2026年3月〜4月
2026-04-23.・FANZAで現在「10本で9500円」や「20本で18000円」といったまとめ買いセールが開催中、Lair Softのスチームパンクシリーズを揃えるチャンス! と、なんとなく宣伝してみる焼津です、こんばんは。
具体的な手順としては、FANZAの「PCゲーム」のトップページに「スプリングセール2026」というバナーがあるからまずここを押す。そして「まとめ買い」のリンクをクリック。「ブランド合同まとめ買い」の中から買いたい本数を選び、対象ソフトを選択するページに移行。「ブランドで絞り込む」というボタンがあるので、ここで「ら行」の「ライアーソフト」を選んで検索。そうするとLair Softの対象ソフトがズラッと出てくるから、あとは欲しいソフトの「選択する」をクリックしていって、規定本数分溜まったら「バスケットへ」を押して決済に向かうだけです。
スチパン作品を一個も持ってない人の場合は、『蒼天のセレナリアFVR』『赫炎のインガノックFVR』『漆黒のシャルノスFVR』『白光のヴァルーシア』『紫影のソナーニル』『黄雷のガクトゥーン』『黄雷のガクトゥーン SHINING NIGHT』『Steampunk Full-voice Fandisk』の8本をチョイスすればいいです。8本なので「10本で9500円」を選ぶと2本足りないが、そこらへんはまぁ好きなので埋めて貰えれば……シリーズ外だけどライターが共通していて一応「同一の世界」ということになっている『ANGEL BULLET』とか、初期の傑作『腐り姫』、新撰組女体化エロゲ『行殺新選組ふれっしゅ』、百合エロゲとして定評がある『サフィズムの舷窓〜an epic〜』と『屋上の百合霊さん 〜フルコーラス〜』、奈須きのこも絶賛した『Forest』、後半の展開が慌ただしいのが玉に瑕だけど「冒険が終わった後の人生」をエンドロールで綴る『SEVEN-BRIDGE』、中国の「四凶」を女体化した『マスクドシャンハイ 魔都拳侠傳』などなど。自分たちを「童話の登場人物」だと思い込んでいる患者たちのための隔離病棟「楽園」を舞台にした「フェアリーテイルシリーズ」は『フェアリーテイル・アンコール』と『フェアリーテイル・シンフォニー Another Side』が対象だけど、肝心の本編『フェアリーテイル・レクイエム』が対象外なのであまりオススメしない。ライアーソフト以外だと「ALcot ハニカム」のゲームなんかもイイですね。私が好きなのは『キミのとなりで恋してる!』とそのFD(ファンディスク)『キミのとなりで恋してる!〜The respective happiness〜』です。趣味全開でいいなら「XANADU(キサナドゥ)」の『ひめしょ!』を推したいところ。さすがに時代を感じる内容だけど、ハチャメチャなノリで好きなんですよ、アレ。シリアスとギャグがごっちゃになっていて、「蜘蛛の巣が生えたデッドストックマ〇コのクセに!!」や「マグロの女」を始めとした「移植不可能だろ、これ」という下ネタの数々。田中ロミオの傑作『最果てのイマ COMPLETE』もまとめ買い対象ながら、「ザウス」作品は5本までが上限なので「3本で3000円」か「5本で5000円」のパックで買いましょう。
あくまで「この機会にスチームパンクシリーズを揃えたい」という方向けの案内なんで、例えば『蒼天のセレナリアFVR』は絵が好みじゃないなぁ、とか、『Steampunk Full-voice Fandisk』や『黄雷のガクトゥーン SHINING NIGHT』は内容が薄いみたいだからちょっとなぁ、というのであれば外して貰っても構わないです。またいずれ同種のセールが開催されるだろうから、気が変わったらその時にまた買えばいい。『赫炎のインガノックFVR』『漆黒のシャルノスFVR』『白光のヴァルーシア』『紫影のソナーニル』『黄雷のガクトゥーン』、このスターターセットめいた5本だけでも充分楽しめるし、「5本で5000円」のセットで購入してください。ちなみにいくつかのタイトルに付いている「FVR」は「Full Voice ReBORN」の略で、要するに「フルボイス版」の意味です。通常版だとパートボイス(部分的にしか声が付いていない)なんですよね。ちなみにスチームパンクシリーズは上記の他にシリーズ第7弾の『瞬旭のティルヒア』、バッドエンド後の世界(歴代スチパン主人公が軒並み志半ばで散ったifワールド)を舞台にした小説作品『灰燼のカルシェール』、企画開始から10年経ってもまだ発売していない『緋星のバルトゥーム』があります。本来なら『緋星のバルトゥーム』の方がシリーズ第7弾になるはずだったんですよね……シナリオライターの「桜井光」がFGOに掛かり切りになっちゃって、本当に出るのかどうかもうわからなくなっています。もう諦めているファンもいるが、気長に待って行くとしましょうや。スチパンは他に『無色のウルタール』、『冥闇のケルネテル』、『深闇のセレファイス』といったモノもあるらしいが、このへんは現時点で公式サイトの類が存在しないから扱いに困る。とりあえずタイトルを表記するだけに留めておきます。
・「魔女と傭兵」2027年TVアニメ化!坂泰斗、早見沙織が出演 アニメ制作はエイトビット(コミックナタリー)
原作はライトノベルで、コミカライズ版もメッチャ人気あるから「アニメ化発表は秒読み段階に入っているだろう」と目されていた作品です。巨漢で、双刃の両手剣(ツヴァイヘンダー)を振るう傭兵「ジグ=クレイン」と、200年の時を生き延び、超常の業を振るう魔女「シアーシャ」。二人は戦場で出逢い、ジグはあと一歩のところまでシアーシャを追い詰めたが、肝心の依頼主が直前で死んでしまったため、このままシアーシャを仕留めても賞金が貰える見込みは薄い(誰も魔女の顔を知らなかったので、彼女の首を持って行ってもそれが魔女であると証明できない)……と刃を引く。情ではなく金と依頼で動くジグの合理主義を見込んで、シアーシャは彼を護衛として雇った。二人が向かうのは、発見されたばかりの新大陸。そこでなら、誰もシアーシャの過去を気にしないだろう。かくして魔女と傭兵のコンビは海を越え、遥々新大陸へと足を踏み入れたが……って感じのファンタジーです。
要は「魔女と傭兵のふたりぐらし」です。あくまで依頼主と護衛の関係でしかないが、だんだん雰囲気が夫婦っぽくなっていくんですよね、阿吽の呼吸で通じ合っているから。生きることに飽いて、ジグに殺されかかった時もどこか諦めたような風情だったシアーシャさんながら、日に日にジグへの執着が増していくんだよなぁ。自分が殺されかかっても「おっと危ない」くらいなのに、ジグに危害が加えられるとぶちギレ金剛状態になる。シアーシャさんが本気出すと広域殲滅が可能だから、「らめぇ! 街が壊れひゃうのぉぉぉ!」な惨事が顕現します。シンプルに怖い。読者のほとんどが「敵と戦うよりシアーシャさんを怒らせる方が怖い」と口を揃えて太鼓判を押すのもむべなるかな。
なにぶん稼業が「傭兵」なので荒事も多く、ストーリーの大半が戦闘シーンで占められていますが、「俺はこれが書きたいんだ!」とノリノリで書いてるので筆が乗りまくっています。逆に言うと、戦闘シーンにあまり興味がない人は「話が動かねぇな……」と退屈するかもしれません。コミカライズの方はバトル描写をかなり簡略化しているので、戦闘シーンをじっくり読みたい人は小説版、ざっくりでいい人は漫画版、と棲み分ければ宜しいのではないかと。問題はアニメがどっち寄りになるか、ですね……小説版の描写を再現すると作画カロリーがとんでもないことになるから、漫画寄りになるかしら?
ファンタジーなのに「マフィアの抗争」が軸になったり、ファンの間で最強議論する際に「下剤」がTier表の上位に来たり、良くも悪くも「よくあるなろう系」からはズレた内容なのでハマるかハマらないか、人によって温度差が激しいと思います。小説版2巻の表紙を飾る褐色エルフ「イサナ」の見た目に「おっ」と惹かれるモノを感じる人にはオススメです。このイサナちゃんをボコって身ぐるみ剥ごうとしたりする。いや、結局未遂なんですけど……ともあれ九十九乱蔵的な、フィジカルの強い巨漢主人公が真っ当に活躍するフィクションいいよね……。
ジグ役の声優は「坂泰斗」、最近だと「お隣の天使様」の主人公「藤宮周」を演じていますね。シアーシャ役の「早見沙織」は、もはや解説不明の売れっ子「はやみん」です。最近だけでも『超かぐや姫!』の「月見ヤチヨ」役とか、「逃げ釣り」のサブヒロイン「アイーダ・アメーティス」役とか、『魔術師クノンは見えている』の主人公「クノン・グリオン」とか……『黄泉のツガイ』にも、チョイ役ながら「オシラサマ」役で出演していました。ちなみに個人的なシアーシャの声優イメージは「石川由依」でしたが、はやみんで不満ということではありません。制作は「エイトビット」、過去に『IS(インフィニット・ストラトス)』や『東京レイヴンズ』などのラノベアニメ、『ワルキューレ ロマンツェ』や“グリザイア”三部作などのエロゲアニメを手掛けた有名どころです。今だと「『転生したらスライムだった件』や『ブルーロック』のスタジオ」と書いた方が通りはいいかな。監督は「江崎慎平」、Production I.G出身で『ギルティクラウン』や『進撃の巨人』にも関わっているらしいが詳しいことはわかりません。PVを見た感じだと「作画がスゴい」と言われるタイプのアニメじゃなさそうだが、大きく崩れることもないかな? 地味なストーリーを淡々と丁寧にやるタイプなので、海外でも安定した人気が狙えるかもしれない。放送が待ち遠しいです。
・年の差ミステリーラブコメ「ペンと手錠と事実婚」TVアニメ化、特報PV公開(コミックナタリー)
あ、アニメ化なんだ。内容的にドラマ化かもと思ってた。喋れない女子高生「梔子鶫(くちなし・つぐみ)」が探偵役で、刑事の主人公とコンビを組み、スケッチブックで会話するんだけど「絵が下手過ぎて推理の内容を汲み取るのに苦労する」という若干コメディ要素が混じった推理マンガです。ヒロインが喋らないからお世辞にもアニメ向きとは言い難いが、そんなこと言ったら禰豆子だってほぼ喋んないしな。恐らく息遣いだけで演技するタイプでしょう。
事件自体は割と小粒なものが多く、路線としては金田一少年よりも名探偵コナンに近い。ヒロインは主人公(40歳で女っ気がまったくないヤモメの刑事)に惚れており、真顔でグイグイと結婚を迫ってくる。最初は突っぱねようとした主人公ですが、だんだん押し切られてマジでこのまま結婚しそうな雰囲気になっていくのが面白いです。白泉社のWebコミックサイト「ヤングアニマルWeb」に会員登録すればだいたい読めるので、気になる方は目を通してみてください。
やっとアニメ化か……実写版は別々のキャストでドラマ化および映画化しているんですけど、「どう見てもイメージと合わないだろ」って配役だったりして評判散々でした。原作人気からすると、とっくにアニメ化していてもおかしくない作品(1巻が出たのは2011年、なんと15年前)だから、ファンは驚くよりも「やっとか……」という感想に落ち着くだろう。私はずっと積んでるので内容知りません。作者の「三上延」がかつて「渡瀬草一郎」と並ぶ「幼馴染みヒロインが勝つ作家」枠だったことは知ってる。『ダーク・バイオレッツ』……『シャドウテイカー』……それ以降は読んでないな。とにかく、メチャクチャ売れてる作家なのに一度もアニメ化したことがない、という希有な立ち位置の人でした。ようやく「アニメ化作家」の仲間入りだ。ご本人曰く「かなり前からアニメ化の企画はあった」とのことで、実現までいろいろと難航したんでしょうね。倉田英之との共著『読書狂の冒険は終わらない!』が面白いので、興味がある方はご一読を。
おっ、“狩人”シリーズの新刊か。私、このシリーズ好きなんですよね。新宿署のマル暴刑事「佐江」が毎回登場するシリーズで、当初は脇役みたいなポジションがだんだん主役として確立していくところも含めて気に入っています。1996年の『北の狩人』、2002年の『砂の狩人』、2008年の『黒の狩人』、2014年の『雨の狩人』、2020年の『冬の狩人』と、これまでずっと6年周期で出ていましたが、今回もやはりその周期から漏れることはなかった。あまりの安定感に感心してしまうことしきりだ。
しかし、書籍の価格がドカンと一気に上がってるのが切ないですね……消費税を抜いた本体価格だけ見ると、『北の狩人』が341ページで1700円(記憶が曖昧だけど、確かこれだけ二段組だったのでページ数の割に文字量が多い)、『砂の狩人』は上巻が422ページ、下巻が397ページで各1667円、『黒の狩人』は上巻が409ージ、下巻が434ページで各1700円、『雨の狩人』は602ページで1800円、『冬の狩人』は568ページで1800円と、96年〜20年の24年間は比較的価格変化が少なかったのですが、『柩の狩人』はAmazonの情報によると644ページで過去最厚だから仕方ないとはいえ2400円と跳ね上がっています。まぁ6年に一度の新刊だから買いはしますけど、近い日に比嘉姉妹シリーズの新刊2つ(『ざんどぅまの影』と『ととはり屋敷』)や『マルドゥック・アノニマス11』、メフィスト賞作品の『大江戸フューチャーズ』も出るからキツなぁ。特にマルドゥック・アノニマス、文庫で非翻訳作品なのに本体価格1300円(ボリュームは416ページ)って。さすがに悲鳴の一つも挙げていいですよね?
・『超かぐや姫!』興行収入20億円+動員数100万人を突破。当初の「1週間限定&わずか19館」の上映とは何だったのか(電ファミニコゲーマー)
遂に20億の大台に乗ったか……「TVアニメの劇場化」ではない、オリジナルのアニメ映画としてはジブリ作品、新海誠監督作品、細田守監督作品に次ぐレベルです。10億超えてる作品はまだいくつか他にもあるんですが、20億以上となると比較対象がこの3つになってしまうんですよ。しかも大抵は大規模公開でTVCMバンバン打って〜みたいな、ブランド力とコマーシャルの合わせ技で押し上げていくのに対し、「たった19館から拡大していって20億」という動きは、どちらかと言えば実写邦画のカメ止め(『カメラを止めるな!』)に近い。さすがに30億は厳しいかもしれないが、この勢いなら25億は突破できるかも。この25億というのは劇場版ヒプマイの数字です。あれも公開規模は小さかったのに熱狂的なファンの支持でロングランした作品である。
ネットでは当初の「1週間限定」という告知が嘘すぎて未だに擦られている(「1週間限定公開、9週目――」みたいな調子で)が、今までのネトフリアニメ映画の劇場公開が惨憺たる有様だったことを考えると弱腰の展開だったことは仕方ない面もありますね。これまで最高でも2億届かなかったのに、一気に十倍以上なんだもんなぁ。監督とプロデューサーの新しいインタビュー記事も公開されており、「今回のヒットはYouTubeやSNSで気になったらすぐワンクリックで、Netflixで見られる状態で多くの人が観てくださって、そこからの口コミ。このフォーマットだからこそ実現できた。劇場上映を先にしていたらそうならなかったかもしれない」と語っている。オリジナルアニメは評価される以前に「認知される」のが難しく、もし劇場公開前提でやってたら苦戦していたでしょう。SNSで絶賛されている「パリエト」こと『パリに咲くエトワール』は興行的にかなり苦戦していて、累計3億円届くか届かないかの域で奮闘している。初動の数字を鑑みるに、もし高評価が広まらなかったら1億円前後で終わっていただろうし、これでもかなり健闘している方なんですよ。鬼滅やコナンというビッグタイトルのせいで世間の興収に対する感覚はすっかり狂ってしまったから、「たった3億?」という反応になってしまう……地域によってはもう上映終了していますが、まだ粘り強く興行を続けている劇場もあるので頑張ってほしいものだ。
・『Dies irae 〜Amantes amentes〜』のOTHER STORY(追加シナリオ)について
Dies iraeのAmantes amentesに実装された「OTHER STORY(追加シナリオ)」のプレーするタイミングについて解説した文章です。「今頃!? Aa出たの14年前だぞ!?」と驚かれてしまうかもしれません。御存知かもしれませんが、今SNSでは空前のDies iraeブームが訪れていまして……キッカケは今月7日頃、いつも通り神座シリーズのファンが「『Dies irae』の厨二パワーはすばらしいぞ」と布教活動を行っていて、私も「春だなぁ」と恒例行事を眺めるような感覚で傍観していたのですが、あれよあれよという間に拡散されて話が大きくなっていった。どうも鳥海浩輔や諏訪部順一、谷山紀章といった声優ファンの中にも『Dies irae』を知らない人が多く含まれていたみたいで、「こんな作品あったのか!」と驚きを持って迎え入れられたのです。なんだかんだ『Dies irae』も古いゲームですからね、初めてタイトルが公開されたのは2006年、もう20年前だ。それだけ経てば知らない人が多いのも当然で、今更ながら「再発見」されて若い層を中心に「流出」していってるわけです。
少し前に『ブルーアーカイブ』で『Dies irae』を仄めかすような演出があった件で一度バズっていたから、下地はありました。恐らくこの時に界隈外の人たちも、明確に記憶できたわけではないにしろ、『Dies irae』というタイトルを下意識へ刷り込まれたのでしょう。その伏線が効いて、「いつも通り」の布教活動であるにも関わらず信じられないほどバズった。PC向けのDL版を独占しているDMMの週間ランキングでディエスと神咒とイカベイが仲良く3位・4位・5位で並ぶという目を疑うような事態に……(ちなみに1位はKeyの新作『anemoi』で2位はドルフロ2のボイスドラマ)ちょうど半額セール中だったのも追い風になったんだろう。冗談抜きでセールスの数字が伸びているし、新規の「Dies iraeの〇〇って何?」という質問に対しシュバッてきた古参ファンが嬉々として答える光景があちこちで繰り広げられている。ハッキリ言ってアニメ化した時よりも話題になっています。皮肉すぎる!
今のSNSはコミュニティ分散型というか、「クラスタ」の概念が曖昧になっており、昔みたいに一箇所の掲示板やチャット場に集まってあれやこれやと議論を重ねる形式ではなくなった。それこそ「いつメンとの雑談」感覚で投稿したコメントがアルゴリズムの波に乗って拡散され、思いがけずバラバラに散らばっていた「かつてのファンたち」が、それこそ「すごい数の信者が集まってきている」(『DOKURO―毒狼― 』)みたいな勢いで集結し、お祭り騒ぎに発展する。私も最近、いつもの独り言のつもりで「『漆黒のシャルノス』はいいぞ」といった趣旨の呟きを投稿したら思いがけずバズってビックリしました。令和にもなってスチームパンクシリーズ関連の呟きがまさか30万View超えるとは……ちなみに私の普段のポストは2桁Viewです。Liar-soft公式アカウントのシャルノスOPムービー紹介も20万Viewくらい行ってるからマジで注目されているんだな。
とにかく、せっかく波が来ているんだからこれはもう「空前のDies iraeブーム」に便乗するしかないな、ということで急遽OTHER STORY(追加シナリオ)の「推奨するプレーのタイミング」について解説する記事を書こうと思ったわけですが、書いているうちに細部が気になってきてAaのHD版を引っ張り出したり、「あれ? これってファーブラの時からだっけ?」と気になって実家に立ち寄った際に昔のパソコンを立ち上げてチェックしたり、ちょっと執筆に時間が掛かり過ぎて便乗するタイミングを逸してしまった気がする。とりあえず書いたので公開しときました。このDies iraeブーム、なるたけ長く続くといいですね……毎日毎日ニュービー爪牙の新鮮な悲鳴と呆然自失気味な感想が届けられてくるの、幸せ過ぎる。何なら他の神座シリーズや相州戦神館學園シリーズ、新西暦サーガや諸々のlightゲーにもブームが訪れてほしいですね。OPムービーに戦闘機しか出て来ない異常エロゲこと『群青の空を越えて』とか。どんなにバズってもlightが復活することはもうありませんが、少しでもパンテオンの再起に弾みがつけば。
2026-04-14.・今頃『ぬきたし THE ANIMATION』を見て爆笑した焼津です、こんばんは。
去年の夏アニメとして放送された作品。原作はエロゲーで、あんまりも際どい要素が多いため地上波での放送は無理だと思われたが、規制を掛けまくったおかげで何とか放送されたという曰く付きの一本。あまりにもピー音が多過ぎて聞き取れないセリフが大量にあるのが難点です。
舞台は架空の島「青藍島」。「あおかんじま」ではなく「せいらんとう」です。もともと島の出身だったが本土に引っ越しして、両親の死をキッカケに島へ戻ってきた「橘淳之介」。過疎化が進む青藍島を救うためヤケクソ気味に制定された「ドスケベ条例」の影響で島中至る所で大っぴらに性行為(ドスケベセックス)が繰り広げられており、妹である「橘麻沙音」ともどもカルチャーショックでドン引きする。しかし、島民の中にもドスケベ条例を快く思わない者たちがいた。「乱交を推奨し、ただただ快楽だけを追い求める、愛のないドスケベセックスはイヤだ」と。淳之介は同志たちと反交尾勢力「NLNS(No Love No Sex)」を結成し、ドスケベのビッグウェーブに立ち向かっていくが……という、「エロゲーにしてもやり過ぎだろ!」って設定の話です。
淳之介は巨根で「他人に局部を見られる」ことにトラウマがあり、また妹の麻沙音は同性愛者で「男女のドスケベセックスを推奨する」青藍島においては「非性産的行為」と見做され迫害の対象になり得る(ドスケベ条例、実態はどうあれもともとは「少子化対策」という名目なので……)。「汚い『車輪の国、向日葵の少女』」とも言うべきツッコミどころ満載の内容ながら、主人公とヒロインが悩みながらも己の信念を貫こうとする姿はアツく、熱血アニメ的な面白さは充分にあります。淳之介役の「柳晃平」とヒロイン「片桐奈々瀬」役の「石上静香」が放送前に結婚する、いわゆる「ぬきたし婚」と呼ばれる深夜アニメ史に残る慶事が発生したのもむべなるかな。ジョークでも何でもなく本当にアニメの収録時が初対面だったらしく、「馴れ初めはぬきたし」「紛れもなくぬきたし婚」と本人たちも認めています。
ただ、ぬきたしのゲーム版(1作目)は2018年発売で、この当時奈々瀬の声を当てていたのは「柳ひとみ」という別の声優なんですよね。サンプルボイスを聞いてもらえるとわかるのですが、ずっちの別名義とか「生き別れの双子()」とかではなく、正真正銘本当に「別の声優」です。アニメ化の際になぜか声優が変更されている。生徒会長の「冷泉院桐香」は担当声優の「花澤さくら」が2022年に声優引退しているため已むなく「田澤茉純」に変更となっていますが、柳ひとみは別段引退しておらず、奈々瀬の声優変更に関しては「経緯不明」としか言いようがない。噂レベルならいくつかありますけどね……柳ひとみは表名義で声優事務所に所属していて、「裏名義でエロゲーに出演する」ことには目を瞑ってくれたけど、表名義でこんな際どいアニメに出演するのはダメだった――という、いわゆる「事務所NG」説が有力視されている。とにかく、石上静香はアニメ化が決まるまでぬきたしと縁がなく、淳之介もゲームでは声が付いていなかったことから「ぬきたしのアニメ化が二人を結びつけた」ことになるのだ。
内容は徹底してふざけているのにアニメーションの質は高く、エロゲー原作アニメとしては異例なほど高クオリティの仕上がりになっています。制作は「パッショーネ」、かの『異種族レビュアーズ』や『異世界迷宮でハーレムを』を手掛けたところだ。今後は『FX戦士くるみちゃん』や『生徒会にも穴はある!』を放送する予定。さておき、ぬきたし本編において奈々瀬は「超弩級のビッチ」として恐れられていたが、シナリオの後半で「実は処女」であることが全島民に対してバレてしまう。公衆の面前で無理矢理処女を散らされそうになっている奈々瀬を救いに行く――というのが物語のクライマックスで、まぁ無事なんとか救出できるのですが、「ビッチじゃなかったことがバレたんだよね? 今後どうすんの?」と思ったらモブが「ビッチすぎてSEXの回数が多すぎた結果、数値がオーバーフローして処女に戻っただけ」と言っていて噴いた。それで納得するのかよお前ら!
・『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』TVアニメが2027年1月よりスタート!(電ファミニコゲーマー)
えっ、蓮ノ空結局TVアニメ化するの!? 予想外でちょっと不意を打たれてしまった。『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』はラブライブ・プロジェクトの一つで、2023年頃からスタートしています。石川県金沢市に位置する、という設定の架空の全寮制女子校「蓮ノ空女学院」を舞台に、「スクールアイドルの世代交代」をテーマに据えて展開していく。蓮ノ空は「ラブライブ!の強豪校」であり、100年以上の歴史を誇る……物凄く分かりやすく書くと「宝塚音楽学校」めいた場所です。主人公「日野下花帆」は103期生で、先輩が102期生、後輩が104期生や105期生といった感じ。これまでのラブライブ作品は「上級生・同級生・下級生」の隔たりを越えてユニットを結成することもあったわけですが、蓮ノ空は「先輩と後輩」が明確に区切られています。なぜなら、先輩たちが卒業した後も在校生たちのアイドル活動は続くからだ。
蓮ノ空は「リアルタイムと連動して時間経過する」のも特徴の一つで、2023年に入学した花帆ちゃんたち103期生は2026年の春、遂に卒業の時を迎えます。「103期生の卒業記念」として今年5月に公開されるのが『映画 ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ Bloom Garden Party』。そう、主人公の花帆ちゃんは来月公開される劇場版で卒業しちゃうわけです。いきなりエピローグなんです。だから「結局TVアニメ化するの!?」と驚いたんですよね。てっきり、TVアニメをやる予定がないからせめて卒業の晴れ舞台だけでもアニメ化しよう、ってことなのかと早合点していました。103期生が卒業した後は新たに106期生が入ってきますが、さすがにもうリアルタイムと連動させるのはキツいのか、「第2章 106期」は2027年1月スタートという予定になっている。アニメの放送を合わせているということは、TVでやるのは106期生の話なのか? 詳しいことは続報待ちです。
……と、ここまで原稿を用意して、手直しした後にアップロードしようと推敲していたのですが。
・『Link!Like!ラブライブ!』6月30日12:00をもってサービス終了。資金繰りの悪化で主要コンテンツ制作体制の維持が困難に(電ファミニコゲーマー)
いきなりのサ終告知に目が点になりました。終わり? お前ら本当にこれで終わり……?? 終わり……!? 確かに蓮ノ空はメチャクチャ閉じコン化していてどんな施策を打っても新規が流入せず「アプリの収益がヤバいらしい」という噂は漏れ聞こえていましたが、まさかTVアニメの放送まで保たないとは……「志半ばでサービスを終了せざるを得ない事態となりました」と公式垢がコメントしているくらいなので本当に不本意な形でのサービス終了なのだろうけど、シナリオチームへの通達も数日前ということだからスタッフ的にも「寝耳に水」なのでしょう。聞いた話によるとアプリを運営していた3年間、赤字に次ぐ赤字で積もり積もった負債額は100億円以上に及ぶとか。
あくまで『Link!Like!ラブライブ!』がサ終するだけで、5月公開予定のアニメ映画や来年1月に放送予定のTVアニメが中止になったりはしないとのことだから、蓮ノ空のプロジェクト自体が完全に畳まれるわけではありません。ただ、旗艦(フラグシップ)であるアプリが沈んだとなると「プロジェクトの先行きに暗雲が立ち込めている」と表現するしかない。これでラブライブ関連のアプリはすべて終了したことになりますね……主にYouTubeで展開している新規プロジェクト『イキヅライブ!』のアプリが新たに出てくる可能性もありますが、『学園アイドルマスター』が好調なアイマス・プロジェクトや、「ガルパ」が続いていて今年「アツドリ」も別枠として立ち上げるバンドリ・プロジェクトとは明暗が分かれた形になる。今の中高生からするともう、ラブライブは「なんか昔流行ったアニメ」ぐらいの感覚なのかもしれない。ロボアニメで言うとマクロスみたいな立ち位置というか。
TVアニメ以降の展開はどうなるのか? という懸念もありますが、もっとも差し迫っているのは「第2章 106期」がどうなるのかって問題ですね。アニメが106期生の話ならまだしも、そうじゃなかったら「殻を破ることができず卵の中で息絶えていった小鳥たち」になってしまう。既に書き上がっている未発表シナリオや発注済みの素材もあるらしいし、何とかして発表できるようにしてほしいです。
・『うたわれるもの ロストフラグ』、物語記録保存領域(ストーリーアーカイブス)制作決定!
具体的な仕様はまだ不明ですが、過去に配信したストーリーを読み返せるようになる模様。「メインストーリーおよびイベントストーリーのフルボイス化、ならびに新規ストーリーの追加などを検討」とあり、本気で全シナリオに声を付けるなら容量がとんでもないことになりそう。ロスフラは基本的にボイスなしのシナリオを配信して、後から一部だけボイス付きにするというマギレコ方式でやっていましたが、本編ストーリー・イベントストーリー・キャラストーリーのうち本編と重要イベントぐらいでしたからね、声が実装されたシナリオ。
「ストーリー版」と言い切っているということは戦闘パートや育成要素は全部削除になるのかな。既にiOSやAndroidで配信されている「うたわれ」三部作(ゲームパートをカットしてストーリー部分だけに絞ったアプリ)みたいになるのか、それとも「ゆゆゆい」みたいにコンシューマ向けの移植みたいになるのか……「新規ストーリーの追加」と謳っているから、内容次第では買ってもいいかな、という気持ち。ロスフラのシナリオは、舞台となるロスフラ世界(現実世界から切り離され、四方を霧に包まれたネオ九州)の支配者「織代」の正体を巡る第一部が終わって、織代の支配から脱した各國の皇(オロ)たちが干戈を交える群雄割拠の戦國時代に突入する第二部へ移る……はずだったが、サ終によって第二部の内容は大幅にオミットされ、「なんかよう知らんが大戦は終わった」「勝者はおらず、和睦によって決着」「世界を鎖していた霧が晴れた」と爆速でエピローグに到達して呆然。新規ストーリーではこの端折りまくった第二部の内容を補完するのか、それとも「霧が晴れた」以降の物語を綴るのか。差し当たっては続報待ちです。
・『テメレア戦記9 ドラゴン同盟』刊行、20年に渡る架空戦記ファンタジー、遂に完結
「もしこの地球にドラゴンが存在して軍に配備されていたら、ナポレオンは英国本土を侵攻していたのではないか?」というifに基づいて展開する海外版の架空戦記小説です。作者の「ナオミ・ノヴィク」はアメリカ人で、これの他に「デスゲーム版ハリー・ポッター」「アメリカ版『魁!!男塾』」とも言うべき“死のエデュケーション”3部作、数多の賞を獲った単発作品『銀をつむぐ者』などを手掛けている。かつて「ピーター・ジャクソン監督(ロード・オブ・ザ・リング撮った人)によって映画化する企画が動いている」という話もあったが、最近聞かないところをみると立ち消えになったのかな……(検索中)……2016年に著者のもとへ権利が戻ったらしい。
ハリウッド映画、やたら「映画化決定!→全然続報が届かない→有耶無耶」というパターンが多いけれど、これは「映像化権が転売できる」というアメリカ特有の事情が絡んでいます。まずヒット作や話題作が現れると原作側と交渉して映像化権(契約によって「ドラマのみ」「映画のみ」「両方」など細かく分かれている)を買い取り、もっと人気が出るまで待って程好く高騰してから他の業者に転売する……という稼業で食っている映画関係者がいるワケだ。この結果、映像化権だけが市場で遣り取りされて実現に至らず延々と塩漬けされる作品が出てくる。あまりにも映像化されないことにキレた原作者が権利を買い戻し、「本当に映像化するつもりのところ」へ売る――という珍事も発生しています。
具体例としては「マイクル・コナリー」のケースがある。コナリーは「ハリー(ヒエロニムス)・ボッシュ」シリーズで有名な作家で、1992年に出した1作目と1993年に出した2作目、そしてボッシュを主人公にしたオリジナル作品の映像化権を1995年にパラマウントへ売ったのですが、15年経っても全然動きがないので痺れを切らして2010年に権利を買い戻し、別のところでドラマ化されています。なおボッシュが出て来ない別の作品はちゃんと映画化されている(2002年の『ブラッド・ワーク』と2011年の『リンカーン弁護士』)。売った金額よりも買い戻した時の金額の方がずっと高かったらしいので、「よく考えず安易に映像化権を売るのはやめた方がいい」という教訓を残す結果になりました。
こういう事情もあって、ナオミ・ノヴィクは期限付きでピーター・ジャクソンに映画化権を売って、10年経っても実現しなかったから権利が手元に戻った……という経緯のようです。やはり、向こうでも映像化権が延々と転売される状況にウンザリしている作家が少なくないんでしょうね。そんな『テメレア戦記』はかつて「ヴィレッジブックス」という出版社から翻訳版が刊行されていましたが、途中で吸収合併されて消滅したため、7巻以降はハリポタの出版社として有名な「静山社」が出しています。静山社はシリーズ全体の翻訳権を獲得したが、1〜6巻は文庫版を出すだけに留め、ハードカバー版の再販は行っていない。このためハードカバーで全巻揃えようとすると途中でブックデザインが変わるというコレクター泣かせの状態に陥っている。比較的旧バージョンに寄せたデザインだから「全然違う」というほどでもないが、巻数のローマ数字表記がアラビア数字表記になっていたりと細かい部分が異なるんですよね。まぁ、完結まで刊行されただけでも御の字ではある。なお、「完結」はあくまで「ナポレオン戦争を軸にしたストーリー」であって、「同一の世界観を使った関連作」は今後も出るかもしれないとのこと。
ちなみに、ヴィレッジブックスという「今は存在しない出版社」も成立から消滅までの経緯が結構複雑。もともとは「ソニー・マガジンズ」というソニー・ミュージックの子会社が海外小説の翻訳本を出すときの文庫レーベルとして「ヴィレッジブックス」を作った(だいたい2000年頃)のですが、ソニー・マガジンズが2006年に書籍部門を「ウィーヴ」という出版社に売却、このとき「株式会社ヴィレッジブックス」が出来てウィーヴの子会社になります(なおソニー・マガジンズは2012年に会社統合に伴って消滅)。『テメレア戦記』の翻訳版が刊行され始めたのはちょうどこの頃。2011年に株式会社ヴィレッジブックスは親会社のウィーヴに吸収合併され、「独立した一出版社」から「ウィーヴの一部署」に格下げとなる。2019年、今度はウィーヴが親会社の「フリュー」に吸収合併され、ヴィレッジブックスは「ウィーヴの一部署」から「フリューの一部署」に変遷。このとき『テメレア戦記』は1巻だけ増刷されたので、ハードカバー版『テメレア戦記』1巻に関してはヴィレッジブックス版とフリュー版の2種類があります。2巻以降が増刷されなかったのは、まぁ単純に売れなかったんでしょうね。その3年後の2022年に「事業継続が困難」という理由で出版事業からの撤退を宣言。ソニー・マガジンズからの独立後、16年に渡る歴史に幕を引きました。
・映画の『WEAPONS/ウェポンズ』を観た。
去年(2025年)に公開されたアメリカのホラー映画です。監督および脚本は「ザック・クレッガー」、元コメディアンで2009年に『お願い!プレイメイト』というコメディ映画で監督デビューした……らしいが、この映画はよく知らない。2022年に『バーバリアン』というホラー映画も監督しており、これは観たことがあります。グロいシーンが多くてなかなか楽しかった。『WEAPONS/ウェポンズ』は3本目の監督作品に当たり、4000万ドル弱(日本円に換算すると60億円前後)というハリウッド映画にしては比較的低予算で作られた映画ながら全世界興収が2億7000万ドル弱(日本円に換算すると420億円ぐらい)のヒット作となりました。全米公開が8月で、この時点だと日本での公開予定はなかったのですが、「英語圏でヒットを飛ばしている」という情報が伝わってきたため11月に緊急公開される運びとなりました。緊急すぎて公開規模がメチャクチャ小さく、地元では上映されず……ネットで評判を漏れ聞いて「観たい!」と歯噛みしましたよ。アメリカ本国での評価も高く、アカデミー賞も受賞しています。獲ったのは「助演女優賞」。誰が獲ったのかは後述する。
舞台はペンシルベニア州の小さな町。ある男の子がこそこそと囁く。ちょっと前にこの町でたくさんの人が死んだんだ。でも、事件は揉み消されて全部「なかったこと」になった……と、いきなり結論から明かしてきます。発端は水曜日の朝、小学校の教師「ジャスティン・ギャンディ」はいつも通り授業を行おうと受け持ちの教室に向かった。しかし、教室はもぬけの殻……いや、たった一人、「アレックス・リリー」だけが登校している。体が小さく、気弱で、よくイジメられていた繊細な少年。ねぇアレックス、他の子たちはどうしたの? ――クラスに在籍する18人の子供のうち、17人が一夜にして姿を消すという異常事態に町中が蜂の巣をつついたような大騒ぎとなった。刑事たちはジャスティンに事情を尋ねるが、彼女は途方に暮れるばかり。「子供たちはみんな示し合わせてどこかに向かったんだよな? ただの悪ふざけだよな?」とアレックスに訊いても彼は俯いて「知らない」と答えるのみ。防犯装置やカメラの映像から、子供たちが「自主的に」家を飛び出した時刻は深夜2時17分頃と判明したものの、その行方を突き止めることはできなかった。学校は捜査のため一時休校となったが、いつまでも残された子供たちを放置するわけにも行かず、1ヶ月後に再開の運びとなる。収まらないのは子供が帰ってこないことに苛立つ親たち。ふざけるな! 何があったのかいい加減説明してくれ! なぁ、ギャンディ先生、あんたは何か知ってるんだよな? 俺たちに隠していることがあるんだろう! 詰め寄る保護者たちに対し答える言葉を持たないジャスティンは、「飲まなきゃやってらんねぇ」とばかりに酒に溺れるが……。
小学生たちの集団失踪事件をフックに、「町の醜聞」に切り込んでいくほんのりミステリ仕立てのストーリーで観ていてワクワクします。結論はあらかじめ語られているのに、なんだろう、この真相がうっすらと見えていても全容が掴めない感覚。痒いところは分かっているのに掻くことができない、良い意味で隔靴掻痒のムードに満ちた映画です。ネタバレ抜きで魅力を伝えるのは難しいし、もう公開から結構経っているのでここから先はネタバレありでどんどん語っていきます。観る気はある方はブラウザを閉じてさっさと『WEAPONS/ウェポンズ』を再生しちゃってください。
この映画はいわゆる「群像劇」のスタイルで撮られており、ある程度話が進むと「次の視点」に移ります。最初の視点は教師のジャスティン、担当クラスが丸ごと消滅した(アレックスは失踪してないけど、さすがにマンツーマンで授業を続けるわけにもいかず他のクラスへ編入した)事態に呆然とし、学校側からも「ほとぼりが冷めるまでは大人しくしてくれ」と余計な行動をしないよう釘を刺されている。町民からは疑惑の目を向けられ、車にペンキで「WITCH(魔女)」と落書きされる始末。しかしそれで大人しく縮こまるようなキャラじゃないジャスティンは、唯一の手掛かりであるアレックスに接触しようとします。直接彼の家に行って呼び鈴を鳴らすが、誰も出て来ない。窓から家の中を覗き込もうとすると、なぜか窓という窓に新聞紙で目張りがしてあった。野次馬やマスコミへの対策にしても、なんか変じゃないか? といった具合に「アレックスの家」が物語の焦点となっていくわけです。
第二の視点は失踪した生徒の保護者、「アーチャー・グラフ」。彼は息子の「マシュー」がどこに行ったのか知りたい一心でジャスティンに付きまとう。その一方、防犯カメラに残っていたマシューの映像を見返し、彼の向かった先を突き止める手掛かりが何かないかと目を皿にする。家を飛び出したマシューは道なりに走っていくのではなく、まるで「目的地へ真っ直ぐ向かっている」かのように躊躇なく道路を横断していた。目的地が直線方向にあるのだと仮定するなら、他の失踪生徒たちが向かった方角と突き合わせて交点を導き出せるのでは? 何かが掴めそうなアーチャー。交点を探している最中、ジャスティンの車を見掛け、「今度は何か情報を吐くまで逃さない!」と圧を掛けるが……「またしても何も知らないジャスティン」はうんざりしながらアーチャーと押し問答を繰り広げている最中、視界の端から見覚えのある誰かが走ってくるのを捉える。「あれは……マーカス?」 職場の上司である「マーカス校長」は完全に理性を失った状態で彼女に襲い掛かってきた! と予想外の方向から新展開始まります。もうこのへんまで来ると「観るのやめらんない」感じになりますね。
で、この後「ポール」「ジェームズ」「マーカス」と視点が切り替わっていって、マーカス校長のところでようやく真打登場となる。そう、彼女こそがアカデミー賞で助演女優賞を獲った「エイミー・マディガン」演じる……誤魔化す意味もないのでハッキリ書いてしまうと、本作のラスボスである「グラディス」だ。異様に厚化粧したババアで、とにかく見た目のインパクトが強い。監督が元コメディアンということもあってか、グラディスのところだけなんか「松本人志がダウンタウンの番組で演じていた『話の通じないクソババア』にまつわるコント」のノリなんですよね。「ただ厚化粧しているだけ」なのにここまでクリーチャー感が出せるのシンプルにスゴいですよ。
最終的にただ一人だけ教室に登校してきた男の子、「アレックス」の章が開幕し、いよいよ種明かしが始まります。マーカス校長の章で既に描かれていたが、アレックスの「叔母」を名乗るグラディスは本物のWITCH(魔女)で、平和だった彼の家庭にある日突然寄生虫の如く棲みついてしまったのだ! 対象の髪の毛や「愛用の品」を使って発動させる類感呪術タイプの魔法(ウィッチクラフト)で、「木の枝」を用いるところを見るとケルトのドルイド(女性だからドルイデス?)系かな。アレックスの母親の妹、つまり「叔母」だと言い張っているけど、どう見てもアレックスママよりずっと老けているので恐らく「そう思い込まされている」のでしょう。校長との会話から、少なくともアメリカ開拓時代には物心をついていたと推測される。グラディスの魔法によって傀儡にされたアレックスの両親、「言うこときかなかったら……わかってるよな?」とグラディスに脅され、アレックスは彼女の言いなりになってしまう。そんな中、「消えた子供たちが向かっていった先の交点」を探していたアーチャーとジャスティンはそこが「アレックスの家」だということに気付き、遂に物語はクライマックスへ。ここから先の展開はさすがにバラせないが、「最終決戦」の盛り上がりは期待通り……いや、期待以上の代物でテンションMAXになりましたよ。「うおお! そこだ! 殺れ! ブチ殺せ!」とまるでグラディエーターの試合を観戦しているような気分でしたね。監督曰く、脚本を書き始めた時点では着地点を決めていなくて「ある教室の子供たちが一斉に姿を消す」というアイデアを転がしていった結果、ああなったらしい。冷静に考えると「一斉に失踪させる必要があったのか?」という疑問は残るし、グラディスの動機も明確には描かれていないが、そこらへんは瑕疵というほどでもないです。
想定以上のヒット作になったこともあり、既にグラディスの来歴を綴る前日譚の企画も動いているようです。要は『X エックス』に対する『Pearl パール』みたいなもん。本当は『WEAPONS/ウェポンズ』本編の中でグラディスの過去も掘り下げる予定だったらしいが、尺の都合で削らざるを得なかったらしい。削ってなお128分ありますからね、この映画。さあ、みんなも「アカデミー賞を獲ったババア」に観に行きましょう。
・拍手レス。
陰実はすでにコミカライズの方が原作最新刊より早かったので追い抜くのほぼ確定です。一番残念なパターンは『紅』ですね。原作イラストレーターによる丁寧なコミカライズで人気も高かったのに。コミカライズが終わった後に原作新刊出たのも
『紅』は原作の残酷描写がハード過ぎたせいかコミカライズではだいぶマイルドにしないといけなかったり、アニメは別物になったりとメディアミックス的にはかなり混乱しちゃった作品ですね。コミカライズの特典として原作寄りのOVAもちょっとだけ作られたけど、あれをもっと大々的にやってほしかった。
2026-03-31.・やっと『劇場版 陰の実力者になりたくて! 残響編』の続報が来て「待ちくたびれたぜ……!」という顔になっている焼津です、こんばんは。
2期放送終了直後、制作決定が報じられたのは2023年12月21日。そこから続報らしい続報もなく、原作の刊行も止まっていた(原作者監修のソシャゲは動いていたけど)からファンたちはニュースに飢えていましたが、ようやく干天の慈雨が降り注いできた。原作読んでない人は「残響編? 何のこっちゃ」という感じでしょうが、内容としては単なる本編の続き(でもちょっと番外編っぽい話)なので深く気にしなくていいです。アニメの2期は原作小説4巻の前半を消化したところで終わっていて、残響編はその続き、つまり4巻後半のエピソードに当たります。もうPVも出ているからバラしてしまってもいいと思いますが、2期のラスボス「モードレッド」を倒した後、突如発生した謎の「ゲート」にシャドウ様が飛び込んだところ、そこは彼が転生する前に過ごしていた世界……即ち日本だった、ということでファンの間では「日本編」ないし「地球編」とも呼ばれている。アニメだと1期目第1話のエピソード「嫌いなクラスメイト」の続編に当たりますね。「スタイリッシュ暴漢スレイヤー」でお馴染みのアレ。書籍化記念として書かれた「彼の名は影野ミノル」がベースになっており、書籍版だと4巻、ちょうど2期ラストと残響編(日本編)の間に収録されています。そう、陰実のアニメって実は構成を変えていたんですよ。「2話以降ほっちゃん(堀江由衣)ボイスの同級生全然出て来ないけど、一体どうなってんの!?」と戸惑った方もおられるでしょうが、もともと残響編(日本編)の前フリに当たるエピソードだったワケだ。さすがにアニメ派の人は記憶が朧気になっていると思うので、残響編を観に行くつもりなら直前で「嫌いなクラスメイト」(1期目第1話)を再視聴しておいた方が宜しいでしょう。
とはいえ、アニメ2期のラストって実は原作と違うので、そのままだと4巻後半のストーリーに繋がらないんですよね……いったいどうするんだろう? と首を傾げつつあらすじを確認したら「追いかけてきたベータ」とあって「おい!」とツッコミを入れたくなった。原作だとシャドウ様がゲートに飛び込んだ後、慌ててベータがその背中を追う展開になっているんですが、アニメ2期ではなぜかベータが後を追う前にゲートが閉じてしまったんです。てっきり「ベータの出番を削除してアニメオリジナルのストーリーにする」んじゃないかと深読みしていましたが、結局原作通りの流れに戻すらしい。じゃあなんでアニメのラストを改変したんだよ!? アニメ番外編の「かげじつ!せかんど」最終話ではアニメ本編と違って「シャドウ様とベータがともに姿を消した」ことになってたし、ひょっとしてプロジェクトの連携が取れてなかったのでは……? という疑惑がある。まぁ作風的にしれっと展開を改変しても受け入れられそうではあるが……。
原作も遂に新刊が出るし、「ほぼソシャゲとコミカライズだけのプロジェクト」になりつつあった陰実が本格的な再始動を迎えていてアツい。いえ、「ソシャゲやコミカライズが動いているだけマシだろ」という意見もあるでしょうが、それはそれ。ちなみにコミカライズは5月に最新刊(18巻)が出る予定です。結構丁寧なコミカライズなので、「原作に追いつかず途中で終わるかもな」と思ったこともありましたが、あらすじ読んだかぎりではだいぶ追いついてきてますね。原作がエタらなければ完結まで漫画化できそうか?
かつてライトノベルのコミカライズ作品は「人気作でも作画に時間が掛かるせいで原作に追いつけず、途中で終わる」のが常でした。『灼眼のシャナ』は番外編含めて全26巻ある原作のうち4巻の範囲までしかコミカライズされていないし、『ナイツ&マジック』も第一部をやり切ったところで一旦完結した。珍しいところでは『災悪のアヴァロン』が「原作小説の内容に追い付いてしまうことを鑑み」て一旦休載になる、なんてこともありましたが……最近は小説本体よりもコミカライズの人気に後押しされてアニメ化が決まることも多くなった(そのため絵柄が小説の挿絵よりも漫画版の方に近くなるパターンも増えてきた)し、昔は低く見られていたコミカライズの地位もだんだん上がってきているようですね。一方、映画が興収40億を超えているヒット作『ほどなく、お別れです』はコミカライズもされている割にSNS等ではさほど話題にならない。この作品、原作は小説で、単行本が刊行されたのは2018年だから結構前なんですよ。シリーズ化していて4冊で累計80万部、巻割で20万部だから充分当たっているのですが、「お涙頂戴」と見做されて敬遠されているのか読書好きの間でもそこまで話題に上りません。私はコミカライズを途中まで読んでいるけど、印象に反してスピリチュアル系の内容(主人公は“気”に敏感ないわゆる「見える子ちゃん」)なんで「葬儀会社を題材にした地味なお仕事モノ」とか「『おくりびと』みたいな話」とかを想像して臨むと戸惑うでしょう。リアリティーラインの高低はあれど、私の中では『見えてますよ!愛沢さん』と同じ枠の作品です。
・『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』と『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』まさかのコラボイラスト公開! 衝撃の“ミルキー☆ハサウェイ”爆誕(電ファミニコゲーマー)
公開時期が近いんだし、「ミルキー☆ハサウェイ」みたいなコラボすればいいのに。と無責任なこと言って笑っていたら本当にコラボしてるよ! ミルキー☆サブウェイの監督が言うにはガンダムサイドから打診があったそうです。ミルキーハイウェイ側からコラボを提案していたら「なんて強い心臓の持ち主なんだ」と感心していたところだったが、常識的に考えてそれはなかったか。
一応、共通のキャストがいるので接点はないこともない。ミルサブの主役ポジションに位置する「マキナ(来栖真希菜)」と、ハサウェイ第2部では「おっぱい」が印象に残った褐色でお下げ髪のメカニック「ジュリア・スガ」、この両方を演じた声優が「永瀬アンナ」です。彼女は『超かぐや姫!』でも主役(酒寄彩葉)を演じており、『劇場版「僕の心のヤバイやつ」』や『パリに咲くエトワール』に脇役として登場しているので、なんと現在公開中のアニメ映画のうち5本もネームドキャラで出演していることになります。去年の出演作は『呪術廻戦』の総集編(星漿体の「天内理子」を演じた)くらいだったのに、出世しまくりやんけ。普通もっとこう、刻むだろ、段階を……! せっかく波が来てるんだから『超かぐや姫!』や『パリに咲くエトワール』ともコラボしてほしいですね(僕ヤバは原作があるから許可取るの大変だと思う)。「マフティーがツクヨミにいるわけないだろ!」「マフティーがパリにいるわけないだろ!」 『パリに咲くエトワール』、せっかく谷口悟朗が巨大ロボットを封印して作ったのにモビルスーツの影が忍び寄りそうなの笑ってしまう。
・高村和宏監督の新作「バーテックスフォース」今年放送、メカ×美少女のオリジナルアニメ(コミックナタリー)
「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」や「ビビッドアングル」でボンクラアニメ好きたちの血を熱く騒がせたあの「高村和宏」の新作オリジナルTVアニメだって!? 唐突にえらいニュースが飛び込んできた。『ストライクウィッチーズ』や『ビビッドレッド・オペレーション』の監督として知られる高村和宏だが、元ガイナックスの社員で、アニメ版『まほろまてぃっく』のキャラクターデザインを手掛けている。初監督作品が『ストライクウィッチーズ』であり、股間描写への熱烈なこだわりっぷりから「股間督」の二つ名を持っています。ストライクウィッチーズ関連のアニメだと『ブレイブウィッチーズ』の監督もやっていますね。ただ『ルミナスウィッチーズ』は『アサルトリリィ BOUQUET』の「佐伯昭志」が担当している。股間督が最後に監督したアニメは2020年の『ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN』、つまり6年ぶりの新作ってわけだ。ストライクウィッチーズ関連ではない、純粋な新作という意味では2013年の『ビビッドレッド・オペレーション』以来だから13年ぶり。いやビビオペがもう13年前ってビビってしまうな。
今のところタイトルとティザービジュアルくらいしかわからないが、監督のコメントからすると「メカと美少女」を愚直に貫き通した作品のようだ。ぶっちゃけ既に時代にそぐわなくなっている印象もあるが、私も「メカと美少女」が好きな男だ。普通に期待させてもらうぜ。
・”灰の中に、なお火は燃えている――” 『影技・暁(SHADOW SKILL DAWN)』、“COMICリュウ”にて4月24日より連載開始
アイエエエエエエエエ!! 影技(シャドウスキル)の新作!? 90年代に青春を過ごしたバトル漫画ジャンキーはこのニュースにブッ魂消たことだろう。「岡田芽武」、今は「聖闘士星矢のスピンオフを描いている人」として一部の層から認知されているかもしれないが、このシャドウスキルはOVAが出たりTVアニメが放送されたりと「オタク向けのバトル漫画」として当時大きなムーブメントを起こした作品です。「刃拳」と書いて「ハーケン」、「怖鎖」と書いて「フェンサー」などネーミングはちょっとダジャレっぽいが、このへんのノリが星矢スピンオフの方でも発揮されている。
異世界を舞台に、2000年の歴史を誇る「クルダ流交殺法」と呼ばれる格闘術の使い手たちの戦いを描くバトル系ファンタジーで、「雑誌を転々としたせいで完結まで20年以上掛かった」ことでも有名です。最初は竹書房の“コミックガンマ”で連載していたのですが、同誌が休刊になり一旦打ち切り。翌年富士見書房の“月刊ドラゴンジュニア”に移籍するも、一年半ほど連載した後で休載。そこから更に講談社へ移籍し、“アフタヌーン シーズン増刊”で連載するも休刊。最終的に“月刊アフタヌーン”で連載することになるが、かなり不定期気味の連載で、10年以上掛かってようやく完結した。そして今度は“COMICリュウ”で連載するんだから、「5つの雑誌を渡り歩いた作品」ということになる。単行本も竹書房(バンブーコミックス)版、富士見書房(ドラゴンコミックス)版、講談社(過去連載の復刻)版、講談社(アフタヌーン連載)版と4種類もあってややこしい。ワケが分からなくなって途中で買うのやめた読者も結構いました。今から読み出す場合、上記のうち竹書房版と富士見書房版は無視していいです。講談社に移籍してから過去連載の復刻として出したのが『SHADOW SKILL phantom of shade』、『SHADOW SKILL black howling』、『SHADOW SKILL black wing』の3冊なんですが、これは刊行順であって、ストーリーの順番としては『black howling』→『black wing』→『phantom of shade』。『black howling』は旧シリーズ1巻と2巻の合本、『black wing』は3巻と4巻の合本、『phantom of shade』は本来5巻として刊行されるはずだった単行本未収録の連載原稿をまとめたものです。「とにかく単行本未収録のエピソードを読ませてくれ」というファンの要望に応えるために『phantom of shade』を真っ先に出したわけですね。
で、アフタヌーンでの連載をまとめたものが『SHADOW SKILL』(全11巻)です。「1巻」と書いてるから「ここから読み出せばいいのか」と勘違いしそうになりますが。実際は6巻か7巻に相当する内容である。斯様に詳しい事情を知らない読者に対しては不親切な売り方をしており、新規があまり入って来ず、連載の終盤はコアなファンしか残っていなかった印象があります。電子版が販売されていた時期もありましたが、講談社から権利を引き上げたのか現在は電子書籍を購入することはできません。『暁』の連載が始まったら徳間で出すのかな? 何せ20年以上やってた作品だから絵柄の変遷が激しく、最初の巻と最後の巻では同じキャラでも別人にしか見えない。岡田芽武はもともと描き込みの細かいタイプで、絵の癖もどんどん強くなっていったからファンの間でも「どの時期の絵柄が好きか」は意見の分かれるところだ。
さておき、新作はタイトルが『影技・暁(SHADOW SKILL DAWN)』だということ以外、ほとんど謎に包まれています。「暁」という言葉の印象からすると前日譚か? 主人公「ガウ・バン」の師匠にして姉のようなポジションの「エレ・ラグ」の過去編とか……でもエレの出自はだいたい判明しているし、今更過去編をやるか? という疑問はある。エレをメインにしつつ、本編に出て来なかった過去の闘士を掘り下げる可能性もありますね。クルダ流交殺法は前述の通り2000年の歴史があり、その技を継ぐ闘士(ヴァール)の中でも特に優秀な者を修練闘士(セヴァール)と呼ぶのですが、ガウが第60代修練闘士でエレが第59代修練闘士。エレが過去の記憶を辿り、『修羅の刻』ばりに歴代の「第〇代修練闘士」を追想していく連作という可能性もあるかな。
シャドウスキル、バトル物としては今でも面白いしカッコいいと思っているけど、後半のストーリーは超常的な展開が目立つし、「ヒロイン・エレの驚くべき出生の秘密とは?」とか「主人公の実の父親が世界に混乱をもたらす元凶なので打ち倒さねばならない」とかいった具合にファミリーヒストリー方向へ話が進んでしまうため、物語としての爽快感は失われてしまった印象がある。『暁』はそこらへんも立て直してほしいところだが、いったいどうなることやら。
・アニメ『PSYREN -サイレン-』2026年10月に放送決定!新ビジュアル解禁、「原作の最後」までアニメ化することも発表(電ファミニコゲーマー)
「原作の最後」まで、つまり「俺たちの戦いはこれからだ!(完)」みたいな終わり方はしないと知ってまずはひと安心。そして次の心配は「いったい何クールでやるつもりなのか?」ってことですね。『PSYREN -サイレン-』の原作は全16巻、ジャンプ漫画はだいたい1クールに4、5巻分の原作を消費するのでゆっくりやれば4クール、やや駆け足気味に行けば3クールってところでしょうか。しかしこれはあくまで「理想の尺」であって、『PSYREN -サイレン-』クラスの知名度だといろいろ削って2クールに押し込む可能性も捨て切れません。さすがに1クールで原作の最後までやることはないと思うけど……そんなことしたら話が無茶苦茶になっちゃ……うっ! 覇穹……? なんだか嫌な言葉が脳裏をよぎったが、気のせいでしょう、きっと。
・アニメ『ウマ娘 シンデレラグレイ』、「Anime Trending Awards」にて「アニメ オブ ザ イヤー」受賞&8冠達成。映画『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』も「アニメ ムービー オブ ザ イヤー」に輝く(電ファミニコゲーマー)
この「Anime Trending Awards」というの、アメリカのアニメファンが集まって投票して決める、SFの「ヒューゴー賞」みたいな……日本だと「星雲賞」のようなポジションの賞らしい。今回が12回目ということで、初の開催は2015年(対象の作品は2014年のアニメ)、初代「アニメ オブ ザ イヤー」は『残響のテロル』です。日本だとそこまで大きく評価されていない作品ですが海外では人気があって、フランスでも賞を獲っていたりと、MAPPA人気の礎になっている。他、歴代のアニメ オブ ザ イヤーを列挙していくと『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続』、『夏目友人帳 伍』、『月がきれい』、『宇宙よりも遠い場所』、『ヴィンランド・サガ』、『アクダマドライブ』、『フルーツバスケット The Final』、『ぼっち・ざ・ろっく!』、『天国大魔境』、『葬送のフリーレン』、以上です。調べて初めて知ったけど、『葬送のフリーレン』の英題って "Frieren: Beyond Journey's End" なのか……「葬送」のニュアンスを翻訳しにくいから、「冒険の旅が終わった後の物語」という点を強調しているのね。『天国大魔境』は "Tengoku-Daimakyo" 、『月がきれい』は "Tsuki ga Kirei" と、そのまんま過ぎて笑った。
どちらかと言えば「リアリティーのある現代物や、重厚感のある歴史物・ファンタジー物、あるいはセンスの炸裂しているアニメが人気」という傾向の賞なんで、こういう「熱さ」とか「爽快感」を売りにしたスポ根路線のアニメが評価されるのは珍しい、と海外でも話題になっている模様だ。しかも年間最優秀賞(アニメ オブ ザ イヤー)だけでなく、部門賞も7つ(女性キャラクター賞「オグリキャップ」・男性サブキャラクター賞「北原穣」・女性サブキャラクター賞「ベルノライト」・ベストスポーツアニメ大賞・ベスト脚本賞・ベストアニメーション大賞・ベストキャラクターデザイン大賞)獲得しており、「8冠アニメ」となっています。「むしろ獲れなかった部門は何なの?」と逆に気になりますが、このへんは「ジャンル賞」と「非ジャンル賞」に分けて考える必要があります。
「ジャンル賞」はスーパーナチュラルアニメ(『ダンダダン2』が受賞)、日常・青春アニメ(『その着せ替え人形は恋をする Season 2』が受賞)、SF・メカアニメ(『Dr.STONE SCIENCE FUTURE』が受賞)、恋愛アニメ(『薫る花は凛と咲く』が受賞)、ミステリー・サスペンスアニメ(『薬屋のひとりごと 第2期』が受賞)、音楽アニメ(『ロックは淑女の嗜みでして』が受賞)、ファンタジーアニメ(『Re:ゼロから始める異世界生活 3rd season「反撃編」』が受賞)、ドラマアニメ(『タコピーの原罪』が受賞)、コメディアニメ(『SPY×FAMILY Season3』が受賞)、アクション・冒険アニメ(『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』が受賞)です。この中だとシングレは「ドラマアニメ」部門で3位でした。
「非ジャンル賞」で逃したのは、エンディングテーマソング賞(『その着せ替え人形は恋をする Season 2』の「Kawaii Kaiwai」が受賞)、オープニングテーマソング賞(『よふかしのうた Season2』の「Mirage」が受賞)、女性声優賞(『薬屋のひとりごと』の「猫猫」役として悠木碧が受賞)、男性声優賞(『薬屋のひとりごと』の「壬氏」役として大塚剛央が受賞)、声優キャスティング賞(『Re:ゼロから始める異世界生活 3rd season「襲撃編」』が受賞)、サウンドトラック部門最優秀賞(『薬屋のひとりごと 第2期』が受賞)、背景・美術部門最優秀賞(『薬屋のひとりごと 第2期』が受賞)、オリジナル脚本賞(『全修。』が受賞)、ベストエピソード演出・絵コンテ賞(『タコピーの原罪』の1話目が受賞)、カップル・オブ・ザ・イヤー賞(『薫る花は凛と咲く』の「紬凛太郎&和栗薫子」が受賞)、男性キャラクター賞(『薬屋のひとりごと』の「壬氏」が受賞)。原作付き以外が対象となる「オリジナル脚本賞」、恋愛要素がないと選ばれにくい「カップル・オブ・ザ・イヤー」、そして「男性キャラクター賞」は主役級の男キャラがいないため無理でしょうね。女性声優賞とエンディングテーマソング賞とサウンドトラック部門では2位だったから「10冠」以上という栄光の可能性もうっすらと見えている状態でした。あと「年間アニメ映画大賞」というのもあって、こちらも当然ながら選外だったのですが、代わりに『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』が受賞している。つまり、30ある部門のうち9つ、1/3近くをウマ娘関連のアニメが占める結果となったわけだ。Umazing!
過去の最優秀賞アニメだとぼざろが8部門獲ってたので最多タイ。他はフリーレンが6部門、天国大魔境が5部門といった具合。最低でも何らかのジャンル賞を制していなきゃ最優秀賞に選ばれることはまずないため、過去の最優秀賞アニメは最小でも2部門を受賞しています。後から新設された部門もあるので、過去の受賞作と比較するのはあんまり適切じゃないかもですが。しかし、こうして過去の受賞リストを眺めると、「作品人気とキャラ人気って結構乖離してるんだな」というのが見て取れる。たとえば俺ガイル続は最優秀賞を獲っている割にキャラクター賞では一つも選ばれていない。同じ年の男性キャラクター賞は『食戟のソーマ』の「幸平創真」、女性キャラクター賞は『赤髪の白雪姫』の「白雪」、カップル・オブ・ザ・イヤーは『赤髪の白雪姫』の「ゼン&白雪」です。これだけキャラ人気あるのに『赤髪の白雪姫』が最優秀賞じゃないの? と不思議になりますが、シナリオや作画込みの評価で俺ガイルが上回ったってことなのかな。あと「ギャグが面白く、曲も良くて、青春ストーリーとしての完成度も高い」ことでコメディアニメ賞と音楽アニメ賞と日常・青春アニメの3部門を制したぼざろも、意外なことにキャラ部門では選ばれていません。同年の女性キャラクター賞は『その着せ替え人形は恋をする』の「喜多川海夢」、女性サブキャラクター賞は『サマータイムレンダ』の「南方ひづる」。最優秀賞を獲ったうえでキャラ部門を3つも制しているシングレの方が珍しいんです。
シンデレラグレイ、「日本の競走馬をモチーフにしたスポ根アニメ」というマニアックな題材だったせいもあって、放送前の注目度はかなり低かった。海外でもこれまでの『ウマ娘』シリーズのアニメは配信されていたが、前提となる競走馬の知識が共有されていなかったため、観ている人が少なかったんです。いざ放送が始まっても色物扱いでなかなか人気が伸びなかった。しかし、カサマツ編が終わるあたりから口コミでじわじわと広まり始め、6月にウマ娘のアプリのグローバル版が配信開始したことで一気に人気が爆発。空前のウマ娘ブームが到来しました。「地方から中央へ駆け上がっていった『オグリキャップ』というシンデレラ」を描いたアニメが、日本から世界へと羽ばたいていく、二重の意味での「シンデレラ・アニメ」となったのだ。『新時代の扉』が人気を博したのもシングレの影響が大きい。アメリカでは劇場公開ナシでいきなり配信されたんですけども、「どうしても映画館で観たい」と嘆願するファンたちの期待に応えて全米600館という、向こうの感覚としては小規模なスクリーン数で上映されました。
「分割だったけど1クール目と2クール目が同じ年に放送された」というのも功を奏したかな。分割形式で年を跨いじゃうと、こういう年間アワード的なものからは評価されにくくなりますゆえ。3クール目以降の放送がいつになるか、現時点ではまだわかりませんが、これだけ人気があればアニメの続編はほぼ確実に制作されるでしょう。アニメは「白い稲妻篇」、単行本で言うと8巻までやったので、3クール目から「永世三強篇」に入る。単行本は全23巻だから、このペースならアニメは全6クールで綺麗に収まりそうですね。全体でざっくり70話くらいになるのかな。逆に言えば、ここまで人気が出てなきゃ最後までアニメ化するのは「難しい」と言わざるを得なかっただろう。ホント、原作もアニメも好きな人間としては「人気が出てよかった」の一言に尽きる。どうかゴールまで駆け抜けてくれ、オグリキャップ。
・映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』観た。
久々に新規IPの洋画でヒット作になりそうだ、と話題になっている映画です。原作は「アンディ・ウィアー」、『火星の人』(映画版の邦題は『オデッセイ』)を書いた小説家。デビュー作の『火星の人』とこれの間に『アルテミス』という月面都市を舞台にした作品があるため、長編小説としては3作目に当たる。日本では2021年に単行本として翻訳され、ベストセラーに。なかなか文庫化されなかったが、今年の1月にやっと「ハヤカワ文庫SF」入りを果たした。映画化に合わせてのものだと思います。しかし5年近くの間に紙やら何やらが高騰していたため、本体価格2100円が1500円と、価格差が600円しかない状態に……4月以降はもっと値上がりする、という噂もあるからいずれ「単行本と文庫版の価格が一緒」の作品とか、逆転する作品すら出て来るかも。
原作小説は「ネタバレ厳禁」という触れ込みで、ほとんど内容に言及せず布教活動が行われたことで有名です。私もセールの時に購入したけど、結局読まないまま映画公開の日を迎えたので内容についてはほとんど知らなかった。まぁ「宇宙に出る話」だということと「ファーストコンタクト物」だということは漏れ聞いていたし、ドムドムハンバーガーと映画公式がじゃれ合っていたから「アレ」が出てきた時に「あっ、Xで見たやつだ」となっちゃったけど。愛読者たちがネタバレを避けようとあまりにも頑なに詳細を話そうとしないものだから、原作者のアンディ・ウィアーも痺れを切らして「そこまで神経質にならなくていいよ、本書の肝はそこじゃないんだから」と苦言を呈したほどです。今回の感想はネタバレに気にせず書いていくので、これから原作小説読むつもりの方やまだ映画を観に行ってない人はご注意ください。
「ライアン・ゴズリング」演じる主人公は記憶喪失に近い状態で目を覚ます。何か機械に囲まれて、点滴の管や電極やカテーテルが山ほど付けられている。ここはどこだ? いったい何があって自分はここで眠っていた? ワケが分からないゴズリングは、「病室」を抜け出し、まるで潜水艦の出入口みたいなハッチを空けて「答え」を探そうと歩き回る。そして気付く。ここは……宇宙船だ! ぼくは宇宙にいる! しかもぼく以外の乗組員(クルー)は全員死亡している! 船のコンピュータへ向かって「ヒューストン(NASA)に繋げ」と命令するが、「範囲外だ」とにべもなく断られる。せめて現在位置だけでも知ろうとマップを表示させたところ、画面に映し出された宇宙図は、ただただ広大な「虚空」。目印らしいものが何もなかった。おいおい、まさかここは海王星のあたりだとでも言うんじゃないだろうな、と愚痴りながらマップを縮小させて地球を見つけようとするゴズリング。やっとの思いで「地球(アース)」を発見するが、同時に残酷な事実も知ってしまう。海王星どころではない、ここは太陽系の遙か外だ……! 窓の外に見える太陽は「太陽のような別の恒星」だったんだ!
と、こんな具合でストーリーはいきなりクライマックスから始まる。記憶が混濁していたゴズリングは徐々に経緯を思い出していきます。作中の世界では金星から太陽にかけて帯のような赤外線、通称「ペトロヴァ・ライン」が発見された。その正体は宇宙微生物「アストロファージ」、こいつらは太陽のエネルギーを喰って活動し、取り込んだエネルギーを放出して移動する。このまま放置すれば太陽の放つ熱エネルギーが減少し、あと30年かそこらで地球は氷河期に突入してしまう。アストロファージは観測範囲内のあらゆる恒星を侵蝕していたが、唯一、地球から11.9光年離れたくじら座の恒星「タウ・セチ」だけ汚染されていなかった。普通ならそんなところまで行く手段などないが、皮肉なことに、採取したアストロファージが優秀な燃料として機能するため「片道なら」赴くことが可能となる。地球を救うための、帰還不能なミッション。自分がそれに参加していることを知り、途方に暮れるゴズリングだったが……と、ここからストーリーは更に二転三転していくことになります。
観た時、真っ先に浮かんだ言葉が「敵は出て来ないけど仲間が全員死んでいる『宇宙戦艦ヤマト』」だった。たった一人でコスモクリーナーのような物を探し出し、それを地球に届けないといけない。「コスモクリーナー的な何か」を地球に送るための探査機(プローブ)は搭載されているが、生命維持装置なんて積んでいないから自分がそれに乗って帰ることはできません。死んだロシア人クルーがこっそり船に持ち込んでいたウォッカを痛飲しながら現実逃避を図るゴズリングくん。そんな彼の前に、アストロファージとは別の地球外生命体、平たく書けば「異星人」の知性体が接触してきます。原作は文庫本で上下合わせて900ページくらいあり、この異星人(主人公が付けた名称は「エリディアン」)は上巻の終わり頃にやっと登場するので「えっ、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』ってそういう路線の話だったの!?」と驚愕する読者が続出して「ネタバレ厳禁」と通達が出回ることになったわけだ。「己以外が全滅したヤマト」とも言うべき悲愴すぎるシチュエーションが一転してファーストコンタクトSFに変貌するので、「そこのサプライズが肝」と受け取る読者が多かったんですね。でもアンディ・ウィアー的には「そのへんは『前提』であってサプライズではない」と、過度なネタバレ禁止の風潮にNOを突きつけました。なので主人公と接触したエリディアン、個体名「ロッキー」の魅力について語っていきます。
ロッキーは「見た目が岩のようだから」という理由でネーミングされており、その外観はカニとクモを掛け合わせたような五角形で五本脚の外骨格生物です。アニメファンには「タチコマ」と表現すれば伝わるだろうか。最近の作品で言うと『アポカリプスホテル』に出てきた「ハエトリロボ」がちょっと似てるかも。ロッキーは人形劇が好きなのか、主人公を模した人形を作ってそれを動かし、意思疎通しようとしてきます。「言葉の通じない異星人とどうやって分かり合うか」が本作の見所なわけですが、映画は尺の都合もあってあっという間に翻訳機が完成してしまうから少し拍子抜けではある。156分と、標準的な映画に比べて結構長い部類の作品(『オデッセイ』の上映時間は142分、ただし後のエクステンデッド・エディションで10分くらい追加された。ちなみにSF映画の中でも「長い話」として印象に残っている『インターステラー』が169分)であるが、文庫で900ページくらいの内容を圧縮しているからダイジェスト感は否めない。ゴズリングとロッキーの種の垣根を越えた友情が見所の映画なんで、SF版『最強のふたり』が観たい人にはオススメ。
余談ながら、ロッキーはCGではなく、それこそ人形劇のように操演しているそうです。操演の様子が映っている公式動画はこちら。ぶっちゃけ映画の世界に没入していたからCGかどうかなんてイチイチ考えてなかった。逆に言えば「CGか否かなんてことが気にならなくなるレベルの自然な動き」。子供の頃に観ていたらロッキーに夢中になって、ロッキーのオモチャやぬいぐるみをせがんでいたかもしれません。カットされた要素があまりにも多くて原作ファンからは不満の声も出ているようですが、「まだ原作読んでない」方は映画観てから読むかどうか検討しても大丈夫だと思います。私は今原作を読み進めていますが、映画の知識があるぶんスイスイ読めるし「こんな要素があったのか!」と新鮮で面白い。あくまで映画は「ヘイル・メアリーの入門用」と割り切った方がいいかも。あ、そういえば書き忘れていたが、タイトルの『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は日本語に訳すと「神頼み計画」。英語圏では「アヴェ・マリア」のことを「ヘイル・メアリー」と呼ぶので、ニュアンスとしては「どうかお助け下さい、マリア様!」ぐらいの意味です。日本語圏で近い言い回しとしては「南無三!」とか「南無八幡大菩薩!」とか「神様、仏様、〇〇様!」かな。「ああっ女神さまっ作戦」と意訳している人もいて笑ってしまった。「一発逆転」とか「イチかバチか」みたいな、もはや神仏に祈ってか細い希望に縋るしかない苦境へ追い込まれた人類の切羽詰まり具合を表現したタイトルなんですが、英語圏以外では伝わりにくいのが難点か。
2026-03-20.・3月21日(土)18:00、まほよの新情報が来襲(く)る! 俄かに緊張してきた焼津です、こんばんは。
タイミング的に公開予定日の告知ですかね? できれば何部作の予定なのかも明かしてほしいところですが……尺的にとても1本で収まるとは思ってないので、最低でも前編と後編の二部作になると予想しています。その場合、後編はいつ来るのかという話なんですが……とても来年とか再来年とは思えないし、早くて3年後かなぁ。
・谷口悟朗×吉田玲子が語り合うオリジナルアニメの存在意義 “多様性”のために必要なこと(Real Sound)
TLでは絶賛の嵐だが、興行的にはだいぶコケている(初週で「興行収入:5560万8140円 観客動員:3万8861人」……全国285館公開だから平均して1つの映画館に1日あたり50人前後の客しか入っておらず、初週の数字としては「惨敗」に等しい)『パリに咲くエトワール』のインタビュー記事です。監督「谷口悟朗」や脚本「吉田玲子」のファンは必見。
立ち上げの段階では監督の谷口とプロデューサーの「湯川淳」(ちなみに湯川Pのインタビュー記事もあります)の二人がゼロベースで企画を作り始め、行き詰まりかけていた頃に吉田が入った……という感じだそうです。なお湯川Pは「バンダイビジュアル」所属で、谷口監督とは『コードギアス 反逆のルルーシュ』からの付き合い。『ガールズ&パンツァー』の制作プロデュースにも関わっているので、吉田さんとはそっからの付き合いですね。ガルパンに吉田さんを起用したのは水島努監督が「戦車好きのスタッフが集まってくるから戦車は何とかなるが、『女の子の可愛さ』は脚本で何とかしてほしい」と要望したからで、「女の子を可愛く書けるのは吉田さんだろう」ということで抜擢したそうだ。
パリエトがフジコと千鶴の「ダブル主人公制」になったのは吉田さんが入った後で、それまでは単独主人公だったっぽいですね。「千鶴がバレエダンサーを目指す」という設定もだいぶ後で決まったらしい。別のインタビュー記事によると「パリを舞台にする」ところから企画が出発し、「未来のパリ」だとSFになっちゃって普遍性を損なうし「現代のパリ」ではセールスポイントが足りない、じゃあ「過去のパリ」だ――というふうに路線が定まっていったとのこと。吉田さんが加わる前の段階では「過去のパリでオーケストラの指揮者を目指す少女」というのが大枠だったが、「時代も考えるとこの設定(女性指揮者&10代そこらで抜擢)は難しい」ということで代わりに「絵画」を提案したようだ。当初のイメージラインとしては「画家になることを夢見たフジコが渡仏、憧れの都パリで奮闘するが、やがて様々な現実に打ちのめされ、それでもめげずに踏ん張って夢を叶える」みたいな感じだったのだろうか。既に何人も指摘しているが、「継田フジコ」のモデルは「藤田嗣治」(1913年に渡仏、翌年に第一次世界大戦勃発、仕送りが途絶えて生活も困窮し「寒さのあまりせっかく描いた絵を燃やして暖を取った」というエビソードも残っている画家)、つまり「女体化した藤田嗣治」をメインに据える案だったと思われるが、「二人の少女をメインとして立てたほうが、ドラマや関係性が作りやすい」ということでシスターフッド路線へ切り替えていった模様。
パリエトを構成する要素のうち、アニメーションとして見せるうえで重要なのが「バレエ」や「薙刀」。このうち最初にあった要素は薙刀で、バレエは吉田さんの提案で追加されたようだ。ベル・エポック期ということで「アルセーヌ・ルパン的な方向」も監督の頭にはあったらしいが、題材として積極的に取り入れたくはなかったような口ぶりですね。バレエシーンについては「CGを使っているとはいえ、あれでなんでもできるのではないかと思われるかもしれませんが、CGはあくまでサポートとしてしか使えません。そもそも指先や足先までモーションキャプチャーのマーカーを付けているわけじゃないですしね。ノイズだってある。所作と所作の間でどのような体重移動をしながら動くのかというところまで突き詰めると、CGではできないんです」と語っており、偏執的なまでのこだわりが感じられる。ダンスシーンはなかなか演出が難しいんですよね、ストリートダンスを題材にした『ワンダンス』もアニメ版は相当苦労しているのが伝わってきた。
「明治から大正にかけて」という時代背景が一般客を呼び寄せにくいのか興行は依然厳しい模様だが、「グランドシネマサンシャイン池袋」では金曜のチケットがほぼ完売に近い(と言っても、80席くらいの小さいシアターで1日2回、MAXでも160人)など、ジワジワと口コミの効果が出ているようだ。「こういうオリジナルアニメ映画もちゃんと評価される」って実績を作ってほしいところですね。ちなみに、パリエトの年代(1907年や1912年)を舞台にした作品というと、古いところでは『帝都物語』や『春の雪』があります。『帝都物語』の方は3月30日(月)まで本編を期間限定無料公開しているので気になっていた方は今がチャンスだ。
・『ガールズ&パンツァー リボンの武者』、パイロット版映像上映決定!
すわリボンの武者アニメ化か! といきり立ってしまったが、あくまでPVのみの上映で本編に関しては本決まりではないらしい。なんだ、じゃあアニメ化が決定したとしても完成は2030年以降になりそうだな……『ガールズ&パンツァー リボンの武者』はガルパンのスピンオフコミックで、正式な大会が開催されている競技「戦車道」とは違い、戦車乗りたちがお互い合意の上で独自に繰り広げる、言わば野良試合の如き「強襲戦車競技(タンカスロン)」を描く。ガルパンの本編キャラも出てきますが、主要キャラは概ねオリキャラです。スポーツではなく「戦」が好きな少女「鶴姫しずか」が九七式軽装甲車(テケ)に乗って大暴れする。しずかは武田の「百足衆」の末裔という設定で、赤備えをイメージしてテケの外装を赤く塗り、大きくて真っ赤なリボンを着用している。ドラゴンボールの「レッドリボン軍」が由来というわけじゃありません。可愛い女の子もいっぱい出てくるけど、根底にあるノリはボトムズやシグルイ、ドリフターズのそれであり、「ウマ娘にとってのシンデレラグレイ」みたいなポジションだ。実際、シングレの作画担当も「『リボンの武者』と『はねバド』読んで吹っ切れた」と語っている。
ガルパンのアニメが始まったのが2012年、リボ武者の連載開始が2014年で、2021年に連載終了しています。単行本にして全16巻というかなりのボリューム。TVアニメ化する場合、丁寧にやれば4クール、押し込んでも最低2クールは掛かるでしょうね。問題はガルパンを作っているスタジオ「アクタス」の仕事が物凄く遅いことで、「最終章」という触れ込みで始まった全6話構成の劇場シリーズは2017年に開始し、今年の10月にようやく第5話が公開される予定っつーレベルです。来年でもう10周年だ……ガルパンが、ではなく「最終章」が、ですよ。まさか10年経っても終わらないとは……第3話から第4話の間に「ロシアによるウクライナ侵攻」が勃発し、ロシアとウクライナがマジで戦車戦を始めるという信じがたい事態も発生した。アニメを取り巻く環境どころか社会情勢が激変している!
アクタス、アニメ好きの間では「いい仕事するんだけど、とにかく時間が掛かるスタジオ」として有名で、同じくTVシリーズの続編として劇場シリーズを始めた『プリンセス・プリンシパル』もまだ終わっていません。TVシリーズの放送が2017年、全6章構想の劇場シリーズ『プリンセス・プリンシパル Crown Handler』が2021年開始で、去年(2025年)にやっと第4章が公開されたところです。TVシリーズから数えると来年で10周年だけど、それまでに終わる可能性はほぼゼロですね。こういう「劇場で全〇章」という商法、サンライズあたりがよくやってるんですけど『機動戦士ガンダムUC』が全7章で2010年に開始、2014年に完結。『コードギアス 亡国のアキト』が全5章で2012年に開始、2016年に完結。といった具合にだいたい5年以内に終わらせています。コロナ禍の影響もあって制作が大幅に遅れた『閃光のハサウェイ』3部作(第1部が2021年、第2部が2026年、第3部が未定)もありますが、「劇場〇部作」で5年どころか10年経っても終わりそうにないのは、他所だとEVAの新劇場版(2007年開始、2021年完結)があるにせよ、かなり特殊な例といっていい。公開まで待てず鬼籍に入ったファンもチラホラ。「完結まで生き残ろう」がガルパンおじさんの合言葉になってるとかなってないとか。
そんな有様なので、『リボンの武者』まで寿命が保つかどうか……という次元の話になっており、もはや笑うしかない。私も生きてリボ武者のアニメが観たいものだ。
・『Fate/EXTRA Record』の発売延期が発表。ノーツとバンダイナムコエンターテインメント、両社協議の上で開発体制の変更をふくめた見直しを行うことが決定。新たな発売時期、販売元は決定しだい案内するという(電ファミニコゲーマー)
SNSをチェックしていたら「販売中止」の文字が飛び込んできてドキッとしましたが、あくまで「バンナムからの販売を中止する」という話であって『Fate/EXTRA Record』がポシャったわけではないらしい。ひとまず胸を撫で下ろしました。
まず『Fate/EXTRA』について説明。これは2010年に発売されたPSP用ゲームで、TYPE-MOONが主導して作ったソフトではなく、「持ち込み企画」の一つだったそうです。FateのIPを使ってダンジョン探索ゲームを制作したい、ということで当初は「セイバー」や「アーチャー」など『Fate/stay nigh』のキャラをそのまま使ったゲームになる予定だったらしいが、話し合っているうちに「オリジナルの設定にしてstay nighとはまったく別のストーリーにしよう」ということになりました。そうして生まれたのが新たなセイバー、通称「赤セイバー」です。それまでFate作品は「アルトリア」以外のセイバーが出て来なかったため、「セイバー=アルトリア」が常識だったのですが、この『Fate/EXTRA』によってようやく「アルトリアではないセイバー」が登場したのだ。
余談ですが今アニメやってる『Fate/strange Fake』は大元が2008年のエイプリルフールネタでEXTRAよりも古く、「アルトリア以外のセイバーはまだ存在していなかった」段階のため、そのへんに配慮して「セイバーが不在の偽の聖杯戦争」という体裁になっていました。アニメだと「小野友樹」が声当ててるあのセイバーは2015年に電撃文庫から商業作品として発売されたときに追加されたキャラです。もう一つ、禁断の余談二度打ちをしますと、EXTRAとほぼ同時期に持ち込まれた企画が『Fate/Apocrypha』。オンラインゲームとしてサービス開始する予定でしたが、諸般の事情で開発中止になっている。想像に過ぎないが、「Fateブランドのイメージを守るためのスタッフのこだわり」が厳しすぎて開発サイドが音を上げてしまったのではないだろうか。EXTRAも、企画の段階だと「シナリオは奈須きのこではなく外部のライターが書く」予定でしたが、上がってきたシナリオに奈須が納得できず全ボツ、「こうなったら俺がやる!」と一から書き直した――という経緯があります。続編のCCCでも「サクラファイブ」という「間桐桜」そっくりの顔をしたエネミーが言葉通り5人登場する構想でしたが、「予算と納期と容量の問題」で5人中3人が削られ、メルトリリスとパッションリップの2人しか残らなかった。削られた3人の穴を埋めるためエリちゃんが繰り返し出張るハメになり、「何度も出てきて恥ずかしくないんですか」という例のセリフへ繋がっていくことになる。
『Fate/EXTRA Record』は『Fate/EXTRA』のリメイク作品で、「EXTRA発売10周年」の2020年に開発が告知されました。リメイクとはいえシナリオそのままで映像だけ差し替える、みたいな感じではなく「実際はCCC(続編)からの登場だけど設定としては無印の時点で存在していたキャラ」を本編に織り込んだりといったアレンジもしているらしい。しばらく音沙汰がなかったものの2022年に続報が到来、仮タイトルだった『Fate/EXTRA Record』が正式タイトルに決定します。2024年に発売予定を「2025年」と告知。しかし、開発の遅れから予定を「2026年春」に延期。予約も開始して、さすがに今度こそ出るのでは……いやまた延びるのでは……とファンが様々な意見を交わしていたところにこの「バンナムが外れる」というニュースが飛び込んできてブッ魂消たわけだ。
ゲーム会社は大きく分けて二つあります。「開発(デベロッパー)」と「販売(パブリッシャー)」です。デベロッパーがゲームそのものを作って、それをパブリッシャーが大金かけて宣伝し、全国に流通できるよういろいろ取り計らう。パブリッシャーもデベロッパーとは別に開発部門を抱えているケースもあり、その場合は「販売と開発」というより「大手と下請け」みたいな構図になる。ほとんどの場合、お金を出しているのはパブリッシャーなので力関係は概ね「デベロッパー<パブリッシャー」です。パブリッシャーは詰まるところ「売れるゲーム」を作ってほしいから、デベロッパーにあれこれと注文を付ける。力の弱いデベロッパーはそれがどんなに理不尽な注文であっても簡単には断れず、様々な面で折れたり譲ったりすることになります。折れない、譲歩もしない……と対立が激しくなった場合、パブリッシャーは「首(デベロッパー)のすげ替え」を行って別の会社に開発を続けさせることもある。が、デベロッパーが下りずにパブリッシャーの方が下りるというのは前例がないわけではないにしろ異例であり、界隈がザワつきました。
パブリッシャー変更に伴い、受け付けていた予約は一旦キャンセルになります。どこか別のところに委託して販売することになるのでしょうが、そもそも『Fate/EXTRA Record』がどの程度完成していたのかは不明(一昨年の時点で「ほぼ出来上がっていてテストプレーしている段階」という話はあったが、それにしては公開されている情報が少なすぎ)であり、「バンナムが下りなければ本当にこの春に発売できていたのか?」という疑問が残っています。大半のTYPE-MOONファンは「恐らくバンナムが下りなくても延期は避けられなかっただろう、というか『延期が避けられない』からこそバンナムは痺れを切らして下りたのだろう」と推測している。TYPE-MOONファンは『月姫』リメイクで待つことに慣れ切っているが、「告知から6年近く経ってもまだ発売されていない」のは普通に異常なんですよ。あの大作『ELDEN RING』でさえ最初のトレーラーを出したのは2019年6月、発売が2022年2月だから3年も掛かっていません。やらかし具合としては公開予定を半年も延期したせいで連動コラボの予定を組んでいた企業たちの梯子を外してしまった『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』とどっこいどっこい。「何度も延期して恥ずかしくないんですか」という感じです。何かと叩かれがちなバンナムであるが、さすがに今回は同情的な意見の方が多いようだ。
詳しい内情はわかっていないが、バンナムもパブリッシャーとはいえある程度開発に携わっていた可能性があるので、今回手を引いたことで『Fate/EXTRA Record』の完成はますます遅れることになりそう。デベロッパーはノーツ(TYPE-MOONはブランド名)、より詳しく書けばノーツ内に立ち上げた新スタジオ「TYPE-MOON studio BB」が開発を手掛けています。新興スタジオということもあり、開発体制が整っていなくて作業が思ったように進まず、納期を守れなくなっているのでは……と予想する向きもある。どういう契約を交わしていたのかわからないから何とも言えないが、手を引く際にバンナムが投入していた資金を「回収」したり、途中まで出来上がっていたゲータを引き渡すために「条件」が付けられたり、何かしら金銭的な遣り取りが発生しているかもしれず、利益を回収するのが困難になっているかもしれない。「発売することによって得られる利益<ここから完成までに掛かる費用」と判断されたら最悪開発中止になる可能性もあります。延期しまくって、一時は「このままフェードアウトするのでは?」と不安がられたものの、いざリリースされると大ブームを起こした『ウマ娘』(ゲーム版)という先例もあるから、まだまだ望みを捨てる段階じゃない。でもあんまり楽観していられないな、というのも正直なところ。ファンは今のところ待つぐらいしかできない。待て、しかして希望せよ。
・「戦車椅子-TANK CHAIR-」TVアニメ化、今秋放送 ティザーPVとビジュアル公開(コミックナタリー)
また予想外なのが来たな……『戦車椅子』は元・凄腕の殺し屋だったけど妹を庇って瀕死の重傷を負い、ほぼ廃人になってしまった青年「平良凪」と妹の「静」、ふたりが活躍するゴア描写満載のアクション物です。凪は「殺意」を察知した瞬間だけ意識を取り戻すので、「殺意」が渦巻く裏社会で汚れ仕事を請け負い続ける。足腰が弱っているため車椅子に乗って戦うのが作品の特徴なんですが、「車椅子」は一つだけじゃなく、状況に合わせてパワーアップしたものが出てきます。悪趣味なノリが苦手な人にはオススメしにくいが、ブッ飛んだアクションが好きな人は一読する価値アリ。
制作はポリピクこと「ポリゴン・ピクチュアズ」、『 シドニアの騎士』や『亜人』を手掛けたスタジオです。最近の仕事は『アイドルマスター シャイニーカラーズ』のアニメ、いわゆる「シャニアニ」なので「ポリピクかぁ……」という反応も散見される。ヒプマイの映画が26億を超えるヒットになっているのでそれを評価する向きもあるが、それ以外は『大雪海のカイナ ほしのけんじゃ』とか『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』ですからね。監督は「吉平“Tady”直弘」と「安藤裕章」のふたり、これまでのポリピク作品でよく見掛ける名前だ。どう考えても一般ウケする作風とは思えないので、どれだけコアな人気を稼げるかに掛かっていそう。
・3月25日までの期間限定公開、『ヴァージン・パンク Clockwork Girl』
「梅津泰臣」監督のオリジナルアニメ、期間限定とはいえ本編全部を上げるとは太っ腹だ。グロシーンとお色気シーンの一部は規制されているが、まぁそこは仕方ないか。『ヴァージン・パンク』というシリーズの1作目で、「Clockwork Girl」が章題に当たる。機械工学が好きで、「ソーマディア」(攻殻機動隊における「義体」のようなもの)のエンジニアになることが夢の少女「神氷羽舞(かみごおり・うぶ)」。幼くして両親を亡くし、児童養護施設で育ったが、突如銃を持った女が施設を襲撃する。彼女は賞金稼ぎ(バウンティハンター)で、違法ソーマディア(平たく書くとサイボーグ犯罪者)の首を狩りに来たのだと云う。お世話になった「園長さん」が犯罪者だと知ってショックを受けつつも、目の前で「園長さん」を殺したバウンティハンターに憎しみを抱き、羽舞自身もバウンティハンターとなって彼らの獲物を横取りする。初めて会った頃から羽舞に目を付けていたバウンティハンター集団「アルキメDEATH」(クソダサいネーミングにもほどがある……)の元締め「Mr.エレガンス」はしつこく勧誘してくるが、かつての恨みを忘れていない羽舞はけんもほろろに断る日々が続いていた。
しかしある日、Mr.エレガンスは羽舞が油断した隙を衝いて銃撃。瀕死の重傷を負った彼女は昏睡状態に陥る。そして1年後、ようやく目を覚ました彼女は何の断りもなく脳以外の全身をソーマディアに改造されてしまったことを知り、激昂。Mr.エレガンスに詰め寄ってブチのめそうとするが、改造の際に自由を奪う処置が施されており、リモコン一つで動けなくなってしまう体になっていた。さながら緊箍児を嵌められた孫悟空。「少女趣味」のMr.エレガンスによって「永遠に14歳の乙女」としてメンテナンスを受け続けなければならなくなった羽舞は、怒りを呑み込んでひとまずはMr.エレガンスに従う道を選ぶ。唯々諾々と賞金首を狩る(比喩表現ではなく、ソーマディアに置き換えられない唯一の部位である脳味噌を含んだ頭部さえあれば生死に関わらず賞金が受け取れるため、物理的に首を持って行く)羽舞の望みは、「いずれMr.エレガンスを殺す」の一点のみ。自由を奪われ「クロックワーク・ガール(機械仕掛けのお人形)」にされてしまった女の、自分自身を取り戻す戦いが始まった……。
一言でまとめると「サイス=マスターみたいな変態に人生を狂わされた女による『続・殺戮のジャンゴ』」。尺が40分弱しかなく、劇場公開された作品にしては短いが、かったるい心理描写や日常描写を削って本編の半分以上を戦闘シーンに費やしているため、アクション映画としての満足度は高い。サイボーグ犯罪者どもが腕をガシャガシャガシャ!と変形させて銃弾乱射したり小型ミサイルを巻き散らしたりと派手な銃撃戦を繰り広げます。とにかく映像が見ていて気持ちいいんですよね。梅津泰臣と言えば『A KITE』や『MEZZO FORTE』など18禁OVAでありながら激しいアクションシーンが売りの監督で、『ガリレイドンナ』や『ウィザード・バリスターズ 弁魔士セシル』といったTVシリーズはあまり当たらなかったが、海外でもマニアックな人気があることで有名。リアリティがある、というのとはまた違う、偏執的なこだわりが発揮された「動き」でこちらの脳をゾワゾワゾクゾクさせる。通常、ガンアクションはアニメよりも実写の方に分があるジャンルなんですが、「アニメならではの快楽」を追求したガンアクションといった趣で実写作品にはない特殊な栄養分を補給させてくれます。
時間がない人はとりあえず動画の26分40秒あたりから再生してください。このアニメの大トロ部分をいきなり味わうことができます。いやぁ、期待していたけど期待以上の出来だった。梅津さん、もうとっくに還暦を過ぎてそろそろ70が近くなってきたのに、まだこういうアニメ作れるんだなぁ。「シリーズ」と謳っているから続編を制作する気も満々なんだろうが、これだけ凝っていると時間が掛かりそうだ。スタジオも「シャフト」だしな……まどマギ映画の新作を公開予定間際になって半年も延期したことでお馴染みの。
それにしてもMr.エレガンスが突然凶行に走ったの、羽舞が「何者か」に狙われていることを察知して「それなら俺が先に……」と手を出した感じだったから、2作目以降では「羽舞を狙っていた何者か」がストーリーの軸になっていくのかな? 「乃愛・アンドリエット」や「ヴェスパ」など、キャラ紹介ページに載ってる子たちも顔見せ程度で活躍するシーンはない。せめてガンパンの最終章ほどは時間を掛けずに完結まで走り切ってほしいものだ。
2026-03-15.・WBC、他力状況に追い込まれて2次ラウンドへの進出はもはや困難か……と思われたアメリカが「イタリア5点ゲット」した瞬間にほぼ復活が確定したりと、相変わらず劇的な展開が続いて面白かった焼津です、こんばんは。2次ラウンドではカナダを破ってベスト4入りが確定しましたね。
一方、奇跡的にベスト8入りしてマイアミへの切符を掴んだ韓国は2次ラウンドの初戦でドミニカ共和国にワンサイドゲームされてコールド負け。日本や台湾は結構苦戦したのに……新章に突入した直後、主人公たちが苦労して倒した敵をポッと出の新キャラが瞬殺する現象を目の当たりにした感じでした。日本は明日(日付的にはもう今日か)、強豪ベネズエラとの対決。どうなるかドキドキハラハラしますね。
・田中一行「ジャンケットバンク」TVアニメ化 真経津役は斉藤壮馬、御手洗役は安田陸矢(コミックナタリー)
なにっ、『ジャンケットバンク』がアニメ化だと!? 単行本揃えてるくらい好きなマンガなんでビックリした。「銀行が秘密裡に違法なギャンブルを取り仕切っている」という設定で、「たまに死人が出るけどそれが表沙汰にならないよう『処理』する連中もいる」という「それなんてマフィア?」な話です。既存の作品で言うと『嘘喰い』が一番近いかな。『嘘喰い』も結局、本格的なTVアニメ化はしなかったし、ジャケバンも「人気はあるけど倫理的な問題があるからアニメ化しないまま続ける枠」かなー、と思っていました。いえ、『嘘喰い』は倫理面どうこうというより、昔作ったOVAの出来があまりにも悪くて作者が怒ったからその後の企画が立ち消えになった臭いんですけど……確かパチンコか何かにはなってたはずで、そっちの方でちょっと新たにアニメ作ったりもしてたんですっけ? 何であれ、恐らくMAPPAクラスの作画でもないかぎり原作者はGOサイン出さないと思います。
話を戻して『ジャンケットバンク』、銀行員の「御手洗暉」を視点人物に据え、謎のギャンブラー「真経津晨」が時に命すら賭けて勝負する様を追っていく。御手洗くんはたまに活躍するエピソードもありますが、最近はちょっと空気ですね……個性的なギャンブラーが次々と登場することもあり、銀行員は黒子というかサブキャラっぽいポジションに落ち着いている。ギャンブラーたちがどれくらい個性的かと言うと「お客様は神様だが 納得いかねぇなら殴ってもいい」と嘯くチェーン店の代表取締役が「そこそこ印象的」止まりになってるぐらい全体的に濃い。命賭けてるから死ぬキャラも多いが、生き延びたギャンブラーたちが仲良く遊ぶ回もあって、「きららマンガみたいで楽しい」と血迷い始める読者も少なくない。アニメは、切り所を考えると第6ゲームの「ブルー・テンパランス」あたりかな。単行本で言うと9巻。どんどんルールが複雑になっていくタイプのマンガなんで、アニメの視聴者が付いてこれるかどうか少し心配だ。原作もコメント欄を除くとちょいちょい付いて行けなくて雰囲気だけでエンジョイしてる人もいる。あ、『ジャンケットバンク』はジャンプ+とかで「初回無料」配信されているから「いっぺんザーッと読むだけ」なら課金しなくてもOKです。ただ、「ルールが複雑」だからじっくり読み込みたいのであればやっぱり単行本を買った方がいい。
制作スタジオは「CUE」。DMMグループに属する新興スタジオで、TVシリーズは4月放送予定の『キルアオ』が初の元請け作品。ジャケバンは10月放送予定なので第2弾です。あと放送時期は未定だが、『炎の闘球女 ドッジ弾子』も今年やる予定。てか、今の段階で未定なら7月か10月だよな……ジャケバンよりも先になる可能性もあるか? 監督は「岸誠二」、『瀬戸の花嫁』や『天体戦士サンレッド』、『Angel Beats!』、『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』、『暗殺教室』などを手掛けたベテランです。シリーズ構成は「深見真」、最近は小説の仕事よりも漫画原作がメインになってきた作家。アニメ関連だと虚淵玄と組んでやった『PSYCHO-PASS サイコパス 』が有名かな。なにげに百合好きで、『ゆるゆり』3期の脚本を書いていたりもいる。声優は真経津役が「斉藤壮馬」、御手洗役が「安田陸矢」。斉藤壮馬はリメイク版『るろうに剣心』の剣心役を演じていますね。安田陸矢は最近だと『真夜中ハートチューン』の主人公、「この山吹!」な山吹有栖を演っている。正直、低予算なムードがぷんぷん漂うけど布陣的にそこまでヒドいことにはならない……はず。期待しすぎない程度に期待しておこう。
しかし、ジャケバンがアニメ化ってなると他のギャンブルマンガにも希望の光が射してきたな……イケるか? 『ギャンブルフィッシュ』、『賭博覇王伝 零』、『幕末賭博バルバロイ』。
・拡大公開が始まったおかげで地元でも観れるようになった『超かぐや姫!』、映画館で鑑賞してきました。
劇場公開前提ではないせいで、「ここは大きいスクリーンで眺めるとちょっと……」なシーンもいくつか散見されたが、かぐやといろはの表情豊かなフェイスを大スクリーンで堪能できたのはやっぱり楽しかったし、ようつべで公開されて何度も聴いてる曲を大音量で浴びることができる体験は格別だったし、概ね満足しました。しかし、拡大の初日とはいえ、とっくにネトフリで配信されている作品があそこまで混むとは……入場時間が別スクリームのドラえもんと重なったらしく、ロビーがえらいことになってました。映画館のスタッフが「こちら最後尾でーす!」「ここで折り返してくださーい!」と大声で列整理していて、まるで鬼滅の初週みたいな有様。余裕を持って到着したのに明かりが消えるギリギリのタイミングで座ることができました。ザッと見た感じだと、300人以上入るシアターが8〜9割くらいは埋まっていた印象。うちみたいな田舎にここまで「『超かぐや姫!』を初日に観たい」という客が駆け込んでくるとは……そんなほぼ満員に近い状態だったのに、なぜか私の隣の席はポッカリ空いてました。
ここで説明しておかないとかもなので説明しますが、私は初日のチケットを予約開始直後にポチりました。同じ考えだった人が複数いたらしく、予約システムへ数秒の入場待ちを喰らった後、なんとか真ん中のイイ席が取れたんです。念のため「本当に予約できているかどうか」確認するため時間を置いて再アクセスしたのですが、ほんの10分でイイ席はほとんど埋まっていて、もうイマイチな席しか残っていなかった。だから、本当なら私の隣も予約で埋まっていたはずなのです。地元の映画館は一度決済したらキャンセル不可能な仕様なので、「やっぱやーめた」と気軽に取り消したりすることはできない。恐らく何らかの事情で鑑賞を断念せざるを得なかったのでしょう。だから空席がポッカリと出来てしまった。しかも、空席は一つじゃなくて二つ……たぶんペアチケットを買ったのだと思われる(『超かぐや姫!』は特別興行なので各種割引が適用されない代わり、ペア割引だけ設けられている)。誰かにチケットを譲ることもできないまま上映時間を迎え、ほぼ満員に近い劇場の中に生じた空白……何かのドラマを感じてしまう瞬間でした。
なお、拡大公開初日の動員数はゴールデンカムイに次ぐ2位、観客がどっと増える土曜日は座席数を減らされた(ドラえもんとかビーバーは土日の客がメインなので、どうしてもそっちの方に席を割く劇場が多い)せいもあって5位まで下がったが、新作と競り合うレベルなのでかなり稼いでいます。既に累計興収は10億円を突破しており、オリジナルアニメ映画としてはかなり異例な規模のヒット作となりつつある。現時点で『心が叫びたがってるんだ。』(最終11.2億円)や『プロメア』(最終15億円)に並ぶクラス。こんな逆の意味で「公開規模を間違えた」アニメは初めて観るな……。
・同日に『パリに咲くエトワール』も観た。
「谷口悟朗」監督による松竹肝煎りのオリジナルアニメ映画。脚本はいくつものアニメを手掛けてきた大ベテラン「吉田玲子」、制作は『モンスター娘のお医者さん』や『月とライカと吸血姫』、最近だと『九龍ジェネリックロマンス』を手掛けた「アルボアニメーション」。1912年、第一次世界大戦前夜のパリを舞台に、夢を追いかけて渡仏してきた少女たち二人の奮闘を描く。拡大解釈すれば「百合」と言えなくもないが、普通に「シスターフッド(女性の友情)映画」と受け取った方が良さそうです。結論から言うと「超高速世界名作劇場」であり、「ヨロイとカギ爪の男が出て来ない『ガン×ソード』」。エルドラ5とかキャプテンカイジとか、あのへんのノリがひょこっと顔を出してくる。そういえば谷口悟朗、2年ほど前に『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』とかいう映画の監督もやってたけど、まだ観てなかったな……あとで観よう。
二人の出会いは1907年――絵を描くのが好きで、画家を夢見る少女「継田フジコ」。室町時代から続く薙刀道場の跡継ぎ娘にして、バレエダンサーを夢見る少女「園田千鶴」。5年後、明治時代の終わりが迫る1912年。二人は再会し、花の都パリで二つの夢が交錯する。バレエダンサーになりたい気持ちを押し殺そうとする千鶴の背中を押し、バレエの先生を紹介したフジコ。少しずつ、でも着実に夢へ近づいていく千鶴だったが、世界情勢はどんどん不穏な色を帯びていき、二人の夢にも暗雲が差し掛かり始める……。
正直、あらすじだけ読むと何も面白くないので予告編とかはいちいちチェックしなくていいです。ぶっちゃけこの映画の宣伝を目にして、内容が良いかどうかはともかく「売れそう」「ヒットしそう」と感じた人はほとんどいないはずだ。「オタク臭くない、子供も大人も安心して鑑賞できるアニメ」って、率直に言って興行的な需要がないんですよね。よくわからないオリジナルアニメ映画を観るくらいならドラえもんかコナンの新作を選ぶ、というのがこの手の映画が喉から手が出るほど欲しがっている「一般観客層」のごく一般的な選択なので。アニメオタクにしても、このキャラデザとキャスティングではあまり食いつかないでしょう。フジコ役は女優の「當真あみ」、過去に『かがみの孤城』のアニメでも主演している人です。千鶴役はタレントの「嵐莉菜」、今回が声優初挑戦。一応、二人とも聞き取れるレベルでしっかり発声しているが、まるで舞台劇のような声の張り上げ方なので普段からアニメ映画を観慣れているオタクは違和感を覚えるかもしれません。一本調子というか、そこまで必死にならなくていい場面でも必死な喋り方をしているせいで、本来目立つべき「必死な場面」が埋没してしまっている。これよりヒドい「声優初挑戦」はいくらでもあるのでまだマシな部類だが、耳の肥えている今のオタクが魅力を感じる演技だとは到底言えません。
吉田玲子が脚本なのでシナリオは手堅くまとまっていますが、前半1時間くらいはひたすら紋切り型(クリシェ)なやり取りが続くので退屈します。もうこれに関しては「企画側のオーダーがこれだったんだろう」と割り切るしかない。「職業婦人」という言葉が普及する前、「女が仕事で身を立てようとするな」「結婚して家庭に入れ」と要求してくる親兄弟の「圧」を跳ね返し、真に進みたい道を選んで己の足で歩いていく……「心の強さでもう一丁!」な女一代「ただのエトワールじゃねぇぞ 何度でも心の強さで立ち上がり前に進む ド級のエトワール ドエトワールだ!」記。あ、書き忘れていましたがエトワールはフランス語で「星」のことで、パリのバレエ団におけるトップダンサーを意味する。細かい違いはあるけど「プリマドンナ」とだいたい同じ意味と思ってもらっていいです。フジコの画家志望設定はそこまでスポットが当たらず、どちらかと申せば「バレエダンサーを目指す千鶴の奮闘」の方がストーリーの軸になっています。そのためバレエに興味が持てないとなかなか集中力が続かないのが難点か。専門的な知識はさほど必要ではなく、曽田正人の『昴』を何冊か読んでる程度で充分です。後半はクライマックスの手前まで千鶴が壁にぶつかる→乗り越えるという展開を何度か繰り返しますが、このへんのテンポは『将太の寿司』ですね。「僕は馬鹿だ……! 〇〇に気を取られて××を見落としていただなんて……!」というロジックでサクサク進みます。そして最後が「ヨロイとカギ爪の男が出て来ない『ガン×ソード』」。お行儀のいい映画作らされて監督もいい加減フラストレーションが溜まっていたのかな……と邪推してしまう。
映像面はかなりレベチな一本。「大スクリーンで上映する」ことを前提に驚くほど気合を入れて作画しまくっているので、引きの画面での情報量がスゴいんですよ。スゴすぎて自然な印象しか残らないため、スゴさが伝わりにくい。確か企画の開始が2019年で、コロナ禍による停滞があったとはいえ足かけ8年は制作していた勘定になるから作り込みの細かさは狂的な域に達しています。クライマックスの凄まじさはテレビやタブレット、ましてやスマホの画面程度では到底伝わらない。まるで「その場にいる」ような臨場感さえ漂っていた。断言しても構いませんがこの映画、「興味はあるけど配信待ちでいいや」という方はいざ配信が来た日、劇場で観なかったことを後悔するハメになります。「嗚呼、この偏執的な精緻さをデッカいスクリーンで堪能したかった……だがもう遅い!」と追放ざまあ系の追放者側並みに慚愧の念に駆られること請け合い。あれだけガラガラだと上映回数やハコのサイズはえげつない勢いで削られていくだろうから、気になっている方は早めに観に行ってください。
だって、公開初日でそこそこいい座席数貰っているのに動員ランキングTOP10圏外で推定1200万円のスタートですよ。『ChaO』とか『トリツカレ男』よりはマシ、というレベルでしかなく、相当ヤバい。客のほとんどはドラえもんの新作かディズニー&ピクサーの新作(『私がビーバーになる時』)に流れてしまっているようです。悲しいけど、これがオリジナルアニメ映画を取り巻く現実なのよね。『超かぐや姫!』という例外中の例外が同じ日に超拡大公開をかますという事故みたいな状況になっているけど。『超かぐや姫!』の13日デイリー興収は約1.2億円なのでほぼ10倍。上映規模は1/2程度なので、勢いとしては20倍くらい。収容人数300名以上のシアターが満席に近かった『超かぐや姫!』に比べ、『パリに咲くエトワール』はレイトショーだから少ないのは当然とはいえ、200人は入るシアターに私含めて10人ちょっとしかいなかった……包み隠さず「ヤバい」と申し上げておきます。
ちなみに、フジコと千鶴が出逢った1907年というのはちょうど同じ日に新作公開された『ゴールデンカムイ』と一緒です。少女二人が交流している頃に北海道で杉元たちが刺青人皮を巡って争っていたんだと思うと胸が熱くなるな。リアルだとガストン・ルルーの『黄色い部屋の秘密』(創元版だと『黄色い部屋の謎』)が連載されていた頃ですね。ただし、作中の事件は1892年発生。このへん(第一次世界大戦前)のフランスをベル・エポック(良き時代)と呼んで懐古する向きもあるが、日本人だと「ベル・エポック」と言われてもあんまり具体的なイメージが湧かないんだよな。「怪盗紳士」アルセーヌ・ルパンが暗躍したのがこの時代なんで、とりあえず『怪盗ルパン伝アバンチュリエ』をオススメしておきます。一世を風靡したけど、ルパンに比べて「忘れられた怪人」となっている『ジゴマ』もこの時代。「怪人二十面相」の元ネタである「ファントマ」も大暴れしており、まさに世は「大怪盗時代」といった趣だ。「残酷」の代名詞であった「グラン・ギニョール劇場」が隆盛を極め、俗悪な娯楽が流行っていた――という背景もあります。フランス以外だとイギリスで「ブラウン神父」シリーズが人気を博していた。日本だと夏目漱石が新聞連載で活躍。二人がパリで暮らし始める1912年はタイタニック号が沈んだ年でもあるので、実は『タイタニック』が同時代を舞台にした映画ということになります。「タイタニックが沈没した」ところから物語が動き始めるドラマ『ダウントン・アビー』も自動的に同時代作品となる。ちなみにYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)のメンバー「細野晴臣」の祖父「細野正文」がタイタニック号からの生還者です。パリエトがキッカケでベル・エポック・ブームとか到来したら面白いけど、まずはもう少し口コミか何かで評判が広まらないとですね。
2026-03-11.・普段野球はあまり見ないけど、『サンキューピッチ』面白いし『超かぐや姫!』のためにネットフリックス入ったし、ついでだからWBC観戦しとくかぁ……と軽い気持ちで眺めていたらメチャクチャ白熱する試合続きで興奮した焼津です、こんばんは。
『サンキューピッチ』を「へ〜」と感心しながら読むレベルなので別に詳しいわけじゃないんですが、念のため解説しておきますとWBCというのは「ワールドベースボールクラシック」の略で、ちょうど20年前に始まった国際野球大会です。毎年開催されるわけではなく、数年おきの開催(本来はオリンピックよろしく4年周期にするつもりだったが、2005年に開催する予定だった第1回が調整に手間取って翌年へズレ込んだり、コロナ禍の時期は中止だったりでもうグチャグチャ)であり、今大会で第6回となる。野球の大会としては比較的歴史が浅く、世界における認知度もやや微妙なところですが、「各国のエースたちが球団の垣根を越えてドリームチームを結成する」ことに浪漫を感じる人も多くて年々注目度が上がってきています。日本のチーム、いわゆる「侍ジャパン」は第1回、第2回、第5回と過去3度に渡って優勝しており、優勝していない第3回と第4回も3位になっているのでWBCの中では「強豪チーム」という位置付け。今回も優勝候補のひとつに数えられている模様。
WBCは20の参加国を4つのプールに分け、各プール5チームに総当たりで試合をやらせ、勝ち星の数に応じて各プールの上位2チームを決定。ベスト8を選出し、そこから準々決勝→準決勝→決勝とトーナメント方式で優勝を争います。日本が振り分けられたのは「プールC」、開催地は「東京ドーム」。他の面子は「韓国・台湾・オーストラリア・チェコ」。ホームとも言うべき球場での試合であり、日程的にも余裕があってかなり有利と目され、「よほどの不運に見舞われないかぎり高確率で1次ラウンドは突破できるだろう」と楽観する野球ファンが大半でした。
日本の初戦は3月6日、相手は「チャイニーズ・タイペイ」……要するに台湾のことです。「台湾を独立国とは認めていない某国」に配慮して、世界的な大会ではこの名義を使うことになっているそうな。エロゲー声優が表の仕事をするときに別名義を用いるような感覚かな? ともあれ、台湾戦では大谷翔平がグランドスラム(満塁ホームラン)をキメるなど侍ジャパンの打線が大暴れ、相手チームには1点も入れさせず「13-0」で7回コールド勝ちとなった。このとき、周囲が歓喜に沸く中で誰かがボソッとコメントしてたんですよね。「このまま勝ち進めば問題ないが、もし縺れて2位争いになった場合、少ない回(イニング)で勝ったことがアダになる」と。私は「縺れる」がどんな状況かわからなかったので「ふーん」と聞き流していました。
日本の第2戦は3月7日、相手は韓国。1回表でいきなり韓国に3点も先制されるという暗雲の立ち込める開幕だったが、1回裏で鈴木誠也が2ラン、3回裏で大谷翔平がソロホームランを打って素早く追いついた。このときの大谷の「はい同点〜!」連呼は小学生みたいで笑った。同じ3回裏で鈴木と吉田正尚もソロホームランを飛ばし、「5-3」に逆転。しかし韓国も4回表で「キム・ヘソン」が2ランホームランを打って「5-5」の同点に戻し、乱打戦の様相を見せ始める。激しい打ち合いの末、「8-6」で日本が勝利。結構な接戦で見ていて面白かったです。
3月8日は日中に韓国vs台湾戦で、夜に日本vsオーストラリア戦というスケジュール。韓台戦は結果次第で日本の1次ラウンド通過が確定する(台湾はこの時点で1勝2敗、韓国は1勝1敗、もし台湾が勝てば韓国の3勝コースは消えるので、両チームに勝っている日本は自動的に2位以上となる)大切な試合だったこともあり、最初は「ながら見しようか」とテレビつけたまま他の作業してましたが、互いに点を取ったり取られたり、激しいシーソーゲームを繰り広げているものだからつい作業をやめて見入ってしまった。最終的に「5-4」で台湾が競り勝つという劇的な結果を迎え、日本は最低でも2位で通過することが確定。台湾の野球チームが韓国に勝つのは初めてということで、台湾が大騒ぎになる中、「台湾=確実に勝てる相手」と見做して勝ち星を拾いに行くつもりだった韓国サイドは愕然としていました。日韓戦で活躍したヘソンが泣き崩れる様は痛々しかったですね。「どちらかと言えば韓国が有利」と見られていた試合なので、番狂わせというほどではないにしろ、うっすらと想定していた状況から徐々にズレ始めた印象を抱いた野球ファンもいたようだ。
この時点の状況を整理しますと、プールCの5チームのうち「チェコ」は既に3連敗しており、1次ラウンド敗退が確定。上述した通り、日本は最低でも2位での通過が確定した。未確定なのはオーストラリア、韓国、台湾の3つ。複雑な三つ巴の様相を呈し始めたのです。8日の日豪戦でオーストラリア(既に2勝している)が勝利すれば、オーストラリアは9日の韓国戦を待たずして1位通過が確定。日本が2位となり、韓国と台湾の可能性は消滅します。しかし日本が勝てば「日本の1位通過」が確定する代わり、2位がどこになるか簡単にはわからない混沌とした状況になってしまう。9日の豪韓戦次第で韓国や台湾が2位通過する可能性もある。こうした事情から、皮肉なことに、日本に負けた台湾と韓国が揃って「頼むからオーストラリアに勝ってくれ!」と懇願する不思議な現象が発生しました。
天覧試合ということもあって厳重な警備の中で行われた日豪戦、「4-3」となかなか際どいスコアで日本が勝利し、いよいよ熾烈な2位争いが始まった。9日の豪韓戦でオーストラリアが勝てば3勝で2位通過決定。しかし負ければ豪・韓・台の3チームすべてが2勝2敗になり、三者間での「失点率」を巡る戦いになる。韓国はただ勝つだけではダメで、最低でも「5-0」のスコアで勝たないと2位通過できない。仮に「4-0」のスコアで勝った場合、失点率の差からオーストラリアが2位通過となります。5点差なら「6-1」や「7-2」のスコアでも韓国は2位になれる。ただし、「8-3」から先に行くと失点の重なりによって台湾が2位に浮上してしまう。「大量に点を取りつつ失点を2点までに抑えなければならない」というミッションインポッシブルじみた非常に厳しい条件が課せられていたわけです。しかも点を取り過ぎてコールド勝ちした場合、「失点を2点までに抑え」たにも関わらず「イニングが少なくなった」影響で失点率が上がって3位に転落しかねない……日台戦のときに誰かが呟いた「少ないイニングで勝ったことがアダになる」という伏線が回収されて、思わずゾクゾクしましたね。
韓国が2位通過するために許されるスコアは「5-0」か「6-1以下」か「7-2以下」、コールド勝ちした場合はまた計算が違ってくるので8点以上取るのは危険……観戦しているこちらも詳しい人の計算結果を参照しながらでないとよくわからないほど複雑怪奇な勝利条件を、野球しながら満たさねばならない。棚ぼた狙いの台湾は韓国に「8点以上取って勝て!」と応援しつつ、同時にオーストラリアへ「3点奪え!」と要求する異常な試合。韓国は5回表までの積み重ねで「5-0」という奇跡的なスコアを実現し、2位通過の可能性を示すが、「たとえ試合に負けても1次ラウンドは通過してみせる」という気迫を見せたオーストラリアが5回裏で1点取って「5-1」。すかさず6回表で韓国が取り返して「6-1」。しばらくそのままスコアが動かなくなったが、8回裏でオーストラリアが1点入れたことにより「6-2」、またしても天秤の傾きが入れ替わった。しかし韓国も執念を見せ、9回表で点を入れて「7-2」……あと1点取ったら台湾も候補になるというスゴい試合展開になった。しかしそれ以上の点は入らず(取る意味がないというのもあるが)、台湾の可能性はほぼ消滅。韓国に台湾をアシストする理由がないので、もともと「うっかり点を取り過ぎてしまう」ケース以外での勝ち筋はなかったのだ。あとは韓国がこのスコアを守り切れるかどうかという争いになった。1点でも奪われたら、試合に勝てても1次ラウンド敗退が決まる――薄氷を踏んで歩くような、針の穴に糸を通すような、そんな限界ギリギリのシチュエーションで見事3アウトをキメて、「試合に勝利しつつ準々決勝への進出も確定させる」ミラクルを達成。台湾戦の敗北で泣き崩れていた韓国の選手が今度は嬉し泣きでしゃがみ込むという「地獄の底から生還した」ような光景に、高みの見物を決め込んでいたこちらも思わず興奮しました。
ぶっちゃけゲームとしては日本の絡んだ4戦よりも韓台戦と豪韓戦の方が面白かったですね。日豪戦は「できれば1位通過したい」という思惑からある程度の緊張感は漂っていましたが、ハラハラ感はそこまでなかった。10日のチェコ戦は完全に消化試合でしたし。サトリア選手の「速くはないがコントロールの良い」投球が光る渋い投手戦ではあったけれども。自国チームでもないのにこれだけエキサイトできたんだから、韓国・台湾・オーストラリアの野球ファンはテンションがヤバかったでしょうね。「あかん、心臓ドキドキし過ぎて見てられへん!」みたいな。それはさておき、準々決勝は13日から始まって、15日から準決勝、そして17日に決勝という段取りになっています。まずは2次ラウンド、ベスト4に入れるかどうかの戦いか……ワクワクしますね。
そんな感じでプールCは全日程終了しましたが、まだ終わってないグループで面白いことになっているのがプールB。なんと優勝候補の一つだったアメリカが敗退の危機に瀕しています。「2勝が並んで2位争いになった」プールCと異なり、プールBは下位2チーム(イギリスとブラジル)の敗退が早々に決まったものの、1位から3位が未だに流動的で未確定な三つ巴状態となっている。明日12日の「メキシコvsイタリア」戦でイタリアが勝てば「イタリア全勝、アメリカ3勝1敗、メキシコ2勝2敗」ですんなり順位が決まりますけど、もしメキシコが勝った場合、3チームすべてが3勝1敗で並び失点率の計算で順位を決めることになります。メキシコが取った得点次第でアメリカが3位になり得る。
3勝もしてるのに進出できない、というのも何だか奇妙な話ですが、これは最下位のブラジルが全敗、4位のイギリスが1勝3敗――つまりブラジル以外には全部負けているということで、3勝のうち「ブラジルとイギリスに対する勝ち星2つ」は3チーム全部持ってるから進出を巡る条件には関係してこない……っていうごく単純な理屈です。しかしアメリカの監督は何を勘違いしたのか、11日のイタリア戦の前に「もう準々決勝進出は決まっているけど」といった趣旨のコメントを漏らしてしまった。つまり、「できれば勝ちたいけど進出条件は既に満たしているから負けても別に構わない」、そこまで言わなくても「必死になって勝たなくてもいい」と錯誤して戦力を「温存」した疑惑があるのです。アメリカの野球ファンは大荒れで、監督に罵詈雑言を浴びせまくっている。一応、アメリカにも乏しいとはいえ勝ち上がりの可能性はまだほんのりと残っていますが、「厳しい条件を満たせば自力で2位になって進出できる」状況だった韓国と違い、完全に「他力」でイタリアの勝利orメキシコが最低でも5点取って勝つことを祈るしかない。生殺与奪の権をイタリアとメキシコの両国に握られている状態なのです。
イタリアとメキシコが明確に「密約」を交わすまでもなく、阿吽の呼吸で「お互い本気を出さない」ことに合意すればアメリカの道は鎖される。準々決勝が控えているので、イタリアにしろメキシコにしろ「死に物狂いで勝ちに行くのはアド損」と判断し、余力を残そうとするだろう。あまり露骨にやれば「八百長」「無気力試合」と非難されるだろうが、「温存も戦略のうち」というのであれば外野(アメリカ)はとやかく言えない。イタリアとメキシコも「戦力を『温存』しているアメリカをトーナメントに進ませて決勝でもう一度当たるケースを考慮すれば、このままコイツと一緒に上がった方がいい」と損得勘定するでしょう。アメリカはただ指を咥えて両国が準々決勝進出への切符をシェアする様子を見守るしかないのだ。まるで『ONE OUTS』だな。「こんな戦略が通る穴だらけのルールを決めたMLBが悪い」と言われたらそれはそう。
決勝トーナメントはヒューストンとマイアミで行われるのに、アメリカの球団はどこにも存在しない……そんな椿事が発生する可能性が高まっており、「よもやよもやだ」と言うより他にない。これまで2次ラウンドでの敗退とかはあったみたいですが、最低でもベスト8には滑り込んでいた国が1次ラウンドで早くも消える……かもしれない。大波乱の兆しに目が離せません。入ってよかった、ネットフリックス。試合のみならず盤外戦まで面白いなんてな。ちなみにプールAはプエルトリコが2位以上で進出確定、明日12日の「カナダvsキューバ」戦でもう1チーム、勝った方が次に進めます。プールDはベネズエラとドミニカ共和国がそもぞれ3勝で勝ち抜け確定していますが、明日12日の直接対決で順位が決定する。勝った方が韓国の準々決勝、負けた方が日本の準々決勝の相手になります。ベネズエラもドミニカも死に物狂いで戦う理由はない(というか準々決勝に向けて余力を残さないとヤバい)から消化試合になるかな? この2国が「日本と当たりたくない」と思っているなら「ちょっと本気出す」モードかもしれませんが。
2月に開催された「EVANGELION:30+;」(30周年記念フェス)で公開された短編アニメーションです。ふざけた内容とはいえ15分程度とそこそこのボリュームがあって見応え充分。「惣流・アスカ・ラングレー」と「式波・アスカ・ラングレー」、つまり旧アスカと新アスカのコンビ「ダブルアスカ」が漫才するという、「本当に公式の動画か?」と目を疑う一本です。この直球すぎるほどの内輪ノリ、まさに90年代の亡霊といった趣である。クリームパンダ役でお馴染み「長沢美樹」が伊吹マヤ役として未だに引っ張り出されているのが味わい深い。
「まるで昔出していたドラマCDのようなトンチキさ」と懐かしさを感じている古参も多かったが、私はパラレルな存在である旧アスカと新アスカが会話する中で「世界線」という用語が飛び出したことに軽い驚きを覚えました。以前はパラレルワールド物の場合、「別の世界」を表現する際に「時間軸」とか「並行宇宙」とか「可能世界」とか「異なるチャート」とか、様々な言い方をしていて統一されてなかったんです。世界線という言葉もなくはなかったが、そんなにメジャーな用語として普及していたわけではなかった。オタク方面のフィクションで世界線という言葉を定着させたのは皆さんご存知『STEINS;GATE』です。シュタゲが発祥ではないけど、シュタゲの影響で広まったことから「世界線≒シュタゲ用語」として認識されています。
ただ、シュタゲ知ってる人にはわざわざ解説する必要もありませんが、シュタゲのストーリー内で扱われている「世界線」とオタク方面のフィクションでよく使われる「世界線」って実は別物なんですよ。いくつものパラレルワールドが、まるで細長い無数の串みたいに乱立している――というのが現在よく使われる「世界線」のイメージだと思います。要するに「パラレルワールドの一つ」を指す言葉として用いられるケースがほとんど。ダブルアスカの漫才でも概ねこの意味で使われている。しかし、シュタゲにおける「世界線」のイメージは「無数の串」ではなく、むしろ「たった一本の串」なんです。いくつものパラレルワールドが過去から未来までずーっと存在しているわけじゃなく、その揺らぎを解消し「様々な可能性をたった一つに絞り込む」ことで主人公が望む世界を「正史」として確定しようとする。「ああ、いろんな串があるんだなぁ」という話ではなくて、たった一本しかない串で何を刺すのか……気の抜ける喩え方をすると、「おでんの具を決める」物語なわけだ。
シュタゲのストーリーの根幹にも関わってくる言葉だけど、ハッキリ言ってオタク用語としては使いづらいので、わざとなのか誤解に基づくものなのかは不明だが、本来とは異なる意味の用語として定着したのです。こういう現象は割とよくあることで、同じオタク用語だと「ツンデレ」も当初の意味とはだいぶ違う形で定着していった。本来は特定の誰か(概ね主人公)に対し取り付く島もないほどツンケンしていた子が、時間経過や関係の変化に伴って見る影もないほどデレデレに惚れ込んでしまう……というギャップを強調する言葉だったのに、わかりやすく説明するために「べ、別にあなたのためにやったんじゃないんだからねっ!」というテンプレ台詞を添えた結果、「ツンケンしているように振る舞っているけど好意がバレバレな様」を指す言葉に変質していった。「べ、別に(以下略)」はツン期からデレ期に移行しつつある端境期、いわゆる「デレかけ」の状態を表現するテンプレ台詞だったのだが、テレビの番組で「デレかけ=ツンデレ」と粗雑に解釈された結果、そっちの方で広まってしまった。今や本来の意味で使う方が変な環境になっているので、もう訂正とかは諦めて受け容れています。
「本来の意味からズレた用途で定着してしまったフィクション由来の言葉」、もっとも有名なのは「黒歴史」だろうか。今や「元はガンダム用語」ということを知らない人まで使っているところを見掛ける。90年代末に放送された『ターンAガンダム』の劇中に登場する言葉で、「記録が残っておらず完全に空白となった過去の歴史」を指す。いろいろあって主人公たちは失われた歴史が保存されている遺跡に辿り着き、そこで驚愕すべき黒歴史の中身を知ることになるわけですが、現在は単に「忘れたい過去のイタい言動や不行跡」という意味で使用されることがほとんどです。「塗り潰されて見通すことがまったく出来ない」「知の拒絶」という深刻な意味だった「黒」が、「後ろ暗い」「直視したくない」「否定したい」ぐらいのニュアンスに緩和されている。2010年に『あるいは現在進行形の黒歴史』というライトノベルが発売されており、もう十数年前から異なる意味で定着していたことになる。去年は『転生悪女の黒歴史』もアニメ化されたし、むしろ「本来の意味」の方がマイナーになってきています。
オタク用語とはちょっと違うけど、「インメルマン・ターン」もちょっと複雑ですね。これは航空機のマニューバ(操縦・機動)の一つで、第一次世界大戦のときの撃墜王「マックス・インメルマン」に因んで名付けられています。インメルマンの得意技だったからインメルマン・ターン……と素直に受け取っている人が多いのだが、実は現在インメルマン・ターンと呼ばれているマニューバはインメルマンが使った技とは別のものなんです。そもそも第一次世界大戦の頃に使われたのは「レシプロ機」で、それに比べて遥かに高速な「ジェット機」と同様のマニューバなんか出来るわけがない。レシプロ機でうまく立ち回るための工夫としてインメルマンは独自のマニューバを生み出したが、第二次世界大戦以降、航空機の技術がどんどん進化して「レシプロ機で使っていた工夫」をわざわざ駆使する必要がなくなり、「(主に機体性能の関係で)インメルマンには不可能だったマニューバ」が新たに普及していった。なので正確に表現すれば「スーパー・インメルマン・ターン」と呼称するべきなのだが、撃墜王に敬意を払ったのか、「単に『インメルマン・ターン』の方がカッコいい」と思ったのか、経緯は不明だが「インメルマンが使ったことのないインメルマン・ターン」が用語として残り続けている。まぁ「有名人に因んでネーミングされたけど、当の有名人とは何の関係もなかった」なんてのはよくあることですね。ポケモンアニメの「ポリゴンショック」だって別にポリゴンが原因だったわけじゃないのに事件名として定着しちゃってるし……。
話が逸れまくった。EVAは庵野が主導する本編こそ完結したものの、「これだけのヒット作を終わらせるのは惜しい」と判断したのか、また新たなシリーズを開始しようと企画が動いているそうです。「エヴァンゲリオン完全新作シリーズ」としか書かれておらずタイトルはまだ不明ながら、シリーズ構成・脚本に「ヨコオタロウ」が抜擢されていることから「ヨコオEVA」と仮称されています。ヨコオタロウは『ドラッグオンドラグーン』や『ニーア オートマタ』を手掛けたクリエイターであり、『真説ゲームクリエイター伝』という漫画でも取り上げられているけど、あまりにもキャラとエピソードが濃すぎるせいでいくら書いても終わらず、全5巻中4巻以上がヨコオの話で埋まっているという凄まじさです。何ならこっちをアニメ化した方がいいんじゃない? ヨコオEVAが好評だったら他のクリエイターのEVAも制作されたりするのかな。虚淵EVAとか。いやそれ『Phantom』じゃん。
・「カナチョロ」こと『カナン様はあくまでチョロい』、メインPV公開。TV放送は4月から。
あ、カナン様のCVは古賀ちゃんなのか。なんとなく「大久保瑠美」だと思い込んでいました。古賀ちゃん、正確に書くと「古賀葵」は『かぐや様は告らせたい』の「四宮かぐや」役で有名な声優ですが、キャリアの初期に『天使の3P!』というガールズバンドアニメでローテンションな女子小学生「金城そら」を演じており、両方の作品を知っている人はイメージの違いにビックリする。ちなみにそらちゃんはドラマーで、古賀葵は別の役でオーディションを受けていたけど「ドラムが叩ける」という理由で起用された、という経緯があります(参照:かぐや様放送直前のインタビュー記事)。佐賀市出身で「佐賀弁が使える」ことから『ゾンビランド・サガ』に「天吹万梨阿」というサブキャラで出演したりしている。
しかし、PVに出てくるのは初期のキャラばかりで、恐らく中期以降に登場したキャラは2期が来ないかぎり出番がないんだろうな……と寂しくなる。私は生徒会書記の「先走菖蒲」や写真部の「隠音鳥」が好きなんですが、主人公の「供犠羊司」がカナン先輩一筋で他のヒロインには靡かないから、勢いサブキャラは目立つ機会がほとんどないんですよね。チラッと映ったりはするものの、スポットライトが当たることは稀。PVに「益荒男撫子」というスゴい名前の幼馴染キャラが出てきて、「この子とカナン様が恋の鞘当てを繰り広げるのか?」と想像した方もおられるでしょうが……ネタバレすると、この子は供犠くんに「異性愛」という意味での好意は寄せていないし、供犠くんも彼女を異性として意識しているわけじゃないのでラブコメチックな雰囲気は一切漂わない。割と大変なことになって、そのままフェードアウトした(たまにひょっこり出てくる程度になった)ので撫子ファンは泣いてるかもしれない。
単行本は先月の新刊で12巻と、結構な冊数に及んでいます。電子書籍での一括購入を検討している方は何かセールが始まるまで待った方がいいかも。講談社は割と頻繁にセールやりますからね。一気読みではなくポツポツと読む程度で良いなら「マガポケ」の利用をオススメします。昔はチケットが使えなかったんですが、確か一昨年あたりから急に使えるようになった。マガポケで読める単話版は単行本描き下ろしがない反面、カラー原稿が見られる(単行本は電子版でもモノクロのままだ)から併用が望ましい。アニメは恐らく単行本6巻あたりまで、7巻の表紙になっている生徒会長「神龍寺鉄花」が本格的に活躍するのは2期以降だろう……あるかどうか、現状ではよくわからんが。
・大武政夫「J⇔M ジェイエム」TVアニメ化!孤高の殺し屋と女子小学生の入れ替わりコメディ(コミックナタリー)
えっ、もうアニメ化すんの!? 1巻が出たのは2023年10月だからまだ2年半も経ってないのに……早いな。原作者「大武政夫」は一般的に「『ヒナまつり』を描いた人」として有名だが、かのタフシリーズの作者「猿渡哲也」の元アシスタントであり、タフ語録を公然と使う漫画家としても有名です。『J⇔M ジェイエム』は殺し屋の「J」といじめられっ子の女子小学生「恵」、ふたりの精神がひょんなことから入れ替わってしまい、仕方なくJは女子小学生の体で殺し屋としての仕事をすることに……というアクション系コメディ。人体破壊(ゴア)表現を抑えているためグロくはないが、ふざけたシチュエーションで人を殺すシーンもあり、ややブラックなノリ。
元孤児のJは暗殺能力だけで成り上がり、誰も手が出せないアンタッチャブルな存在として裏社会に君臨しているが、偏執的なほど「ハードボイルドな振る舞い」にこだわる変人でもあった。ハードボイルドに振る舞えば振る舞うほど、強者としてのオーラが出る――そんなジンクスを重んじているJだったが、うっかり恵ちゃんと頭をごっつんこした結果、漫画みたいな入れ替わりが発生した! 畜生、これじゃどんなに「ハードボイルドな振る舞い」をしても様にならない……! シチュエーション的にはだいぶコメディだし、「有名私立中学に入れなければゴブリン」という謎の張り紙をする恵の母など、いかにも『ヒナまつり』の作者らしいセンスが炸裂している。だが、アクション描写そのものはガチであり、「猿先生の元アシ」の面目躍如といったところ。肉体が「いじめられっ子の女子小学生」になったわけだから当然弱体化しており、真っ向から戦えばねじ伏せられる。いかに相手を油断させ、手早く仕留めるか。アサシンっぽさが存分に発揮されている。中身はオッサンとはいえ女子小学生がガンガン人を殺しまくるため、倫理的な問題からアニメ化は難しいのではないか? と考えられていたが、杞憂だった模様だ。「門限までに帰らないといけないから」と暗殺RTAを始める回は不謹慎で笑った。
まだ制作スタジオもスタッフもキャストも何もわかっていないが、『ヒナまつり』のアニメの出来が良かったことを思うとつい期待してしまうな。というか『ヒナまつり』、結局2期は来なかったな……ちょうど『ウマ娘』の1期目をやっていた頃(ヒナまつりのアニメとウマ娘のTVシリーズは同じ「及川啓」監督作品)だからもう8年前か。遠い目をしそうになるがそれは置いといて、『J⇔M ジェイエム』の魅力は「女子小学生の体に入ってしまった殺し屋」だけでなく、「殺し屋(オッサン)の体に入ってしまった女子小学生」の方も面白いってことですね。恵ちゃんは当然ながら殺しの技術とか一切有していないド素人なんですが、Jよりも遥かに頭が良く、演技力も高い。なのでJの理想とする「ハードボイルドな殺し屋」として振る舞うことができる。このへんのテンポの良さ・ノリの楽しさはやはり『ヒナまつり』で磨いた経験が活きている感じだ。Jは入れ替わったときの状況、「頭ごっつんこ」を再現して元に戻ろうと恵に提案するが、「家では毒親気味な母にイビられ、学校ではクソガキどもにいじめられる、そんな小学生ライフに戻りたくない」と拒否される。力ずくで強引に従わせようとするも、肉体的なパワーは向こうの方が上なのでどうにもならない……とにかく、「これはひたすら面白くなっていく漫画だな」という確信を抱かせてくれる。Jは「学校にろくすっぽ通っていない無学な殺し屋」なので、情操面は割と恵に近いんですよね。そのへんちょっと『レオン』っぽさがある。
『ヒナまつり』は面白かったが、どうしても「読んでない/見てない人に面白さが伝わりにくい」面があり、ブレイクし切らなかった憾みがある。『J⇔M ジェイエム』はシチュの面白さがストレートに伝わる題材なので、アニメの出来次第では大きく跳ねるかもしれない。これで大武政夫、ひいては猿先生が世界的に評価されてハリウッドがタフシリーズの映画化に向けて動き出すかもしれない……夢は大きく持っておきましょう。
・法月綸太郎の最新刊『法月綸太郎の不覚』、4月22日発売予定
おっ、久々の新刊だ。エラリイ・クイーンに倣って自分のPNと同じ名前の探偵を出演させている「法月綸太郎」の“法月綸太郎”シリーズ、えーと、これで確か15冊目だっけ?(既刊からのセレクション『名探偵傑作短篇集 法月綸太郎篇』は除く) 前作が2019年だったから7年ぶりか。法月シリーズの短編集としては『法月綸太郎の冒険』『法月綸太郎の新冒険』『法月綸太郎の功績』『犯罪ホロスコープT 六人の女王の問題』『犯罪ホロスコープU 三人の女神の問題』『法月綸太郎の消息』に続く7冊目。法月シリーズ、昔は新書サイズで売られていたんですが、最近はもうハードカバーが主流になっちゃいましたね……256ページで2090円(税込)というのは正直「高い」と感じるが、ギリ耐えられる値段。これが3000円とかだったらもう迷った末で断念していたかもしれない。
最近はホンマに本が高いですね……去年や一昨年もそう感じていたけど、更にギアが一段上がった印象です。たとえばジェフリー・ディーヴァーの短編集、『サプライズ・エンディングス 罠』と『サプライズ・エンディングス 嘘』、合わせて672ページの文庫本が3531円(税込)ですよ。第2短編集の『ポーカー・レッスン』は670ページくらいで1000円札出したらお釣りが返ってきた(当時は消費税が5%で今の半額だった)というのに。体感的には3.5倍ですよ。もう海外翻訳小説市場は覚悟をキメた修羅しか残っていない状態だ。そういう私も税込で3000円超えた『テメレア戦記』の8巻以降はもう買ってなかったりするが……。
・拍手レス。
ロスフラとうとう終わっちゃいますね… 自分は調伏戦が面倒だったのとメイン系のストーリーの更新が遅いせいで長らくプレイするのをやめていたのを6周年で復帰したクチなのでこのタイミングか…って感じです。 菅さんのシナリオは本当に好きだったので2部始まりそうな予兆を見せておいて終わるのはとても残念です。何らかの形で続きが見たいものです。
調伏戦は本当に面倒臭かったですね……オートで流して他の作業やってましたけど、それでも結構時間掛かったし。菅さん、「書きたい小ネタ」はあっても「書きたい大ネタ」はなさそうな感じだったので、ロスフラでやった内容で概ね満足しちゃったような雰囲気がある。トゥスクルさんの現役時代とか、ロスフラのおかげで拝めた要素もあるのでありがたいことはありがたかったですが……。
2026-03-05.・ふと百合アニメの系譜を独断と偏見でまとめたくなったので語ってみる焼津です、こんばんは。軽く触れるつもりだったのにいつもの如くクソ長くなってしまったから別ファイルに隔離します→「百合アニメを振り返る」
「軽く触れるつもり」で61KB(400字詰原稿用紙換算で約76枚)はバカの所業なんよ……ついでだし、過去に書き殴ったテキストを振り返りやすくするためいくつか別ファイルを作っておきました。「大ガールズバンドアニメ時代に至るまで」、「『Gun Blaze Vengeance』放送に備えて『魔法少女リリカルなのは』の復習」、「漫画やアニメに出てくる『戦うメイド』の系譜」、「『咲―Saki―』アニメ派は原作を何巻から読めばいいのか問題(理想は1巻からだけど、それはそれとして)」、「三大奇書? 四大奇書? 五大奇書? いったい何大あるんだい!/〇大奇書論」。自分で書いたテキストを読み返そうとしたとき、いちいち探さなくちゃいけないことにイライラしてたし、もっと早くやっておけばよかったな。
・『超かぐや姫!』異例の大ヒットで全国100館以上拡大 入場者特典第2弾配布&劇中曲「Reply」MV解禁
うおお! やっと待ちに待った全国拡大公開が来た! たった8館だけだった前回と違い、今回は100館以上の追加です。うちの地元の劇場も無事リストに入ってました、いえい。「山梨県」と「高知県」は上映予定がないので、「ほぼ全国」であって厳密に書くと「全国」ではないのですが……どうもこの2県にはシネコンが東宝傘下の「TOHOシネマズ」しかなく、TOHOシネマズは『超かぐや姫!』を上映するつもりがないようなので結果的にハブられる形となってしまった模様。4月に東宝の配給であるコナンの新作が公開されるし、今のタイミングで余計な新作を入れたくないんだろう。何せコナンのためにハコを空けようと鬼滅の興行も「終映、迫る」と煽って畳もうとしているぐらいだしな。東宝は去年から国宝、鬼滅、チェンソーマンの3作がロングランしていて、それ自体はありがたいことなんだろうが、これらが「新作を展開するうえで足枷になる」ことに頭を悩ませているようだ。自社配給作品でもそんな状態だから、他社配給作品に関しては言うまでもない。近場のシネコンがTOHOシネマズしかない超かぐファンは嘆くより他なし。
現時点の興行収入が約7億円、この勢いなら10億超えは確実でしょう。拡大でどこまで伸ばせるかが見物ですね。小規模公開からの拡大で大成功したパターンと言えば『カメラを止めるな!』が有名ですが、カメ止めの最終は31.2億円。基本的に「小規模公開からの拡大」はそこまで数字が伸びない傾向にある(話題になるタイミングが地域ごとに分散してしまい、ムーブメントが起こりにくい)けど、果たしてどうなることやら。
・『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』『BanG Dream! Ave Mujica』続編TVアニメ 2027年1月より日本テレビ系全国30局ネットにて放送決定
今のところ正式なタイトルが告知されていないため「マイゴムジカ」と仮称しているが、放送時期は決定しました。来年の1月、つまり冬アニメですね。Ave Mujica最終回直後、「早くて来年(※2026年)の秋頃、順当なら再来年(※2027年)の春頃」と予想していたがちょうどその中間に落ち着いた。「なんだ、今年じゃなくて来年かよ」と落胆した人もおられるやもしれませんが、バンドリは『ゆめ∞みた』が夏放送、Ave Mujicaの劇場版『BanG Dream! Ave Mujica prima aurora』が秋公開なので予定が詰まっているんですよね。さておきマイゴムジカ、マイムジ関連のアニメとしては通算3期目になりますが、バンドリ全体のTVシリーズとしては間に『ゆめ∞みた』を挟むこともあって通算7期目に該当します。いや、アワーノーツというマイムジを前面に押し出した新作アプリにはゆめみた(夢限大みゅーたいぷ)の面々も登場するから、『ゆめ∞みた』がマイムジ関連じゃないのかどうかは現時点だとよくわからないんですよね。ただまぁ、新規の取り込みが狙いだと思われるので「マイムジとはまた別のラインのアニメ」だろうと判断しています。
マイゴムジカ、内容に関しては現時点だと明かされている情報が少なくて語りようもない(とはいえ真初華、立希の姉の「真希」、燈ちゃんの幼馴染み「みおちゃん」、放置されてるsumimiのまなちゃん、アツドリで追加されるmillsageや一家Dumb Rock!の扱い等々気になる要素は山盛り)ですが、注目すべきポイントは「日本テレビ系全国30局ネットにて放送決定」というところです。It's MyGO!!!!!やAve Mujicaのオンエア情報を見ればわかりますが、バンドリのBSやCSを除いた地上波放送って10局前後だったんですよ。それが一気に倍以上になっている。最近は配信が主流だしピンと来ない人も多いかもしれません(私もAve MujicaはABEMAで観た)けど、キー局全国ネットで放送というのは同じ深夜アニメでも注目度が段違いです。正直、It's MyGO!!!!!の頃にはバンドリの注目度もだいぶ下がっていてヒッソリと放送が始まった感じだったんですけど、3年ちょっとでここまで昇り詰めるとはな……。
具体的な放送時間帯についてはまだ判明していないが、ひょっとするとフラアニ枠かもしれない。フラアニというのは2023年10月、ちょうどIt's MyGO!!!!!の放送が終わった頃に出来た枠で、金曜夜11時という比較的浅い時間帯に日テレ30局全国ネットで放送している。正式名称は「FRIDAY ANIME NIGHT」。第1弾が『葬送のフリーレン』(1期目)であり、今やってる2期目もこのフラアニ枠です。これまで放送された作品は『転生したらスライムだった件』(3期目)、『株式会社マジルミエ』(1期目)、『薬屋のひとりごと』(2期目)、『桃源暗鬼』。フラアニは30分枠として作られましたが、今年の4月からもう30分追加して1時間枠になる予定です。厳密に言えば11時からの枠が「フラアニ2300」で11時半からの枠が「フラアニ2330」。2300の枠はフリーレンの2期が終わった後、転スラの4期目が2クールで入る予定です。で、10月からの予定はまだ公表されていませんが、薬屋の3期が「2026年10月」と告知されているのでたぶんここに入ると思います。分割2クール予定なので、第2クールは恐らく2027年4月開始。となると2027年1月からの枠が空くことになりますが……転スラの4期は「分割5クール」の予定なので、1月から第3クール、4月に薬屋3期の第2クール、7月から12月にかけて第4クールと第5クール、というスケジュールかもしれない。そうすると空いてるのは2330の方ってことになりますね。2330は4月が『スノウボールアース』、7月が『これ描いて死ね』の予定で、10月以降は今のところ不明。可能性はなくもない感じか。続報を待とう。
・KADOKAWA、アニプレックスの共同出資による映画配給会社アニメック設立のお知らせ
アニメオタクなら当然のように知っているアニメ製作会社「アニプレックス」と大手出版社「KADOKAWA」が、新たに映画配給会社「アニメック」を設立した……! このニュースに「アニメック? 昔あったアニメ雑誌?」と反応した人は結構なイイ歳であろう。アニメックの公式サイトでも「※ アニメックは1980年代まで刊行され人気を博したアニメ雑誌の名前でもあります。」と言及している。雑誌“アニメック”編集長で『アニメックの頃…―編集長(ま)奮闘記』という回想記も出している「小牧雅伸」は2022年に67歳の若さで急逝しているため、代わりに副編集長だった(ただし途中で“月刊ニュータイプ”に移った)「井上伸一郎」に報告したとのこと。井上伸一郎は少し前に『メディアミックスの悪魔 井上伸一郎のおたく文化史』という回想録を出してましたね。『メディアミックスの悪魔』に推薦文を寄せている「永野護」の担当編集だった頃の思い出を綴った『マモルマニア』って本も出しているが、これは30年以上前でもう絶版しており入手困難です。
このニュースとは直接関係ないが、KADOKAWAは「Studio One Base」という巨大アニメ制作拠点を池袋・サンシャインシティに新設するとのこと。約1400坪に「複数のアニメ制作スタジオを物理的に集約する」そうだ。入居が決まっているスタジオは「ENGI、Studio KADAN、レイジングブル、ベルノックスフィルムズ、チップチューン」といったKADOKAWAグループの面々で就業人数は400人に及ぶとか。ENGIは『メダリスト』のところ、Studio KADANは3DCG制作を強みにしており『すずめの戸締まり』にも関わっている模様。レイジングブルはエウレカセブンの監督「京田知己」が取締役らしいが、2023年に出来たばかりらしく何作ってるのかはよくわからない。ベルノックスフィルムズも2024年新設だけど『ダーウィン事変』を元請けとして手掛けてますね。チップチューンは撮影や背景、彩色などといったこまごまとした作業を請け負うスタジオで、2012年設立だが去年創業者が亡くなったことでKADOKAWAグループ入りしたらしい。「ナット」という関連会社(『幼女戦記』の制作したところ)もあったが、こちらは「ツインエンジン」(『超かぐや姫!』の製作をしたところ)の傘下に入ったというニュースが先日あった。ぶっちゃけアニメファンからしてもENGI以外はあまりピンと来ない面子であるが、「『メダリスト』で躍進しているENGIが更に躍進することになりそう」ぐらいに捉えておけばいいのかしら。そう、ENGIといえば「モブせか」こと『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』の2期目を作ることも決まっているスタジオ……1期目は原作の面白さで低予算ぶりをどうにかカバーしているような風情だったが、2期目はクオリティに期待できそうだ。
アニプレックスは「ソニー・ミュージックエンタテインメント」の子会社なので、つまり言い換えれば「ソニーグループとKADOKAWAグループが手を組んで映画配給に乗り出す」ってことだ。「全国での大規模公開からTVアニメの特別上映まで、最適な公開戦略のもと作品の価値や魅力を十分に引き出し」という文言が踊っており、今以上に各地の映画館でアニメ映画の公開やイベント的な先行上映が盛んになる……のかもしれません。ぶっちゃけ「配給」の業務って観客側からすると見えづらく、この「アニメック」の出現によって業界がどう変わるのか、と訊かれても「ようわからん」としか答えようがない。確実に言えるのは、ただでさえ斜陽気味な「映画館における洋画興行」がますます衰退するだろうな……ってことです。ただでさえ洋画ファンの高齢化が深刻で、「もう映画館まで行って長時間座席に腰掛けて90〜150分くらいある洋画を集中して観る気力がない、自宅で楽な姿勢で鑑賞できていつでも一時停止でトイレに行ったり休憩したりすることができるサブスク視聴の方が良い」という状況ですからね。洋画興行を盛り上げるには「高齢化しつつある従来の洋画ファンをどうにかして映画館に呼び込む」か「現在あまり洋画にない興味がない若い層に『洋画っていいな、映画館で観たいな』と思ってもらう」か、ほぼこの二択なわけですけど、どっちも道筋が見えないというのが正直なところ。
・伊藤計劃「虐殺器官」実写映画化、今も企画中 パク・チャヌク監督認める「概要は執筆済み」(シマネトゥデイ)
とか言ってたらこんなニュースが。「アジア映画は『洋画』に入るか否か」みたいな議論もあると思いますけど、それは置いといて。パク・チャヌクと言えば日本の漫画である『オールド・ボーイ』を映画化した監督ですね。私はいわゆる「韓流」が流行り出した頃に散々宣伝やってたので釣られて観た『JSA』があんまり面白くなかったな……という記憶があってそこまで注目してないんですけども、日本では明日公開される『しあわせな選択』という新作が結構話題になっているみたいです。邦題はなんだか気が抜けるタイトルだけど、英題は「No Other Choice」、「他に選択肢がない」という切羽詰まったニュアンスになっている。原作はドナルド・E・ウェストレイクの小説『斧』で、「再就職するためライバルになりそうな同業者を先回りして殺す」というブラック・コメディ。「愛しの家族を守るためなら何でも出来る」という気持ちの負の側面を描いた一作です。
日本の作品が韓国で映画化されることはちょくちょくあり、ミリタリー寄りのフィクションだと『人狼』がある。押井守原作の『犬狼伝説』をメインに据えたサーガ“ケルベロス・サーガ”に属する作品の一つで、日本では1999年に『人狼 JIN-ROH』という題名でアニメ映画が上映されています。「ドイツが第二次世界大戦に勝った」というパラレルな世界を舞台に、敗戦国としてドイツに支配された日本がようやくその占領統治から抜け出して独立を図ろうとしていた頃、国の方針を巡って自衛隊に次ぐ武装を有した「首都警」の実働部隊「特機隊」と、左翼の過激派集団「セクト」が日々闘争を繰り広げていた……という感じの話。韓国版では「近未来、南北朝鮮を強引に統一しようとする政府の警察組織『首都警』と、早計な統一に反対する過激派集団『セクト』との争い」に置き換えられているが、「プロテクトギア」のデザインや童話の「赤ずきん」がモチーフになっている点など『人狼 JIN-ROH』との共通点も残っている。
今回「まだ企画は生きている」とパク・チャヌク監督が明言した『虐殺器官』は既に故人である日本のSF作家「伊藤計劃」のデビュー作で、2007年に「ハヤカワSFシリーズ Jコレクション」の1冊として単行本が刊行され、2017年にアニメ映画が公開されている。監督は『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』シリーズの「村瀬修功」。「虐殺の文法」を駆使することで人間に備わる「虐殺器官」を刺激し、意図的に虐殺を引き起こすことができる謎のアメリカ人「ジョン・ポール」をアメリカの軍人「クラヴィス・シェパード」が追う、という一風変わったスリラーだ。「第7回小松左京賞」に応募して最終候補まで残ったものの、小松左京からは「虐殺行為を引き起こしている男の動機や主人公のラストの行動などにおいて説得力、テーマ性に欠けていた」と評され落選した。一応、文章力と「虐殺の文法」のアイデアに関しては褒められている。ちなみに、同じ回に応募して同じく最終候補まで残った末に落選した作家として、後に芥川賞を獲る「円城塔」がいます。大御所からはあまり評価されなかったものの、SFファンからの人気は高く『ベストSF2007』国内篇で1位を獲得しており、ゼロ年代(2000年〜2009年)の10年間で刊行された国内SFとしては一、二を争うレベルで名作扱いされている。人気のポイントはディテールの細かさ、ガジェットの一つ一つに詳細な設定が作り込まれており、アニメ→原作の順で読むと「こんなところまで設定しているのかよ」と舌を巻くかもしれません。アニメだと良くも悪くも「主人公のナイーブな精神」の表現が緩和されており、原作とはイメージはかなり違うんですよね。
「パク・チャヌクが『虐殺器官』のメガホンを執る」という話はかなり前からあって、調べた限りで一番古いのは2016年頃の記事だ。まだアニメ版すら公開されていない。10年経ってもまだ実現しないので「ポシャッたのかな?」と思っていたファンも多いようだが、とりあえず「概要(トリートメント)を書く」段階までは進んでいるらしい。具体的な脚本作業には入ってないから、早くてもあと数年は掛かるだろう(監督も「次回作ではない」と言っている)けど……韓国の映画業界もいろいろと厳しいらしいので不安はあるが、とにかく待つしかない。
・下村敦史の『そして誰かがいなくなる』と小松立人の『そして誰もいなくなるのか』読んだ。
先に書いておきますとこの2冊、タイトルが似ているだけで内容的な繋がりは一切ありません。もちろん、両作ともに元ネタはアガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』。孤島を舞台に、一人、また一人と登場人物が消えていき……最後はタイトル通りになります。非常に特徴的でインパクトのある題名だけに、パロディやパスティーシュの類は山ほどある。有名どころは夏樹静子の『そして誰かいなくなった』や今邑彩の『そして誰もいなくなる』あたりかしら。タイトルがそっくりなせいもあって列挙するとどれがどれだか区別が付かず混乱しますが、私のオススメ今邑彩の『そして誰もいなくなる』です。
先に『そして誰かがいなくなる』の方から紹介しよう。作者の「下村敦史」は江戸川乱歩賞作家、2014年にデビューし、これまで30冊くらいの著書を世に送り出している。基本的にシリーズ物は書かず、ほとんどの本が一冊完結方式です。強いて言えば『逆転正義』と『暴走正義』が“正義”シリーズと言えなくもないが、いわゆる「名探偵〇〇」みたいなシリーズ物は今のところ出していない。『そして誰かがいなくなる』は確か25冊目くらいの著書だったかな? 刊行は2年前で、うかうかしているうちに文庫版の発売が今月に決まってしまった。悔しいので文庫版が発売される前に読んでやろうと思い立ち、ついでにタイトルが似ている『そして誰もいなくなるのか』も読んだ、という流れです。
ミステリ界の大御所「御津島麿朱李(みつしま・ましゅり)」は山奥の辺鄙な場所に雰囲気たっぷりな洋館を建て、そこで新作を執筆しながら暮らしている……ある日、御津島の名とともに届いた招待状。覆面作家ゆえ業界関係者のほとんどがご尊顔を拝したことがない御津島に対面できると、胸をときめかせてやってきた客人たちは、やがて恐るべき事件に直面する……という、大雑把に言えば「クローズド・サークル」系のミステリです。客たちからスマホを取り上げる過程があったりと、デジタルデバイスの発達によっていろいろ小手先を工夫しなければならなくて涙ぐましい。でも、本気になれば館の外に出て助けを求められなくもないんですよ。本作の絶妙なところは、「何か変なことが起こっている」ことは確かなのに明確な死体が発見されたりしないままストーリーが進行していく「あやふやさ」があるところです。これが死体でも転がっていれば何が何でも外部に連絡を取ろうとするが、「そこまでしなくてもよいのではないか……?」と正常バイアスが働いて行動に移せない。物凄く悪趣味であるが、御津島が仕掛けた何かの遊戯である可能性も否めないし……と、「事件」なのか「事件に見せかけたゲーム」なのかハッキリしないままページが費やされる。当然、「どんでん返し」もありますので「作者に翻弄されてぇ〜」という方にはオススメの一冊です。
ちなみに、ページのところどころに「館の内装」を切り取った写真が出てきますが、なんとこれ、全部作者の自宅です。そう、下村敦史は「ミステリの作中に出てくる『偏屈な大御所作家が山奥に建てた怪しげな洋館』」を実際に建ててしまったので、そこを舞台にミステリを書いてみました……という究極の内輪ネタ小説なのだ。もし実写化することになったら自宅で撮影を行うのかな……本当に建てた館をモデルにしているので、建築会社と打ち合わせする件はとてもリアリティーに溢れている。「そこのリアリティーは必要なのか?」と訊かれると返答に窮しますが……何であれ、「自宅ミステリ」という新境地を拓いた珍作なので興味のある方はご一読ください。
ついでに読んだ『そして誰もいなくなるのか』は第33回鮎川哲也賞「優秀賞」受賞作。『禁忌の子』の前なんで、これも2年くらい前の本ですね。作者の「小松立人」にとってこれがデビュー作、3月には『そして物語のおわりに』という新作(受賞後第一作)を刊行する予定。一応クローズド・サークルだった『そして誰かがいなくなる』と違い、こっちは「山奥の屋敷」とか「孤島の洋館」が舞台というわけではない。いわゆる「特殊設定ミステリ」、故・西澤保彦がよく書いていたようなノリの小説です。超常的な存在によって「死に戻り」させられた主人公たち。世にも奇妙なデスゲームの幕が上がる。
突然の地震によって崖が崩落、巻き込まれた「小松立人」(作者と同名の作中人物)たちは車ごと川に転落し、間もなく死亡した。そのはずだった。しかし、「神」なのか「死神」なのか、条理を超越した存在は「全人類の総寿命時間を調整するため」と称して小松たちを生き返らせてくれた。それも事故の直後ではなく、死の一週間前に。前回と同じ「小松たちが死亡した時間」になれば、どこで何をしていようと必ず死ぬ、不可避の運命を押し付けて。ただし、このルールには一つだけ抜け穴がある。死に戻りしたメンバーが他のメンバーに殺されたとき、「本来もっとあるはずだった寿命」が殺した者に加算される。死に戻り直後に一人殺せば一週間、二人殺せば二週間長く生き延びられる。
かくして壮絶なデスゲームが始ま……らなかった。小松たちにはお互いを殺してまで命を存えるだけの強い動機がなかったのだ。誰も彼もが粛々と「運命の日」を迎える。そのはずだったのに。なぜかメンバーが「寿命」を残したまま、次々と死に始める。いったいなぜだ? 誰がそこまで生に執着しているんだ? ミステリ作家志望の小松は、一連の顛末を書き残し「遺作」とするため必死に頭を振り絞って推理するが……という、かなり毛色の変わったミステリです。特殊設定モノだけど、なんというか地味なんですよね……地味なのに凝ってる。そこが何とも言えぬ味わいを生み出しています。鮎川哲也賞作品というよりメフィスト賞作品みたいなノリだ。大賞ではなく「優秀賞」だった(ちなみに同じ回の大賞作品は『帆船軍艦の殺人』)ことから察せられるように「完成度」や「インパクト」という点では少々見劣りする一冊であるが、「オリジナリティ」に関してはなかなかイイ線行ってると思います。刺さるかどうかは人によりけりだが、「小粒だけど変な味わいがある特殊設定ミステリ」を求めている人にはイチ推しです。そんなピンポイントな作品を所望する人がいるかどうかはさておき。ややネタバレになりますが、解決編は悲劇を通り越してもはや滑稽劇(ファルス)なので笑うしかない。
・拍手レス。
うたわれ新作出るんですね。知らんかった。羊殺しの巫女たちはまだ読めてないので楽しみです。杉井光氏は良い小説書きますよね。世界でいちばん透きとおった物語はトリックが素晴らしく芸術的ですらありました。世界2はトリックは普通でしたが、物語が面白く前作より楽しめました。特に最近一番面白かったのが、天嬢天華生徒会プリフェイズで、一見普通のラノベに見えて意外なトリックが仕込まれていて、読み終えた時とても感動しました。
『白への道標』は前作『モノクロームメビウス』の販売が不振だったから「モノメビの続編だけどそこは意識させないようにしつつ、うたわれのシリーズ最終作として盛り上げたい」という無茶な思惑から宣伝方針が撚れて、そもそも話題にならなくなっている印象。ロスフラの方には「ティセリリ」というルルティエの娘や高齢のハク、通称「オジハク」がチラッと出てきたので、二白以降の構想もあったのでは……という気もしますが。杉井光は例の騒動もあって取り扱いに悩む作家ですが、文章や内容自体は好きですね。『天嬢天華生徒会プリフェイズ』はイマイチどんな内容か伝わらなくてパスしちゃいましたが、チェックしてみます。