2022年1月〜4月


2022-04-22.

・あまり気乗りしなかったが「せめて1話目くらいは視聴しておこうか」と重い腰を上げて再生した『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』が予想より面白くて「やっぱり食わず嫌いはいかんな」と反省した焼津です、こんばんは。

 タイトルでだいたいわかると思いますが原作は「小説家になろう」連載作品。なろうでの連載は終了しているが「第一部・完」といった塩梅であり、その続きを書籍版として刊行している。ただ、第二部に入ってから刊行ペースはだいぶ落ちています。第一部に当たる1〜8巻までが2015年から2018年までの3年弱で発行されたのに対し、9巻は2019年、10巻は今年(2022年)ようやく上梓された。「年2冊」程度だった刊行速度が「2年に1冊」くらいまでスローダウンしている。ファンが打ち切りを心配するレベルの間遠さ。アニメ化したくらいなのだから、今年中にもう1冊くらいは出る……んじゃないでしょうか。『ウィザーズ・ブレイン』の新刊を待つ人々からすれば「3年そこらなんて誤差の範囲」って反応でしょうけど。最新刊(9巻の上)が発売されてから既に7年が経過しており、いつもなら自嘲交じりの口ぶりになるところだが、作者がツイッターで「今年は中巻が出るよ」と呟いているだけあって態度にも余裕が見られる。

 話が逸れた。骸骨騎士様〜は気が付いたらゲームの世界のキャラクターに転生していた、というなろう系ファンタジーではよくある設定のアレです。もう転生モノがありふれ過ぎているせいで「こういった経緯で異世界に転生しました」という過程に関する説明も割愛されており、マジで「気が付いたら異世界」ってノリ。主人公が前世どういう人間だったのか、少なくともアニメでは全然解説されていない。前世に対する未練を覗かせないところから察するに家族と疎遠で友人もあまりいなかったのかな。全身を覆うフルアーマーの状態で目を覚ますが、兜を脱ぐとそこには骸骨の顔が! アバターがスケルトンになっている(飲み食いできるところからすると見た目だけで、本当に全身がホネホネ化しているわけではないみたいだ)から人前で顔を晒すわけにもいかず、ずっと鎧兜を着用して過ごすことになる。ジャンルとしては「放浪冒険譚」とか「世直しモノ」に該当し、超強い主人公が行く先々で様々なトラブルを解決しながら一ヶ所に定住せず流離っていく模様。時代劇でやっていた内容を異世界ファンタジーの器に移したような作品です。とにかく主人公がメチャクチャ強いので、しばらくは有無を言わせず悪人どもを成敗する展開が続くんじゃないかな。なろうの放浪冒険譚というと『目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい』あたりも結構好きです。

 演出がコミカルな割にいきなり盗賊が貴族のお嬢様を陵辱しようとするシーンから始まり、居合わせた主人公が問答無用で斬り捨てる(上半身が千切れて吹っ飛ぶなど、描写が割とグロい)アバンでド直球の「セックス&バイオレンス」をアピールする。なるべく頭を使わずに観れる単純明快な娯楽アニメとなっており、疲れた時の気分転換にちょうどいい。第2話は魔獣戦でいまひとつ盛り上がりに欠ける内容だったけど、次の3話は1話でちょっとだけ出ていた巨乳エルフがメインになるっぽいので期待している。気の抜けるタイトルに萎えてチェックするのが遅れてしまったが、こいつはなかなかの掘り出し物ですよ。今期はラブライブ(虹ヶ咲学園2期)、まちカドまぞく(2丁目)、SPY×FAMILY、パリピ孔明が個人的なアタリだったけどこれらに骸骨騎士様を加えてもいいかも。阿波連さん、かぐや様(ウルトラロマンティック)、RPG不動産、幼女幽霊あたりも割と楽しみにしている。『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』と『であいもん』、『処刑少女の生きる道』、『このヒーラー、めんどくさい』、『勇者、辞めます』あたりは時間があれば完走できるかもしれないが忙しくなったら脱落してしまいそう。『サマータイムレンダ』は録画してるけどまだ観てない。境界戦機の2期は……嫌いじゃないんだけど好きというほどでもなく……惰性でズルズルと視聴を続けている。他にもいくつか観たのがあるけど1話目で離脱してしまったものばかりなので省略。チェックしたい旧作だっていっぱいあるし、今期も相変わらず忙しいぜ。

・拍手レス。

 「それは舞い散る桜のように-Re:BIRTH-」 全然思い入れがない作品(21の方が印象が強かった)のはずなのに タイトルを読んだ瞬間にOPが脳内に流れてビックリしました 先ずは旧作をやり直したくなりました動くかな
 「はい、恋の魔法はおしまい」(遠き日の安らぎを〜♪) 動きの乏しいOPではあったもののやたら印象に残りますからね、あれ。旧版は俺翼発売時に再プレーしたけど当時でも動かすのに苦労した記憶が……(特にBGM周り)。

 それ散るのリメイクだと!?Basilのごたごたがなければコンシューマー移植やアニメ化なんかもしていた作品だと思っています。自分はそれ散るが好きすぎて、地雷だと分かっていても完全版を買って無事爆散しましたww
 これで「それ散るリメイク! からのアニメ化決定!」コースに入ってくれれば嬉しい。リメイクの出来はまだわかりませんが、初回特典として最新OSに対応した旧版のディスクが同梱される可能性もありますし「事情をよく知らない新規勢が完全版を買ってしまう」事態もこれで終わりになるかもしれないと思うと感慨深いです。


2022-04-17.

20年の時を超えて――『それは舞い散る桜のように-Re:BIRTH-』、Navelで製作決定!

 『ONE』や『MOON.』に続いてそれ散るまでリメイクされるだと!? あの「名前も呼べない子供たち」が令和の世に甦る……! エロゲオタの血が騒ぐようなニュースに驚きの念が隠せません。

 もう20年も前のソフトなのでいろいろと解説していこう。それ散ること『それは舞い散る桜のように』は2002年に「BasiL」というブランドから発売されたアダルト向けPCゲーム、いわゆる「エロゲー」です。BasiLのソフトとしては『Bless』『21』と来て3本目に当たり、前作『21』でおまけシナリオを手掛けていた新人「王雀孫」がメインライターに抜擢された。それまでBasiLの主力だったあごバリアはサブライターに回っている。内容は「学園青春ストーリーにちょっとファンタジー要素を足したラブコメ」といったところで、前半はひたすら愉快なコメディ展開目白押しであるが後半になるとシリアスな感じで話がちょっと暗くなる。ビジュアルファンブックのインタビューによるとそれ散るのテーマは「失恋」らしく、前半はあんなにイチャイチャしていた恋人たちが後半はすっかり疎遠に……という乖離を演出するためああした構成になっているとのこと。

 回線速度が遅く、まだネット経由で大きなデータをダウンロードするのが一般的ではなかった時代のため体験版は雑誌付録として公開されました。当時の「エロゲー体験版」は短いものが主流であり、下手すると1時間もしないで終わるヤツさえあったが、それ散るの前年である2001年に発売された『君が望む永遠』が第一部を丸ごと収録した大規模な体験版を公開しその衝撃的なラストともども話題になったことで徐々に大容量化の波が押し寄せてきました。それ散るもクリアするのに数時間掛かるサイズの体験版を用意し、発売前から「面白い!」と話題になったものです。おかげで発売初日から品薄になるほどの売れ行きでした。以前にも書いたが、それ散るの発売日である「2002年6月28日」は『D.C. 〜ダ・カーポ〜』が発売された日でもある。特典商法のせいかすぐに値崩れを起こしたダカーポに対し、それ散るは結構長い間高値を維持していた記憶がある。あと記録媒体がCDからDVDに移行する時期のソフトでもあったため、初回版はCD、通常版はDVDとなっています。

 ストーリー内容に関して語り出すと際限がなくなるのでやむなく割愛しますが、終わり方については正直尻切れトンボな感じでした。それ散るは本来2部作の前編として製作されたソフトであり、後編『けれど輝く夜空のような』で様々な伏線を回収して完結させる構想だったのですが、BasiL上層部と現場スタッフの間でゲーム制作に対する意見が衝突し、結局「けれ夜」が作られないままメインスタッフはBasiLを離脱、新たに「Navel」というブランドを立ち上げます。しかし権利はBasiL側に残っていたため、それ散るのキャラは制作スタッフにとって「名前も呼べない子供たち」となってしまった。制作陣が抜けたことで新規プロジェクトを回せなくなった(『ロンド』という新作企画はあったものの体験版のみで本編は実現しなかった)BasiLは2008年、外注スタッフに追加部分を作らせた『それは舞い散る桜のように 完全版』を発売しましたが、評価はお察しである。当然の如く「不完全版」と揶揄されたものだった。

 メインライターの王雀孫はその後Navelで『俺たちに翼はない』のシナリオを担当。俺翼はTVアニメ化したので観た人も結構いるんじゃないかしら。現在は主にプリコネの「なかよし部」関連のシナリオを書いています。それ散るのサブライターだったあごバリアは『SHUFFLE!』のシナリオを担当し、これもTVアニメ化しましたが原作に存在しない「空鍋」で話題になったのはファンにとって複雑な心境だろう。トラブルがなければそれ散る(&けれ夜)もアニメ化していたかも、って考えると切なくなります。けれ夜はメインとサブを交替し、あごバリア中心に制作を進めていく予定だったので、彼もけれ夜の制作を求める声は重々承知しており「執筆する意欲はあるものの権利問題が……」という口振りでした。それ散るには「希望(のぞみ)」「つばさ」「こだま」「小町(こまち)」「青葉(あおば)」「ひかり」「山彦(やまひこ)」「朝陽(あさひ)」など新幹線を由来とする名前のキャラが多い中「かぐら」「瑛」「瑞音」「郁奈」「椿」「和人」など新幹線絡みではないキャラたちも登場しており、この「新幹線絡みではないキャラたち」がけれ夜の中心人物になる……はずでした。が、2016年にあごバリア急逝。夜空の星々は消灯し、それ散るシリーズの完結は幻になったものかと思われました。

 なのに「Navelでリメイク製作決定!」というニュースが舞い込んだものだからブッ魂消たわけですよ。前述した通りあごバリアは故人なので制作に加わることは不可能ですが、原画の西又葵と脚本の王雀孫、オリジナルスタッフ2名の参加は既に確定している。というか、あごバリアの名前がクレジットされていないってことはシナリオをだいぶ書き直すことになるのか? 新幹線組に比べてノット新幹線組は出番がそこまで多くなかったから遅筆で有名な王の速度でも可能っちゃ可能だろうけど、そもそもノット新幹線組は『Re:BIRTH』にも出てくるのか? さすがに丸々削除ってことはないと思うが、出番は減ってるかもしれないな。気になるのは『Re:BIRTH』だけでキチンと伏線を回収してキッチリ話を完結させるのか、それともけれ夜的な続編も製作するつもりで動いているのか……『Re:BIRTH』を買うことは決定事項なのでどっちでも構わんが。それより声優がちゃんと続投するかどうかの方が重要かしら。何せ20年前のソフトだもの。山彦の声が別の人に変わっていたら私は泣くぞ。変わってなかったら変わってなかったで「阿智彦!?」って驚く新規勢も現れそうですが。元は古いエロゲーながら未だにネタの数々は折に触れて甦ってくる面白さで、付き合い出した直後にヒロインの携帯番号を「アニメ声」のグループから「彼女」に移行させて気恥ずかしさのあまり身もだえするシーンは今でも好きです。一番好きなのは希望の三連続嫉妬シーン。あの嫉妬深さといい、ボーリングで「轢・殺!」という掛け声を上げる件といい、見た目は典型的なエロゲヒロインなのにやたら印象に残るんですよね、星崎希望。コメディ部分は引っ越し祝いを貰った主人公が「現金? 株券? それとも……土・地・権・利・書〜?」とワクワクするところがツボ。それ散るは王自身の失恋経験を反映させたということもあってシリアスシーンのテキストもなかなか胸にグサッと突き刺さってくる。「ただいま、ひとりの部屋」「失いたくないものなら、そこにはない」「恋なんてするものじゃないですね。どうしてくれるんですか」などなど。好きなエロゲーにホワルバ(『WHITE ALBUM』)を挙げるようなタイプのライターだから、もともとそういう素質があるのだとも言えるか。そしてゲーム内のネタではないが「たいけんばんにだまされたっ!」も汎用性が高い。

 結論。当時のファンは黙ってても食いつくでしょうからそっちは放っておいて、「プリコネのなかよし部で王雀孫の名前を知った」という人にこそ猛プッシュしていきたい。大幅な加筆でもないかぎりストーリーはそこまで長くならないだろうし、「実家で声が低そう」系の小ネタも山ほど盛り込まれているぞ。ファル子のファンの2倍ちょっとを動員すれば売上7兆本も夢ではない。これで個人的にリメイクしてほしいエロゲは『Rumble 〜バンカラ夜叉姫〜』だけになったな。パロディ要素が多く「ワープ番長」等もう相当ネタが古くなってるので望みは薄いだろうが、せめてあの使い辛いシステムだけでも改修したバージョンを出してほしいものだ。そして『二重影』のリメイク的なソフトである『陰と影』は開発無期限停止が告知されてから早13年が経過した。まだ待つつもりはある。

・スターチャンネルでやってた『ジャスト6.5 闘いの証』なるイラン映画を観た。

 「2019年イラン映画史上最大のヒット作!!」らしいが、そもそもイラン映画ってどんなのがあるんだっけ……? というレベルなので全然ピンと来ない惹句だ。とりあえず物珍しさに釣られて視聴。分類上は刑事モノになるのかな。麻薬犯罪の捜査に執念を燃やす刑事たちがやや強引な手法で組織の親玉を捕まえようと奔走する。ヤクの売人やその家族など、関係者を脅しすかして遂にその所在を突き止めるが……ハリウッド映画に見慣れていると少し戸惑う内容かもしれない。刑事なので銃は持っているが、銃撃戦はナシ。走って逃げる容疑者を追いかけるシーンはあるが、派手なカーチェイスとかはナシ。いくらか暴力的な描写はあるものの、取っ組み合いの格闘シーンはない。「観客が喜ぶであろうわかりやすい娯楽要素」を極力抜いた、どちらかと言えば文芸寄りの構成なんですが観ていて退屈ということはなく、キチンと一級のエンタメ作品に仕上がっている。「ハリウッド映画ってどれもこれもまとまりはいいけど変化に乏しいよな」って食傷気味な人にとってはちょうどいい新鮮さを覚えるであろう。取り留めのなさがうまい具合に臨場感を生み出している。

 ストーリーの前半はイラン警察の刑事たちが「ナセル」という麻薬王を追い詰めるまでの流れが綴られている。ナセルは割とあっさり捕まって、あとは拘置所の様子や取り調べ、裁判の過程がずっと続く。特に意外な真実が明らかになったりナセルが配下の手引きで脱獄したりするわけでもなく、死刑判決が下って縛り首になります。麻薬が蔓延るイランの下層社会をフィクション形式で撮った、ドキュメンタリー風映画として観るのがちょうどいいかもしれない。失態をおかした部下を切り捨てようとする上司、わざと上司が不利になるような証言をする部下といった具合に警察内のギスギスも盛り込まれている。アクションが控え目なぶん、ドラマはより濃厚になっていて2時間以上の長さも苦にならなかった。一番インパクトがあるのはやはり処刑シーンか。絞首刑なんですが、まとめて10人くらい一気に吊るすので圧倒されます。非常に見応えのある一本ながらタイトルの意味が最後までわからず、ぐぐってみてようやく「ああ、そういう意味か」と納得した。ネタバレというほどでもないが観る前に聞いてもピンと来ない由来だと思いますので、視聴後に調べることをオススメします。


2022-04-06.

・特にネタもないので更新をサボっていた焼津です、こんばんは。気づいたら前回から2週間も経っていた。

 サボっていた期間どうしていたかと申しますとなぜか気が向いてずっと積んでいた香港映画の“イップ・マン”シリーズをまとめ観していました。葉問(イップ・マン)は実在の人物で、1893年生まれで1972年没。詠春拳を使う武術家です。ブルース・リーこと李小龍の師匠であり、映画の題材になるまでは決して無名じゃないにしろ超有名というほどでもなく「知る人ぞ知る」な存在だった。2008年公開のドニー・イェン主演作『葉問』(邦題は『イップ・マン 序章』)が大ヒットした結果、香港で「イップ・マン物」がブームとなり次々と彼をメインにした映像作品が制作されることになります。どれも内容はあまり史実に即しておらず脚色の多い物となっている。ドニー・イェンが主演するイップ・マン映画の原題は『葉問』『葉問2』『葉問3』『葉問4 完結編』と非常にわかりやすいが、日本では2作目の『葉問2』(邦題は『イップ・マン 葉問』)が1作目よりも先に劇場公開されることになったせいでタイトルからナンバリングが外されており、どの順番で鑑賞すれば良いのかがわかりづらい。しかも監督や主演の異なる作品もあるため予備知識がないと「これイップ・マンなのにドニー・イェンが出てこないじゃん!」ってなりがち。まずは見取り図を書いていきましょう。

 基本中の基本、ドニー・イェンがイップ・マンを演じるのは先述した通り『葉問』『葉問2』『葉問3』『葉問4 完結編』の4つです。邦題で並べると『イップ・マン 序章』→『イップ・マン 葉問』→『イップ・マン 継承』→『イップ・マン 完結』。ドニー・イェン目当てならこの4つだけを観ればいいんですが、実はこのシリーズ、ドニー・イェンが回想シーンしか出てこないスピンオフ作品『イップ・マン外伝 マスターZ』というのがあるので本当は5部作です。『葉問3』(『イップ・マン 継承』)に登場した張天志(チョン・ティンチ)が主役で、タイトルの「Z」は恐らく「張」の頭文字から来ている。原題は『葉問外傳 張天志』で、ぶっちゃけ邦題よりもこっちの方がしっくり来ます。『継承』の後、張天志がどうなったかを綴る後日談的な外伝ストーリーだから位置付けとしては『葉問3.5』って感じ。時系列順に楽しみたい方は『イップ・マン 序章』→『イップ・マン 葉問』→『イップ・マン 継承』→『イップ・マン外伝 マスターZ』→『イップ・マン 完結』の順で観よう。私もこの順で堪能した。ドニー・イェンが出てくる方と直接関係しないイップ・マン映画は他に『イップ・マン 誕生』『イップ・マン 最終章』『グランド・マスター』『イップ・マン 宗師』がある。『誕生』と『宗師』は主演が一緒だけど監督が違うのでシリーズ作品ではなく別作品と見做した方がいい。『誕生』と『最終章』は逆に主演が違うけど監督が一緒なのでシリーズ作品と見做していいだろう。ただ、事情は知らないが『誕生』の方は現在ネット配信されておらず中古のDVDやBDも高くなっているみたいだからレンタルDVDで妥協するしかない状況である。私は10年前にドニー・イェンが出てくる方だと勘違いしてBDを買っちゃっていたんで高画質で観ることができます。なんという塞翁が馬。気になるけど全部観るのはダルいな〜、って人にはとりあえず『イップ・マン 継承』がオススメ。3作目だけど2作目から間が空いたせいかほとんど仕切り直しみたいな感じになっているし、ここからでも入りやすい。あと『イップ・マン 宗師』は今ならアマプラの見放題配信で手軽に視聴できます。他に2013年に放送されたドラマ版のイップ・マンもありますが、全50話で40時間以上だから目を通すのにガッツが要りそうだ……さすがに挑む余裕がなくてチェックだけに留めています。

 聖人君子のように美化されたイップ・マン師匠が次々とトラブルに巻き込まれては拳で解決する、というのが基本ストーリー。悪い中国人が出てきて、撃退すると更に悪い外国人が姿を現し……ってワンパターンな展開がずっと続くのは辟易する(3作目の『継承』だけパターンを外そうと頑張った痕跡はあるが最終作『完結』ではパターン外しをすっかり諦めてしまっている)ものの矢継ぎ早に繰り出される高速ワイヤーアクションは見応えがありました。2作目まで登場していたサブキャラが3作目になると跡形もなく消え去っていたりするなど、タフばりにライブ感を重視した行き当たりばったりの展開がある意味楽しい。脈絡もなくムエタイ使いが出てきてあっさり退場するような部分、ツッコミどころと言えばツッコミどころなんだが個人的には好きです。むしろもっとガンガン脈絡もなくいろんな闘士を出してほしかったな……シラット使いとかカポエラ使いとか忍術使いとか。手合わせするときに「詠春、葉問」と流派を添えて名乗るところも好き。「正義、仮面ライダー2号」的な高揚感がある。

・香港じゃなくて上海が舞台だけど馳星周の新刊『月の王』も大戦前の時期で、たまたまながらちょうどいいタイミングで読めています。

 帝国陸軍の特務機関に所属する主人公が本国から送られてきた謎の男「大神明」と組んで極秘ミッションに当たる話。身も蓋もない表現をすると馳星周版『ウルフガイ』。大真面目に「四天王」と呼ばれている連中がいたり「一子相伝の体術」が出てきたり指弾で壁に穴を空けたり投げた短剣の軌道を気功で操ったりと、まるで80年代頃の伝奇バイオレンスみたいなノリです。個人的には大好物ながら「直木賞を獲った後にここまで古色蒼然とした娯楽一辺倒の殺しまくり小説を書くの!?」という驚愕の念は禁じ得ない。マジで古神陸時代まで戻ったようなムードですよ。記憶にないけど、ひょっとして私が馳星周の弱味を握って執筆させたのか……? などと支離滅裂な錯覚をしそうになる。私が馳作品を読み始めたのは『ダーク・ムーン』が出た頃だからかれこれ20年以上も昔のことになりますが、作風や文体が肌に合うせいか未だに読み飽きない。読んでも読んでも次の新刊が楽しみになります。

・それはそれとしてそろそろ春アニメが始まる時期です。記憶力が悪いせいでキャラの名前はほとんど覚えていなかった(昔読んだ漫画やアニメのキャラ名は結構覚えているのに新作は脳に定着しにくくなってきている……)けど『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の2期目は安定した面白さでこの春を生き延びようという気持ちがグングン湧いてくる。2期目には3人の新キャラが登場し、この子たちが同好会に波乱を齎してくるっぽい。新キャラ1人目は「鐘嵐珠(ショウ・ランジュ)」、パッと見わかりにくいが「鍾馗」の「鍾」ではなく「鐘」である。スクールアイドルになりたくて香港からやってきた留学生ということで、ここのところイップ・マン映画ばかり観ていたせいか「詠春拳使いそう」と思ってしまった。なお『スーパースター!!』の唐可可は上海出身。今だと『月の王』の影響で「気を練りそう」と思ってしまう。嵐珠役の声優「法元明菜」は母親が中国人とのこともあって中国語が堪能とのこと。香港だから嵐珠が使ってるのは広東語か? 大学生のときの第二外国語が中国語だったけど、当時からヒアリングはサッパリなんですよね……新キャラ2人目は「三船栞子」、嵐珠の幼馴染み。声が「小泉萌香」なので「仮面アイドルやってそう」とか「再演を繰り返してそう」とか偏見持ってしまう。今のところは真面目キャラっぽいが果たして。3人目は「ミア・テイラー」、ニューヨークから転入したきた少女。飛び級なのでまだ14歳という設定。声優の「内田秀」はオーストラリア出身で英語ネイティブ、名前に見覚えはなかったけど調べたらマギレコの「時女静香」役を担当していた。時女静香は第二部「集結の百禍編」から登場するキャラなのでアニメには出てきません。アニメと言えば『Final SEASON‐浅き夢の暁‐』はズーンと来る内容だったな……黒江ちゃん……うい……みふゆさん……。

 今期の楽しみは他だと『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』、『まちカドまぞく 2丁目』、『SPY×FAMILY』あたりかしら。ラスバレとコラボしている関係もあって『デート・ア・ライブW』もちょっと興味が再燃してきた。まだまだ観たい映画も読みたい本も山積みだし、今後も更新は間遠になりそうです。


2022-03-22.

・乙一激賞帯に釣られて購入した『煤まみれの騎士』が丁寧な追放モノで「釣られて良かった〜」となっている焼津です、こんばんは。

 開始1行で「○○! お前を××から追放する!」と宣言しクッソ雑な理由とももに主人公を放り出すスピーディな追放モノがラノベ界を席巻する中、一冊丸々費やして主人公が追放されるまでの過程をじっくりと描いている異世界ファンタジーです。誰もが大なり小なり魔力を授かる世界で、例外的に魔力絶無なため迫害される主人公……というシチュエーションそのものはありきたりだが、逆境に挫けず踏ん張ってきた彼が最後の最後、まさにラスト1行で追放を宣告される瞬間の突き抜けた清々しさたるや。もう何物にも縛られなくていいんだな、と読んでるこちらの心まで軽くなる。2巻から成り上がり快進撃が始まるみたいなので、待ち切れない想いを抱えてしまっています。初夏には出るとのこと。楽しみ。あとコミカライズも決定している模様。

『マリグナント 狂暴な悪夢』を観た。

 昨年公開されたホラー映画です。近場の映画館でやってたけど、なんやかんやあって観に行く機会を逃してしまった一本。レンタル屋に寄った際BDを見かけたのでこれ幸いとばかりに借りてきた。『ソウ』や『インシディアス』、『死霊館』などで有名なジェームズ・ワンが監督している。DV夫から暴力を受けている妊娠中の女性が主人公。家の中に侵入してきた「黒い影」によって夫が殺害され、自身も負傷して入院することになる。まるで悪夢のような出来事だったが、それは惨劇の始まりに過ぎなかった……といった具合に「恐怖」よりも「血腥さ」や「おどろおどろしさ」を前面に押し出したタイプの、80年代テイストが濃厚な作品である。始まって早々に夫が瞬殺されるわけだから、その時点で恐怖を示すメーターの針はとっくに振り切っているんですよね。

 サスペンス調ホラーの場合、「得体の知れない悪霊じみた怪現象に悩まされる」スーパーナチュラル系と「頭のおかしい異常者に付きまとわれる」ストーカー系とに分かれがちだが、マリグナントは両者の複合といっていい。本作に登場するヴィラン「ガブリエル(発音はゲイブリル)」は電波に干渉して電子機器を操作・破壊するっていう、『マルドゥック・スクランブル』のバロットが使った電子撹拌(スナーク)みたいな超能力で人々を翻弄する。そのうえで執拗にヒロインを脅す。さながら「悪霊の力を持ったストーカー」といった塩梅でタチが悪すぎる。ガブリエル(字幕派だとゲイブリルの方がしっくり来る)の正体はいったい何なのか? 謎解き要素は主眼じゃないため冒頭時点でほとんどの人が概要を察するだろう(特に某作品を知ってる人だと「○○○○じゃん」と一発で把握できる)が、下手すると一発ネタに堕しかねないソレをうまく調理してストーリー的にもビジュアル的にもインパクトのある仕上がりになっています。ゲイブリル(もうこう書いちゃおう)の動き方が変なのも単なるケレン味じゃなくて「そういう理由か〜」と納得できて面白い。ぶっ飛んでいるのに妙に腑に落ちるこの感じ、若干ながら荒木飛呂彦っぽいところもある。

 『インシディアス』や『死霊館』に比べると恐怖のボルテージが低く、純粋なホラーを期待する人からすればやや物足りないかもしれないが、言い換えれば「ホラー作品に対して少し苦手意識がある人」に対しても薦めやすいレベルに留まっているとも見做せるわけだ。ガチガチのホラーはちょっと……というアナタにも推したい血沸き肉躍るエキサイティングでバイオレンスなぶっ殺しムービーです。ちなみにタイトルのマリグナント(malignant)は「悪質な〜」とか「有害の〜」を意味する言葉。対義語はビナイン(benign)。

 一緒に借りた作品でおもろかったのは『白頭山噴火』『プロミシング・ヤング・ウーマン』

 『白頭山噴火』はやりすぎ感のあるディザスタームービーで「ここまでやるか!?」と声を上げたくなる。北朝鮮にある白頭山が突如噴火して韓国の各地にも被害が及ぶ。だが、それはまだクライシスの本番ではなかった。このままだと破滅的な噴火がふたたび起きてしまう……だから北朝鮮に潜入し、核弾頭を盗み出して坑道の奥で爆発させよう! というムチャクチャなミッションが発令される。しかし到着寸前のタイミングで火山灰による事故が発生し輸送機墜落、本隊の精鋭たちも全員死亡。退役間近の主人公が新たな隊長として指揮を取るハメに……ピンチに次ぐピンチ、クライシスの釣瓶打ちといった趣で視聴者を飽きさせない。やりすぎていて逆に緊張感がなくなっている面もあるが、お菓子食べながら観るにはちょうどいい一本でした。

 『プロミシング・ヤング・ウーマン』はサスペンス映画で、体裁としてはいわゆる「復讐モノ」に該当する。タイトルのプロミシングは「(将来を)約束されている」という意味で、直訳すると「前途有望な若い女性」になります。主人公の「キャシー(カサンドラ・トーマス)」はかつて医大に通い周りから将来を嘱望された秀才であったが、ある事件をキッカケにドロップアウトして30歳の今は場末のコーヒー店で信じられないほどの低賃金で働き、実家暮らしを続けている。事件のトラウマから夜な夜な紳士気取りの男を罠に掛けては制裁を下す日々を送っていたが、医学生時代の同級生から事件の首謀者「アル・モンロー」が近々結婚するという話を聞き、長年温めていた計画を実行に移す……復讐は5段階に分かれており、日本でいう「正の字」に当たる表記とともに進行していく。事件の詳細について触れるのは避けるが、ほとんどの人があらすじを読んで察するように性被害を巡る物語。「プロミシング」は性加害者である青少年を擁護する際によく用いられる「彼は前途有望な子なのだから、この程度のことは若気の至りとして許してあげましょう」的な論調を象徴する語であり、タイトルはそれに対する皮肉と痛罵でもある。(概ね男主人公が)凶器片手に私刑を加えていく暴力的なデスウィッシュ系(邦題だと『狼よさらば』系)と異なり「意趣返し」に近い精神的な報復を主としているが、観ていてスカッとするタイプではなくヒロインの抱える空虚がどんどん強調されていくような構成になっていて、復讐に邁進するうえで不要な「自分」を削ぎ落とし切り捨てていく求道者めいた姿は率直に申し上げて痛々しい。思いも寄らぬ方向へ逸れていく意外な展開にも心を揺さぶられるが、底知れぬ深い水の中へ潜っていく息苦しさが肺を満たす。「悲愴とは忘れぬ記憶なり」を思い出すな……行き過ぎた悲劇は喜劇じみている――を地で行くようにコメディチックな箇所も多く、あらすじで想像するほど暗いノリではありません。ポップで明るくて、でもやっぱりヒロインの中心に居座っているのは虚無。彼女が復讐を手放そうとしても、復讐が彼女を手放さなかった。そんな御伽噺です。


2022-03-12.

・録り貯めしていたアニメ『平家物語』を今頃になってようやく観始め、評判通りの面白さに昂揚している焼津です、こんばんは。ただBSフジの放送よりもアマプラの配信の方が早いことに気づいたので最新話はそっちで観ました。

 琵琶法師たちの弾き語りの集大成、古文の授業でも習う『平家物語』をアニメーションにしたものです。古川日出男が現代語に訳した日本文学全集版『平家物語』がベースとなっている。古川日出男と言えば『平家物語 犬王の巻』が今度劇場アニメとして上映されるらしい。

 アニメは去年の9月からFOD(フジテレビオンデマンド)で先行配信されており、実は全11話が既に完成済。琵琶法師の娘「びわ」が滅びゆく平家の人々とともに過ごした日々を色鮮やかに綴っていて、まさに諸行無常の本家本元といった趣がある。なにぶん1クールしか尺がないので時間が結構飛ぶ(木曾義仲とか爆速退場ぶりがスゴい)けど、おかげで内容も絞り込まれており「古典とか退屈そう」って人も引き込まれること請け合い。今やってる大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の前日譚みたいな部分もあるため、タイミング的にもちょうどいいですね。大河効果か、近頃は平安末期〜鎌倉時代のあたりを舞台にした作品が増えていてホクホクだ。若木未生の『戦をせんとや生まれけむ』なんてのも出たしな……石橋山の戦いで頼朝を見逃した「梶原景時」を主人公にした小説。若木未生はこれの前にもコバルトで出した『ゆめのつるぎ』(シリーズ化する予定だったが1冊きりで未完)や清盛の異母弟・平頼盛を主人公にした『われ清盛にあらず』という歴史小説も書いてます。頼盛は壇ノ浦の後も生き延びた人物で、彼を探偵役に据えた『蝶として死す』というミステリもあったりする。連作形式で編まれた短編集であり、アニメの1話にも出てきた清盛の秘密警察的な手勢「禿髪(かぶろ)」が何者かによって殺害される事件などを描いています。源平モノでメチャクチャ面白いのは町田康の『ギケイキ』だが、文体が「いつもの町田康」すぎて耐性のない読者は受け付けないかもしれない。書き出しからして「かつてハルク・ホーガンという人気レスラーが居たが」だもの。「私の父を負かしたのは平清盛という人で、大河ドラマやなんかでみたことがある人も多いと思う」と言い出す義経を許容できるかどうかで楽しめるか否かが決まってくる。『ギケイキ』がイケる人はたぶん『泣き虫弱虫諸葛孔明』もツボに入るだろうから時間があれば一緒にどうぞ。

ブラッド・ピット主演、原作・伊坂幸太郎のスリラー「ブレット・トレイン」公開(映画ナタリー)

 ツイッターで流れてきた予告編を観て「まーたハリウッド特有のトンチキ日本舞台映画が生まれるのか」と呆れつつワクワクしていたが、あれの原作『マリアビートル』かよ! 確かに疾駆する新幹線内での攻防を描く話ではあったが、あまりにも雰囲気が違い過ぎて繋がらなかった。『マリアビートル』は様々なコードネームを付けられた殺し屋たちが登場する“殺し屋”シリーズの2冊目で、ストーリーそのものは独立しているけれど『グラスホッパー』の続編である。「蝉」や「鯨」などのコードネームで『魔王 JUVENILE REMIX』という漫画を思い出す方もおられるでしょうが、あれは同じ伊坂幸太郎原作の小説『魔王』と“殺し屋”シリーズをクロスオーバーさせたオリジナル要素の強い作品です。シリーズと言っても3冊目の『AX』が最新作なんで、「出遅れた」と感じても余裕で追いつける冊数だ。複数のストーリーラインが並行し、様々な登場人物たちの思惑が交錯するガイ・リッチー・タイプの話ゆえ先に原作を読んでおいた方が混乱は少ない……はずだが、どうも原作から大きく内容が変わってる感じがするのでそのまま観に行っても大丈夫でしょう。監督は「デヴィッド・リーチ」、『デッドプール2』『アトミック・ブロンド』を手掛けた人なので少なくともアクションに関しては問題ない、と信じたい。

・FGOのホワイトデーイベントというかメガネイベント「15人の理知的なメガネたち」、不意打ちの新規サーヴァント実装などといった事態もなく。予告なしのマーリンPUに悲鳴を上げる人はいたが、そこを除けば平穏のうちに終わりそうな気配である。これの次にはネロ祭系イベント「バトル・イン・ニューヨーク 2022 〜スペース・オデュッセウス対ニコラ・テスラ〜」が控えているものの、ネロ祭系イベントで新規実装のパターンはこれまでにないからマイケル(偽名)が来るのは4月以降でしょう。7周年記念のフレポ新規勢って可能性もあるな……。

 「ホワイトデー・スペクタクルズピックアップ召喚」はログボの呼符でチマチマと回し、☆5の「ウォーターガンバトル」をゲット。弓と槍と金の掛け合いをボイス付きで楽しめてSN好きの私も満足しました。じゃあ交換チケットは同じ☆5の「一夜の夢」にしようかな……探偵ヱドモン礼装のボイス(特にレジライのセリフ)も聴きたいが……と思いつつ、「呼符は尽きたけどもう少しでボーナス二回召喚だな」と石を使って単発回していたところスッと視界をアルジュナ・オルタが通り過ぎていきました。金回転でも虹回転でもないから演出スキップして、表示が消えてから「……あれ? 今のジュナオじゃなかった?」と遅れて反応した次第です。少しボンヤリしてたし見間違いかも、と目を疑いながらリザルトを確認するとやっぱりジュナオがそこにいた。「あと1枚で完凸だから出れば御の字だぜ」と心の隅で期待していたけど、まさか本当に出るとは。かくして宝具レベル5のアルジュナ・オルタ此処に完成せり。望外の喜びだ。サンキュー、ホワイトデーイベント。


2022-03-02.

・気になりつつも巻数が巻数なのでなかなか手を出す踏ん切りがつかなかった『東京卍リベンジャーズ』、「まずは1巻だけ読んでみよう」と着手して案の定引きずり込まれてしまった焼津です、こんばんは。現在10巻を読み終わったところ。

 映画の予告編は劇場で散々見せられたから大筋は知っていました。主人公の元カノ――中学生の頃に付き合っていた「橘日向」が「東京卍會」という半グレ集団みたいな連中の抗争に巻き込まれて死亡。中学生時代にタイムリープした主人公は、まだ不良グループ止まりの東京卍會に接触し、「日向の死」という未来を回避するため彼らに干渉していくが……という、不良漫画にタイムリープ要素を掛け合わせたサスペンスです。『新宿スワン』も「まとめて読むとすごく面白い」タイプの漫画だったが、東リベも一度読み出すと止まらなくなるような疾走感がページのあちこちに漲っています。和久井健は週マガでの連載に当たって「アニメ化を目指す」という目標があったものの、彼の得意とする不良・アウトローものはどちらかと言えば実写向きでアニメ業界はあまり食いつかない……そこで当時(2016年頃)ホットな話題となっていたリゼロや『僕だけがいない街』に目をつけ、「タイムリープ要素を加えればいいんだ!」と企画を組み立てた結果が東リベなんだそうだ。無事アニメ化まで漕ぎ着け、いざ放送が始まるや否や猛烈な勢いで人気が爆発したことについては語るまでもない。

 私がアニメ化を知った時点で原作は確か17巻くらいまで出てたかな。刊行開始当時は「表紙がダサい」という理由でスルーしていたけれど「ちょっと読んでみようかしら」と掌を返しかけた……が、まとめ買いするにはちょっと多い量だったので躊躇してしまい結局機会を逃す。アニメが始まる頃には20巻が刊行されてたし、これはもう完結するまで読む機運が盛り上がらないパターンかな……と座視する姿勢に入りつつあったが、たまたま買う本の少ない日に売り場を通りかかって上記した通り「まずは1冊だけ」と手を出しズブズブっと行った次第。「未来を変える鍵」になる人物が次々と出てきて、彼らの抱える闇と対峙し乗り越えていくことで世界線をどんどん切り替える――というのが東リベの基本構造であり、フラグを立てたりへし折ったり大忙し。つまり「ギャルゲーのヒロインを攻略するノリで不良たちを惚れさせていく漫画」なんですよね。攻略対象が野郎だということを考慮すると乙女ゲーに喩えた方が近いか? むしろ主人公の方が攻略されてるようなところもあったりするが。1巻の時点でも充分面白いが、ドカンと来るのは4巻から。1〜4巻がシリーズ全体のプロローグみたいな位置付けになっており、過去の私みたいに「気になってるけど今更読み出すのもなぁ」ってためらいのある方はまず4巻までまとめて購入することをオススメします。既に最終章へ突入しているから「このまま完結するまで待つ」という判断もそれはそれでアリだと思います。ちなみに女の子は8巻65話、ドラケンの家に遊びに行く回に出てくるシースルーネグリジェを着たケツのエロい子(88〜89ページ)が好きです。

【期間限定】「15人の理知的なメガネたち」開催!

 イベントタイトルが『十二人の怒れる男』のパロディで、第一節のタイトルが「They Live」、そして『レザボア・ドッグス』の冒頭を彷彿とさせる会話……明らかに今回のライターは東出祐一郎だな、と確信させるCBCイベントの開幕である。

 そもそもCBCとは何か? 長年FGOやってる人には解説するまでもないが、やってない人や最近始めたばかりの人向けに解説するとCBCは「カルデアボーイズコレクション」の略であり、女性サーヴァントがメインとなるバレンタインイベントの対となるキャンペーン、要は実質的なホワイトデーイベントです。と言ってもバレンタインデーに比べるとやや扱いが小さく、初期(2016〜2018)はイベントシナリオなしでただピックアップ召喚が行われるだけだった。新規サーヴァントが追加されたのもCBC2016(天草、アストルフォ、子ギル)CBC2017(プロトアーサー)CBC2020(オデュッセウス)のみで、それ以外は既存の男性サーヴァントしかピックアップされていない。目玉はむしろ概念礼装で、1回につき10枚近くの新規礼装が追加される。コンプリートを目指す人にとっては少し辛い量だが、コンプ欲に苛まれないのであれば「交換チケットで確実に1枚は手に入る&フレポガチャをぶん回せば☆3礼装はだいたい揃う」ので割と優しい。

 CBC2019からはシナリオ付きの連動イベントが開催されるようになって盛り上がってきます。モリアーティがメインのCBC2019「旧き蜘蛛は懐古と共に糸を紡ぐ」、記憶喪失のオデュッセウスが登場するCBC2020「アイアイエーの春風 〜魔女と愉快な仲間と新しい冒険〜」、天草四朗が怪盗になるCBC2021「聖杯怪盗天草四郎 〜スラップスティック・ミュージアム〜」と来て今回(CBC2022)が「15人の理知的なメガネたち」なわけだ。メインはアルジュナ・オルタ。2019年6月〜7月の「ユガ・クシェートラピックアップ2召喚(日替り)」以来一度も復刻されず、福袋以外での入手が不可能だった最強クラスのアタッカーがようやくピックアップされるとあって話題になりました。フォーリナー以外のエネミーにはだいたい対応できますからね、ジュナオ。ネロ祭の超高難易度クエストもサクサクと攻略してしまって「ギミックブレイカー」などと呼ばれる始末でした。

 今回のイベントには「マイケル」と名乗る謎のサーヴァントも登場しており、プレーヤーの間で様々な真名予想が飛び交っています。「ミ」と言いかけてマイケルと言い直したことから「ミシェル」「ミハイル」「ミカエル」みたいな名前だと思われるが、答えが分かるのはもう少し先でしょうな。サポートサーヴァントとして出てこなかったところを見ると、今回は顔見せのみで実装はしばらく先になる予感がします。「惑う鳴鳳荘の考察」で立ち絵だけ出ていたバーソロミューが実装されたのも3ヶ月くらい後だったもんな。プレーヤーの予想を裏切るのが大好きなFGOのことだから来週いきなりピックアップ2が始まる可能性も否定できませんけど。

 それと今回のCBCは獲得した概念礼装のセリフ部分がボイス付きで再生される特別仕様になっています。えっ、これだけのためにわざわざ声優を呼んだのか? それとも別の機会についでで録ったのか……「ウォーターガンバトル」と「一夜の夢」、両方聴きたいけど交換できるのは1枚だけだし、呼符で出ないかなー、と単発回したら「パワーショット」が出てきて笑ってしまった。プロゴルファー道満、開口一番「ンンンンンッ!」は反則やろ。ホワイトデーログボで呼符何枚か貰えるんで、チマチマ回して出具合を見てから交換する礼装を決めるとします。今ジュナオの宝具レベルが4だからあと1枚引いて完凸したい気持ちもある。できれば石は温存したいところだが……。


2022-02-24.

5月19日に乙一のJOJO小説『野良犬イギー』発売予定

 『The Book』は10年くらい前だっけ、と思ったら「文庫化したのが10年近く前」なのであって最初のハードカバー版は15年近く前だとわかって震えた。私の戦慄はさておき、『野良犬イギー』はアブドゥルとイギーの出会いを綴る番外編です。来月出る『JOJO magazine』にも掲載されるみたいだから、いち早く読みたい方はジョジョマガを買った方がよさそうだ。というか単行本に書き下ろし等の追加要素がないのであればジョジョマガだけ買えばいいかも。『傷物語』目当てに『パンドラ Vol.1 SIDE-A』を購入しておきながら講談社BOX版も迷わず買った私は当然ジョジョマガと単行本どっちもゲットする予定ですが。ジョジョマガには直木賞作家の「真藤順丈」がリサリサをメインに据えて書いた新作も載せるみたいですし。真藤順丈は直木賞作家ながら過去に『GANTZ』のノベライズを手掛けており、これが初のノベライズというわけではない。もう覚えている人も少なくなってきたであろうが、電撃文庫でも1冊出している(イラストは佐々木少年)くらいあっちこっちに著作があるんですよ、この人。「無限の王」もいずれ書籍化するのかな……短篇程度だとノベライズの性質上他の作品と合わせて単行本化するのが難しいし、ボリューム次第といったところか。

・赤城大空の『淫魔追放』読んだ。

 副題は「変態ギフトを授かったせいで王都を追われるも、女の子と"仲良く"するだけで超絶レベルアップ」。アニメ化を果たした下セカこと『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』の原作者として知られる「赤城大空(あかぎ・ひろたか)」の新シリーズです。下セカは完結したけど『出会ってひと突きで絶頂除霊!』『僕を成り上がらせようとする最強女師匠たちが育成方針を巡って修羅場』が展開中なので「えっ、並行して3シリーズ目やんの!?」とビックリしました。というか新シリーズ始めるに当たってどっちか終わらせるつもりなのでは……と心配になりましたよ。あとがきの口振りからしてそういうことではないようで安心しましたが。

 さておき『淫魔追放』、まるでノクターンノベルズの連載作みたいなタイトルですけれど「カクヨム」連載作品です。そのため直接的な濡れ場はなく、ヤること自体はヤってるけど描写面はかなりボカしている。副題も「猥褻ギフトを授かったせいで帝都を追われるも、エッチなこと(一人遊びも含む)をするだけで超絶レベルアップ」からちょっと変更されているし、センシティブ対策はバッチリ。しかし「帝都」が「王都」になってるの、微妙に気になるな……内容は異世界ファンタジーで、転生要素ナシ。特定の年齢に達すると「ギフト」を授かる世界、名門貴族に連なる主人公が「淫魔」という前代未聞の不祥事スキルを得てしまったため、ひっそりと王都から姿を消すハメになってしまう。タイトル通りの追放モノです。こういう設定だと自身が貴族であることを鼻にかけている両親が「ええい、お前など我らの子ではないわ!」と激昂ないし落胆して追い出すパターンが多いものの、本作主人公の父親は気まずそうに「すまないが……」と王都脱出の手筈を整えるタイプである。むしろ主人公の方が家名に泥を塗らぬよう進んで王都から出ていく感じ。淫魔たる彼はオナニーするだけでもレベルアップするという異常な性質を抱えているが、もちろん異性と交わってからが本番である。単純に身体能力が向上するうえ、意志の力で男根の形状・性質を変化させ、更には肉体から分離させて剣にすることさえ可能となる。性剣、抜刀……! 放たれる「男根剣」の威力はアダマンタイトにすら匹敵すると云う。彼はかつて夢見た聖騎士ではなく、性器士になってしまったのだ! こういうテンションで最後まで突っ走るので、下品なネタが苦手な人には薦めがたいが下セカのノリに付いていける読者なら大喜びすること間違いなし。出てくる女の子も割と変態なので淫靡さよりも陽気さが勝つ。さながら『淫魔艶笑譚』といったテイストだ。

 男根は分離した後で新たに生やすこともできる(ただしアダマンタイト級の性能を発揮するのは一本だけで、他は劣化版になる)ため、主人公の「息子」が大量生産されて裏市場に出回るという「もはやエロいとかエロくないとかじゃねぇな?」って展開に突入します。大量と言っても1巻の時点ではせいぜい十数本であり、産業革命レベルではありません。ただこのままレベルアップして行けば、いずれ「一家に一本」くらいの数が出せるようになるのでは……そう考えると追放されて当然だな、このギフト。一応主人公は善良な性格をしており、誹謗された恨みを晴らすために卑劣な陵辱劇を繰り広げたりとかはしないのですが、成長の著しさが半端じゃないのでいずれ特定外来生物並みに危険な存在となりかねない雰囲気を漂わせている。いろんな意味で歴史を変えかねないヤツだ。ヒロインは幼馴染みの「アリシア」がエロ可愛い。淫魔である主人公をもたじろがせるほど性欲が強く、これ主人公のギフトがまともなのだったら枯れ死んでいた末路もありえるな? 同い年ながら身長はアリシアの方が高く、並ぶと少しおねショタ感がする。可愛い顔立ちをした主人公が表向きはクール系のおっぱい&身長デカデカ銀髪幼馴染みに性的な意味で喰われるファンタジーが読みたい! というアナタにうってつけの一冊だ。


2022-02-20.

・金曜日に更新されるたびトレンドに上がるジャンプ+の話題作『タコピーの原罪』、ドラ○もんみたいなハイパー道具をたくさん持っているタコ型異星人「タコピー」が地球の少女「しずかちゃん」と出会ったことから騒動の幕が上がる「最高にハッピーな物語」のコミックで来月に単行本の上巻が出ますが、ふと「ハヤカワのSFに異星人が殺人容疑で捕まる小説があったな」と思い出した焼津です、こんばんは。

 タイトルは『イリーガル・エイリアン』、作者は『フラッシュフォワード』の原作で知られる「ロバート・J・ソウヤー」です。地球人が異星から訪れた知的生命体と初めての接触を果たす「ファーストコンタクト物」に分類されるストーリーですが、侵略者めいた素振りを見せず友好的に交流していたはずのエイリアンが突如殺人容疑で逮捕され、裁判に掛けられることに――という異色のミステリ。知的生命体であっても倫理観が根底から異なる存在を地球の、それも一国の法律で裁くことができるのか? ってな感じで500ページもある分量を一気に読ませる傑作なんですが、残念ながら絶版中で電子書籍も発売されていないから布教しにくい一冊である。昔の翻訳小説はあまり電書化が進んでおらず、なかなかオススメしづらいのが難点ですね。たとえばヴィクター・ギシュラーの『拳銃猿』ってアクション小説、個人的には大好きなんですが復刊も電書化もされないまま埋もれてしまった作品なのでプッシュしたくてもする機会がない。暴力の嵐がスピーディに吹き荒れる気持ちイイ作品なんで、邦題と表紙を何とかすればもうちょっと話題になるんじゃないかと思いますが……。

・表紙に釣られて買った『美龍艶笑譚(1)』読んだ。

 副題は「自己肯定感が激低なドラゴン級美少女魔王を、勇者がイチャラブで退治するお話」。原作はノクターンノベルズ(なろうの18禁サイト)に連載されていた小説『自己肯定感が激低なドラゴン級おっぱい魔王を、ラブラブ勇者セックスで分からせてあげるお話』で、完結済だが書籍化はされていません。簡単に言うと脱力系エロコメファンタジーで、オカズになるタイプのエロさと言うより「ちょっと笑える感じのエロさ」になっています。

 神話の時代に創世神の左腕を喰い千切り、その血を啜ったことで女神級の美貌を手に入れたドラゴンにして魔王の「イヴェール」。彼女は勇者に負けては滅び、滅んでは復活し、また勇者に滅ぼされるというサイクルを繰り返していた。当代の勇者「ミリオ」は聖剣を手に、いざ魔王城へ足を踏み入れる。が、四天王クラスの中ボスどころか雑魚敵の魔物すらおらず、ただイヴェールだけが玉座に就いていた。銀の髪、褐色の肌、紅玉の瞳、黒きツノを持つ彼女は告げる。「わが名は魔王イヴェール…イヴェール・ガドレイ・ドラゴルン。またの名を勇者専用パイズリ機能付き肉便器だ…」

 歴代勇者たちのチ○コによってコミックアンリアル並みに嬲られ自尊心をボロボロにされた結果、体を差し出して命乞いすることに躊躇わなくなってしまった魔王と、そんな彼女を陵辱したくはないのだけれどついついなし崩しでヤってしまう勇者の間の抜けた遣り取りが独特の味わいを生んでいます。品性は鬼畜エロゲー級の下劣さながら戦闘力に関しては一流だった歴代勇者たちと違って、新米勇者のミリオくんは実際のところかなり弱い。他の魔物たちが魔王であるイヴェールを見放したため、特に障害もなくあっさりと魔王城に辿り着けてしまったのである。自己評価が底辺を這っていることと「勇者=どう足掻いても勝てない存在」と認識してしまっていることからイヴェールは絶対服従の姿勢を見せているが、ミリオの弱さが見抜かれたら……何もかも終わる! なので彼は股間に顔を埋めるようにして卑屈に媚びる魔王へ向かってこう囁くしかないのだった。「歯は…立てないでください…」 歯が当たるだけで即死しかねないほどの実力差なんである。万事この調子で「過去散々悲惨な目に遭ってきた魔王」が「弱いけどまともな感性を持っている勇者」のおかげで少しずつ立ち直っていく過程を面白おかしく描いており、ほどほどにエロくてユル〜く楽しめるファンタジーをご所望の人にはうってつけの漫画となっています。

 かわいそうな魔王をそのまま滅ぼすのは躊躇われ、かと言って放置すれば勇者の責務を投げ出すことになり……と悩んだミリオくんは判断を一旦保留し、イヴェールを旅の出発点である王城まで連れ帰ることにします。彼女をどうするかは偉い人の判断に任せよう、というわけです。帰路の途中で街に寄ったりもしますが、染みついた負け犬根性から反射的に要所要所で性奴隷ムーブをかましてしまう魔王! 勇者に突き刺さる冷たい視線とヒソヒソ話! って具合に彼の社会的地位がどんどん脅かされることになる。果たして王城に辿り着くまでにミリオくんの名声は保つのか!? そして「イヴェールの失われた笑顔」とやらは本当に取り戻せるのか!? 2巻は7月頃に発売予定とのことです。原作は完結済だし、たぶんコミカライズも最後まで行くでしょう。「原作のストーリーが長すぎるorエタっているため『本当にちゃんと完結するのかコレ?』という疑問が拭えない」の、なろう系コミカライズの抱えがちな難点だよなホント。


2022-02-08.

「令和のデ・ジ・キャラット」今秋放送・配信!アニメ映像初出しのPV公開(コミックナタリー)

 バスタード再アニメ化の驚きも冷めやらぬ中、でじこまで復活するだと? デ・ジ・キャラット(通称でじこ)は「ゲーマーズ」というゲームやアニメの関連商品を扱うショップのマスコットキャラクターとして誕生した存在であり、正確な起源は不明だがキャラ名やキャラ設定が固まったのは1998年頃である。そのため今年2022年はデ・ジ・キャラット24周年の記念イヤーに当たります。「24周年ってすごく半端では?」と思った方もおられるでしょうが、これはでじこの特徴的な語尾「にょ」に掛けたものである。

 彼女はTVCMなどにも出てきてコアな人気を稼ぎましたが、有名になったのは1999年、ショートアニメ『Di Gi Charat』が放送されてからです。かつて存在していた深夜番組「ワンダフル」内のアニメコーナーに枠があったことから俗に「ワンダフル版」と呼ばれている。ショートアニメながらキレの良いギャグでドタバタ劇を紡いでおり、ほんのり混ざった毒がキャラの魅力を一層引き立てています。『まちカドまぞく』『ミュークルドリーミー』の「桜井弘明」が監督を務めた、と書けば最近のアニメしか知らない人にも大まかなノリが伝わるだろうか。当時中学生だった「沢城みゆき」がぷちこ(プチ・キャラット)役として声優デビューした件も有名です。予備知識抜きにPV観てぷちこを演じている人が堕姫や峰不二子と同じ声優だと気づける人、果たしているんだろうか?

 ワンダフル版の後も何度かアニメ化されていますが、ほとんどが2000年代前半で、2010年代に入ってからはまったく新作が出ていなかったから「懐かしいコンテンツ」として語られる存在になりつつありました。そこに突然復活の報せが舞い込んだわけだから目を剥くファンも当然いますよ。しかもどうやらキッズアニメとして制作された『ぱにょぱにょデ・ジ・キャラット』や『デ・ジ・キャラットにょ』の系統ではなく、原点たるワンダフル版のキャラを甦らせた一品みたいなんだから尚更。一方、色遣いを含めて絵柄は「こげどんぼ*」にかなり寄せたタッチになっていて「さすが令和」と実感させてくれる。また今年の楽しみが一つ増えたな。

「苦役列車」で芥川賞、西村賢太さん死去…暴力・恋愛・酒のトラブル題材に哀しさ描く(読売新聞オンライン)

 54歳か……とても健康的な生活を送っているとは言えない人だっただけに少し納得してしまう面もあるが、なにぶん突然の訃報で驚きました。ついこないだ石原慎太郎への追悼文を寄せたばかりなのに、今度は追悼される側になってしまうとは。『どうで死ぬ身の一踊り』というインパクトの強いタイトルに目を吸い寄せられたのが2006年のこと。実際に作品を読み始めたのは『苦役列車』が芥川賞を獲ってからなので2011年です。自身を投影したキャラクター「北町貫多」が登場する私小説を何十作も書いており、語り口に魅了されて5年くらいは著書を買い続けたな。特徴的な言い回しが多いため、まとめて読むとその薄暗く諦めと怒りに満ちた世界へずるずる引きずり込まれていく。まだ何冊か積んでいるのでこの週末は久しぶりに西賢ワールドへダイブするとします。

【予告】期間限定イベント「マナナン・スーベニア・バレンタイン 〜チョコの樹と女神の選択〜」開催決定!

 去年はカレンだったしひょっとしたら来るかも、という噂は囁かれていたが本当にお出ましとなりました、バゼットさん。設定自体は『Fate/stay night』の頃から存在していた「ランサーの本来のマスター」なんですが、キャラクターとして実際に登場した作品は『Fate/hollow ataraxia』(以下ホロウ)である。ホロウは「繰り返される4日間」を軸にストーリーが展開する、言わばループ物に近い体裁のソフトです。プレーヤーは「繰り返される4日間」を好きに過ごして何度もゲームオーバーを迎えながら少しずつ核心に迫っていく……という形式のため映像化し辛く、ファンの熱い要望を浴びながら「アニメ化決定!」の報せとは無縁に16年以上もの月日が流れてしまった。一応プリヤに別世界線のバゼットさんも出てくるけど、ホロウにおける掘り下げとかそういった部分は当然オミットされているため「Fate関連はアニメ化された作品とFGOくらいしか知らない」人にとってはやや馴染みの薄い存在だろう。

 FGOでは☆4礼装の「封印指定執行者」でその姿が描かれているし、2018年のバレンタインイベント「繁栄のチョコレートガーデンズ・オブ・バレンタイン」でもカレンとともに配布礼装「スイート・デイズ」の絵柄に選ばれていました。なので4年くらい前から「カレンとバゼットが来るかも」って噂はあったんですよね。バゼットさんは魔術協会に所属する「封印指定執行者」で、簡単に言うと「稀少な資質を持った魔術師を生きた標本にするため実力行使する人」です。魔術協会が「こいつの資質が死とともに失われるのは惜しい、生きたまま保存しよう」と判断しても、好き好んで「生きた標本」になりたがる魔術師はいないので、結果として「死に物狂いの抵抗」か「果てしない逃亡劇」へ帰結することになります。封印指定執行者、略して「執行者」はそんな「死に物狂いの抵抗」を抑え込める能力が最低要件となるわけですから、言うまでもなくすごく強い。聖堂教会の「代行者」に匹敵するとも言われている。特にバゼットさんは伝承保菌者(ゴッズホルダー)という神代の魔術を現代にまで受け継いできた特殊な家系の生まれであり、サーヴァントと戦って勝つこともできるほど。ついでに書くと「特殊な家系の生まれ」ゆえ異性に対する免疫もなく、かなり惚れっぽい性格をしている。そういう意味ではバレンタインイベントにうってつけの人材だ。

 今回はケルトの神「マナナン・マク・リール」の擬似サーヴァントとして登場する模様。マナナンは海の神であり、『マン島の黄金』などで知られる「マン島」の由来ともされている。バゼットさんが使う宝具「斬り抉る戦神の剣(フラガラッハ)」は光神ルー(クー・フーリンの父親)の武器として有名だが、もともとはマナナンが持っていた剣であり、「マナナンがルーに授けた」とされています。ルーの祖父に当たるバロール(睨むだけで相手を殺せる「直死の魔眼」の持ち主)が「お前は孫に殺されるで」と予言され、娘が子供を産まないようにしようとしたけど娘はバロールのもとから逃げ出し、なんやかんやの末にマナナンに助けられ、生まれてきたルーは彼のもとで育つことになる(伝承によってはバロールが海に捨てたルーをマナナンが拾った、というパターンもあるみたい)。そしてマナナンによって鍛え上げられ成長したルーが予言通りにバロールを殺すので、間接的ながら「バロールの死因」とも見做せる神だ。クラスがアルターエゴなので、マナナン以外の神霊も混ざっている可能性が高い。ルーか、それ以外の何かか……。

 あと今回からシステムが改修され、最大10個までチョコを一気に渡せるor貰えるようになります。その際過去に観たことがあるアドベンチャーパートは再生しないように設定することも可能とのこと。アドベンチャーパートは途中からフルボイス化されてメッチャ時間が掛かるようになったから聞く方も結構大変なんですよね。一度観たことのある奴を飛ばそうと思っても、始まってすぐには誰のシナリオなのかわからないこともありますから自動的に新規だけ再生してくれる機能はありがたい。ただ、オベロンだけは2部6章をクリアしてからでないとアドベンチャーパートが再生されない(マテリアルにも登録されない)ので、「オベロンを所持しているけど本編は進めていない」ってプレーヤーは早めに本編攻略に取り掛かった方がよろしいでしょう。この感じだと妖精國メンバーは全員奈須きのこ執筆かな。筆が乗ってスゴいボリュームになってそう。


2022-02-03.

・ニコニコ生放送で一挙配信やってたから、という理由で『IDOLY PRIDE -アイドリープライド-』を今頃視聴した焼津です、こんばんは。結論から書くと「一気に観たら面白いアニメ」だコレ。

 2021年の冬アニメだから本放送はちょうど1年前ですね。『IDOLY PRIDE』はメディアミックス企画であり、スマホゲーム版がプロジェクトの柱となっている。サービス開始は2021年6月なのでアニメの放送が終わってから。アニメがアプリの宣伝を兼ねていたわけです。

 実のところ去年1月に1話目だけは観ていたのですが、10人ものヒロインが次々と出てくる冒頭に辟易して2話目に挑む気力をなくしてしまった。以前にも書いたことですが、私は「アイドル」そのものにあまり深い思い入れがないので、もし『ラブライブ!』が徐々にメンバーの増えていく構成ではなく最初から9人全員が登場する形式だったらたぶん途中で観るのをやめていたでしょう。アイプラもストーリーを遡って2話からメンバー集めの過程を綴り始めるのですが、1話目の「アイドル10連発」のインパクトが強すぎたもので……しかしなぜ去年挫折したアイドルアニメを今頃観る気になったのか? と申しますと理由は単純、昨年の秋アニメとして楽しんでいた『SELECTION PROJECT』との類似が指摘されたからです。セレプロもアイプラ同様「新人アイドル」をテーマに据えたメディアミックス企画で、オーディションをリアリティショー経由で行う「アイドル物なのにデスゲームみたいな雰囲気」の作品として一部で話題になりました。類似というのは具体的に申し上げますと、「伝説的な人気を誇ったアイドルが事故で急死する」「そのアイドルの妹がまるで姉の遺志を継ぐかの如く芸能界に入ってくる」「そして妹ちゃんのそばにはアイドルが急死した日にちょうど心臓移植手術を受けた子が……」ってな具合。示し合わせたのか? ってぐらいシチュエーションが丸被りしているのです。プロジェクトの発表時期を考慮するとどっちがどっちのパクリということでもなく、本当に「事故が起こった」としか言いようのない状況である。

 アイプラは10人の新人アイドルたちが割と早い段階でデビューし、そこから二つのグループに分かれていく経緯を描いているのに対し、セレプロは9人のアイドル候補生たちが正式デビューの切符をかけてオーディション番組に出演する話であり、実際にデビューするのはかなり後半になってから。ゆえにアイドルアニメとしての印象はだいぶ異なるんだけど、心を閉ざし頑なな態度を取る妹ちゃんとか、胸の傷跡から心臓移植手術の話題に向かっていく流れとか、観ていて混乱するほど似通っている部分があることは確か。何せアニメのシリーズ構成をやってる人もアイプラは「橋龍也」でセレプロは「高橋悠也」だもんな……一瞬同一人物かと勘違いしそうになったわ。高橋龍也は『雫』、『痕』、『To Heart』など(個人的に『リアライズ』が好き)を手掛けたシナリオライターであり、近年はアニメの脚本を多く手掛けています。アイドル物だと『アイドルマスター シンデレラガールズ』のアニメ版が有名か。高橋悠也はどちらかと言えばドラマの脚本がメインで、『仮面ライダーエグゼイド』の全話脚本を担当している。経歴を見ると『エンジェル・ハート』のドラマ版も脚本を手掛けているようで……心臓移植に縁がある脚本家なんだな。ただ、設定面で多少混乱するというだけであってそれぞれ進む路線はまったく違っており、「アイドルアニメとしては別物」と見做して構いません。両方観てもいいし好みに合う方だけ観てもいい。とりあえず「片方だけ観ればもう片方は観なくていい」とか、そういうのじゃない。

 さすがに10人ものアイドルを1話1話掘り下げていくような形式ではストーリーラインを維持できないので、主人公「牧野航平」と事故死したアイドル「長瀬麻奈」、麻奈の妹である「長瀬琴乃」と麻奈の心臓を移植された「川咲さくら」、この4人の関係を軸にして物語が展開していく。すずちゃんとか雫ちゃんとかも可愛いけどぶっちゃけ扱い的にはほぼサブキャラだよね。「この子たちの詳細はアプリの方で!」と潔く割り切っている。アイプラの特徴は何といっても故人である麻奈が幽霊と化し、レギュラーメンバーとして全編に出張ってくるところです。完全にファンタジーへ両足突っ込んでるが、この異色の設定があってこそのアイプラであり、どうしても似たり寄ったりになってしまって差別化が難しいアイドルアニメ界において独自の存在感を放つことに成功している。アイドルアニメとゴーストストーリーが両立していて、クライマックスの展開には不覚にも涙腺が緩んでしまった。アイプラは琴乃が桎梏から解き放たれる話であり、さくらが自分の航路を見つける話であり、牧野の初恋が終わる話でもあるんだよな……主人公が籍を置く「星見プロ」以外の芸能プロダクションに所属するライバル的なポジションのアイドルグループ(要するにA-RISEみたいなアレ)もいますけど、「TRINITYAiLE」の3名を担当する声優が「TrySail」というユニットのメンバーそのまんまなのは噴いた。「LizNoir」の4名もまんま「スフィア」なんですが、アニメだとCV.戸松遥とCV.高垣彩陽の二人くらいしかまともな出番がなく、 CV.寿美菜子とCV.豊崎愛生の二人は顔見せ程度に留まり「これから合流するよ」ってところで終わってます。そのせいで「スフ」とか「ィア」とか呼ばれていて苦笑いしてしまった。琴乃とさくら以外のメンバーも掘り下げてほしいし、4人全員揃ったLizNoirも観たいし、是非とも2期目が来てほしいところ。

 書き忘れていましたが、作中で故人となっている伝説のアイドル「長瀬麻奈」の声優を担当したのは神田沙也加。大きく報道されたのでご存知の方がほとんどでしょうが、昨年に逝去されました。アイプラの運営は麻奈のキャスト変更を行わない旨を通達しており、もしアニメの2期が制作されたとしても過去編含めて出番はないでしょう。残念でならない。

「機動戦士ガンダム 水星の魔女」放送は10月から!復活のMBS・TBS“日5”枠で、記念PVも(コミックナタリー)

 還って来る……オレ達の“日5枠(オウゴン)”が還って来る! と涙を流すほど熱中していたわけじゃないが、「ニチゴ」という言葉の響きに懐かしいものが込み上げてくることは確か。かつてTBS系列の地上波で土曜の午後6時にアニメを流す、通称「土6」なる放送枠が存在していました。起源を辿っていくと90年代まで遡るが、有名なのは2000年代前半に放送された『機動戦士ガンダムSEED』および『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』、あとは『鋼の錬金術師』(旧バージョンの方)だろう。2007年10月から2008年3月にかけて放送された『機動戦士ガンダム00』(1期目)を最後に土6枠は消滅し、2008年4月から日曜の午後5時という新たな枠へ移動――これがいわゆる「日5」です。一番最初に放送されたのが『コードギアス 反逆のルルーシュR2』。ギアスの1期目は深夜アニメだったから、2期目で一気にリアタイする人が増えましたね。私も毎週テレビの前で「さあ今週はどうなるんだ?」とワクワクしながら放送待機したものでした。

 少年漫画原作を中心にたくさんのアニメが放送されたものの、2016年10月から2017年4月にかけて放送された『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(2期目)を最後に枠が消滅。多くのアニメファンに親しまれた「日5」という概念はこうして過去の物となった……かに思われましたが、5年半の月日を挟んで復活することが決まったってワケです。その復活第1弾となるのが『機動戦士ガンダム 水星の魔女』、現状だとタイトル以外何もわかっていないガンダムの新作である。宇宙世紀シリーズなのか、それともアナザーガンダムなのか? 登場するガンダムは1機だけなのか、それともいっぱい出てくるのか? それすら判明していない。プラモの展開などを考えれば1機だけとは考えにくく、たぶんいっぱい出てくるんだろうが……その場合、宇宙世紀だと制約が多くて面倒なので「アナザーにしとこう」ってなる可能性が高い。宇宙世紀シリーズに属するガンダムアニメは最近でも『閃光のハサウェイ』が制作されていますが、「TVアニメとして企画された宇宙世紀モノ」なんてVガンダムまで遡らないとないですし(ターンエーやGレコは宇宙世紀が終わった後の話なので含めない)。Vガン以降はだいたいOVAか劇場版かWEB配信です。ファンの評価はともかくVガンは子供ウケが良くなかったためオモチャ類もあまり売れず、「宇宙世紀モノはもうやめよう」と大胆に舵を切ったGガンダムで児童人気の獲得に成功し、以来TVアニメとして放送されるのはだいたいアナザーガンダムになりました。こうした事情を踏まえると『水星の魔女』もアナザーと考えるのが自然なんですが、「だからこそ逆に」という意見もある。宇宙世紀シリーズは後から後から設定を追加していったせいで複雑化し、一見さんが入りにくいマニアックな世界となっているけど、むしろ「一見さんでも入りやすい宇宙世紀モノ」が作れたらバンダイも商売の幅が広がります。例の「UC NexT 0100 PROJECT」もあり、「ここまで情報を封鎖しているってことは意表を衝いて宇宙世紀モノなのでは?」と穿った見方をする人が現れても不思議ではない。まだ何も分からないからこそ好き勝手に言い合える今が楽しいんですよね。

 私もスタッフが公表されるまで「『水星の魔女』は虚淵ガンダム! 虚淵玄単独脚本を50話たっぷり堪能できる!」と勝手に思い込むことにします。脚本は虚淵としてキャラデザは誰だろう……キービジュまったく出ないところを見ると「まさか!」と仰天するようなチョイスだっていう予感はするんですよね。吾峠呼世晴とか山口貴由とかそういうレベルの人が来てもおかしくないと睨んでいるが、さて。

「BASTARD!!」アニメ化!Netflixで今年配信、ダーク・シュナイダー役は谷山紀章(コミックナタリー)

 この令和の世にバスタードを甦らせるとは、いよいよ何でもありになってきたな、ネトフリ。私は途中で脱落したクチだからファンと名乗ることはできないが、夢中になって貪り読んだ時期があることは確かです。当時の少年たちにとってバスタードは「比較的入手しやすい準エロ漫画」だったからな……『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』は1988年に連載を開始したジャンプ作品で、作者は「萩原一至」。同時期の新連載として『ジャングルの王者ターちゃん』や『ろくでなしBLUES』、『まじかるタルるートくん』などがある。88年は『キャプテン翼』や『北斗の拳』が最終回を迎えた年でもあり、ジャンプが次の世代に移る節目のようなタイミングであった。スクリーントーンを多用するコッテリした絵柄で容赦なくエログロシーンを綴り、90年代に青春を過ごした多くの者のハートと脳髄を鷲掴みにしたものです。

 異世界ファンタジー、と見せかけて実は科学が発達し過ぎた末に文明の崩壊してしまった世界がバスタードの舞台。科学文明が崩壊する前の言うなれば「過去編」に相当するエピソードも存在し、非常にスケールの大きな物語となっていますが、あまりにもスケールが大きくなってしまったため作者にも制御できなくなってしまい、ここ10年くらいは同人誌を除いて中断状態が続いている。話が飛んでる箇所もいくつかあり、熱心なファン以外は全体像を把握することも難しいでしょう。「背徳の掟編」も途中までは面白いと思って読んでいましたが、ストーリー進まなくなってきたこととデジタル作画に馴染めなかったことが重なって25巻を最後に買うのやめてしまった。なお単行本の刊行は27巻を最後に止まっています。完結していないのに「完全版」を出し始める(当然こちらも刊行が途中で止まっている)など、商業展開の仕方がムチャクチャで「かつては物凄く人気のあった作品だけど今後新規のアニメが制作されることはないだろうな」と思っていただけに「ネトフリでアニメ化!」はつい三度見するぐらいの衝撃でした。このアニメ化をキッカケに原作も完結へ向かう……という望みはほぼないにしろ、初期エピソードを新規の作画で堪能できるのは普通に嬉しいなっていうのが偽りなき感想です。90年代前半に全6話のOVAも作られていますが、30年経ってるんだからキャストも当たり前の如く刷新されている。主人公D・Sを担当するのは「谷山紀章」。チンピラ演技が上手いことで有名な声優だ。ヒロインのヨーコ役は「楠木ともり」、虹ヶ咲の優木せつ菜、最近だと『先輩がうざい後輩の話』の五十嵐双葉を演じている。個人的にはスタリラの巴珠緒の印象が強い。OVAでは玄田哲章が演じていたガラは「安元洋貴」が担当する。谷山紀章と安元洋貴……髪の色も相俟ってベイマキナの組み合わせを連想してしまうな。

 ちなみにバスタードは小説作品も5冊出ています。ジャンプのノベライズは一度出したらそれっきりのことも多いのだが、バスタードに関しては文庫版もちゃんと刊行されている。岸間信明の『魍魎達の鎮魂歌』および『悪魔の褥に横たわりて』、ベニー松山の『黒い虹(1・2)』(未完)、このへんはもう既に絶版しているが古橋秀之の『ニンジャマスターガラ外伝』は今でも容易に新品を入手可能です。原作の続きは無理でも古橋ノベライズの第2弾くらいは出るかもしんないな……『黒い虹』に関してはベニー松山が去年「来年の抱負は、いよいよ真剣に『黒い虹』を完結させよう! です!」とコメントしているので僅かに望みあり? それはそれとしてPSの『虚ろなる神々の器』、あれもベニー松山がシナリオを手掛けたらしくて気になっているんですよね。今更リメイクされるとは思えないし、この機会にポチってしまおうか?

・拍手レス。

 いぬかみ!は権利関係の問題ですかねえ。「2021年1月、出版社「WiZH」を立ち上げ、自身と古橋秀之、渡瀬草一郎の電撃文庫作品の再版計画を告知した。 」となっているので。本人の呟きでは続編はもう予定されてるみたいですが
 あー、そういえば去年ツイッターで見かけていましたけどスッカリ忘れていました<出版社「WiZH」 ちょっと前にどっかで『いぬかみっ!』の話題に接したような……という既視感があったのコレか。有沢まみずが元気そうでホッとする。

 アヴェスターラジオで初代インポことヴァルナのビジュアルが公開されましたが、想像以上に司狼
 パンテオンが無事にローンチしていたら「司狼だらけ」「司狼編成」みたいな光景も繰り広げられたんだろうかな……。


2022-01-27.

「惑星のさみだれ」TVアニメ化!今夏放送、構成・水上悟志「原作の最後までやります」(コミックナタリー)

 おおお、完結から11年以上も経ってようやくアニメ化するとは。1巻出たのなんて2006年ですよ、16年前! 私が読み始めたのは3巻が出て4巻が出る前あたりだったから確か2007年頃かな……調べたら2007年10月の日記に感想書いてるわ。幼き魔王に忠誠を誓った主人公が、仲間たちと触れ合い、ともに戦い、トラウマも克服しながら、それでもなお平和に反する忠誠を貫くことができるのか? という問いに真摯に向き合っているファンタジーです。「デスノの月(ライト)やギアスのルルーシュ」みたいな悪の才能を持ち合わせていない主人公がひたすら状況に流されて足掻き回る。

 全10巻と程良い長さにまとまっており、一気読みするのにちょうどいい分量だが電子書籍派以外の方は少し待った方がいいかもしれません。刊行からだいぶ経ってるし、アニメの販促として新装版が出るかもしれませんので。『惑星のさみだれ』は連載完結記念として制作された小冊子があり、そこに収録された外伝が『宇宙大帝ギンガサンダーの冒険』という短編集にも入ってるんですが、「『惑星のさみだれ』だけ読んだ水上悟志ファンじゃない人」だとなかなかギンガサンダーまで辿り着くことができない……という深刻な問題をずっと放置していた。なので外伝をちゃんと追加した完全版が出る可能性はあります。あわよくば描き下ろし新作も……? とにかく続報待ちだ。完結済なので中途半端なところで終わったり変なオリアニが挿入されることもないだろうっつー絶大な安心感とともに待つことが出来ます。やったぜ。

 ビスケットハンマー繋がりで何卒『ひめしょ!』の方もアニメ化をお願いしたい。さみだれの連載開始が2005年4月でひめしょの発売日が2005年11月だから割と同時期なんですよね。16年以上前のソフトなのにDL販売のおかげで新しいOSでもプレーできるの、非常に素晴らしい。ただアスペクト比(画面の横と縦の比)が4:3時代のゲームなんで16:9に慣れてる2010年代以降の層は手を出したがらないという問題が横たわっている。私は横の広がりを感じられる16:9も好きだけど、イベントCGで原画家が構図に苦労している(pixiv等のR-18イラストを漁る趣味がある人なら本能的に知っているだろうが、人体は縦に伸びているためエロい絵を描こうとするとだいたい縦長になり、ワイド画面の左右が余ってしまう)のを見ると「4:3時代が良かったな」って思うことがたまになります。あるいはディスプレイを回転させる機構がすべてのPCに標準装備されている世界線では縦長の構図を活かしたエロゲーがバンバン発売されているのかなぁ、なんて夢想したりする。

女子小学生の憧れの職業は悪役令嬢!?「桔香ちゃんは悪役令嬢になりたい!」1巻(コミックナタリー)

 あらすじ読んで衝動的にポチりたくなった1冊(まだ買ってない)。プリキュアに憧れるノリで「悪役令嬢」に憧れた女の子が現実世界で悪役令嬢になろうとする、「ごっこ遊びに励む主人公とそれに付き合わされる周囲の人々」系コメディ。なんだろう、この新しいようで懐かしい感覚。人類はそろそろ森奈津子の『お嬢さまとお呼び!』を本格的に再評価すべき時代が来ていることを自覚しなくちゃならないのでは? ちなみに“お嬢様”シリーズの値段が高いのは合本だからで、1冊あたりのボリュームはかなりのものです。悪役令嬢ブームは未だ健在であり、最近だと断罪されかけた悪役令嬢が異世界から転生してきた海兵隊員(というかモロにハー○マン軍曹)にシゴかれて再起していくジャーヘッドな『鉄血の海兵令嬢』も書籍化されました。次はどんなのが来るかしら。

アニメ「継母の連れ子が元カノだった」今年放送が決定!下野紘・日高里菜出演、PVも(コミックナタリー)

 そういえばアニメ化の話出てたっけ(すっかり忘れていた顔)。ともあれ、ラブコメ戦国時代のさなかにあるライトノベル界のイチャラブ版図がいよいよアニメ方面にも迫って参りました。ホント今ラノベにおけるラブコメブームは勢い衰え知らずですからね。かつて「ライトノベルで単なるラブコメはウケない」「ファンタジーとかバトルの要素がメインじゃないとダメ、恋愛要素は添え物程度に収めないと」って言われていたのがウソのようだ。無論、昔から「単なるラブコメ」を欲する読者層はキチンと存在していたし、恋愛要素を添え物ではなくメインに据えたライトノベルを読みたがる人もいたが、売上に反映されるほどではなく「ラブコメという漫画やアニメが圧倒的に強い土俵へ『普段ラノベを読まない層』を引き込むのは難しいからなるべく避けよう」という風潮が感じられたものです。

 このへんの話は以前にもしたから繰り返さないが、最近は「特にヤマとかオチとかない、トラブルらしいトラブルも事件らしい事件も起こらない、ただひたすらイチャイチャして主人公とヒロインの平和な日々が続くだけのダダ甘ラブコメ」もあれば「トリッキーな設定で興味を惹いてあっと驚くようなサプライズを仕込み『続きはどうなるの!?』と読者をハラハラさせる変化球ラブコメ」もあってよりどりみどりです。正確なデータを取ったわけじゃないが、「続刊を出しているラブコメのシリーズ作品」がどんどん増えてきている印象があります。いわゆる「なろう系ファンタジー」も相変わらず強いから「ラブコメがラノベのメインジャンルになった!」と喧伝するほどではないにせよ、かつての「何かしら伝奇設定を付加しないとラブコメ企画が通らない」時代と比べたら雲泥の差です。『かのこん』とか、たぶん今だったら「ファンタジー要素もっと薄くしましょう」「いっそ全部削りましょう」と言われるんじゃないかな。『いぬかみっ!』も、恐らく基本的なノリは変わらないと思うが「コメディよりラブの部分を濃くしてください」くらいの注文はつけられるかもしれない。つーか『いぬかみっ!』、電子書籍はコミカライズ版しか出てないのかよ……アニメ化もした作品なのにホワイ?

 最近のラブコメの傾向として「くっつきそうでくっつかない、もどかしい関係」を描く作品ばかりではなく「もうくっついたところから始めようぜ!」ってタイプの作品が多くなってきたのも嬉しい。「事情があってカップルを演じることに〜」だとか「さして面識があるわけじゃないけどお試し感覚で付き合うことに〜」だとか、偽装カップルや仮免的なカップルがだんだん本物の恋人同士になっていく――ってパターンも含めて、「交際開始がゴールではなくスタートライン」なラブコメも徐々に一つのジャンルとして形成されつつある。もはや「ラブコメ系ライトノベルだけ読んで一年を過ごすことが可能」っつーレベルの新刊量ですよ。さすがにラブコメばっかり食ってると私も飽きるので後ろ髪引かれつつ大半パスするわけだが……たとえば『エプロンの似合うギャルなんてズルい』、表紙が実にキマっていてグッと来たけど、表紙の完成度が高すぎるせいで却って「出オチなんじゃないか」という懸念が拭えず購入には至らなかった。あと発売前だが『高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った幼馴染が後悔してるけどもう遅い』の「幼馴染が絶対に後悔するラブコメディ!」というキャッチコピーは笑った。要は追放モノのノリでラブコメをやるみたいだけど「主人公をフった幼馴染みが後悔する」ところを読み所にするのピンポイントすぎるでしょ。私の好きな『夢見る男子は現実主義者』も若干そういう部分はある(散々つれなくしていた主人公が遂に諦めて距離を置き始めたことで逆にヒロインの方が主人公を意識し始める)けど。そのうち「推しの前でトラックに撥ねられて消えないトラウマになる」とか「ヒロインのせいで日常生活すら困難なレベルの大きな障害を負った主人公が『罪悪感に苛まれているヒロイン』によって介護される」みたいな後ろ暗い嗜好を狙い撃ちにしたラブコメも出てきそうだな。いやラブコメかそれ?

・拍手レス。

 2022年に小沢としお作品が映画化される知らせを聞くとは思わなかった…
 なんか見覚えある名前だな、と思ったら春ドラマをチェックしてるときに『ナンバMG5』で目にしたんだった。それとは別に『Gメン』が映画化するんですね。完全にとしおイヤーじゃん。

 祝!惑星のさみだれアニメ化。この勢いで「やらない夫と惑星のさみだれ」も完結まで行ってくれ。
 さみだれアニメ化は本当めでたい。完結済作品のアニメ化は今後も積極的にやってほしいものです。あの頃の漫画だと『ブロッケンブラッド』も好きなんだよな……(チラッ)


2022-01-20.

・米澤穂信が直木賞を受賞したという報道に触れ、「あのスニーカー文庫から『氷菓』を出していた人が……」と隔世の感を禁じ得ない焼津です、こんばんは。

 スニーカーは富士見ミステリー文庫に対抗したのか「スニーカー・ミステリ倶楽部」と謳って何冊かミステリ系ライトノベルを出していた時期があるんですよ。今となっては知らない、あるいは忘れてしまった人がほとんど――という結果から察せられるように企画としては不振に終わり、数年後『氷菓』と『愚者のエンドロール』もスニーカーから角川文庫へ移籍しました。今は亡き“ザ・スニーカー”に掲載された古典部シリーズの短編もいくつかある。『さよなら妖精』『犬はどこだ』で評価され始めたあたりから「いつか直木賞を獲ってもおかしくないな」と思ったものですが、実際に獲ると感慨の深さがヤバいですね。古典部シリーズも好きだけど、個人的に心の深いところに入ってこられたのは小市民シリーズ。米澤穂信は「些細な自意識」にレンズを当てて拡大する技術が卓越しており、その強みがもっとも出ているシリーズこそ小市民シリーズだと私は信じて憚らぬ。何年でも続きを待ちます。あと今更でもいいから『犬はどこだ』の続編も出してくれたらそれはとっても嬉しいなって。

『ドント・ブリーズ』『ドント・ブリーズ2』を観た。

 無印は2016年公開で2は2021年公開、2のURLを見ればわかるが日本での公式略称は「ドンブリ」。メチャクチャ簡単に内容を要約すると「盲目の老人が大暴れする映画」です。あるいは「ジジイ版『ホームアローン』」。ジャンルはホラーに分類されているが、アクション要素が多くて結構ドタバタする感じです。レンタル屋で2のBDを見かけて「無印の評判が良いのは知っているけど2はどうだったんだろう……気になるから2本まとめて観るか!」と借りてきました。あらすじ的にまんま続編みたいだからちゃんと無印→2の順で視聴したけど、結論を先に述べてしまうと「いきなり2から観ても大丈夫」かな、これは。確かに時系列上は無印の8年後ながらエピソードはそれぞれ独立しており、どっちから着手しても支障のないつくりとなっています。無印の方は予算の都合もあってこぢんまりとした話になっているから、無印の成功を受けて予算が拡大した2の方が映画のスケールとしてはいろいろ豪華になっていて「どっちか1本選ぶならこっちかも」なんですよね。時系列を遡ることに抵抗がない、多少のネタバレは気にしない、って方は2からのルートをオススメします。ネタバレもクソも、2が出ている時点で「無印ではジジイが死なない」とバラしているも同然なんですが……続編の存在自体がネタバレになってしまう、断ちがたきシリーズ作品の宿命だ。

 盲目の老人「ノーマン・ノードストローム」が多額の現金を銀行に預けず自宅のどこかに保管している――その情報をキャッチした3名の若者たちが、金を奪うために深夜ノーマン宅へ潜入するが……というのが無印のあらすじ。ネイビー・シールズ(米海軍特殊部隊)所属だったノーマンが虎口に飛び込んできた強盗どもを餌食にしていく形式のストーリーであり、位置付けとしてはノーマンがヴィラン……なんですが、なにぶん「金目当てに忍び込んだクズ」が主人公だから恐怖を覚えるというより「行け! そこだ! 返り討ちにしてやれ!」とむしろノーマンを応援したくなるんだよな。けど、彼がヒーローというわけでは決してない。泥棒が入ってきたというのに警察へ通報せず、問答無用で射殺した後に死体をどこかへ運んでいこうとするなど、ノーマン側にも不審な行動が散見される。この老人はいったい何を企んでいるのか……と観客の興味を惹く軽い謎解き要素も仕込まれています。8年後、なんやかんやの末に生存していたノーマン、今度は「金目当てで来ました、できれば荒事はナシでお願いします」なんていう覚悟の決まってない連中(無印の強盗ども)とは違い、容赦なくあっさりと人を殺す残虐上等の冷血武装強盗団と戦うハメになる。実質「目隠しSEKIRO」では? さすがに『ランボー ラスト・ブラッド』ほどじゃないけど前作の倍くらい血腥い仕様になっており、「死体がふえるよ!」「やったねノーマン!」と残酷描写好きの人もニッコリの出来栄えです。2は一言でまとめると「親ガチャ大失敗の巻」、演出の力で無理矢理イイ話風にしているけど全然イイ話じゃねえ! 泥中の蓮っぽくするな! なんかもう全体的に最悪だよ! と笑ってしまいます。あと無印も2も犬が重要な場面で印象的な活躍をする映画であり、「隠れた犬映画」と申しても過言ではない。

 で、気になるのは「果たして『ドント・ブリーズ3』はあるのか?」ってことですね。今んところ具体的な続編の企画はないみたいだが、終わり方からすると「3は作れないこともない」という気配です。これ以上やるような内容があるのかどうかって観点からすると微妙だが……このままジジイがどんどん超人化していったら『ブラインド・フューリー』どころか『デアデビル』みたいになっちまいそうだしな。

・ついでに『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』もあったので借りました。

 2017年に公開されたDC版アベンジャーズとでも言うべき『ジャスティス・リーグ』に大量の未公開シーンを追加した、平たく書けば完全版です。上映時間が120分から242分と倍増(!)しており、もはや別作品と表現してもOKだろう。『ジャスティス・リーグ』は非常に製作が難航した映画であり、もともと前編と後編に分けて公開する予定だった内容を無理矢理1本にまとめたこともあって評判はあまり宜しくないものとなってしまった。私は予告編を観てちっともワクワクしなかったことと周りから良い評価を聞かなかったことが重なってずっとパスしていた次第です。『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』はファンたちが「監督のザック・スナイダーが構想していた本来の『ジャスティス・リーグ』を公開してくれ」と要望し続けた結果、映画館での上映ではなく配信という形ながらも実現した「完全版」ということで「まるで2007年版の『Dies irae』と2009年のActa est Fabulaみたいだな」と興味を抱き、レンタル屋でたまたま見かけたことも幸いして視聴するに至りました。劇場版の(ザック・スナイダーが編集していない)『ジャスティス・リーグ』は興行的にパッとしなかった作品だけに、こうしてファンの要望が叶えられるというのはとても珍しいケースと言えます。

 劇場版は未視聴なので比較することはできないが、ザック・スナイダー版を観た印象は「映画というよりTVシリーズの連続ドラマを眺めている感覚」です。なんというか、時間の使い方がゆったりとしているんですよ。よっぽどこのシーンをじっくり観てほしいんだろうな、ってくらいスローモーションが掛かりまくる。全体で4時間もある映画だけにダルいと感じる場面もいくつかありました。正直前編はコロコロと視点が変わるせいもあって取っ散らかった雰囲気になっており、素直に「楽しめた」とは言い難い。とにかく「説明しなきゃいけない要素」が多すぎる。喩えるなら「こちらは早くメシを食いたいのにジャガイモの皮剥きとか肉だの野菜だのを煮込む風景とかを延々と見せられる」感じ。しかし、逆に言えばストーリーの仕込みは入念だしそれも前編だけでほぼ終わっています。後編は湯気立ててる調理済みの料理を「どうぞ召し上がれ」とテーブルに並べていけばいい状態であり、「物凄い温度差だな!」とビックリするぐらい盛り上がる。つまりこの映画、後編まで辿り着けるかどうかの勝負ってわけだ。

 笑ってしまうほどエピローグが長く、「DCファンの妄想かよ」ってツッコミたくなるほど多彩な要素を載っけていくザッ君の過剰なサービス精神でおなかいっぱいになりました。DCに詳しくない人がこの映画観たら絶対「続編はいつ公開されるの?」って訊いてくること間違いなしです。今のところ予定はまったくないんだ、と伝えたら「うそでしょ……」とサイレンススズカ並みに絶句すること請け合い。ザック・スナイダーが膨らませていた続編含む全体の構想を俗に「スナイダーバース」と呼ぶらしく、ファンはこのスナイダーバースの継続を願ってなおも活動中なんだとか。まるで『Dies irae PANTHEON』の復活を望む正田崇ファンみたいだな……つい遠い目をしてしまいます。それはそれとして観終わった後に検索したら劇場版とスナカのステッペンウルフ(ヴィラン)が別のキャラかと見紛うくらいデザイン違っていて驚きました。ステッペンウルフは金属の表現がスゴくて好き。あと劇場版にはあってスナカにはないシーンもいくつかあるそう。要するに追加されたシーンは122分どころではない、ってことか。つくづく異例の作品であると実感しました。


2022-01-11.

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を観てきたけど、「これネタバレ抜きで語るの無理じゃない?」と頭を抱える焼津です、こんばんは。

 なのでネタバレ全開で感想を書いていきます。まだ観ていない人は回れ右推奨。

 さて、ノー・ウェイ・ホームは『スパイダーマン:ホームカミング』『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』に続くトム・ホランド主演スパイダーマンの3作目――「トムホ3部作の完結編」である。2000年代に公開されたサム・ライミ版(トビー・マグワイア主演)や2010年代前半のアメスパこと「アメイジング・スパイダーマン」(アンドリュー・ガーフィールド主演)と違い、トムホ3部作はアベンジャーズというかMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)との繋がりが深く、ホームカミングやファー・フロム・ホームだけを単独で鑑賞してもストーリーがよくわからない仕組みになっています。「アベンジャーズというヒーローチームを軸にしたサーガの一部」という位置付けゆえ、スパイディは好きだけどアベンジャーズに興味はない、って人からするとやや入りにくいところはある。「トムホ3部作を観るために履修しておかないといけないMCU作品はどれとどれ?」って訊かれたら、「最低限『アイアンマン』と『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』と『アベンジャーズ』と『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』と『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』と『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』と『ドクター・ストレンジ』かな……あ、ホームカミングを観たらファー・フロム・ホームの前に『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』と『アベンジャーズ/エンドゲーム』もマストね!」と返すしかなく、相手から漏れるクソデカ溜息の幻聴が耳に響いてきてしまう。

 ファー・フロム・ホームのラストでミステリオの最後っ屁を喰らい、罪をなすりつけられた挙句「スパイダーマンの正体はこいつだ!」と実名&顔バレまでしてしまったピーター・パーカーくん。当然世界中で大騒ぎになり、進学を希望していた大学からも「この状況で受け入れるのはちょっと……」と難色を示される。自分一人ならまだしもガールフレンドのMJや親友のネッドまで巻き添えになってしまったことに心を痛め、「なんとかしてよストえも〜ん!」とドクター・ストレンジに泣きつきます。いえ、揶揄とか誇張抜きで今回のエピソードは「ドラえもんとのび太くんか?」ってくらい雑な発端なんですよ。ストーリー展開と締め括りの部分は非常に脚本が練り込まれているが、導入に関しては「仮面ライダーの春映画」と言われても仕方ないレベルの強引さ。安易にストえもんの魔法に頼ろうとしたピー太ーくんも悪いけど、暴走したら世界が破滅するような魔法をホイホイと使うストえもんも悪いよ! 雑談しながらデーモン・コアを弄っているような光景が繰り広げられ、「今回はギャグか?」と真剣に悩むほどでした。

 暴走しそうになったため魔法の行使を中断する二人だったが、ほどなくして「半端に行使された魔法」の影響が街に出始める。異なる世界から出現した脅威、その名は「ドクター・オクトパス」! 登場した瞬間は幻覚でも観ているのかと目を疑いましたね。サム・ライミ版の『スパイダーマン2』で大暴れしたヴィランであり、予告編で目にした機械多腕のインパクトは今でも忘れられない。驚きも醒めぬなか、空から襲い掛かってくる「グリーンゴブリン」! そう、ノー・ウェイ・ホームはサム・ライミ版以降の実写版スパイダーマンに登場したヴィランたちが世界の壁を超えて降臨するマルチバース映画なんです。マルチバースという概念自体は『スパイダーマン:スパイダーバース』でも採用されているからそんなに目新しいものではないのだが、実写でやるとなると格段に難易度が跳ね上がる案件であり「アイデアはわかるけど実行するかフツー!?」とファンたちもブッたまげたワケです。フツーじゃない映画、それが『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』だ。

 評判に釣られてMCUも過去のスパイダーマン映画もまったく履修せずに映画館へ行った人は周囲との温度差にメチャクチャ戸惑うだろう。基本的に上映中は静かにしている観客が多い地元の劇場でさえ、アンドリュー・ガーフィールド版ピーター・パーカーやトビー・マグワイア版ピーター・パーカーがスクリーンに映ったときはどよめきが走りましたからね。よく話がまとまったな、この企画。ファンサービスの量も凄まじく、他の映画だったら確実にカットされて円盤の特典映像に回されるようなスパイディ同士の長〜い会話シーンもそのまま入ってる。アレを眺めたときに「お前らスパイダーマン好きなんだろ? ハハッ、俺たちもだよ!」というスタッフの声がバッチリ伝わってきたわ。プロが超絶技巧を駆使しつつ同人誌作るような感覚で撮ってるんだから反則です。「今のとこ一時停止して!」「もっぺん観たいから巻き戻して!」と叫びたくなるシーンの連続であり、違う意味で「映画館で観るのが辛い」一本となっている。アメスパやガーフィールドに思い入れのある人が観たら泣いちゃうんじゃないかな……アメスパは諸事情から3作目の企画がポシャってしまったシリーズであり、2の悲しいラストを引きずったまま気持ちが宙ぶらりんになっていたファンも多い。ノー・ウェイ・ホームも事態を収束させるためトムホ版ピーターが悲しい決断をするのだが、希望の残る終わり方となっており暗闇の中に輝く灯火みたいな温かさがある。それを観ながら「嗚呼、トムホがえいえんのせかいに……いやコレだと『それは舞い散る桜のように』か? 罪という名の追憶の罰?」とか考えてしまった。

 結論。アベンジャーズに興味がなくてもサム・ライミ版やアメスパが好きな人は万難を排して映画館で観るべき一本です。ヴェノムとの接続は匂わせる程度で終わっているが、スパイダーマンのスピンオフに当たる『モービウス』も今年公開される予定になっているしお楽しみはまだまだこれからといったところ。3月に『ザ・バットマン』、5月に『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』、7月に『マイティ・ソー』新作、11月に『ブラック・パンサー』新作が控えているしアメコミ映画の勢いは当分続きそうだ。

・普段は大河ドラマ観ない人間ですけど、題材に興味があるので『鎌倉殿の13人』の1話目はリアルタイムで視聴した。面白かった。

 脚本は三谷幸喜。過去にも『新選組!』と『真田丸』の脚本を手掛けています。平安時代の末期、源頼朝が源氏の旗印となって挙兵し平家を滅ぼすまでと、頼朝亡き後の鎌倉幕府の行方を綴る。タイトルの「鎌倉殿」は頼朝のことを指し、「13人」は頼朝が死去した後に幕府の実権を巡って争った家臣たちを意味します。源氏は平家に比べてとにかく身内争いが多く、ことあるごとに御家人同士で諍いを起こしている。この時代、負けた方は族滅(一族郎党皆殺し)にされるので死に物狂いの戦となります。平家の世があっさり終わってしまったのはひとえに源氏を族滅しなかったからで、皮肉なことに生き延びた側である源氏の方が「やっぱり族滅! 族滅はすべてを解決する!」と学習しちゃったんですね。

 頼朝の父、源義朝は1160年の「平治の乱」で平清盛に負けて敗走。当時13歳くらいだった頼朝も父や兄たちと一緒に逃げたが途中で散り散りになってしまう。捕まった頼朝は処刑されそうになるもののまだ若かったこともあり伊豆への流刑で済まされます。1話「大いなる小競り合い」は1175年なので、父の死・自身の流刑から15年が経過。頼朝も20代後半になっている。保護観察官的な伊東祐親の娘・八重をコマして子供まで産ませた頼朝にちょっと笑ってしまうが、この頃の頼朝は権威こそあるものの実権がなくてスケをコマすくらいしかやれることがないんだよな……スケコマシの佐殿。軽妙な遣り取りで登場人物たちの個性を際立たせる脚本形式がハマっており、1話目から魅了されるものがあります。周りに流され右往左往する主人公・北条義時は今のところ「情けない青年」といった役回り(史実準拠ならまだ少年といっていい歳)だが、ここから権力の頂点にまで昇り詰めていくのだと思うとワクワクするな。

 まだ物語は始まったばかりだが、冒頭で義時が連れて逃げている「姫」の正体が判明する件や、千鶴丸の非業の死を淡々と描くところなど、視聴者の気を惹くウマい構成になっているのはさすが三谷幸喜といったところ。時代劇らしからぬ砕けた言い回し(首チョンパとか)が繰り出されるため重厚感のあるクラシカルな大河ドラマを愛好する人には不評みたいだが、普段大河を観ない私にとってはコレぐらいがちょうどいいかな、ってのが偽らざる感想。大河ドラマは土曜の昼に再放送するので「興味あるけど視聴し損ねた」って方はその時にどうぞ。FGOの牛若丸に惚れたことがキッカケで鎌倉幕府成立前後のあたりに興味が湧いていることもあって、まさしく私にうってつけのドラマとなっています。大河でこの時代に興味が出てきた人にはライトノベルの『鎌倉源氏物語』をオススメしたい。登場人物の大半が女体化している部分は人を選ぶけど、「源氏の将軍は三代で潰える」未来を知ってしまった頼朝がそれを回避すべく行動する歴史改変ストーリーとなっており、エピソードを圧縮してたった一冊にまとめているから読み応えがある。『鎌倉殿の13人』の前史に当たる『朝嵐』も面白い。今は義経を主人公にした『戦神の裔』と「尼将軍」北条政子の奮迅を描く『修羅の都』(少し前に続編『夜叉の都』が発売された)を並行して読み進めています。

 ああ、そういえば大河人気に当て込んでか『君の名残を』の新装版が出るみたいです。タイムスリップ系の歴史小説であり、現代の女子高生であった友恵ちゃんが巴御前として、現代の男子高校生であった武蔵くんが武蔵坊弁慶として源平の時代を生き抜くハメになる。文庫本にして1000ページを超える力作ながら、当時は思ったほど話題にならなかった。「埋もれた傑作」と呼ぶほどマイナーな作品ではないと信じたいが、やっぱりタイトルが抽象的すぎて本来届けたい層に届かなかったんじゃないかって気がします。ちなみに『君の名残を』の後に刊行された同作者の小説集『黄蝶舞う』は大河人気にあやかるべく既に増刷済みである。頼朝・頼家・実朝の将軍3人と、頼朝の長女・大姫(これは通称と考えられており本名は不詳)、実朝を暗殺した公暁、それぞれの死を主題にした短編5つを収録しています。


2022-01-05.

・サボっていたグラブルの年末年始開催イベント「OLD BOND」を今頃やっていたら「ガレヲン」とかいう目閉じ太腿ムチムチ巨乳ドラゴンが出てきて即座にpixivへアクセスした焼津です、こんばんは。

 「OLD BOND」は「創世の根幹」とまでされている六色(黒・白・金・朱・碧・翠)のドラゴン――すなわち「六竜」が登場するストーリーであり、過去のイベント「龍血戦争」で人間形態をお披露目していたフェディエル以外の五竜(ル・オー、ガレヲン、ウィルナス、ワムデュス、イーウィヤ)の人間モード(じゃない奴もいるけど)が初めてわかるエピソードなんですが、あれ? そもそもグラブルの六竜ってこんな名前だったっけ? 「六竜の試練」では違う名前だったような……と首を傾げながら確認したら「黒竜イーヴィル、白竜ラディス、地竜ドルベイル、火竜ヴレッザレク、氷竜ウィリヌス、風竜イールシアス」で全然違うじゃないですか! エクストラクエストの「六竜の試練」は8周年アップデートで廃止される予定だということだし、氷竜とか火竜とかは召喚石こそ残るものの「奴らは六竜ではなかった……話は以上だ」ってふうになってしまうん? ガチャとイベントしかやってない私は知らなかったけど「OLD BOND」に出てくる方の六竜は「六竜討伐戦」や「六竜HL」という一昨年実装された高難易度クエストで既に登場していたらしく、今更な話題ではあるが軽くビックリした。

 一番最初に人間モードが開陳されたフェディエルは満を持して実装され、イベントでは「お前が六竜の一角だったのかよ!」とエンディングでようやく発覚するイーウィヤも一緒にガチャ入りしています。私の場合はエンディング見る前にガチャ更新が来ちゃったから驚きが中途半端になってしまったが……「実装=ネタバレ」というFGOでよくあるアレだ。フェディエルを担当する声優「田野アサミ」はスマプリの日野あかね(キュアサニー)やゾンサガのサキを演じた人で、口調は違うけど声にサキっぽさを少し感じます。イーウィヤは「引坂理絵」、名前見てもピンと来なかったけど検索して「あっ、プリマジのチムム!?」と仰天した。一般的にはHUGプリの野乃はな(キュアエール)役で有名なのかな。ワムデュスは六竜唯一のロリっ子枠で、声に猛烈な聞き覚えを感じた。公表こそされていないものの十中八九「長縄まりあ」――メイドラのカンナ役の人です。ロリ系ドラゴン繋がりで笑わずにはいられない。カンナ以外だと「富田林田舎ちゃうもん」の本田珠輝や『六畳間の侵略者!?』のティアミリス皇女殿下(ティア)を演っています。赤髪料理好きアニキのウィルナスと神経質そうなパッツン三つ編み眼鏡のル・オーは声優非公開でいくつか予想が出てるけど割愛。そして本命のガレヲンちゃんも声優名は非公開だが、ボイスから察するに恐らく「三森すずこ」でしょう。明白にゆゆゆの東郷さんやスタァライトのひかりちゃんを彷彿とさせる声色だもの。腕ほっそいのに胸と太腿がムチムチでパツパツという騎空士の性嗜好を全力で歪めに掛かっている悪辣ボディの持ち主であり、人間形態が公開されてからさほど経過していないにも関わらずファンアートが既にたくさん描かれている。素晴らしいデザインのキャラが現れるや否やあっという間に絵師たちが立ち上がるの、さすがグラブルだ。「年季」を実感させてくれます。「祝福」と称してあらゆるものにキスをする癖があるせいか、モザイクが掛かるようなところに唇を寄せるR-18イラストが多いな……ツイッターでガレヲンを検索しようとすると「チンキス」がサジェストされるあたり騎空士たちの欲望に全力で素直な姿が窺えて微笑ましい。叡智の結晶たるガレヲンのプレイアブル化をお待ちしております。

PCゲーム『グリザイア:ファントムトリガー vol.8』2022年2月25日に発売決定!

 先月のニュースなのに今更気づいて驚いた。全員集合イラストでお察しいただけると思いますが最終巻です。ファンディスク的なものは今後出るかもしれないけど、少なくとも本編はこの巻で完結。最初のvol.1&2が2017年4月発売なので約5年を掛けて開発された大作が遂に幕を引きます。3巻は2017年7月、4巻は2018年1月、5巻は2018年7月、6巻&5.5巻は2019年4月、7巻が2020年7月発売――つまり「7巻→8巻」が1年7ヶ月でもっとも間隔が空いた計算になります。2019年からアニメ版の企画が本格的に動き始めたから、その関係もあって忙しくなったのかもしれない。「エロなしの分割商法……果たして完結まで漕ぎ着けられるのか?」と心配されながらもなんやかんやでグリザイア三部作より長期展開となったファントムトリガー、アニメ版はまだ継続するかもしれないけれどひとまず大きな区切りが付いたことになる。去年ポシャったソシャゲ(グリザイア クロノスリベリオン)もPCゲームとして制作される予定だし、それ以外の企画も密かに進行中とのことでグリザイアワールドそのものはまだまだ広がりそうな雰囲気です。

 「完結と聞いて興味が出てきたな」という方向けにアドバイスしますと、ファントムトリガーのパッケージ版にはディスクが入っておらず、ダウンロードコードが記されたカードが封入されているだけなのでネットワーク環境が必須となっています。「箱を並べて飾りたい」という欲求のある人以外は最初からDL版を購入した方が話は早いしセールスなどで安く買えるだろうから経済的にもオトク。あとSwitchを持ってる人は去年出た移植版の『グリザイア ファントムトリガー 01 to 05』を購入するという手もあります。『01 to 05』を買えばあとは6巻&5.5巻と7巻と8巻を買うだけだし、急がないのであれば完結編の移植まで待つって選択肢も用意されている。「完結記念」と称して全部入りパックを発売するかもと思っていましたが、今のところそういうアナウンスはないですね。もし出すとしたらFDに相当する8.5巻をリリースするときか? アニメだけ観て原作積んでる身なのでアレコレ語ることはできないものの、藤崎竜太がピンでシナリオを手掛けた大作ソフトがこうして無事に完結を迎えるというのは『ひめしょ!』好きの一人として感無量です。年齢的に長大なシナリオを短期間で書き上げることが難しく、作風的に美少女ゲームの主流から外れている藤崎竜太は複数ライター制以外で活躍するのなんて無理……と本人も諦め気味に述べ、読んでるこちらまで切ない気持ちになっちゃった時期があるだけに余計に込み上げてくるものがある。「分割商法」「アコギだ、割高だ」「間隔が空き過ぎて内容忘れる」と批判も多かったファントムトリガーなれど、藤崎竜太の可能性を信じて最後まで共に駆け抜けてくれたフロントウィングには感謝を捧げたい。ありがとう、そして次の企画にも期待しています。


2022-01-02.

FGOの正月新規サーヴァントが「闇のコヤンスカヤ」だったことに噴き出しつつ新年を迎えた焼津です、あけましておめでとうございます。

 「光のコヤンスカヤ」がいるなら当然「闇のコヤンスカヤ」もいるだろうな、とは思ったけど本気でブチ込んでくるとは。これ実質ツングースカPU第2弾では? ともあれ新年に伴っていくつか改修が入っており、大きなところでは「確定召喚」――いわゆる「天井」が追加されました。「FGOに天井が実装される」はありえないことを指す諺でしたが、それが遂に過去のものとなる。329回連続でピックアップ☆5サーヴァントが出なかったとき、330回目の召喚で必ずPU☆5サーヴァントが排出される、というもの。確率的には「1000連回してもPU☆5サーヴァントが出ない」という地獄すらありえたかつてのFGOと比べれば大きな進歩ですが、他のソシャゲと比べると若干渋い仕様である。

 他のソシャゲの場合、概ね10連回すたびに10ポイント(名称は様々だが「ポイント」で統一する)付与される仕組みになっていて、規定ポイント数を貯めると(だいたい100ポイント〜300ポイント、このへんはゲームによりけり)ピックアップ対象などと交換できる――という方式が多い。天井到達前にお目当てのキャラなりアイテムなりが出た場合でも「じゃあ貯まったポイントでコレを」って別のモノを選択する余地があったり、宝具レベルみたいに重ねる旨味がある場合は「天井直前に出たとしてもそこから天井まで積み増しすれば確実に+1できる」副産物的なメリットがあったりするわけだ。しかしFGOの確定召喚はこうしたポイント制ではなくただ単に「330連以内に必ず出る」という最低保証でしかないし、「発動が初回のみ」であることにも注意を払わないといけない。PU☆5サーヴァントが出現した瞬間に「確定召喚は終了しました」の表示が出るそうだが、それを見落として「220連で出たけど、あと110連回せば確実に宝具レベル2にできるのか、じゃあ……」と勘違いする人も出てくるかもしれない。「もうちょっとで天井だし追加で回すべきか?」っていうグラブルとかでありがちな悩みとは無縁でいられるのがメリットと言えばメリット? 総じて宝具レベル2以上を目指すガチ勢にとってはあまり意味のない改修となっている。ただ「所持済サーヴァントのピックアップが復刻された場合」も確定召喚は有効なので、少しだけ意味があるか。年間の呼符・聖晶石配布量はざっくり700〜800連分、我慢強い人なら1年あたり確定召喚2回分は貯められるはずです。FGOそのものの完結が近づいていることを考えると天井覚悟で回せる機会はもうそんなにないだろうが、推し鯖が来る可能性にかけて今からでもガチャ禁に励むとするべ。

 他、サーヴァントコインを消費して聖杯を月2個まで作れる「聖杯鋳造」、「修練場の超級追加」が大きな改修です。あと第2部 第7章は2022年に開幕予定と告知されたが、開幕するだけで終わるのは2023年以降だろうな。今度は3回どころか5回くらいに分けて配信しそう。

『うる星やつら』36年ぶりに再びTVアニメ化 フジ“ノイタミナ”枠「だっちゃ」(オリコンニュース)

 うる星を再放送じゃなくリメイクだと? この令和の世に? 驚きながら情報を漁っていたら「寅年だから?」というコメントがあってちょっと笑ってしまった。マジで「寅年に合わせて2022年に放送しましょう」みたいな会議があったんだろうな。アニメは私が小さい頃にやっていたが、リアルタイムで観た記憶はほとんどなく、概ね再放送で散発的に視聴していましたね。「SF」と「学園」を軸にしたスラップスティック(ドタバタ)ギャグであり、子供だった当時の私にとってあの騒がしさは正直苦手でした。世代的に『らんま1/2』の方が直撃弾であり、TS嗜好を植え付けられた遠因はアレにある。ちなみに「不本意だけど似合う」女装モノが好きになった近因は『突撃!パッパラ隊』『BREAK-AGE』。あのふたつがなければ「おとボク」も「恋楯」も「るい智」もハマることはなかっただろう。閑話休題、この調子で行くとらんまの方もリメイクされかねない勢いを感じています。確かアニメのらんまは原作の途中までしかやってないし、『フルーツバスケット』みたいにフルリメイクされる素地はあるっちゃあるんだよな……しかし高橋留美子、『半妖の夜叉姫』も放送中だし人気の衰えなさがすごい。かつて対談本を出した平井和正が現在ほとんど忘れ去られた状態になっていることを考えると余計に畏怖の念が湧く。高橋留美子が筒井康隆のファンであることはWikipediaにも書かれているくらい有名な話だけど、対談本を出すほど平井和正のファンでもあったのだ。

アニメ「魔法科高校の劣等生」続編が制作決定!特報CM公開、「追憶編」BDは3月発売(コミックナタリー)

 そういえばFate特番が終わった後に寝ちゃったから追憶編は観てなかったな……録画してあるからそのうち観よう(こう言ってるとだいぶ経ってから観ることになる)。さておき続編制作決定に驚く人はほとんどいないでしょう。むしろ追憶編や来訪者編が放送されるまでかなり時間が掛かったことの方に訝るのでは?

 アニメは来訪者編→追憶編という順番での放送になったが、原作だと追憶編は8巻で来訪者編が9〜11巻、つまり原作通りに進むなら次は12巻。達也と深雪の司波兄妹が進級する「二年生の章」始まりに当たる『ダブルセブン編』です。タイトルの意味は簡単で、元生徒会長・七草真由美の双子の妹が入学してくる。また「七草家」とは別に「七」を冠するナンバーズ「七宝家」の人物が登場し、「ふたつの七」のダブルミーニングとなっている。新キャラが続々と登場するため顔見せ的な場面が多く、エピソードそのものの印象は希薄である。3期目は13巻の『スティープルチェース編』を経て14巻と15巻の『古都内乱編』までやるんじゃないかしら。「さすおに」「なかでき」「御曹司!」等、いろいろとネタにされる作品ではあるが壮大なストーリーを作者の趣味全開で推し進めている点は清々しくて好きだし、できればアニメも完結編まで漕ぎ着けてほしい。「ラノベアニメはいつも途中で終わる」という通念を破壊する前例となってくれ。


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