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2026-09-05.

・『ブルーアーカイブ』が「ダイビング部」という新メンバー追加で盛り上がっていて、「久々にログインする……かぁ」とランチャーを立ち上げたものの、なぜか連携が切れていて危うくアカウントを作り直すところだった焼津です、こんばんは。

 面倒臭がってYostar IDを作成せず、引継コードの発行もサボっていた(ブルアカの連携コードはFGO等と一緒で、一度使うと初期化され無効になるタイプ)せいで「終わりだ」と一護顔を晒してしまったものの、ダメ元で「スタえも〜ん!」とYostarの問い合わせ窓口に泣きついたところ「これから起こることはすべて偶然だ! だから2度とこんなことが起こるなんて思うなよ」と温情措置で引継コードを発行してくれたので何とかアカウントを復旧することが出来ました。即座にYostar ID作って同じことが起こらないよう対策したのは言うまでもない。とにかくブルアカやってる人はYostar IDを作っておくこと、それがイヤなら最低限端末を変えて引継コードが初期化されるたびに新しい引継コードをちゃんと発行しておく事をオススメいたします。

・鋼我の『汝、現代ダンジョンに希望を持つべからず(1〜2)』読んだ。

 いわゆる「現代ダンジョン」モノ。異世界を舞台にしたファンタジーではなく、「現実によく似たパラレルな世界」に突如ダンジョンかそれに類するモノが生えてくる話です。結構前からあるジャンルで、海外作品の『俺だけレベルアップな件』あたりが有名だろうか。あれの連載開始が2016年なんで、少なくとも10年前の時点で存在していた分野ではある。日本の書籍化作品だと、アニメにはなっていないが『Dジェネシス』らへんがブームの火付け役という印象を受ける。さておき、この『汝、現代ダンジョンに希望を持つべからず』はもともと小説作品としてではなく、AA(アスキーアート)作品として2ch(当時)に投稿されていた「やる夫スレ」の一種です。元のタイトルは「現代ダンジョンに希望を持つのは明らかな間違い」で、詳しい事は作者本人が語っているのでそちらを参照してください。1巻のあとがきによると知人の作家(道造、『貞操逆転世界の童貞辺境領主騎士』の作者)から強く勧められて小説化する事にしたらしい。

 世界各地にダンジョンが発生するようになり、土地の所有者は「ダンジョンの管理を適切に行う事」が義務化された。その結果、管理義務を放棄して逃げ出す人間が続出。俺こと「入川春夫」は知人から買った物件の敷地内にダンジョンが発生している事を知り、管理者となる以外の道が閉ざされてしまった。あの野郎、ダンジョンの事は黙って売りつけやがったな……! 怒り狂うも時既に遅し、知人一家はとうに夜逃げしていて連絡がつかず、役人相手にゴネても仕方ないので渋々と管理を始める。会社をやめ、黙々と「ダンジョンブレイク」――ダンジョン内に収まり切らなくなったモンスターが地上に溢れ出して人々を襲い、街を破壊して回る災害――を防ぐための間引き作業に従事する日々。体に鞭打って雑魚エネミー「こけ玉」を加工し、ゴミ袋いっぱいに詰めて持って行っても、たったの300円にしかならない! お先真っ暗かと思いきや、後輩の美男美女兄妹が住むところもなく困窮していると連絡してきて、大きな転機が訪れる……。

 主人公の「春夫」という名前にやる夫スレ時代の名残りを感じますね。ダンジョンで採取したモンスター等を所定の手続きに沿って売却し利益を得る「ダンジョンカンパニー」の設立、を主眼とした現代ダンジョンモノであり、バトル要素こそあるものの冒険要素は少なく、2巻までの範囲だと主人公はそこまで強くならない。というか1巻の表紙を見てください、でけーオッパイの下で透明な大盾(強化プラスチック製)を構えている作業服の男がいるじゃないですか。これが主人公です。ほぼモブ。しかしオッパイ露出しすぎだろ、この表紙! 口絵のイラストもスゴすぎて「うぁぁぁ ち…痴女がホムセンを練り歩いてる」って反応になってしまった。Web版を読むとわかるが当初の設定では肌を露出しておらず、「中東か南アジアか、ふわりとした占い師めいた衣装。緩やかであるが、彼女のスタイルの良さがそれでもわかる」程度の描写に留まっており、「乳輪はどうなってんだ乳輪は!」と言いたくなるあの格好は書籍版オリジナル要素です。イラストレーターの提案であそこまで露出度が高くなった模様。ちなみにイラストレーターは「みやま零(ぜろ)」です。『彼女たちの流儀』とか『織田信奈の野望』のイメージが強かったから、最初見た時はわかんなかったですね……今はこんなタッチなんだ。

 地道に頑張って少しずつダンジョンカンパニーを軌道に乗せていく、あまり派手さのない現代ファンタジーなので、「こういうチマチマと仕事を頑張る感じのラノベ好き」って人以外にはなかなかオススメしにくいシリーズだが、私は面白いと思いました。オッパイで釣ろうとするのが露骨すぎて、2巻の表紙を確認した時は「これをレジに持っていけってのかよ!」って気分になりましたが。幸い見つけた書店がセルフレジのところだったんで助かった。ただまぁ、イラストで釣ろうとしているだけで、本編はそんなにお色気シーンないです。1巻表紙の右側に映ってるちょっとチャイカっぽい銀髪の子、一見ヒロインっぽいけど主人公に対しては「人としての好意」を抱いているだけで、「異性としての関心」はほぼゼロ。文中でお兄様(この子の実兄)に性欲を向けている事が明示されており、「ヨスガっちまうのか?」という一抹の不安が漂う。2巻表紙の赤髪ハイレグ巨乳さんも登場シーンは少なく、一応「フラグが立ってる」と言えなくもないが……このままだと恋愛面はほぼほぼ進展しそうにない雰囲気だ。作者は別に恋愛アンチではないのでここから恋愛面も盛り上がっていくハズなのだが。鋼我……信じてもいいんだよな……?

 面白いし読み応えるあるが、かなりのんびりしたペースで進む物語のため、気長に付き合った方が良さそうです。「現代ダンジョンかぁ、今はそんなに興味ないんだよな」って人はアニメ化でも決定するまでしばらく置いといてもいいかも。ちなみにコミカライズは既に開始まっています。ダンジョン自体にもいろいろ設定がありそうだし、後輩兄妹の出自もいろいろと特殊そうなんだけど、あくまで「匂わせ」程度で済ませている。まだ物語全体で見ると序章の段階ってムードなんですよね。とにかく続きが楽しみなので打ち切りだけは勘弁です。カラーイラストはオッパイもいっぱいなので「大いなる乳には大いなる乳輪が伴う」という信条の人以外にはオススメ。

『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』観てきました。

 面白かったけど、「叛逆から13年は時間掛け過ぎだろ!」ってのが偽らざる感想ですね。まぁパンフレット読むと企画成立までスゴく難航したんだな、ってのはよくわかりますが……ちなみにワル天のパンフレットは通常版と特装版があり、違いは値段と「カバーが付いてるかどうか」だけです。中身は一緒だから「カバー要らない」って人は通常版でいいと思います。ただ、価格差は200円なんで迷うなら特装版を買った方がいいかもしれない。というか、なんでわざわざ通常版と特装版に分けたんだろ……いちいち確認しないといけないので劇場のスタッフもちょっと面倒臭そうにしてたぞ。

 なるべくネタバレは避けて書いていきますが、まだ見てない人はいろいろ察してしまうかもしれないので注意してください、と前置きしたうえで。ワル天の企画自体は2014年、叛逆公開の翌年にはスタッフたちが「続編を作りたい」と動き出していたようで、脚本の虚淵玄もこの頃に取り掛かったと云う(プロットも2014年の時点で受け取った、という新房らの証言あり)。虚淵自身はノーアイデアだったが、魔女空間の設計や各魔女の設定制作を担当していた「劇団イヌカレー」が大量のアイデアスケッチを描いていた事もあり、「これを拾って組み立てよう」と今回のストーリーの根幹である「名塚底根(なづかそこつね)」などを採用して翌年2015年には初稿を脱稿。これを叩き台にして新房やシャフトが新作に取り掛かる……ハズだったが、ここから制作方針を巡って二転三転したようです。そもそも映画でやるのかTVシリーズとしてやるのかもハッキリしておらず、一時期は「前後編の映画にする」という案もあったらしい。虚淵の初稿をもとに他のライターにリライトしてもらったりもしたがどうにもしっくり来ず、「やっぱり虚淵の初稿を使おう」と原点に立ち戻るまで相当な時間を要したとか。『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(2021年公開)の監督・古川知宏が「絵コンテ/ビジュアル・コンセプトデザイン」という役職で起用されたタイミングを考えると、本格的に動き出したのは2020年あたり? 制作発表が「2021年4月25日」、準備段階が長かっただけでアニメ本編の制作期間は5年未満だと思います。

 封切り前に公開されていた情報は、今回新たに2人の魔法少女が登場するって事ですね。2人のうち、黄緑の髪をしている眼鏡っ子が「紫丁香(シ・チョウカ)」。国籍は不明ですが、恐らく中国か台湾でしょう。外伝の『マギアレコード』には「純美雨(チュン・メイユン)」という中国系の魔法少女もいたが、先にハッキリ書いておくとワル天の初稿が上がったのはマギレコよりも前なので両者に直接的な繋がりはありません。ただ、マギレコは虚淵が関わっていない代わりにイヌカレーが結構関わっている(シナリオを書いたイベントもある)んで、イヌカレーのアイデアを元に組み立てたワル天とも微妙に通底する部分がある。「あっ、これマギレコゼミでやったところだ!」ってなるところもあれば「それだとマギレコの設定とコンフリクトしない?」って箇所もあり、マギレコが補助線にもノイズにもなる映画です。話を戻すと紫丁香、生真面目な委員長タイプで、好き勝手に振る舞う仲間たちに振り回される苦労人ポジション。磨伸映一郎が好きそうと思った。声優は「若山詩音」、リコリコのたきな役で有名。最近だと『無職転生』のナナホシ役で凄まじい絶望の演技をかましてましたね。

 丁香ちゃんが手を焼く魔法少女が「セルマ・テレーゼ」、CVは「黒沢ともよ」。デレマスの「赤城みりあ」役や『響け!ユーフォニアム』の「黄前久美子」役で有名な人。子役出身で、人気声優なのにドル売り(アイドルみたいなイメージで売る事)はしていない。最近だとジークアクスのマチュ役で話題になった。天真爛漫と言えば天真爛漫、不真面目と言えば不真面目な性格。叛逆の物語ではほとんど出番のなかった「百江なぎさ」と仲良くなり、一緒に遊園地で遊ぶシーンも挿入されます。今回の映画で私が一番気に入ったキャラはこのセルマちゃんですね。どこが気に行ったのか詳しく説明するとネタバレまみれになるのでもう少し待つ事にします。

 本編の魔法少女5人組はもちろんのこと、今回は百江なぎさの出番もそこそこ多かった。ぶっちゃけ虚淵はなぎさに関して「お菓子の魔女(シャルロッテ)の人間時代」という設定くらいしか作っておらず、叛逆時点での掘り下げはなきに等しかったが、マギレコでは「なぎさが魔法少女になるまでの経緯」を描いたイベントも開催された事があります。イベント名は「百江なぎさは願いを叶えた」、シナリオはイヌカレーの泥犬が執筆。「あくまでマギレコ時空の出来事であり、本編とは異なる可能性がある」旨を前置きしたうえで母の愛に飢えていたなぎさが「願いを叶える」様を描く。

 マギレコもまどドラもやってなくて叛逆のなぎさしか知らない人にとっては今回のなぎさの言動に面食らうかもしれない。上記のシリアスなイベントをやった後に「神浜チーズパニック!」という「お菓子の魔女が大量発生しちゃった! みんなで協力して(要するにレイド形式で)駆逐するのです!」なギャグすれすれのイベントも開催されており、温度差で風邪をひきそうになる。とにかく、そんな具合でマギレコワールドでは百江なぎさという魔法少女が多面的に描かれていたワケです。マギレコ民からするとワル天のなぎさの言動は「まぁ、なぎさってそういうトコあるよね」って感覚である。まどマギは関連作品が多すぎて内容が複雑化しており、ひと口に「まどマギファン」と言っても分野が異なると「何それ。全然知らん」って戸惑う事はしょちゅうである。例えば「本編と叛逆の間の出来事」を綴った『魔獣編』はハノカゲコミカライズを押さえている民にとって基礎知識というよりもはや「前提」なんですが、これが意外と読んでない(どころか存在すら知らない)人も多い。まず重要ポイントとして、ほむらはまどかが「円環の理」になった後に、時間停止魔法が使えなくなりました(叛逆は例外的な状況)。

 そもそも旧ほむらの魔法は厳密に言えば「時間停止」ではなく「盾に組み込まれた『砂時計』を操る魔法」です。砂時計は現実の時間流とリンクしており、ほむらはアレの砂が落ち切った後で盾の機構を使って引っ繰り返す事により時間遡行する事が出来る。盾の機構で砂の流れを止める事も可能。要するに時間停止は副産物なのだ。二次創作でギャグネタにされているせいで勘違いされがちだが、「ほむらはいつでも任意のタイミングで時間遡行できる」ワケではなく、砂が落ち切ってからでないと遡行できません。そして、砂が落ち切ってしまうと時間停止はもう発動しない。本編11話(劇場版をもとに再構成された「TV Edition」だと10話)で時間停止に失敗して攻撃を喰らうシーンがありますけど、あれは時間停止が使えなくなるタイミングを見誤っていたからです。概ね「一周目の世界でキュゥべえと契約した時刻」がタイムリミットであり、ワルプルギスの夜と戦っているあたりでタイムアップとなってしまうのだ。「まどかとの出会いをやり直す」というのが旧ほむらの願いだったが、改変後の世界ではその必要がなくなったため願いの性質も変化しており、「交わした約束を忘れない=記憶操作」が新ほむらの固有魔法となっています。叛逆でほとんどの子がおかしくなっていたのもほむらの魔女空間内で記憶を操作されていたからですね。自分自身の記憶すら操作していたので余計ややこしい事に。

 叛逆のラストで正しい記憶を取り戻した事もあり、ふたたび時間停止が使えなくなりました。このへんを前提にした、「悪魔ほむらはもう時間停止が使えない」「その代わり周囲の記憶を操作し、事象すら書き換える事で都合の良い箱庭を作り出している」って事実を知らないと叛逆以降のストーリーが格段にわかりにくくなってしまうんですよ。「ほむらちゃん、なんで時間を止めたり巻き戻したりしないの?」と感じた観客も結構いそうです。

 かなり賛否が分かれているみたいですが、個人的な感想としては「面白かった」、でも「時間掛け過ぎだし、制作に難航した影響もあってかなり変な映画になってるよ!」というのが率直な感想です。なんだろうな、Ave Mujicaのアニメ見た時の感覚にちょっと近いというか、「このアニメ……何か変!」と叫びたくなる出来。だいぶ仮面ライダーの劇場版みたいな胡乱さが濃厚に漂っていた。ヴィランがヴィランをボコるシーンがあるせいで『アウトレイジ』っぽくなってるし。「新キャラがいいからギリギリであり」ってところですね、これで新キャラに魅力を感じなかったらかなり際どいところだった。オススメかどうかに関しては、「わざわざオススメかどうか訊く者にはオススメ出来ん!」という感じ。チェストワルプルギス! ネットである人が言っていた「ガンダムで喩えるとF91」がしっくり来る。かなり取っ散らかった内容なので、覚悟の準備をしてから臨んだ方が宜しいです。

魔法少女まどか☆マギカ:13年ぶり新作「ワルプルギスの廻天」 公開3日で興収9.3億円突破 53万人動員のロケットスタート(まんたんウェブ)

 最近は鬼滅やチェンソーマン、ちいかわなどの興行収入で感覚が狂わされて「なんだ、初週10億も行かないのか」と言っている人もいますが、正気に返ってください。「ジャンプ原作ではない深夜アニメ発の映画」でコレというのは、エライ事ですよ。ガンダムブランドの『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』――純粋な新作ではなく「先行公開」なので単純比較できないとはいえ、散々話題になったアレでも公開初週の数字は約6億円です。およそ20年ぶりの新作だった『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が初週10.6億円なので、数字としてはあちらに近い。デイリーで見ると日曜日にガクンと下がっているからだいぶ初動寄りになりそうな印象ですが、それでも初週でコレだけ稼いで週間ランキング1位取ったらしばらくはその話題性が続くから前作「叛逆の物語」の20億円を超える事はほぼ確実でしょう。

 ここで「深夜アニメ発の映画」の歴史を振り返ってみましょう。いわゆる「深夜アニメ」と呼ばれるジャンルはエヴァンゲリオンを深夜に再放送してみたら意外と良い視聴率が取れたので「この時間帯にアニメを流せばいいのでは?」みたいな発想から広まった(あくまで「広めたのがEVA」であって、「EVAが深夜アニメの創始」というワケではない)経緯があります。「厳密な意味では1960年代から存在していた」みたいな論もありますが、現在の「オタク向けアニメ」という文脈に関して言えば1996年の『エルフを狩るモノたち』とか1997年の『EAT-MAN』、『MAZE★爆熱時空』あたりが走りと見ていいかもしれない。『MAZE★爆熱時空』は1998年に劇場版が公開されているが、一種の「併映モノ」で上映時間は50分もなかったらしい。1998年には『頭文字D』が放送開始して、これが何度か映画化しているから「深夜アニメ発の映画」史はこのへんから始まると考えた方が妥当か。2001年に『頭文字D Third Stage -INITIAL D THE MOVIE-』が上映、興行収入は5.2億円だそうです。

 それまでポツポツ程度だった深夜アニメの放送がグッと増えたのがゼロ年代、このへんから「若いアニメオタクは夜更かしするのが嗜み」になっていきました。東映Kanon、ラーゼフォン、灰羽連盟……オンタイムで見たものもあればレンタル屋でビデオ借りた作品もあったな。『ローゼンメイデン』の放送が始まった2004年あたりは「実況」と呼ばれる、ネットの掲示板やチャットに集まってリアルタイムで感想を垂れ流す文化が定着していたっけ。「乳酸菌とってるぅ?」の反響が凄まじかったな。いくつかのヒット作は劇場版も出たが、ホント「稀に映画化まで行く」という感触で、「深夜アニメ発の映画」はさほど目立っていなかった。深夜に放送して、DVDやグッズを売って、そこそこに利益を回収して終わり……というのがこの頃の常識だったように感じる。

 転機となったのは、やはり『涼宮ハルヒの憂鬱』か? 2006年に1期目が放送され大きな反響を喚んだこの作品は2010年に劇場版『涼宮ハルヒの消失』を公開、原作屈指の人気エピソードという事も相俟って評判が評判を呼び、たった24館という小規模公開からのスタートにも関わらず遂には100館以上にまで拡大公開された。しかし、如何せん規模が小さい事もあって記録はそこまで大きく伸びず、公開当時の最終的な興行収入は8.4億円。当時の情勢を鑑みればスゴい数字なのだが、今の興収ニュースに見慣れている人からすると「10億も行かなかったの?」と拍子抜けするかもしれません。

 そう、今でこそ「大した事ない目標値」みたいな扱いされるが、10億というのは「あのハルヒですら超えられない高い壁」だったのだ。先になるが、アイマスの古参がそのタイトルを聞くと懐かしさに遠い目をしてしまう『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』(2014年公開)も興収は約6.8億円。膨大なアイマスファンを動員しても、もっと膨大な一般浮動層が食いつかないとこれくらいが限界であり、10億とは「低い目標ライン」などでは決してなかった。生中な事では超えられないこの壁を、やっと超えたのが2011年の『映画けいおん!』だった。興行収入19億円。あとちょっとで20億には及ばなかった。2013年8月公開の『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』が10.4億円、そして2013年10月に公開されたのが『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語』――ワルプルギスの廻天の前作に当たるアレです。叛逆が深夜アニメ発の映画として最速(当時)で10億円を突破し、最終的に20億円の壁すら打ち壊した。「ここから新時代が始まる」と実感した興収ウォッチャーも少なくないだろう。

 2016年公開の『君の名は。』は深夜アニメと関係ないので文脈からは外れるが、オリジナルのアニメ映画、当時はまだブランド性が高いとは到底言えなかった「新海誠」の監督作品であるにも関わらず最終250億円という凄まじい記録を打ち立てて、数々の興収ウォッチャーの感覚をぶっ壊してしまった。これと2020年の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(最終407.5億円)はあまりにも規格外すぎるため、例外事象として処理した方が精神の安定を保てるデータとなっています。一方、「深夜アニメ発の映画」としては『ラブライブ!』が28.6億円、『ガールズ&パンツァー』やSAOのオーディナルスケールが25億円、ヴァイオレット・エヴァーガーデンが21.3億円と、次々に「叛逆超え」の記録が打ち立てられたが、30億の壁はなかなか崩れる気配が窺えなかった。2023年公開の「アイナナ」こと『アイドリッシュセブン』が32.6億に到達し、ようやく牙城を崩し始める。一応、ジークアクスのBeginning(先行上映)も35億ぐらい行ってるが、あれは扱いに困るんだよな……だってBeginningが上映されていた頃って、ジークアクスの放送時間帯がどのへんなのかも不明で、「夕方に放送するんじゃないかな」と思っていた人が多かったんですよ? 一旦上映が終わった後で「深夜アニメです」と告知されて魂消た、という感じです。なので「ジークアクスは深夜アニメ」ってのは間違いないんですが、「ジークアクスのBeginningは深夜アニメ発の映画」って言われると「それは違うんじゃない?」と思ってしまうワケだ。2024年の『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』や2025年の『チェンソーマン レゼ篇』も国内だけで100億円を超えており、「ジークアクスBeginningやジャンプ原作アニメ」を例外事象として処理するならば、まだ30億円の壁を突破した「深夜アニメ発の映画」はアイナナのみ。うたプリは23.5億円、ヒプマイは25億円と、動員力のある女性向け作品でもやはり30億は高い壁であり続けた。

 公開4日で10億円を突破したという事で30億円以上というのは充分射程圏内、それどころか「40億円以上」もありえないラインではなく、またまどマギが新たな時代の扉を開くのか……と注目されていますが、「『君の名は。』や鬼滅映画の後で新しい扉もクソもないだろう」という意見も根強く、興収ウォッチャーの間でさえ意見が分かれるところとなっています。仮に、ジャンプ原作ではない深夜アニメの映画が今後100億円を突破するような事態になっても、世間的な衝撃はそんなに大きくないでしょうね。ちいかわの映画だってもう100億円超えていますし……興行通信社の歴代ランキングによると現時点で国内の興行収入100億円を突破している映画は55本、このうち洋画が30本、邦画(アニメ)が21本、邦画(実写)が4本という内訳になっている。アニメが初めて100億円を突破したのは1997年の『もののけ姫』、そこから30年近く経って、ようやくほぼ毎年100億円超えの映画がコンスタントに出てくる状況となってきました(コナン映画の功績が大きい)。これに対し、洋画は『ズートピア2』や『トイ・ストーリー5』などのおかげでまだ何とか面目を保てているが、「2024年は0本だった」という手痛い現実がある。「3Dアニメではない、実写の洋画」ともなると100億超えは2022年の『トップガン マーヴェリック』が最後だ。世界的な超絶大ヒットになっている『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』も、現時点では日本国内50億円突破という段階。実写作品も盛り返して欲しいところではある。


2026-08-27.

・4巻の発売日も近づいてきたし、そろそろ崩す……かぁ、と『汝、暗君を愛せよ』を3巻まで読んだ焼津です、こんばんは。

 かなりの話題作なので今更解説する必要もない気がするけど、知らん人がいるかもしれんし念のため書いておきます。作者は「本条謙太郎 (ほんじょう・けんたろう)」で、元はネット小説。「小説家になろう」や「カクヨム」、「ハーメルン」といった投稿サイトで2024年に開始し、2部構成で同年末に完結。連載期間は約半年といったところです。2025年から大幅な加筆修正を施しつつ書籍化、来月出る4巻で本編は終了します。後日談というか、「主人公亡き後に刊行された」って体裁の「評伝」があるので書籍版は恐らく全5巻になるでしょう。単発ファンタジー作品としては長いが、いわゆる「なろう系」としてはちょっと短い、そんなサイズのシリーズです。

 主人公「ぼく」は現代日本からの転生者。祖父の代から続く造園会社を継いで若き社長になるもやる気が空回りし、遂には世を儚んでお空にダイブしちゃって、気が付いたら異世界の王様に転生していた……という、書き出しそのものは正直に言ってありきたりだ。「低い身分から成り上がっていく」のではなく既に至尊の地位に就いている――この点に関しては少し珍しいが、『転生したら皇帝でした』などの前例があるため設定についてもそこまでオリジナリティを感じない。じゃあ何が珍しいのかと言うと、「魔法」や「チート能力」、それどころか「戦記要素」もほとんどなく、ストーリーのほぼ全てが「政治」を中心に展開していく、ファンタジーとしてはかなり地味な作品に仕上がっているのだ。なのに読ませる。「この世界で生きている」人々の息遣いが感じられるような、リアリティが……というよりは「解像度が高い」小説である。

 「ぼく」が生まれ変わったのは「サンテネリ」という、地球で言うとフランスっぽい国の若き王様「グロワス十三世」だった。前世での空回りに懲りて「自分の力で何とかしよう」という英雄願望を捨て、徹底的に周囲に頼る「愚王」「暗君」ムーブでどうにかサバイブしていく。しかし自己評価の低さとは裏腹に、王周辺の人物たちは「とんでもないお方だ」と瞠目する事になる……基本のノリとしては「勘違いモノ」や「忖度モノ」に近いかな。「自己評価の低さ」と「周囲から寄せられる高評価」のギャップで読者の心をくすぐる、そういう意味ではなろう系らしいキャッチーな作品と言えなくもない。

 ただ、「勘違い無双」なテイストは1巻が最高潮で、2巻に差し掛かるとトーンダウンしてしまうんですよね。1巻が「主人公の成功」を描く物語なら、2巻は「主人公の失敗」を描く物語で、「なろう小説的な、ひたすら上手くいってヨイショされ続ける気持ち良さ」を求める人は鼻白むかもしれない。そして一人称形式で進むのも2巻までであり、こっそり日本語で日記を書いていた「ぼく」は転生した「この世界」へ同化する事を決意して、日記の執筆をやめてしまう。3巻は主人公である(正確には「主人公であった」と表記すべきか?)グロワス十三世の内心は直接描かれず、各セリフや三人称で綴られる様々な描写から汲み取るしかない。「もう『ぼく』の事は充分にわかっただろう?」と補助輪を外してしまうのだ。2巻のラストで未来のサンテネリが出て来て、グロワス十三世の名前は残っているものの少なくとも「名君」「偉大な王様」としては語り継がれておらず、むしろその娘の方が有名になっている……と暗示される。織田信長は知っていても、織田信秀(信長の父)は歴史好き以外あまり知らないようなもんですね。信秀、暗君ではないんだけど、暗君じゃないからこそ却って印象に残らない。信秀を主人公に据えた小説作品としては『青銭大名』があるけれど、よっぽど売れなかったのか発売から14年経つ今もなお文庫化や電子化はしておりません。まぁ、正直「信長の父である織田信秀が主人公です」と言われて「うおおお! 読みてえ!」ってなる人はあんまおらんよな。信秀主人公ではないが、信長が生まれるところから始まるので信秀の出番が多い『蒼き信長』という歴史小説もあります。

 閑話休題。主人公が軍を率いて大活躍するタイプの戦記ストーリーではなく、むしろ「戦費がない」「兵たちの疲弊が激しい」という理由で戦争を回避しようと根回しするタイプのストーリーゆえ、同じ「最高権力者に転生する(実権があるとは言ってない)」ファンタジーの『転生したら皇帝でした』とはまた読み口が違っています。どちらかと申せば『栄光なき天才たち』に近いかな。確実に歴史を動かした存在でありながら、その偉業は大衆に理解されず、歴史の波に埋もれていく……そんな「忘れられたワケではないが顧みられる事が少ない」王様の肖像を丹念に綴っていく小説です。転生を除けばファンタジー要素は少なく、作中に「魔力」という用語が出てくるものの、これも「方便の類であって実在はしない」って扱いになってます。チートスキルで無双、みたいなのには飽きてきたけど「本格ファンタジー」も胃にもたれる……中間ぐらいの「読みやすい濃度」が欲しい、という方にうってつけのシリーズだ。

 まだ書籍化はしていないが、なろうやカクヨムには関連作も掲載されています。前日譚に当たる『ラケディア、麗しの』(「暗君」は銃が実戦配備されている近世くらいの時代感覚だが、「ラケディア」は槍や弓で戦っていた頃の話であり主人公がスパルタっぽい都から旅立つ事を余儀なくされる追放モノ、作中で広まっている宗教「正教」の創始を巡る話らしい)、現代日本が舞台だけどなぜか「暗君」の記憶を有している「ぼく」が主人公の『地に落ちて死なずば』紙に刷った同人誌もあり、時期は不明ながら商業出版の予定もある)、そして最近連載が始まったばかりの『或る指導者の青年時代』(現代日本から転生してきた「私」が主人公、「暗君」よりはちょっと未来、ロシアっぽい国で皇太子の友人になった「私」が歴史を動かしていく)の3つ。『地に落ちて死なずば』は商業出版が告知されているし、ラケディアや或る指導者はまだ途中なので、「紙で読みたい」派の人は今すぐアクセスせずにのんびり待つのも手です。

『風の白猿神2 幻惑の聖域』発売決定。

 期待していたとはいえ、実際に報じられると「“幻想(ユメ)”じゃねえよな……!?」というリアクションになってしまう。『風の白猿神』、31年ぶりの新装版&続編決定です。元はシリーズタイトルだった「神々の砂漠」が巻タイトルに格下げとなって『風の白猿神』がシリーズタイトルへ変更された件に関しては思うところもあるが、「続編決定」という大ニュースに比べれば些細なものだ。

 久々に実家の書庫から引っ張り出してきてチマチマ読み返しているが、さすがに90年代の作品だけあってベースとなるノリは古臭い。あの頃の角川書店から出ていたオタク向け漫画の数々、そしてほんのり少女漫画っぽいテイストが感じられる。こう書いて伝わるのかどうかよくわからないが、『イズミ幻戦記』とか『真夏の国』みたいなノリなんですよね……なろう小説やカクヨム小説に馴染んだ世代が読んだらどういう感想になるのか、ちょっと興味が湧く。

 気が早いと言われそうだが、1巻と2巻が売れて3巻以降も発売されて大団円まで漕ぎ着けられるといいなぁ。

「ぼくの地球を守って」広瀬アリス主演でドラマ化!監督は三木孝浩、2027年秋に配信(映画ナタリー)

 ぼく地球(たま)、近頃やたら原作不足が叫ばれているのでそのうちアニメ化するかも……とは思っていたが、ドラマ化は予想外だった。あれを、ドラマ化……?? 簡単に言うと「転生物のファンタジー」なんですが、なろうやカクヨムでよくやってる「トラックに撥ねられて異世界転生、前世の知識やチートスキルで無双」な話ではなく、「前世から続く因縁」が軸です。興趣を削ぐかもしれないのであまり細かく説明できないが「前世」の舞台は宇宙であり、ファンタジーばかりでなくSF要素や「前世で何があったのか?」を紐解いていくミステリ要素も入っている。

 まず前提として、80年代頃に「前世ブーム」というのがあったんですよ。このへんの詳しい事はWikipediaの「戦士症候群」というページに書かれているのでそちらを参照してください。フィクションに感化された少年少女たちが雑誌の投稿スペースで「前世の仲間」に向かって連絡をくれるよう依頼する、割と他愛のないムーブメントだったのだが、1989年に女子中学生や女子小学生が「死の淵に立って前世の記憶を覗くため」と称して自殺未遂騒ぎを起こし、社会問題化した。大塚英志の『僕は天使の羽根を踏まない』冒頭やケロQの『終ノ空』で描かれた「アタマリバース」「スパイラルマタイ」(「死の間際」という極限状況へ己を追い込む事によって前世の記憶を取り戻す、という儀式。具体的に書くと、高島ざくろたちは高所から飛び降りる事で前世の記憶を甦らせようとしたが、失敗して死亡した)もこの事件をモチーフにしている。

 掲載誌が“花とゆめ”だった事もあり、恋愛要素も強く、前世では同じ年頃だった男女が転生時期のズレによって歳が離れてしまい、男子小学生と女子高生になってしまう――という、ほんのりインモラルなシチュエーションも描かれる。傍から見ると「おねショタ」だが、肝心の少年は「これじゃ異性として意識してもらえない!」と嘆くワケです。前世では女性だった人物が転生後は男性になっているなど、結構設定が複雑なんですよね。基本的に読者は「前世」と「今世」の人物をそれぞれ別々のキャラクターとして認識しているが、両者の魂は一緒なので、当然ながら今世において前世の出来事をいろいろと引きずっている。この二重構造ゆえTVアニメ化が難しく、30年以上前にごく短いOVAが出たきりとなっていました。このドラマが成功すればぼく地球ファン長年の悲願であるTVアニメ化も実現するか?


2026-08-12.

「ドカ食いダイスキ! もちづきさん」TVアニメ化!制作はパッショーネ(コミックナタリー)

 もちづきさんがアニメ化する事自体は、作品がメチャクチャな勢いでバズっていたし、先月頃から公式が匂わせるようなポストしてたから特に驚きはない……が、またパッショーネか! 『生徒会にも穴はある!』、『FX戦士くるみちゃん』、『ニセモノの錬金術師』と、ここのところ話題作な漫画のアニメ制作告知でたびたび目にしていたスタジオです。『異種族レビュアーズ』や『ぬきたし THE ANIMATION』を作ったところ、と書いた方がわかりやすいだろうか? 「ヤバいアニメをよく手掛けるスタジオ」というイメージになりつつある。

 『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』はややぽっちゃり気味な主人公「もちづきさん」(本名は「望月美琴」)が仕事や日常生活で受けたストレスを趣味の「ドカ食い=過度な暴飲暴食」で発散させる、という「健康は投げ捨てるもの」なホラー食事コミック。路線としては『てんむす』など一時期流行ったフードファイト物に近いが、もちづきさんは別に誰と競うでもなく、純粋に趣味で大食いをしている。「ドカ食い趣味がバレるのは恥ずかしい」という想いもあるのか、家族にさえ隠そうとしています。その摂取カロリーは凄まじく、一日で5000キロカロリーを超える事も……もはや「命を削る」レベルにまで達している。おかげで「死神さん」が半レギュラーキャラと化している始末だ。

 真似すると危険というか、真似したくても日本人の胃袋にとってコレはキツいんじゃないですかね……肥満率の高いアメリカならそうでもないのかな? アメリカ人の摂取カロリーは、よく食べる人だと4000キロカロリーに及ぶそう。食べたぶんだけ運動すればまだマシなんですが、もちづきさん、デスクワークのうえプライベートでもあんまり運動してないんだよな……あらゆる臓器が悲鳴を挙げてそう。「打ち切りが決まったら主人公死亡エンドになる」とも噂されている本作、何とか生きたまま最終回を迎えて欲しいものだ。

「Destiny Unchain Online」TVアニメ化、吸血鬼少女になったゲーマー少年の青春冒険譚(コミックナタリー)

 公式略称は「DUO」。フルダイブ型のMMORPGをやり込むという、平たく言えば「シャンフロみたいなやつ」です。原作は小説ですがたった3冊しか書籍化されておらず、コミカライズの際にかなりアレンジされているらしい(小説版は未読)ので、たぶん漫画版準拠でアニメ化されると思う。シャンフロとの違いは「主人公の容姿が可愛い事」ですね。主人公の「満月紅(みつき・こう)」は中学3年生の少年、もともと中性的な顔立ちだったが、父親の開発したゲーム「Destiny Unchain Online」にテスターとして参加したところ、バグか何かでアバターが女の子になっちゃった! という一種のTS物です。

 フルダイブ型のゲームで肉体的な性別を変更すると「リアルに深刻な影響が出る」という理由で禁止されているハズなのだが……しかも父親は「3ヶ月ずっとログインし続けてくれ。あっ、学校はログインしたままオンライン登校できるから」と言い出す。ふざけるな、と思いながらログアウトしようとしたが――ログアウトできない! ってな感じで「デスゲーム要素はないけどログアウト不能なプチSAO」状態です。「父親が茅場晶彦」とか、あまりにイヤすぎる……説明が面倒なので「正体は男」という事実を隠し、謎の美少女ゲーマー「クリム」(紅=クリムゾン、でクリム)となり、レア種族「ノーブルレッド」(要は吸血鬼)としてその名を轟かせる紅。彼はいつしか「赤の魔王」と呼ばれるようになっていた……ってところから副タイトルの「吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました」が来ています。

 漫画版1巻ラストの仄めかしからすると紅の母親はホンモノの吸血鬼(真祖?)で、父親が人間だから紅はハーフヴァンパイアに当たるっぽく、ゲーム内アバターが女の子になったのも「肉体の性別が可変」ゆえじゃないかと予想され、精神に釣られて現実側の肉体まで女の子になりつつあるようだが……本編はずーっとゲーム攻略に話が費やされており、最新刊で母親の話が出てきたから久々に思い出したというか、リアル周りのアレコレは「そういえばそんな設定もあったっけ」レベルに記憶があやふやになっていました。まだ期限の「3ヶ月」が経過していないし、ハーフヴァンパイア疑惑云々は一旦棚上げしてもOKです。

 紅の知り合いもゲームをプレーしており、「古谷聖(ふるや・ひじり)」(プレイヤーネームは「フレイヤ」)が一応ヒロインのポジションに位置している……が、シャンフロ同様「ヒロイン(?)」状態であり、ラブコメ要素はほとんどありません。フレイヤちゃん、おっぱい大きいし可愛いんだけど、個性はそんなにないんだよな。他に弟子ポジションの子など多彩なキャラクターが次々と登場するため、「進めば進むほど面白くなる」あたりはシャンフロと共通している。個人的に好きなのはメンバー全員が褐色バニーで統一されている「黒兎組」というギルドなんだが、確か登場が9巻あたりなのでアニメだと早くても2クール目あたりの登場になりそうなんだよな。シャンフロ並みに長く続くアニメになって欲しい……まだ制作スタジオもメインスタッフもキャストも何もわかってないので何とも言えないが、気合の入った作画してくれるところだと嬉しいです。やはり「絵の良さ」が魅力の一つですからね。

・岡崎隼人の『ハンドレッドノート 名探偵 司波仁の事件簿』読んだ。

 こいつの千里眼について、「ギフテッド」だの「天賦の才能」だの言うやつがいる。
 んなわけあるかよ。仁の体はきっちりツケを払わされてんじゃねえか。ギフトどころか、これは一種の呪いじゃねえか? むしろこれさえなければ、仁は名探偵なんて因果で危険な仕事に就かなくてもよかったんじゃないか? そんなことすら思う。

 20XX年──少子化対策の成功・一極集中化・移民によって人口爆発が起こり、3000万人を突破したTOKYOは治安も最悪となり、「犯罪都市」の汚名を蒙っていた。処理能力がパンクした警察は完全にお手上げ状態となり、民間の探偵組織に捜査活動を外注(アウトソーシング)し始めた。日本一の民間探偵組織、それが「ネスト」である。ネストは捜査活動に従事する構成員を「名探偵」と呼び、なんと既に100人もの「名探偵」を擁していた。推理能力以外はいろいろと欠如しているモノが多い「名探偵」たちを支えるため、「記録者(レコーダー)」という補佐役を2名ずつ配属させ、「3人1チーム」を原則としてあらゆる事件捜査の依頼を受け付けている。「司波仁(しば・じん)」も「名探偵」の一人であり、現場に残された様々な痕跡を即座に見抜くその能力は「千里眼」と呼ばれていた。ゆえに仁をトップとするチームの名称は「ホークアイズ」である……と、こんな感じの設定でお送りする「ちょっと緩めのJDC」なシリーズの1冊です。漫画版も複数あるが、これは小説版。

 『ハンドレッドノート』は講談社が展開するメディアミックス的なシェアワールド企画であり、YouTubeやTiktokでの動画配信を主体としている。なので名探偵を補佐するメンバーが「助手」ではなく「記録者」と呼ばれているワケだ。企画の開始が2023年5月なので、そろそろ3年が経ちます。動画配信以外だとコミカライズが盛んで、マガポケ読んでるとたまに「1話目を読んだらポイントプレゼント」で作品を見かける。ネスト所属の名探偵チームには序列があって、事件解決の功績に応じてランキングが決まる。本書の主人公である仁のチーム「ホークアイズ」は序列21位。他のチームは序列100位(つまり最下位)の「アグリーダック」、序列63位の「コフィンロビン」、序列50位「ナイトアウル」、序列17位「スワロウテイルズ」、序列9位「クラウンクレイン」といった感じ。ホーク(鷹)、ダック(アヒル)、ロビン(駒鳥)、アウル(梟)、スワロウ(燕)、クレイン(鶴)――チーム名は全て鳥類で統一されています。序列1位のチームは今のところ公表されていないが、「エンペラーペンギン」だったりするのか……?

 シェアワールド物ですが、「舞台は近未来(スマホがもう使われていなかったり現金が珍しくなっていたりする)」、「警察の検挙率がダダ下がりしているせいもあって民間の探偵組織が権威化しつつある社会」、「ネストは一般の依頼も引き受けているが警察からの委託で動く事もある」、このへんの設定さえ飲み込んでおけばどこから読んでもOKです。司波仁は『ハンドレッドノートーホークアイズー』というコミカライズでも主人公を務めているが、そちらも話としてのダイレクトな繋がりはない(舞台とキャラクターが共通しているだけでエピソードはそれぞれ独立している)から別に読む必要はない。読んでおくとビジュアルイメージを掴むのが楽、という程度。コミカライズ読んだり動画を見たりすればすぐわかりますが、このハンドレッドノートという企画、基本的に女性向けなんですよね。なのでこの小説版からいきなり読み出すと表紙を飾っている仁以外のビジュアルイメージが大きくズレてしまう可能性が高い。実際、私も読み終わった後に「枯柳杖道(かれやなぎ・じょうどう)」の容姿を確認して思わず叫んでしまった。「どこが『おっさん』やねん! Vtuber並みの若々しいルックスやないか!」と。ちなみに年齢設定は30歳です。

 ぶっちゃけ『ハンドレッドノート』という企画そのものにはほとんど関心がなかった。マガポケやコミックDAYSでポイント欲しさに各コミカライズを1話だけ読んだりしているが、ほとんど流し読みに近いため内容もあんまり覚えていない。ホークアイズの話も複数回読んでるハズだが、キャラ名を全然記憶していなかった。「じゃあなんでこの本読んだんだよ」って話になりますが、単純に作者の「岡崎隼人」が好きだからです。メフィスト賞作家で、デビュー後長らく沈黙していましたが、少し前に復活してポツポツと新作を出している。

 本書『名探偵 司波仁の事件簿』は連作短編の形式を採っており、プロローグとエピローグを除くと4つの事件を取り扱っている。それぞれの事件は独立していますが、進むにつれて作中の人間関係が変化していくので頭から順番に読む事をオススメします。エピソードごとに語り手が変わるのも特徴の一つか。

 冒頭一発目の「第一話 祝福された子供たち ―司波 仁の憂鬱―」はチュートリアルめいたエピソード。「この作品はこういうノリでお送りします」とわかりやすく伝えてくれる。金持ちや犯罪者など、後ろ暗い事をしてあぶく銭を稼いでいる連中たちを襲撃し、大金を奪っていく強盗グループ――通称「影法師」。防犯カメラで撮影された映像から、実行犯のほとんどは年端も行かない子供たちだと推測されている。警察の威信をかけて捜査に取り組んでいたようだが、遂に音を上げたらしく、ホークアイズにお鉢が回ってきた。現場に臨場した仁は、すさかず床に「SOS」の文字が残されている事を見抜く。被害者の指によって書かれたモノだが、被害者は頭部を撃たれて即死しており、とてもダイイングメッセージを残せるような状態にはなかった。じゃあ誰が残したメッセージなのか? 仁の千里眼は現場に残留した「もう一つの手掛かり」を見逃さなかった……スピーディな展開で読者の興味を惹き、映像向けの派手な大捕り物もキチンと織り込んでいるお手本のような一本。この事件を経てホークアイズは「凪人」と呼ばれる孤児を引き取る事になります。本書はこの凪人の成長譚といった側面もある。

 「第二話 squeed!!!!!!!!! ―物怪瑠衣の当惑―」は視点を「記録者」の一人、「物怪瑠衣(もののけ・るい)」に変更して進行する。「squeed(スクウィード)」というシューズのブランドが流行し、「エアマックス狩り」さながらの「squeed狩り」が横行して世間を騒がせていた。squeed狩りの被害によって意識不明の重態になった青年「藤本圭吾」の姉「沙良」は「弟を襲撃した犯人たちを捕まえて欲しい」とホークアイズに依頼する。捜査を進めるうち、瑠衣の中で疑問が膨らんでいく。姉が心臓の病気を抱え、治療費が家計の負担になっているため進学を諦めるほどだった圭吾が、なぜ高価で数も少ないsqueedの靴を履いていたのか……? 非常にわかりやすく伏線を敷いているおかげで意外性とかは全然ないエピソードだが、依頼人である沙良のセリフが印象に残る。

 「第三話 夢の護り手 ―枯柳杖道の後悔―」。視点はチーム最年長の杖道に移る。両親がドラッグディーラーで、警察に捕まった事から児童養護施設に送られる運びとなり、そこで壮絶なイジメに遭って施設を脱走、「ハレルヤモール」という大昔に潰れたモールの跡地に築かれたスラムで少年時代を過ごした「早瀬匠海」。そんな過酷な生い立ちにも関わらず、必死にバスケの腕を磨いてプロ選手になった彼は地元にとって「期待の星」だった。しかし、チームのトップリーグ昇格をかけた大事な試合だというのに、匠海の動きは鈍かった。調子が悪いのか? 否、仁の千里眼が出した答えは違った。「わざと手を抜いている」――地元の星の八百長疑惑を巡るエピソードです。これもストーリー展開は割とシンプルで、意外な展開とかはない。試合開始後に「事件」を察知し、試合が終了するまでに素早く解決するRTAぶりを楽しむべし。

 ラストを飾る「第四話 star, dust, stardust ―柏手凪人の告白―」は第一話の事件関係者だった凪人を視点に据えて展開し、「ゴミは一生、ゴミのままだ」という諦念に立ち向かっていく締め括りのエピソード。凪人にとって「古巣」に当たるハレルヤモールが何者かによって襲撃された……ミラーレンズつきのフェイスマスクで顔を隠し、迷彩柄のタクティカルジャケットで武装した、体格からして男とおぼしき襲撃犯は夜中にモール跡地へ侵入し、寝ている子供たちを撃って回った。使われたのは非殺傷のライオットガン、「非殺傷」とはいえプロボクサーのパンチ並みの威力があり、直撃すれば骨折、当たり所が悪ければ死亡する事もありえる。状況からして人狩り(マンハント)の「ゲーム」をやっていたと考えられるが……これも事件自体はごく単純で、推理要素はそんなにない。行き場を失い逃げてきた子供たちの吹き溜まりであるハレルヤモールを蹂躙しようとした犯人たちに叩きつけた凪人の「答え」。胸糞の悪い事件ながら、読後感は爽やかです。

 石田衣良のIWGP(池袋ウエストゲートパーク)シリーズと、大沢在昌がたまにやってるSFっぽい設定のハードボイルド(『B・D・T [掟の街]』とか『影絵の騎士』の「ヨヨギ・ケン」シリーズみたいな)をミックスしたが如き読み口で、なかなか好みの一冊でした。一個一個の事件はそこまでインパクト大きくないのだが、いろんな要素を詰め込んでコンパクトにまとめる手際が良い。「メディアミックス物だから……」「シェアワールド物だから……」と敬遠せず、「近未来の探偵モノ」がイケるクチの人なら是非とも試してみて欲しい。ただ、全体的にあっさりめの文体で、「おっさんは言った」とか「おっさんが言う」みたいなテキストが頻出するから、読み応えのある文章を期待すると少し辛いかもしれない。表現技法の一種とはいえ、「言った」「言う」というテキストが10回も出てくる83ページはさすがにやりすぎだと思いました。

 シェアワールド物だけど、他の探偵チームやネスト本部に関する描写が出て来ないところも「読みやすい」と感じる一因になっているかな。「100人もの名探偵が在籍している」という設定から清涼院流水のJDC(日本探偵倶楽部)シリーズみたいなノリを期待すると肩透かしかもしれませんが、逆にそのへんの設定にヒいちゃっている人はコレを読んでみて「あっ、割と普通の話なんだ」と気付いてみるのも一興。作者のファンは、「メチャクチャ面白い」というほどではないにしろ普通に楽しめるでしょう。いやホント、良くも悪くも「普通におもろい本」なんですよね……これといってネタ的な要素がないので、ハンドレッドノートや岡崎隼人に興味がない方にはアピールするポイントが少ないと申しますか。アニメ好きよりも海外の刑事ドラマ好きの方が肌に合うかも。

・拍手レス。

 星を継ぐアイドルは本当に人が死ぬタイプのライブで驚きましたねー。今後の展開が楽しみです

 まだアニメ化とかは期待する段階ではないので、差し当たって「打ち切られませんように」と祈っています。

 自分のファースト東野圭吾は『分身』でしたね。レモンを丸かじりというフレーズが子供ながらに印象に残りました。ここ数年は、それまでやってなかったジュブナイルへの挑戦(クスノキの番人)などもしていたので、高齢作家の二度目の羽化を期待していました。非常に残念。

 『分身』は積んでますね。たぶん実家の書庫にあると思うので今度捜しに行こう。ガリレオ以外の「加賀恭一郎」シリーズや「マスカレード」シリーズ、「五代努」シリーズが全部宙に浮いてしまった事を思うと残念でならないです……。



管理人:焼津