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リレー小説「魔法少女忌譚修」(第13話−10/12)


2026-04-14.

・今頃『ぬきたし THE ANIMATION』を見て爆笑した焼津です、こんばんは。

 去年の夏アニメとして放送された作品。原作はエロゲーで、あんまりも際どい要素が多いため地上波での放送は無理だと思われたが、規制を掛けまくったおかげで何とか放送されたという曰く付きの一本。あまりにもピー音が多過ぎて聞き取れないセリフが大量にあるのが難点です。

 舞台は架空の島「青藍島」。「あおかんじま」ではなく「せいらんとう」です。もともと島の出身だったが本土に引っ越しして、両親の死をキッカケに島へ戻ってきた「橘淳之介」。過疎化が進む青藍島を救うためヤケクソ気味に制定された「ドスケベ条例」の影響で島中至る所で大っぴらに性行為(ドスケベセックス)が繰り広げられており、妹である「橘麻沙音」ともどもカルチャーショックでドン引きする。しかし、島民の中にもドスケベ条例を快く思わない者たちがいた。「乱交を推奨し、ただただ快楽だけを追い求める、愛のないドスケベセックスはイヤだ」と。淳之介は同志たちと反交尾勢力「NLNS(No Love No Sex)」を結成し、ドスケベのビッグウェーブに立ち向かっていくが……という、「エロゲーにしてもやり過ぎだろ!」って設定の話です。

 淳之介は巨根で「他人に局部を見られる」ことにトラウマがあり、また妹の麻沙音は同性愛者で「男女のドスケベセックスを推奨する」青藍島においては「非性産的行為」と見做され迫害の対象になり得る(ドスケベ条例、実態はどうあれもともとは「少子化対策」という名目なので……)。「汚い『車輪の国、向日葵の少女』」とも言うべきツッコミどころ満載の内容ながら、主人公とヒロインが悩みながらも己の信念を貫こうとする姿はアツく、熱血アニメ的な面白さは充分にあります。淳之介役の「柳晃平」とヒロイン「片桐奈々瀬」役の「石上静香」が放送前に結婚する、いわゆる「ぬきたし婚」と呼ばれる深夜アニメ史に残る慶事が発生したのもむべなるかな。ジョークでも何でもなく本当にアニメの収録時が初対面だったらしく、「馴れ初めはぬきたし」「紛れもなくぬきたし婚」と本人たちも認めています。

 ただ、ぬきたしのゲーム版(1作目)は2018年発売で、この当時奈々瀬の声を当てていたのは「柳ひとみ」という別の声優なんですよね。サンプルボイスを聞いてもらえるとわかるのですが、ずっちの別名義とか「生き別れの双子()」とかではなく、正真正銘本当に「別の声優」です。アニメ化の際になぜか声優が変更されている。生徒会長の「冷泉院桐香」は担当声優の「花澤さくら」が2022年に声優引退しているため已むなく「田澤茉純」に変更となっていますが、柳ひとみは別段引退しておらず、奈々瀬の声優変更に関しては「経緯不明」としか言いようがない。噂レベルならいくつかありますけどね……柳ひとみは表名義で声優事務所に所属していて、「裏名義でエロゲーに出演する」ことには目を瞑ってくれたけど、表名義でこんな際どいアニメに出演するのはダメだった――という、いわゆる「事務所NG」説が有力視されている。とにかく、石上静香はアニメ化が決まるまでぬきたしと縁がなく、淳之介もゲームでは声が付いていなかったことから「ぬきたしのアニメ化が二人を結びつけた」ことになるのだ。

 内容は徹底してふざけているのにアニメーションの質は高く、エロゲー原作アニメとしては異例なほど高クオリティの仕上がりになっています。制作は「パッショーネ」、かの『異種族レビュアーズ』や『異世界迷宮でハーレムを』を手掛けたところだ。今後は『FX戦士くるみちゃん』や『生徒会にも穴はある!』を放送する予定。さておき、ぬきたし本編において奈々瀬は「超弩級のビッチ」として恐れられていたが、シナリオの後半で「実は処女」であることが全島民に対してバレてしまう。公衆の面前で無理矢理処女を散らされそうになっている奈々瀬を救いに行く――というのが物語のクライマックスで、まぁ無事なんとか救出できるのですが、「ビッチじゃなかったことがバレたんだよね? 今後どうすんの?」と思ったらモブが「ビッチすぎてSEXの回数が多すぎた結果、数値がオーバーフローして処女に戻っただけ」と言っていて噴いた。それで納得するのかよお前ら!

『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』TVアニメが2027年1月よりスタート!(電ファミニコゲーマー)

 えっ、蓮ノ空結局TVアニメ化するの!? 予想外でちょっと不意を打たれてしまった。『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』はラブライブ・プロジェクトの一つで、2023年頃からスタートしています。石川県金沢市に位置する、という設定の架空の全寮制女子校「蓮ノ空女学院」を舞台に、「スクールアイドルの世代交代」をテーマに据えて展開していく。蓮ノ空は「ラブライブ!の強豪校」であり、100年以上の歴史を誇る……物凄く分かりやすく書くと「宝塚音楽学校」めいた場所です。主人公「日野下花帆」は103期生で、先輩が102期生、後輩が104期生や105期生といった感じ。これまでのラブライブ作品は「上級生・同級生・下級生」の隔たりを越えてユニットを結成することもあったわけですが、蓮ノ空は「先輩と後輩」が明確に区切られています。なぜなら、先輩たちが卒業した後も在校生たちのアイドル活動は続くからだ。

 蓮ノ空は「リアルタイムと連動して時間経過する」のも特徴の一つで、2023年に入学した花帆ちゃんたち103期生は2026年の春、遂に卒業の時を迎えます。「103期生の卒業記念」として今年5月に公開されるのが『映画 ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ Bloom Garden Party』。そう、主人公の花帆ちゃんは来月公開される劇場版で卒業しちゃうわけです。いきなりエピローグなんです。だから「結局TVアニメ化するの!?」と驚いたんですよね。てっきり、TVアニメをやる予定がないからせめて卒業の晴れ舞台だけでもアニメ化しよう、ってことなのかと早合点していました。103期生が卒業した後は新たに106期生が入ってきますが、さすがにもうリアルタイムと連動させるのはキツいのか、「第2章 106期」は2027年1月スタートという予定になっている。アニメの放送を合わせているということは、TVでやるのは106期生の話なのか? 詳しいことは続報待ちです。

 ……と、ここまで原稿を用意して、手直しした後にアップロードしようと推敲していたのですが。

『Link!Like!ラブライブ!』6月30日12:00をもってサービス終了。資金繰りの悪化で主要コンテンツ制作体制の維持が困難に(電ファミニコゲーマー)

 いきなりのサ終告知に目が点になりました。終わり? お前ら本当にこれで終わり……?? 終わり……!? 確かに蓮ノ空はメチャクチャ閉じコン化していてどんな施策を打っても新規が流入せず「アプリの収益がヤバいらしい」という噂は漏れ聞こえていましたが、まさかTVアニメの放送まで保たないとは……「志半ばでサービスを終了せざるを得ない事態となりました」と公式垢がコメントしているくらいなので本当に不本意な形でのサービス終了なのだろうけど、シナリオチームへの通達も数日前ということだからスタッフ的にも「寝耳に水」なのでしょう。聞いた話によるとアプリを運営していた3年間、赤字に次ぐ赤字で積もり積もった負債額は100億円以上に及ぶとか。

 あくまで『Link!Like!ラブライブ!』がサ終するだけで、5月公開予定のアニメ映画や来年1月に放送予定のTVアニメが中止になったりはしないとのことだから、蓮ノ空のプロジェクト自体が完全に畳まれるわけではありません。ただ、旗艦(フラグシップ)であるアプリが沈んだとなると「プロジェクトの先行きに暗雲が立ち込めている」と表現するしかない。これでラブライブ関連のアプリはすべて終了したことになりますね……主にYouTubeで展開している新規プロジェクト『イキヅライブ!』のアプリが新たに出てくる可能性もありますが、『学園アイドルマスター』が好調なアイマス・プロジェクトや、「ガルパ」が続いていて今年「アツドリ」も別枠として立ち上げるバンドリ・プロジェクトとは明暗が分かれた形になる。今の中高生からするともう、ラブライブは「なんか昔流行ったアニメ」ぐらいの感覚なのかもしれない。ロボアニメで言うとマクロスみたいな立ち位置というか。

 TVアニメ以降の展開はどうなるのか? という懸念もありますが、もっとも差し迫っているのは「第2章 106期」がどうなるのかって問題ですね。アニメが106期生の話ならまだしも、そうじゃなかったら「殻を破ることができず卵の中で息絶えていった小鳥たち」になってしまう。既に書き上がっている未発表シナリオや発注済みの素材もあるらしいし、何とかして発表できるようにしてほしいです。

『うたわれるもの ロストフラグ』、物語記録保存領域(ストーリーアーカイブス)制作決定!

 具体的な仕様はまだ不明ですが、過去に配信したストーリーを読み返せるようになる模様。「メインストーリーおよびイベントストーリーのフルボイス化、ならびに新規ストーリーの追加などを検討」とあり、本気で全シナリオに声を付けるなら容量がとんでもないことになりそう。ロスフラは基本的にボイスなしのシナリオを配信して、後から一部だけボイス付きにするというマギレコ方式でやっていましたが、本編ストーリー・イベントストーリー・キャラストーリーのうち本編と重要イベントぐらいでしたからね、声が実装されたシナリオ。

 「ストーリー版」と言い切っているということは戦闘パートや育成要素は全部削除になるのかな。既にiOSやAndroidで配信されている「うたわれ」三部作(ゲームパートをカットしてストーリー部分だけに絞ったアプリ)みたいになるのか、それとも「ゆゆゆい」みたいにコンシューマ向けの移植みたいになるのか……「新規ストーリーの追加」と謳っているから、内容次第では買ってもいいかな、という気持ち。ロスフラのシナリオは、舞台となるロスフラ世界(現実世界から切り離され、四方を霧に包まれたネオ九州)の支配者「織代」の正体を巡る第一部が終わって、織代の支配から脱した各國の皇(オロ)たちが干戈を交える群雄割拠の戦國時代に突入する第二部へ移る……はずだったが、サ終によって第二部の内容は大幅にオミットされ、「なんかよう知らんが大戦は終わった」「勝者はおらず、和睦によって決着」「世界を鎖していた霧が晴れた」と爆速でエピローグに到達して呆然。新規ストーリーではこの端折りまくった第二部の内容を補完するのか、それとも「霧が晴れた」以降の物語を綴るのか。差し当たっては続報待ちです。

『テメレア戦記9 ドラゴン同盟』刊行、20年に渡る架空戦記ファンタジー、遂に完結

 「もしこの地球にドラゴンが存在して軍に配備されていたら、ナポレオンは英国本土を侵攻していたのではないか?」というifに基づいて展開する海外版の架空戦記小説です。作者の「ナオミ・ノヴィク」はアメリカ人で、これの他に「デスゲーム版ハリー・ポッター」「アメリカ版『魁!!男塾』」とも言うべき“死のエデュケーション”3部作、数多の賞を獲った単発作品『銀をつむぐ者』などを手掛けている。かつて「ピーター・ジャクソン監督(ロード・オブ・ザ・リング撮った人)によって映画化する企画が動いている」という話もあったが、最近聞かないところをみると立ち消えになったのかな……(検索中)……2016年に著者のもとへ権利が戻ったらしい。

 ハリウッド映画、やたら「映画化決定!→全然続報が届かない→有耶無耶」というパターンが多いけれど、これは「映像化権が転売できる」というアメリカ特有の事情が絡んでいます。まずヒット作や話題作が現れると原作側と交渉して映像化権(契約によって「ドラマのみ」「映画のみ」「両方」など細かく分かれている)を買い取り、もっと人気が出るまで待って程好く高騰してから他の業者に転売する……という稼業で食っている映画関係者がいるワケだ。この結果、映像化権だけが市場で遣り取りされて実現に至らず延々と塩漬けされる作品が出てくる。あまりにも映像化されないことにキレた原作者が権利を買い戻し、「本当に映像化するつもりのところ」へ売る――という珍事も発生しています。

 具体例としては「マイクル・コナリー」のケースがある。コナリーは「ハリー(ヒエロニムス)・ボッシュ」シリーズで有名な作家で、1992年に出した1作目と1993年に出した2作目、そしてボッシュを主人公にしたオリジナル作品の映像化権を1995年にパラマウントへ売ったのですが、15年経っても全然動きがないので痺れを切らして2010年に権利を買い戻し、別のところでドラマ化されています。なおボッシュが出て来ない別の作品はちゃんと映画化されている(2002年の『ブラッド・ワーク』と2011年の『リンカーン弁護士』)。売った金額よりも買い戻した時の金額の方がずっと高かったらしいので、「よく考えず安易に映像化権を売るのはやめた方がいい」という教訓を残す結果になりました。

 こういう事情もあって、ナオミ・ノヴィクは期限付きでピーター・ジャクソンに映画化権を売って、10年経っても実現しなかったから権利が手元に戻った……という経緯のようです。やはり、向こうでも映像化権が延々と転売される状況にウンザリしている作家が少なくないんでしょうね。そんな『テメレア戦記』はかつて「ヴィレッジブックス」という出版社から翻訳版が刊行されていましたが、途中で吸収合併されて消滅したため、7巻以降はハリポタの出版社として有名な「静山社」が出しています。静山社はシリーズ全体の翻訳権を獲得したが、1〜6巻は文庫版を出すだけに留め、ハードカバー版の再販は行っていない。このためハードカバーで全巻揃えようとすると途中でブックデザインが変わるというコレクター泣かせの状態に陥っている。比較的旧バージョンに寄せたデザインだから「全然違う」というほどでもないが、巻数のローマ数字表記がアラビア数字表記になっていたりと細かい部分が異なるんですよね。まぁ、完結まで刊行されただけでも御の字ではある。なお、「完結」はあくまで「ナポレオン戦争を軸にしたストーリー」であって、「同一の世界観を使った関連作」は今後も出るかもしれないとのこと。

 ちなみに、ヴィレッジブックスという「今は存在しない出版社」も成立から消滅までの経緯が結構複雑。もともとは「ソニー・マガジンズ」というソニー・ミュージックの子会社が海外小説の翻訳本を出すときの文庫レーベルとして「ヴィレッジブックス」を作った(だいたい2000年頃)のですが、ソニー・マガジンズが2006年に書籍部門を「ウィーヴ」という出版社に売却、このとき「株式会社ヴィレッジブックス」が出来てウィーヴの子会社になります(なおソニー・マガジンズは2012年に会社統合に伴って消滅)。『テメレア戦記』の翻訳版が刊行され始めたのはちょうどこの頃。2011年に株式会社ヴィレッジブックスは親会社のウィーヴに吸収合併され、「独立した一出版社」から「ウィーヴの一部署」に格下げとなる。2019年、今度はウィーヴが親会社の「フリュー」に吸収合併され、ヴィレッジブックスは「ウィーヴの一部署」から「フリューの一部署」に変遷。このとき『テメレア戦記』は1巻だけ増刷されたので、ハードカバー版『テメレア戦記』1巻に関してはヴィレッジブックス版フリュー版の2種類があります。2巻以降が増刷されなかったのは、まぁ単純に売れなかったんでしょうね。その3年後の2022年に「事業継続が困難」という理由で出版事業からの撤退を宣言。ソニー・マガジンズからの独立後、16年に渡る歴史に幕を引きました。

・映画の『WEAPONS/ウェポンズ』を観た。

 去年(2025年)に公開されたアメリカのホラー映画です。監督および脚本は「ザック・クレッガー」、元コメディアンで2009年に『お願い!プレイメイト』というコメディ映画で監督デビューした……らしいが、この映画はよく知らない。2022年に『バーバリアン』というホラー映画も監督しており、これは観たことがあります。グロいシーンが多くてなかなか楽しかった。『WEAPONS/ウェポンズ』は3本目の監督作品に当たり、4000万ドル弱(日本円に換算すると60億円前後)というハリウッド映画にしては比較的低予算で作られた映画ながら全世界興収が2億7000万ドル弱(日本円に換算すると420億円ぐらい)のヒット作となりました。全米公開が8月で、この時点だと日本での公開予定はなかったのですが、「英語圏でヒットを飛ばしている」という情報が伝わってきたため11月に緊急公開される運びとなりました。緊急すぎて公開規模がメチャクチャ小さく、地元では上映されず……ネットで評判を漏れ聞いて「観たい!」と歯噛みしましたよ。アメリカ本国での評価も高く、アカデミー賞も受賞しています。獲ったのは「助演女優賞」。誰が獲ったのかは後述する。

 舞台はペンシルベニア州の小さな町。ある男の子がこそこそと囁く。ちょっと前にこの町でたくさんの人が死んだんだ。でも、事件は揉み消されて全部「なかったこと」になった……と、いきなり結論から明かしてきます。発端は水曜日の朝、小学校の教師「ジャスティン・ギャンディ」はいつも通り授業を行おうと受け持ちの教室に向かった。しかし、教室はもぬけの殻……いや、たった一人、「アレックス・リリー」だけが登校している。体が小さく、気弱で、よくイジメられていた繊細な少年。ねぇアレックス、他の子たちはどうしたの? ――クラスに在籍する18人の子供のうち、17人が一夜にして姿を消すという異常事態に町中が蜂の巣をつついたような大騒ぎとなった。刑事たちはジャスティンに事情を尋ねるが、彼女は途方に暮れるばかり。「子供たちはみんな示し合わせてどこかに向かったんだよな? ただの悪ふざけだよな?」とアレックスに訊いても彼は俯いて「知らない」と答えるのみ。防犯装置やカメラの映像から、子供たちが「自主的に」家を飛び出した時刻は深夜2時17分頃と判明したものの、その行方を突き止めることはできなかった。学校は捜査のため一時休校となったが、いつまでも残された子供たちを放置するわけにも行かず、1ヶ月後に再開の運びとなる。収まらないのは子供が帰ってこないことに苛立つ親たち。ふざけるな! 何があったのかいい加減説明してくれ! なぁ、ギャンディ先生、あんたは何か知ってるんだよな? 俺たちに隠していることがあるんだろう! 詰め寄る保護者たちに対し答える言葉を持たないジャスティンは、「飲まなきゃやってらんねぇ」とばかりに酒に溺れるが……。

 小学生たちの集団失踪事件をフックに、「町の醜聞」に切り込んでいくほんのりミステリ仕立てのストーリーで観ていてワクワクします。結論はあらかじめ語られているのに、なんだろう、この真相がうっすらと見えていても全容が掴めない感覚。痒いところは分かっているのに掻くことができない、良い意味で隔靴掻痒のムードに満ちた映画です。ネタバレ抜きで魅力を伝えるのは難しいし、もう公開から結構経っているのでここから先はネタバレありでどんどん語っていきます。観る気はある方はブラウザを閉じてさっさと『WEAPONS/ウェポンズ』を再生しちゃってください。

 この映画はいわゆる「群像劇」のスタイルで撮られており、ある程度話が進むと「次の視点」に移ります。最初の視点は教師のジャスティン、担当クラスが丸ごと消滅した(アレックスは失踪してないけど、さすがにマンツーマンで授業を続けるわけにもいかず他のクラスへ編入した)事態に呆然とし、学校側からも「ほとぼりが冷めるまでは大人しくしてくれ」と余計な行動をしないよう釘を刺されている。町民からは疑惑の目を向けられ、車にペンキで「WITCH(魔女)」と落書きされる始末。しかしそれで大人しく縮こまるようなキャラじゃないジャスティンは、唯一の手掛かりであるアレックスに接触しようとします。直接彼の家に行って呼び鈴を鳴らすが、誰も出て来ない。窓から家の中を覗き込もうとすると、なぜか窓という窓に新聞紙で目張りがしてあった。野次馬やマスコミへの対策にしても、なんか変じゃないか? といった具合に「アレックスの家」が物語の焦点となっていくわけです。

 第二の視点は失踪した生徒の保護者、「アーチャー・グラフ」。彼は息子の「マシュー」がどこに行ったのか知りたい一心でジャスティンに付きまとう。その一方、防犯カメラに残っていたマシューの映像を見返し、彼の向かった先を突き止める手掛かりが何かないかと目を皿にする。家を飛び出したマシューは道なりに走っていくのではなく、まるで「目的地へ真っ直ぐ向かっている」かのように躊躇なく道路を横断していた。目的地が直線方向にあるのだと仮定するなら、他の失踪生徒たちが向かった方角と突き合わせて交点を導き出せるのでは? 何かが掴めそうなアーチャー。交点を探している最中、ジャスティンの車を見掛け、「今度は何か情報を吐くまで逃さない!」と圧を掛けるが……「またしても何も知らないジャスティン」はうんざりしながらアーチャーと押し問答を繰り広げている最中、視界の端から見覚えのある誰かが走ってくるのを捉える。「あれは……マーカス?」 職場の上司である「マーカス校長」は完全に理性を失った状態で彼女に襲い掛かってきた! と予想外の方向から新展開始まります。もうこのへんまで来ると「観るのやめらんない」感じになりますね。

 で、この後「ポール」「ジェームズ」「マーカス」と視点が切り替わっていって、マーカス校長のところでようやく真打登場となる。そう、彼女こそがアカデミー賞で助演女優賞を獲った「エイミー・マディガン」演じる……誤魔化す意味もないのでハッキリ書いてしまうと、本作のラスボスである「グラディス」だ。異様に厚化粧したババアで、とにかく見た目のインパクトが強い。監督が元コメディアンということもあってか、グラディスのところだけなんか「松本人志がダウンタウンの番組で演じていた『話の通じないクソババア』にまつわるコント」のノリなんですよね。「ただ厚化粧しているだけ」なのにここまでクリーチャー感が出せるのシンプルにスゴいですよ。

 最終的にただ一人だけ教室に登校してきた男の子、「アレックス」の章が開幕し、いよいよ種明かしが始まります。マーカス校長の章で既に描かれていたが、アレックスの「叔母」を名乗るグラディスは本物のWITCH(魔女)で、平和だった彼の家庭にある日突然寄生虫の如く棲みついてしまったのだ! 対象の髪の毛や「愛用の品」を使って発動させる類感呪術タイプの魔法(ウィッチクラフト)で、「木の枝」を用いるところを見るとケルトのドルイド(女性だからドルイデス?)系かな。アレックスの母親の妹、つまり「叔母」だと言い張っているけど、どう見てもアレックスママよりずっと老けているので恐らく「そう思い込まされている」のでしょう。校長との会話から、少なくともアメリカ開拓時代には物心をついていたと推測される。グラディスの魔法によって傀儡にされたアレックスの両親、「言うこときかなかったら……わかってるよな?」とグラディスに脅され、アレックスは彼女の言いなりになってしまう。そんな中、「消えた子供たちが向かっていった先の交点」を探していたアーチャーとジャスティンはそこが「アレックスの家」だということに気付き、遂に物語はクライマックスへ。ここから先の展開はさすがにバラせないが、「最終決戦」の盛り上がりは期待通り……いや、期待以上の代物でテンションMAXになりましたよ。「うおお! そこだ! 殺れ! ブチ殺せ!」とまるでグラディエーターの試合を観戦しているような気分でしたね。監督曰く、脚本を書き始めた時点では着地点を決めていなくて「ある教室の子供たちが一斉に姿を消す」というアイデアを転がしていった結果、ああなったらしい。冷静に考えると「一斉に失踪させる必要があったのか?」という疑問は残るし、グラディスの動機も明確には描かれていないが、そこらへんは瑕疵というほどでもないです。

 想定以上のヒット作になったこともあり、既にグラディスの来歴を綴る前日譚の企画も動いているようです。要は『X エックス』に対する『Pearl パール』みたいなもん。本当は『WEAPONS/ウェポンズ』本編の中でグラディスの過去も掘り下げる予定だったらしいが、尺の都合で削らざるを得なかったらしい。削ってなお128分ありますからね、この映画。さあ、みんなも「アカデミー賞を獲ったババア」に観に行きましょう。

・拍手レス。

 陰実はすでにコミカライズの方が原作最新刊より早かったので追い抜くのほぼ確定です。一番残念なパターンは『紅』ですね。原作イラストレーターによる丁寧なコミカライズで人気も高かったのに。コミカライズが終わった後に原作新刊出たのも

 『紅』は原作の残酷描写がハード過ぎたせいかコミカライズではだいぶマイルドにしないといけなかったり、アニメは別物になったりとメディアミックス的にはかなり混乱しちゃった作品ですね。コミカライズの特典として原作寄りのOVAもちょっとだけ作られたけど、あれをもっと大々的にやってほしかった。


2026-03-31.

・やっと『劇場版 陰の実力者になりたくて! 残響編』の続報が来て「待ちくたびれたぜ……!」という顔になっている焼津です、こんばんは。

 2期放送終了直後、制作決定が報じられたのは2023年12月21日。そこから続報らしい続報もなく、原作の刊行も止まっていた(原作者監修のソシャゲは動いていたけど)からファンたちはニュースに飢えていましたが、ようやく干天の慈雨が降り注いできた。原作読んでない人は「残響編? 何のこっちゃ」という感じでしょうが、内容としては単なる本編の続き(でもちょっと番外編っぽい話)なので深く気にしなくていいです。アニメの2期は原作小説4巻の前半を消化したところで終わっていて、残響編はその続き、つまり4巻後半のエピソードに当たります。もうPVも出ているからバラしてしまってもいいと思いますが、2期のラスボス「モードレッド」を倒した後、突如発生した謎の「ゲート」にシャドウ様が飛び込んだところ、そこは彼が転生する前に過ごしていた世界……即ち日本だった、ということでファンの間では「日本編」ないし「地球編」とも呼ばれている。アニメだと1期目第1話のエピソード「嫌いなクラスメイト」の続編に当たりますね。「スタイリッシュ暴漢スレイヤー」でお馴染みのアレ。書籍化記念として書かれた「彼の名は影野ミノル」がベースになっており、書籍版だと4巻、ちょうど2期ラストと残響編(日本編)の間に収録されています。そう、陰実のアニメって実は構成を変えていたんですよ。「2話以降ほっちゃん(堀江由衣)ボイスの同級生全然出て来ないけど、一体どうなってんの!?」と戸惑った方もおられるでしょうが、もともと残響編(日本編)の前フリに当たるエピソードだったワケだ。さすがにアニメ派の人は記憶が朧気になっていると思うので、残響編を観に行くつもりなら直前で「嫌いなクラスメイト」(1期目第1話)を再視聴しておいた方が宜しいでしょう。

 とはいえ、アニメ2期のラストって実は原作と違うので、そのままだと4巻後半のストーリーに繋がらないんですよね……いったいどうするんだろう? と首を傾げつつあらすじを確認したら「追いかけてきたベータ」とあって「おい!」とツッコミを入れたくなった。原作だとシャドウ様がゲートに飛び込んだ後、慌ててベータがその背中を追う展開になっているんですが、アニメ2期ではなぜかベータが後を追う前にゲートが閉じてしまったんです。てっきり「ベータの出番を削除してアニメオリジナルのストーリーにする」んじゃないかと深読みしていましたが、結局原作通りの流れに戻すらしい。じゃあなんでアニメのラストを改変したんだよ!? アニメ番外編の「かげじつ!せかんど」最終話ではアニメ本編と違って「シャドウ様とベータがともに姿を消した」ことになってたし、ひょっとしてプロジェクトの連携が取れてなかったのでは……? という疑惑がある。まぁ作風的にしれっと展開を改変しても受け入れられそうではあるが……。

 原作も遂に新刊が出るし、「ほぼソシャゲとコミカライズだけのプロジェクト」になりつつあった陰実が本格的な再始動を迎えていてアツい。いえ、「ソシャゲやコミカライズが動いているだけマシだろ」という意見もあるでしょうが、それはそれ。ちなみにコミカライズは5月に最新刊(18巻)が出る予定です。結構丁寧なコミカライズなので、「原作に追いつかず途中で終わるかもな」と思ったこともありましたが、あらすじ読んだかぎりではだいぶ追いついてきてますね。原作がエタらなければ完結まで漫画化できそうか?

 かつてライトノベルのコミカライズ作品は「人気作でも作画に時間が掛かるせいで原作に追いつけず、途中で終わる」のが常でした。『灼眼のシャナ』は番外編含めて全26巻ある原作のうち4巻の範囲までしかコミカライズされていないし、『ナイツ&マジック』も第一部をやり切ったところで一旦完結した。珍しいところでは『災悪のアヴァロン』が「原作小説の内容に追い付いてしまうことを鑑み」て一旦休載になる、なんてこともありましたが……最近は小説本体よりもコミカライズの人気に後押しされてアニメ化が決まることも多くなった(そのため絵柄が小説の挿絵よりも漫画版の方に近くなるパターンも増えてきた)し、昔は低く見られていたコミカライズの地位もだんだん上がってきているようですね。一方、映画が興収40億を超えているヒット作『ほどなく、お別れです』コミカライズもされている割にSNS等ではさほど話題にならない。この作品、原作は小説で、単行本が刊行されたのは2018年だから結構前なんですよ。シリーズ化していて4冊で累計80万部、巻割で20万部だから充分当たっているのですが、「お涙頂戴」と見做されて敬遠されているのか読書好きの間でもそこまで話題に上りません。私はコミカライズを途中まで読んでいるけど、印象に反してスピリチュアル系の内容(主人公は“気”に敏感ないわゆる「見える子ちゃん」)なんで「葬儀会社を題材にした地味なお仕事モノ」とか「『おくりびと』みたいな話」とかを想像して臨むと戸惑うでしょう。リアリティーラインの高低はあれど、私の中では『見えてますよ!愛沢さん』と同じ枠の作品です。

『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』と『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』まさかのコラボイラスト公開! 衝撃の“ミルキー☆ハサウェイ”爆誕(電ファミニコゲーマー)

 公開時期が近いんだし、「ミルキー☆ハサウェイ」みたいなコラボすればいいのに。と無責任なこと言って笑っていたら本当にコラボしてるよ! ミルキー☆サブウェイの監督が言うにはガンダムサイドから打診があったそうです。ミルキーハイウェイ側からコラボを提案していたら「なんて強い心臓の持ち主なんだ」と感心していたところだったが、常識的に考えてそれはなかったか。

 一応、共通のキャストがいるので接点はないこともない。ミルサブの主役ポジションに位置する「マキナ(来栖真希菜)」と、ハサウェイ第2部では「おっぱい」が印象に残った褐色でお下げ髪のメカニック「ジュリア・スガ」、この両方を演じた声優が「永瀬アンナ」です。彼女は『超かぐや姫!』でも主役(酒寄彩葉)を演じており、『劇場版「僕の心のヤバイやつ」』や『パリに咲くエトワール』に脇役として登場しているので、なんと現在公開中のアニメ映画のうち5本もネームドキャラで出演していることになります。去年の出演作は『呪術廻戦』の総集編(星漿体の「天内理子」を演じた)くらいだったのに、出世しまくりやんけ。普通もっとこう、刻むだろ、段階を……! せっかく波が来てるんだから『超かぐや姫!』や『パリに咲くエトワール』ともコラボしてほしいですね(僕ヤバは原作があるから許可取るの大変だと思う)。「マフティーがツクヨミにいるわけないだろ!」「マフティーがパリにいるわけないだろ!」 『パリに咲くエトワール』、せっかく谷口悟朗が巨大ロボットを封印して作ったのにモビルスーツの影が忍び寄りそうなの笑ってしまう。

高村和宏監督の新作「バーテックスフォース」今年放送、メカ×美少女のオリジナルアニメ(コミックナタリー)

 「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」や「ビビッドアングル」でボンクラアニメ好きたちの血を熱く騒がせたあの「高村和宏」の新作オリジナルTVアニメだって!? 唐突にえらいニュースが飛び込んできた。『ストライクウィッチーズ』や『ビビッドレッド・オペレーション』の監督として知られる高村和宏だが、元ガイナックスの社員で、アニメ版『まほろまてぃっく』のキャラクターデザインを手掛けている。初監督作品が『ストライクウィッチーズ』であり、股間描写への熱烈なこだわりっぷりから「股間督」の二つ名を持っています。ストライクウィッチーズ関連のアニメだと『ブレイブウィッチーズ』の監督もやっていますね。ただ『ルミナスウィッチーズ』は『アサルトリリィ BOUQUET』の「佐伯昭志」が担当している。股間督が最後に監督したアニメは2020年の『ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN』、つまり6年ぶりの新作ってわけだ。ストライクウィッチーズ関連ではない、純粋な新作という意味では2013年の『ビビッドレッド・オペレーション』以来だから13年ぶり。いやビビオペがもう13年前ってビビってしまうな。

 今のところタイトルとティザービジュアルくらいしかわからないが、監督のコメントからすると「メカと美少女」を愚直に貫き通した作品のようだ。ぶっちゃけ既に時代にそぐわなくなっている印象もあるが、私も「メカと美少女」が好きな男だ。普通に期待させてもらうぜ。

”灰の中に、なお火は燃えている――” 『影技・暁(SHADOW SKILL DAWN)』、“COMICリュウ”にて4月24日より連載開始

 アイエエエエエエエエ!! 影技(シャドウスキル)の新作!? 90年代に青春を過ごしたバトル漫画ジャンキーはこのニュースにブッ魂消たことだろう。「岡田芽武」、今は「聖闘士星矢のスピンオフを描いている人」として一部の層から認知されているかもしれないが、このシャドウスキルはOVAが出たりTVアニメが放送されたりと「オタク向けのバトル漫画」として当時大きなムーブメントを起こした作品です。「刃拳」と書いて「ハーケン」、「怖鎖」と書いて「フェンサー」などネーミングはちょっとダジャレっぽいが、このへんのノリが星矢スピンオフの方でも発揮されている。

 異世界を舞台に、2000年の歴史を誇る「クルダ流交殺法」と呼ばれる格闘術の使い手たちの戦いを描くバトル系ファンタジーで、「雑誌を転々としたせいで完結まで20年以上掛かった」ことでも有名です。最初は竹書房の“コミックガンマ”で連載していたのですが、同誌が休刊になり一旦打ち切り。翌年富士見書房の“月刊ドラゴンジュニア”に移籍するも、一年半ほど連載した後で休載。そこから更に講談社へ移籍し、“アフタヌーン シーズン増刊”で連載するも休刊。最終的に“月刊アフタヌーン”で連載することになるが、かなり不定期気味の連載で、10年以上掛かってようやく完結した。そして今度は“COMICリュウ”で連載するんだから、「5つの雑誌を渡り歩いた作品」ということになる。単行本も竹書房(バンブーコミックス)版、富士見書房(ドラゴンコミックス)版、講談社(過去連載の復刻)版、講談社(アフタヌーン連載)版と4種類もあってややこしい。ワケが分からなくなって途中で買うのやめた読者も結構いました。今から読み出す場合、上記のうち竹書房版と富士見書房版は無視していいです。講談社に移籍してから過去連載の復刻として出したのが『SHADOW SKILL phantom of shade』、『SHADOW SKILL black howling』、『SHADOW SKILL black wing』の3冊なんですが、これは刊行順であって、ストーリーの順番としては『black howling』→『black wing』→『phantom of shade』。『black howling』は旧シリーズ1巻と2巻の合本、『black wing』は3巻と4巻の合本、『phantom of shade』は本来5巻として刊行されるはずだった単行本未収録の連載原稿をまとめたものです。「とにかく単行本未収録のエピソードを読ませてくれ」というファンの要望に応えるために『phantom of shade』を真っ先に出したわけですね。

 で、アフタヌーンでの連載をまとめたものが『SHADOW SKILL』(全11巻)です。「1巻」と書いてるから「ここから読み出せばいいのか」と勘違いしそうになりますが。実際は6巻か7巻に相当する内容である。斯様に詳しい事情を知らない読者に対しては不親切な売り方をしており、新規があまり入って来ず、連載の終盤はコアなファンしか残っていなかった印象があります。電子版が販売されていた時期もありましたが、講談社から権利を引き上げたのか現在は電子書籍を購入することはできません。『暁』の連載が始まったら徳間で出すのかな? 何せ20年以上やってた作品だから絵柄の変遷が激しく、最初の巻最後の巻では同じキャラでも別人にしか見えない。岡田芽武はもともと描き込みの細かいタイプで、絵の癖もどんどん強くなっていったからファンの間でも「どの時期の絵柄が好きか」は意見の分かれるところだ。

 さておき、新作はタイトルが『影技・暁(SHADOW SKILL DAWN)』だということ以外、ほとんど謎に包まれています。「暁」という言葉の印象からすると前日譚か? 主人公「ガウ・バン」の師匠にして姉のようなポジションの「エレ・ラグ」の過去編とか……でもエレの出自はだいたい判明しているし、今更過去編をやるか? という疑問はある。エレをメインにしつつ、本編に出て来なかった過去の闘士を掘り下げる可能性もありますね。クルダ流交殺法は前述の通り2000年の歴史があり、その技を継ぐ闘士(ヴァール)の中でも特に優秀な者を修練闘士(セヴァール)と呼ぶのですが、ガウが第60代修練闘士でエレが第59代修練闘士。エレが過去の記憶を辿り、『修羅の刻』ばりに歴代の「第〇代修練闘士」を追想していく連作という可能性もあるかな。

 シャドウスキル、バトル物としては今でも面白いしカッコいいと思っているけど、後半のストーリーは超常的な展開が目立つし、「ヒロイン・エレの驚くべき出生の秘密とは?」とか「主人公の実の父親が世界に混乱をもたらす元凶なので打ち倒さねばならない」とかいった具合にファミリーヒストリー方向へ話が進んでしまうため、物語としての爽快感は失われてしまった印象がある。『暁』はそこらへんも立て直してほしいところだが、いったいどうなることやら。

アニメ『PSYREN -サイレン-』2026年10月に放送決定!新ビジュアル解禁、「原作の最後」までアニメ化することも発表(電ファミニコゲーマー)

 「原作の最後」まで、つまり「俺たちの戦いはこれからだ!(完)」みたいな終わり方はしないと知ってまずはひと安心。そして次の心配は「いったい何クールでやるつもりなのか?」ってことですね。『PSYREN -サイレン-』の原作は全16巻、ジャンプ漫画はだいたい1クールに4、5巻分の原作を消費するのでゆっくりやれば4クール、やや駆け足気味に行けば3クールってところでしょうか。しかしこれはあくまで「理想の尺」であって、『PSYREN -サイレン-』クラスの知名度だといろいろ削って2クールに押し込む可能性も捨て切れません。さすがに1クールで原作の最後までやることはないと思うけど……そんなことしたら話が無茶苦茶になっちゃ……うっ! 覇穹……? なんだか嫌な言葉が脳裏をよぎったが、気のせいでしょう、きっと。

アニメ『ウマ娘 シンデレラグレイ』、「Anime Trending Awards」にて「アニメ オブ ザ イヤー」受賞&8冠達成。映画『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』も「アニメ ムービー オブ ザ イヤー」に輝く(電ファミニコゲーマー)

 この「Anime Trending Awards」というの、アメリカのアニメファンが集まって投票して決める、SFの「ヒューゴー賞」みたいな……日本だと「星雲賞」のようなポジションの賞らしい。今回が12回目ということで、初の開催は2015年(対象の作品は2014年のアニメ)、初代「アニメ オブ ザ イヤー」は『残響のテロル』です。日本だとそこまで大きく評価されていない作品ですが海外では人気があって、フランスでも賞を獲っていたりと、MAPPA人気の礎になっている。他、歴代のアニメ オブ ザ イヤーを列挙していくと『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続』、『夏目友人帳 伍』、『月がきれい』、『宇宙よりも遠い場所』、『ヴィンランド・サガ』、『アクダマドライブ』、『フルーツバスケット The Final』、『ぼっち・ざ・ろっく!』、『天国大魔境』、『葬送のフリーレン』、以上です。調べて初めて知ったけど、『葬送のフリーレン』の英題って "Frieren: Beyond Journey's End" なのか……「葬送」のニュアンスを翻訳しにくいから、「冒険の旅が終わった後の物語」という点を強調しているのね。『天国大魔境』は "Tengoku-Daimakyo" 、『月がきれい』は "Tsuki ga Kirei" と、そのまんま過ぎて笑った。

 どちらかと言えば「リアリティーのある現代物や、重厚感のある歴史物・ファンタジー物、あるいはセンスの炸裂しているアニメが人気」という傾向の賞なんで、こういう「熱さ」とか「爽快感」を売りにしたスポ根路線のアニメが評価されるのは珍しい、と海外でも話題になっている模様だ。しかも年間最優秀賞(アニメ オブ ザ イヤー)だけでなく、部門賞も7つ(女性キャラクター賞「オグリキャップ」・男性サブキャラクター賞「北原穣」・女性サブキャラクター賞「ベルノライト」・ベストスポーツアニメ大賞・ベスト脚本賞・ベストアニメーション大賞・ベストキャラクターデザイン大賞)獲得しており、「8冠アニメ」となっています。「むしろ獲れなかった部門は何なの?」と逆に気になりますが、このへんは「ジャンル賞」と「非ジャンル賞」に分けて考える必要があります。

 「ジャンル賞」はスーパーナチュラルアニメ(『ダンダダン2』が受賞)、日常・青春アニメ(『その着せ替え人形は恋をする Season 2』が受賞)、SF・メカアニメ(『Dr.STONE SCIENCE FUTURE』が受賞)、恋愛アニメ(『薫る花は凛と咲く』が受賞)、ミステリー・サスペンスアニメ(『薬屋のひとりごと 第2期』が受賞)、音楽アニメ(『ロックは淑女の嗜みでして』が受賞)、ファンタジーアニメ(『Re:ゼロから始める異世界生活 3rd season「反撃編」』が受賞)、ドラマアニメ(『タコピーの原罪』が受賞)、コメディアニメ(『SPY×FAMILY Season3』が受賞)、アクション・冒険アニメ(『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』が受賞)です。この中だとシングレは「ドラマアニメ」部門で3位でした。

 「非ジャンル賞」で逃したのは、エンディングテーマソング賞(『その着せ替え人形は恋をする Season 2』の「Kawaii Kaiwai」が受賞)、オープニングテーマソング賞(『よふかしのうた Season2』の「Mirage」が受賞)、女性声優賞(『薬屋のひとりごと』の「猫猫」役として悠木碧が受賞)、男性声優賞(『薬屋のひとりごと』の「壬氏」役として大塚剛央が受賞)、声優キャスティング賞(『Re:ゼロから始める異世界生活 3rd season「襲撃編」』が受賞)、サウンドトラック部門最優秀賞(『薬屋のひとりごと 第2期』が受賞)、背景・美術部門最優秀賞(『薬屋のひとりごと 第2期』が受賞)、オリジナル脚本賞(『全修。』が受賞)、ベストエピソード演出・絵コンテ賞(『タコピーの原罪』の1話目が受賞)、カップル・オブ・ザ・イヤー賞(『薫る花は凛と咲く』の「紬凛太郎&和栗薫子」が受賞)、男性キャラクター賞(『薬屋のひとりごと』の「壬氏」が受賞)。原作付き以外が対象となる「オリジナル脚本賞」、恋愛要素がないと選ばれにくい「カップル・オブ・ザ・イヤー」、そして「男性キャラクター賞」は主役級の男キャラがいないため無理でしょうね。女性声優賞とエンディングテーマソング賞とサウンドトラック部門では2位だったから「10冠」以上という栄光の可能性もうっすらと見えている状態でした。あと「年間アニメ映画大賞」というのもあって、こちらも当然ながら選外だったのですが、代わりに『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』が受賞している。つまり、30ある部門のうち9つ、1/3近くをウマ娘関連のアニメが占める結果となったわけだ。Umazing!

 過去の最優秀賞アニメだとぼざろが8部門獲ってたので最多タイ。他はフリーレンが6部門、天国大魔境が5部門といった具合。最低でも何らかのジャンル賞を制していなきゃ最優秀賞に選ばれることはまずないため、過去の最優秀賞アニメは最小でも2部門を受賞しています。後から新設された部門もあるので、過去の受賞作と比較するのはあんまり適切じゃないかもですが。しかし、こうして過去の受賞リストを眺めると、「作品人気とキャラ人気って結構乖離してるんだな」というのが見て取れる。たとえば俺ガイル続は最優秀賞を獲っている割にキャラクター賞では一つも選ばれていない。同じ年の男性キャラクター賞は『食戟のソーマ』の「幸平創真」、女性キャラクター賞は『赤髪の白雪姫』の「白雪」、カップル・オブ・ザ・イヤーは『赤髪の白雪姫』の「ゼン&白雪」です。これだけキャラ人気あるのに『赤髪の白雪姫』が最優秀賞じゃないの? と不思議になりますが、シナリオや作画込みの評価で俺ガイルが上回ったってことなのかな。あと「ギャグが面白く、曲も良くて、青春ストーリーとしての完成度も高い」ことでコメディアニメ賞と音楽アニメ賞と日常・青春アニメの3部門を制したぼざろも、意外なことにキャラ部門では選ばれていません。同年の女性キャラクター賞は『その着せ替え人形は恋をする』の「喜多川海夢」、女性サブキャラクター賞は『サマータイムレンダ』の「南方ひづる」。最優秀賞を獲ったうえでキャラ部門を3つも制しているシングレの方が珍しいんです。

 シンデレラグレイ、「日本の競走馬をモチーフにしたスポ根アニメ」というマニアックな題材だったせいもあって、放送前の注目度はかなり低かった。海外でもこれまでの『ウマ娘』シリーズのアニメは配信されていたが、前提となる競走馬の知識が共有されていなかったため、観ている人が少なかったんです。いざ放送が始まっても色物扱いでなかなか人気が伸びなかった。しかし、カサマツ編が終わるあたりから口コミでじわじわと広まり始め、6月にウマ娘のアプリのグローバル版が配信開始したことで一気に人気が爆発。空前のウマ娘ブームが到来しました。「地方から中央へ駆け上がっていった『オグリキャップ』というシンデレラ」を描いたアニメが、日本から世界へと羽ばたいていく、二重の意味での「シンデレラ・アニメ」となったのだ。『新時代の扉』が人気を博したのもシングレの影響が大きい。アメリカでは劇場公開ナシでいきなり配信されたんですけども、「どうしても映画館で観たい」と嘆願するファンたちの期待に応えて全米600館という、向こうの感覚としては小規模なスクリーン数で上映されました。

 「分割だったけど1クール目と2クール目が同じ年に放送された」というのも功を奏したかな。分割形式で年を跨いじゃうと、こういう年間アワード的なものからは評価されにくくなりますゆえ。3クール目以降の放送がいつになるか、現時点ではまだわかりませんが、これだけ人気があればアニメの続編はほぼ確実に制作されるでしょう。アニメは「白い稲妻篇」、単行本で言うと8巻までやったので、3クール目から「永世三強篇」に入る。単行本は全23巻だから、このペースならアニメは全6クールで綺麗に収まりそうですね。全体でざっくり70話くらいになるのかな。逆に言えば、ここまで人気が出てなきゃ最後までアニメ化するのは「難しい」と言わざるを得なかっただろう。ホント、原作もアニメも好きな人間としては「人気が出てよかった」の一言に尽きる。どうかゴールまで駆け抜けてくれ、オグリキャップ。

・映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』観た。

 久々に新規IPの洋画でヒット作になりそうだ、と話題になっている映画です。原作は「アンディ・ウィアー」、『火星の人』(映画版の邦題は『オデッセイ』)を書いた小説家。デビュー作の『火星の人』とこれの間に『アルテミス』という月面都市を舞台にした作品があるため、長編小説としては3作目に当たる。日本では2021年に単行本として翻訳され、ベストセラーに。なかなか文庫化されなかったが、今年の1月にやっと「ハヤカワ文庫SF」入りを果たした。映画化に合わせてのものだと思います。しかし5年近くの間に紙やら何やらが高騰していたため、本体価格2100円が1500円と、価格差が600円しかない状態に……4月以降はもっと値上がりする、という噂もあるからいずれ「単行本と文庫版の価格が一緒」の作品とか、逆転する作品すら出て来るかも。

 原作小説は「ネタバレ厳禁」という触れ込みで、ほとんど内容に言及せず布教活動が行われたことで有名です。私もセールの時に購入したけど、結局読まないまま映画公開の日を迎えたので内容についてはほとんど知らなかった。まぁ「宇宙に出る話」だということと「ファーストコンタクト物」だということは漏れ聞いていたし、ドムドムハンバーガーと映画公式がじゃれ合っていたから「アレ」が出てきた時に「あっ、Xで見たやつだ」となっちゃったけど。愛読者たちがネタバレを避けようとあまりにも頑なに詳細を話そうとしないものだから、原作者のアンディ・ウィアーも痺れを切らして「そこまで神経質にならなくていいよ、本書の肝はそこじゃないんだから」と苦言を呈したほどです。今回の感想はネタバレに気にせず書いていくので、これから原作小説読むつもりの方やまだ映画を観に行ってない人はご注意ください。

 「ライアン・ゴズリング」演じる主人公は記憶喪失に近い状態で目を覚ます。何か機械に囲まれて、点滴の管や電極やカテーテルが山ほど付けられている。ここはどこだ? いったい何があって自分はここで眠っていた? ワケが分からないゴズリングは、「病室」を抜け出し、まるで潜水艦の出入口みたいなハッチを空けて「答え」を探そうと歩き回る。そして気付く。ここは……宇宙船だ! ぼくは宇宙にいる! しかもぼく以外の乗組員(クルー)は全員死亡している! 船のコンピュータへ向かって「ヒューストン(NASA)に繋げ」と命令するが、「範囲外だ」とにべもなく断られる。せめて現在位置だけでも知ろうとマップを表示させたところ、画面に映し出された宇宙図は、ただただ広大な「虚空」。目印らしいものが何もなかった。おいおい、まさかここは海王星のあたりだとでも言うんじゃないだろうな、と愚痴りながらマップを縮小させて地球を見つけようとするゴズリング。やっとの思いで「地球(アース)」を発見するが、同時に残酷な事実も知ってしまう。海王星どころではない、ここは太陽系の遙か外だ……! 窓の外に見える太陽は「太陽のような別の恒星」だったんだ!

 と、こんな具合でストーリーはいきなりクライマックスから始まる。記憶が混濁していたゴズリングは徐々に経緯を思い出していきます。作中の世界では金星から太陽にかけて帯のような赤外線、通称「ペトロヴァ・ライン」が発見された。その正体は宇宙微生物「アストロファージ」、こいつらは太陽のエネルギーを喰って活動し、取り込んだエネルギーを放出して移動する。このまま放置すれば太陽の放つ熱エネルギーが減少し、あと30年かそこらで地球は氷河期に突入してしまう。アストロファージは観測範囲内のあらゆる恒星を侵蝕していたが、唯一、地球から11.9光年離れたくじら座の恒星「タウ・セチ」だけ汚染されていなかった。普通ならそんなところまで行く手段などないが、皮肉なことに、採取したアストロファージが優秀な燃料として機能するため「片道なら」赴くことが可能となる。地球を救うための、帰還不能なミッション。自分がそれに参加していることを知り、途方に暮れるゴズリングだったが……と、ここからストーリーは更に二転三転していくことになります。

 観た時、真っ先に浮かんだ言葉が「敵は出て来ないけど仲間が全員死んでいる『宇宙戦艦ヤマト』」だった。たった一人でコスモクリーナーのような物を探し出し、それを地球に届けないといけない。「コスモクリーナー的な何か」を地球に送るための探査機(プローブ)は搭載されているが、生命維持装置なんて積んでいないから自分がそれに乗って帰ることはできません。死んだロシア人クルーがこっそり船に持ち込んでいたウォッカを痛飲しながら現実逃避を図るゴズリングくん。そんな彼の前に、アストロファージとは別の地球外生命体、平たく書けば「異星人」の知性体が接触してきます。原作は文庫本で上下合わせて900ページくらいあり、この異星人(主人公が付けた名称は「エリディアン」)は上巻の終わり頃にやっと登場するので「えっ、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』ってそういう路線の話だったの!?」と驚愕する読者が続出して「ネタバレ厳禁」と通達が出回ることになったわけだ。「己以外が全滅したヤマト」とも言うべき悲愴すぎるシチュエーションが一転してファーストコンタクトSFに変貌するので、「そこのサプライズが肝」と受け取る読者が多かったんですね。でもアンディ・ウィアー的には「そのへんは『前提』であってサプライズではない」と、過度なネタバレ禁止の風潮にNOを突きつけました。なので主人公と接触したエリディアン、個体名「ロッキー」の魅力について語っていきます。

 ロッキーは「見た目が岩のようだから」という理由でネーミングされており、その外観はカニとクモを掛け合わせたような五角形で五本脚の外骨格生物です。アニメファンには「タチコマ」と表現すれば伝わるだろうか。最近の作品で言うと『アポカリプスホテル』に出てきた「ハエトリロボ」がちょっと似てるかも。ロッキーは人形劇が好きなのか、主人公を模した人形を作ってそれを動かし、意思疎通しようとしてきます。「言葉の通じない異星人とどうやって分かり合うか」が本作の見所なわけですが、映画は尺の都合もあってあっという間に翻訳機が完成してしまうから少し拍子抜けではある。156分と、標準的な映画に比べて結構長い部類の作品(『オデッセイ』の上映時間は142分、ただし後のエクステンデッド・エディションで10分くらい追加された。ちなみにSF映画の中でも「長い話」として印象に残っている『インターステラー』が169分)であるが、文庫で900ページくらいの内容を圧縮しているからダイジェスト感は否めない。ゴズリングとロッキーの種の垣根を越えた友情が見所の映画なんで、SF版『最強のふたり』が観たい人にはオススメ。

 余談ながら、ロッキーはCGではなく、それこそ人形劇のように操演しているそうです。操演の様子が映っている公式動画はこちら。ぶっちゃけ映画の世界に没入していたからCGかどうかなんてイチイチ考えてなかった。逆に言えば「CGか否かなんてことが気にならなくなるレベルの自然な動き」。子供の頃に観ていたらロッキーに夢中になって、ロッキーのオモチャやぬいぐるみをせがんでいたかもしれません。カットされた要素があまりにも多くて原作ファンからは不満の声も出ているようですが、「まだ原作読んでない」方は映画観てから読むかどうか検討しても大丈夫だと思います。私は今原作を読み進めていますが、映画の知識があるぶんスイスイ読めるし「こんな要素があったのか!」と新鮮で面白い。あくまで映画は「ヘイル・メアリーの入門用」と割り切った方がいいかも。あ、そういえば書き忘れていたが、タイトルの『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は日本語に訳すと「神頼み計画」。英語圏では「アヴェ・マリア」のことを「ヘイル・メアリー」と呼ぶので、ニュアンスとしては「どうかお助け下さい、マリア様!」ぐらいの意味です。日本語圏で近い言い回しとしては「南無三!」とか「南無八幡大菩薩!」とか「神様、仏様、〇〇様!」かな。「ああっ女神さまっ作戦」と意訳している人もいて笑ってしまった。「一発逆転」とか「イチかバチか」みたいな、もはや神仏に祈ってか細い希望に縋るしかない苦境へ追い込まれた人類の切羽詰まり具合を表現したタイトルなんですが、英語圏以外では伝わりにくいのが難点か。


2026-03-20.

3月21日(土)18:00、まほよの新情報が来襲(く)る! 俄かに緊張してきた焼津です、こんばんは。

 タイミング的に公開予定日の告知ですかね? できれば何部作の予定なのかも明かしてほしいところですが……尺的にとても1本で収まるとは思ってないので、最低でも前編と後編の二部作になると予想しています。その場合、後編はいつ来るのかという話なんですが……とても来年とか再来年とは思えないし、早くて3年後かなぁ。

谷口悟朗×吉田玲子が語り合うオリジナルアニメの存在意義 “多様性”のために必要なこと(Real Sound)

 TLでは絶賛の嵐だが、興行的にはだいぶコケている(初週で「興行収入:5560万8140円 観客動員:3万8861人」……全国285館公開だから平均して1つの映画館に1日あたり50人前後の客しか入っておらず、初週の数字としては「惨敗」に等しい)『パリに咲くエトワール』のインタビュー記事です。監督「谷口悟朗」や脚本「吉田玲子」のファンは必見。

 立ち上げの段階では監督の谷口とプロデューサーの「湯川淳」(ちなみに湯川Pのインタビュー記事もあります)の二人がゼロベースで企画を作り始め、行き詰まりかけていた頃に吉田が入った……という感じだそうです。なお湯川Pは「バンダイビジュアル」所属で、谷口監督とは『コードギアス 反逆のルルーシュ』からの付き合い。『ガールズ&パンツァー』の制作プロデュースにも関わっているので、吉田さんとはそっからの付き合いですね。ガルパンに吉田さんを起用したのは水島努監督が「戦車好きのスタッフが集まってくるから戦車は何とかなるが、『女の子の可愛さ』は脚本で何とかしてほしい」と要望したからで、「女の子を可愛く書けるのは吉田さんだろう」ということで抜擢したそうだ。

 パリエトがフジコと千鶴の「ダブル主人公制」になったのは吉田さんが入った後で、それまでは単独主人公だったっぽいですね。「千鶴がバレエダンサーを目指す」という設定もだいぶ後で決まったらしい。別のインタビュー記事によると「パリを舞台にする」ところから企画が出発し、「未来のパリ」だとSFになっちゃって普遍性を損なうし「現代のパリ」ではセールスポイントが足りない、じゃあ「過去のパリ」だ――というふうに路線が定まっていったとのこと。吉田さんが加わる前の段階では「過去のパリでオーケストラの指揮者を目指す少女」というのが大枠だったが、「時代も考えるとこの設定(女性指揮者&10代そこらで抜擢)は難しい」ということで代わりに「絵画」を提案したようだ。当初のイメージラインとしては「画家になることを夢見たフジコが渡仏、憧れの都パリで奮闘するが、やがて様々な現実に打ちのめされ、それでもめげずに踏ん張って夢を叶える」みたいな感じだったのだろうか。既に何人も指摘しているが、「継田フジコ」のモデルは「藤田嗣治」(1913年に渡仏、翌年に第一次世界大戦勃発、仕送りが途絶えて生活も困窮し「寒さのあまりせっかく描いた絵を燃やして暖を取った」というエビソードも残っている画家)、つまり「女体化した藤田嗣治」をメインに据える案だったと思われるが、「二人の少女をメインとして立てたほうが、ドラマや関係性が作りやすい」ということでシスターフッド路線へ切り替えていった模様。

 パリエトを構成する要素のうち、アニメーションとして見せるうえで重要なのが「バレエ」や「薙刀」。このうち最初にあった要素は薙刀で、バレエは吉田さんの提案で追加されたようだ。ベル・エポック期ということで「アルセーヌ・ルパン的な方向」も監督の頭にはあったらしいが、題材として積極的に取り入れたくはなかったような口ぶりですね。バレエシーンについては「CGを使っているとはいえ、あれでなんでもできるのではないかと思われるかもしれませんが、CGはあくまでサポートとしてしか使えません。そもそも指先や足先までモーションキャプチャーのマーカーを付けているわけじゃないですしね。ノイズだってある。所作と所作の間でどのような体重移動をしながら動くのかというところまで突き詰めると、CGではできないんです」と語っており、偏執的なまでのこだわりが感じられる。ダンスシーンはなかなか演出が難しいんですよね、ストリートダンスを題材にした『ワンダンス』もアニメ版は相当苦労しているのが伝わってきた。

 「明治から大正にかけて」という時代背景が一般客を呼び寄せにくいのか興行は依然厳しい模様だが、「グランドシネマサンシャイン池袋」では金曜のチケットがほぼ完売に近い(と言っても、80席くらいの小さいシアターで1日2回、MAXでも160人)など、ジワジワと口コミの効果が出ているようだ。「こういうオリジナルアニメ映画もちゃんと評価される」って実績を作ってほしいところですね。ちなみに、パリエトの年代(1907年や1912年)を舞台にした作品というと、古いところでは『帝都物語』『春の雪』があります。『帝都物語』の方は3月30日(月)まで本編を期間限定無料公開しているので気になっていた方は今がチャンスだ。

『ガールズ&パンツァー リボンの武者』、パイロット版映像上映決定!

 すわリボンの武者アニメ化か! といきり立ってしまったが、あくまでPVのみの上映で本編に関しては本決まりではないらしい。なんだ、じゃあアニメ化が決定したとしても完成は2030年以降になりそうだな……『ガールズ&パンツァー リボンの武者』はガルパンのスピンオフコミックで、正式な大会が開催されている競技「戦車道」とは違い、戦車乗りたちがお互い合意の上で独自に繰り広げる、言わば野良試合の如き「強襲戦車競技(タンカスロン)」を描く。ガルパンの本編キャラも出てきますが、主要キャラは概ねオリキャラです。スポーツではなく「戦」が好きな少女「鶴姫しずか」が九七式軽装甲車(テケ)に乗って大暴れする。しずかは武田の「百足衆」の末裔という設定で、赤備えをイメージしてテケの外装を赤く塗り、大きくて真っ赤なリボンを着用している。ドラゴンボールの「レッドリボン軍」が由来というわけじゃありません。可愛い女の子もいっぱい出てくるけど、根底にあるノリはボトムズやシグルイ、ドリフターズのそれであり、「ウマ娘にとってのシンデレラグレイ」みたいなポジションだ。実際、シングレの作画担当も「『リボンの武者』と『はねバド』読んで吹っ切れた」と語っている。

 ガルパンのアニメが始まったのが2012年、リボ武者の連載開始が2014年で、2021年に連載終了しています。単行本にして全16巻というかなりのボリューム。TVアニメ化する場合、丁寧にやれば4クール、押し込んでも最低2クールは掛かるでしょうね。問題はガルパンを作っているスタジオ「アクタス」の仕事が物凄く遅いことで、「最終章」という触れ込みで始まった全6話構成の劇場シリーズは2017年に開始し、今年の10月にようやく第5話が公開される予定っつーレベルです。来年でもう10周年だ……ガルパンが、ではなく「最終章」が、ですよ。まさか10年経っても終わらないとは……第3話から第4話の間に「ロシアによるウクライナ侵攻」が勃発し、ロシアとウクライナがマジで戦車戦を始めるという信じがたい事態も発生した。アニメを取り巻く環境どころか社会情勢が激変している!

 アクタス、アニメ好きの間では「いい仕事するんだけど、とにかく時間が掛かるスタジオ」として有名で、同じくTVシリーズの続編として劇場シリーズを始めた『プリンセス・プリンシパル』もまだ終わっていません。TVシリーズの放送が2017年、全6章構想の劇場シリーズ『プリンセス・プリンシパル Crown Handler』が2021年開始で、去年(2025年)にやっと第4章が公開されたところです。TVシリーズから数えると来年で10周年だけど、それまでに終わる可能性はほぼゼロですね。こういう「劇場で全〇章」という商法、サンライズあたりがよくやってるんですけど『機動戦士ガンダムUC』が全7章で2010年に開始、2014年に完結。『コードギアス 亡国のアキト』が全5章で2012年に開始、2016年に完結。といった具合にだいたい5年以内に終わらせています。コロナ禍の影響もあって制作が大幅に遅れた『閃光のハサウェイ』3部作(第1部が2021年、第2部が2026年、第3部が未定)もありますが、「劇場〇部作」で5年どころか10年経っても終わりそうにないのは、他所だとEVAの新劇場版(2007年開始、2021年完結)があるにせよ、かなり特殊な例といっていい。公開まで待てず鬼籍に入ったファンもチラホラ。「完結まで生き残ろう」がガルパンおじさんの合言葉になってるとかなってないとか。

 そんな有様なので、『リボンの武者』まで寿命が保つかどうか……という次元の話になっており、もはや笑うしかない。私も生きてリボ武者のアニメが観たいものだ。

『Fate/EXTRA Record』の発売延期が発表。ノーツとバンダイナムコエンターテインメント、両社協議の上で開発体制の変更をふくめた見直しを行うことが決定。新たな発売時期、販売元は決定しだい案内するという(電ファミニコゲーマー)

 SNSをチェックしていたら「販売中止」の文字が飛び込んできてドキッとしましたが、あくまで「バンナムからの販売を中止する」という話であって『Fate/EXTRA Record』がポシャったわけではないらしい。ひとまず胸を撫で下ろしました。

 まず『Fate/EXTRA』について説明。これは2010年に発売されたPSP用ゲームで、TYPE-MOONが主導して作ったソフトではなく、「持ち込み企画」の一つだったそうです。FateのIPを使ってダンジョン探索ゲームを制作したい、ということで当初は「セイバー」や「アーチャー」など『Fate/stay nigh』のキャラをそのまま使ったゲームになる予定だったらしいが、話し合っているうちに「オリジナルの設定にしてstay nighとはまったく別のストーリーにしよう」ということになりました。そうして生まれたのが新たなセイバー、通称「赤セイバー」です。それまでFate作品は「アルトリア」以外のセイバーが出て来なかったため、「セイバー=アルトリア」が常識だったのですが、この『Fate/EXTRA』によってようやく「アルトリアではないセイバー」が登場したのだ。

 余談ですが今アニメやってる『Fate/strange Fake』は大元が2008年のエイプリルフールネタでEXTRAよりも古く、「アルトリア以外のセイバーはまだ存在していなかった」段階のため、そのへんに配慮して「セイバーが不在の偽の聖杯戦争」という体裁になっていました。アニメだと「小野友樹」が声当ててるあのセイバーは2015年に電撃文庫から商業作品として発売されたときに追加されたキャラです。もう一つ、禁断の余談二度打ちをしますと、EXTRAとほぼ同時期に持ち込まれた企画が『Fate/Apocrypha』。オンラインゲームとしてサービス開始する予定でしたが、諸般の事情で開発中止になっている。想像に過ぎないが、「Fateブランドのイメージを守るためのスタッフのこだわり」が厳しすぎて開発サイドが音を上げてしまったのではないだろうか。EXTRAも、企画の段階だと「シナリオは奈須きのこではなく外部のライターが書く」予定でしたが、上がってきたシナリオに奈須が納得できず全ボツ、「こうなったら俺がやる!」と一から書き直した――という経緯があります。続編のCCCでも「サクラファイブ」という「間桐桜」そっくりの顔をしたエネミーが言葉通り5人登場する構想でしたが、「予算と納期と容量の問題」で5人中3人が削られ、メルトリリスとパッションリップの2人しか残らなかった。削られた3人の穴を埋めるためエリちゃんが繰り返し出張るハメになり、「何度も出てきて恥ずかしくないんですか」という例のセリフへ繋がっていくことになる。

 『Fate/EXTRA Record』は『Fate/EXTRA』のリメイク作品で、「EXTRA発売10周年」の2020年に開発が告知されました。リメイクとはいえシナリオそのままで映像だけ差し替える、みたいな感じではなく「実際はCCC(続編)からの登場だけど設定としては無印の時点で存在していたキャラ」を本編に織り込んだりといったアレンジもしているらしい。しばらく音沙汰がなかったものの2022年に続報が到来、仮タイトルだった『Fate/EXTRA Record』が正式タイトルに決定します。2024年に発売予定を「2025年」と告知。しかし、開発の遅れから予定を「2026年春」に延期。予約も開始して、さすがに今度こそ出るのでは……いやまた延びるのでは……とファンが様々な意見を交わしていたところにこの「バンナムが外れる」というニュースが飛び込んできてブッ魂消たわけだ。

 ゲーム会社は大きく分けて二つあります。「開発(デベロッパー)」と「販売(パブリッシャー)」です。デベロッパーがゲームそのものを作って、それをパブリッシャーが大金かけて宣伝し、全国に流通できるよういろいろ取り計らう。パブリッシャーもデベロッパーとは別に開発部門を抱えているケースもあり、その場合は「販売と開発」というより「大手と下請け」みたいな構図になる。ほとんどの場合、お金を出しているのはパブリッシャーなので力関係は概ね「デベロッパー<パブリッシャー」です。パブリッシャーは詰まるところ「売れるゲーム」を作ってほしいから、デベロッパーにあれこれと注文を付ける。力の弱いデベロッパーはそれがどんなに理不尽な注文であっても簡単には断れず、様々な面で折れたり譲ったりすることになります。折れない、譲歩もしない……と対立が激しくなった場合、パブリッシャーは「首(デベロッパー)のすげ替え」を行って別の会社に開発を続けさせることもある。が、デベロッパーが下りずにパブリッシャーの方が下りるというのは前例がないわけではないにしろ異例であり、界隈がザワつきました。

 パブリッシャー変更に伴い、受け付けていた予約は一旦キャンセルになります。どこか別のところに委託して販売することになるのでしょうが、そもそも『Fate/EXTRA Record』がどの程度完成していたのかは不明(一昨年の時点で「ほぼ出来上がっていてテストプレーしている段階」という話はあったが、それにしては公開されている情報が少なすぎ)であり、「バンナムが下りなければ本当にこの春に発売できていたのか?」という疑問が残っています。大半のTYPE-MOONファンは「恐らくバンナムが下りなくても延期は避けられなかっただろう、というか『延期が避けられない』からこそバンナムは痺れを切らして下りたのだろう」と推測している。TYPE-MOONファンは『月姫』リメイクで待つことに慣れ切っているが、「告知から6年近く経ってもまだ発売されていない」のは普通に異常なんですよ。あの大作『ELDEN RING』でさえ最初のトレーラーを出したのは2019年6月、発売が2022年2月だから3年も掛かっていません。やらかし具合としては公開予定を半年も延期したせいで連動コラボの予定を組んでいた企業たちの梯子を外してしまった『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』とどっこいどっこい。「何度も延期して恥ずかしくないんですか」という感じです。何かと叩かれがちなバンナムであるが、さすがに今回は同情的な意見の方が多いようだ。

 詳しい内情はわかっていないが、バンナムもパブリッシャーとはいえある程度開発に携わっていた可能性があるので、今回手を引いたことで『Fate/EXTRA Record』の完成はますます遅れることになりそう。デベロッパーはノーツ(TYPE-MOONはブランド名)、より詳しく書けばノーツ内に立ち上げた新スタジオ「TYPE-MOON studio BB」が開発を手掛けています。新興スタジオということもあり、開発体制が整っていなくて作業が思ったように進まず、納期を守れなくなっているのでは……と予想する向きもある。どういう契約を交わしていたのかわからないから何とも言えないが、手を引く際にバンナムが投入していた資金を「回収」したり、途中まで出来上がっていたゲータを引き渡すために「条件」が付けられたり、何かしら金銭的な遣り取りが発生しているかもしれず、利益を回収するのが困難になっているかもしれない。「発売することによって得られる利益<ここから完成までに掛かる費用」と判断されたら最悪開発中止になる可能性もあります。延期しまくって、一時は「このままフェードアウトするのでは?」と不安がられたものの、いざリリースされると大ブームを起こした『ウマ娘』(ゲーム版)という先例もあるから、まだまだ望みを捨てる段階じゃない。でもあんまり楽観していられないな、というのも正直なところ。ファンは今のところ待つぐらいしかできない。待て、しかして希望せよ。

「戦車椅子-TANK CHAIR-」TVアニメ化、今秋放送 ティザーPVとビジュアル公開(コミックナタリー)

 また予想外なのが来たな……『戦車椅子』は元・凄腕の殺し屋だったけど妹を庇って瀕死の重傷を負い、ほぼ廃人になってしまった青年「平良凪」と妹の「静」、ふたりが活躍するゴア描写満載のアクション物です。凪は「殺意」を察知した瞬間だけ意識を取り戻すので、「殺意」が渦巻く裏社会で汚れ仕事を請け負い続ける。足腰が弱っているため車椅子に乗って戦うのが作品の特徴なんですが、「車椅子」は一つだけじゃなく、状況に合わせてパワーアップしたものが出てきます。悪趣味なノリが苦手な人にはオススメしにくいが、ブッ飛んだアクションが好きな人は一読する価値アリ。

 制作はポリピクこと「ポリゴン・ピクチュアズ」、『 シドニアの騎士』や『亜人』を手掛けたスタジオです。最近の仕事は『アイドルマスター シャイニーカラーズ』のアニメ、いわゆる「シャニアニ」なので「ポリピクかぁ……」という反応も散見される。ヒプマイの映画が26億を超えるヒットになっているのでそれを評価する向きもあるが、それ以外は『大雪海のカイナ ほしのけんじゃ』とか『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』ですからね。監督は「吉平“Tady”直弘」と「安藤裕章」のふたり、これまでのポリピク作品でよく見掛ける名前だ。どう考えても一般ウケする作風とは思えないので、どれだけコアな人気を稼げるかに掛かっていそう。

3月25日までの期間限定公開、『ヴァージン・パンク Clockwork Girl』

 「梅津泰臣」監督のオリジナルアニメ、期間限定とはいえ本編全部を上げるとは太っ腹だ。グロシーンとお色気シーンの一部は規制されているが、まぁそこは仕方ないか。『ヴァージン・パンク』というシリーズの1作目で、「Clockwork Girl」が章題に当たる。機械工学が好きで、「ソーマディア」(攻殻機動隊における「義体」のようなもの)のエンジニアになることが夢の少女「神氷羽舞(かみごおり・うぶ)」。幼くして両親を亡くし、児童養護施設で育ったが、突如銃を持った女が施設を襲撃する。彼女は賞金稼ぎ(バウンティハンター)で、違法ソーマディア(平たく書くとサイボーグ犯罪者)の首を狩りに来たのだと云う。お世話になった「園長さん」が犯罪者だと知ってショックを受けつつも、目の前で「園長さん」を殺したバウンティハンターに憎しみを抱き、羽舞自身もバウンティハンターとなって彼らの獲物を横取りする。初めて会った頃から羽舞に目を付けていたバウンティハンター集団「アルキメDEATH」(クソダサいネーミングにもほどがある……)の元締め「Mr.エレガンス」はしつこく勧誘してくるが、かつての恨みを忘れていない羽舞はけんもほろろに断る日々が続いていた。

 しかしある日、Mr.エレガンスは羽舞が油断した隙を衝いて銃撃。瀕死の重傷を負った彼女は昏睡状態に陥る。そして1年後、ようやく目を覚ました彼女は何の断りもなく脳以外の全身をソーマディアに改造されてしまったことを知り、激昂。Mr.エレガンスに詰め寄ってブチのめそうとするが、改造の際に自由を奪う処置が施されており、リモコン一つで動けなくなってしまう体になっていた。さながら緊箍児を嵌められた孫悟空。「少女趣味」のMr.エレガンスによって「永遠に14歳の乙女」としてメンテナンスを受け続けなければならなくなった羽舞は、怒りを呑み込んでひとまずはMr.エレガンスに従う道を選ぶ。唯々諾々と賞金首を狩る(比喩表現ではなく、ソーマディアに置き換えられない唯一の部位である脳味噌を含んだ頭部さえあれば生死に関わらず賞金が受け取れるため、物理的に首を持って行く)羽舞の望みは、「いずれMr.エレガンスを殺す」の一点のみ。自由を奪われ「クロックワーク・ガール(機械仕掛けのお人形)」にされてしまった女の、自分自身を取り戻す戦いが始まった……。

 一言でまとめると「サイス=マスターみたいな変態に人生を狂わされた女による『続・殺戮のジャンゴ』」。尺が40分弱しかなく、劇場公開された作品にしては短いが、かったるい心理描写や日常描写を削って本編の半分以上を戦闘シーンに費やしているため、アクション映画としての満足度は高い。サイボーグ犯罪者どもが腕をガシャガシャガシャ!と変形させて銃弾乱射したり小型ミサイルを巻き散らしたりと派手な銃撃戦を繰り広げます。とにかく映像が見ていて気持ちいいんですよね。梅津泰臣と言えば『A KITE』や『MEZZO FORTE』など18禁OVAでありながら激しいアクションシーンが売りの監督で、『ガリレイドンナ』や『ウィザード・バリスターズ 弁魔士セシル』といったTVシリーズはあまり当たらなかったが、海外でもマニアックな人気があることで有名。リアリティがある、というのとはまた違う、偏執的なこだわりが発揮された「動き」でこちらの脳をゾワゾワゾクゾクさせる。通常、ガンアクションはアニメよりも実写の方に分があるジャンルなんですが、「アニメならではの快楽」を追求したガンアクションといった趣で実写作品にはない特殊な栄養分を補給させてくれます。

 時間がない人はとりあえず動画の26分40秒あたりから再生してください。このアニメの大トロ部分をいきなり味わうことができます。いやぁ、期待していたけど期待以上の出来だった。梅津さん、もうとっくに還暦を過ぎてそろそろ70が近くなってきたのに、まだこういうアニメ作れるんだなぁ。「シリーズ」と謳っているから続編を制作する気も満々なんだろうが、これだけ凝っていると時間が掛かりそうだ。スタジオも「シャフト」だしな……まどマギ映画の新作を公開予定間際になって半年も延期したことでお馴染みの。

 それにしてもMr.エレガンスが突然凶行に走ったの、羽舞が「何者か」に狙われていることを察知して「それなら俺が先に……」と手を出した感じだったから、2作目以降では「羽舞を狙っていた何者か」がストーリーの軸になっていくのかな? 「乃愛・アンドリエット」や「ヴェスパ」など、キャラ紹介ページに載ってる子たちも顔見せ程度で活躍するシーンはない。せめてガンパンの最終章ほどは時間を掛けずに完結まで走り切ってほしいものだ。



管理人:焼津