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リレー小説「魔法少女忌譚修」(第13話−10/12)


2026-03-20.

3月21日(土)18:00、まほよの新情報が来襲(く)る! 俄かに緊張してきた焼津です、こんばんは。

 タイミング的に公開予定日の告知ですかね? できれば何部作の予定なのかも明かしてほしいところですが……尺的にとても1本で収まるとは思ってないので、最低でも前編と後編の二部作になると予想しています。その場合、後編はいつ来るのかという話なんですが……とても来年とか再来年とは思えないし、早くて3年後かなぁ。

谷口悟朗×吉田玲子が語り合うオリジナルアニメの存在意義 “多様性”のために必要なこと(Real Sound)

 TLでは絶賛の嵐だが、興行的にはだいぶコケている(初週で「興行収入:5560万8140円 観客動員:3万8861人」……全国285館公開だから平均して1つの映画館に1日あたり50人前後の客しか入っておらず、初週の数字としては「惨敗」に等しい)『パリに咲くエトワール』のインタビュー記事です。監督「谷口悟朗」や脚本「吉田玲子」のファンは必見。

 立ち上げの段階では監督の谷口とプロデューサーの「湯川淳」(ちなみに湯川Pのインタビュー記事もあります)の二人がゼロベースで企画を作り始め、行き詰まりかけていた頃に吉田が入った……という感じだそうです。なお湯川Pは「バンダイビジュアル」所属で、谷口監督とは『コードギアス 反逆のルルーシュ』からの付き合い。『ガールズ&パンツァー』の制作プロデュースにも関わっているので、吉田さんとはそっからの付き合いですね。ガルパンに吉田さんを起用したのは水島努監督が「戦車好きのスタッフが集まってくるから戦車は何とかなるが、『女の子の可愛さ』は脚本で何とかしてほしい」と要望したからで、「女の子を可愛く書けるのは吉田さんだろう」ということで抜擢したそうだ。

 パリエトがフジコと千鶴の「ダブル主人公制」になったのは吉田さんが入った後で、それまでは単独主人公だったっぽいですね。「千鶴がバレエダンサーを目指す」という設定もだいぶ後で決まったらしい。別のインタビュー記事によると「パリを舞台にする」ところから企画が出発し、「未来のパリ」だとSFになっちゃって普遍性を損なうし「現代のパリ」ではセールスポイントが足りない、じゃあ「過去のパリ」だ――というふうに路線が定まっていったとのこと。吉田さんが加わる前の段階では「過去のパリでオーケストラの指揮者を目指す少女」というのが大枠だったが、「時代も考えるとこの設定(女性指揮者&10代そこらで抜擢)は難しい」ということで代わりに「絵画」を提案したようだ。当初のイメージラインとしては「画家になることを夢見たフジコが渡仏、憧れの都パリで奮闘するが、やがて様々な現実に打ちのめされ、それでもめげずに踏ん張って夢を叶える」みたいな感じだったのだろうか。既に何人も指摘しているが、「継田フジコ」のモデルは「藤田嗣治」(1913年に渡仏、翌年に第一次世界大戦勃発、仕送りが途絶えて生活も困窮し「寒さのあまりせっかく描いた絵を燃やして暖を取った」というエビソードも残っている画家)、つまり「女体化した藤田嗣治」をメインに据える案だったと思われるが、「二人の少女をメインとして立てたほうが、ドラマや関係性が作りやすい」ということでシスターフッド路線へ切り替えていった模様。

 パリエトを構成する要素のうち、アニメーションとして見せるうえで重要なのが「バレエ」や「薙刀」。このうち最初にあった要素は薙刀で、バレエは吉田さんの提案で追加されたようだ。ベル・エポック期ということで「アルセーヌ・ルパン的な方向」も監督の頭にはあったらしいが、題材として積極的に取り入れたくはなかったような口ぶりですね。バレエシーンについては「CGを使っているとはいえ、あれでなんでもできるのではないかと思われるかもしれませんが、CGはあくまでサポートとしてしか使えません。そもそも指先や足先までモーションキャプチャーのマーカーを付けているわけじゃないですしね。ノイズだってある。所作と所作の間でどのような体重移動をしながら動くのかというところまで突き詰めると、CGではできないんです」と語っており、偏執的なまでのこだわりが感じられる。ダンスシーンはなかなか演出が難しいんですよね、ストリートダンスを題材にした『ワンダンス』もアニメ版は相当苦労しているのが伝わってきた。

 「明治から大正にかけて」という時代背景が一般客を呼び寄せにくいのか興行は依然厳しい模様だが、「グランドシネマサンシャイン池袋」では金曜のチケットがほぼ完売に近い(と言っても、80席くらいの小さいシアターで1日2回、MAXでも160人)など、ジワジワと口コミの効果が出ているようだ。「こういうオリジナルアニメ映画もちゃんと評価される」って実績を作ってほしいところですね。ちなみに、パリエトの年代(1907年や1912年)を舞台にした作品というと、古いところでは『帝都物語』『春の雪』があります。『帝都物語』の方は3月30日(月)まで本編を期間限定無料公開しているので気になっていた方は今がチャンスだ。

『ガールズ&パンツァー リボンの武者』、パイロット版映像上映決定!

 すわリボンの武者アニメ化か! といきり立ってしまったが、あくまでPVのみの上映で本編に関しては本決まりではないらしい。なんだ、じゃあアニメ化が決定したとしても完成は2030年以降になりそうだな……『ガールズ&パンツァー リボンの武者』はガルパンのスピンオフコミックで、正式な大会が開催されている競技「戦車道」とは違い、戦車乗りたちがお互い合意の上で独自に繰り広げる、言わば野良試合の如き「強襲戦車競技(タンカスロン)」を描く。ガルパンの本編キャラも出てきますが、主要キャラは概ねオリキャラです。スポーツではなく「戦」が好きな少女「鶴姫しずか」が九七式軽装甲車(テケ)に乗って大暴れする。しずかは武田の「百足衆」の末裔という設定で、赤備えをイメージしてテケの外装を赤く塗り、大きくて真っ赤なリボンを着用している。ドラゴンボールの「レッドリボン軍」が由来というわけじゃありません。可愛い女の子もいっぱい出てくるけど、根底にあるノリはボトムズやシグルイ、ドリフターズのそれであり、「ウマ娘にとってのシンデレラグレイ」みたいなポジションだ。実際、シングレの作画担当も「『リボンの武者』と『はねバド』読んで吹っ切れた」と語っている。

 ガルパンのアニメが始まったのが2012年、リボ武者の連載開始が2014年で、2021年に連載終了しています。単行本にして全16巻というかなりのボリューム。TVアニメ化する場合、丁寧にやれば4クール、押し込んでも最低2クールは掛かるでしょうね。問題はガルパンを作っているスタジオ「アクタス」の仕事が物凄く遅いことで、「最終章」という触れ込みで始まった全6話構成の劇場シリーズは2017年に開始し、今年の10月にようやく第5話が公開される予定っつーレベルです。来年でもう10周年だ……ガルパンが、ではなく「最終章」が、ですよ。まさか10年経っても終わらないとは……第3話から第4話の間に「ロシアによるウクライナ侵攻」が勃発し、ロシアとウクライナがマジで戦車戦を始めるという信じがたい事態も発生した。アニメを取り巻く環境どころか社会情勢が激変している!

 アクタス、アニメ好きの間では「いい仕事するんだけど、とにかく時間が掛かるスタジオ」として有名で、同じくTVシリーズの続編として劇場シリーズを始めた『プリンセス・プリンシパル』もまだ終わっていません。TVシリーズの放送が2017年、全6章構想の劇場シリーズ『プリンセス・プリンシパル Crown Handler』が2021年開始で、去年(2025年)にやっと第4章が公開されたところです。TVシリーズから数えると来年で10周年だけど、それまでに終わる可能性はほぼゼロですね。こういう「劇場で全〇章」という商法、サンライズあたりがよくやってるんですけど『機動戦士ガンダムUC』が全7章で2010年に開始、2014年に完結。『コードギアス 亡国のアキト』が全5章で2012年に開始、2016年に完結。といった具合にだいたい5年以内に終わらせています。コロナ禍の影響もあって制作が大幅に遅れた『閃光のハサウェイ』3部作(第1部が2021年、第2部が2026年、第3部が未定)もありますが、「劇場〇部作」で5年どころか10年経っても終わりそうにないのは、他所だとEVAの新劇場版(2007年開始、2021年完結)があるにせよ、かなり特殊な例といっていい。公開まで待てず鬼籍に入ったファンもチラホラ。「完結まで生き残ろう」がガルパンおじさんの合言葉になってるとかなってないとか。

 そんな有様なので、『リボンの武者』まで寿命が保つかどうか……という次元の話になっており、もはや笑うしかない。私も生きてリボ武者のアニメが観たいものだ。

『Fate/EXTRA Record』の発売延期が発表。ノーツとバンダイナムコエンターテインメント、両社協議の上で開発体制の変更をふくめた見直しを行うことが決定。新たな発売時期、販売元は決定しだい案内するという(電ファミニコゲーマー)

 SNSをチェックしていたら「販売中止」の文字が飛び込んできてドキッとしましたが、あくまで「バンナムからの販売を中止する」という話であって『Fate/EXTRA Record』がポシャったわけではないらしい。ひとまず胸を撫で下ろしました。

 まず『Fate/EXTRA』について説明。これは2010年に発売されたPSP用ゲームで、TYPE-MOONが主導して作ったソフトではなく、「持ち込み企画」の一つだったそうです。FateのIPを使ってダンジョン探索ゲームを制作したい、ということで当初は「セイバー」や「アーチャー」など『Fate/stay nigh』のキャラをそのまま使ったゲームになる予定だったらしいが、話し合っているうちに「オリジナルの設定にしてstay nighとはまったく別のストーリーにしよう」ということになりました。そうして生まれたのが新たなセイバー、通称「赤セイバー」です。それまでFate作品は「アルトリア」以外のセイバーが出て来なかったため、「セイバー=アルトリア」が常識だったのですが、この『Fate/EXTRA』によってようやく「アルトリアではないセイバー」が登場したのだ。

 余談ですが今アニメやってる『Fate/strange Fake』は大元が2008年のエイプリルフールネタでEXTRAよりも古く、「アルトリア以外のセイバーはまだ存在していなかった」段階のため、そのへんに配慮して「セイバーが不在の偽の聖杯戦争」という体裁になっていました。アニメだと「小野友樹」が声当ててるあのセイバーは2015年に電撃文庫から商業作品として発売されたときに追加されたキャラです。もう一つ、禁断の余談二度打ちをしますと、EXTRAとほぼ同時期に持ち込まれた企画が『Fate/Apocrypha』。オンラインゲームとしてサービス開始する予定でしたが、諸般の事情で開発中止になっている。想像に過ぎないが、「Fateブランドのイメージを守るためのスタッフのこだわり」が厳しすぎて開発サイドが音を上げてしまったのではないだろうか。EXTRAも、企画の段階だと「シナリオは奈須きのこではなく外部のライターが書く」予定でしたが、上がってきたシナリオに奈須が納得できず全ボツ、「こうなったら俺がやる!」と一から書き直した――という経緯があります。続編のCCCでも「サクラファイブ」という「間桐桜」そっくりの顔をしたエネミーが言葉通り5人登場する構想でしたが、「予算と納期と容量の問題」で5人中3人が削られ、メルトリリスとパッションリップの2人しか残らなかった。削られた3人の穴を埋めるためエリちゃんが繰り返し出張るハメになり、「何度も出てきて恥ずかしくないんですか」という例のセリフへ繋がっていくことになる。

 『Fate/EXTRA Record』は『Fate/EXTRA』のリメイク作品で、「EXTRA発売10周年」の2020年に開発が告知されました。リメイクとはいえシナリオそのままで映像だけ差し替える、みたいな感じではなく「実際はCCC(続編)からの登場だけど設定としては無印の時点で存在していたキャラ」を本編に織り込んだりといったアレンジもしているらしい。しばらく音沙汰がなかったものの2022年に続報が到来、仮タイトルだった『Fate/EXTRA Record』が正式タイトルに決定します。2024年に発売予定を「2025年」と告知。しかし、開発の遅れから予定を「2026年春」に延期。予約も開始して、さすがに今度こそ出るのでは……いやまた延びるのでは……とファンが様々な意見を交わしていたところにこの「バンナムが外れる」というニュースが飛び込んできてブッ魂消たわけだ。

 ゲーム会社は大きく分けて二つあります。「開発(デベロッパー)」と「販売(パブリッシャー)」です。デベロッパーがゲームそのものを作って、それをパブリッシャーが大金かけて宣伝し、全国に流通できるよういろいろ取り計らう。パブリッシャーもデベロッパーとは別に開発部門を抱えているケースもあり、その場合は「販売と開発」というより「大手と下請け」みたいな構図になる。ほとんどの場合、お金を出しているのはパブリッシャーなので力関係は概ね「デベロッパー<パブリッシャー」です。パブリッシャーは詰まるところ「売れるゲーム」を作ってほしいから、デベロッパーにあれこれと注文を付ける。力の弱いデベロッパーはそれがどんなに理不尽な注文であっても簡単には断れず、様々な面で折れたり譲ったりすることになります。折れない、譲歩もしない……と対立が激しくなった場合、パブリッシャーは「首(デベロッパー)のすげ替え」を行って別の会社に開発を続けさせることもある。が、デベロッパーが下りずにパブリッシャーの方が下りるというのは前例がないわけではないにしろ異例であり、界隈がザワつきました。

 パブリッシャー変更に伴い、受け付けていた予約は一旦キャンセルになります。どこか別のところに委託して販売することになるのでしょうが、そもそも『Fate/EXTRA Record』がどの程度完成していたのかは不明(一昨年の時点で「ほぼ出来上がっていてテストプレーしている段階」という話はあったが、それにしては公開されている情報が少なすぎ)であり、「バンナムが下りなければ本当にこの春に発売できていたのか?」という疑問が残っています。大半のTYPE-MOONファンは「恐らくバンナムが下りなくても延期は避けられなかっただろう、というか『延期が避けられない』からこそバンナムは痺れを切らして下りたのだろう」と推測している。TYPE-MOONファンは『月姫』リメイクで待つことに慣れ切っているが、「告知から6年近く経ってもまだ発売されていない」のは普通に異常なんですよ。あの大作『ELDEN RING』でさえ最初のトレーラーを出したのは2019年6月、発売が2022年2月だから3年も掛かっていません。やらかし具合としては公開予定を半年も延期したせいで連動コラボの予定を組んでいた企業たちの梯子を外してしまった『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』とどっこいどっこい。「何度も延期して恥ずかしくないんですか」という感じです。何かと叩かれがちなバンナムであるが、さすがに今回は同情的な意見の方が多いようだ。

 詳しい内情はわかっていないが、バンナムもパブリッシャーとはいえある程度開発に携わっていた可能性があるので、今回手を引いたことで『Fate/EXTRA Record』の完成はますます遅れることになりそう。デベロッパーはノーツ(TYPE-MOONはブランド名)、より詳しく書けばノーツ内に立ち上げた新スタジオ「TYPE-MOON studio BB」が開発を手掛けています。新興スタジオということもあり、開発体制が整っていなくて作業が思ったように進まず、納期を守れなくなっているのでは……と予想する向きもある。どういう契約を交わしていたのかわからないから何とも言えないが、手を引く際にバンナムが投入していた資金を「回収」したり、途中まで出来上がっていたゲータを引き渡すために「条件」が付けられたり、何かしら金銭的な遣り取りが発生しているかもしれず、利益を回収するのが困難になっているかもしれない。「発売することによって得られる利益<ここから完成までに掛かる費用」と判断されたら最悪開発中止になる可能性もあります。延期しまくって、一時は「このままフェードアウトするのでは?」と不安がられたものの、いざリリースされると大ブームを起こした『ウマ娘』(ゲーム版)という先例もあるから、まだまだ望みを捨てる段階じゃない。でもあんまり楽観していられないな、というのも正直なところ。ファンは今のところ待つぐらいしかできない。待て、しかして希望せよ。

「戦車椅子-TANK CHAIR-」TVアニメ化、今秋放送 ティザーPVとビジュアル公開(コミックナタリー)

 また予想外なのが来たな……『戦車椅子』は元・凄腕の殺し屋だったけど妹を庇って瀕死の重傷を負い、ほぼ廃人になってしまった青年「平良凪」と妹の「静」、ふたりが活躍するゴア描写満載のアクション物です。凪は「殺意」を察知した瞬間だけ意識を取り戻すので、「殺意」が渦巻く裏社会で汚れ仕事を請け負い続ける。足腰が弱っているため車椅子に乗って戦うのが作品の特徴なんですが、「車椅子」は一つだけじゃなく、状況に合わせてパワーアップしたものが出てきます。悪趣味なノリが苦手な人にはオススメしにくいが、ブッ飛んだアクションが好きな人は一読する価値アリ。

 制作はポリピクこと「ポリゴン・ピクチュアズ」、『 シドニアの騎士』や『亜人』を手掛けたスタジオです。最近の仕事は『アイドルマスター シャイニーカラーズ』のアニメ、いわゆる「シャニアニ」なので「ポリピクかぁ……」という反応も散見される。ヒプマイの映画が26億を超えるヒットになっているのでそれを評価する向きもあるが、それ以外は『大雪海のカイナ ほしのけんじゃ』とか『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』ですからね。監督は「吉平“Tady”直弘」と「安藤裕章」のふたり、これまでのポリピク作品でよく見掛ける名前だ。どう考えても一般ウケする作風とは思えないので、どれだけコアな人気を稼げるかに掛かっていそう。

3月25日までの期間限定公開、『ヴァージン・パンク Clockwork Girl』

 「梅津泰臣」監督のオリジナルアニメ、期間限定とはいえ本編全部を上げるとは太っ腹だ。グロシーンとお色気シーンの一部は規制されているが、まぁそこは仕方ないか。『ヴァージン・パンク』というシリーズの1作目で、「Clockwork Girl」が章題に当たる。機械工学が好きで、「ソーマディア」(攻殻機動隊における「義体」のようなもの)のエンジニアになることが夢の少女「神氷羽舞(かみごおり・うぶ)」。幼くして両親を亡くし、児童養護施設で育ったが、突如銃を持った女が施設を襲撃する。彼女は賞金稼ぎ(バウンティハンター)で、違法ソーマディア(平たく書くとサイボーグ犯罪者)の首を狩りに来たのだと云う。お世話になった「園長さん」が犯罪者だと知ってショックを受けつつも、目の前で「園長さん」を殺したバウンティハンターに憎しみを抱き、羽舞自身もバウンティハンターとなって彼らの獲物を横取りする。初めて会った頃から羽舞に目を付けていたバウンティハンター集団「アルキメDEATH」(クソダサいネーミングにもほどがある……)の元締め「Mr.エレガンス」はしつこく勧誘してくるが、かつての恨みを忘れていない羽舞はけんもほろろに断る日々が続いていた。

 しかしある日、Mr.エレガンスは羽舞が油断した隙を衝いて銃撃。瀕死の重傷を負った彼女は昏睡状態に陥る。そして1年後、ようやく目を覚ました彼女は何の断りもなく脳以外の全身をソーマディアに改造されてしまったことを知り、激昂。Mr.エレガンスに詰め寄ってブチのめそうとするが、改造の際に自由を奪う処置が施されており、リモコン一つで動けなくなってしまう体になっていた。さながら緊箍児を嵌められた孫悟空。「少女趣味」のMr.エレガンスによって「永遠に14歳の乙女」としてメンテナンスを受け続けなければならなくなった羽舞は、怒りを呑み込んでひとまずはMr.エレガンスに従う道を選ぶ。唯々諾々と賞金首を狩る(比喩表現ではなく、ソーマディアに置き換えられない唯一の部位である脳味噌を含んだ頭部さえあれば生死に関わらず賞金が受け取れるため、物理的に首を持って行く)羽舞の望みは、「いずれMr.エレガンスを殺す」の一点のみ。自由を奪われ「クロックワーク・ガール(機械仕掛けのお人形)」にされてしまった女の、自分自身を取り戻す戦いが始まった……。

 一言でまとめると「サイス=マスターみたいな変態に人生を狂わされた女による『続・殺戮のジャンゴ』」。尺が40分弱しかなく、劇場公開された作品にしては短いが、かったるい心理描写や日常描写を削って本編の半分以上を戦闘シーンに費やしているため、アクション映画としての満足度は高い。サイボーグ犯罪者どもが腕をガシャガシャガシャ!と変形させて銃弾乱射したり小型ミサイルを巻き散らしたりと派手な銃撃戦を繰り広げます。とにかく映像が見ていて気持ちいいんですよね。梅津泰臣と言えば『A KITE』や『MEZZO FORTE』など18禁OVAでありながら激しいアクションシーンが売りの監督で、『ガリレイドンナ』や『ウィザード・バリスターズ 弁魔士セシル』といったTVシリーズはあまり当たらなかったが、海外でもマニアックな人気があることで有名。リアリティがある、というのとはまた違う、偏執的なこだわりが発揮された「動き」でこちらの脳をゾワゾワゾクゾクさせる。通常、ガンアクションはアニメよりも実写の方に分があるジャンルなんですが、「アニメならではの快楽」を追求したガンアクションといった趣で実写作品にはない特殊な栄養分を補給させてくれます。

 時間がない人はとりあえず動画の26分40秒あたりから再生してください。このアニメの大トロ部分をいきなり味わうことができます。いやぁ、期待していたけど期待以上の出来だった。梅津さん、もうとっくに還暦を過ぎてそろそろ70が近くなってきたのに、まだこういうアニメ作れるんだなぁ。「シリーズ」と謳っているから続編を制作する気も満々なんだろうが、これだけ凝っていると時間が掛かりそうだ。スタジオも「シャフト」だしな……まどマギ映画の新作を公開予定間際になって半年も延期したことでお馴染みの。

 それにしてもMr.エレガンスが突然凶行に走ったの、羽舞が「何者か」に狙われていることを察知して「それなら俺が先に……」と手を出した感じだったから、2作目以降では「羽舞を狙っていた何者か」がストーリーの軸になっていくのかな? 「乃愛・アンドリエット」や「ヴェスパ」など、キャラ紹介ページに載ってる子たちも顔見せ程度で活躍するシーンはない。せめてガンパンの最終章ほどは時間を掛けずに完結まで走り切ってほしいものだ。


2026-03-15.

・WBC、他力状況に追い込まれて2次ラウンドへの進出はもはや困難か……と思われたアメリカが「イタリア5点ゲット」した瞬間にほぼ復活が確定したりと、相変わらず劇的な展開が続いて面白かった焼津です、こんばんは。2次ラウンドではカナダを破ってベスト4入りが確定しましたね。

 一方、奇跡的にベスト8入りしてマイアミへの切符を掴んだ韓国は2次ラウンドの初戦でドミニカ共和国にワンサイドゲームされてコールド負け。日本や台湾は結構苦戦したのに……新章に突入した直後、主人公たちが苦労して倒した敵をポッと出の新キャラが瞬殺する現象を目の当たりにした感じでした。日本は明日(日付的にはもう今日か)、強豪ベネズエラとの対決。どうなるかドキドキハラハラしますね。

田中一行「ジャンケットバンク」TVアニメ化 真経津役は斉藤壮馬、御手洗役は安田陸矢(コミックナタリー)

 なにっ、『ジャンケットバンク』がアニメ化だと!? 単行本揃えてるくらい好きなマンガなんでビックリした。「銀行が秘密裡に違法なギャンブルを取り仕切っている」という設定で、「たまに死人が出るけどそれが表沙汰にならないよう『処理』する連中もいる」という「それなんてマフィア?」な話です。既存の作品で言うと『嘘喰い』が一番近いかな。『嘘喰い』も結局、本格的なTVアニメ化はしなかったし、ジャケバンも「人気はあるけど倫理的な問題があるからアニメ化しないまま続ける枠」かなー、と思っていました。いえ、『嘘喰い』は倫理面どうこうというより、昔作ったOVAの出来があまりにも悪くて作者が怒ったからその後の企画が立ち消えになった臭いんですけど……確かパチンコか何かにはなってたはずで、そっちの方でちょっと新たにアニメ作ったりもしてたんですっけ? 何であれ、恐らくMAPPAクラスの作画でもないかぎり原作者はGOサイン出さないと思います。

 話を戻して『ジャンケットバンク』、銀行員の「御手洗暉」を視点人物に据え、謎のギャンブラー「真経津晨」が時に命すら賭けて勝負する様を追っていく。御手洗くんはたまに活躍するエピソードもありますが、最近はちょっと空気ですね……個性的なギャンブラーが次々と登場することもあり、銀行員は黒子というかサブキャラっぽいポジションに落ち着いている。ギャンブラーたちがどれくらい個性的かと言うと「お客様は神様だが 納得いかねぇなら殴ってもいい」と嘯くチェーン店の代表取締役が「そこそこ印象的」止まりになってるぐらい全体的に濃い。命賭けてるから死ぬキャラも多いが、生き延びたギャンブラーたちが仲良く遊ぶ回もあって、「きららマンガみたいで楽しい」と血迷い始める読者も少なくない。アニメは、切り所を考えると第6ゲームの「ブルー・テンパランス」あたりかな。単行本で言うと9巻。どんどんルールが複雑になっていくタイプのマンガなんで、アニメの視聴者が付いてこれるかどうか少し心配だ。原作もコメント欄を除くとちょいちょい付いて行けなくて雰囲気だけでエンジョイしてる人もいる。あ、『ジャンケットバンク』はジャンプ+とかで「初回無料」配信されているから「いっぺんザーッと読むだけ」なら課金しなくてもOKです。ただ、「ルールが複雑」だからじっくり読み込みたいのであればやっぱり単行本を買った方がいい。

 制作スタジオは「CUE」。DMMグループに属する新興スタジオで、TVシリーズは4月放送予定の『キルアオ』が初の元請け作品。ジャケバンは10月放送予定なので第2弾です。あと放送時期は未定だが、『炎の闘球女 ドッジ弾子』も今年やる予定。てか、今の段階で未定なら7月か10月だよな……ジャケバンよりも先になる可能性もあるか? 監督は「岸誠二」、『瀬戸の花嫁』や『天体戦士サンレッド』、『Angel Beats!』、『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』、『暗殺教室』などを手掛けたベテランです。シリーズ構成は「深見真」、最近は小説の仕事よりも漫画原作がメインになってきた作家。アニメ関連だと虚淵玄と組んでやった『PSYCHO-PASS サイコパス 』が有名かな。なにげに百合好きで、『ゆるゆり』3期の脚本を書いていたりもいる。声優は真経津役が「斉藤壮馬」、御手洗役が「安田陸矢」。斉藤壮馬はリメイク版『るろうに剣心』の剣心役を演じていますね。安田陸矢は最近だと『真夜中ハートチューン』の主人公、「この山吹!」な山吹有栖を演っている。正直、低予算なムードがぷんぷん漂うけど布陣的にそこまでヒドいことにはならない……はず。期待しすぎない程度に期待しておこう。

 しかし、ジャケバンがアニメ化ってなると他のギャンブルマンガにも希望の光が射してきたな……イケるか? 『ギャンブルフィッシュ』『賭博覇王伝 零』『幕末賭博バルバロイ』

・拡大公開が始まったおかげで地元でも観れるようになった『超かぐや姫!』、映画館で鑑賞してきました。

 劇場公開前提ではないせいで、「ここは大きいスクリーンで眺めるとちょっと……」なシーンもいくつか散見されたが、かぐやといろはの表情豊かなフェイスを大スクリーンで堪能できたのはやっぱり楽しかったし、ようつべで公開されて何度も聴いてる曲を大音量で浴びることができる体験は格別だったし、概ね満足しました。しかし、拡大の初日とはいえ、とっくにネトフリで配信されている作品があそこまで混むとは……入場時間が別スクリームのドラえもんと重なったらしく、ロビーがえらいことになってました。映画館のスタッフが「こちら最後尾でーす!」「ここで折り返してくださーい!」と大声で列整理していて、まるで鬼滅の初週みたいな有様。余裕を持って到着したのに明かりが消えるギリギリのタイミングで座ることができました。ザッと見た感じだと、300人以上入るシアターが8〜9割くらいは埋まっていた印象。うちみたいな田舎にここまで「『超かぐや姫!』を初日に観たい」という客が駆け込んでくるとは……そんなほぼ満員に近い状態だったのに、なぜか私の隣の席はポッカリ空いてました。

 ここで説明しておかないとかもなので説明しますが、私は初日のチケットを予約開始直後にポチりました。同じ考えだった人が複数いたらしく、予約システムへ数秒の入場待ちを喰らった後、なんとか真ん中のイイ席が取れたんです。念のため「本当に予約できているかどうか」確認するため時間を置いて再アクセスしたのですが、ほんの10分でイイ席はほとんど埋まっていて、もうイマイチな席しか残っていなかった。だから、本当なら私の隣も予約で埋まっていたはずなのです。地元の映画館は一度決済したらキャンセル不可能な仕様なので、「やっぱやーめた」と気軽に取り消したりすることはできない。恐らく何らかの事情で鑑賞を断念せざるを得なかったのでしょう。だから空席がポッカリと出来てしまった。しかも、空席は一つじゃなくて二つ……たぶんペアチケットを買ったのだと思われる(『超かぐや姫!』は特別興行なので各種割引が適用されない代わり、ペア割引だけ設けられている)。誰かにチケットを譲ることもできないまま上映時間を迎え、ほぼ満員に近い劇場の中に生じた空白……何かのドラマを感じてしまう瞬間でした。

 なお、拡大公開初日の動員数はゴールデンカムイに次ぐ2位、観客がどっと増える土曜日は座席数を減らされた(ドラえもんとかビーバーは土日の客がメインなので、どうしてもそっちの方に席を割く劇場が多い)せいもあって5位まで下がったが、新作と競り合うレベルなのでかなり稼いでいます。既に累計興収は10億円を突破しており、オリジナルアニメ映画としてはかなり異例な規模のヒット作となりつつある。現時点で『心が叫びたがってるんだ。』(最終11.2億円)や『プロメア』(最終15億円)に並ぶクラス。こんな逆の意味で「公開規模を間違えた」アニメは初めて観るな……。

・同日に『パリに咲くエトワール』も観た。

 「谷口悟朗」監督による松竹肝煎りのオリジナルアニメ映画。脚本はいくつものアニメを手掛けてきた大ベテラン「吉田玲子」、制作は『モンスター娘のお医者さん』や『月とライカと吸血姫』、最近だと『九龍ジェネリックロマンス』を手掛けた「アルボアニメーション」。1912年、第一次世界大戦前夜のパリを舞台に、夢を追いかけて渡仏してきた少女たち二人の奮闘を描く。拡大解釈すれば「百合」と言えなくもないが、普通に「シスターフッド(女性の友情)映画」と受け取った方が良さそうです。結論から言うと「超高速世界名作劇場」であり、「ヨロイとカギ爪の男が出て来ない『ガン×ソード』」。エルドラ5とかキャプテンカイジとか、あのへんのノリがひょこっと顔を出してくる。そういえば谷口悟朗、2年ほど前に『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』とかいう映画の監督もやってたけど、まだ観てなかったな……あとで観よう。

 二人の出会いは1907年――絵を描くのが好きで、画家を夢見る少女「継田フジコ」。室町時代から続く薙刀道場の跡継ぎ娘にして、バレエダンサーを夢見る少女「園田千鶴」。5年後、明治時代の終わりが迫る1912年。二人は再会し、花の都パリで二つの夢が交錯する。バレエダンサーになりたい気持ちを押し殺そうとする千鶴の背中を押し、バレエの先生を紹介したフジコ。少しずつ、でも着実に夢へ近づいていく千鶴だったが、世界情勢はどんどん不穏な色を帯びていき、二人の夢にも暗雲が差し掛かり始める……。

 正直、あらすじだけ読むと何も面白くないので予告編とかはいちいちチェックしなくていいです。ぶっちゃけこの映画の宣伝を目にして、内容が良いかどうかはともかく「売れそう」「ヒットしそう」と感じた人はほとんどいないはずだ。「オタク臭くない、子供も大人も安心して鑑賞できるアニメ」って、率直に言って興行的な需要がないんですよね。よくわからないオリジナルアニメ映画を観るくらいならドラえもんかコナンの新作を選ぶ、というのがこの手の映画が喉から手が出るほど欲しがっている「一般観客層」のごく一般的な選択なので。アニメオタクにしても、このキャラデザとキャスティングではあまり食いつかないでしょう。フジコ役は女優の「當真あみ」、過去に『かがみの孤城』のアニメでも主演している人です。千鶴役はタレントの「嵐莉菜」、今回が声優初挑戦。一応、二人とも聞き取れるレベルでしっかり発声しているが、まるで舞台劇のような声の張り上げ方なので普段からアニメ映画を観慣れているオタクは違和感を覚えるかもしれません。一本調子というか、そこまで必死にならなくていい場面でも必死な喋り方をしているせいで、本来目立つべき「必死な場面」が埋没してしまっている。これよりヒドい「声優初挑戦」はいくらでもあるのでまだマシな部類だが、耳の肥えている今のオタクが魅力を感じる演技だとは到底言えません。

 吉田玲子が脚本なのでシナリオは手堅くまとまっていますが、前半1時間くらいはひたすら紋切り型(クリシェ)なやり取りが続くので退屈します。もうこれに関しては「企画側のオーダーがこれだったんだろう」と割り切るしかない。「職業婦人」という言葉が普及する前、「女が仕事で身を立てようとするな」「結婚して家庭に入れ」と要求してくる親兄弟の「圧」を跳ね返し、真に進みたい道を選んで己の足で歩いていく……「心の強さでもう一丁!」な女一代「ただのエトワールじゃねぇぞ 何度でも心の強さで立ち上がり前に進む ド級のエトワール ドエトワールだ!」記。あ、書き忘れていましたがエトワールはフランス語で「星」のことで、パリのバレエ団におけるトップダンサーを意味する。細かい違いはあるけど「プリマドンナ」とだいたい同じ意味と思ってもらっていいです。フジコの画家志望設定はそこまでスポットが当たらず、どちらかと申せば「バレエダンサーを目指す千鶴の奮闘」の方がストーリーの軸になっています。そのためバレエに興味が持てないとなかなか集中力が続かないのが難点か。専門的な知識はさほど必要ではなく、曽田正人の『昴』を何冊か読んでる程度で充分です。後半はクライマックスの手前まで千鶴が壁にぶつかる→乗り越えるという展開を何度か繰り返しますが、このへんのテンポは『将太の寿司』ですね。「僕は馬鹿だ……! 〇〇に気を取られて××を見落としていただなんて……!」というロジックでサクサク進みます。そして最後が「ヨロイとカギ爪の男が出て来ない『ガン×ソード』」。お行儀のいい映画作らされて監督もいい加減フラストレーションが溜まっていたのかな……と邪推してしまう。

 映像面はかなりレベチな一本。「大スクリーンで上映する」ことを前提に驚くほど気合を入れて作画しまくっているので、引きの画面での情報量がスゴいんですよ。スゴすぎて自然な印象しか残らないため、スゴさが伝わりにくい。確か企画の開始が2019年で、コロナ禍による停滞があったとはいえ足かけ8年は制作していた勘定になるから作り込みの細かさは狂的な域に達しています。クライマックスの凄まじさはテレビやタブレット、ましてやスマホの画面程度では到底伝わらない。まるで「その場にいる」ような臨場感さえ漂っていた。断言しても構いませんがこの映画、「興味はあるけど配信待ちでいいや」という方はいざ配信が来た日、劇場で観なかったことを後悔するハメになります。「嗚呼、この偏執的な精緻さをデッカいスクリーンで堪能したかった……だがもう遅い!」と追放ざまあ系の追放者側並みに慚愧の念に駆られること請け合い。あれだけガラガラだと上映回数やハコのサイズはえげつない勢いで削られていくだろうから、気になっている方は早めに観に行ってください。

 だって、公開初日でそこそこいい座席数貰っているのに動員ランキングTOP10圏外で推定1200万円のスタートですよ。『ChaO』とか『トリツカレ男』よりはマシ、というレベルでしかなく、相当ヤバい。客のほとんどはドラえもんの新作かディズニー&ピクサーの新作(『私がビーバーになる時』)に流れてしまっているようです。悲しいけど、これがオリジナルアニメ映画を取り巻く現実なのよね。『超かぐや姫!』という例外中の例外が同じ日に超拡大公開をかますという事故みたいな状況になっているけど。『超かぐや姫!』の13日デイリー興収は約1.2億円なのでほぼ10倍。上映規模は1/2程度なので、勢いとしては20倍くらい。収容人数300名以上のシアターが満席に近かった『超かぐや姫!』に比べ、『パリに咲くエトワール』はレイトショーだから少ないのは当然とはいえ、200人は入るシアターに私含めて10人ちょっとしかいなかった……包み隠さず「ヤバい」と申し上げておきます。

 ちなみに、フジコと千鶴が出逢った1907年というのはちょうど同じ日に新作公開された『ゴールデンカムイ』と一緒です。少女二人が交流している頃に北海道で杉元たちが刺青人皮を巡って争っていたんだと思うと胸が熱くなるな。リアルだとガストン・ルルーの『黄色い部屋の秘密』(創元版だと『黄色い部屋の謎』)が連載されていた頃ですね。ただし、作中の事件は1892年発生。このへん(第一次世界大戦前)のフランスをベル・エポック(良き時代)と呼んで懐古する向きもあるが、日本人だと「ベル・エポック」と言われてもあんまり具体的なイメージが湧かないんだよな。「怪盗紳士」アルセーヌ・ルパンが暗躍したのがこの時代なんで、とりあえず『怪盗ルパン伝アバンチュリエ』をオススメしておきます。一世を風靡したけど、ルパンに比べて「忘れられた怪人」となっている『ジゴマ』もこの時代。「怪人二十面相」の元ネタである「ファントマ」も大暴れしており、まさに世は「大怪盗時代」といった趣だ。「残酷」の代名詞であった「グラン・ギニョール劇場」が隆盛を極め、俗悪な娯楽が流行っていた――という背景もあります。フランス以外だとイギリスで「ブラウン神父」シリーズが人気を博していた。日本だと夏目漱石が新聞連載で活躍。二人がパリで暮らし始める1912年はタイタニック号が沈んだ年でもあるので、実は『タイタニック』が同時代を舞台にした映画ということになります。「タイタニックが沈没した」ところから物語が動き始めるドラマ『ダウントン・アビー』も自動的に同時代作品となる。ちなみにYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)のメンバー「細野晴臣」の祖父「細野正文」がタイタニック号からの生還者です。パリエトがキッカケでベル・エポック・ブームとか到来したら面白いけど、まずはもう少し口コミか何かで評判が広まらないとですね。


2026-03-11.

・普段野球はあまり見ないけど、『サンキューピッチ』面白いし『超かぐや姫!』のためにネットフリックス入ったし、ついでだからWBC観戦しとくかぁ……と軽い気持ちで眺めていたらメチャクチャ白熱する試合続きで興奮した焼津です、こんばんは。

 『サンキューピッチ』を「へ〜」と感心しながら読むレベルなので別に詳しいわけじゃないんですが、念のため解説しておきますとWBCというのは「ワールドベースボールクラシック」の略で、ちょうど20年前に始まった国際野球大会です。毎年開催されるわけではなく、数年おきの開催(本来はオリンピックよろしく4年周期にするつもりだったが、2005年に開催する予定だった第1回が調整に手間取って翌年へズレ込んだり、コロナ禍の時期は中止だったりでもうグチャグチャ)であり、今大会で第6回となる。野球の大会としては比較的歴史が浅く、世界における認知度もやや微妙なところですが、「各国のエースたちが球団の垣根を越えてドリームチームを結成する」ことに浪漫を感じる人も多くて年々注目度が上がってきています。日本のチーム、いわゆる「侍ジャパン」は第1回、第2回、第5回と過去3度に渡って優勝しており、優勝していない第3回と第4回も3位になっているのでWBCの中では「強豪チーム」という位置付け。今回も優勝候補のひとつに数えられている模様。

 WBCは20の参加国を4つのプールに分け、各プール5チームに総当たりで試合をやらせ、勝ち星の数に応じて各プールの上位2チームを決定。ベスト8を選出し、そこから準々決勝→準決勝→決勝とトーナメント方式で優勝を争います。日本が振り分けられたのは「プールC」、開催地は「東京ドーム」。他の面子は「韓国・台湾・オーストラリア・チェコ」。ホームとも言うべき球場での試合であり、日程的にも余裕があってかなり有利と目され、「よほどの不運に見舞われないかぎり高確率で1次ラウンドは突破できるだろう」と楽観する野球ファンが大半でした。

 日本の初戦は3月6日、相手は「チャイニーズ・タイペイ」……要するに台湾のことです。「台湾を独立国とは認めていない某国」に配慮して、世界的な大会ではこの名義を使うことになっているそうな。エロゲー声優が表の仕事をするときに別名義を用いるような感覚かな? ともあれ、台湾戦では大谷翔平がグランドスラム(満塁ホームラン)をキメるなど侍ジャパンの打線が大暴れ、相手チームには1点も入れさせず「13-0」で7回コールド勝ちとなった。このとき、周囲が歓喜に沸く中で誰かがボソッとコメントしてたんですよね。「このまま勝ち進めば問題ないが、もし縺れて2位争いになった場合、少ない回(イニング)で勝ったことがアダになる」と。私は「縺れる」がどんな状況かわからなかったので「ふーん」と聞き流していました。

 日本の第2戦は3月7日、相手は韓国。1回表でいきなり韓国に3点も先制されるという暗雲の立ち込める開幕だったが、1回裏で鈴木誠也が2ラン、3回裏で大谷翔平がソロホームランを打って素早く追いついた。このときの大谷の「はい同点〜!」連呼は小学生みたいで笑った。同じ3回裏で鈴木と吉田正尚もソロホームランを飛ばし、「5-3」に逆転。しかし韓国も4回表で「キム・ヘソン」が2ランホームランを打って「5-5」の同点に戻し、乱打戦の様相を見せ始める。激しい打ち合いの末、「8-6」で日本が勝利。結構な接戦で見ていて面白かったです。

 3月8日は日中に韓国vs台湾戦で、夜に日本vsオーストラリア戦というスケジュール。韓台戦は結果次第で日本の1次ラウンド通過が確定する(台湾はこの時点で1勝2敗、韓国は1勝1敗、もし台湾が勝てば韓国の3勝コースは消えるので、両チームに勝っている日本は自動的に2位以上となる)大切な試合だったこともあり、最初は「ながら見しようか」とテレビつけたまま他の作業してましたが、互いに点を取ったり取られたり、激しいシーソーゲームを繰り広げているものだからつい作業をやめて見入ってしまった。最終的に「5-4」で台湾が競り勝つという劇的な結果を迎え、日本は最低でも2位で通過することが確定。台湾の野球チームが韓国に勝つのは初めてということで、台湾が大騒ぎになる中、「台湾=確実に勝てる相手」と見做して勝ち星を拾いに行くつもりだった韓国サイドは愕然としていました。日韓戦で活躍したヘソンが泣き崩れる様は痛々しかったですね。「どちらかと言えば韓国が有利」と見られていた試合なので、番狂わせというほどではないにしろ、うっすらと想定していた状況から徐々にズレ始めた印象を抱いた野球ファンもいたようだ。

 この時点の状況を整理しますと、プールCの5チームのうち「チェコ」は既に3連敗しており、1次ラウンド敗退が確定。上述した通り、日本は最低でも2位での通過が確定した。未確定なのはオーストラリア、韓国、台湾の3つ。複雑な三つ巴の様相を呈し始めたのです。8日の日豪戦でオーストラリア(既に2勝している)が勝利すれば、オーストラリアは9日の韓国戦を待たずして1位通過が確定。日本が2位となり、韓国と台湾の可能性は消滅します。しかし日本が勝てば「日本の1位通過」が確定する代わり、2位がどこになるか簡単にはわからない混沌とした状況になってしまう。9日の豪韓戦次第で韓国や台湾が2位通過する可能性もある。こうした事情から、皮肉なことに、日本に負けた台湾と韓国が揃って「頼むからオーストラリアに勝ってくれ!」と懇願する不思議な現象が発生しました。

 天覧試合ということもあって厳重な警備の中で行われた日豪戦、「4-3」となかなか際どいスコアで日本が勝利し、いよいよ熾烈な2位争いが始まった。9日の豪韓戦でオーストラリアが勝てば3勝で2位通過決定。しかし負ければ豪・韓・台の3チームすべてが2勝2敗になり、三者間での「失点率」を巡る戦いになる。韓国はただ勝つだけではダメで、最低でも「5-0」のスコアで勝たないと2位通過できない。仮に「4-0」のスコアで勝った場合、失点率の差からオーストラリアが2位通過となります。5点差なら「6-1」や「7-2」のスコアでも韓国は2位になれる。ただし、「8-3」から先に行くと失点の重なりによって台湾が2位に浮上してしまう。「大量に点を取りつつ失点を2点までに抑えなければならない」というミッションインポッシブルじみた非常に厳しい条件が課せられていたわけです。しかも点を取り過ぎてコールド勝ちした場合、「失点を2点までに抑え」たにも関わらず「イニングが少なくなった」影響で失点率が上がって3位に転落しかねない……日台戦のときに誰かが呟いた「少ないイニングで勝ったことがアダになる」という伏線が回収されて、思わずゾクゾクしましたね。

 韓国が2位通過するために許されるスコアは「5-0」か「6-1以下」か「7-2以下」、コールド勝ちした場合はまた計算が違ってくるので8点以上取るのは危険……観戦しているこちらも詳しい人の計算結果を参照しながらでないとよくわからないほど複雑怪奇な勝利条件を、野球しながら満たさねばならない。棚ぼた狙いの台湾は韓国に「8点以上取って勝て!」と応援しつつ、同時にオーストラリアへ「3点奪え!」と要求する異常な試合。韓国は5回表までの積み重ねで「5-0」という奇跡的なスコアを実現し、2位通過の可能性を示すが、「たとえ試合に負けても1次ラウンドは通過してみせる」という気迫を見せたオーストラリアが5回裏で1点取って「5-1」。すかさず6回表で韓国が取り返して「6-1」。しばらくそのままスコアが動かなくなったが、8回裏でオーストラリアが1点入れたことにより「6-2」、またしても天秤の傾きが入れ替わった。しかし韓国も執念を見せ、9回表で点を入れて「7-2」……あと1点取ったら台湾も候補になるというスゴい試合展開になった。しかしそれ以上の点は入らず(取る意味がないというのもあるが)、台湾の可能性はほぼ消滅。韓国に台湾をアシストする理由がないので、もともと「うっかり点を取り過ぎてしまう」ケース以外での勝ち筋はなかったのだ。あとは韓国がこのスコアを守り切れるかどうかという争いになった。1点でも奪われたら、試合に勝てても1次ラウンド敗退が決まる――薄氷を踏んで歩くような、針の穴に糸を通すような、そんな限界ギリギリのシチュエーションで見事3アウトをキメて、「試合に勝利しつつ準々決勝への進出も確定させる」ミラクルを達成。台湾戦の敗北で泣き崩れていた韓国の選手が今度は嬉し泣きでしゃがみ込むという「地獄の底から生還した」ような光景に、高みの見物を決め込んでいたこちらも思わず興奮しました。

 ぶっちゃけゲームとしては日本の絡んだ4戦よりも韓台戦と豪韓戦の方が面白かったですね。日豪戦は「できれば1位通過したい」という思惑からある程度の緊張感は漂っていましたが、ハラハラ感はそこまでなかった。10日のチェコ戦は完全に消化試合でしたし。サトリア選手の「速くはないがコントロールの良い」投球が光る渋い投手戦ではあったけれども。自国チームでもないのにこれだけエキサイトできたんだから、韓国・台湾・オーストラリアの野球ファンはテンションがヤバかったでしょうね。「あかん、心臓ドキドキし過ぎて見てられへん!」みたいな。それはさておき、準々決勝は13日から始まって、15日から準決勝、そして17日に決勝という段取りになっています。まずは2次ラウンド、ベスト4に入れるかどうかの戦いか……ワクワクしますね。

 そんな感じでプールCは全日程終了しましたが、まだ終わってないグループで面白いことになっているのがプールB。なんと優勝候補の一つだったアメリカが敗退の危機に瀕しています。「2勝が並んで2位争いになった」プールCと異なり、プールBは下位2チーム(イギリスとブラジル)の敗退が早々に決まったものの、1位から3位が未だに流動的で未確定な三つ巴状態となっている。明日12日の「メキシコvsイタリア」戦でイタリアが勝てば「イタリア全勝、アメリカ3勝1敗、メキシコ2勝2敗」ですんなり順位が決まりますけど、もしメキシコが勝った場合、3チームすべてが3勝1敗で並び失点率の計算で順位を決めることになります。メキシコが取った得点次第でアメリカが3位になり得る。

 3勝もしてるのに進出できない、というのも何だか奇妙な話ですが、これは最下位のブラジルが全敗、4位のイギリスが1勝3敗――つまりブラジル以外には全部負けているということで、3勝のうち「ブラジルとイギリスに対する勝ち星2つ」は3チーム全部持ってるから進出を巡る条件には関係してこない……っていうごく単純な理屈です。しかしアメリカの監督は何を勘違いしたのか、11日のイタリア戦の前に「もう準々決勝進出は決まっているけど」といった趣旨のコメントを漏らしてしまった。つまり、「できれば勝ちたいけど進出条件は既に満たしているから負けても別に構わない」、そこまで言わなくても「必死になって勝たなくてもいい」と錯誤して戦力を「温存」した疑惑があるのです。アメリカの野球ファンは大荒れで、監督に罵詈雑言を浴びせまくっている。一応、アメリカにも乏しいとはいえ勝ち上がりの可能性はまだほんのりと残っていますが、「厳しい条件を満たせば自力で2位になって進出できる」状況だった韓国と違い、完全に「他力」でイタリアの勝利orメキシコが最低でも5点取って勝つことを祈るしかない。生殺与奪の権をイタリアとメキシコの両国に握られている状態なのです。

 イタリアとメキシコが明確に「密約」を交わすまでもなく、阿吽の呼吸で「お互い本気を出さない」ことに合意すればアメリカの道は鎖される。準々決勝が控えているので、イタリアにしろメキシコにしろ「死に物狂いで勝ちに行くのはアド損」と判断し、余力を残そうとするだろう。あまり露骨にやれば「八百長」「無気力試合」と非難されるだろうが、「温存も戦略のうち」というのであれば外野(アメリカ)はとやかく言えない。イタリアとメキシコも「戦力を『温存』しているアメリカをトーナメントに進ませて決勝でもう一度当たるケースを考慮すれば、このままコイツと一緒に上がった方がいい」と損得勘定するでしょう。アメリカはただ指を咥えて両国が準々決勝進出への切符をシェアする様子を見守るしかないのだ。まるで『ONE OUTS』だな。「こんな戦略が通る穴だらけのルールを決めたMLBが悪い」と言われたらそれはそう。

 決勝トーナメントはヒューストンとマイアミで行われるのに、アメリカの球団はどこにも存在しない……そんな椿事が発生する可能性が高まっており、「よもやよもやだ」と言うより他にない。これまで2次ラウンドでの敗退とかはあったみたいですが、最低でもベスト8には滑り込んでいた国が1次ラウンドで早くも消える……かもしれない。大波乱の兆しに目が離せません。入ってよかった、ネットフリックス。試合のみならず盤外戦まで面白いなんてな。ちなみにプールAはプエルトリコが2位以上で進出確定、明日12日の「カナダvsキューバ」戦でもう1チーム、勝った方が次に進めます。プールDはベネズエラとドミニカ共和国がそもぞれ3勝で勝ち抜け確定していますが、明日12日の直接対決で順位が決定する。勝った方が韓国の準々決勝、負けた方が日本の準々決勝の相手になります。ベネズエラもドミニカも死に物狂いで戦う理由はない(というか準々決勝に向けて余力を残さないとヤバい)から消化試合になるかな? この2国が「日本と当たりたくない」と思っているなら「ちょっと本気出す」モードかもしれませんが。

【公式】『エヴァンゲリオン放送30周年記念特別興行』

 2月に開催された「EVANGELION:30+;」(30周年記念フェス)で公開された短編アニメーションです。ふざけた内容とはいえ15分程度とそこそこのボリュームがあって見応え充分。「惣流・アスカ・ラングレー」と「式波・アスカ・ラングレー」、つまり旧アスカと新アスカのコンビ「ダブルアスカ」が漫才するという、「本当に公式の動画か?」と目を疑う一本です。この直球すぎるほどの内輪ノリ、まさに90年代の亡霊といった趣である。クリームパンダ役でお馴染み「長沢美樹」が伊吹マヤ役として未だに引っ張り出されているのが味わい深い。

 「まるで昔出していたドラマCDのようなトンチキさ」と懐かしさを感じている古参も多かったが、私はパラレルな存在である旧アスカと新アスカが会話する中で「世界線」という用語が飛び出したことに軽い驚きを覚えました。以前はパラレルワールド物の場合、「別の世界」を表現する際に「時間軸」とか「並行宇宙」とか「可能世界」とか「異なるチャート」とか、様々な言い方をしていて統一されてなかったんです。世界線という言葉もなくはなかったが、そんなにメジャーな用語として普及していたわけではなかった。オタク方面のフィクションで世界線という言葉を定着させたのは皆さんご存知『STEINS;GATE』です。シュタゲが発祥ではないけど、シュタゲの影響で広まったことから「世界線≒シュタゲ用語」として認識されています。

 ただ、シュタゲ知ってる人にはわざわざ解説する必要もありませんが、シュタゲのストーリー内で扱われている「世界線」とオタク方面のフィクションでよく使われる「世界線」って実は別物なんですよ。いくつものパラレルワールドが、まるで細長い無数の串みたいに乱立している――というのが現在よく使われる「世界線」のイメージだと思います。要するに「パラレルワールドの一つ」を指す言葉として用いられるケースがほとんど。ダブルアスカの漫才でも概ねこの意味で使われている。しかし、シュタゲにおける「世界線」のイメージは「無数の串」ではなく、むしろ「たった一本の串」なんです。いくつものパラレルワールドが過去から未来までずーっと存在しているわけじゃなく、その揺らぎを解消し「様々な可能性をたった一つに絞り込む」ことで主人公が望む世界を「正史」として確定しようとする。「ああ、いろんな串があるんだなぁ」という話ではなくて、たった一本しかない串で何を刺すのか……気の抜ける喩え方をすると、「おでんの具を決める」物語なわけだ。

 シュタゲのストーリーの根幹にも関わってくる言葉だけど、ハッキリ言ってオタク用語としては使いづらいので、わざとなのか誤解に基づくものなのかは不明だが、本来とは異なる意味の用語として定着したのです。こういう現象は割とよくあることで、同じオタク用語だと「ツンデレ」も当初の意味とはだいぶ違う形で定着していった。本来は特定の誰か(概ね主人公)に対し取り付く島もないほどツンケンしていた子が、時間経過や関係の変化に伴って見る影もないほどデレデレに惚れ込んでしまう……というギャップを強調する言葉だったのに、わかりやすく説明するために「べ、別にあなたのためにやったんじゃないんだからねっ!」というテンプレ台詞を添えた結果、「ツンケンしているように振る舞っているけど好意がバレバレな様」を指す言葉に変質していった。「べ、別に(以下略)」はツン期からデレ期に移行しつつある端境期、いわゆる「デレかけ」の状態を表現するテンプレ台詞だったのだが、テレビの番組で「デレかけ=ツンデレ」と粗雑に解釈された結果、そっちの方で広まってしまった。今や本来の意味で使う方が変な環境になっているので、もう訂正とかは諦めて受け容れています。

 「本来の意味からズレた用途で定着してしまったフィクション由来の言葉」、もっとも有名なのは「黒歴史」だろうか。今や「元はガンダム用語」ということを知らない人まで使っているところを見掛ける。90年代末に放送された『ターンAガンダム』の劇中に登場する言葉で、「記録が残っておらず完全に空白となった過去の歴史」を指す。いろいろあって主人公たちは失われた歴史が保存されている遺跡に辿り着き、そこで驚愕すべき黒歴史の中身を知ることになるわけですが、現在は単に「忘れたい過去のイタい言動や不行跡」という意味で使用されることがほとんどです。「塗り潰されて見通すことがまったく出来ない」「知の拒絶」という深刻な意味だった「黒」が、「後ろ暗い」「直視したくない」「否定したい」ぐらいのニュアンスに緩和されている。2010年に『あるいは現在進行形の黒歴史』というライトノベルが発売されており、もう十数年前から異なる意味で定着していたことになる。去年は『転生悪女の黒歴史』もアニメ化されたし、むしろ「本来の意味」の方がマイナーになってきています。

 オタク用語とはちょっと違うけど、「インメルマン・ターン」もちょっと複雑ですね。これは航空機のマニューバ(操縦・機動)の一つで、第一次世界大戦のときの撃墜王「マックス・インメルマン」に因んで名付けられています。インメルマンの得意技だったからインメルマン・ターン……と素直に受け取っている人が多いのだが、実は現在インメルマン・ターンと呼ばれているマニューバはインメルマンが使った技とは別のものなんです。そもそも第一次世界大戦の頃に使われたのは「レシプロ機」で、それに比べて遥かに高速な「ジェット機」と同様のマニューバなんか出来るわけがない。レシプロ機でうまく立ち回るための工夫としてインメルマンは独自のマニューバを生み出したが、第二次世界大戦以降、航空機の技術がどんどん進化して「レシプロ機で使っていた工夫」をわざわざ駆使する必要がなくなり、「(主に機体性能の関係で)インメルマンには不可能だったマニューバ」が新たに普及していった。なので正確に表現すれば「スーパー・インメルマン・ターン」と呼称するべきなのだが、撃墜王に敬意を払ったのか、「単に『インメルマン・ターン』の方がカッコいい」と思ったのか、経緯は不明だが「インメルマンが使ったことのないインメルマン・ターン」が用語として残り続けている。まぁ「有名人に因んでネーミングされたけど、当の有名人とは何の関係もなかった」なんてのはよくあることですね。ポケモンアニメの「ポリゴンショック」だって別にポリゴンが原因だったわけじゃないのに事件名として定着しちゃってるし……。

 話が逸れまくった。EVAは庵野が主導する本編こそ完結したものの、「これだけのヒット作を終わらせるのは惜しい」と判断したのか、また新たなシリーズを開始しようと企画が動いているそうです。「エヴァンゲリオン完全新作シリーズ」としか書かれておらずタイトルはまだ不明ながら、シリーズ構成・脚本に「ヨコオタロウ」が抜擢されていることから「ヨコオEVA」と仮称されています。ヨコオタロウは『ドラッグオンドラグーン』や『ニーア オートマタ』を手掛けたクリエイターであり、『真説ゲームクリエイター伝』という漫画でも取り上げられているけど、あまりにもキャラとエピソードが濃すぎるせいでいくら書いても終わらず、全5巻中4巻以上がヨコオの話で埋まっているという凄まじさです。何ならこっちをアニメ化した方がいいんじゃない? ヨコオEVAが好評だったら他のクリエイターのEVAも制作されたりするのかな。虚淵EVAとか。いやそれ『Phantom』じゃん。

「カナチョロ」こと『カナン様はあくまでチョロい』、メインPV公開。TV放送は4月から。

 あ、カナン様のCVは古賀ちゃんなのか。なんとなく「大久保瑠美」だと思い込んでいました。古賀ちゃん、正確に書くと「古賀葵」は『かぐや様は告らせたい』の「四宮かぐや」役で有名な声優ですが、キャリアの初期に『天使の3P!』というガールズバンドアニメでローテンションな女子小学生「金城そら」を演じており、両方の作品を知っている人はイメージの違いにビックリする。ちなみにそらちゃんはドラマーで、古賀葵は別の役でオーディションを受けていたけど「ドラムが叩ける」という理由で起用された、という経緯があります(参照:かぐや様放送直前のインタビュー記事)。佐賀市出身で「佐賀弁が使える」ことから『ゾンビランド・サガ』に「天吹万梨阿」というサブキャラで出演したりしている。

 しかし、PVに出てくるのは初期のキャラばかりで、恐らく中期以降に登場したキャラは2期が来ないかぎり出番がないんだろうな……と寂しくなる。私は生徒会書記の「先走菖蒲」や写真部の「隠音鳥」が好きなんですが、主人公の「供犠羊司」がカナン先輩一筋で他のヒロインには靡かないから、勢いサブキャラは目立つ機会がほとんどないんですよね。チラッと映ったりはするものの、スポットライトが当たることは稀。PVに「益荒男撫子」というスゴい名前の幼馴染キャラが出てきて、「この子とカナン様が恋の鞘当てを繰り広げるのか?」と想像した方もおられるでしょうが……ネタバレすると、この子は供犠くんに「異性愛」という意味での好意は寄せていないし、供犠くんも彼女を異性として意識しているわけじゃないのでラブコメチックな雰囲気は一切漂わない。割と大変なことになって、そのままフェードアウトした(たまにひょっこり出てくる程度になった)ので撫子ファンは泣いてるかもしれない。

 単行本は先月の新刊で12巻と、結構な冊数に及んでいます。電子書籍での一括購入を検討している方は何かセールが始まるまで待った方がいいかも。講談社は割と頻繁にセールやりますからね。一気読みではなくポツポツと読む程度で良いなら「マガポケ」の利用をオススメします。昔はチケットが使えなかったんですが、確か一昨年あたりから急に使えるようになった。マガポケで読める単話版は単行本描き下ろしがない反面、カラー原稿が見られる(単行本は電子版でもモノクロのままだ)から併用が望ましい。アニメは恐らく単行本6巻あたりまで、7巻の表紙になっている生徒会長「神龍寺鉄花」が本格的に活躍するのは2期以降だろう……あるかどうか、現状ではよくわからんが。

大武政夫「J⇔M ジェイエム」TVアニメ化!孤高の殺し屋と女子小学生の入れ替わりコメディ(コミックナタリー)

 えっ、もうアニメ化すんの!? 1巻が出たのは2023年10月だからまだ2年半も経ってないのに……早いな。原作者「大武政夫」は一般的に「『ヒナまつり』を描いた人」として有名だが、かのタフシリーズの作者「猿渡哲也」の元アシスタントであり、タフ語録を公然と使う漫画家としても有名です。『J⇔M ジェイエム』は殺し屋の「J」といじめられっ子の女子小学生「恵」、ふたりの精神がひょんなことから入れ替わってしまい、仕方なくJは女子小学生の体で殺し屋としての仕事をすることに……というアクション系コメディ。人体破壊(ゴア)表現を抑えているためグロくはないが、ふざけたシチュエーションで人を殺すシーンもあり、ややブラックなノリ。

 元孤児のJは暗殺能力だけで成り上がり、誰も手が出せないアンタッチャブルな存在として裏社会に君臨しているが、偏執的なほど「ハードボイルドな振る舞い」にこだわる変人でもあった。ハードボイルドに振る舞えば振る舞うほど、強者としてのオーラが出る――そんなジンクスを重んじているJだったが、うっかり恵ちゃんと頭をごっつんこした結果、漫画みたいな入れ替わりが発生した! 畜生、これじゃどんなに「ハードボイルドな振る舞い」をしても様にならない……! シチュエーション的にはだいぶコメディだし、「有名私立中学に入れなければゴブリン」という謎の張り紙をする恵の母など、いかにも『ヒナまつり』の作者らしいセンスが炸裂している。だが、アクション描写そのものはガチであり、「猿先生の元アシ」の面目躍如といったところ。肉体が「いじめられっ子の女子小学生」になったわけだから当然弱体化しており、真っ向から戦えばねじ伏せられる。いかに相手を油断させ、手早く仕留めるか。アサシンっぽさが存分に発揮されている。中身はオッサンとはいえ女子小学生がガンガン人を殺しまくるため、倫理的な問題からアニメ化は難しいのではないか? と考えられていたが、杞憂だった模様だ。「門限までに帰らないといけないから」と暗殺RTAを始める回は不謹慎で笑った。

 まだ制作スタジオもスタッフもキャストも何もわかっていないが、『ヒナまつり』のアニメの出来が良かったことを思うとつい期待してしまうな。というか『ヒナまつり』、結局2期は来なかったな……ちょうど『ウマ娘』の1期目をやっていた頃(ヒナまつりのアニメとウマ娘のTVシリーズは同じ「及川啓」監督作品)だからもう8年前か。遠い目をしそうになるがそれは置いといて、『J⇔M ジェイエム』の魅力は「女子小学生の体に入ってしまった殺し屋」だけでなく、「殺し屋(オッサン)の体に入ってしまった女子小学生」の方も面白いってことですね。恵ちゃんは当然ながら殺しの技術とか一切有していないド素人なんですが、Jよりも遥かに頭が良く、演技力も高い。なのでJの理想とする「ハードボイルドな殺し屋」として振る舞うことができる。このへんのテンポの良さ・ノリの楽しさはやはり『ヒナまつり』で磨いた経験が活きている感じだ。Jは入れ替わったときの状況、「頭ごっつんこ」を再現して元に戻ろうと恵に提案するが、「家では毒親気味な母にイビられ、学校ではクソガキどもにいじめられる、そんな小学生ライフに戻りたくない」と拒否される。力ずくで強引に従わせようとするも、肉体的なパワーは向こうの方が上なのでどうにもならない……とにかく、「これはひたすら面白くなっていく漫画だな」という確信を抱かせてくれる。Jは「学校にろくすっぽ通っていない無学な殺し屋」なので、情操面は割と恵に近いんですよね。そのへんちょっと『レオン』っぽさがある。

 『ヒナまつり』は面白かったが、どうしても「読んでない/見てない人に面白さが伝わりにくい」面があり、ブレイクし切らなかった憾みがある。『J⇔M ジェイエム』はシチュの面白さがストレートに伝わる題材なので、アニメの出来次第では大きく跳ねるかもしれない。これで大武政夫、ひいては猿先生が世界的に評価されてハリウッドがタフシリーズの映画化に向けて動き出すかもしれない……夢は大きく持っておきましょう。

法月綸太郎の最新刊『法月綸太郎の不覚』、4月22日発売予定

 おっ、久々の新刊だ。エラリイ・クイーンに倣って自分のPNと同じ名前の探偵を出演させている「法月綸太郎」の“法月綸太郎”シリーズ、えーと、これで確か15冊目だっけ?(既刊からのセレクション『名探偵傑作短篇集 法月綸太郎篇』は除く) 前作が2019年だったから7年ぶりか。法月シリーズの短編集としては『法月綸太郎の冒険』『法月綸太郎の新冒険』『法月綸太郎の功績』『犯罪ホロスコープT 六人の女王の問題』『犯罪ホロスコープU 三人の女神の問題』『法月綸太郎の消息』に続く7冊目。法月シリーズ、昔は新書サイズで売られていたんですが、最近はもうハードカバーが主流になっちゃいましたね……256ページで2090円(税込)というのは正直「高い」と感じるが、ギリ耐えられる値段。これが3000円とかだったらもう迷った末で断念していたかもしれない。

 最近はホンマに本が高いですね……去年や一昨年もそう感じていたけど、更にギアが一段上がった印象です。たとえばジェフリー・ディーヴァーの短編集、『サプライズ・エンディングス 罠』『サプライズ・エンディングス 嘘』、合わせて672ページの文庫本が3531円(税込)ですよ。第2短編集の『ポーカー・レッスン』は670ページくらいで1000円札出したらお釣りが返ってきた(当時は消費税が5%で今の半額だった)というのに。体感的には3.5倍ですよ。もう海外翻訳小説市場は覚悟をキメた修羅しか残っていない状態だ。そういう私も税込で3000円超えた『テメレア戦記』の8巻以降はもう買ってなかったりするが……。

・拍手レス。

 ロスフラとうとう終わっちゃいますね… 自分は調伏戦が面倒だったのとメイン系のストーリーの更新が遅いせいで長らくプレイするのをやめていたのを6周年で復帰したクチなのでこのタイミングか…って感じです。 菅さんのシナリオは本当に好きだったので2部始まりそうな予兆を見せておいて終わるのはとても残念です。何らかの形で続きが見たいものです。

 調伏戦は本当に面倒臭かったですね……オートで流して他の作業やってましたけど、それでも結構時間掛かったし。菅さん、「書きたい小ネタ」はあっても「書きたい大ネタ」はなさそうな感じだったので、ロスフラでやった内容で概ね満足しちゃったような雰囲気がある。トゥスクルさんの現役時代とか、ロスフラのおかげで拝めた要素もあるのでありがたいことはありがたかったですが……。



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