜息をつきたくなる。bk1時代は一度に10000円以上の注文をすると1000円分のポイントがつくキャンペーンをやっていたので、地元の書店で手に入らなかった本を月末にまとめて購入するのが習慣となっていたっけ。注文履歴を確認すると2008年に初めて利用したみたいだから、かれこれ15年か。最近は大きなポイントが付くキャンペーンもなくなり、他のネット書店で在庫切れになっている本を注文する程度の利用しかしなくなった。今年に限ると数える程度しか使っていない。電子書籍ストアの方は割引が多くて結構愛用してるんですけどね……電子書籍販売サービスが終わるのであればオオゴトですが、通販サービスが終わるだけなら影響は限定的……。

 いや、違った。私、hontoの新刊通知サービスに依存してるんでした。hontoはキーワードを登録しておくと(たとえば「東野圭吾」とか「加賀恭一郎」とか)タイトルやあらすじ、商品紹介にそのキーワードを含む新刊が登録された時点で通知メールを送ってくれるんですよ。このサービス、特定の作家やシリーズの新刊を知りたい場合はもちろん「著者や出版社を問わず『土方歳三』や『五稜郭』、『蝦夷共和国』について言及している本は全部チェックしたい」というような人にとってはスゴく便利なんですよね。電子書籍の販売は続けると記されているからメールサービスも続行すると思いますが、世の中すべての本が電子化されているわけではなく、「物理書籍しか販売されない」新刊もあったりするわけで……サービス終了後は外部通販ストア(e-hon)と連携し、「紙の本をご購入される場合は、hontoサイトからe-honサイトへ誘導し、お客様のご購入をサポートして参ります」とあるから商品情報自体は登録され続ける=メールサービスも継続する、と捉えていいんだろうか。hontoのメールサービスがなくなったら冗談抜きで一大事だぞ……。

電撃文庫、来年2月の新刊に『9S<ナインエス>』12巻と13巻を予定

 ナ、ナインエス!? 新刊のラインナップとして予想だにしなかったタイトルを挙げられてびっくらこいた。『9S<ナインエス>』は2003年9月、今から20年以上前に始まったライトノベルのシリーズなので結構古い。どれくらい古いかと申しますと、『とある魔術の禁書目録』もまだ始まっていなかったぐらいの古さです。ちなみにナインエスの主人公の名前が「闘真(トウマ)」、他レーベルだけど近い時期に始まった『さよならトロイメライ』の主人公も「冬麻(トウマ)」だったので、とある〜が出たときは「またトウマかよ!」ってツッコミが殺到した。2003年というのは『涼宮ハルヒの憂鬱』でハルヒシリーズが始まった年だが、ハルヒと同じく「いとうのいぢ」がイラストを手掛けた『灼眼のシャナ』がヒットした翌年でもあるので、「アクション+ラブコメ」みたいなバトル物が増えていた時期です。ナインエスもラブコメ要素があり、ブラコンの妹(主人公と腹違い)なんかも出てきますが内容としては「菊地秀行系の伝奇アクション+ハリウッドSF大作ばりのスケール」で描かれるスリラー。初期は良好なペースで新刊を繰り出していたのですが、「作者の病気」というやむをえない事情によってペースが鈍化しました。途中でイラストレーターの交代を挟みつつ、本編11巻(なお本編とは別に番外編が2冊ある)までは刊行されていたのですけれども、12巻以降については長らく未定のままだった。11巻の発売が2012年……10年以上も経ってからの新刊なんで、そりゃびっくらこきますよ。20年前に始まったシリーズではあるが、20年のうち半分以上が動きのない期間だったことになるんだよなぁ。今年は1993年創刊の電撃文庫が30周年を迎えたメモリアルイヤーということもあり、「ファン待望、あの名作の新刊がついに!」と称してシャナの新刊ネトゲ嫁の最終巻を発売したから恐らくその流れでナインエスも来たのだろう。

 待望の12巻と13巻を同時刊行し、シリーズは無事に完結を迎えることとなります。これで古参ラノベ読みの心残りが一つ減った……折に触れて読み返しながらじっと新作を待ち続けてきた熱心なファンもおられるでしょうが、その一方で痺れを切らして脱落してしまった、「もう既刊は全部処分してしまったよ」というかつての読者たちも少なくないでしょう。私も正直、別件で書庫に入って埃まみれのナインエス既刊を発掘したときは「もう待つのに疲れたし、いっそこのまま古紙回収へ……」って思いが脳裏をよぎりましたよ。一旦保留にしておいて良かった。2月にはウィザーズ・ブレインの短編集も出るし、まこと古参に優しい采配だ。この調子で他の未完作品にケリをつけていってほしいな。『DADDYFACE』とか。『悪魔のミカタ』とか。イラストを手掛けた「藤田香」は既に故人ですけれど……それから『剣と炎のディアスフェルド』、メチャクチャ面白い&初稿はラストまで提出済みだというのに売れなかったのか3冊で打ち切られてしまった。今でも夢に見るのよ、ディアスフェルドの4巻以降が刊行されて完結まで漕ぎつける風景。『Fランクの暴君』は3冊どころか2冊で打ち切られたけど、たまに思い返すくらい好き。作者もだいぶ構想を練っていたらしく続き書きたがっていたが、様々な事情から断念せざるをえなくなり未完宣言を出してしまった。悲しい。あとは何と言っても『E.G.コンバット』か……☆よしみるの口ぶりからすると秋山瑞人が自分の文章に納得できなくて何度も書き直してるっぽいが。俺たちはデストロイの季節が到来するのをいつまで待ち侘びればいいんだ?

鈴木央「ライジングインパクト」Netflixでアニメ化!久野美咲、花守ゆみりら出演(コミックナタリー)

 ライジングインパクト!? こっちもこっちでびっくらこいたわ。このタイトルに反応する時点で年齢がバレそうではあるが、『ライジングインパクト』は「鈴木央」が1998年から連載を開始したゴルフ漫画で、人気があまり伸びなかったのか翌年1999年にはもう連載を打ち切られてしまった。が、「復活させてくれ」という読者の要望があまりにも強かったのか、それとも単行本の売上が良かったのか、ほんの3ヶ月くらいで連載を再開し2002年に再度打ち切られるまで続けました。単行本は全17巻。「ゴルフ」というあまり少年漫画向けではない題材に「アーサー王伝説」という要素を加えることでうまく盛り上げていた作品です。主人公の名前が「ガウェイン」でライバルが「ランスロット」、これをキッカケに円卓の騎士を覚えたという人も少なくない。

 今でこそ『七つの大罪』やその続編『黙示録の四騎士』で売れっ子漫画家として認識されている鈴木央ですが、『七つの大罪』がヒットするまでは「面白い漫画を描くんだけど、あともうちょっとというところでブレイクに至らない漫画家」として苦しんでいました。ジャンプからサンデーに移って連載した『ブリザードアクセル』と『金剛番長』はそれぞれ10巻以上単行本が出るくらいの人気はあったもののアニメ化するところまで行かずに終了。チャンピオンで連載していた時期もあり、「ジャンプ→サンデー→チャンピオン→マガジン」と四大少年漫画誌を巡礼した末にやっとブレイクを果たしたという特殊な経歴の持ち主です。『七つの大罪』効果で過去作の新装版が発売されたりはしましたが、まさか20年以上も前に終わった初連載作品がアニメ化しようとは……さすがに作者もビックリしているみたいです。ネトフリはこういう常道から外れた真似ができるのがスゴいよな……って、ネトフリで思い出したけど冲方丁が原作、荒川弘がキャラ原案を手掛けるとかいう『ムーンライズ』はどうなったの? 今年は全然続報が来なかったんだけど、来年中に配信が間に合うのか?

SF作家・豊田有恒さん死去 「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」など名作の脚本手がける

 『モンゴルの残光』など歴史を題材にしたSF小説をいくつも手掛けていますが、アニメの脚本で記憶している人も多いのではないだろうか。脚本家デビュー作は『エイトマン』、漫画原作を担当していた平井和正がアニメの脚本も書くことになったものの「一人で全話書くのは労力的に無理だ」と豊田を誘ったのが始まりだったという。ちなみに『エイトマン』の原作は『8マン』だが、TBSサイドが「8は8チャンネル(フジテレビ)を連想させる」という理由でカタカナ表記に変えさせたとのこと。あまり熱心に追っかけていた作家じゃないが、それでも寂しさは感じるな……確か高校生の頃に『遥かなり幻の星』とか『悪魔の城』とか卑弥呼の話とか、何冊か著作を買って積んでいたはずだから今度実家に帰ったら書庫を漁ってみよう。

・原作:うほごりくん、漫画:okamaの『無冠の棋士、幼女に転生する(1)』読んだ。

 前世で男だった主人公(おっさん)が何やかんやで幼女に転生する、いわゆる「TS転生モノ」に当たる漫画です。原作は「小説家になろう」連載の小説ですが、そちら(小説版)に関しては今のところ書籍化されていない。TS転生モノはアニメ化した『幼女戦記』『英雄王、武を極めるため転生す』などがあるものの、ジャンルとして流行っているかどうかは微妙な線だ。特に英雄王〜は幼女の期間が短いから「ぅゎょぅι゛ょっょぃ」が見たい人にとっては物足りなかっただろうし。純粋に「幼女が大暴れする話」を読みたい人には『凶乱令嬢ニア・リストン』あたりを薦めたいところ。幼女じゃなくてもいいなら『TS衛生兵さんの戦場日記』が最近のお気に入りです。

 本書『無冠の棋士、幼女に転生する』は前世でプロ棋士として奮闘したもののタイトルの一つも獲得できないまま世を去った主人公がいつの間にか「空亡さくら」という幼女に転生していた……という、異世界とか魔法とかいった要素のない「現代社会転生」を描く漫画です。意外とTS転生モノは現代社会に転生するパターンが多く、『悪役令嬢、庶民に堕ちる』みたいな悪役令嬢モノもあるし、『美少女にTS転生したから大女優を目指す』『おっさん、転生して天才役者になる』みたいに読んでいなかったら混同しそうなくらい似た設定の作品があったりする。TSじゃない奴だと『ホラー女優が天才子役に転生しました』なんてのもあります。3巻がなかなか出なくて打ち切りかと落胆していたけど、来年1月にやっと出るらしい。500ページ超えとはいえ1001円(税込)という価格設定にビビる。

 話が逸れた。とにかく主人公は双子である空亡姉妹の姉として生まれ変わるのだが、前世の知識と経験はほとんどロストしており、駒の初期配置と動かし方程度しか分からず飛車角桂香落ちの祖父にボロ負けする。残っているのは将棋愛と「今世こそタイトルが欲しい」という渇望だけです。なので転生モノなのに「前世知識で無双する」展開にならず、一からリスタートしステップアップ形式で強くなっていくというやや悠長な構成となっています。妹の桜花は「姉がやっているから」という理由で将棋に興味を持って指し始めるのですが、一瞬で詰み筋を見抜くなど天性の才を有しており、下手するとこっちの方がより主人公っぽい。直感力が優れている反面、記憶力はガバガバで定跡を覚えるのが苦手という欠点もありますが、無理に定跡を覚え込ませようとして苦手意識を植え付けるのではなく、長所を伸ばそうと教え方に工夫を凝らす……といった具合に「妹の育成」要素もあって面白いです。

 「記憶ほとんど残ってないし、これ、前世がおっさんだった設定要るの?」と訊かれたら返答に詰まるところではあるが、逆に言えば「前世からの因縁」云々といったタルい要素に足を引っ張られることなく伸び伸びとストーリーを紡いで行けているので、結果的に「前世の記憶が粗方消失している」という設定にして正解だったかと。題名にそそられない、って方もまずは冒頭だけ試し読みしてみてはいかがだろう。私も最初はそんなに乗り気じゃなく、「okamaさんの新作ならとりあえずチェックしておかなきゃな」と半ば義務感で読み出したが、すぐに購入を決意しちゃった。そう、作画を担当しているのは『CLOTH ROAD』『めぐりくるはる』のokamaなのだ。ヘレン・ケラーの伝記漫画を描いたりライトノベルのコミカライズをしたりオリジナルを手掛けたりと最近も割合いろいろやってるんですが、正直あまり関心が持てなくてどれもチェックしただけで終わっていました。単行本買うのは『CLOTH ROAD』の最終巻以来だから実に12年ぶりだな……幼女描写が巧みだし、ハマリ役だと思います。アニメ化するぐらいヒットするといいなぁ。


2023-12-04.

・FANZAで『プレミアムアーカイブス 山田 一』が500円になっていたので「500円かー……500円!?」と思わず二度見してしまった焼津です、こんばんは。

 田中ロミオがかつての名義「山田一」でシナリオを書いたD.O.のソフト6本を詰め合わせにしたものです。山田一という名義を使う権利はD.O.側に残ったため途中から(『腐り姫読本』の対談に参加するあたりから)筆名を「田中ロミオ」に変えざるをえなかった、という事情がある。厳密に言うと『黒の図書館』と『ドーターメーカー元気いっぱい』は「監修」という肩書で参加していたのだが、「監修と言いつつほとんどのシナリオを自分で書き直すハメになった」なんて例もあるし、実際どの程度関わったのかはよくわからない。逆に『神樹の館』なんかは田中ロミオ名義で出たけどシナリオのほとんどは「希(マレニ)」が書いたんだっけ。ともあれ、『加奈…おかえり!!』と『星空☆ぷらねっと〜夢箱〜』と『家族計画〜追憶〜』(ついでに『そしてまた家族計画を』も)の3本まとめて500円というのは「価格破壊かよ」って安さですので、「田中ロミオは知ってるけど昔の名義のソフトは知らないんだよな〜」って方にはオススメです。たとえ肌に合わなくてもワンコインなら浅手で済む。

 ちなみに、山田一時代の作品は何度かリメイクされているのでそのへんも解説しておこう。山田一名義でのデビュー作『加奈〜いもうと〜』は1999年6月、つまりKeyの『Kanon』と同じ月に発売された。原画は「米倉けんご」、当時の常としてボイスなしである。この作品がヒットしたことで山田一というシナリオライターは一躍有名になり、5年後の2004年には『加奈…おかえり!!』というシナリオはそのままでCGをすべて差し替えたリメイク版も発売されました。原画は「綾風柳晶」、このときにキャラボイスが付きました。なお2010年に発売されたPSP移植版『加奈〜いもうと〜』は米倉けんご版をベースにしつつ全ボイスを再録している。『プレミアムアーカイブス 山田 一』に収録されているのは「ボイス付き」「原画:綾風柳晶」の『加奈…おかえり!!』であり、米倉けんご版をプレーしたい人は『加奈〜いもうと〜 Windows7対応版』を別途購入しないといけません。これもセール中で500円だから別に高くないし、「どうしても最初期バージョンでないと」って人はどうぞ。

 『星空☆ぷらねっと』は山田一(田中ロミオ)がD.O.に入社する前から温めていた企画「魔術大戦」を確実に通すために用意したダミー企画だった(本命の企画書の横にわざと手を抜いた企画書を置くことで本命がより良く見えると計算した)が、「魔術大戦」はどう考えても予算が掛かりそうな企画だっただけに結局『星空☆ぷらねっと』の方が通ってしまったという……発売は『加奈〜いもうと〜』の翌年である2000年、これも声なしだったが3年後に『星空☆ぷらねっと〜夢箱〜』というフルボイス版がリリースされました。

 2001年、山田一名義で出したソフトとしては最後に当たる『家族計画』、地味なタイトルも相俟って発売前はあまり注目されていなかったが、これが山田一時代最大のヒット作となりPS2、PSP、PS3と三度に渡ってCS移植されることになります。2001年の『家族計画』は例によってボイスなしだったけれど、ヒットの影響もあって翌年2002年にはフルボイス化、親父の声がどう聞いてもあの有名声優だと話題になりました。ただ、売り方は汚かった。『家族計画〜絆箱〜』という一種のアペンドディスクとして販売されたのだが、タオルだのマグカップだの余計な物理特典が満載でアペンドディスクなのに6800円(税抜)もしたっていう……箱が大きくて持って帰るのもひと苦労でした。私は秋葉原にあったナカウラの「あんこう」って店で買ったが、店員が奥から出してきたパッケージを見て「マジかよ……」って気分になりましたよ。2005年発売の廉価版『家族計画〜追憶〜』は最初からアペンドディスクの内容を適用したフルボイス版である。その前年、2004年に出た『家族計画〜そしてまた家族計画を〜』はFDのようなもので、本編の後日談めいたシナリオが収録されている。ボリュームは短く、オマケ程度だと捉えた方が精神衛生的には宜しい。2013年には原画を「さめだ小判」に変更したリメイク版『家族計画 Re:紡ぐ糸』も発売されました。これは『プレミアムアーカイブス 山田 一』には収録されていないが、例によってセール中なのでたったの500円です。つまり米倉けんごバージョンの『加奈』やさめだ小判バージョンの『家族計画』を加えてフルセットにしても僅か1500円で済む。安い、安すぎる。ほとんどの人はそこまでこだわらないでしょうから素直に500円出して『プレミアムアーカイブス 山田 一』だけ買えば充分です。どれも20年以上前のソフトなので古臭い印象は否めないでしょうが、どうか気軽に山田一(田中ロミオ)の世界を体験してほしい。そして気が付けば『おたく☆まっしぐら』(シナリオは極上の面白さだけどバグだらけでまともに遊べないソフト)に手を出すガチ勢になっていてほしい。

「FGO」蘆屋道満の生前を描く読み切り、“ありがたい鳥”に祝福された一家の秘密(コミックナタリー)

 『バベルハイムの商人』(古海鐘一のオリジナル漫画)が好きな私にとってはご褒美みたいなもんだよ……というわけで唐突に蘆屋道満を主人公にした読切漫画がTYPE-MOONコミックエースに掲載されました。なんで急に、とは思うものの古海鐘一の新作をタダで拝めるんだから文句なんてないです。サーヴァントとして召喚される前、まだ法師陰陽師だった頃の道満はこんな感じだったんだよ、とお見せしてくれる。道満はいろいろあってサーヴァントとして召喚された後は変質しまくってますからね。「へー、プレーンな道満ってこんな具合かー」と興味深く読むことができました。是非この調子で連作化して単行本を出せるところまで行ってほしいものだ。

 ちなみに『バベルハイムの商人』は無印と『輪典バベルハイムの商人』の2種類がありますけど、簡単に言うと「輪典」の方が完全版です。無印に加筆修正を施して新規エピソードを足したもの=輪典、となっている。特にこだわりがない方は輪典だけ読めばOKです。ただし輪典は電子書籍版のみの販売となっており、紙書籍版はありません。品切になったわけではなく、元から紙版が用意されていないのです。電子版を買うのはイヤ、どうしても紙で読みたい、って人は旧バージョンに当たる無印で妥協するしかないのが現状だ。私も輪典が紙書籍化する可能性に賭けてしばらく待ってみたが、一向に出る気配がないから結局電子版買いました。

「株式会社マジルミエ」TVアニメ化!ファイルーズあい&花守ゆみりが魔法少女に(コミックナタリー)

 マジルミエは好きな漫画なので嬉しいな。2021年から連載を開始した、比較的新しめの作品です。単行本の最新刊は10巻。ジャンプ+で大半のエピソードが無料公開されている(12月12日まで)ので気になる方は直接読んだ方が早い。ジャンルとしては「魔法少女モノ」ですが、幼い女の子が人目を忍んでコッソリ変身し悪と戦う……みたいなタイプではなく自然発生する「怪異」を退治する職業として「魔法少女」が社会に認知されている、という設定です。昔は巫女的な存在が戦っていたため本当にうら若き少女しかいなかったが、技術水準が進歩した現在は社会人女性しか就くことのできない職業になっています。なので魔法少女と言いつつ普通に成人女性が従事しており、ある程度トシが行ってる場合は「マホジョ」とも呼ばれている。頑張り屋ではあるものの努力が評価されず就活に失敗しまくってる新卒の「桜木カナ」は、成り行きで魔法少女企業に入社することになって……と、「お仕事モノ」のカラーが強い一作になっています。魔法少女だけど現代社会が舞台だからデジタルデバイスを多用していて、絵面的にはSFに近いのが特徴か。川上稔作品っぽさを感じるところもある。

 人の役に立つ仕事がしたい、と懸命に頑張るカナちゃんが健気で応援したくなります。フリフリな衣装を纏って魔法少女のコスプレしている社長(♂)が出てくる(コスプレなので実際に戦えるわけではない)など、クセの強い部分もあるけれど全体としてはケレン味の少ない、まっすぐでオーソドックスな成長ストーリーだ。最初の頃は右も左もわからない初々しい新人魔法少女だったカナちゃんが様々な出会いと現場(戦場)を経て立派な魔法少女へ変わっていく展開、シンプルながら胸が熱くなります。進むにつれて政治的な暗闘とか、「単純な対怪異ではなく人間同士で足を引っ張り合うような争い」に突っ込んでいくあたりは好みの分かれるところでしょうが……たぶんアニメではそこまで進まないと思いますし、あまり重くならず程好い気楽さで盛り上がれるでしょう。原作では第二章が始まっており、いろんな意味で第一章とのギャップに驚かされる展開となっている。

 個人的に好きなのはミヤコ堂の魔法少女「葵リリー」。怪異退治専門の企業ではなく化粧品会社の魔法少女部署に勤務している(怪異が自然発生する世界なので大き目の企業は怪異対策を行うことが義務になっている)人で、会社が会社だけに「美しく在ること」が重要になってくるという変わり種です。「こういう魔法少女も存在するんだ……!」とカナちゃんの視野が広がっていくのであのへんのエピソードは気に入ってますね。あと、魔法少女が主力だから男キャラはどうしても後方支援に徹する役割となりますが、みんな魔法少女たちを支えようと必死になっているので男衆も結構好きだったり。

「戦姫絶唱シンフォギア」劇場版の制作を発表、新プロジェクト名も明らかに(コミックナタリー)

 劇場版だとォ!? 儀礼的に驚いてみたが「たぶんやるだろうと思ってた(期待していた)」というのが本音です。一応XV(5期目)で完結ということにはなってるけど、人気のあるシリーズだから公式サイドもまだ続けたいんでしょう。無論私もまだまだ付いていくつもりなので楽しみである。しかし、来年でXVから5年になるってマジ……? まだ3年も経ってないイメージなんですけども。

 あと私はプレーしていなかったので特に思い入れはないのだが、アプリ『戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED』は2024年1月31日にサービス終了する模様。2017年6月開始だから6年半、アプリゲーとしては割と続いた方なんじゃないでしょうか。いろんなところとコラボしてたゲームってイメージが強いです。いろんなところとコラボするゲーム、と言えばラスバレこと『アサルトリリィ Last Bullet』はもうすぐ3周年か。ゲームパートはもう全部オートで流していてリザルト画面しか見ないような状態だが、シナリオパートのノリが好みで続けてるんですよね。調べてみるとシンフォギアXDはもともとポケラボが運営していたアプリらしく、途中からキングポーンへ移管されている。シンフォギアのシナリオを担当している金子彰史が移管後の対応について「素晴らしくクオリティがアップしました!」と褒めちぎっているところを見るに、ポケラボ時代はよっぽど……だったようだ。ポケラボというのはラスバレの運営なんですが、手掛けていたゲームのほとんどはサービス終了か運営移管になっている。なので現在運営しているタイトルはラスバレとシノアリスのみ。シノアリスもサービス終了が予告されているので来年からラスバレ一本になります。う〜ん、メモリアシナリオとか結構積んでるけどそろそろ崩しに掛かった方がいいかな。

「プリティーシリーズ」新作TVアニメが来年4月放送開始、続報は1月に(コミックナタリー)

 『ワッチャプリマジ!』のアニメが放送終了した2022年10月以降、ずっと途切れていたプリティーシリーズのTVアニメ(WEBアニメだと『アイドルランドプリパラ』配信中)が遂に再始動する……! 下手するとあのままプリティーシリーズの展開が止まってしまうかも、と心配だっただけにホッとした。何せ11年半に渡って続いた(初期三部作が2011〜2014年、プリパラ二部作が2014〜2018年、キラプリが2018〜2021年、プリマジが2021〜2022年)アニメ放送枠が「一旦」という但し書き付きとはいえ消滅してしまったんですもの、不安にならないわけがない。

 今のところ新作のタイトルや内容については不明ながら、「新シリーズ始動!」と銘打っているからにはプリマジの2期とかではないのだろう。少し残念ではあるが、ワクワクするってことに変わりはない。しかし、PV観ていて衝撃受けたのは来年で『プリパラ』放送開始から10年になるって事実ですね。感覚的にはせいぜい5年前くらいかと……私は放送開始と同時に視聴したわけでなく、途中から観始めたので2014年はまだタイトルしか知らない状態だったはず。周りが盛り上がっていることは認識していたけど、当時はプリティーシリーズ未履修のため尻込みしてしまった。もう記憶がだいぶ曖昧になってきているけど、だいたい30話前後、つまり2015年になってから気まぐれで最新話を視聴して「なんだこのヤバいアニメは!?」とようやく気づいてハマりましたね。変則的な入り方をしたせいで、語尾に「ぷり」付けてる子と委員長が同一人物だと理解するのにしばらく掛かったという。待ち切れないし、久々にプリパラを視聴し直そうかな。

・恩田陸の『puzzle パズル』読んだ。

 こないだ『生存者、一名』の感想を書いたときに言及し、「そういえばまだ読んでなかったな」と思い出して何となく読みたくなり、実家の書庫を漁って発掘してきました。『生存者、一名』と同じく2000年10月の刊行なんで23年物の積読だ。かつては人が住んでいたけど過疎化の末に放棄された無人島「鼎島」で3人の男性の遺体が発見される……と、オープニングが『生存者、一名』に似通っている。それもそのはず、『生存者、一名』や『puzzle パズル』はかつて400円文庫で「無人島」というテーマのもとに競作した書き下ろし作品なんです。無人島テーマの書き下ろし作品は他に近藤史恵の『この島でいちばん高いところ』と西澤保彦の『なつこ、孤島に囚われ。』があり、この4つを一冊にまとめた『絶海』というアンソロジーもありました。現在400円文庫のほとんどは新品で入手することができず、古本屋を利用するか電子書籍を買うかのほぼ2択といった状態ながら『puzzle パズル』に関しては例外的に今でも新品が売られている。すごいな恩田陸パワー。ただし381円だった本体価格は今や460円と2割以上も高くなっており、否応なく物価の上昇を実感させられます。本当に文庫本は高くなった……実家の書庫を漁っていると80年代の海外翻訳小説とか出てくるんですけど、価格が500円代で「安すぎる!」と叫びたくなります。先日、カドカワの新刊をチェックしている最中『カラス殺人事件』というミステリが目に留まり、2200円(税込)だから「ハードカバーの海外物にしては安いしソフトカバーかな?」ってよく見たら文庫本で絶句してしまった。もう文庫の翻訳物が2000円の時代なのかよ……さすがにこれは例外的な事象で、ハヤカワとか創元の翻訳文庫はまだ1000〜1500円くらいですけど、その2社も追随する日は遠くないのかもしれない。

 鼎島で見つかった3人の男性遺体はそれぞれ死因が別々であった。ひとりは廃墟と化した学校の中で餓死、ひとりは廃墟と化した映画館の中で感電死、ひとりは廃墟と化したビルの屋上で墜落死。解剖の結果全員がほぼ同じタイミング(誤差2日もない程度)で亡くなっていると判明し、「いったい何が起こったらこんなことになるんだ」と捜査に携わった警察官たちは困惑する。無人島ながら廃墟マニアに人気があるスポットなので人の行き来は割とあり、「たまたま不慮の死が重なった」可能性もゼロではないにしろ、あまりに不可解すぎる。餓死はまだしも、無人島になった時点で送電を切られた映画館でどうやって感電死したのか、ビルの下ならともかくビルの屋上へどうやれば墜落死するのか、皆目見当がつかない。不可思議な事故か、手の込んだ自殺か、何者かの仕掛けた殺人か、それとも人知の及ばぬ超常現象なのか……島に上陸した検事「関根春」は同僚の「黒田志土」とともに謎へ挑む。手掛かりは、遺体から発見されたいくつかの「コピー用紙に印刷された記事」だったが……。

 本文はちょうど150ページ目で終わっているが、400円文庫は1ページあたりの字数が少ない(35字×13行で最大455字、ライトノベルでも40字×16行の最大640字くらいはあるから3割近く少ない)ため一般的な文庫に換算すると120ページ切るくらいのボリュームになるのではないかと思われます。中編サイズなので割とあっという間に終わる。物語は「T piece」「U play」「V picture」の三部構成になっており、「T piece」は遺体から発見された記事の内容を羅列し、「U play」は春と志土が現場検証に励む様子を描き、「V picture」は過去に遡って「鼎島で何が起こったのか」という真相を開示する。バラバラすぎて繋がりがまったくわからない記事群、現場検証してもまったく見つからない手掛かり、あまりにも掴みどころのない状況に呆然としてしまうが、なにぶん尺が短いから急転直下で真相解明編に突入していく。「そんなんアリかよ!」って真相なので真面目に推理していた人は本を壁に叩きつけたくなるかもしれない。が、少なくとも「宇宙人にアブダクションされかけて藻掻いた結果UFOから墜落してビルの屋上に叩きつけられた」とか「電気を発生させるサイキックパワーが暴走して自ら感電死してしまった」とかそういうレベルの無茶苦茶ではなく、あくまでミステリというジャンルに留まる範疇内での「そんなんアリかよ!」なんで程好く唖然としたい方にオススメです。恩田陸特有の「開幕段階ではすごくワクワクするのに、終幕へ向かうにつれて尻すぼみになっていく」アレは健在にせよ、短い作品なので落胆の度合いはかなり少ない。恩田陸の作風に慣れたいというか耐性を付けたい人にはちょうど良いかもしれません。ワクチン感覚で読むべし。


2023-11-28.

『クロスアンジュ』が来年で放送10周年を迎えると聞いて「もうそんなに経つのか……」と遠い目をしてしまった焼津です、こんばんは。

 クロスアンジュ、正式なタイトルは『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞(ロンド)』ですが、このアニメは2014年10月に放送を開始――つまり秋アニメとして世に出ました。制作はサンライズとキングレコード、原作を持たないオリジナルアニメです。ジャンルに関しては作中(次回予告)で「美少女ロボットアニメ」と自称している。「マナ」というエネルギーを操る特殊能力が一般化した社会、マナを操ることができない人間は「ノーマ」と呼ばれ迫害されていた。ヒロインの「アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギ」はミスルギ皇国の第一皇女として何不自由ない生活を送っていたが、16歳の誕生日に皇太子(兄)によって「彼女はノーマだ!」と暴露され、身分剥奪のうえ追放されてしまう。かくしてただの「アンジュ」へと落とされた少女の苦渋に満ちた日々が始まった……という、今で言う「追放モノ」みたいなストーリーが繰り広げられるわけですけれど、1話目のラストで裸に剥かれた主人公が股間から出血しながら呆然と涙を流すシーンが映る「最初からクライマックス」な展開で視聴者の度肝を抜いた。「アニメ版『女囚さそり』」とも謳われ、あまりにもガラが悪いアンジュの言動によって彼女が元皇女であることすら忘れてしまう人も後を絶たなかった。毀誉褒貶は激しかったものの、「先の展開が読めない」という点では肯定派も否定派も意見が一致していました。

 完結後にゲーム版が出た以外は目立った新展開がなく、だんだん話題に上る機会も少なくなっていった作品ですけれど、「アンジュ役を務めた水樹奈々の演技はすごかったな〜」「あのメタネタ満載で巫山戯過ぎな次回予告はどうにかならなかったのか」と折に触れて思い返す忘れがたき珍作みたいなポジションに収まっていきました。2クールアニメなので作画がちょっとアレになる回もあったものの、声優陣が豪華なこともあって飽きることなく最終回まで追いかけることができたな。シリーズ構成はレヴュースタァライトで有名な「樋口達人」、最近だとウマ娘3期の脚本を書いてますね(第3話「夢は終わらない」と第5話「自分の証明」)。ちなみにクロアンと同じクールで放送されたアニメは『甘城ブリリアントパーク』『異能バトルは日常系のなかで』『俺、ツインテールになります。』『ガンダム Gのレコンギスタ』『グリザイアの果実』『四月は君の嘘』『SHIROBAKO』『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』『魔弾の王と戦姫』『結城友奈は勇者である -結城友奈の章-』など(50音順)。グリザイアは三部作やり切って現在ファントムトリガーのTVアニメ化も控えているが、俺ツイは作画が力尽きていたこともあってか負の方向で話題になってしまい、劇場版とか2期とかは来なかったのが残念だ……原作は大団円を迎えたし、去年は10周年記念で未来から主人公の娘がやってくる特別編も出してくれたけど、やっぱりアニメの続編が観たかったです。アニメ化された範囲は原作の4巻までなんですが、5巻が映画化を希望してしまうくらい面白いんですよ。当時の日記読み返すと「読むのに熱中しすぎて昼食抜いた」みたいなこと書いてある。「アニメは観たことあるけど原作読んだことないな〜」って方は機会があればどうぞ。「アニメも観たことないや」って方はせめて1話目だけは視聴してみてほしい。作画のことでいろいろと言われたアニメですが、1話目の出来は良かったんですよ……それだけに落差が目立つ形となってしまったわけでして。もう少し評価されていいと今でも思っています。

藤原ここあ「かつて魔法少女と悪は敵対していた。」TVアニメ化、制作はボンズ(コミックナタリー)

 少し泣いてしまった。リンク先の記事にも書かれている通り、「まほあく」こと『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』は2013年から2015年にかけて“ガンガンJOKER”で連載されていた4コマ漫画です。御存知ない方は「随分と前の作品じゃないか、それを今頃アニメ化するの?」って不思議がるかもしれません。作者の藤原ここあは「まほあく」の前に『妖狐×僕SS(いぬぼくシークレットサービス)』という作品で人気を博しており、当時のファンたちからは「いぬぼくに続いてまほあくもアニメ化されるのではないか」と大いに期待されていました。しかし2015年、藤原ここあの訃報が突然伝えられ、まほあくの連載も中止となってしまった。絶筆となったまほあくの3巻はシリーズ外作品を収録してなお100ページちょっとしかなく、その「続くはずだったものが理不尽に断ち切られた」ことを示す薄さに我々は涙したものです。

 人気があった(2巻の時点で累計40万部を超えていた)とはいえ、作者急逝によって未完となった作品だけに今後映像化することはないだろう……と半ば諦めていました。予期せずこんなニュースが舞い込んできたらそりゃあ少しは泣いちゃいますよ。シリーズ構成と脚本を担当するのは「綾奈ゆにこ」、バンドリのアニメに初期から関わっている人で、最近だと『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』が話題になっていましたね。原作が未完だからラストの展開はアニメオリジナルになると思われますが、綾奈ゆにこなら……綾奈ゆにこなら何とかしてくれる、はず。声優のキャストはまだ後悔されておらず、ドラマCDの面子(小野友樹、中原麻衣など)から変更になるのかそのままスライドするのか気になるところだ。

 結局いぬぼくのアニメ2期は来なかった(ストーリー構造が複雑な作品だし、2期に関しては原作者も乗り気じゃなかったから仕方ない面はある)が、こうして藤原ここあ原作のアニメを新たに拝める日が来ようとは。世の中まだまだ捨てたものじゃない。あと、まほあくとは関係ないけど「かつて敵対関係にあったカップルの話」と言えば少し前に『組織の宿敵と結婚したらめちゃ甘い』というのがあったな。冷たい眼差しで敵意を向け合っていた者たちがいろいろあって熱々イチャイチャのバカップルになるの、ギャップ物ジャンルの中でも好物の部類である。

・FGO、ぐだぐだイベント2023クリスマスイベント2023の開催を告知

 このスケジュールだと奏章Uは来年以降になりそうかな。というか「昭和キ神計画 ぐだぐだ龍馬危機一髪! 消えたノッブヘッドの謎」(2021年開催のぐだイベ)から派生したイベントである「CBC2023 カルデア重工物語 〜君と僕のBtoB〜」(舞台が昭和キ神計画と一緒)を今年の3月に開催したから「新しいぐだイベは来年かも」って思ってましたよ。まさか年に2回もぐだぐだ系イベントを楽しめるとは、望外の喜びである。

 まだイベントタイトルや新規実装サーヴァントは公表されておらず、恐らく29日配信予定の「Fate/Grand Order カルデア放送局 ライト版 〜ぐだぐだ2023〜」で明かすつもりなのでしょう。開発が間に合わない、直前で不具合が見つかった、などの理由がなければ開催は「この後すぐ!」のパターンだと予想される。これまでのぐだイベは、2015年の本能寺、2017年の明治維新、2018年の帝都聖杯奇譚、2019年のファイナル本能寺、2020年の邪馬台国、2021年の昭和キ神計画、2022年の新邪馬台国、そして今年3月のカルデア重工物語(昭和キ神計画の続き)といった具合に、「戦国時代」「幕末」「昭和」「弥生時代」と大まかに4つの時代区分のいずれかに該当するストーリーが展開されてきました。ややこしいけど昭和キ神計画は「明治維新が起こらなかった代わりに昭和維新が起こっている埼玉」が舞台なので実質幕末モノです。また、邪馬台国を舞台にしたイベントも、区分的には弥生時代なんだけど「新選組の因縁を決着させるストーリー」だったり「戦国時代の恨みに起因するストーリー」だったりするため実質幕末モノを兼ねていたり実質戦国時代モノの様相を帯びていたりするため一筋縄では行きません。〇〇時代が舞台だからといって〇〇モノとは限らない、その融通無碍な内容がぐだイベの魅力でもあるわけですから。

 「新選組の隊士は揃ってきているのに未だに近藤勇がいない、いよいよ近藤さんメインのイベントが来るのでは?」とか「来月に経験値(ぐだイベの中心的存在)の新刊『ぐだぐだ太閤伝ZIPANG』が発売されるからそれに合わせて秀吉実装だろう」とか「欧州死徒戦線を諦めない」とかいろいろ言われていますが、ぶっちゃけ「何が来るか全然わからない」というのが本音です。「邪馬台国で闇の新選組と戦う」とか「新邪馬台国でぶっちぎり茶の湯バトルする」とか、事前に予想できる方がおかしいでしょ。私は大穴狙いで「飛鳥の空を越えて ぐだぐだ大化の改新〜イルカヘッドを追え〜」と予想しておきます(刎ねられた蘇我入鹿の首が遠くまで飛んで行ったという伝承が各地に残されている)。ピックアップ☆5はトリトンみたいにイルカに乗ったライダー「蘇我入鹿」、ピックアップ☆4はアーチャー「中臣鎌足」、配布は☆4キャスター「聖徳太子」で。与太はともかく、ぐだイベの熱烈なファンとして知られる漫画家「ピロヤ」原作のアニメ『でこぼこ魔女の親子事情』放送中に新規ぐだイベが開催されるとは、また数奇な巡り合わせだ。

 そしてクリスマスイベントの新規開催は久々ですね。FGOのクリスマスイベントはボックスガチャ形式で開催されるのが習わしとなっており、素材に飢えているマスターたちが必死になって周回するので「周回の邪魔にならないように」との配慮なのかイベントシナリオそのものは小規模なものになる傾向が強かった。2015年の「ほぼ週間 サンタオルタさん」、2016年の「二代目はオルタちゃん」、2017年の「冥界のメリークリスマス」、2018年の「ホーリー・サンバ・ナイト」、2019年の「ナイチンゲールのクリスマスキャロル」、2020年の「栄光のサンタクロース・ロード」、2021年の「メイキング・クリスマス・パーティー!」と、一昨年までは毎回新規イベントが開催されていたが去年は「栄光のサンタクロース・ロード」を復刻したのみで新たなクリスマスイベントは行われませんでした。年末っていろいろと忙しいし、クリスマスイベント自体を廃止したがっているのでは……と見る向きもありましたが、2年ぶりの開催が確定して「きっとボックスガチャが来る!」とマスターたちも湧き立ったわけです。これまでのクリスマスイベントには必ずサンタ系の配布サーヴァントがあったので、もしぐだイベにも配布サーヴァントがあるなら「二連続で配布鯖が貰える」という美味しい状況になります。今年は誰がサンタになるのだろうか。「トラオムクリア」が条件なのでトラオムに登場した誰か、という線が有力です。ただトラオムは登場キャラがかなり多いので絞り切るのは困難。私はテキトーにサンタ張角と予想しておこう。黄色そうなサンタだな……ピックアップサーヴァントに関しては「予測不能」としか言いようがない。FGOのクリスマスイベントってサンタ化するのは配布だけで、ピックアップの方は普通のサーヴァントってのが通例だった。実はFGOってソシャゲにしては「季節系の衣装が少ない」アプリなんですよ。ジャック・ザ・リッパー、ナーサリー・ライム、イシュタル、エレシュキガル、ブラダマンテ、アストルフォ(セイバー)、ヴリトラと、過去の面子を振り返っても特に規則性らしきものは見出せない(強いて言えばランサーが多い?)。一昨年の「メイキング・クリスマス・パーティー!」に至っては新規実装0だった。今年のクリスマスイベントも配布だけで新規サーヴァントはいない可能性あります。何であれ、夏イベントで枯渇した石もだいぶ貯まってきて来年の2月か3月くらいには天井分までイケそうだから私は引き続きガチャ禁に励みまする。

・小林泰三の『セピア色の凄惨』を読んだ。

 積読の整理をしているときに見つけ、なんとなく読み出して気が付いたら読み切っていた一冊。奥付を確認すると発行日は「2010年2月20日」、つまり13年物の積読である。さすがに30年物の積読はない(と思う)が、20年物ならゴロゴロしている私の蔵書においてそこまで珍しい本ではない。文庫書下ろしとして発行された一冊であり、増刷されたかどうかは知らないが新装版とかは出ていないので現在はやや入手困難になっている模様。電子版があるので今ならそっちがオススメかな。

 作者の「小林泰三」はホラー、サスペンス、ミステリ、SFといった様々なジャンルで活躍した人です。既に故人(2020年没)ですが、最近でも『人獣細工』『AΩ』など過去の作品の新装版が刊行されている。来月には『肉食屋敷』の新装版も出る予定。ちなみに「泰三」は「たいぞう」ではなく「やすみ」と読みます。小林泰三(こばやし・たいぞう)という字がまったく同じで読み方の違う人物が別ジャンルにおられるので注意。さて、そろそろ作品紹介に移りましょう。『セピア色の凄惨』は「わたし」が探偵事務所を訪問するシーンから始まる。その探偵は「わたし」の前で居眠りをかますなど非常にやる気がなさそうな態度で、本当にここで大丈夫なのかどうか不安に駆られたものの、迷った末に人探しを依頼する。捜してほしい人物は「レイ」という女性。レイは「わたし」にとって友人、いや親友と言って良い存在だったはずなのだが……なぜか記憶が薄れていて名字が何だったのか、どこに住んでいたのか、細かいことが一つも思い出せない。手掛かりが少なすぎる、とボヤく探偵だったが、「わたし」から渡された4枚の写真をもとに調査していくことを約束する。果たしてレイは存命なのか、それとも……。

 物語は「『わたし』と探偵の遣り取り」と「探偵の報告書」を交互に掲載する構成となっており、探偵は「わたし」が告げた4枚の写真にまつわる断片的な記憶――線香花火がうまく点かなくて何度も点け直した小学校低学年くらいの記憶、川まで水を汲みに行った中学生か高校生の頃の記憶、知人の結婚式でレイが花嫁のブーケを取る際に他の女性にぶつかった記憶、レイの小さな兄弟?と一緒に祭りの夜店に行った記憶――だけを拠り所に、それぞれの写真に映っている人物のところに聞き込みへ赴く。被写体となった人物たちはハッキリしたことは思い出せない、と言いながらもレイという名前に僅かな反応を見せる。通常のミステリであればここから少しずつレイの情報を集めていって彼女の人物像や生い立ちが徐々に明らかになっていくとか、そういうわかりやすい展開になるはずなんですが、本書は脱線の嵐でみんながみんなレイとは全然関係ない話をし始める。いくら読んでもレイがどんな人物なのかまったくわからない。「こんな報告書、いくら読んでも意味がない!」と怒る「わたし」同様、進めば進むほど読者も困惑の度合いを深めていくことになるだろう。不鮮明で色褪せた写真から出発する、奇妙に生々しくて常識から逸脱した述懐の数々。「セピア色」という風化のイメージに抗うビビッド且つ不可解な光景の群れが読者の精神を蹂躙する。

 一応最後にオチはつくが、それがこの作品の本質というわけではない。「提示された謎が解決される過程を楽しむ」というミステリみたいな構造をしているわけではなく、「大方としては理解不能なんだけどほんの僅かに理解できてしまう」異形の感覚に震えるホラーです。一つ目の報告書「待つ女」の時点で既におかしな事態となっていますが、それは序の口に過ぎない。圧巻なのは二つ目の報告書「ものぐさ」、度を越した面倒臭がりでほとんど家事をしたがらず家がだんだんゴミ屋敷になっていった女性の証言を綴っているのですが、頭がおかしくなりそうな内容で「これは小説以外の形式で表現するのは困難だな」と呻きました。三つ目の報告書「安心」は不安症が常態化して「悪い想像を実際に試してみないと安心できない」心理に囚われてしまった女性が破壊試験じみた日々を送るというものであり、エグいことをあまりにも淡々と書いているので「ひょっとしておかしいのはこれに衝撃を受けている自分の方なのか?」と懐疑が己に向かって行ってしまう。最後の報告書「英雄」はだんじりに命を懸けている町というハナっからフルスロットルで常軌を逸した社会を描いており、もはや薩摩のぼっけもんが理性的に見えてくるぐらいです。正直レイ云々がどうでもよくなるレベルで各報告書の内容が凄いので、「他人の悪夢を覗き見たい」という方にはオススメしておきたい。「安心」は動物がヒドい目に遭う描写があるため「人間が死ぬのは平気だけど犬や猫が可哀想なやつはちょっと……」って方は避けましょう。ヒドい、と思いつつ少しだけ気持ちがわかるのが怖いんだよな……私って推しのキャラが極限状況に追い込まれるとテンション上がるタイプなので。「推しにヒドい目に遭ったり曇ったりしてほしいわけではないが、極限状況へ放り込まれた推しが苦難に対しどう処するのかは見たい」んですよ。

・拍手レス。

 一瞬、佐藤賢一が死亡!?に見えたけど、どっちにしろショックが半端ない。酒見賢一は兼業作家だったので本業引退したあとの余生にバンバン新作出ると期待していたんだけどなぁ...個人的には小説よりも『中国雑話』みたいなエッセイがサクサク読めて好きでした。

 『中国雑話 中国的思想』、私も好きです。酒見さんの本は『聖母の部隊』以外だいたい買ってます。電子化してるし、他の積読を読み切ったら『聖母の部隊』購入しようかな。



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