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リレー小説「魔法少女忌譚修」(第13話−10/12)


2025-08-30.

講談社タイガのHP見たら「これから出る本」に『虚構推理 忍法虚構推理』が載っていてテンション上がった焼津です、こんばんは。

 アニメ化もされた『虚構推理』シリーズの最新刊です。小説版としては7冊目に当たる。作者の「城平京」は『名探偵に薔薇を』という作品で小説家として書籍デビューしたのですが、『スパイラル〜推理の絆〜』以降はマンガ原作の仕事が多くなった。『虚構推理』は2011年に講談社ノベルスから発売され、「シリーズ化するのかな」と思いきやなかなか続刊が出ず、代わりに2015年からコミカライズが始まった(このとき一度文庫化されている)作品です。

 当初は「鋼人七瀬」のエピソード(マンガ版の1〜6巻部分)だけやって終わりにするつもりが、思った以上に人気が出た&コミカライズの出来が良くて城平京も続きが読みたくなったため、継続が決定します。で、このコミカライズをベースに2020年と2023年にアニメ版が放送されました。よくある「小説作品として発表した後にコミカライズ」ではなく「コミカライズを出した後に小説版を発売する」という逆のパターンで展開している(たまに小説版が先になることもある)のがシリーズとしての特徴。最近はコミカライズを起点にメディアミックスする作品が多くなったから、もうそこまで珍しくないけれど。『私の推しは悪役令嬢。』もコミカライズが先行で、原作小説の書籍化は少し遅れました。いえ、厳密に言うと小説の電子書籍版が最初に発売されて、コミカライズの単行本が出た後に原作小説の紙書籍版が刊行された、って流れです。原作小説は二部構成なのですが、あまり売れなかったのか紙書籍は第一部のみで、第二部に関しては電子版しか存在しません。

 ちょっと話が逸れた。『虚構推理』の小説版は「長編シリーズ」と「短編シリーズ」に分かれており、長編シリーズは『虚構推理 〇〇(副題)』、短編シリーズは『虚構推理短編集 岩永琴子の××』というタイトルで発売されるのが通例となっています。ただ、例外として一番最初に発売された『虚構推理 鋼人七瀬』のみ文庫版は『虚構推理』と副題のないタイトルで統一されている。シリーズの話題で語るときは他と区別するため便宜上『鋼人七瀬』と呼ぶこともありますが。ともあれ、『虚構推理 忍法虚構推理』は長編シリーズに該当します。

 コミカライズが始まったの、つい昨日のことのように思えるがもう10年以上経過しているのでエピソード数もかなり膨大になってきており、まだ小説版が出ていない物もいくつかある。ギャグ回に当たる「MK(メカ琴子)シリーズ」が読めるのは今のところマンガ版だけ(完結したらまとめて小説化する、という話もある)。最近のエピソードだと「廃墟に出会う」「まるで昔話のような」もまだ小説版が出ていない。一応、制作のフローとしては「マンガ原作として書いた後に小説化している」のではなく「最初から小説として書いたものをコミカライズしてもらっている(小説版の発売が後になることが多いだけ)」らしいが……。

 「忍法虚構推理」は現在マンガ版の最新エピソードとして連載されているものです。単行本はまだ出ていないが、マガポケで読むことができる。小説サイトに投稿された「真九郎忍法料理帖」という時代小説、「人魚の肉を食べた」ことで不死になった青年・真九郎を主人公とする物語で、琴子の恋人である「桜川九郎」をモデルにしたものと思われるが、誰が何のためにこんなものを書いたのかがわからない……という感じで、作中作「真九郎忍法料理帖」とそれについて語る琴子たちの二重構造になっています。まず最初に「真九郎忍法料理帖」の中身を読まされて「これはいったい何なんだ?」と戸惑ったところで作中作と明かされるわけですが、賢者の石が出てくるわ殺人事件が起こるわ忍法が飛び出すわ女郎蜘蛛のヒロインが登場するわで作中作が異様に濃い。シリーズそのものが異色作と言っていい『虚構推理』だが、その中でもひと際異色度の高い長編になりそうです。

・あといつの間にか「しゃちホワ」こと『社畜が異世界に飛ばされたと思ったらホワイト企業だった』が完結していてビックリした。「え? これで終わり?」って首を傾げる内容ですけど……。

 しゃちホワは2018年に「電撃ツイッターマガジン」というTwitter(現X)のアカウントで連載を開始したWebマンガです。ブラック企業で消耗し、身も心も疲れ果てていた「粕森美日月(かすもり・みかづき)」は、気が付くとなぜかホワイト企業に転生(転職)していた! というお仕事コメディです。単に精神をヤラれていたせいで転職したときの記憶を失っているだけで、超常現象が起きたとかではない。タイムカードを打刻したうえで残業しようとするなど、ブラック時代に染みついた社畜癖で周囲を戸惑わせる「かすみ」ちゃんが不憫可愛い。年1冊か2冊くらいのペースで順調に巻を重ねていましたが、2023年の9巻を最後にパタッと刊行が止まり、2024年は新刊がゼロ。「何かトラブルでもあったのか?」と心配していたところにいきなり完結の報せが飛び込んだもんだから寝耳に水だ。

 9巻の最後が56話だったので、当然10巻は57話から始まりますが、なんと本編はそこで終わり。取ってつけたような僅か4ページのエピローグの後、時系列的には過去に当たる番外編2本を挟んでから70ページ以上に及ぶ描き下ろしマンガが収録されています。ただ、それがファンの読みたかった内容かと申しますと……読んだことない人向けにこれまでの流れを掻い摘んで解説しますと、なかなか社畜根性が抜けないながらも新しい職場に馴染んできたかすみちゃんは「内木くん」という新卒社員の教育係としてOJTを任されることになります。これが3巻あたり。その後、かすみちゃんは昇進して順風満帆……かと思いきや、内木くんが突如退職の決意を固めてしまう。「えっ、内木くん辞めちゃうの!?」とファンを驚かせたのが9巻。ここからどうなるのか、とハラハラする中で始まるのが10巻なわけですが……。

 「内木くんが辞めるのは自分のせいじゃないか」と動揺するかすみちゃん。周囲から「誰しもいつかは会社を辞めていくもの」と諭され、最終的に「内木くん、転職先でも頑張って!」「先輩も頑張ってください!」というふうな前向きの別れが描かれます。その後、どういう話があったのかは描かれていないので一切不明ですが、かすみちゃんも転職することになった(!?)みたいで「かすみちゃん新しい会社でも元気してますかね?」という先輩たちの遣り取りが描かれ、面接にやってきた新しい人を迎えるシーンでFin。率直に言って打ち切りとしか思えない終わり方でした。「ホワイト製作所 ぐんま支店」で頑張るかすみちゃんの姿をあれだけ丹念に描いていたのに、経緯もよくわからない転職でエピローグに姿を出さないまま〆だなんて……好きなマンガだけにガッカリしました。描き下ろし部分も、「適法☆少女ミラクルホワイトポエミー」というオマケでちょこちょこやってた魔法少女パロディの最終回を50ページ近くに渡って掲載していますが、それよりも本編の補足が欲しかったな、というのが偽らざる気持ちです。まだまだ不満点はいっぱいあるけど、逐一述べても仕方ないし切り替えていくしかないか……。

・アニメ絶賛放送中の『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』、来月に原作最新刊(8巻)が発売されますが、「アニメ化されるほどの人気ライトノベルでも、300ページ弱で税込800円を超える時代なのか……」と少し慄然としてしまった。

 90年代に青春を送った私の感覚からすると「300ページ弱で税込800円オーバー」というのは文庫というより新書の価格である(少部数の学術系文庫は除外)。今は新書というと教養・雑学・自己啓発のイメージが強いですけど、2000年代あたりまでは「書き下ろしの小説」を販売するメディアでもあったんです。しかし、だんだん「帯に短し襷に長し」というか「中途半端な存在」と見做されるようになり、読者層を文庫やソフトカバー系のライト文芸に奪われて行って市場としてはほぼ消滅しました。今でもたまに京極夏彦や森博嗣の新刊が出たりしますし、大沢在昌もハードカバーやソフトカバーで出した本を一旦新書にしてから文庫化するという昔懐かしい方式を取っていますが、毎月のように新刊が出ていた往時とは比ぶべくもない。かつてブイブイ言ってた講談社ノベルスも今年出た新刊は3冊(「今月」ではなく「今年」、しかも去年なんてたった2冊だったからこれでも多い方)。「文芸の新書」というジャンルを切り拓いたカッパ・ノベルスも今年出た新刊はまだ2冊(去年は0冊)で、ここ数年は赤川次郎・梓林太郎・大沢在昌・西村京太郎の4人しかラインナップに挙がらない有様。この4人以外の本が出たのって、2017年の『アルスラーン戦記』完結編まで遡らないといけないんですよ。価格も当たり前のように1000円超えてる(少し厚くなっただけで1500円超える)し、「ちょっと時間潰しに」という感覚で買うものではなくなってしまった。全体の物価が上がったせいで、「文庫書き下ろしライトノベル」がかつての「新書書き下ろし作品」みたいな位置付けになってきています。とはいえ西尾維新が出てきたあたりで両者の境目はだいぶ希薄になってましたけどね……。

 暗くなってしまったので話題を戻そう。「わたなれ」はアニメ化に合わせて先月と今月にも新刊を出しています。SS集と短編集です。「どう違うの?」と戸惑う方向けに解説しますと、SS集はアニメイトやメロンブックスなどの店舗特典として書き下ろされた比較的短い(1編あたり3〜8ページくらい)エピソードを寄せ集めたもので、古い言い方をすると「掌編集」に該当します。書き下ろしの「甘織れな子、プールで一生を終える」だけ少し長くて30ページちょっとある。アニメ化するぐらいのヒット作でないとSS集なんて出ないのであまり知られていないが、最近は店舗特典や電子書籍特典として数ページ程度のオマケ小説を付けることが多いんですよ。エロゲのショップ特典ドラマCDみたいな感覚です。この喩えは今の世代には逆に伝わりにくいだろうが、昔18禁ゲーム市場では店ごとに異なる特典を付けることが多く、たかだか10分程度のボイスドラマを聴くために数千円するソフトを何本も買う熱心なオタクが沢山いました。余ったソフトは売却するから金銭的負担はそこまで大きくなかったんですけどね(こういった経緯から中古市場に未開封のソフトがいっぱいあった)。本編の進行状況に合わせてれな子の置かれる状況も変わるため、原作を経由せずにアニメから直接入ってくると知らないキャラが次々と出てくるし、ネタバレになる要素もあるので注意しましょう。ほとんどがれな子視点で綴られているのでれな子の一人称が好きな方(個人的に「このリーダー、傀儡じゃないか?」がツボ)はマストバイ。

 短編集は少し長め(40〜90ページくらい)のエピソードを収録しており、「本編の裏側を描く番外編」となっている。本編には登場しないサブキャラとかもいて、わたなれワールドが広がる楽しみもあります。紗月の薦めた小説にハマって、「今度その作者が文学フリマ的なイベントに来てその本の続きに当たる書き下ろし短編を売るので一緒に行きましょう」と誘うけれど、「本はそれ1冊で完結しているべきだし作者の個人情報はノイズなのでインタビュー記事の類も一切読まない」という信条を持つ紗月に誘いを断られてしまう。「じゃあ仕方ないから一人で行ってきます」と伝えたところ、昔からその作家が好きだった紗月は「ニワカのれな子にマウントを取られかねない状況」に我慢ならなくなって……という読書家の面倒臭いプライドが関わってくる「紗月さんのファンレター(前編・後編)」が面白い。これ、公式サイトに掲載されている作品なのでタイトルを検索すれば無料で読めます。

 ぶっちゃけ、本筋だけ追いたいのであればSS集も短編集も読む必要はありませんが、こまごましたエピソードを全部拾いたい方、キャラ同士の掛け合いを読みたい方は両方押さえておいた方がいいです。アニメは尺の都合でかなり削られていますから、アニメ観てれな子たちのことが気になった方は是非原作にも目を通してほしいですね。それはそれとして、わたなれ、短期間で人気が爆発したせいか今月発売の短編集はあっちこっちで品切を起こしていて買うのが大変でした。来月出る8巻は本編だし、充分な量が供給されるはず……とは思うものの、絶対確実とは言い切れないので通販で予約しとこうかどうか迷っています。10月にアニメの放送を控えている『千歳くんはラムネ瓶のなか』のSS集も品切が目立っていたし、どんどん新刊の配本数や発行部数が減ってきている印象がある。なるべく地元の書店を応援したいけど、こうも欠品が多いと難しいな……。

甲斐谷忍「LIAR GAME」2026年にTVアニメ化!制作はマッドハウス、特報映像公開(コミックナタリー)

 もう終わったけど、ちょっと前にライアーゲームのセールやってた(全巻+短編集をまとめて買っても440円という超破格)の、これに絡んだキャンペーンだったんですね。『LIAR GAME(ライアーゲーム)』は2005年から2015年まで、10年に渡って“週刊ヤングジャンプ”に連載されたマンガです。いわゆる「デスゲーム物」が流行っていた時期の作品。暴力要素は薄く、「騙し合い」を軸にした頭脳戦が展開されるので「限定じゃんけんのノリがずっと続くカイジ」って感じです。2007年にドラマ化し、人気を博して映画も公開されたので、実写版のイメージが強い人も多いかもしれない。甲斐谷忍の作風はドラマ向きで、何本もドラマ化したマンガがありますけど『ONE OUTS(ワンナウツ)』という作品だけ過去にアニメ化しており、実に17年ぶりくらいのアニメ化となります。総監督はワンナウツの監督だった「佐藤雄三」。ワンナウツのアニメは話の途中でプツッと終わっているので、続きも映像化してほしいんだけど、もう時間が空き過ぎて難しいのかな……。

 「ライアーゲーム事務局」と名乗る謎の組織が執り行う「ライアーゲーム」を描く物語で、読み進めるうちに「この事務局って結局何なんだよ」と疑問に思うかもしれませんが、ハッキリ言って舞台装置のようなものなんで気にしない方がいいです。お人よしでバカ正直な女子大生「神崎直(ナオ)」が稀代の詐欺師「秋山深一」とコンビを組んで「勝てば莫大な賞金を得て、負ければ人生破滅レベルの借金を負う」という「ライアーゲーム」に立ち向かっていく。普通なら食い物にされて終わりの善人主人公が、その善性を武器にして生き延びていく、頭脳戦やギャンブル物にしては珍しく清々しいテンションを保った作品です。設定が突飛なせいもあって序盤の掴みが弱いとか、だんだんゲームのルールが複雑化して理解しづらくなっていく(作者も混乱したのか、矛盾が生じているゲームもある)とか、オチがちょっと……とか、難点も多々ありますけど細かいことに目を瞑れば充分楽しめる。アニメは原作そのままで行くのか、現代風にアレンジするのか。気になるところだ。

前屋進「メイドさんは食べるだけ」アニメ化!日本で暮らし始めるメイド役に市ノ瀬加那(コミックナタリー)

 メイドの主人公のCVが「市ノ瀬加那」……リメイク版『月姫』の「翡翠」やんけ!と咄嗟に思ってしまった。原作のマンガは2019年に“コミックDAYS”で連載開始、2022年までに単行本を4冊出していましたが、同年「体調不良のため」という理由で一旦休載。2024年にようやく連載を再開しました。再開後は若干ペースも落ちていますが、連載自体は続いている。タイトル通りの内容で、ジャンルとしては「日常系」になるのかな。メイドの主人公を眺めてひたすら愛でる内容となっており、ストーリーらしいストーリーは特にない。『よつばと!』や『明日ちゃんのセーラー服』を彷彿とさせる路線です。

 アニメは「EMTスクエアード」と「マジックバス」の共同制作。EMTスクエアードは最近だと『ある魔女が死ぬまで』とか『ボールパークでつかまえて!』をやったスタジオですね。オリジナルだと『終末トレインどこへいく?』がある。マジックバスは70年代頃から活動している老舗だが、グロス(下請け)が多く、アニメ関係者やマニア以外にはあまり知られていない。「金のなかったガイナックスが『哭きの竜』のアニメ制作を引き受けて、1500万円くらい抜いてから下請けに丸投げした」という有名な話がありますけど、その丸投げされた下請けがマジックバスです。代表作は、強いて言えば「ワンダフル」でやっていた『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』かな。監督は「泉保良輔」、『妖怪ウォッチ♪』(『妖怪ウォッチ』のアニメ3期)などを手掛けている。シリーズ構成は「高橋ナツコ」と「藤本冴香」。高橋ナツコは20年以上の職歴があって脚本家としての年季は相当だが、毀誉褒貶の差が激しい人でもある。『ゆゆ式』『こみっくがーるず』『星屑テレパス』などのきらら系は割と評価されているものの、『覇穹 封神演義』に関しては未だに原作ファンから恨まれている。藤本冴香はEMTスクエアードの作品でちょくちょく脚本を書いている人、らしい。詳しいことはよくわからない。総じて、メチャクチャ名作になりそうな布陣というわけではないけど、無難に良い仕上がりになるのではないかな……なるといいな……って淡い期待を抱く気配です。

アニメ『リィンカーネーションの花弁』2026年放送。メインキャラを演じる千葉翔也、丸岡和佳奈、佐倉綾音のコメント到着(電撃オンライン)

 2014年連載開始だからもう結構な古株、正直このままアニメ化しないで完結する作品なんじゃないかと思っていました。原作者は「小西幹久」、『素足のメテオライト』という作品でデビューした人です。『リィンカーネーションの花弁』は連載2作目、もう10年以上やってるので既刊も22巻とかなりのボリュームになっている。輪廻転生(リィンカーネーション)がテーマで、歴史上の偉人や英雄、罪人の生まれ変わりである主人公たちが「前世の才能」を引き出して戦う異能バトル物です。設定だけ聞くとFate路線のように思えるが、ノリとしてはどちらかと言えば『サタノファニ』(実在する殺人鬼たちの記憶と精神を植え付けられた女性たちが壮絶な殺戮劇を繰り広げるマンガ)に近い。『サタノファニ』はエログロが強烈すぎて到底アニメ化不可能だ(それどころかアプリで配信できず、単行本を購入する以外のルートだとヤンマガwebでしか読めない)が、『リィンカーネーションの花弁』は比較的過激な要素が少ないのでレーティング的には大丈夫だろう。そういえば、『超人戦線』というリンカネとほぼ同時期に始まった能力バトル物のマンガがありまして、開始当初のコンセプトは「異能に目覚めた覚醒者(エスパー)」vs「練達の技で戦う超越者(エキスパート)」だったんですが、途中から「現代に甦った天才(ジーニアス)」が参戦して「重力攻撃(グラビティ・アタック)で街を壊滅させるアイザック・ニュートン」というギャグみたいな展開を繰り広げるんですよね。作者は麻雀マンガの『バード』や賭博マンガの『ギャンブルフィッシュ』で有名な「青山広美」と「山根和俊」のコンビで、個人的には結構好きだったけどあまり長く続かず7巻で終了となってしまった。

1980年代、男子も「花とゆめ」に夢中だった? こっそり読んでハマった作品とは(マグミクス)

 私がハマったのは80年代じゃなくて90年代だったな。男性に比べて女性は古本を好まない傾向にあり、少女マンガの古本は不良在庫化しやすく、頻繁にワゴンで投げ売りされていました。なので私も「安いから」という理由で花とゆめコミックスに手を出してハマったものです。未だに続いている『パタリロ!』は一個一個のストーリーがそんなに長くないし、何冊か飛ばしても問題なく楽しめる、ある意味で「少女マンガ界の『こち亀』」みたいなポジションだったから20年くらい前までは読んでたな。作者の趣味で落語やミステリなど様々な要素を盛り込むのも楽しかった。

 私が特に好きだったのは「電磁人間プラズマX」関連のエピソード。プラズマXは主人公「パタリロ」が開発した高性能なアンドロイドなんですが、知能が高いため恋人を欲しがるようになり、「じゃあぼくが女性ロボットを作ってやろう」とパタリロが言い出して……と、はじめの頃は単発ストーリーみたいなノリだった。ひと騒動あった末に新たな女性型アンドロイド「アフロ18」が完成、しかしアフロは面食いで人間の美少年しか興味を示さない。ひと悶着あった末にプラズマXは何とかアフロの心を射止め、ふたりの間には「プララ」と「αランダム」、2体の子供が出来る。プララは別の科学者が開発した「スクン1」という少女型アンドロイドが元になっていて、スクン1が破壊された後にサルベージしたデータを赤ちゃん型アンドロイドに移植してプララが生まれた……という経緯です。プラズマXとアフロがくっついてプララが生まれたのではなく、プララが生まれたからふたりは夫婦になる決意を固めた、って感じ。ランダムはプララが兄を欲しがったので、後から「兄型アンドロイド」として開発された。稼働時間的には兄型アンドロイドの方が弟に当たるという、結構ややこしい関係です。「メロンパンナの後に作られた姉のロールパンナ」みたいな話。プラズマX一家のエピソードはそこそこ多くて単行本だとバラけていますが、文庫版6巻はセレクションとして固めているから読み返しにうってつけ。ただしこのセレクションにプラズマXが初登場した「スターダスト」は含まれていません(文庫版だと2巻に収録されている)。「スターダスト」は140ページくらいある少し長めのエピソードなので仕方ない。プラズマX一家の話は「さよならアフロ」というエピソードから一気に暗くなりますが、このへんも文庫版8巻にまとめられている。プララが兄であるランダムに恋をしてしまい、恋心を諦めさせるため「ランダムはバンコランに惚れている」芝居を打つことにしたらマジでランダムがバンコランに惚れてしまった……という「恋はせつなく」を最後にプララは出てこなくなり、プラズマX一家関連のエピソードはほぼ終了となりました。兄のランダムは以降も少しは出番があったし、聞いた話によると「イカロスの羽」という100巻あたりの長編エピソードにプラズマXが登場したらしいが、プララに関しては消息不明になっているそうだ。

 パタリロ以外だと「桑田乃梨子」の作品も好きでしたね。「少女マンガ」からイメージされるような甘ったるさがなくサッパリした作風&画風で、初期の『ひみつの犬神くん』や『青春は薔薇色だ』も面白い(現在この2作は『犬神くんと森島さん』というタイトルでまとまっている)が、白眉は何と言っても『おそろしくて言えない』。霊感の強い「御堂維太郎」とクラスメイトになった不幸体質の「新名皐月」、「ユーレーなんか信じない」と言い張る新名を御堂はひたすら振り回す……というオカルトコメディ。絵柄の古さはともかくノリの良さは現代になっても色褪せない。ストーリーが進むと新名の前に「維積(いづみ)」という少女が現れてラブコメめいたムードが漂うものの、なんと彼女は御堂の妹、しかも厄介な事情を抱えていて恋路は一筋縄じゃいかない。果たして新名くんは幸せになれるのか……単行本だと全4冊、文庫版は全2巻と程好い長さにまとまっており、今更でもいいからアニメ化しないかなぁ、と願っている。確かドラマCDは出てるんですよね。御堂役が「塩沢兼人」、新名役が「緑川光」という今や再現不可能なキャスティングに泣いてしまう。

 花とゆめは推理物もいくつかあって、そのへんも好きでした。『パズルゲーム☆はいすくーる』は続編も含めると70巻くらい出たんだっけ。私は移籍したあたりで読むのやめちゃったから詳しいことは知らないです。あとは「神谷悠」の“迷宮”シリーズ、ホームズ役の「綾小路京」とワトソン役の「山田一平」によるコンビを主軸に展開するシリーズで、映像化されていないため知名度は低いが番外編含めて単行本で40巻近くとかなりのボリュームを誇る。「明らかに島田荘司の“御手洗潔”シリーズの影響を受けているな」という雰囲気でしたが、開始時点では10代だったキャラたちが30代になるまで続けたおかげで「このシリーズならでは」の領域に達している。まだ完結していないが、最新刊の『迷宮回廊(4)』が出たのはもう7年も前。そろそろ未完という事実を受け入れるべきか……。

 ほか、一大ムーブメントを巻き起こした『ぼくの地球を守って』とかリメイクアニメが作られるくらい人気のあった『フルーツバスケット』とかドラマ版の方が有名になっちゃった『花ざかりの君たちへ』とか厨二心をくすぐりまくった『天使禁猟区』や『闇の末裔』、短編も長編も面白かった喜多尚江作品などなど枚挙に暇がありませんけど、私がもっともハマった作品は「やまざき貴子」の『っポイ!』ですね。残念ながら電子化はしていない模様。中学3年生の男子、「へー」こと「天野平(あまの・たいら)」が進路や恋に悩みながら日々を過ごす青春ストーリーで、約20年の連載期間で全30巻、主人公たちが中学校を卒業するあたりで終わるという「まさかの高校編なし!?」な超濃密モラトリアムマンガです。少女マンガだし、さっさと進学して恋愛面に深く切り込んでいくかと思いきや、20年近く連載した末に主人公とヒロインがくっついて幕。改めて振り返ると展開の遅さに愕然とする。あまりにも長く連載が続いたせいで私自身の嗜好が変わって、好きなキャラが「一ノ瀬雛姫」からいつの間にか「相模真」になっていました。雛姫と真は親友同士なんですが、たまたま同じ相手(平)を好きになってしまい……という三角関係が物語の主軸に据えられており、この三角関係がなかなか進展しなくてヤキモキしたものです。

 『っポイ!』はとにかくサブエピソードが多く、「主人公の父親と母親の馴れ初め」くらいは序の口、「主人公の親友の父親と母親の馴れ初め」までやったし、何なら「主人公の祖父母の馴れ初め」までやってる。「女装した主人公を女の子と思い込んで惚れちゃった」男の子がいるんですが、そいつの兄貴のエピソードという「もはや主人公が何も関係ない!」って話まである始末。逆に言うと「本筋」という概念が溶解するぐらい丹念に作中世界が作り込まれていて、「作者が築いた妄想世界の中で遊ぶ」ような感覚でドップリと漬かり切ったものでした。正直、絵がゴチャゴチャしていて読みづらく、「10代や20代の頃は夢中になれたけど、30過ぎるとこのノリはもうキツいな」って内容なんですが、『っポイ!』のおかげで受験の苦しかった期間も乗り切ることが出来たから私の中では「面白い・面白くない」という次元で評価する作品ではなくなっている。90年代に一度ドラマ化して、完結が近づいてきた2008年に『ひと夏の経験!?』というタイトルでゲーム化している(プラットフォームはPS2)けど、アニメ化はしていない。仮に「アニメ化決定」となったらメチャクチャ驚く自信があります。『っポイ!』はサブエピソードが多すぎるくらい多いんだけど、だからと言ってサブエピソードを切り過ぎると『っポイ!』っぽさがなくなってしまうし、シリーズ構成は死ぬほど難しいだろうな。

大陸版『アークナイツ』と『BanG Dream! Ave Mujica』がコラボ。期間限定イベントの開催や、Ave Mujicaメンバー5人がオペレーターとなって登場。日本での開催は不明(ファミ通.com)

 4月頃に「『アークナイツ』とコラボする」って発表はあったけど、ここまでガッツリしたものとは思わなくて仰天した。メンバー5人全員をプレイアブル化&コーデ(スキン)実装!? ちなみに『アークナイツ』はアニメをちょっと観たくらいで「アーミヤが可愛い」「あの刹那の間に鞘走るかよ!?」程度しか知りません。一方、バンドアニメなのにデスゲームみたいなOP流してる作品ことAve Mujica。バンドリに属するガールズバンドの1つながらガルパ(バンドリのアプリ)では立ち絵しか実装されておらず、アニメが終わってから5ヶ月くらい経つのに未だにプレイアブル化していないんですよ。まさかコラボとはいえ海外のアプリで先にプレイアブル化するとは……噂によるとガルパは開発と運営に携わっていた会社「クラフトエッグ」が撤退したことに伴って運営の規模縮小を余儀なくされ、「新曲」とか「既存キャラの衣装違い」はともかく「完全新規キャラの3Dモデル」を実装するだけの技術力が既に失われているんだとか。

 9月にコラボを開催するのはあくまで大陸版の『アークナイツ』であって、日本版の『アークナイツ』に関してはまだ何の情報もない。ただ、過去の事例を参照すると半年後くらい、つまり来年に遅れて開催するかも。アクナイは基本的にコラボを復刻しない方針らしいから、気になる人は今のうちにプレーを始めてコラボに備えておいた方がいいかもしれません。5人中2人が配布(にゃむと海鈴)、2人が★5(初華と睦)で、残る1人が★6(祥子)という塩梅、アクナイのコラボガチャは仕様が変わらなければ120連で天井に達しますから充分間に合う。

 アニメで齧った程度の知識しかない私ですが、あの殺伐としたテラ(アクナイの舞台となっている大陸ないし惑星の名称)に普通の女子高生が迷い込んで大丈夫なんだろうか、と少し心配になる。グラブルの場合、コラボキャラは一時的に「お空の世界」へ迷い込んだだけでイベントの最後に元の世界へ帰還するのが通例(稀に「もともとお空の一部だった」という設定にされるケースもある)ですが、アクナイはこれまで迷い込んだコラボキャラたちが明確に「帰った」と確認できる描写がないため「コラボしたが最後テラに永住するハメになる」という疑惑があるそうな。「わかれ道の、その先」がテラだなんて最悪すぎるでしょうが。つっても、絵とかセリフから察するに迷い込むのは本編終了後じゃなくて本編の最中みたいですね(本編終了時点ではもうなくなっているアイテムが背景に描かれているし、「マスカレード」という言い回しも諸事情から途中で使うのをやめている)。

 それにしてもMyGOとMujica、マジで中国人気スゴいんだな……確かにSNS眺めてても大陸産とおぼしきファンアートが大量に流れてくるもんな。『崩壊:スターレイル』が先日Fateとコラボしたけど、「次はMujicaとコラボするかもしれない」なんて声があるくらいです(なお『崩壊学園』とMyGOはもうコラボしている)。祥子役の「高尾奏音」とか燈役の「羊宮妃那」がスタレに起用されていることを考慮するとないでもない話だ。私はやってないからスタレの内容は全然知らないが「モーディス」という名前のキャラがいるらしく、Mujicaコラボやったら「モーディスとモーティスでややこしい!」ぐらいはかましてくるだろう。

『ハリポタ』スネイプ役の土師孝也さん死去 ハリー・ポッター役の小野賢章ら声優仲間・業界が追悼「小さい頃から会うたびに元気か?って」(ORICON NEWS)

 初報に触れた時、思わず「嘘だろ……」と言葉を失ってしまった。世間的にはスネイプの吹替やトキ(アミバ)役で認知されているらしいが、個人的にはファフナーの「溝口恭介」を演じた印象が強い。溝口さんはファフナーパイロットではなく主人公たちを支援する大人で、「そのうち主人公たちを庇って死にそう」と感じるようなポジションのサブキャラだったんですが、幾度もの窮地を生き延びて完結編にまで登場する名物キャラとなった。あまりにも危機一髪で死地を潜り抜けることからファンの間では「不死身の溝口」「異能生存体」と呼ばれて親しまれている。

 最近だと『プリンセス・プリンシパル』の黒幕的な存在「ノルマンディー公」を演じていましたね……プリンセス・プリンシパルはTVシリーズ終了後、完結編に当たる劇場版シリーズ『Crown Handler』を展開しており、全6章構想で今年第4章がやっと公開されたところでした。非常に残念なことですが、キャスト変更は避けられないでしょう。プリンセス・プリンシパルは諸事情から主要キャラである「アンジェ」のキャストが交代(今村彩夏→古賀葵)になっているので、ファンは「致し方ないとはいえ、またか……」と嘆くことになります。『ギルティギア』の「スレイヤー」役は初代声優の「家弓家正」から引き継いだものだったが、こちらもまた交代か……。

 FGOだと「ジェームズ・モリアーティ(アーチャー)」役。モリアーティは歳を取ったバージョンと若い頃のバージョン(ルーラー、ファンからの愛称は「若森」)があって、若い方はまた別の声優が演じていますが……他にもアニメ版『異修羅』のナレーションなど、「土師さんならでは」の仕事がいくつもあって枚挙に暇がありません。ただただ残念です。


2025-08-19.

「TVアニメ第2期制作決定!」と報じられたにも関わらずなかなか続報が来ない『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』がセール中みたいなので宣伝してみる焼津です、こんばんは。

 Amazonは終了時期を明記しないことが多いのですが、他のショップでも行われているセールの場合は足並み揃えて終わらせるパターンがだいたいなので、「他のショップ」を参考にすれば終了時期がわかります。これに関しては8月22日終了ですね。シリーズ全13冊、通常時であれば15,620円のところ9,240円と約40%OFF、更に70%のポイント還元が付いて、差し引きすれば2,770円! 1冊平均200円強という破格の投げ売りセールです。結構癖のある作風だから、いきなり全巻購入しないでまずは無料の1〜3巻を買って(無料なのに「買う」というのも変な話だが)、読んで肌に合いそうだったら続きを購入する……という感じで良いと思います。2・3巻は「ファンオース公国編」というシリーズでも屈指の盛り上がりを見せるエピソードなんで、これが面白いと感じられないのであれば4巻以降はより厳しくなるでしょうし。ちなみに現在スピンオフの『あの乙女ゲーは俺たちに厳しい世界です』アンケート特典SS(出版社の公式Webサイトでアンケートに答えれば読める特典SS)として「公国姉妹編」が連載されており、ファンオース公国のスピンオフもいずれ出るかも……といった状況です。

 モブせかは販促のために書かれたSSが多く、あまり書籍としてまとまっていないのが難点なんですよね。『あの乙女ゲーは俺たちに厳しい世界です』というスピンオフ自体、もともとは本編のアンケート特典SSとして書き下ろされた「マリエルート」がベースになっているんで、「公国姉妹編」は「特典SSを書籍化したスピンオフの特典SS」というファン以外には何のことかよくわからない位置付けになっています。重要度が高いSSとしては本編完結記念連動購入キャンペーンのために制作された後日談SSがありますが、本編の完結巻のみならずスピンオフの3巻も買わないと読めないという熱心なファン向け仕様で、「本編だけでいい、スピンオフには興味ない」という人にはやや厳しいか。

 一応、スピンオフの方もセール中でポイントバックを考慮すれば既刊4冊が差し引き900円弱という破格の安さなんですが、こっちはまだ完結していないし本編に比べると面白さが少し落ちるんだよなぁ……リオンがオリヴィアと出会う前にマリエと遭遇し、マリエの「逆ハーレム計画」が破綻してしまう――というifストーリーで、逆ハーレム計画が成立しない以上アンジェリカを巡る例の騒動も発生せず、リオンがあまり出世しないので本編に比べてスケールが小さいんですよ。「ホルファート王国」を襲う怨讐の魔の手が軸になっており、スケールは小さいがシリアス度はやや高め。なので愉快痛快な本編に対し、スピンオフの方は陰湿さが際立っている。商品紹介で「「モブせか」本編のアンケート特典にして「厳しすぎる」と大反響の“ifルート”WEB小説、超大幅加筆でついに書籍化!」と謳っていますが、悪く言えばかなり水増しされているのでベースとなっている「マリエルート」よりもテンポが良くない。「マリエルート」はライトノベルに換算すると3冊分程度のボリュームなんですが、スピンオフは4冊費やしてもまだ終わらず、しかも4巻発売からそろそろ1年経つのに5巻の刊行予定が決まらない……作者の「三嶋与夢」が他に3つも商業化したシリーズを抱えている(なろうでの連載は完結しているけど書籍化が止まっていてコミカライズが続いている『セブンス』も含めると4つ)から仕方ない面もありますが。『あの乙女ゲーは俺たちに厳しい世界です』の1巻も期間中は無料なので、気になる人はとりあえず読んでみるが吉です。先に本編を1巻だけでも読んでおくと理解は早くなります。

 ついでだから他のGCノベルスのセール商品も紹介しておこう。アニメ化した『転生したらスライムだった件』と『賢者の弟子を名乗る賢者』と『転生したら剣でした』が3巻まで無料、『暴食のベルセルク』と『嘆きの亡霊は引退したい』と来年アニメ放送予定の『「お前ごときが魔王に勝てると思うな」と勇者パーティを追放されたので、王都で気ままに暮らしたい』が2巻まで無料、現在アニメ放送中の『異世界黙示録マイノグーラ』が1巻無料です。『嘆きの亡霊は引退したい』はポイント還元率が高いから紙版処分して電子版買い直そうかな……あとアニメ化作品ではないが『田中〜年齢イコール彼女いない歴の魔法使い〜』が全15巻中5巻まで、実に1/3が無料となっています。『佐々木とピーちゃん』の原作者「ぶんころり」の初書籍化作品であり、佐々ピーに比べるとかなりのクセ強、「これはアニメ化されないわけだ」と納得してしまう一作です。

【期間限定】「カルデア・U−サマーアイランド 〜大統領は夏の夢を見るか?〜」開幕!

 そんなわけで始まったFGOの水着イベント、今回は久しぶりに「水着☆5が3騎」という鬼仕様です。基本的に例年の水着☆5は2騎だけなんですが、7周年のとき(「アークティック・サマーワールド! 〜カルデア真夏の魔園観光〜」)だけレディ・アヴァロン、水着スカディ、水着伊吹と3騎も実装されました。あのときも大量の石を配ってたっけな……もう具体的な数字は覚えてないけど、最大で1000個以上だったと思う。アルクェイドが実装された直後なので石がほとんど残ってない人も多かった。「運営が大量に石を配るのはすぐに回収する見込みがある時」、これはファンの間で定説とされています。

 生放送で10周年のときに公開されていた水着呼延灼と水着クリームヒルト、水着パッションリップの各クラスを明かした後、PU2に当たるメンバーを紹介してTLは悲鳴のような反応で溢れ返りました。☆4が美遊・エーデルフェルト、☆5が両儀式! FGOの水着サーヴァントには毎年「社長枠」と呼ばれるTYPE-MOON(会社名としてはノーツ)の社長「武内崇」がイラストを描けたキャラがいる(最初の水着イベントではアルトリアとマシュの水着霊衣、2回目の水着イベではアルトリア・オルタ、3回目はジャンヌとジャンヌ・オルタ、4回目は沖田、5回目は新規ナシでエミヤの水着霊衣とマシュの水着霊衣第2弾、6回目は沖田オルタ、7回目はワルキューレ6人分、8回目はアルトリア・キャスターと、正確には水着イベントでの実装ではなく周年記念ガチャでの実装だがモルガン、去年の9回目がシエル)のですけど、今回は周年記念ガチャでイベントの主役「オルガマリー・アニムスフィア」が実装されたので社長枠が存在するかどうか微妙なところでした。武内崇がイラストを担当している女性サーヴァントで水着になっていないの、式以外だともうメドゥーサとジャンヌ・オルタ・リリィ、浅上藤乃、ラクシュミー・バーイー、謙信、アルクェイドくらいしか残ってないですからね。

 式の姿が明かされたとき、「石1000個使わないで温存しといてよかった……!」と心から思ったものです。胸を撫で下ろしつつ、「今回の新規実装は配布含めて5騎? 少ないな」という違和感がチラッと脳裏をよぎっていきました。過去の水着イベントではだいたい6〜8騎の水着サーヴァントが実装されていて、5騎しかいない年なんて一度もなかったんです。番組でカノウヨシキが「まだあります」と言い放ったとき、7周年直後の「☆5が3騎の水着ガチャ」という忌まわしき記憶が甦った歴戦のマスターも少なくなかっただろう。嫌な予感は的中し、水着ティアマトと水着クレーンのムービーが流れ出してTLはもはや悲鳴を通り越して絶句の域に。もう配布からだいぶ経っているのに「石1000個」がふたたびトレンド入りしたのは笑ってしまった。「石1000個、取っといてよかった!」という安堵の声、「石1000個も配るなんてどうかしてると思ったが、むしろ『足りない!』と課金させるためだったんだな」という納得の声、「石1000個あるから大丈夫……って、もう使い切った後だった! 水着イベ来るのは知っていたのに!」という嘆きの声、「もう一回、石1000個配ってください」という強欲の声――様々な声が重なった結果でした。RTAで睡眠時間も入れて52時間ちょいで奏章4までクリアして石1000個受け取った走者もおり、そっちが話題になっていたことも影響してるかな。ストーリー全飛ばしとはいえ、理論上は丸3日掛ければ石1000個まで到達できることを証明したのは「偉業」と称しても構わないでしょう。それはそれとして、水着リップのイラスト描いているワダアルコまで「石1000個くれ〜〜〜〜〜〜〜」と叫んでいるのは笑うしかない。水着ガチャが控えていることはアナタが誰よりも知っているでしょうに(社長枠とは別に「アルコ枠」と呼ばれるくらい水着サーヴァント率の高いイラストレーター)。

 私の優先順位は水着式がトップで、これは天井にキスしてでも必ず引くつもりでした。「お前も新規鯖を引かないか?」と誘惑してくる特別ミッションの石1000個報酬をあえて受け取らず、「1」と未受取の表示を出させ続けた甲斐があるというもの。第二目標が水着リップ、天井2回も叩けるほどの余裕はないので、とりあえず手持ちの石でチャレンジしてみて引けなければ一旦撤退、水着式を引いた後で再チャレンジする……と算段していました。石の残量的に「式が早めに出ればリップの方で天井叩けるかも」って具合。ティアマトは「式とリップを狙った後で石が残れば……」と、場合によっては泣く泣く見送るつもりだった。仮に式やリップがサクッと出たとしても「☆4で沼る」という事態もありえますからね。天井がある☆5と違って天井も何もない☆4はなかなか計画を立てにくい。☆4勢の中で一番欲しいのが美遊、次がクリームヒルト、最後がクレーンだからやっぱり優先順位はPU2(式・美遊)>PU1(リップ・クリームヒルト)>PU3(ティアマト・クレーン)になる。実際のガチャ結果がどうなったかは最後の方で触れておきます。

 ストーリーは、支持率を上げるためにUオルガマリーが「大統領特異点」を作り上げてサーヴァントやマスターを招待するという、大筋としては「アークティック・サマーワールド!」や「セレブサマー・エクスペリエンス」みたいな観光寄りのシナリオです。大統領とは別に避暑地スタイルのオルガマリーが出てきて主人公たちの味方になる。「美夏」と名付けられた彼女、いかにも「夏の思い出」として美しく消え去っていくのだろうな……というムードが強すぎて配布である水着呼延灼の存在感が薄くなりがちに。チュートリアル的な段取りの後、催し(?)の一つである「悪役令嬢エリア」へ向かう一行。「悪役令嬢」の座を巡って争うリップとヒルト、そしてカムランの丘(仮)で決着をつける円卓のサメ騎士……結局サメは何だったの? と疑問を残したまま物語は次のエリア、「因習村」へと移る。

 因習村エリア、はじまりの章タイトルは「大統領島のある村について」。最近文庫化されたり映画化されたりしている『近畿地方のある場所について』のパロディですね。元は「カクヨム」に掲載された小説なのだが、単行本版と文庫版と映画版、すべて内容が違うため一つのネタで三度楽しめる作品だ。次が「フェイクヴィレッジQ」、元ネタはYoutubeのチャンネルである「フェイクドキュメンタリーQ」。一種のモキュメンタリー(ドキュメンタリーっぽい作りのフィクション)で、意味深なホラー動画を次々と投稿して話題を呼んでいる。一個一個の動画は短く、サクッと肝を冷やせるんだけど、よくよく観ると「隠れたストーリー」が浮かんできて……と非常に凝った出来栄え。その次が「変な村」、書籍化・漫画化・映画化した『変な家』が元ネタです。Webライターの「雨穴」は知人から「奇妙な間取りの家がある」と教えてもらい、図面を記事に掲載して「あなたはこの家の異常さがわかるだろうか」と読者に呼びかける。その家は子供部屋が妙に奥まったところにあり、夫婦のものとおぼしき寝室を経由しないと出入りすることができない。まるで「子供」を閉じ込めるような作りの家だった……という感じでストーリーが転がっていきます。「図面の異常さ」を読者自身に理解してもらうことで「他人事じゃない」感覚を味わってもらう、謎解き要素ありのホラーでぐいぐい引き込まれるのですが、肝心の推理はかなり無理がある代物なので「そうはならんやろ」とツッコミながら楽しむが吉。ラスト、「ぷりずまが、来る」は『ぼぎわんが、来る』のパロディ。映画『来る』の原作です。「ソレが来ても決して招き入れてはならない、山へ連れて行かれるよ」と語られる怪異「ぼぎわん」、その正体は何なのか……というホラーなんですが、「ぼぎわん」に対抗する霊能力者たちのキャラの濃さも特徴。最近はこういうホラー作品がすっごい人気らしくて、KADOKAWAとかがバンバン本を出していますね。多過ぎてチェックし切れないレベル。正直拍子抜けするようなオチのものも少なくないが、東京創元社が出している『深淵のテレパス』は『リング』『ぼぎわんが、来る』系の謎解き要素が強いタイプのホラーで面白かった。続編として『ポルターガイストの囚人』という作品が出ているが、こちらはまだ読んでおらず崩すのが楽しみ。

 話が逸れた。もともと「因習村の巫女」みたいな出身の美遊(「神稚児」と呼ばれる「あらゆる願いを叶えてしまう能力」を持った存在で、制御しないと危険なため俗世から隔離された環境で育てられた)はハマり役すぎて「ごっこ遊び」でしかなかったはずの因習村エリアに大騒動を巻き起こしてしまう。わらべ唄を歌う駒姫が横溝色全開でテンション上がってしまった。まぁ横溝作品って世間的なイメージに反して因習要素はほとんどないんですが、「横溝に影響を受けた」因習村作品が多いため、なんとなく「因習村の首魁」みたいに捉えられている節があります。「結局因習村って何なの?」をわかりやすく言うと「田舎のカルト」なんですよね……暗鬱、陰湿という印象を持たれがちだが、映画の『ウィッカーマン』や『ミッドサマー』みたいに明るく陽気なムードの中で前時代的な価値観が横行する様子を見せつけて現代人の心胆を寒からしめる作品もある。本来滅んで然るべき「因習」がなぜ残り続けているのか、という点に理由付けして説得力を持たせられるかどうかが鍵になってきます。

 因習村エリアを抜けた一行は第四エリア、「理想の結婚相手を必ず見つける」と謳う結婚相談所のようなところへ辿り着く。そういえば最近ヤンマガwebで「運命など存在しないので」という結婚相談所マンガが始まったな……裏テーマは「負けヒロイン」? モブのような感覚で岸波白野(♀)とキャス狐、岸波白野(♂)と赤王が通り過ぎて行ったが、私の解釈的には「ザビ子と赤王」「ザビ夫とキャス狐」なので少しもにょった。まぁ岸波白野とザビーズは似て非なるものだから……と心のバリアを張りつつ本拠地「テクシス社」に乗り込むと、そこには南米の神性たちが……! テクシスの綴りは「tecciztli」となっていますが、これはナワトル語で「法螺貝」を意味する言葉であり、会社のロゴも法螺貝を模したものになっている。アステカ神話に「テクシステカトル」という月の神がいて、この神はもともと太陽だった。しかし既に別の太陽神が存在していたため「太陽がふたつもあると暑くてかなわない」と兎をぶつけられ、冷えて月になった――という話があるそうだ。なのでアステカ神話でも「月に兎がいる」ことになっている。「月」や「兎」と関係があることでようやく「玉兎(両儀式)」も登場します。浅上藤乃から「黒桐幹也と結婚します」という報せを受けた式は結婚式をぶち壊すために式場へ乗り込んでいく……という流れなのだが、今回の夏イベント、かなりシナリオが長くない……? メインクエストの更新は明日(日付的にはもう今日か)が最終日なんですが、「第二十五節〜最終節」となっており、想像以上のボリュームがあって一日サボっただけでも追いつくのに苦労します。

 ついでだし、各ユニットの特徴も見ていこう。まず配布の水着呼延灼、クラスは「ライダーかな?」と予想していましたが、まさかのバーサーカー。しかも秩序特攻付きの全体宝具で、NPチャージスキル持ち。配布としてはかなり強いです。10周年のタイミングでFGOを始めた初心者は重宝するでしょう。トリダモノによるムチムチの立ち絵も素晴らしく、イベントシナリオで登場するたび顔がニヤけてしまう。可愛いしユニットとしても使えるし、正式加入したら聖杯入れてレベル90にするつもりです。

 お次、水着クリームヒルトはライダー。「イルカの聖女」となっていた水着ジャンヌを彷彿とさせる「サメの悪役令嬢」として登場です。もしかしなくても東出祐一郎の犯行だな? 第二臨がサメの着ぐるみみたいな格好で、奇しくも「怖がらせましょう!」ミームと被る形に。サメ兵士を率いて戦う謎の女王と化しているが、このサメ兵士についても終章で秘密が明らかになったりするのかな。なったら首がもげる勢いで驚く。単体宝具ライダーなのであまり周回向きではないが、第三スキルの全体強化解除が便利でイベントクエストだと大活躍。スキルの副次的な効果で混沌属性の味方を支援することができる。ちなみに夫のジークフリートは「混沌・善」です(なおシグルドは「中立・善」)。攻撃時、たまにサメの被り物をしたジークフリートが出てきますけど、ファンの間では「シャークフリート」と呼ばれている模様。ライダーはまだ冠位戴冠戦やってないし、水着イベントが終わった後も再ピックアップされるはずなので「リップ引けたけどヒルトさんは沼りそう……」という方は一度撤退する選択肢もアリです。

 PU1の目玉、水着パッションリップのクラスはセイバー。てっきりアーチャーかと思ってました。ロケットパンチの如く手が飛んでいくし、ヴァージンレイザー・パラディオンの射手でもあるし。リップにはドゥルガーの霊基が混じっており、「ドゥルガーは10本の手に剣を持つ」という逸話から「10本の剣」を爪にした……という設定なのでセイバーと言えばセイバーではある。「NP50チャージできるバスター単体宝具セイバー」という意味では現状唯一の存在です(アーツだと紅閻魔、クイックだとメドゥーサがいる)。しかし彼女の特徴は宝具やNPチャージではなく第一スキル「ブレスト・ポーチ」と第三スキル「プリンセス・オーダー」。ブレスト・ポーチはターゲット集中(3T)&ダメージ吸収(2T)で、「ダメージ吸収」と言うと地味に聞こえるが正確には「相手の攻撃を無効化したうえで『本来被るはずだったダメージ』を回復に充てる」という非常にユニークな代物。必中だろうが無敵貫通だろうが対粛清貫通だろうが全部無効化、それどころかHPを回復させてしまう。強化解除や即死は鬼門みたいですが、「宝具にも耐えられるタゲ集中スキル持ち」という意味ではデオンの上位版と言えます。ただ、全体宝具かまされると味方を守り切れないので、盾役として使える局面は限られてくるかも。ターン数は掛かるみたいですが、監獄塔の高難易度クエストをほぼ単騎で攻略してみせた人もいるとか。プリンセス・オーダーは「自身に使う」か「他のサーヴァントに使うか」で効果が変わってくるスキル。自身に使えば「毎ターンNP獲得&宝具威力アップ」、自分以外に使えば「クリティカル威力アップ&毎ターンスター獲得」です。簡単にクリアタッカーを任命できるので、イベントの攻略も楽チンに。副次的な効果として「七騎士に対する防御優位状態を付与」、つまり特殊クラス以外のエネミーによるダメージを軽減するので、バーサーカーの運用がしやすくなります。綜合すると……一応NPも撒けるけどあまりシステム周回向けの性能ではなく、現環境では「強い」と見做されないかもしれないけど使っていて「面白い」と感じるユニットですね。第一再臨はパーカー水着、第二再臨は新体操で溌溂としていて可愛い。第三再臨は甲冑ドレスで「戦うお姫様」となっていますが、手が手だけにほぼほぼ鉄腕ゲッツだな……。

 PU2の☆4枠、水着美遊はランサー。水着イリヤ、水着クロエは既に実装されているので、プリヤ三人娘が遂に水着で揃いました。並べると「夏休み」感が強くて楽しい。ただ、イベントの内容がホラー寄りなこともあり、この美遊なんか不穏な気配が……「イリヤ」属性を持つ対象の数に応じてNPのチャージ量が増えるカズラドロップみたいなスキルを有しており、「サクラシリーズ」属性に比べてイリヤ属性持ちは少ないから下位互換か、と思いきや。なんと第三スキル「イリヤズム」でフィールド上の自身を除く敵味方すべてにイリヤ属性を付与することができる。何を言っているのかわからないと思いますが、「汝はイリヤ!」「おまんもイリヤ!」「あなたを、イリヤです」なノリで敵も味方もまとめてイリヤ認定するというイカれたスキルです。イリヤ1体に対しNPのチャージ量が10増えるので、よくある3対3のバトルでは30(スキルレベル10時点での基礎値)+10×5でNP80チャージ、アペンドスキル2をMAXにしていれば礼装フリーで開幕NP100も可能ということに。3対6の特殊なクエストでは30+10×8で、理論上110ものNPチャージが可能。アペンドを開ける必要すらない。条件付きながら「高速神言みたいなスキルを持った全体ランサー」という非常に珍しいユニットです。宝具で「イリヤ」属性持ちの味方にNPを撒けるから、サブアタッカーとしても器用しやすい。再臨は第一が麦藁帽とワンピースの夏休みスタイルで、第二が水着ルック、第三はまるでテスタメントフォームのような衣装に……名前も「朔月美遊」になっている。美遊は朔月家の生まれなんですがいろいろあって朔月家が滅び、一旦衛宮切嗣に拾われて「衛宮美遊」となった後、これまたいろいろあって並行世界へ飛ばされてエーデルフェルト家に拾われた……という複雑なプロフィールの持ち主なんです。詳しく知りたい人はプリヤを読もう。

 PU2の目玉、水着式はムーンキャンサー。第一再臨での名義は「玉兎」、月の兎です。なんでウサギなのか? って由来を知りたい人は「路地裏さつき」という2013年のエイプリルフール企画を調べてみてください。それと『Fate/EXTRA』の隠しボスとして登場した経緯があるから「月の聖杯戦争」とも関連があったりなかったり。キレーちゃんが「あたためますか?」と言っているのも『Fate/EXTRA CCC』ネタです(言峰綺礼の格好をしたNPCがショップ店員役で、アイテムを購入すると「あたためますか?」って聞いてくる)。第二再臨は「両儀式」名義で浴衣姿、ちょっと大人な雰囲気。第三再臨は「玉兎輝夜」、かぐや姫を自称する不審者に……ユニットとしては「スキルで宝具を単体攻撃(日輪)と全体攻撃(月下)に切り替え可能な全体アーツ攻撃ムーンキャンサー」。「宝具の単体・全体が変更可能」という「宝具換装」系スキル持ちサーヴァントはメリュジーヌ(槍)、プトレマイオス、水着バーゲストに続いて4騎目(攻撃宝具と支援宝具に切り替えられるBBドバイも入れると5騎目)。一度全体化すると単体宝具に戻せないメリュジーヌや、スキル効果が切れると元の効果に戻る水着バーゲストよりもスキルのクールタイムが明ければ再度切り替えできるプトレマイオスに近いが、「スキルと使うと強制的に効果が切り替わる」プトレマイオスと違い「スキル使用時に全体か単体かその都度選べる」のでより便利です。ただ、状態が「日輪」か「月下」かで第三スキルの効果が変わるからすごくややこしい。慣れるまでが大変そう。

 あと、いくつかの方法で即死付与率(正確には「即死付与成功率」だが、長いので少し略す)を高めると「最強クラスの即死付与率を誇るサーヴァント」になる。以下、「即死」に関する解説ですが長くなるので結論だけ知りたい人は読み飛ばしてOK。Fateの即死判定は、「対象エネミーの即死発生率」×「こちらの即死付与率」×「1+(即死耐性ダウンの数値+即死付与率アップの数値)」で計算して、1(100%)を超えれば確殺(確実に殺害)、1を下回る場合はその確率(たとえば0.4なら40%)で即死させる――という流れ。即死発生率――攻略wikiとかでは「デスレート」の略でDRと呼ぶそう――ですが、たとえば銅色で表示される雑魚エネミーのDRは100%や80%だから、即死付与率100%の宝具(アサシン式がオーバーチャージせず、スキル「直死の魔眼」も使わないで宝具を撃つとこうなる)で攻撃すると「1×1×1」で「確殺」、もしくは「0.8×1×1」で「80%の確率で即死」になります。DRは高ければ高いほどこちらにとって有利で、「DRが低い」というのは「即死が刺さりにくい」という意味になります。銀色や金色のエネミーは当然DRが低く、50%や20%。ボス系は10%切る場合がほとんどで、ヒュージゴーストみたいな巨大エネミーは僅か1%。敵として登場するサーヴァントはかなり低く、0.2%くらいだからまず刺さらない(ごく稀に刺さることがある、ブレイクゲージの場合はゲージが1本割れる)。

 初期のプレーヤーにとって「即死」の代名詞だったアサシン式は宝具の即死付与率がOC1で100%、OC5で140%、スキル「直死の魔眼」をスキルマしていれば対象エネミーの即死耐性100%ダウン。「即死耐性100%ダウン」と言われると「あらゆるエネミーが即死するのでは?」と勘違いしそうになりますが、これは言い換えると「対象エネミーのDRが2倍になる」、あるいは「こちらの即死付与率の基礎値が2倍になる」という意味です。アサシン式の実質的な即死付与率はスキル「直死の魔眼」が効いている状態で200〜280%、DR50%のエネミーであれば確殺、DR20%のエネミーに対しては40〜56%の確率で即死させる、って感じです。即死周回でよく使われるニトクリス(術)は宝具での即死付与率が50〜100%、スキル「エジプト魔術」がスキルマだと即死付与率100%UP、これも「2倍になる」という意味なので100〜200%、DR50〜100%のエネミーであれば確殺できる。オーディールコールのカジノで周回するときにニトクリスを使うとちょくちょく撃ち漏らすことがありますが、あれは「ダンシングコイン」のDRが80%で、OC1だと「80%の確率で即死する」状態になっているから20%の確率で「MISS」が出る計算になる。OC2にすると62.5%×2で125%、0.8×1.25=1でちょうど確殺ラインに乗る。なので「味方のOCを1段階上げる」スキルを持っている水着徐福は相性が良いんですよね。

 現在「即死と言えばコイツ」になっている蘆屋道満は宝具の即死付与率が120%で、「即死付与率を20%上げる」クラススキルを持っているから「実質144%」、DR70以上のエネミーであれば特に工夫せず確殺可能ゆえ「とても便利なサーヴァント」と認識されています。セイバー式のスキル「明星」で全体の即死耐性を下げれば付与率2倍、「実質264%」になってDR50のエネミーも確殺できるし、そこへ更に“山の翁”のスキル「晩鐘、帰路」も重ねれば「実質504%」でDR20すら屠れる。これに対し水着式の宝具による即死付与率は60%で、数値としてはそんなに高くないのだが、スキル「直死の魔眼(玉兎)」をスキルマすると即死付与率200%UP……つまり3倍の「180%」が実質的な数値になる。一応、数値上は「自バフだけで道満を凌駕した」ことになります。光コヤン、アトラス院礼装などを駆使すれば重ね掛けできるから400%UP、つまり元の5倍、300%になる。DRが34よりも大きければ確殺なんですが、DRって「100・80・50・20」みたいな刻みだから「DR50以上なら確殺、DR20のエネミーに対しては60%の確率で即死を付与する」と書いた方が適切かな。即死耐性ダウンや即死付与率アップを勘案した「実質的な即死付与率」が100%以上あればDR100のエネミーを、125%以上ならDR80、200%以上ならDR50、500%以上ならDR20、1000%以上ならDR10、10000%あればDR1すら確殺できるわけですが、今の環境だといろいろ工夫しても「実質500%」を超えるのが限界なのでDR10以下を確殺する手段は存在しません。そして500%超えるのも結構高い壁。水着式宝具の即死付与率が100%だったら5倍で実質500%、DR20だって確殺できたんですけど……あと、細かく書くのが面倒なので詳述を省きますが、「直死の魔眼(玉兎)」は3T持続するのでアペンドスキルと光コヤンとアトラス院制服でCT短縮しながらWave1とWave2を突破して3ターン目で「3回目の直死の魔眼」を発動すれば即死付与率600%UP、元の7倍で1ターン限定ながら420%まで底上げ可能。問題は、そこまでやっても500%に届かず「DR20は確殺できない」(即死する確率が84%まで上がるだけ)ってこと。せめて宝具の即死付与率が80%あれば……あるいは「日輪(単体宝具)のときだけ即死付与率が上昇する」みたいな仕様であれば独自性を出せたかな。ともあれ、「即死耐性ダウンはあくまでデバフであり弾かれるケースもある」&「Waveを突破すると効果が消失する」ことを考慮すると、「デバフに頼らず持続性もある即死付与率」としては最強クラスになります。「最強クラス」であって「最強」じゃないのは数値上だと先日強化されたスキルを重ね掛けしたサンソンが最高で「即死付与率560%」だから。ただし条件厳しすぎ(対象エネミーが「人間」特性を帯びている必要がある&何らかの方法でOC5にする必要がある)ゆえ実用性はほとんどありません。

 長くて読み飛ばした人向けに結論だけ書きますと、「即死耐性ダウンに頼らず最強クラスの即死付与率を得ることができる全体攻撃宝具持ちサーヴァント」です。ただ、あくまで数値的に最強クラスなのであって、「これまで即死周回することのできなかったクエストが即死周回できるようになった」わけではなく、即死周回に起用するなら今まで通り道満の方が便利です。道満はスキルをポチポチする回数が少ないし、計算の基礎となる「宝具による即死付与率」が水着式の倍なので、即死耐性ダウンに頼っても構わない状況であれば水着式よりも即死させられる範囲が広い。念押しすると「道満ほど便利ではない」だけで「即死周回に使えない」わけじゃありません。あと、イベントでは特攻が乗っているので宝具レベル1でも意外と火力が出て、即死が刺さったのかどうかがわかりにくいんですよね。アサシン式やニトクリスは即死判定が失敗したことを確認してからダメージ判定を行いますが、水着式はダメージ判定を先に行って、エネミーが倒せなかったときだけ即死判定を行う仕組みなんです。「即死判定はダメージ判定後」の方がNP回収率も高くなるからオトクっちゃオトクなんですが……現状だと即死性能に関しては「計算した数値」で判断するしかなく、「無理に即死付与率を上げるより素直にバフ掛けてダメージで倒した方が良くない?」と言われたらぐうの音も出ない。もっと有識者による研究が進めば思わぬ運用法が出てくるかもしれませんが……。

 PU3の☆4枠、水着クレーンはアルターエゴ。鶴女房になる前の若き日のクレーンということで、簡単に言うとクレーン・リリィですね。正式名称は「ジュネス・クレーン」、ジュネスって何? と放送後に調べたらフランス語で「若者」を意味する言葉、要するに英語で言うところの「ヤング」ですね。ミス・クレーン同様、フラッグノーツ所属の「田中天」がキャラ設定周りとシナリオの一部を担当しているらしい。全体アーツ宝具のアルターエゴ、と書くとそんなに特徴がなさそうに感じるが、自身のみならず味方にバフとNPを撒いて「精神異常特攻」状態を付与することができるスキルを持っており、「雑魚を薙ぎ払いつつメインアタッカーを支援する」動きが可能になっています。既存のサーヴァントで言うとキャスターのギルガメッシュに近い雰囲気かな。第一再臨が黒髪の水着で「主人公のクラスメイト」を名乗る不審者、第二再臨は黒髪のまま制服姿になって「クラスメイト」設定をゴリ押して来る。第三再臨はイベントで見慣れたサマーエージェントモード。ある意味因習村よりもホラーな感触が漂っているが、CVを担当する水橋かおりの声が可愛いこともあって普通に好きになってきたな……「君と水着でランデブー!」とヤケクソみたいに叫ぶ宝具も癖になります。

 PU3の目玉、水着ティアマトはアーチャー。水着の☆5ってアーチャーが多いんですよね……分布的にもっとも多いのがムーンキャンサー(4騎)で、アーチャー・バーサーカー・ルーラーが3騎と結構偏っている。ちなみにアサシン、アルターエゴに関しては0。霊衣まで含めると今回のポカニキとか浴衣の道満とかがいますけど。さておき、水着ティアマトの特徴は何といっても宝具が攻撃系ではなく支援系であること。スキルもサポート寄りで、アーチャーというよりはキャスターみたいな構成です。宝具でバフを撒きつつ無敵を貼るので、ボス戦とか高難易度での使用を前提とした性能かしら。FGOの周回は「アタッカーを1騎に絞る」タイプと「アタッカーを2騎にする」タイプが多く、水着ティアマトは「アタッカー2騎」編成に向いたサポーターという印象です。アタッカー2騎編成はカード配牌を見てクリ殴りするサーヴァントを選びやすくする利点があり、バフとNPを撒きつつスター供給もできる水着ティアマトは「QA寄りの卑弥呼」といった感じ。宝具のおかげで耐久性もあるので「攻撃寄りのジャンヌ(裁)」と言えなくもない。これも研究が進まないと私のような「面倒臭くなったら全体バーサーカーで薙ぎ払う」という単純思考の持ち主には強みが理解できないかな……再臨は第一段階がお姉さんなムードで水着、第二段階が少し縮んでセーラー服姿、第三段階が母のオーラ全開な水着となっています。特筆すべきはセーラー服、なんと攻撃モーションでぐだ(マスター)が出てくる。当然、男マスターと女マスターで差分あり。「自転車二人乗り」「観覧車」「相合傘」「伝説の樹の下で……」と「存在しない記憶」をつるべ打ちする。三臨で宝具使うとレア演出として「あなたが見た青春の幻は、全部お母さんだったのです。心の傷を抱えて大人になりなさい」と言い出すので笑ってしまった。

 余談ですが、生放送ではわかりやすさを重視してか水着式のことを「両儀式(ムーンキャンサー)」と紹介していましたが、第一段階の霊基名は正確に言うと「玉兎」。「月に兎がいる」という伝説に基づいて「月にいる兎」もしくは「月そのもの」を意味する言葉です。太陽を意味する「金烏」と合わせて歳月の経過を表す「金烏玉兎」という言葉もあり、陰陽で言ったら「陰」に当たる存在。日本では「月の兎は餅を搗いている」という言い伝えが一般的ですが、中国では「月で仙薬を煎じている」ことになっている。なぜ日本では餅搗きになっているのかと申しますと、「望月」と「餅搗き」を掛けたダジャレが起源……という説もあります。このへんに関しては「諸説あります」という感じであまりハッキリしない。ちなみに、中国神話には「ゲイ」という「太陽を射落とした」伝説を持つ英雄がおりまして、もしFGOに実装されたらグランドアーチャーになってもおかしくない存在なのですが、中国神話において太陽=天帝の息子たちなので息子ズを射殺された天帝は激怒、ゲイは天界から追放されてしまう。このときゲイは神としての資格を剥奪され、不老不死でなくなった――と言われています。彼には「嫦娥」という名前の妻がいて、夫と一緒に地上で倹しい日々を送ることになりましたが「こんな惨めな生活は嫌だ、天界に帰りたい」と泣いて、なんやかんやあった末に彼女は不老不死の薬を飲み、夫を置いて天に昇っていきました。でも「夫を捨てて出戻ってきたことで後ろ指を指されるのではないか」と気にして天界には帰れず、帰路の途中にあった月の宮殿で暮らすことになり、夫を裏切った報いとして醜いヒキガエルに変えられてしまったそうな。俗に言う「嫦娥奔月」です。この「嫦娥奔月」が成立したのは漢代ですが、実はそれ以前、古代から「月のヒキガエル」に関する伝説は存在していたらしい。恐らく「月になぜヒキガエルが居るのか」という理由付けのために嫦娥の逸話を弄ったのではないでしょうか。

 嫦娥の母親は「常羲」という月を生み出した女神なので、ある意味「母の所有するマンションでひっそり独身生活を送っている」ようなもの。そんなわけで、中国神話の世界だと月には兎以外にヒキガエルとなった嫦娥が住んでいることになります(他に「呉剛伐桂」という伝説で月に行った男もいますが、割愛)。中国ではヒキガエルのことを「蟾蜍」と言い、この発音が訛ったせいで「顧菟」(ウサギを顧みる)と勘違いされ、月の住人がヒキガエルからウサギに変質していった――という説もあります。とはいえ中国の伝説はいろいろあって、話によっては嫦娥がヒキガエルにならず月の女王として君臨し、兎に不老不死の仙薬を作らせているというパターンもあります。「月の女」「不老不死の薬」という要素が重なっていることから、「かぐや姫」こと『竹取物語』は「羽衣伝説」のみならず「嫦娥奔月」を要素として取り込んでいるのではないか、という分析もある。

 『西遊記』にも嫦娥は登場しており、かの猪八戒が落ちぶれることになった原因も「酒に酔った勢いで嫌がる嫦娥に言い寄ったため」ということになっている。ただ、「嫦娥」は個人名ではなく月の官女に冠される称号や役職名、あるいは源氏名のようなもので、「ゲイの妻である嫦娥」と「猪八戒が言い寄った嫦娥」は同一人物じゃない、と解釈する向きもありますが……70年代に日本で放送された、堺正章や夏目雅子が主演の、あの「ガンダーラ」が流れるドラマ版『西遊記』だと「嫦娥は天帝の愛人」という設定になっています。この嫦娥がゲイの妻である嫦娥と同一人物だった場合、「母親の常羲が天帝と交わって12個の月を生み出した」という伝説があることを考えると血の繋がりがあるかどうかはともかく「天帝はバツイチの娘(みたいな存在)を愛人にしている」ことになってしまう。このへんも複雑なところで、伝承によっては「常羲は嫦娥の母ではなく姉」だったり「常羲と嫦娥は同一人物」「何なら太陽を生み出した女神『義和』も同一人物」だったりともうムチャクチャ。「嫦娥=常羲=義和」説を採用すると、嫦娥さんは自分の息子たちを射殺したゲイと一緒に逃亡生活を続け、最終的に自分の子供(月)の中へ逃げ込んだことになる。なにぶん神話なので真面目に考えようとすると頭がおかしくなります。

 ただ、不思議なことにいろんな伝説が乱立している中で「嫦娥が月の兎になった」というものは見掛けず、ヒキガエルになったにせよならなかったにせよ「嫦娥と月の兎は完全に別物」と捉えられているのが面白いところだ。一説によれば、嫦娥が地上を離れる際に孤独を紛らわせるため一匹の兎を抱えていて、これが玉兎になった――とか。なんでこんなに長々と語ったかと申しますと、私『反逆のソウルイーター』というライトノベルが好きで、作者のPNが「玉兎」だから玉兎や嫦娥伝説に興味を持って一時期いろいろ調べたことがあるからなんですよね。肝心のシリーズは2年前に出た8巻を最後に刊行が止まっていて、なろうでの連載も1年以上止まっているからヤキモキしてますけど……。

 ガチャのスケジュールをおさらいすると、13日に水着パッションリップと水着クリームヒルト、15日に水着式と水着美遊、17日に水着ティアマトと水着クレーンと、お盆期間に済ませたかったのか一気に詰め込んできました。新規の☆5サーヴァントと☆4サーヴァントを1日おきに計6騎も実装するというかつてない苛酷さであるが、「☆4のダブルピックアップがなくなった」のは有情っちゃ有情である。水着ガチャは本当に「☆4で沼る」ことが多く、シングルピックアップとダブルピックアップの差は天と地ほどもあります。初の水着イベントなんて☆4のトリプルピックアップだったから、当時の様子を記録したテキストや動画を見返すと凄まじい阿鼻叫喚の嵐である。

 最後に私自身のガチャリザルトも記しておきます。13日のPU1は割とすんなり引けて、呼符含めて55連で水着クリームヒルトが宝具2、水着リップが宝具1とまずまずの結果に落ち着いた。途中、金回転からのライダーでマルタさんがすり抜けてきたのもご愛嬌ということで許しました。15日のPU2はPU1で苦労しなかった反動か、キッチリ天井分(330連)を回すハメに。不幸中の幸いで☆4沼にはハマらず、水着美遊は7回出ました。天井を叩くのなんて去年の水着エレちゃん以来2度目です。なお天井までの間にすり抜けてきた☆5サーヴァントは1騎だけ。「これだからFGOのガチャは怖い」と震えました。本当に石1000個に手を付けてなくて良かった。この時点で残りの聖晶石は650個くらい、「それなりの連数で水着ティアマトに挑戦できるけど天井は叩けない」という絶妙な加減で不覚にもワクワクしてしまった。そして迎えた17日、PU3の結果は……22連であっさり水着ティアマトを引きました。式が天井だった揺り戻しか? やはりガチャには波がある。問題は「あっさり過ぎて水着クレーンが出ていない」ことです。イベントやっているうちにだんだんジュネスも欲しくなってきたから迷いました。散々書いている通り、FGOは☆4狙いでも結構沼る……何なら限定☆3サーヴァントで沼る人もいる。水着式で天井を叩くまでに美遊が7回出たと先ほど書きましたけど、実は1回目が出たのって100連以上経ってからなんですよ。そこから続々来てあっという間に宝具レベルMAXを通り越しましたが、「100連かけても何の成果もない」なんてFGOじゃ日常茶飯事です。これから終章も控えているし、正月ピックアップだってあるし、石は温存しといた方がいい……と理性は諫めようとするも、欲望を抑え切れず「あと11連だけ」と戦闘続行。すると水着クレーン2枚抜きで大勝利。最終結果としては「PU1:55連でリップ1、ヒルト2、すり抜け(マルタ)1」「PU2:330連で式は天井、美遊7、すり抜け☆5(アナスタシア)1、すり抜けの☆4多数(6騎ぐらい? もう覚えていない)」「PU3:33連でティアマト1、クレーン2、すり抜け(アストルフォ)1」。計407連でピックアップ☆5サーヴァントが3騎、すり抜け☆5が1騎、ピックアップ☆4が11騎、すり抜け☆4が8騎ぐらい、概ね確率通りといったところかな。石は500個以上残りました。これで終章に備えられる。


2025-08-10.

・夏アニメ、本数が多くて泣く泣く切っている作品も多いでしょうが、『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』は1話あたり3分半と短いので軽率にオススメしていきたい焼津です、こんばんは。

 アマプラとかでも配信されているけど、YouTubdeの公式チャンネルで全話観ることができます。「銀河特急」というくらいなのでジャンルは一応SF、人類が宇宙に進出して肉体を改造したり機械化したりする程度には文明が発達している。それぞれの容疑で逮捕された6人の男女が罪を免除するための奉仕活動として惑星間走行列車、通称「ミルキー☆サブウェイ」の清掃を行うことになったが、旧式すぎるシステムのせいでセキュリティはよわよわ、容疑者の一人「マキナ」が何の気なしに口にした「発進」という言葉を受諾して本当に走り出してしまう! 飛び出してゆけ、銀河の彼方! という感じの、SFはSFだけどギャグテイストが強くて込み入った設定をスルーしても充分楽しめる一作。セリフ量が多く、毎回3分半しかないのにしっかり楽しめる。主題歌にキャンディーズの「銀河系まで飛んで行け!」を持ってくるなど明確に「レトロ感」を意識した作りであり、SF界隈ではこういう路線を「懐かしい未来感」という意味で「レトロ・フューチャー」と呼んだりします。

 「亀山陽平」という人が映像系専門学校の卒業制作として作った短編3Dアニメ「ミルキー☆ハイウェイ」の続編に当たる内容なので、先に「ミルキー☆ハイウェイ」を観ておくとより楽しめるが、『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』自体あえて時系列を錯綜させている(最新話の6話「カートとマックス」は暴走したミルキー☆サブウェイをほっぽって容疑者の二人が逮捕されたときの取り調べ風景を描いている)作品だから後で観ても全然OKです。商業化に当たってチハルとマキナのCVが変更されているからそこはちょっと違和感を覚えるかもですが。原作・監督・脚本・キャラクターデザイン・音響監督・制作のすべてが「亀山陽平」でクレジットされており、声優や広報を除けばほとんど個人制作のアニメである。コメントによると2年掛かりで作ったとかで、「そりゃ一人で何でもかんでもやっていたら1話3分半が限界だわな」と納得してしまう。「意図なし、主義なし、主張なし!」と公式自ら宣言しているくらいなので、難しいことを考えずノリで楽しみましょう。

金田陽介「黒猫と魔女の教室」2026年TVアニメ化、本渡楓&島崎信長が出演(コミックナタリー)

 以前『寄宿学校のジュリエット』という作品がアニメ化した「金田陽介」の新作がアニメ化決定です。連載開始は2022年、「マガポケ」こと「マガジンポケット」のオリジナル作品。アニメ化をお祝いして6巻分無料公開中だから実際に読んでもらった方が早いけど、一応解説。ジャンルとしては「異世界ファンタジー」で、「魔法学園モノ」です。「現代からの転生」要素はなく、ノリとしては「少年漫画寄りのハリーポッター」という感じ。大魔術師になることを夢見ているけど、魔法が使えず、箒で飛行しようとしては墜落するような日々を送っている少女「スピカ」。彼女は一匹の黒猫に導かれ、憧れの魔術師「クロード・シリウス」の在籍する「ディアナ魔術校」に通うことになる……と、あらすじだけ書いてもあまり面白くなさそうではあるが、本シリーズの魅力は何と言っても個性的で多彩なキャラクター。魔術の種類が黄道十二宮に対応しており、メインキャラだけでも12人というかなりの大人数です。これに加えて教授とか他の生徒とかいったサブキャラが多数存在しており、久しぶりに出てくると顔や名前が思い出せないこともしばしば。えっ? それは私の記憶力が衰えているだけ?

 さておき。たとえば「牡牛座魔法」を使う「イオ・トーラス」は平常時でもいろいろとデカい子なのに、そこから巨大化魔法によって更にデカくなるという「デカい子好き」にはたまらない造型のキャラとなっている。「舞台を魔法学園ということにすれば、自然といろんな“癖”を詰め込めるのではないか……?」と気付いた作者がどんどん盛るペコしていった結果、とんでもない「性癖のごった煮」に化していく。ネタバレになるからあんまり明かしたくないが、『らんま1/2』みたいに性別が切り替わる生徒なんてのもいます。「悪の魔法使い」みたいな存在が登場してバトル展開になったりもしますが、ずっとシリアスが続くわけではなくちょいちょいコミカルな場面も挿入される。総じて気軽に読めるファンタジー漫画です。最新刊は12巻、このうち半分は12日まで読めますから時間のある方は目を通してみてください。画力がすごいのであっという間に引き込まれること間違いなし。

・各種電子書籍サイトで富士見ファンタジア文庫の旧作がセール中、ざっくり350冊くらいが一律99円になっています。

 一例を挙げると『封仙娘娘追宝録』、本編11冊と奮闘編5冊の計16冊をまとめて買っても1584円! 安い。しかもこれ取り扱いがKindleだけじゃないから、クーポンが使えるショップで購入すると更に安くなります。たとえば3割引クーポンを配っているところで買えば1108円くらい。まだ紙で持ってる私も思わず買い直しちゃいましたね。他、『風の大陸』は本編28冊、外伝4冊、氷の島3冊の全35巻が3465円。昔はハマったけど、さすがにもうこのボリュームを読み返す気力はないな……ちなみに数百年後を舞台にした続編『新 風の大陸』や『風の大陸』よりも前の時代を描く関連作『巡検使カルナー』といったシリーズもあるが、レーベルというか出版社が違うのでセール対象外です。というか『新 風の大陸』は電子化してない模様。

 TVアニメ化した作品だと『風の聖痕』とか『スクラップド・プリンセス』、『BLACK BLOOD BROTHERS』、『まぶらほ』、『召喚教師リアルバウトハイスクール』……タイトルを見ているだけで懐かしくなってしまう方も多いのではないだろうか。残念ながら『スレイヤーズ』や『フルメタル・パニック!』は対象外です。ただ、まぁ、今回のセール対象作品は結構Kindle Unlimitedの範囲と被ってたりする(セール商品ではない『スレイヤーズ』や『フルメタル・パニック!』もアンリミでほとんど読める)からアンリミ会員の人は目の色変えて買い漁るほどでもないです。とはいえアンリミはある日突然取り扱い作品が変わるから、「あれっ? 昨日まではアンリミの表示が出ていたのに今日はもうない!?」と戸惑うケースもあります。いつでも好きなときに読めるよう購入しておきたい、という方は今がチャンス。セールは14日終了予定です。

 オススメは「貴子潤一郎」の作品かな。デビュー作の『12月のベロニカ』、短編集の『眠り姫』は1冊だけ買えばいいので「いくらセールで安くても、たくさんあると読むのが億劫になりそう」と不安な方にはうってつけ。私は『眠り姫』に収録されている「探偵真木」のシリーズが好きなんですよね……『眠り姫』に収録されているのは3編だけですが、実はこの後も“Fellows!”という雑誌に3編掲載されています。創刊号から第3号までの連続掲載だったが第4号には載っておらず、その後貴子潤一郎自体の音沙汰がなくなった。ちなみに貴子潤一郎作品は『煉獄のエスクード』というシリーズも今回のセール対象だが、短編集である『煉獄のエスクードARCHIVES』や続編の『灼熱のエスクード』は対象外なので薦めるかどうかは迷うな。

 最近になって愛蔵版が出た『A君(17)の戦争』も文庫9冊が891円、愛蔵版(全3巻)が16060円もすることを考えると「愛蔵版の消費税よりも安いじゃん!」と叫びたくなるが、そもそもこのシリーズって未完なので「ここで終わりなのかよ!」と叫びたくない人は買わない方が吉です。既に周知の事実であるが作者の「豪屋大介」は「佐藤大輔」の変名。作風がもろに大サトーのままなんで「豪屋って佐藤大輔の別名義なんじゃ……」と1巻が出た頃から囁かれていましたが、佐藤大輔が亡くなった後に関係者がバラしました。なので再開の可能性はもうゼロです。シリーズ4作目『かがやけるまぼろし』が「『レッドサン ブラッククロス』の日本を舞台にした学園物」ですから、RSBCが好きな人はそれだけ読んでみるのもアリかと。ちなみに豪屋名義では『デビル17』という大藪春彦リスペクトなセックス&バイオレンス小説を書いていましたが、これは富士見ファンタジア文庫では電子化されておらず、今年出た愛蔵版の電子版しか売っていない。合本版は12100円、いくら懐かしくてもこの額は払えないな……これもやっぱり未完だしなぁ。

 『まぶらほ』は途中まで読んでいたけど、もうどのへんで脱落したのか思い出せない……たぶん「ふっかつの巻」のあたりでダルくなって読むのやめちゃったような……33冊も読み通せる自信ないし、「メイドの巻」シリーズだけでも買おうかしら。『まぶらほ』は横文字タイトルの長編シリーズ、「〇〇(ひらがな)の巻」というタイトルで統一された短編シリーズ、「メイドの巻」と銘打たれたメイド編シリーズ、あと「凜の巻」という番外編、大きくこの4つに分かれており、長編シリーズと短編シリーズはかなりノリが違うので注意されたし。短編シリーズは割とゆる〜いラブコメなのに、長編シリーズには『サタノファニ』から出張してきたような殺人鬼が出てきたりする。メイド編は完全にギャグ方向へ吹っ切れた内容。あらゆる要素がゴタ混ぜであり、「そのギャップが面白い」と思える人向けのシリーズです。

 『召喚教師リアルバウトハイスクール』はライトノベルなのに生徒ではなく教師が主人公という、学園バトル物としてはやや珍しいシリーズ。ある意味、ラノベ版ぬ〜べ〜か? 主人公の「南雲慶一郎」は現代日本と異世界を行ったり来たりする「勇者」で、日本における学園でも「手から炎を出す問題児」や「ポン刀を振り回すサムライガール」相手に騒がしい日常を送っている。ファンタジーと格闘モノと剣戟アクションをゴチャ混ぜにしたような作品です。生徒の一人「草g静馬」はKOFの「草薙京」が元ネタ……と思わせて実はファイターズヒストリーの「溝口誠」がモデルだったりと、格ゲー好きの心をくすぐる造型。本編が19冊、番外編が5冊、南雲が赴任する前の学園を舞台にした「アーリー・デイズ」が3冊で全27巻だが、なぜかアーリー・デイズの3巻だけセール対象外になっています。一括購入する際は注意してください。本編は完結済だが、慶一郎の息子である「南雲真紅郎」を主人公にした『真リアルバウトハイスクールXX』という続編も2冊出ています。「XX」は本編の続き、つまり「20巻目」という意味を込めているんだとか。

 あとは『エンジェル・ハウリング』(全10巻)や『ストレイト・ジャケット』(全11巻)あたりを買い直そうかな……この2シリーズ、紙で持っていたけど日に焼けて状態が悪くなってしまったこともあり、だいぶ前に処分しちゃったんですよね。エンハウはお世辞にも「読みやすい」とは言いかねるシリーズだが、印象的な言い回しの数々が心地良く、折りに触れて読み返したくなる。『ストレイト・ジャケット』は「魔法を使い過ぎると『魔族』と呼ばれる化物になる」っていう、ある意味でまどマギを先取りしたような設定のファンタジー。魔族の等級が男爵(バロネージ)、子爵(ヴィスコント)、伯爵(カウント)と貴族の階級みたいになっているあたりが当時の私の厨二心をくすぐった。異世界だけど銃器が発達している程度の文明で、ノリとしては「ややライトなされ竜」って感じ。

・セールと言えば『オルクセン王国史』がスゴいですね。一二三書房 夏の大感謝フェスタ【前半】とやらで原作小説もコミカライズも既刊全部11円、まとめて購入しても99円というワンコイン以下の破格値になっています。開催は10日まで、つまり今日中に終わりだから気になっている人は即座に購入した方がいいです。11日から夏の大感謝フェスタ【後半】が始まる予定で、そっちの方でもセール対象になるかもしれませんが、11円セールを上回るのなんて「1円セール」とか「無料」とか「むしろお金あげちゃう」くらいしかないですからね……。

 しかし、それにしても最近の電子書籍セールはえげつないというか、先月出たばかりのアレステア・レナルズの新刊『反転領域』がKindleで早くも45%還元、差し引きすると実質900円弱です。紙で買うと1650円ですから「もう電子にシフトしちゃっていいかな……」という気持ちになってしまう。“五神教”シリーズの新刊『魔術師ペンリックと暗殺者』もポイント還元を考慮すると1000円切るくらいだからかなり迷ったが、「これまで紙で揃えているんだから」とギリギリ誘惑を振り切った。桐野夏生の新刊で「村野ミロ」シリーズの完結編『ダークネス』なんか発売から10日しか経っていないのに、もう1000pt以上の還元が付いています。「紙で読むのが好き、でも置き場が限界に近づいている」という私のような人間にはなかなか抗いがたい。正直、ハードカバーの本読むのもちょっとずつしんどくなってるしな……電子書籍はたまに買ったことも忘れるレベルで存在感が薄いから、セールで衝動的に買ったまま放置することが多い人間にとっては物理書籍よりも深い沼だったりする。映画化決定に伴って半額&ポイント還元でほぼ1/4になっている『プロジェクト・ヘイル・メアリー』も、3年前に半額セールで買ったまま1ページたりとも読んでいません。ひょっとして、セールで安い本をばかすか買うよりも「そのときに読みたい本」を値引き率だのポイント還元だの一切気にしないで買う方が結果的に一番得なのでは……?

『王立魔術学院の鬼畜講師(1〜3)』読んだ。

 「急川回レ」が「カクヨム」に連載していた小説『王立魔術学院の鬼畜講師』のコミカライズです。原作小説は2022年に1巻が出た後、音沙汰がなくなったので「書籍版は打ち切りか」と思っていましたが、今年の2月に2巻が出ました。コミカライズの売上が好調だったのだろうか? ちなみに掲載元のカクヨムでは去年あたりに全文削除されたらしく、現在は読むことができません。この作品だけじゃなく急川回レのネット小説が全部消えてるみたいですね……ぐぐっても情報が出てこないので事情がよくわからない。作者自身の意志で消したのか、それとも何かガイドライン違反でもあったのか。謎です。

 さておき、作品解説に移ろう。ジャンルとしては「異世界ファンタジー」、ただし転生要素はナシ。主人公「セツナ」は王立魔術学院の非常勤講師で、特待生の少女4名を受け持っているが、とある事情から彼自身は魔術を使えない体質のため「自習」を言い渡す日々が続いていた。「これじゃ魔術学院に入った意味がない!」と腹に据えかねた4人は「勝てば彼を解任、負ければ全員奴隷」という条件でセツナと決闘することになる。結果は……惨敗。みな特待生に選ばれるだけの力を持ちながらも、「魔術」の代わりに「魔法」を使うセツナにはまったく歯が立たなかった。かくしてセツナの奴隷となってしまった特待生の少女たち。セクハラ上等の淫行教師でありながら「生徒には本番行為をしない」という一線を守っているセツナだが、卒業すれば話は別。卒業までに奴隷紋を解除することができなければ、特待生たちは彼に身体を差し出すことになる(なお純潔の生徒は奴隷紋が刻まれている間、他の異性と性交することも禁じられている)。一応、「途中退学する場合は奴隷紋を消去される」という抜け道も用意されているが、それぞれの理由で魔術学院へ通うことを決意した少女たちに「退学」という選択肢はない。かくして少女たちは鬼畜講師を憎み、嫌悪しながらも、己が強くなるための糧として利用しようと懸命になるが……。

 という、ちょいエロ系のファンタジー。「教え子とはセックスしない(尻触ったり胸揉んだり下着貰ったりはする)」という制約(ギアス)を課しているため、本番まで行くことはないが「過去の卒業生とは性交渉している」ことを匂わせており、寸止めながらも緊張感の漂う一作です。細かい説明をすると長ったらしくなるので端折りますが、セツナは七つの大罪の一つ「色欲」を力の根源としているため、劣情を一切隠すことなくオープンスケベを貫いている。ズボン越しではあるが勃起したチ〇ポを誇示するシーンもあります。こう書くとただのゲスにしか見えないが、彼にも切実な事情があり、「俺の魔術不全体質はどうやっても治しようがなく、大願を果たすことができない……だからせめて俺の遺伝子を継ぐ次世代に託したい」と思って「優秀な女性たち」に己の子供を産ませようとしている。そういう意味ではランス系の鬼畜というより城戸光政系の鬼畜ですね。「神に挑んで敗れた(そのせいで魔術不全体質になった?)」という壮大な過去を有しており、最終的な目標は「神狩り」。生徒たちが自身で神を狩れるほどの超人になれればそれで良し、もしそれが叶わぬようであれば次代へ望みを繋げるための孕み女になれ――と、目標の大きさで眼が眩みそうになるものの、やってること自体は普通に外道だ。

 お色気要素の多い漫画ながらバトル描写にも力が入っているというか、1巻は6話収録なのですが1〜5話までほぼずっと決闘が続く。この作品における「魔法」は型月作品で言うところの「固有結界」、呪術廻戦で言うところの「領域展開」に近く、使い手に有利なルールを相手へ押し付けるタイプのものです。「パンチラないしパンモロが発動条件」など、一つ一つの要素はバカバカしいが敵に回すと厄介なタイプだ。セツナの魔法の中には発動条件として「相手が嫌がっている」ことが必要なものもあり、生徒と恋愛関係を築こうとしない、ってのもよくあるエロコメ系ファンタジーとは一線を画している。あくまで「生徒から嫌われるセクハラ教師」として振る舞い続けなければならない。こう書くと悲愴な孤高のヒーローみたいに見えるが、通りがかったモブ女生徒たち(奴隷紋あり)に命令してスカートをたくし上げさせて嫌がりながらパンツを見せることを強要するシーンがあったりと、「いや素で楽しんでるだろコイツ」って感じだから同情心はまったく湧き上がりません。

 先述した通り本番行為はありませんが、ときたま乳首券が発行されることもあってエッチなシーンのエロさはなかなかです。期間限定(8月15日まで)ながらカドコミでほぼ全話読めますから興味のある方は試しに読んでみてください。私はおっぱいの大きい子が好きなのでエルフの「ルナ」と椿の姉「紫蘭」あたりにムラムラしますね。あとサブキャラの聖剣姫「アーサー王」もセツナの教え子だったらしいが、今後メインストーリーに絡んでくるのかしら。



管理人:焼津