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リレー小説「魔法少女忌譚修」(第13話−10/12)


2024-03-31.

・長い間更新が止まっていましたが、とりあえず生きている焼津です。

 ただ、物凄く身辺がバタバタしているのとメンタルがアレで長文を紡ぐエネルギーが湧いてこないのとで、今後も当分は更新停止状態が続きそうです。率直に言って復帰の目処は立っていません。長年運営してきて愛着もあるサイトなので突然全ページ消去みたいな真似をするつもりはないですが、これで実質閉鎖という感じでしょうか。何食わぬ顔でしれっと再開する可能性とてなきにしもあらずですが……未来のことは未来の自分に任せるとします。

 先述通りメンタルがアレなので新アニメを追いかけることもままならず、ほとんど録画のみで再生もしていなくて、冬クールで最後まで追いかけることができたのは『ダンジョン飯』だけ。連続2クールで春も引き続き楽しめるのが救いです。ソシャゲはFGOを続けているけどイドを突破するのはだいぶ先になりそう。本は漫画なら辛うじて読めるけど小説はちょっとしんどい。現況はそんな具合です。

・拍手レス。

 どうしても思い出せなかった作家名(古泉迦十)、こちらの日記ログで無事確認できました。ありがとうございます。

 どういたしまして。古泉迦十といえば新作の『崑崙奴』が今年中に刊行予定だそうですが、具体的な時期はまだ不明みたいですね。

 焼津さんが丸二ヶ月も更新されないなんて今まで無かったように思いますが、ご無事でいらっしゃいますでしょうか……。

 心配をおかけしてすみません。何か書かねばと思いつつ、言葉が出てこなくて時間が掛かってしまいました。


2024-01-18.

・冬アニメ、あれこれチェックしてみましたが私好みの作品は今のところ『治癒魔法の間違った使い方』『勇気爆発バーンブレイバーン』な焼津です、こんばんは。

 『治癒魔法の間違った使い方』はライトノベルが原作。元はなろう小説で、連載が始まったのは2014年だからもう10年前になる。書籍化を開始したのが2016年、2020年に完結編となる12巻が刊行された。アニメ化が発表されたのは2023年、つまり「完結後にアニメが始まる」という即死チートみたいなパターンですが、本編最終巻でアニメ化が報じられた即死チートと違ってこちらは最終巻が出てから3年以上経っている。たぶんコロナ禍の影響で諸々のスケジュールが遅れたんじゃないかしら。現在は『治癒魔法の間違った使い方 Returns』という続編を展開中。現代日本の高校生たちが剣と魔法の異世界に召喚されてしまうベッタベタのファンタジーながら、凛々しい黒髪美少女って印象だったスズネがウッキウキで異世界に順応してキャラ崩壊していく様子を早めに見せることによりこちらの興味をうまく引いてくれる。あとは何と言ってもローズさんの存在感、見た目だけでも充分に迫力があるのに「CV.田中敦子」なんだもんな……「強そう」以外の感想が出てこない。ホント、ローズさんが出てきた瞬間「別のアニメが始まった?」と錯覚しましたよ。原作読んでないから今後の展開は知らないが、とりあえずスズネとローズさん目当てで追いかける所存。

 『勇気爆発バーンブレイバーン』は巨大人型ロボ界のレジェンド「大張正己」が監督するロボアニメ。原画や絵コンテとかはいろんな作品で手掛けているけど、TVアニメの監督をするのは『スーパーロボット大戦OG -ジ・インスペクター-』以来だから十数年ぶり? TV以外なら『境界戦機 極鋼ノ装鬼』とか『ガンダムビルドメタバース』があるみたいだけど。前半でリアルロボット寄りの作風を醸しアーマードコアとかフロントミッションみたいなムード漂わせつつ、後半でいきなり宇宙から飛来してきた謎の敵が襲い掛かるスーパーロボット寄りの展開へと急転。通常兵器を搭載した主人公たちのロボではまったく歯が立たない……と絶望しかけたところに舞い降りる顔のついた巨大ロボ。胡散臭いけど他に選択肢もないからと主人公が乗り込むや、熱血ロボアニメの主題歌みたいな曲が流れ始め、謎の敵どもを鎧袖一触屠り去っていく。その機体の名は……ブレイバーン! 昔MF文庫Jから出ていた『エイルン・ラストコード』をちょっと思い出してしまった。タイトルが「勇気爆発」の時点でリアルロボット路線をいつまでも続けるつもりじゃないのはハナから明らかだったが、ここまで大胆にやるとは。ネットでブレイバーンが「湿度高そうな押しかけ女房」と呼ばれていることに笑ってしまった。ヒビキやミユなど女性キャラクターも可愛いので当面は視聴継続の方針。

「笑顔のたえない職場です。」2025年TVアニメ化!少女マンガ家のガールズコメディ(コミックナタリー)

 『笑顔のたえない職場です。』はマンガ家を主人公にしたマンガ、いわゆる「マンガ家マンガ」です。最近本編で「主人公の作品がアニメ化決定した」というエピソードをやけに綿密に描いていたから、「これひょっとして『笑顔のたえない職場です。』自体もアニメ化コースに入ったのでは……?」と囁かれていました。ただ、くずしろさんは非常に連載作品が多い(定期的に新刊が出るシリーズだけでも5本ある)マンガ家ですから「他の作品のアニメ化かも」という線もあり、確実視するところまでは及んでいなかった。マンガ家マンガとしてかなり際どい「匂わせ」だっただけに作者も内心ハラハラしていたのではなかろうか。

 くずしろさんは過去に5分枠のショートアニメとはいえ『犬神さんと猫山さん』でTVアニメ化を経験しており、これが初というわけではない。ストック的に充分なことを考えると今回は30分枠でしょうから、そういう意味では初体験かな。『笑顔のたえない職場です。』はマンガ家「双見奈々」とそのアシスタント「間瑞希(はーさん)」、双見の担当編集者である「佐藤楓」、双見の同業者(つまりマンガ家)でありアシスタント時代の同僚でもある「梨田ありさ」、この他様々な人々を交えてコミカルかつ真摯に「マンガが作られる現場」を綴っていきます。ほぼ女性キャラしか出てこない(男性キャラが「いないわけではない」レベルの存在感に留まっている)ので百合マンガとして読むことも可能。ただし、初期は主人公が「担当の佐藤さんにネーム送りたいけど、こんな遅くだし、もし彼氏とヤッてる最中だったらどうしよう」と心配するエピソードとか、送ったネームの返事がなかなか来なくて「放置プレイ」だの「焦らしプレイ」だの言い出す回があったりして、「読者の反応次第ではお色気路線に進む気もあったのか?」と窺わせる部分がある。そのため初期と最近とでだいぶ雰囲気が違う。「アニメ化で気になった」という方が最初の数話だけ読んで「こういう話か……パス」とならないか心配です。私はコミックDAYSで全話無料公開されていたときにまとめ読みし、はじめのうちは「あんまり好みの作風じゃないな〜」と思いつつ惰性で読み進めているうちに多彩なキャラに魅了されてズブズブにハマってしまった。今月末まで3巻分無料公開されていますから、時間のある方は読めるだけ読んじゃってください。くずしろさんの他の作品のキャラクターがちょこちょこゲスト出演し、クロスオーバー的な面白さまでさりげなく仕込まれているあたりも沼です。

 なお、人気はあるはずなのに紙書籍版が増刷されていないのか、本屋に行っても最新刊とその手前くらいしか売ってない。今購入するとしたら電子版しか選択肢がない……でも紙で読みたい! とモヤモヤする状況が続いていたわけですが、アニメ化決定ともなれば間違いなく紙版も増刷されるであろう。やっと『笑顔のたえない職場です。』全巻を紙で揃えられる……こんなに嬉しいことはない。あ、それはそれとしてアニメ版の放送も楽しみです。

「〈物語〉シリーズ」再始動!「オフシーズン・モンスターシーズン」アニメ化決定(コミックナタリー)

 知らない人は「〈物語〉シリーズってまだ続いているの!?」とビックリするでしょうが、原作はまだまだ続いてるんですよね……『化物語』が2006年刊行なので再来年で20周年を迎えます。本編だけカウントすれば29冊(電子版は『化物語』が上・中・下の3分冊になっているため30冊)、番外編の『佰物語』とか『混物語』も含めれば30冊を超えます。

 あまりに長くなったため熱心なファン以外は「どこまでアニメ化したんだっけ?」とうろ覚えになりがちな〈物語〉シリーズですが、最初のアニメである『化物語』は2009年の夏クールに放送(全15話、ただしラスト3話はネット配信で2010年に終了)、アニメ2作目の『偽物語』は2012年の冬クールに放送(全11話)、アニメ3作目の『猫物語(黒)』は年末特番として2012年の大晦日にまとめて放送(全4話)、アニメ4作目『〈物語〉シリーズ セカンドシーズン』(『猫物語(白)』から『恋物語』までの5作品)は2013年の夏クールと秋クールに放送(全28話)、アニメ5作目『憑物語』は年末特番として2014年の大晦日にまとめて放送(全4話)、アニメ6作目『終物語』はやや変則的で原作の上巻と中巻に当たる部分を2015年の秋クールに放送し、下巻に当たる部分は夏特番として2017年の8月に二夜連続で放送(全20話)、アニメ7作目『暦物語』も変則的で公式アプリにより2016年から配信(全12話だが1話あたりが短いので30分枠に換算すると全6話)、アニメ8作目『傷物語』は初の劇場版として三部作を2016年から2017年にかけて上映、今年2024年には三部作を一本にまとめ直した総集編を公開中、アニメ9作目『続・終物語』は2018年に劇場先行公開した後に2019年の5月から6月にかけてテレビ放送(全6話)。割と途切れなく展開してきた〈物語〉シリーズながら、ここ5年近くはアニメ化してなかったんですよね……長くなりましたが、要するに原作の本編18冊目までアニメ化済です。本編だけに限ればあと11冊残っている。

 今回アニメ化が報じられた「オフシーズン」は19冊目に当たる『愚物語』から22冊目に当たる『結物語』までの4冊、「モンスターシーズン」は23冊目に当たる『忍物語』から28冊目に当たる『死物語(下)』までの6冊、合わせて原作10冊分が範囲となります。残りの1冊である『戦物語』は「ファミリーシーズン」という新たなシーズンに属している。ファミリーシーズンは去年始まったばかりなのでいつ終わるか全然わからない。ともあれ「オフシーズン・モンスターシーズン」、制作はもちろんシャフト。丁寧にやれば4クールは掛かるボリュームだけに相当な気合を入れて臨んでいるのだろう。私個人としてはシャフトに『アサルトリリィ』の新作をやってほしいんだけども……ラスバレでやってるストーリーの量が多すぎてまず無理だろうな、とも感じている(ラスバレのストーリーはアニメ『アサルトリリィ Bouquet』の続きに当たり、本編シナリオのみならずイベントシナリオでも結構重要なエピソードをやっている)。〈物語〉シリーズはもうだいぶ前から積んでいるけど、いい加減一念発起して崩しに掛かるべきか……。


2024-01-12.

『スキップとローファー』の作者が絶賛していることで気になり、キャンペーンで電子版が3巻まで無料だったからなんとなく読んでみた『青野くんに触りたいから死にたい』、予想を凌駕する面白さにより即ハマって電子書籍で全巻買い揃えた焼津です、こんばんは。なぜ私はこんな傑作を今まで見落としていたんだ……ドラマ化もしているらしいが全然知らなかった……あらすじからすると第11話の「奪還」までを映像化したみたいです。

 思い込みが激しくて周りと少しズレている女の子・優里ちゃんが主人公の、切ない恋愛ストーリーでありながら不気味な何かが忍び寄ってくるホラーでもある青春マンガ。そう、タイトルからはイメージしにくいけど結構ガッツリめのホラーなんです、これ。些細なことがキッカケで隣のクラスの「青野くん」に恋をしてしまった優里ちゃん、コミュ障ながらも行動力のある彼女は思い切って青野くんに「好きです!」と告白する。あまり会話したことのない子だしよく知らないけど満更でもない、とばかりに青野くんはあっさりOKを出し、晴れて彼氏彼女の関係になった……のも束の間、青野くんは交通事故に遭って亡くなってしまう。付き合った期間はたったの2週間。でも優里ちゃんにとっては「青野くんに出逢うまでの人生」より遥かに濃密な時間であった。ある夜、青野くんがいない世界に耐え切れなくなってリストカットを試みた彼女のもとに「青野くんの幽霊」が現れる。幽霊だから触れることはできないけど言葉を交わすことはできる。「青野くんに触りたい」という理由で死を望む優里ちゃんを必死に説得する青野くんは、彼女が絶望して命を絶たないようそばに寄り添うことを決意するが……といった具合で大枠としてはよくある感じのゴースト・ラブストーリーです。「こんなに近くにいるのに触れ合うことができない」「優里ちゃん以外には青野くんが見えないので彼の存在を信じてもらえない、『青野くんはここにいるよ』なんて言ったら頭のおかしい奴と思われるから言えない」と、はじめの方ではふたりのもどかしい関係をたっぷり描いている。その一方、「成仏できないせいで青野くんの悪霊化が進んでいるのでは……?」と疑わせる不穏な描写も散見され、甘酸っぱい恋とおぞましい恐怖が同時進行していく。読み始めたときは「感動的なBGMとともに青野くんがキラキラした粒子を放ちながら消えていって、滂沱と涙を流しつつ見送った優里ちゃんが数年後のエピローグで大人になって爽やかな笑顔を浮かべるEND」を思い描いていたけど、今やってる最終章のタイトルが「受肉編」であることを考えるとそんなキレイな終わり方は到底迎えられる気がしない。

 読みどころの一つは「ふたりの温度差」ですね。恋人同士とはいえ付き合って2週間なので実際のところそこまで関係は深くないんですよ。セックスはおろかキスの一つも済ませていない。青野くんは自分の死にショックを受けている優里ちゃんの姿を見て心を痛めているが、優里ちゃんが青野くんに執着するほどは彼女に対して執着していない。簡単に言うと優里ちゃんは青野くんのためならあらゆるものを犠牲にできそうな「心の奈落」を抱えているが、青野くんは優里ちゃんを救うためなら神にも悪魔にもなってやろうという超越的な気概がない。なので遣り取りのそこかしこに温度差が滲み、怪異の付け入る隙を生む。青野くんは憑依能力があり、いくつか条件を満たせば生きた人間の体に入り込むことができます。で、たとえば通りかかった男子生徒に憑依したとして。その状態で優里ちゃんとキスをしたら「青野くんと優里ちゃんはキスをした」ことになるのでしょうか? 思い込みが激しく、青野くんの魂や精神を絶対視している優里ちゃんは憑依した体が誰であろうと憑依中は青野くんであり、「青野くんとキスをした」認識になるとハッキリ答えます。「でも体は別人だし、それって『彼女が他人とキスしてる』ってことじゃないか?」という思いを拭えずモヤモヤする青野くん。時折青野くんではない、異質な何かが紛れ込むが、優里ちゃんはそれさえも彼の一部とばかりに受け入れようとしてしまう。「お互い想い合っていても心がすれ違うことはある」という恋愛モノの王道を特殊なシチュエーションで掘り下げていきます。優里ちゃんが異界に迷い込んだり、「四ツ首様」なる怪しげな伝承が出てきたりなど、進むにつれて伝奇色が濃くなっていくあたりは私好みである。事態はどんどん悪化し、「青野くんのためなら……」と耐えていた優里ちゃんの健気な覚悟すら粉砕する煉獄へと転げ落ちていく。

 ホラーな部分を強調してしまったが、この作品はギャグとかコメディに関してもイイんですよ。ハッキリ申し上げて上手いとは言いかねる絵ですが非常に味があり、各キャラクターの感情を巧みに表現しているし「間」の取り方も優れている。1巻収録の第4話「もう一人の青野くん」、不登校の同級生のところへプリントを届けに行った優里ちゃんがなし崩しで家に招き入れられてお菓子を食べるハメになるんですが、物凄く気まずそうな顔でドラ焼きをむしゃむしゃ食べるコマがあり「この絵柄でしか表現できない絶妙な雰囲気だ……」と感服しました。あと2巻収録の第6話「幽霊勉強会」で青野くんの姿が見えず「悪霊化したかもしれない」と警戒する藤本くんに対し「消えちゃってたらどうしよう……」と青ざめる優里ちゃんが「消えたんなら成仏したってことで喜ぶべきだろ」的なことを藤本くんから言われて「でもこんな寂しい消え方は違うでしょうが!」と田中邦衛ばりに激昂するシーン、薄気味悪い展開のさなかに突如ブチ込んでくるので笑えないんだけどやたら印象に残る。4巻収録の第16話「青野くんと渡瀬さん」における「そんな素敵な青野くんが この世界から消えてしまうのが一番正しいことだなんて この世界ってクソじゃんねぇ」って笑顔でしみじみと語る優里ちゃんの索漠も言葉に尽くしがたい。ネタバレになるから詳しくは解説できないが、9巻収録の第47話「ナイトメア@」、散々怖い目に遭わされてきた優里ちゃんが「恋も絶望も」「全てわたしが選んできたものだから」「いまさら運命がしゃしゃり出て我が物顔するなら運命を殴り殺してやる」と殺意高めの真情を吐露するシーンも噴いた。とにかく様々な面において「天才の所業か!」と唸ることしきりな『青野くんに触りたいから死にたい』、機会があったら読んでみてください。作者の「椎名うみ」は他にも『崖際のワルツ』という短編集を出しているので青野くんすべて読み切った後はこちらをどうぞ。

文庫化したら世界が滅びる? 『百年の孤独』がついに……(Forbes JAPAN)

 G・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』が遂に文庫化だと? むしろなんで今まで文庫化されてなかったんだ、って話だが文庫化しなくても安定して売れていたから先送りになったんだろうな……翻訳で一番最初の版が1972年刊行なので50年越しの文庫化ということになる。探せば「戦前に一度だけ翻訳された本が21世紀に初文庫化」みたいなケースもあるだろうから最長記録とは行かないだろうが、なかなかない話ではある。これで「『百年の孤独』の文庫版を見つけたと思ったら島荘の『切り裂きジャック・百年の孤独』だった」みたいなジョークも過去の物となるな。正確な刊行時期は不明とのことだが、少なくとも来年中に新潮文庫から出す予定らしい。私が持っているのは99年刊行の改訳版で、さすがにくたびれてきたから文庫版を買い直そうか検討中。

 記事でも触れられているが、『薔薇の名前』もいつまで経っても文庫化しない作品として有名ですね。個人的には「早く『引き潮のとき』を文庫化してくれ」って東京創元社に言いたくなります。『引き潮のとき』、元は早川書房から刊行されていたSFで“司政官”シリーズ最後の作品に当たる。ハードカバー版は全5巻で合計1800ページ以上という凄まじいボリューム。もう15年以上も前だけど東京創元社は“司政官”シリーズを創元SF文庫で出していた時期があり、「『引き潮のとき』も出します」と告知していたのに一向に出る気配がない……ジェイムズ・P・ホーガンの『ミネルヴァ計画』も、最初は「2023年冬予定」だったのが「2024年春予定」になり、今確認したら「秋刊行」(リンク先真ん中あたり)になっている始末だ。そもそもこのリスト、秋田禎信の『ノーマンズ・ソサエティー』が未だに載ってる時点で「ホントかよ?」ってなっちゃうんだよな。もう記憶が曖昧になってきているけど2017年3月の時点で「今秋の刊行を予定しております」と告知しているから最低でも6年は遅れている勘定になります。創元はアーナルデュル・インドリダソンやネレ・ノイハウスの新刊を出してくれるありがたい出版社であるが、時空の歪みだけはどうにかしてほしいものだ。

「凍牌〜裏レート麻雀闘牌録〜」2024年アニメ化!裏レート雀荘を荒らす高校生雀士描く(コミックナタリー)

 ええっ、あの挨拶感覚で指を切り落としたり眼球を抉り出したりする『凍牌』をアニメ化すんの? 画面が規制で真っ黒になるんじゃないかしら……さておき、『凍牌』は2006年に連載を開始した麻雀漫画です。掲載誌は“近代麻雀”ではなく“ヤングチャンピオン”。裏レートの麻雀界で「氷のK」の異名を取る少年「ケイ」が主人公を務めており、バキみたいに何度かタイトル変更を挟みつつ2021年で一応本編は完結しました。結果的に無印(全12巻)・人柱篇(全16巻)・ミナゴロシ篇(全10巻)の3部作となって総計38巻というなかなかのボリュームに収まっている。現在は『凍牌 コールドガール』という主人公を交代した続編が連載中である。

 カイジとか天牌とかむこうぶちとかも結構死人が出る麻雀漫画ではあるが、『凍牌』の血腥さはそれらを遥かに凌駕しており、絶望と恐怖に顔を歪めた人々が次々と無惨な死を遂げていくためバイオレス要素が苦手な人にはオススメしがたい。「悪役がヒロインを裸に剥いて手にアイスピックを突き立てる」程度は序の口、「対局中に切腹して臓物垂らしながら打牌」という正気を疑うような展開の数々が読者を待ち構えている。チャンピオン系の漫画は『trash.』『DEAD Tube』といったグロの乱れ撃ちな作品がたくさんあるから『凍牌』は比較的おとなしく見える、というだけでチャンピオン以外の基準に照らし合わせると『凍牌』も充分ムゴい。アニメはだいぶ表現がソフトになるんじゃないかと思います。気になるのは、まだ作風が固まってなかった初期……Kのキメ台詞を「はい凍死」にしようとしていた痕跡があるんですけど、あのへんアニメでもちゃんと拾うのか、それとも作風が固まってからのノリに合わせるためスルーするのか。そもそもどこまでアニメ化するのかって話なんですよね。個人的には竜凰位戦――無印(第1部)のクライマックスまでは最低限やってほしいんですけども。

 ちなみに『凍牌』の関連作として『牌王伝説 ライオン』(全4巻)およびその続編『牌王血戦 ライオン』(全5巻)があります。このふたつは『凍牌』におけるK最大のライバル「堂嶋」を主人公に据えたスピンオフであり、且つミナゴロシ篇(本編第3部)はライオンシリーズの出来事を反映した内容になっているため人柱篇(本編第2部)を読んだ後くらいに目を通しておくとより楽しめます。掲載誌が違う(というか出版社も違う)せいで本編よりも麻雀要素が濃い目だったりする。「高津」を主人公にした『麻闘伝 ぬえ』ってスピンオフもありますが、これは2冊で終わっていて打ち切り臭漂うから食指が動かずまだ読んでいない。アニメ化記念ということでいい加減崩そうかな。あと作者の「志名坂高次」は『モンキーピーク』『イゴールの島』など原作を担当した漫画も多く、ファンでも追いかけるのが大変です。『凍牌』以外の自ら作画を手掛けた作品(『バクト』『悪童』など)も面白いのだが、あまり長く続かないのが難点。いろんな意味で忘れられないのが『BW(ビューティフルワールド)』か……全3巻という割合短めの作品なんですが、ヤケクソレベルでネタを詰め込んでいて顎が外れそうになる。バイト感覚で麻雀打ち始めた主人公がいつの間にか人類の存亡を懸けた闘いに巻き込まれてるんだもんな……スケールアップが急激すぎる。

米澤穂信の小説・小市民シリーズがTVアニメ化!梅田修一朗&羊宮妃那が出演(コミックナタリー)

 作者である「よねぽ」こと米澤穂信がビッグになりすぎたせいで続きがなかなか出なくなってしまった“小市民”シリーズがアニメ化とな。ミステリにあまり興味がない人向けに解説すると米澤穂信は直木賞作家で、『氷菓』の原作者です。『氷菓』の原作である“古典部”シリーズと並ぶ人気シリーズ、それがこのたびアニメ化される“小市民”シリーズというわけです。

 “小市民”シリーズの1冊目は2004年に文庫書下ろしで刊行された『春期限定いちごタルト事件』、2004年と言っても12月発売なのでまだ20年は経っていない。男子高校生の「小鳩くん」と女子高生の「小山内さん」は過去に探偵の真似事をして大いに後悔し、今後はでしゃばらないよう控え目な人間、つまり「小市民」になるべく自制の日々を送っていた。しかしそんな二人の前に次々と魅惑的な謎がやってきて……という、ジャンルとしては「日常の謎」に属するタイプのミステリです。謎だけでなくキャラクターの掘り下げも重視しており、“小市民”シリーズをキャラ小説として読んでいる人も少なくない。シリーズ第2弾の『夏期限定トロピカルパフェ事件』はさほど間を置かず2006年に刊行されたが、シリーズ第3弾の『秋期限定栗きんとん事件(上・下)』は2009年、シリーズ番外編の『巴里マカロンの謎』に至っては2020年と、実に11年ぶりの刊行となってしまった。4部作のラストを飾る『冬期限定ボンボンショコラ事件』は今年の4月下旬発売予定となっており、『秋期限定〜』から実に15年ぶりの本編再開を迎えることになります。それだけでも嬉しかったのに、アニメ化まで付いてくるとはね。よねぽ作品と言えば『犬はどこだ』も好きなんですが、続きまだかな……てっきり“紺屋S&R”シリーズとして連作化するものとばかり思っていたのに。

 余談。Amazonで『巴里マカロンの謎』の商品ページを見ると登録情報のところに「文庫:686ページ」とありますが、これは明確な間違いで実際は300ページくらいです。『秋期限定栗きんとん事件』だって上下合わせても500ページほどしかないんだから、686ページなんてありえない。そんだけあったら普通に分冊していただろう。



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