2016年1月〜2月


2016-02-26.

light新作『Dies irae 〜Interview with Kaziklu Bey〜』、OPムービー公開

 YouTube版ニコニコ動画版のリンク張っておきます。アクセスするだけですぐ動画が観られるなんてイイ時代になりましたね。昔は公式サイトからzipファイルをダウンロードしてきて解凍しなきゃいけなかったんですけど、アップ直後はクソ重くてまともに繋がらず、なかなか観られなくてイライラしたものでした。と懐古話はさておき、やってきましたイカベイのOPムービー。DiesのOPムービーとしては2007年版、クンフト版、ファーブラ版、アマアメ版につづく5つ目です。

 まずこれまでのOPムービーをおさらい。2007年版は「Einsatz」を主題歌にした、古参にとってはもっとも馴染み深いムービー。現在は「dies_demo_ver01.zip」のファイル名で配布中。例の「怒りの日」(蓋を開けてみたら未完成だった、という騒ぎ)で有名な2007年版だけあって、作中では使われていないCGが何点か存在する。演出は割とシンプルながら、1枚1枚のCGが映えるよう実にカッコ良く配置されていました。だけど「ダダダダ」のところで紙相撲の如く小刻みに横移動するのは今でもダサいと思う。2007年版発売前に配布された広報用のOPムービー(ファイル名「diesirae_opmovie.zip」)はシュピーネの獲物がビヨンビヨンしなかったり、最後に諏訪原市の夜景が映るところをカットされたり(発売日や価格の告知に差し替えられている)などしているが、内容はほぼ一緒です。私が一番多く再生したのはこの発売前OPムービーですね。軽く3桁は行っているはず。クンフト版(ファイル名「wiederkunft_op.zip」)も主題歌は「Einsatz」ながら映像が差し替えられており、公式MADといった趣。新素材もあるので後半あたりはグッと来るが、正直あまり思い入れがない。今のPC環境で再生すると額縁みたいになっちゃうし。ファーブラ版(ファイル名「Fabula_OP.zip」)は主題歌を「Gregorio」に変更した、ファンにとってようやく「未知の新ムービー」と実感できる一本。「翳(かげ)に殉(とな)う太陽」等、歌詞カードでも見ないかぎり聞き取れない箇所があって中二性は高い。主要キャラ全部の名前が表示される演出により、「いよいよ完結するんだな」とテンション上がっていった懐かしい記憶。アマアメ版(ファイル名「dies_cs_op.zip」)は要所要所にアニメーション演出が取り入れられており、「ひょっとしてlightはDiesをアニメ化する気なのではないか」と囁かれました。主題歌は「Jubilus」、タイトルコールの後ろでウゴウゴと蠢くメルクリウスは正田崇の案だともっと複雑なダンスを踊る予定だった(自身が踊ったデモ映像まで作った)らしいが、「そんなのとても作画できない」と一蹴されてしまったそうな。

 アマアメ版が2012年3月公開だったので、イカベイが4年ぶりのOPムービーとなりますね。主題歌は「Der Vampir」、これまでの「Einsatz」「Gregorio」「Jubilus」はすべて榊原ゆいが歌っていましたが、今回のボーカルは「ヴィルヘルム・エーレンブルグ」――つまりベイ中尉名義です(作詞は榊原ゆい)。「CV.谷山紀章」の記述もあるので、素直にきーやんと言ってもいいかもしれない。lightのゲームはだいたい女性ボーカルだし、男性ボーカルはなにげにかなり珍しいな。業界全体で見ても男性ボーカルを頻繁に使うのはニトロプラスくらいですし。中には『痴漢者トーマスU』の「それゆけトーマス!!」みたくネタ的な意味で有名になった曲もありますが……ちなみにエロゲーで初めて男性ボーカル曲を取り入れたソフトは2000年の『Treating2U』(プロミュージシャンを目指す青年「堤伊之助」が主人公、見た目が熱気バサラっぽいところに時代を感じる)だとか。『吸血殲鬼ヴェドゴニア』は2001年、紅白歌合戦にも出場した小野正利が手掛けて話題になりました。他に『あやかしびと』の「虚空(そら)のシズク」や『ピリオド』の「永遠の存在者」などなど。イカベイは全年齢向けなのでエロゲー男性ボーカル主題歌史に名を連ねることはないけれど、燃え系やバトル系の男性ボーカル曲が今後ますます充実していったらいいな。

 いい加減ムービーそのものについて語ろう。イカベイOPムービーの長さは2分12秒、エロゲーやギャルゲーのOPは2分前後が普通なのでごく標準的なサイズと言えます。冒頭で表示される「Wo war ich schon einmal und war so selig Ich war ein Bub', da hab' ich die noch nicht gekannt.」はベイの詠唱でもある「ばらの騎士」のテキスト、つづく「Wer bin denn ich?(以下略)」も同様です。周知の通りDiesのジャンル名は「学園伝奇バトルオペラ」で、主要キャラにはそれぞれオペラのイメージが重ねられている。おかげで各々の詠唱がすごく長い。アニメ版ではどう処理されるのか、懸念材料の一つ。「Sophie, Welken Sie(ゆえに恋人よ 枯れ落ちろ)」の後、キービジュアルとともにタイトルがバーンと出ます。相変わらず長い題名でしかも馴染みの薄い字句なので、初見の人だと読み取ることも難しいだろう。画面手前に向かって舞う薔薇の花弁から墓地に映像が移ったところで「シナリオ 正田崇」の表示、毎度のことながらここで心臓の鼓動が跳ね上がる。もはやこの三文字はファンにとって呪文のようなもの。Gユウスケの名前が出た後にポーズをとって構えるベイ。クラウディア、ヘルガ、ルートヴィヒの順にキャラ紹介シークエンス、構成自体は王道的で奇を衒った部分はありません。黒円卓のイベントCGは機嫌の良いメルが依然として腹立たしい。祈るようなポーズのクラウディア、赤い月をバックに荊纏って飛び掛かるベイ、微笑むクラウディアと来て黄金のがしゃどくろ。口からビームを出す絵に笑ってしまうが、ラインハルトのロンギヌスランゼも通常攻撃でビームが射出されるからよく考えるとそんなにおかしくはない。経緯は不明ながら、がしゃどくろを背に飛び立つシュライバーとベアトリスの珍しい組み合わせが観れて個人的には嬉しかった。このふたりって黎明(Die Morgendammerung)のジャケ絵コンビではあるけど、黒円卓入団後は特に目立つ縁もなかったですからね。ああ、そういえばヴィルヘルム、シュライバー、ベアトリスの3人は全員「白騎士(アルベド)候補」だという繋がりがある。ベアトリスは補欠ポジションで、ヴィルヘルムとシュライバーが一、二を争っていた形。穿った見方をすれば、イカベイとは「ヴィルヘルムが白騎士になり損ねた理由」を掘り下げて綴る物語なのかもしれない。というかベア子ってやっぱり普通に空飛べるキャラだったんだな。具体的な数字こそ明示されていないが、「私自身が稲妻になる事だ」な能力を鑑みると最高速度はどんなに遅くてもマッハ400を下らないだろう。さすがは平団員最速である。

 クライマックスはヘルガを形成し血と薔薇で赤く染まったベイ。ヘルガは2007年版だとベイの思い出の中にある声のみ、ファーブラでやっとビジュアルが明かされたが、ベイに取り込まれた司狼が内部で目にしただけ。外部に表出するのはこれが初めてか? 画面が暗転した直後、血だらけになって雪の上に仰臥するベイへ切り換わるが、ニコニコのコメントで即落ち2コマ扱いされていて噴いた。今回も欲しいものを取り逃がすことは確定だが、「どのようにして」が関心事である。最後はインタビュアーのディナ・マロイが映って〆。元ネタに合わせただけのキャラなのか、ゼーゲンの鏡花みたく何か裏がある設定なのか。そしてCAST欄でトリファのフルネームがちゃんと「ヴァレリア『ン』・トリファ」になっているのは細かいが感心した。「ヴァレリアン」が本名で、本編じゃ訳有って「ヴァレリア」という女性名前を使っているんですけれど、割と説明を端折られている箇所なのでこのへんも新規ユーザーにとっては混乱するポイントでしょう。公式ページの紹介文によると「作中では逃亡している状態」だそうで、本編じゃあらすじ程度にしか触れられなかった逃亡生活もチラッと描かれたりするのかな?

 「クラウディアと出会い、ヘルガが嫉妬し、ルートヴィヒと戦って、最終的にヴィルヘルムが初恋を取り逃がす。その一部始終をディナに語る」というのがイカベイの大枠と予想される。他の黒円卓メンバーも出陣するみたいだけど、恐らく出番はオマケ程度のはずだ。今回は分量も少なめですし。文庫本に換算して1、2冊くらいと思われます。しかし、ドラマCDや追加パート、書き下ろし短編小説といった例を除くと、これが「ゲームとしては」初の完全新作となるDies外伝だけに気分も高揚してきた。Diesは最初期バージョンが4:3のアス比で、以降もそれを基準に制作されていったから、今やるとどうしても画面の左右が余るんですよね。CGの上下をカットしただけの「貧乏ビスタ」じゃない形でちゃんとプレーできることは大変喜ばしい。配布ムービーはファーブラの時点で既にワイド対応していたから、この画面サイズというのも開発長期化によって齎された弊害の一つである。某所で「内容は面白かったけど映像の左右が切れていてガッカリ、まったく手抜き編集もいいところだ」という昔のアニメに対する感想を見つけ、深甚なるジェネレーション・ギャップに愕然として震えたけど、最近入ってきたユーザーはマジで4:3の画面に馴染みがないのかもな……解像度低め・アス比従来通りのソフトは低価格ゲーとかでちょこちょこ残存しているみたいですが。そういえばエロゲーがワイド画面に対応し始めたのっていつ頃でしたっけ? 私の記憶にあるかぎりでは『水平線まで何マイル?』(2008年8月)あたりから徐々に普及し出したような気がします。検索してみるとPurple SOFTWAREの『秋色謳華』(2005年8月)が1024*614でワイド化の走りらしいが、2007年の明日君(『明日の君と逢うために』)では4:3に戻っていたから、やはり2008年以前はまだまだワイドが主流じゃない時期だった。と、結局懐古話に回帰する焼津なのであった。

・拍手レス。

 最近のラノベの人気傾向を見ると、林トモアキ作品が凄い珍しいのを実感します。最新作のヒマワリも流行り?何それ?状態だし。あれで新規読者狙いとか冗談もいいとこです
 『ばいおれんす☆まじかる!』書いてた作家がスニーカーの稼ぎ頭になっているとか、本当によくわからない時代だ。『ばいおれんす☆まじかる!』と言えば、アレと同じ頃に始まった『ウィザーズ・ブレイン』がまだ続いてることも凄いな……。

 Dies外伝のOPが公開されましたね、かっこいいのですがボーカル名義がヴィルヘルムなのが笑いが込み上げて来ました。
 「うたの☆ヴァンパイアっ♪」始まりましたね。いい歌なんだけどベイが眉間に力を込めて熱唱しているかと思うと……あとOPの巨神兵に笑った。

 なんか、奴隷制度を肯定する発言する爺が味方になりましたね・・・話が変な方向に迷走しはじめましたな>鉄血
 爺は「このヒゲ、どんな構造になってんだ」と気になってばかりで、話がまったく頭に入ってこなかった。


2016-02-22.

・虚淵が原案・脚本・総監修として関わっている『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』、「そういえばキャストはどうなるんだろう?」と調べてみた結果、ダブル主人公のひとりが鳥海浩輔でもうひとりは諏訪部順一……双首領じゃねぇか! と妙にテンションが上がった焼津です、こんばんは。

 鳥海演じる凜雪鴉(リンセツア)は武器を持たず人に戦わせる策略家ということでますますニートのイメージに重なる。Diesのせいで鳥海ボイスのキャラが出てくると「こいつはメルクリウスタイプか」「こっちは蓮タイプ」「これは……強いて言えば夜刀様?」と分類する癖がついてしまったが、それに比べると諏訪部は獣殿タイプのキャラって意外とない感じですね。なんというかもっと若そうだったり、淡々としていたり、あるいは溌剌としているキャラが多い印象。最近だと『スタミュ』の鳳樹『プリンス・オブ・ストライド オルタナティブ』の久我恭介(このふたり、ポジション的にも見た目的にも被っていてときたま混乱する)を演ってるが、どちらもラインハルト特有のねっとりした演技から離れているため、「早くDiesアニメでねっとり諏訪部を体感したい」と願ってやまぬ日々である。

『Fate/Grand Order』「空の境界」とのコラボキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!イベント限定サーヴァントとして☆4「両儀式〔アサシン〕」が登場!(萌えオタニュース速報)

 録画したアニメを再生していたらCMでいきなりおっぱいタイツ師匠が映ってビックリした。動く式が久々に観れたのも感慨深い。鮮花とイリヤの組み合わせもカワイイヤッターながら、橙子さんも相当可愛くて「やっぱりまほよのアレは幻だったんや!」という気持ちになる。アレもアレで好きだけど。そういえばFateのHeaven's Feelっていつ公開なんだろう……まだ公開時期に関する情報は来てませんよね? 月姫リメイクに比べればまだ全然待たされていない範疇ではあるが。

【ワナビ】 キャラ同士の掛け合いを上手く書くにはどうすれば良いのか?(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

「かかってこい!」
「望むところだ!!」
 タカシの言葉に対し、カズヤは剣を構えることで応えた。
「天剣豪破斬!」
 タカシはそう唱えながら、斬り込んだ。

 これが例文。私が書き直した場合、以下のようになる。

「こいよカズヤ! 剣なんか捨ててかかってこい!」
「望むところだ!!」
 タカシの挑発に、カズヤは剣を打ち捨てることで応えた。
「かかったなアホが!」
 嘲りに満ちた咆哮を含んで放たれる絶技――天剣豪破斬。
 地を裂いて迫る必滅の刃に、徒手空拳の身で対抗する術など存在しうるのか?
 その答えを知らずに剣を投げ捨てるほど、カズヤは愚かでなかった。
「かかったのは貴様だ、タカシ!」
 大地に突き立った己が剣の柄を踏み、跳躍。
 天剣豪破斬の衝撃とともに突っ込んできた敵影を背下にして飛び越えながら、カズヤは何もない空間を蹴った。
「まさか、その技は……!?」
 何もないはずの空間――だが彼の足はしっかりと虚空を踏みしめた。
「天鷲降破爪!」
 打ち出される覆滅の魔爪。
 不可思議な反作用により空中で転じたカズヤの貫き手が首筋を抉る。
「ふっ、やはり……」
 囁くタカシの声が、
「なっ!?」
「かかったのはお前だよ」
 それは残像に過ぎないと、告げていた。

 うん。反省はしていない。

ラノベレーベル別去年のオリコン一万部越え作品の合計比率が公開 MF文庫落ちぶれすぎ・・・ そしてGA文庫の躍進ぶりが凄いな(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 なんだかんだで電撃は強いな。スニーカーはいっときよりも良くなっているが、かつての栄華を思うと見る影もない。今年もこのすばがヒットしてなければヒドいことになっていただろう。しかし俺ガイルがあるぶん、もうガガガの方がヒット作品多いんだな……リンク先でも触れられている通り、GA文庫の伸長は著しいですね。あそこは2006年1月創刊なのでもう丸10年を超えたわけですが、こちらの一覧表を眺め返すと感慨深いものがある。せっかくなので年別で振り返っていこう。

 創刊した2006年はポリフォニカ(複数作家によるシェアワールド企画)が目立つ。49冊中9冊、つまり約2割がポリフォニカ関連。ぶっちゃけポリフォニカ以外にこれといった目玉はない。強いて言えば2009年に実写ドラマ化した『メイド刑事』くらいか。『ナハトイェーガー』はKeyに在籍していた涼元悠一がLeafに移った頃に出した一冊、元はweb小説なんですっけ。個人的なオススメは『戦塵外史 野を馳せる風のごとく』。そう、GA文庫はかつて「士伝記シリーズ」などと呼ばれていた花田一三六の傑作群を復刻してくれた素晴らしいレーベルなのだ。士伝記(戦塵外史)はメチャクチャ面白いにも関わらず、読んでいる人が少なくて、アンソロジーや雑誌に掲載されたきりの単行本未収録作品が多かった。そうした未収録作品をまとめてくれたうえ、新作まで発売してくれたGA文庫はまこと太っ腹である。「萌え」要素を極小にした作風のためかあまり売れなかったそうだが、完結巻までキチンと出してくれたことを今でも感謝しています。

 つづく2007年もポリフォニカ頼り。およそ1/6はポリフォニカでした。一方、この年はGAマニアなら「懐かしい」と感じること間違いなしの2大長期シリーズ、『EX!』『おと×まほ』がスタートした。どちらもあまり激しいメディアミックス展開はしなかったので、一般的な知名度は低いかもしれない。『EX!』は「正義の味方」を敵に回す「悪の組織」が擁する学園――怪人養成所を舞台にした特撮パロディチックなストーリーで、2012年の15巻で完結するまで5年以上に渡って続いた。『おと×まほ』は母親が魔法少女だったせいで主人公(♂)がミニスカ履いて新たな魔法少女として戦うことになる、今で言う「男の娘」系コメディ。本編は『EX!』同様、2012年発売の15巻で完結したが、後日談めいた内容の最終巻である16巻はつい去年、2015年の6月に刊行された。なにげにGA最長クラスのシリーズである。この年で個人的なオススメは大迫純一の『ゾアハンター』、角川春樹事務所から新書サイズで売られていたシリーズの復刊です。変身ヒーロー愛に溢れるバイオレンス小説で、途中から完全新規ストーリーになって2009年の7巻で無事完結。「お願い」「本当のヒーローになって」の件は今でも目頭が熱くなる。

 2008年も依然としてポリフォニカの比率は高いままだが、そろそろポリフォニカ弄りはやめにしよう。話題作は実写映画化した『ライトノベルの楽しい書き方』くらいかな。後に『のうりん』でヒットする白鳥士郎が『らじかるエレメンツ』でデビューしているが、表紙デザインが地味なこともあってかあまり話題にならず。ちなみにイラストは『ヒャッコ』のカトウハルアキ。web小説を書籍化した『迷宮街クロニクル』はもともとのタイトルが「和風Wizardry純情派」だっただけにWizWizしく、当時コアな人気を誇った。全4巻でさっくり完結しており、比較的手頃な分量なのでオススメしやすい。個人的に好きなのは『イグドラジル―界梯樹―』で、これは『護樹騎士団物語』と設定を共有しているファンタジー小説なんですが、残念なことに刊行が2巻で止まっているためオススメする気にはなれない。ところで同作者の『ダンシング・ウィズ・トムキャット』は主人公の名前が「藍羽祥子」、『イグドラジル―界梯樹―』のヒロイン「藍羽真珠」と主人公の姉「弓削祥子」をミックスしたような感じになっていたが、これは暗に「続きを書きたい」というメッセージを発しているのか……他は面子が異様に豪華な『マップス・シェアードワールド -翼あるもの-』を見て「なんというオッサンホイホイ」と慄いた、そんな記憶。

 2009年はGA文庫の転換期、なんと言っても『這いよれ! ニャル子さん』スタートの年です。掟破りのパロディまみれなクトゥルーコメディ。応募時のタイトルは「夢見るままに待ちいたり」で割と普通だったんですが、刊行時の『這いよれ! ニャル子さん』が強烈すぎてあっという間にGAの看板タイトルへ伸し上がっていく。FLASHアニメの「ニャルアニ」を経て2012年にTVアニメ化、中毒性の高いOP(うーにゃー)とやりたい放題な本編(バレなきゃ犯罪じゃないんですよ)でライト層のハートを掴んだ。作者は終始ネタ出しに苦労していた印象もあるが……さておき、もいっこの話題作が『織田信奈の野望』。戦国武将が軒並み女の子になっているという「それなんて『恋姫†無双』?」なシリーズ。2012年にTVアニメ化し、止め絵のクオリティの高さで注目されたが、2期が来るほどはヒットしなかった模様。2013年の10巻までGAを支える看板シリーズとして活躍したものの、いろいろあって現在は富士見ファンタジア文庫に移籍している。『聖剣使いの禁呪詠唱(ワールドブレイク)』のあわむら赤光や『最弱無敗の神装機竜(バハムート)』の明月千里がデビューしたのもこの年で、GAのカラーが徐々に固まりつつあった。白鳥士郎の意欲作『蒼海ガールズ!』は「男の世界」である海洋冒険物語を「女だらけの世界」に反転させて「女装主人公」という要素を盛り込んだ完璧な布陣だったが、僅か3巻であっさり終了。1巻と2巻は重版してたくらいだし、どうも売れなかったせいではないみたいだけど、よほど『のうりん』を書きたかったんだろうか。高瀬彼方の『カラミティナイト−オルタナティブ−』は3冊で打ち切られたハルキ文庫の『カラミティナイト』をリブートさせた企画で、「オルタナティブ」というのは無印の遠野忍(♂)をホリィ・ブローニングという金髪碧眼の美少女に変更するなどテコ入れを図ったことが由来なのですけど、売れなかったのか2巻で速攻終了。オルタナティブの1巻と2巻って無印だと1巻に相当する内容なので、開幕と同時に終わっちゃったようなもんです。残念。個人的なオススメは『くりぽと』、私の中では『ロウきゅーぶ』と並んで「小学生って最高だな」の双璧を成すシリーズ。出てくるヒロインみんな問題児なんですけど、主人公がイイ性格しているので支障なく楽しめる。しかもこれ、ちょいネタバレしちゃうとヒロインの一人がサキュバスと人間のハーフなんですよ。ハーフサキュバスの女子小学生……ああなんという甘美な響き。4巻で完結済だが、願わくばもうちょい続いて欲しかった。イラストは『閃忍カグヤ』で知られる八重樫南。

 2010年は既存シリーズが順調に巻を重ねていた時期で、新シリーズはやや影が薄い。しかし、ロリコンたちから強烈な支持を受けて見事7巻で円満終了へ辿り着いた『ゆうれいなんか見えない!』や、続刊が2年も途絶えて「すわ打ち切りか」と危ぶまれながらも8巻・9巻の2ヶ月連続刊行で完結を迎えた『ふぁみまっ!』、別シリーズがヒットしたせいで長らくペンディング状態になっていたけど最近ちょっとずつ新刊が出るようになった『踊る星降るレネシクル』など、なにげにしぶとい連中が多かった。この中だと『踊る星降るレネシクル』が好きですね。「自分が面白いと思うもの」を遠慮容赦なくぶち込んだノリなので、「波長が合うかどうか」が肝になる作品ですが。キャラで言えば『ゆうれいなんか見えない!』の「よりより」こと鞍馬依、「スィ」という口癖が可愛い『ふぁみまっ!』のサブリナも好きです。全部好きってことじゃん。あ、それと『断罪のイクシード』もあったか。『落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)』原作者のデビュー作、落第騎士に比べるとやや伝奇色が強い。あとはファンの誰もが驚愕したろくごまるにの新作『桐咲キセキのキセキ』か。まさか本当に出るとは……という。紙書籍ではもう5年以上も新作を出していない6502ですが、現在は「小説家になろう」でちょこちょこと執筆中。

 2011年にはやがてアニメ化を果たすことになる作品が2つも登場。『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』『のうりん』です。俺修羅は当初『踊る星降るレネシクル』と並行して進める予定の雰囲気でしたが、発売してすぐにバカ売れ、サクサクとアニメ化も決まってしまったので結局レネシクルそっちのけになってしまった。こっちもこっちで好きだけど、レネシクルの方がもっと好きなだけに複雑な気分を味わう。アニメは観たり観なかったりであまり記憶に残ってない(OPの替え歌がヒドかったような気がする)が、冬海愛衣がすこぶる可愛かったことだけ覚えている。コミカライズ(『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる 愛』)も買いました。だって作画は睦茸だよ、買わないとかありえんくない? 『のうりん』は農林高校を舞台にしたイチかバチかのドタバタコメディ。執拗なフォント弄りとやり過ぎなパロディで物議を醸したが、しっかりタイトル通り「農林」に向かい合った内容で意外と読み応えがあります。アニメは尺の関係や各所への配慮もあってそうした部分が削られ気味になって、代わりにベッキーのヒドさ……というか壮絶さが際立ちましたね。担当した声優が『ぱにぽにだっしゅ!』でベッキーを演った人、という点で物凄い出落ち感はあった。どうでもいいが、私が「ベッキー」で真っ先に連想するのは『街の灯』の別宮みつ子。ほか、作品数は多いが一個一個のシリーズが長続きしないことでファンに悲しまれている森田季節の『お前のご奉仕はその程度か?』は珍しく7巻まで続いた。HJ文庫で最長記録を更新し続けている健速は『埋まったままDE宇宙戦争!』を開始させるも、「制作進行上における編集部側の大きなミス」によって2巻が出せなくなってしまったという。詳細は明らかになっていないが、いったいどんなミスだったのだろう。

 2012年はアニメ化作品が3つ。『異能バトルは日常系のなかで』『聖剣使いの禁呪詠唱』『ハンドレッド』。『異能バトルは日常系のなかで』は凄まじい異能を得ながらも、特にそれを使用することなく日々を過ごす、という異形のライトノベル。巻によっては異能要素がほとんど絡まないこともあり、「ああ、そういえばそんな設定もあったか」となるのだから恐ろしい。延々と会話が連鎖していくダラダラ感こそが最大の魅力であり、尺の関係で縮めざるをえなかったアニメ版はやや持ち味を殺している印象もあるが、原作の多すぎるパロネタをバッサリ刈り取った点に関しては評価したい。早見沙織が演じた櫛川鳩子の長台詞(「わかんないよ!」ってアレ)もインパクトあったが、姫木千冬の声(山下七海、最近だとハッカドール3号やってた)も癖になる感じで良かった。ワルブレこと『聖剣使いの禁呪詠唱』は「2つの前世を持つ主人公」という厨二マシマシの最強設定であり、「出だしで既にキツい」と感じる人がいても不思議ではない。「綴る!」や「思い……出した!」など、アニメの演出がかなりアレだったから完全にネタ作品扱いされていますが、原作は熱血テイスト溢れる痛快アクションで、ネタ要素抜きにアツい部分も結構あります。少年漫画的な勢いがイケる人には割とマジでオススメしたい。『ハンドレッド』はアニメ開始するの今年(2016年)の4月からですっけ。原作1巻が2012年11月ですから3年半近く掛かってますね。異能バトルやワルブレが2年半もしないでアニメ化されたせいもあり、相対的に遅く感じられてしまう。同じ時期に出た『新妹魔王の契約者』(作者は別だがイラストレーターは『ハンドレッド』と一緒)なんてもう2期が去年12月に終了しましたからね……「やっと始まるのか」という思いがある。たぶん1話目で主人公が決闘を申し込まれるだろうから「またか!」「こいつらいつも決闘してんな」と言われるだろうな。バトル物の宿命と言えばそれまでだが。

 2013年、躍進の種が植えられたのはこのあたりでしょうか。現時点でレーベルを代表する看板シリーズと化した『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』、お色気要素を強調しつつも白熱のバトル展開で魅せる『落第騎士の英雄譚』、現在アニメ放送中の『最弱無敗の神装機竜』と、またしてもアニメ化作品が3つ。『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』(長いので通常は「ダンまち」と略す)は女神ヘスティアの紐が異様にバズったせいで「巨乳と紐」のイメージしか残っていない(それどころか「紐……? 思い……出せない!」となってる)人もいるだろうが、基本としてはゲームチックな世界を背景にした成長ストーリーである。「ベルくんの成長が早過ぎ」という意見もあるが、遅ければそれだけ展開が引き延ばされることになるだろうし、結局は好みの問題に行き着くだろう。アニメの影響で原作の売上がほぼ倍増するなど凄まじい成果を得たが、今のところ2期が来る気配はない。OVAの制作は決まったらしいが、その後の展開があるかどうか。『落第騎士の英雄譚』はツッコミどころも多々あるにせよ、娯楽アクションの芯をブチ抜こうとする熱気に満ちていて嫌いになれない。むしろ大好きだ。アニメも予想外に良い出来栄えだったが、剣士殺し(ソードイーター)編だけは大いに不満。七星剣武祭編からが本番なので是非2期もやってほしいが、現状だと厳しそう。『最弱無敗の神装機竜』はアニメが原作のダイジェストになっている(しかも妙な部分を改変している)ので、ストーリー面はちょっと……だけど、春日歩のタッチをうまく落とし込んだキャラデザになっていて、ビジュアル面では大いに満足。ただ、装甲機竜は見た目的にどうしても燃えない。顔が見えなくなるリスクを負ってでも劔冑みたいな完全閉鎖式にしてほしかった、というのが個人的な欲望。

 2014年もあれこれ出たけど、既存シリーズの存在感が大きくて新シリーズは霞んでいたな。個人的には『異界神姫との再契約』が好きで、3巻を心待ちにしているのだけれど、刊行速度が遅くて焦れる。「異世界に召喚された日本の少年が、十二の神姫を率いて魔王を討伐する」という箇所で「はいはい、例によって例の如く異世界チーレム(チート+ハーレム)ね」と早合点する方もおられるだろうが、あらすじのそこは「過去の出来事」であって、開始時点で主人公はもう日本に帰還している。日本での用事を済ませた主人公がふたたび異世界へ赴くと、かつて彼に従っていた十二神姫が魔王なき世における新たな脅威になっていた――という、逆転したシチュエーション下での「再契約」が読みどころになっている。主人公がありきたりの正義漢ではない(主に個人の欲望で動いている)ため好悪は分かれるだろうけど、「俺戦」エンドだけはホント勘弁してほしいのでなるべく早く3巻が出てほしい。ほか、積んでる作品だと『ガンソード.EXE』(『ガン×ソード』とは無関係です、あしからず)が気になっている。VRMMOモノだが、なんと名前が「ユグドラシル」で『オーバーロード』と被っています。こっちは隕石被害で人類が滅亡しちゃったか何だかで、意識だけVRMMOの世界に移しているらしい。VRMMOモノは大抵落としどころが見つからなくなって迷走するのがオチだけど、これなら設定的にちゃんと完結するのでは……と淡い期待を寄せつつまだ読んでいません。

 2015年『中古でも恋がしたい!』『りゅうおうのおしごと!』『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』『出番ですよ! カグヤさま』、このへんが熱心にプッシュされているのでどれかアニメ化するかもしれませんね。読んだことがあるのは超余裕こと『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』だけ。飛行機事故に遭った天才高校生たちが異世界に漂着し、それぞれの特技を活かして「余裕で生き抜く」というセカンドライフ的なファンタジー。有能揃いなので話がサクサク進むし、アイデアもあれこれ盛り込まれていて読者を飽きさせない。他に読んでる作品で気に入ったのは『路地裏バトルプリンセス』『仮面魔女の解放戦記』。『路地裏バトルプリンセス』はパッと見が異能バトルものっぽいけど、超能力の類はナシの格闘モノ。平たく書けばライトノベル版『ホーリーランド』。ストリートファイトに生き甲斐を見出した少年少女の青春ストーリー。4巻で完結したらしいが、「もっと続いて欲しかった」と思う反面「3巻で打ち切りにならなくてよかった」と安堵する気持ちもあり、複雑。『仮面魔女の解放戦記』は「日本の少年が異世界に……」で「またかよ!」と叫ばれそうだが、実はこの少年、もともと日本でも魔術師として暗躍していたんです。「異世界に来て魔法を覚える」ではなく「もともと知っていた(でも細かい部分で魔法の性質が異なるかもしれない)」という珍しいパターン。面白くて続きを期待していたけど、2巻は1月予定だったのが2月に延びて、更に延期して今は3月へ。「これ、ラエティティアと同じ流れでは……」と冷や汗かきながら待っています。積んでる作品は『セイクリッド・クロニクル』『イレギュラーズ・リベリオン』『幻葬神話のドレッドノート』『サ法使いの師匠ちゃん』、このうちどれか一つでもアタリがあれば万々歳。

 2016年はまだ始まって2ヶ月だからあまり語ることもない。新シリーズは今のところ『贋(まやかし)のメサイア』『ゴブリンスレイヤー』『ラスボスちゃんとの終末的な恋愛事情』の3つ。この中では『ゴブリンスレイヤー』が売れてるみたいです。つい数日前に出たばかりなのに、もう増刷が決まったとか。タイトルからして「ゴブリン殺すマン」が出てくるのかな。『贋のメサイア』はかつてアリスソフトにおいて「とり」名義であれこれシナリオを書いていた人のGAデビュー作。体調不良で2009年に退社し、以降は「六花梨花」の筆名を用いているそう。19世紀のスイスを舞台にしたゴシックファンタジーということで、売れ線狙いではない模様だけど果たして続けられるのだろうか。『ラスボスちゃんとの終末的な恋愛事情』は伊藤ヒロ、この人もアダルトゲーム業界でシナリオライターやってますね。エグい作品も数多く手掛けているが、ライトノベルでは『魔王が家賃を払ってくれない』『女騎士さん、ジャスコ行こうよ』などのコメディ路線で人気を稼いでいる。ラスボスちゃんは「大魔王」「銀河皇帝」「妖怪王」、3人のヒロインが「結婚してくれないなら人類を滅ぼす」と主人公に迫るラブコメだそうだ。来月刊行予定の作品は『ウォーエルフ・オンライン』『伊達エルフ政宗』を買うつもり。ウォーエルフは設定がアレと似ているせいで物議を醸しているが、妹キャラの見た目が好みなのでとりあえず1巻はチャレンジしてみる。『伊達エルフ政宗』は独眼竜エルフという設定に脱帽したが、この世界、各種族の寿命はどうなってるんだろう……と気になった。種族ごとにバラバラだと世代交代のタイミングが相当ズレることになりそうだし。

・櫛木理宇の『世界が赫(あか)に染まる日に』読んだ。

 『ホーンテッド・キャンパス』などで知られる著者の新作。ノンシリーズ作品、つまり単発の長編小説です。分類としてはクライム・サスペンス、あるいは暗めの青春小説か。西尾維新や佐藤友哉、舞城王太郎などの「ファウスト系」を思わせる要素もあるが、全体的にドギツい描写や展開は少ない(ややキツい、程度)。文章も平易で読みやすく、内容が内容だけに不快感はあるにせよ、一気に最後まで突っ走れました。

 ストーリーは、要するに「復讐モノ」。主人公のいとこに当たる兄妹が壮絶ないじめに遭って、兄の方は意識不明の重体で入院中、妹の方は陵辱のショックから心を閉ざし、会うこともできないでいる。なのに犯人たちは未成年ということで大した罰も受けず、呆れるほどあっさりと社会に戻ってきた。もちろん、反省の色など微塵もない。怒りに駆られる主人公は復讐を決意し、夜の公園でクラスメイトのひとりが「自殺の予行演習」しているところを見かけ、「こいつなら秘密を漏らしたりしないだろう」と考え協力を依頼する。期限は5ヶ月先、クラスメイト――高橋文稀が自殺を決行する日まで。それまで同じクラスの生徒というだけでほとんど言葉を交わしたこともなかった少年ふたりの、奇妙な共犯関係がはじまった……。

 あらすじだけなら「ベタだな」と感じる人が大半でしょう。私もそれで一旦パスしてしまったが、電車移動で時間潰しの本が必要なときにたまたま目に入って、なんとなく手を伸ばしました。結果、あやうく降りる駅を乗り過ごしそうになりましたよ。メチャクチャ面白い、ジェットコースターみたいな展開だ、というわけではないんです。でも、じわりじわりと作品世界に呑み込まれていくような、不思議な吸引力がある。本書の特徴として挙げたいことの一つが「予行演習」という部分。よくある復讐モノだったら憎んでいる相手をいきなり最初からボコボコにするんでしょうけれど、「いきなりやったってうまくできないよ」と諭され、自分たちとは縁の薄い相手――襲っても関係を辿ることができず、捕まる危険性の少ない奴を練習台にする方向へ話が進んでいく。いじめ等の暴力事件を起こしておきながらお咎めなしでのうのうと娑婆を歩いている連中、そいつらをブチのめして経験値を稼ぎ、闇討ちのスキルアップを図ろうというわけです。多少の義憤も混じっていますが、あくまで「正義の鉄槌を下す」ことではなく「本番で失敗しないために」裁かれざる者たちに牙を突き立てる。まずは弱そうなところから攻めよう、と第一犠牲者に女子を選ぶなど、主人公たちの遣り口はかなりドライでダーティだ。「復讐は何も生み出さない」「復讐者もまた悪となる」は復讐モノのお約束と言ってもいい命題だが、本書の場合は「悪を凌駕する悪」として突き進むことで乗り越えようとする。この虚しさに満ちた倒錯感こそが最大の読みどころです。

 もう一つの特徴は、叙述的な部分。本書は三人称パートと一人称パートから成り、三人称パートは主人公と主人公の相棒、両者の視点で交互に描かれる。一人称パートは相棒が綴っている手記で、彼の生い立ちや内面について触れる一方、「闇討ち」についても言及する。しかし、話が進むにつれ、三人称パートと一人称パートで食い違う部分がチラホラと出てきます。無論、作者のミスなどではない。狙いがあっての演出ですが、はじめは混乱するかもしれません。「現実」を塗り替えたいと願って罪悪を積み重ねていく少年の愚行が、切なくも居たたまれない。

 ハッキリ言って、「同情できる」とか「泣ける」とか、そういう感動路線の物語では全然ないです。主人公たちに肩入れする読者よりも、彼らに嫌悪感を抱く読者の方が多いかもしれない。割り切れない気持ちを背負い込む人が大半でしょう。誰もが予想することながら、暴力の連鎖に身を置く主人公たちにも避けられぬ「末路」が待ち受けている。この「末路」にもスッキリしない、と感じるかもしれません。私個人はこの含みを残した「末路」が結構好きで、後日談めいた内容を妄想してしまう。本書が楽しめた人には『ゴルゴタ』もオススメ。

・拍手レス。

 サンデーは2000年代後半から迷走が続いてますよね。従来の読者層を切り捨てて、小・中学生を取り込もうとしたけれど、ジャンプにその読者層を奪われて、雑誌の売り上げは低迷し、未だに打開策が浮かばず、右往左往してるといった感じですね。ポストハヤテのごとくを狙ってなのか、去年に電波教師をアニメ化するも、ものの見事に大爆死しちゃいましたし。あと数年後にはサンデーは休刊しそうな気がします……。
 『金色のガッシュ!!』がヒットしたあたりから低年齢狙いが明確になった気が。サンデー、ただでさえ目玉が少ないのに『銀の匙』は休載が目立つし、注目していた『ヘブンズランナー アキラ』は打ち切られちゃうしで散々……『だがしかし』がある以上まだまだ休刊してほしくないが、コナンが終わったら本格的にヤバいかも。


2016-02-16.

・アニマックスで『勝負師(ギャンブラー)伝説 哲也』の一挙放送やってたから「丁度いい機会だ」と観てみた焼津です、こんばんは。

 なぜ「丁度いい機会」なのかと申しますと、いま原作の『哲也 ―雀聖と呼ばれた男―』がプラチナコミック(いわゆるコンビニコミック)として刊行中で、そちらを集めているところだったからです。この漫画は過去に何度かコンビニコミック化していますが、今回は1冊あたりが分厚くて5、600ページくらいある。分厚い本好きの私にはうってつけのエディションであり、哲也熱が高まっていたところにアニメが一挙放送されたんだから、まさしく渡りに舟といったところ。

 念のため解説。『哲也 ―雀聖と呼ばれた男―』は1997年から2004年にかけて“週刊少年マガジン”に連載された麻雀漫画です。闘牌描写が薄いため、「厳密には『麻雀を題材に採った青春漫画』だ」という意見もありますけど、一般的な解釈からすれば「麻雀漫画」と言い切っても差し支えはない。単行本にして全41巻、ただでさえ「週刊少年誌で連載された麻雀漫画」は珍しいのにこの長さだから、『哲也』によって麻雀のイメージを形成されたという人も少なくないはずです。私はリアルタイムではほとんど読んでおらず、たまたま立ち読みした号がまさに「印南がヒロポンを打つシーン」だったせいで長らく「『哲也』=ポン中漫画」というイメージを抱いておりました。主人公の「坊や哲」は「阿佐田哲也」の筆名で知られる色川武大がモデルになっている。阿佐田哲也名義の代表作『麻雀放浪記』は幾度もコミカラズされていて、『哲也』以降にも『凌ぎの哲』という傑作が生みだされています。

 アニメは昭和21年、戦後の復興期から始まる。ちなみに原作は昭和19年、つまり戦時中から物語をスタートさせており、序盤のイベントはアニメだと回想シーンで処理されています。1話目、哲也が寿司を食ってるあたりは原作だと7話目ですね。全20話、2クールにも満たない微妙な尺なので大幅なカットもやむなし、といった塩梅ではある。放送時期は2000年から2001年にかけて、これはアニメ版『アカギ』の5年前に当たります。ワイド画面が主流じゃない時期だったので、今観ると左右が切れる。当時の水準を鑑みれば作画はそこまで悪くないが、まだ2話目なのに1話のシーンを執拗にフラッシュバックさせて使い回す(1話のあらすじを冒頭でおさらいした後なのに)演出があるなど、「制作が苦しかったのかな……」と感じさせる箇所がチラホラあります。アニメーションを期待すると「うーん」かもしれない。しかし、哲也の声が置鮎で、房州さんは大塚周夫、ナレーションは青野武ですから……これだけで視聴する価値はある。実際、ほとんど野郎しか出てこない話なのに滅法引き込まれてグイグイと一気に観ちゃいました。奇を衒ったつくりではなく、むしろベタと言ってもいいくらいなのに、キャラが活き活きしていて楽しい。時代が戦後なのに麻雀のルールが現代風でちょっと混乱するけれど、分かりやすいと言えば分かりやすいし、細かいことを考える必要もなく話に集中できる。ただ、ストーリーの途中で終わってしまうことが悔やまれます。漫画原作は大抵最後までやり抜かないので、面白ければ面白いほどフラストレーションが溜まるわ。アカギは原作で未だに鷲巣麻雀が終わってないから例外としても、『ONE OUTS-ワンナウツ-』は完結編までやってほしかったな……。

サンデー連載『競女!!!!!!!!』TVアニメ化決定!(萌えオタニュース速報)

 原作者は以前「婦女子のおっぱいを揉みしだくことで邪霊退治する」という『揉み払い師』で話題になった人だ。2013年に連載を開始した『競女!!!!!!!!』(「!」は8個です)は競馬とか競輪のような感覚で開催されている公営ギャンブル「競女」を主眼に据えたスポ根コメディ。競女とは、水上のフロート(浮き台)に乗った水着姿の女性たちが胸と尻だけで押し合う(手や足による攻撃はNG)、強いて言えば尻相撲の変形みたいな競技です。こう書くと「お色気モノか」と思われそうですが、さにあらず。意外に直球エロは少なく、「シリアスなギャグ」の連打で笑わせるタイプの漫画となっています。「尻で相手の顎を擦って脳震盪を起こさせたんだ!」くらいは序の口(どんだけジャンプすればケツが顎に届くんだよ、とかツッコんではならない)であり、「乳首一本背負い」など「よくもまあこんなネタ思いつくな……」と感心する頭おかしい必殺技の数々で読み手を魅了します。気取った仕草でJOKERのカードをピッと出しながら挑発的なセリフを吐くキャラなんかもしますが、そいつにしたってカード挟んでるの指じゃなくてケツですからね……つい白目を剥いてしまうほどのバカバカしさが全編に横溢しているものの、決してふざけているわけではなくて、ひたすら真剣そのものの態度で臨んでいるのだから侮れない。作者曰く「意識がないまま失禁して倒れていたぐらいにボロボロ」の状態で描かれたという『競女!!!!!!!!』、こうしてアニメ化される運びとなり、やっと報われたんだな……と感慨に耽ってしまう。ぶっちゃけ「いつ打ち切られるんだろう」とハラハラしながら単行本買ってましたもんね。よっぽど売上が伸びないのか近所の書店ではほとんど配本がなくて、最近はネットで買ってばかりだっただけにアニメ化の報せは「マジかよ」の一言に尽きます。うーむ、サンデーもいよいよ後がなくなってきたか。

AXL新作「恋する乙女と守護の楯 〜薔薇の聖母〜」がマスターアップ!今月末の2月26日発売!(つでぱふ!)

 よっしゃ! 体験版公開が割とギリギリのタイミングだったから心配してたけど、無事マスターアップしたか。早速予約しよう。他方、『乙女理論とその後の周辺』『面影レイルバック』は大方の予想通り、無事にならず延期した模様。この結果は「だろうな」の一言に尽きる。なにせNavelは延期の猛者であり、ハイクオソフトは延期の覇者ですからね。面影の方は今年中に出るかどうかも怪しいと思っています。だって現時点でCVすら公表されておりませんもの。まさかのボイスレス?

 あとminoriの『罪ノ光ランデヴー』、マスターアップ報告がないから一部で延期説も囁かれているが、minoriはもともとマスターアップ報告をしない主義のメーカーだったような気がする。データはもう送ったらしいし、業界お馴染みのクリシェ、「工場が爆発しない限り」延期はないでしょう。ちなみにこの常套句、発祥はWitchの『Alive Renewal』お詫びの文章(「工場が爆発しない限りこれ以上の延期はありません」)らしい。2001年だからもう15年近く前か。2008年の『CHAOS;HEAD』マスターアップ報告でも「工場が爆発したり荷を積んだトラックが横転したりしなければ」という文面が確認できます。「トラックが横転」はたぶんlightの『Dear My Friend Complete version』の件を意識したものでしょうね。2005年12月、輸送トラックが高速道路で交通事故を起こし、初回版の一部が破損しちゃったんですよ。もうあれから10年経ったのか……時の流れは速い。

・拍手レス。

 このすばは割と尻上がりな感じで面白くなっていきますね…後半になればラブコメ分も入っていい感じなんですけどそこまでアニメ行かないのが悲しいです
 今のペースだと2巻の途中あたりまでで終了でしょうかね。仮に2期目が来るとしても、2クールくらいないと大して進まない気がする。


2016-02-07.

・冬アニメ、気になる奴(20本くらい)をひと通りザーッと視聴しましたけど、今のところもっとも続きを楽しみにしているのは『この素晴らしい世界に祝福を!』な焼津です、こんばんは。

 始まるまで全然期待していなかったものの、いざ蓋を開けてみれば『昭和元禄落語心中』と並んで今季一、二を争う面白さだった。一応原作も持ってるけど、なかなか冒険が始まらないことに焦れて読み止しのまま放置していた「このすば」。アニメになると、冒険が始まる前でもこんなに盛り上がるんだな、と感心しました。原作もナンセンスなコメディが基調となっているけれど、割合淡々とした雰囲気で「軽いギャグ」止まり、アニメほど終始徹底して激しいギャグ感はない。下手すれば雰囲気ぶっ壊しになりかねないところまで攻めているのが素晴らしいです。アクア演じる雨宮天はこれまで「声質いいけど、演技がもうちょっと」という印象もあったが、ここに来て見事ハマリ役へ辿り着いた。あのわざとらしい「プークスクス」と言ったら。2話目でジャイアント・トード相手にゴッドブローを放つシーン、たまらず陥落しました。「自分で解説するのかよ!」と驚きつつも抱腹絶倒。若干低予算なムードも漂う作品ながら、「楽しさ」「面白さ」「賑やかさ」に特化したノリで娯楽としては申し分ない。繰り返し観ることになるでしょう。アニメに合わせて原作もゆっくり消化中。

 今季アニメは特撮っぽいノリの『アクティヴレイド』も楽しんでいる。「ウィルウェア」と呼ばれる強化装甲をまとって犯罪者に立ち向かう警察官たちの姿を描く、言うなれば『機龍警察』から殺伐要素を抜いたアニメ。谷口悟朗が総監督を務めている割にあまり注目されていない気配も感じるが、一話完結方式で気楽に楽しめます。ほか、『最弱無敗の神装機竜』はイマイチ話が盛り上がらないけれど、春日歩(大阪ではない)の絵が好きな私にとってはただ観ているだけで嬉しい作品である。『シュヴァルツェス マーケン』は、ダイジェスト感が半端なくてちょっと残念な出来。戦術機の発進シークエンスに関しては勃起モンのカッコ良さだったけど、それ以外での見所が乏しい。『蒼の彼方のフォーリズム』はユルめの学園スポ根で構えず観られてベネ。昔ゲーム版のPVで見た目つきの悪い黒セーラーちゃんは出てくるのかな? 『灰と幻想のグリムガル』はターニングポイントになる4話目、挿入歌の流れ出すタイミングが「そこじゃないだろ……」っていう。流すとしたら灰が風に乗って空に舞う瞬間でしょう。そこから特殊EDへ雪崩れ込む形にしてほしかった。『ナースウィッチ小麦ちゃんR』は前作のイメージがあるだけに1話目の違和感がすごかったものの、2話、3話と進むにつれて慣れてきた。小麦の声が癖になる。『ラクエンロジック』は1話目が視聴者置いてけ堀の内容でキツかった……2話目から徐々に面白くなってくるけど。個人的には『ファンタジスタドール』と同じポジションのアニメと見做している。しかしこれ、タイトルの由来は「ラック(幸運)・アンド・ロジック(論理)」なのか。

『ばらかもん』半田先生の高校生時代を描くスピンオフ「はんだくん」TVアニメ化決定!(萌えオタニュース速報)

 「先生」こと半田清舟が島に行く前、だいたい6、7年くらい前の時期を描くスピンオフです。半田本人は「周りから嫌われている」と思い込んでるけど、実はみんな半田くんのことが大好きで……というすれ違いぶりが笑いどころのコメディながら、本編とはだいぶノリが違うので『ばらかもん』の雰囲気を期待して手に取ると戸惑うこと間違いなし。正直、『ばらかもん』に比べて『はんだくん』はあまり興味が持てない。スピンオフにありがちな「全然違う作風の人が描いている」というパターンでなく、原作者本人が手掛けている例なのに、ここまで風味が変わるのは珍しい。『凍牌』のスピンオフ『ライオン』も本編と比較してややギャグ色が強い内容になっているが、それでも持ち味はあまり変わってないし。ともあれ、くだくだと言いつつもアニメは観る気でいるし、これがヒットすれば『ばらかもん』本編の2期も来るかな、と淡い期待を寄せている。

虚淵玄新プロジェクトは武侠ファンタジー人形劇!『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』が2016年夏放送予定(萌えオタニュース速報)

 人形劇……だと……? さしもの私もこれは予想外だった。武侠ファンタジーってことは『鬼哭街』(リンク先音声あり、注意)からサイバーパンク要素を抜いた感じになるのかな。金庸や古龍が好きな虚淵のことだからストーリーは大きく外さないだろう。そしてもしノベライズの企画があるなら、どうか古橋秀之の起用を……『IX(ノウェム)』はもう諦めたけど、せめて“龍盤七朝”だけでもリブートさせてほしい。

SF作家の野尻抱介氏「今のラノベと違いブギーポップが流行ってた頃のラノベのパッケージはカッコ良かった クラスの女の子に見られても恥ずかしくない本を選べ」(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 「ブギーポップが流行ってた頃」って……シリーズがまだ続いている(最新刊『ブギーポップ・アンチテーゼ オルタナティヴ・エゴの乱逆』は来月発売予定)ことを考えると結構失礼な発言ですね。恐らく99年前後の時期を指しているのでしょうが、その頃にも『火魅子伝』とか肌色率の高い表紙イラストがあったし、お色気面について考えると割合はともかく、度合いとしてはそんなに大きく変わってない気もする。

・拍手レス。

 シュピーゲルはいつ続刊が出るのやら…
 シュピーゲルも単行本から数えると9年、雑誌掲載の短編から数えると11年で随分と経ちましたね。『ピルグリム・イェーガー』の第2部を待ち続けた日々もそろそろ10周年を迎える。せめてドイツ農民戦争篇だけでも出してくれまいか。あと『神獣狩り』と『創神太平記』も。


2016-02-01.

・う、うわああああああっ! 『マルドゥック・アノニマス1』が3月発売予定だああああっ! 驚きのあまり度を失った焼津です、こんばんうわああああっ!

 来る来る言ってるけど、どうせ今年も来ないだろ……とタカをくくって全く身構えていなかった。『マルドゥック・アノニマス』は“マルドゥック”シリーズの完結編として何年も前から予告されていたタイトルであり、なかなか始動しなかったが去年から“SFマガジン”誌上にて連載開始された。連載までは追っていなかったから状況掴めていなかったけど、去年は突然の逮捕劇もあったし、てっきり進行が遅れまくっているものと思っていました。

 一応軽く解説。“マルドゥック”シリーズは近未来を舞台にしたサイバーパンクSFであり、2003年の『マルドゥック・スクランブル』よりスタートした。“このミステリーがすごい!”の16位にランクインしたり、第24回日本SF大賞を受賞したりと大いに評価された冲方丁の出世作ですが、刊行に至るまで二転三転した企画でもあった。もともとは短編の依頼を受けて書き出した小説であり、思った以上に構想が膨らんだせいで気づいた頃には大長編になっていたという。当初は『事件屋稼業』なるタイトル(レイモンド・チャンドラーの短編「事件屋稼業」を意識したものか、ちなみに現在は原題そのまんまの「トラブル・イズ・マイ・ビジネス」というタイトルでも出ている)で他の出版社から出す予定だったが、話がまとまらなくてお蔵入りになりかけ、あちこちの会社と掛け合ったものの長大な原稿(総計して1800枚もある)を拾ってくれるところがなかなか見つからず。最終的に早川書房へ行き着き「一から書き直す」「タイトルも変える」という案でやっとゴーサインが出ました。プロトタイプに当たる『事件屋稼業』は、番外編を寄せ集めた『マルドゥック・フラグメンツ』(2011年刊)でほんの一部のみ読むことが可能。フラグメンツを除くとアノニマスは2006年の『マルドゥック・ヴェロシティ』以来の純粋な新作だから、もう10年近くも経ったことになる。書いていて卒倒しそうになった。

 スクランブルもヴェロシティも文庫本で全3冊だったから、アノニマスもたぶん3冊で終わるでしょう。少なくとも作者はそういう腹積もりでいるみたいです。さすがに10年もすると記憶があやふやになっている部分があるし、そろそろ読み直す準備に入らないとな……まだ“マルドゥック”シリーズを読んだことがない、興味はあるけどいろんなバージョンがゴチャゴチャとあってどれから手を付ければいいのか迷う、というご新規さんには『マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕』か、あるいはコミカライズの『マルドゥック・スクランブル(1)』を推す。「完全版」は初期版に対して全面改稿を施したバージョン、現在でも新品を入手しやすい。コミカライズ版は後に『聲の形』でブレイクを果たす大今良時が手掛けており、「入口」としては申し分ない仕上がり。他に『マルドゥック・スクランブル〈改訂新版〉』というハードカバーも存在しますが、基本的に「完全版」と同じ内容。とはいえ、一冊にまとめるため多少カットされている部分もある。

 スクランブルの次に発売された『マルドゥック・ヴェロシティ』は時系列上だとスクランブルよりも前、いわゆる「過去編」や「前日譚」と呼ばれるものなので、「どうしても時系列通りに読みたい」という方はここから読み出すのも一つの手。ただし、ヴェロシティは前作のクライマックスシーンから幕を上げる(そこから回想という形で過去に遡っていく)スタイルを採用しているので、スクランブル読んでないと分かり辛いところはあります。独特のクランチ文体もとっつきにくいでしょうし。やはりスクランブル経由で読むことをオススメします。2006年の旧装版と2012年の新装版、2種類あって割と改稿されている部分も多いそうですが、読み比べしてみたいマニア以外は素直に新装版のみ買えばいいと思う。番外編を集めた『マルドゥック・フラグメンツ』は本筋を追いたいだけならパスしても可。逆に、「本筋は長くてしんどい」って方には短めの番外編がちょうどいいかもしれません。そしてアノニマス、これはファンがずっと待ち望んでいた『マルドゥック・スクランブル』の後日談/未来編です。あれから主人公たちはどうなったのか。遂に拝める日が来ます。ワクワクするしかない。

カルロ・ゼン『幼女戦記』TVアニメ化企画進行中!(萌えオタニュース速報)

 これ、店頭で立ち読みしたときは「う〜ん……」な印象で棚に戻してしまったけど、『約束の国』が面白かったこともあって結局既刊全部揃えてしまったんですよね。そして当然のように積んだまま。元が投稿サイト「Arcadia」のネット小説ということもあり、『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』『オーバーロード』が飛ばしたヒットも企画の進行を後押ししたのかもしれません。しかし、戦記系はアニメにおいて鬼門とされるジャンルだ(単純に大軍を画面中で動かすことが困難なうえ、細かい戦術や戦略についてはなかなか説明し切れない)から「蛮勇」「無謀」といった声も各所から漏れ聞こえてくる。読んでないから詳しいことはわからないが、「大丈夫なのか?」という不安は微かに湧く。心配しても仕方ないし、とりあえず期待しておこう。

 しかし、意外だな。エンターブレインの本だと、次にアニメ化しそうなのは『覇剣の皇姫アルティーナ』『この世界がゲームだと俺だけが知っている』あたりだと思っていたので。まさか『幼女戦記』とは……ちなみにコミカライズ企画も立ち上がったようで、作画は『コードギアス 双貌のオズ』の東條チカが手掛けるとのこと。楽しみだ。

SF作家の野尻抱介氏が「このすば」を『悪書』と批判をしたことで叩かれている模様(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 そんなことより『天穹の羅針盤』と『素数の呼び声』と『シエナの花園』はまだですか野尻さん! 『天穹の羅針盤』は書いている最中にストーリーを根本から揺るがすような惑星学の新発見があって執筆ストップしちゃった、という話もあったけど、日進月歩な世界を題材にする場合そういうリスクが常に付きまといますね。たとえばIT業界を扱った『なれる!SE』も、人気はあるけどもしアニメ化ということになれば「作中の時代設定はどうするんだ?」という問題が立ち塞がりますし。たぶん、今やってるアニメやドラマも、何年かしたら「あっ、スマホ使ってる!」「うーん、時代を感じるなぁ」とか言われちゃうんだろうな。

なぜ異世界転生する死因が「トラックとの衝突事故」ばかりなのか?→若者の死因で自然なのは交通事故だからじゃないか?(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 「絵的にインパクトと説得力がある」という理由から漫画やドラマで多用された流れがノベル方面に移ってきただけだと思う。トラック轢死は死亡するシーンを直接描かなくても、トラックに轢かれる直前の段階まで映せば「あ、死んだな」と見る側が自然に納得できます。ナイフに刺されて、みたいな死に方だと「その瞬間」を描かないと説得力が弱くなり、描いてしまえばそれはそれで生々しくなってしまう。異世界転生というと私が真っ先に連想するのは『ハイランディア』ですが、あれもダンプカーに轢かれて気づくと異世界に……というパターンでした。当時(1995年)でさえ別段目新しくない導入だと感じた記憶がありますから、本気で元を辿ろうとすると30年、40年くらいのスパンで探る必要があるでしょう。

 「現代日本の少年少女が異世界に行く」ストーリーの小説は最近頓に増加していますが、大まかに類型を挙げていくと「1.生きたまま(あるいは死ぬ直前に)異世界へ飛ばされる」「2.何らかの理由で死亡後、異世界で目覚めるが、容姿と年齢は生前のまま」「3.何らかの理由で死亡後、異世界で0歳から生まれ直す」、この3パターンが目立つ。他にも「異世界との行き来が日常と化した時代」が舞台だったり、「自分がゲームやアニメなどフィクションのキャラクターになっている」メタ的なものだったり、「異世界で目覚めるが、記憶喪失になっていて詳しい経緯がよくわからない」みたいなシチュエーションだったり、「異世界の人間と一時的に精神が入れ替わるようになってしまう」設定などの変種もあります(最後のは『パートタイムプリンセス』)けど、だいたいは「(生きたまま)召喚された」か「(一旦死んでから)転生した」かだ。「転生」でややこしいのは、「容姿と年齢は生前のまま」のパターン2と「0歳から生まれ直す」パターン3が混在していることですね。今アニメをやってる「このすば」こと『この素晴らしい世界に祝福を!』はパターン2で、アニメ化が発表された『幼女戦記』なんかがパターン3に該当しますけど、両パターンは同じ「転生」であってもほとんど別ジャンルなのではないか……という気がします。「人生をやり直す」点では共通しているものの、「あくまで自分として」やり直すパターン2と「他の誰かとして」やり直すパターン3には「自我の差」が感じられる。なんというか、パターン3って本質的には『おもいでエマノン』みたいな「名前なんて記号」の延長線上にある物語だと思います。他我の規定が緩く、「錯覚」とも「霊感」とも受け取れる記憶の連続性だけがアイデンティティを支える柱になっており、「私以外も私なの」と言わんばかりな風情が漂う。これを突き詰めていったのが『蒼色輪廻』なので、「異世界転生」についてあれこれ考えてみたい人は是非とも『蒼色輪廻』をやろう。と好きなゲームのプレーを強要したいだけの記事だった。

・拍手レス。

 >“忘却探偵”シリーズ(『掟上今日子の〜』っていうアレ)も一応は講談社BOX作品という扱い  今はじめて知って驚愕しました。そうだったのか……。BOX文庫の何が嫌って出し入れするときに本と箱の縁が擦れそうなとこなんですよね。丁寧に入れないと削れるから読み返すのが億劫になるというか。そういえばBOX文庫のひぐらしのなく頃には星海社から文庫化されてたけど他の作品はやってくれないのかな?
 泉和良の『エレGY』とか『spica』も文庫化してますが、『ヘドロ宇宙モデル』はいつまで経っても文庫化されませんね……基本的に一度出したらそれっきりのレーベルなんだろうと思います。


2016-01-26.

AXL新作「恋する乙女と守護の楯 〜薔薇の聖母〜」が発売延期!1月29日から2月26日発売予定へ(つでぱふ!)

 マスターアップ報告がなかなか来ないから警戒していたけど、やっぱり延期かー。まだ予約していなかったから延期自体に特段問題はない。しかし、飛んだ先が2月26日とは……激戦区じゃないですか。Navelの『乙女理論とその後の周辺』を筆頭に、私の注目しているソフトが6本もある。ここに恋楯が加わるとなると、絞り込むのが更に難しくなります。どう頑張って減らしても5本くらいになっちゃうな。

森川智喜の『ワスレロモノ 名探偵三途川理 vs 思い出泥棒』、3月に講談社タイガで発売予定

 解説しましょう。森川智喜(モリカワ・トモキ)とは京都大学推理小説研究会出身の小説家で、2010年に『キャットフード 名探偵三途川理と注文の多い館の殺人』で講談社BOXからデビューしました。このデビュー作は現在文庫版も出ておりますが、副タイトルが削られて単に『キャットフード』となっています。その後、あれこれと新刊を発表するものの、“名探偵三途川理”シリーズに該当する単行本は『キャットフード』以外だと『スノーホワイト』および『踊る人形』だけ。『踊る人形』が2013年刊行なので2年以上も間が空いていました。『ワスレロモノ』はシリーズ第4弾であり、久しぶりの新作ということになる。それだけならさほど騒ぎ立てる必要もないんですけれど、ポイントは「講談社タイガで」ってところですね。これまでのシリーズ3冊はすべて講談社BOXから発売され、3年くらい経ってから講談社文庫へ移る――というパターンを踏襲してきました(『踊る人形』の文庫版は来月発売予定)。なのに4冊目はパターンを崩し、講談社BOXでも講談社文庫でもない新レーベル「講談社タイガ」にいきなりシフトしているのです。実は少し前、講談社BOXの刊行予定表に『ワスレロモノ』の名前があった(確か去年の11月刊行予定だったかな?)のですが、何の告知もなくタイトルが消えまして、やっと復活したと思ったら講談社タイガに移籍していたもんだからビックリしましたよ。

 「高い・ダサい・安っぽい」の三拍子が揃って悪評紛々だった講談社BOXはもともと刊行点数が多くないレーベルであったが、近年は函入れをやめた「BOXでもなんでもない」新刊さえバンバン出すようになって、久しくアイデンティティを見失っていました。西尾維新の“忘却探偵”シリーズ(『掟上今日子の〜』っていうアレ)も一応は講談社BOX作品という扱いなんですが、気づいていない人多そう。というか私もついさっき知ったばかりだ。“物語”シリーズが続いているおかげで辛うじて「BOX」のイメージと体裁は保てていますが、レーベルとしてはほぼ停止したような状態です。講談社ラノベ文庫はカラーが異なるから別としても、星海社FICTIONSや講談社タイガといった立ち位置の似ているレーベルが同系列に現れたため、「高い・ダサい・安っぽい」の講談社BOXは加速度的にいらん子さを増していきました。“名探偵三途川理”シリーズがタイガに移籍となると、もう純粋な新作はBOXの方じゃ出てこないでしょうね。ぶっちゃけ講談社BOXは“物語”シリーズや“刀語”シリーズを除くと『K』のノベライズ群くらいしかめぼしい作品もなかったですし……奈須の『DDD』も刊行が止まらなきゃレーベルの柱になっていたかもしれませんが。どうも“物語”シリーズはまだまだ続く気配だし完全な死亡確認がなされるのはだいぶ先になるでしょうけれど、『ワスレロモノ』の唐突な移籍で「終わったも同然」という印象は益々強化された次第です。ああ講談社BOX……懐かしさは多少感じるけど愛着とかいっそ不思議なくらい全然湧かないな。いちいち箱から出し入れしないといけない煩わしさに対する恨みの方は汲めども尽きぬ。

 しかし、なぜ講談社文庫ではなく講談社タイガの方に? 3年経ったらまた講談社文庫版を出すのか? という疑問が残るけど、何であれ新作が無事に出るんだったらいいや。

・拍手レス。

 ニトロはもうエロゲ作らないのかな?と思ってたら凍京ネクロ作ってたり、虚淵はまた新しいプロジェクト動かしてたりで……鋼屋ドグラQ作れよオラァ!って気持ちでモヤモヤしますね……
 ドグラQと陰と影と太陽の子と末期、少女病と霊長流離オクルトゥムが発売される日が来るまでは足を洗えそうもない。

 ノベライズから外れるかもしれませんが、こちらで紹介されていた塵骸魔京のファンタスティカ・ナインはとても面白かったです。あれを読んで興味をもって、ゲームもやったという逆パターンでした。
 10年経ってやっと公式サイドも「夜刀史朗=海法紀光」を認めたから、あれもライター本人によるノベライズですね。ニトロ関係だと古橋デモベも良かった。機神胎動のネタが機神飛翔に活かされて熱くなったり。

 CARNIVALノベライズは、ボニー&クライド物で最後は少女は正常世界に帰り 物語をキッチリ終わらせた所がよかったです主人公と同化するゲームじゃ出来ないと思いましたね ゲームノベルだと神山修でNoelがお勧めですゲームは僕にはきつかったですが
 『Noel』っていうと竹宮ゆゆこの? と検索してみたけど違うようですね。発売当時話題になっていた気もするけど、結局やらず終いでした。


2016-01-17.

アダルトゲーム好きにお勧めしたいノベライズとエロゲライターのラノベ(根室記念館)

 ゲームのノベライズって大抵は本編を手掛けたシナリオライター以外の人が書くものだし、ほとんどが本編の内容をザッとなぞるだけのものですから、期待して読むと「なんか違う」あるいは「ただのダイジェストじゃん」ってなりがちです。たまにシナリオライター本人が書くケースもありますが、これも番外編めいた内容だったり、本編を補完する内容であってもボイスやBGMがないぶん迫力や臨場感に欠ける……といった事態にちょくちょく陥ります。ゲームのファンからは評価されないことが多く、「いったいゲームノベライズってどういう層から需要があるんだろう?」と不思議になることもしばしば。私も以前はちょこちょこ読んでいましたが、確かに話題にする機会が少なく、ちょっと語ってみたい気持ちはありました。では「アダルトゲームのノベライズ」について軽く触れていきましょう。

 ノベライズでもっともオススメなのは、リンク先でも紹介されていますが瀬戸口廉也の『CARNIVAL』。原作ゲームと同じタイトルだけど「本編の内容をザッとなぞる」ものではなく、後日談となっています。そのため原作やってないとわかりづらい部分はある。ノベライズ版の主人公は原作ヒロイン「九条理紗」の弟「洋一」で、原作にもちょこっとだけ出番があった。渦中になく、かつて「部外者」に近かった者の視点から「事件のその後」を眺め渡していく。「理紗のためなら神様にだってなってやろう」と嘯いていた原作主人公の決意が嘘ではなかったことをサラリと、しかし鬼気迫る筆致で描く。エロが売りのレーベルから出ているのに本番シーンがないという異例の一冊ながら、現在はプレミア価格が付いていて入手困難。できれば原作ゲームをプレー後、記憶が鮮明なうちに読んでいただきたいが……ちなみに私が買ったのは『SWAN SONG』が出る直前あたり。って、もう10年以上前なのか。発売してすぐ品切になったわけではなく、半年くらいは余裕で新品が買えたんですよね。顕著にプレミア化したのは『SWAN SONG』が高評価を得て以降、もっと言うと奈須きのこが「竹箒日記」で褒めちぎった日(2005年11月27日)以降。『CARNIVAL』の原作はアニメーションをふんだんに使った躍動感溢れるOPムービーで注目を集めましたけど、明るいイメージとは裏腹に「殺人容疑で逮捕された主人公がパトカーから逃げ出す」という話だったため「オープニング詐欺だ!」とむしろ叩かれ気味でした。おかげで『SWAN SONG』も発売前はスルーされてほとんど話題にならなかった記憶がある。

 2冊目に紹介するのは『秋桜の空に 奈々坂の門』。かつて「栗っ子」と呼ばれる熱狂的なファンをほんのり生み出したブランド「Marron」のデビュー作『秋桜(コスモス)の空に』のノベライズです。こっちも本編の後日談形式。奈々坂学園を卒業した主人公「新沢靖臣」が教育実習生として再び学園に帰ってくる――って話。「姉同伴の教育実習」というあらすじに軽い狂気を感じたアナタのセンスは正しい。「妹萌え」が幅を利かせていた時代に「ダダ甘の姉」を投入し、後のあねしょ(『姉、ちゃんとしようよっ!』)が台頭する布石を打ったと言えなくもなくもない『秋桜の空に』。アプリケーションがアレすぎるせいでXP以降のOSではまともに動作せず、現在プレーするのはやや困難だけど、ドラマCD(『空色の涼香』など)を聞いていただければ異常な学園生活の異様な楽しさを片鱗ながらも味わえるかと。原作は声ナシなので、「ゲームはやってないけどドラマCDシリーズのファン」という方も結構いたり。家庭用ゲーム機への移植すらされたことがないマイナーブランドのくせしてドラマCDの声優陣は豪華で、「緑川光、桑島法子、田村ゆかり、池澤春菜、川上とも子、皆口裕子、山本麻里安、南央美、釘宮理恵、子安武人、井上和彦、井上喜久子、ひと美、こおろぎさとみ、横手久美子、広瀬正志」といった布陣に当時は目を剥いたもんだな。懐かしい。かなり好評だったため、ドラマCDは7枚も(非売品を含めると8枚も)出ました。内容は本編準拠でマルチシナリオ形式を採用している(=話が一本に繋がっているわけじゃない)から、無理に全部聞こうとしなくても構いません。気になったヒロインのぶんだけチョイスすれば宜しいです。『空色の涼香』とか2、3本聞けば、そのまま後日談である『秋桜の空に 奈々坂の門』に入っていける。その結果ハマって「原作ゲームもやりたい!」となってしまった方は、有志のつくった非公式アプリケーション「C.H.A.O.S.」を当てれば現行OSでもプレーできるはずです、たぶん。徹底的に極めたい方は原作、ノベライズ、ドラマCDの他にアンソロジーコミック、シナリオライター本人の同人誌『秋桜の空に 外伝 忠介の恋』、ぱるくすの同人誌『PK』シリーズのゲスト原稿、『ひまわりのチャペルできみと』の初回特典本『ひまわりのチャペルできみとvs秋桜の空に』、体験版という名のプレストーリー「秋桜の空に 〜プレリュード〜」などもチェックしよう。発売からかれこれ15年近く、もう「レトロゲー」の枠に押し込まれそうなソフトであるが、根強い人気を誇るがゆえにリメイクの噂もたびたび起こったものでした……しかし去年、遂にMarronのOHPが消滅。リメイクの望みは泡と消えた。

 ちなみに、『秋桜の空に』と同時期に出たソフトでもっとも有名なのが『君が望む永遠』です(秋桜が2001年7月27日、君望が8月3日)。「ツンデレ」のイメージを決定づけた二大キャラとしてよく名前の挙がる「佐久間晴姫」と「大空寺あゆ」はそれぞれ秋桜と君望のヒロインであり、この頃はエロゲーの話題性がまだ相当に強かった時期でした。そんな時期でさえノベライズ作品はあまり話題に上がらなかったのだから、本当に「語られざるジャンル」だと言えます。昔は新書サイズのノベライズ作品が多かった(『CARNIVAL』と『秋桜の空に 奈々坂の門』も新書サイズです)けれど、どうも今は文庫サイズが主流になりつつある模様。文庫で思い出したが、『Wind』も良質ノベライズでした。ここのところ「すかすか」こと『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』話題になっている枯野瑛の文庫デビュー作。原作をあまり評価しない人でさえ褒めてしまうほど心地良い文章です。

「最弱無敗」作者の過去作『月見月理解の探偵殺人』を知っているファンがあまりの作風の変わりっぷりに驚いている模様(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 この手のショックは『精霊使いの剣舞』で既に通過済みである。というか『最弱無敗の神装機竜』の作者はもともとバトル系ファンタジーが書きたかった人で、GA文庫からデビューする前に何度か電撃小説大賞へファンタジー系の作品を応募したけど一次選考も通らなかった……という経緯があるから、別にイヤイヤ書かされているわけではないはず。もうちょっとお色気要素を控えたものが書きたかった、という可能性はありますが。それに、どういう内容であれ、一定以上の冊数を重ねたら作者にも愛着とか遣り甲斐は湧いてくるだろうし、「打ち切りラインさえ乗り越えればすべてOK」という側面はあると思います。『精霊使いの剣舞』も巻が進むごとに面白くなっていきましたし。アニメはそこまで放送できなかったけど……。

『坂本ですが?』TVアニメ化決定!(萌えオタニュース速報)

 原作が終了して間もなくアニメをやった例というと『ヨルムンガンド』などがあるけど、ジャンル的には『みりたり!』『不思議なソメラちゃん』の方が近いかな。ヨルムンはストーリー漫画だったこともあって原作側の展開は特になかったが、みりたりやソメラちゃんはアニメ開始に合わせて新章スタートという選択を採りました。『坂本ですが?』は時間経過こそ組み込まれているが、一応ギャグ漫画なのでアニメが放送される時期に限定復活する可能性はあります。タイトルは変わるかもしれない。『坂本ですか?』とか。

まんがタイムきららMAX連載『ステラのまほう』TVアニメ化決定!(萌えオタニュース速報)

 あー、やっぱり。そりゃあれだけ散々CMでアピールされたら「アニメ化するのかなー」って思いますもん。女子高生が同人ゲーム制作に励む話ということで、『少女たちは荒野を目指す』『NEW GAME!』に近接した感じになるのかな。「ゲーム作りアニメ」の波が来ているのかもしれない。この手の漫画で隠れたオススメなのが『まんぷく遊々記』。片倉真二のコミックエッセイで、大半はブログに掲載されたものだが、ゲーム会社時代の思い出を綴った描き下ろしの章(まんぷくゲーム)が面白い。ただし分量的には30ページくらいで、全体の1/5程度。絵柄が違うせいでピンと来ない方もおられるでしょうけど、片倉真二というのは『グリーングリーン』『キラ☆キラ』の原画を手掛けた人です。『忘却の旋律』のコミカライズ等もやってた。最近は猫エッセイ漫画(『ペン太のこと』)の描き手として有名になりつつある。

 「ゲーム作り」をテーマにした漫画だと『エロゲの太陽』『EGメーカー』も面白かったが、このふたつは割とあっさり終わってしまったな。もうちょっと続いて欲しかった。さておき『ステラのまほう』、一応単行本は持ってるが、アニメが始まる前に目を通しておくべきか、アニメが始まってから徐に崩すべきか。迷うところだ。

虚淵玄新プロジェクト始動!公式Twitterアカウントスタート!(萌えオタニュース速報)

 来たか。うーさーのゲスト回やコンレボ2期の参戦予定を除けば『アルドノア・ゼロ』以来のTVシリーズである。しかも今回はまどかマギカ以来の全話単独脚本という噂です。虚淵は体が弱いせいもあってか遅筆で、脚本を書き上げるのに時間が掛かるからこれまでは「監修」的な立場に収まることが多かった。まどかマギカも全話書き上げるのに1年近く掛かったそうで、「量産できない」という意味ではあまり脚本家向きではありません。それでも仕事が続いているのだから大したものだ。さて、この新プロジェクト、ツイッターのアカウント名が「TBF_PR」であること以外は詳細不明です。PRは恐らく「パブリック・リレーションズ」の略でしょうから、きっと「TBF」がプロジェクトの略称なんでしょうね。Tで「トレ・ドネ・クルデリ」(『続・殺戮のジャンゴ -地獄の賞金首-』の原題、という設定)を思い出したが、さすがにジャンゴは無関係だろう。BFで「ボーイフレンド」や「バトルフィールド」を連想したが、やっぱりヒントが少なすぎて絞り込めない。このアカウントがフォローしているのは今のところ虚淵とニトロプラスだけだしな……虚淵はニトロの取締役で、仕事もニトロフラスを経由して請けるからセットになるのは当然である。ニトロプラスで思い出したが、今やってる『ラクエンロジック』のアニメにも一枚噛んでるようでビックリしたわ。もはやアニメのクレジットでニトロの名前を見かけることは特段珍しいことではなくなってきたな……。

・拍手レス。

 来月のスニーカーの林トモアキの新作はあらすじ見る限りマスラヲ系統の続編ですかね。楽しみ。
 レイセンの後みたいですね。著書がそろそろ40冊近くで、いつの間にか林トモアキがスニーカーの古参となりつつある現実に呆然とします。

 「主人公がオ○ニーするエロゲ」ざっと思い出すと carnivalとキラ☆キラ 同一シナリオライターですね 「少女たちは荒野を目指す」 安東がベントーのシャガに似てるなーとか 何処までセルフパロに走れるか等興味があります 丸戸のセルフパロは最近鼻に突き出しましたがやっぱり面白いですし
 CARNIVAL、ゲーム本編は忘れたけど小説版の主人公がオナニーしていたことは覚えている。ロミオのセルフパロやるなら『おたく☆まっしぐら』を期待。


2016-01-11.

クジラックスの単行本『ろりとぼくらの。』が10万部達成と知って「すごい」と思いつつ「そんなものなのか……」という気持ちがないでもない焼津です、こんばんは。

 鳴子ハナハルの単行本『少女マテリアル』は発行部数が100万部以上だったそうだが、一般的な成年コミックにおける「ヒット」のラインは2万部から5万部程度らしいので10万部というのは疑いなく快挙である。しかし、あれだけ話題になった単行本が3年掛けてやっと10万部なのか……と溜息の出る面もあります。出版不況の深刻さは相変わらずみたいで、去年も業界全体(特に雑誌)で売上は大きく落としたと聞きますからね。依然として好転の兆しが見えない。一読者としてはただ黙々と気になる本を発売直後に買うぐらいしかできない。直近だと『無傷姫事件』、“戦地調停士”シリーズの最新刊ですが、前巻が出たのは2009年3月……約7年ぶりだ。来月にはサイドストーリー集の『彼方に竜がいるならば』も出ます。

 話が少しズレるけど、『無傷姫事件』と同日発売の『桜と富士と星の迷宮』、税抜でも920円なのに「192ページ」という薄さで驚いた。15年くらい前に出た同作者の『四重奏』が197ページで税抜740円だったことを考えると、やはりここ十数年で急速に本の値段が上がってきているなと実感します。売れないうえに原材料(紙)の高騰が重なって価格を引き上げざるを得ず、それでますます売れなくなっていく……完全な悪循環だ。

『メアリー・スーを殺して 幻夢コレクション』、2月5日発売予定

 最初、作者名をよく見ていなかったせいで「単なるアンソロジーか」と思ったんですが、「乙一、中田永一、山白朝子、越前魔太郎、安達寛高」って……全員同一人物じゃねぇか! 1996年、当時17歳という若さでデビューした「乙一」の本名が「安達寛高」で、乙一名義があまりにも有名になって固定イメージが付いてしまったことを嫌ったのか、2007年頃から「山白朝子」や「中田永一」などの別名義による執筆活動を始めました。ただし「越前魔太郎」は舞城王太郎を中心とする覆面作家集団のグループ名というか共同ペンネームなので、越前魔太郎作品すべてが乙一の手によるものというわけではありません、注意されたし。要するに、『メアリー・スーを殺して 幻夢コレクション』は乙一の新しい短編集ってことです。雑誌やアンソロジーに掲載された作品と書き下ろしを収録。乙一は単行本未収録作品が結構多く、まだまだ取りこぼされているものもあるが、こうしてある程度まとまってくれるとホッとしますね。

もっとも2期(続編)を制作して欲しいアニメランキング!(萌えオタニュース速報)

 何度でも書くけど『六畳間の侵略者!?』。アニメ版は下拵えが終わって、「さあこれから面白くなるぞ!」というところで幕を引いてしまった。ドラゴンボールで喩えるとピッコロ大魔王が出てくる直前で「おわり」って感じ。アニメの続きはドラマCDで聴けるけど、やっぱり動く絵が観たいんだよなぁ。7.5巻や8.5巻のあたりを劇場版2部作にする妄想で飢えを凌いでいます。六畳間以外だと『ゆゆ式』とか。日常系の一種だけど、「ネタの面白さ」ではなく「距離感」が見所で、この魅力他ではなかなか埋められない。

 ランキングに載っている作品だと『落第騎士の英雄譚』、原作最新刊も滾る面白さだっただけに期待は高まる。が、現状だと厳しいかな……パッケージの売上が振るわなかったみたいだし。そもそもGA文庫の作品で2期までやったのってポリフォニカとニャル子くらい。順番としても、落第騎士より調子の良かったダンまちに2期が来るかどうかが心配すべき事項。ダンまちに2期目が来なかったら、落第騎士もまず来ないでしょう。

主人公がオ○ニーするエロゲって意外と少ないよな(2次元に捉われない)

 体験版をちょっとやったぐらいだけど、『魔王のくせに生イキだっ!』に主人公のオナニーシーンがあったような気がする。確か2作目だったかな。検索してみると「朝からオナニーとはさすがですね♪ チ○コもいで死んでください♪」というセリフがある。エロ漫画だと「オナニーしているところを見られて、なんとなくセックスする流れに」みたいな展開はちょくちょくあるけど、これは尺が限られた媒体ゆえの「段取りを省くためのシチュ」であって、尺がほぼ無尽蔵にあるエロゲーではあんまりやる意味ないんですよね。それに、オナニーをするということはオカズもあるということで、まだ誰のルートに入るか決定していない段階で主人公の嗜好を限定するのはシナリオ的に宜しくない。エロゲーの主人公が「普通に性欲旺盛な少年」だったら、好意を寄せてくるヒロインたちになかなか手を出さないことが不自然になってしまうため、どうしても性に淡白というか鈍感気味なキャラにせざるをえない。そもそも「男のオナニーシーンなんて見たくない」ってユーザーが結構いるっぽい。オナニーシーンさえギャグにするようなノリとか個人的に結構好きなんですけども……下ネタOKの人でもそこまで描かれると「やりすぎ」と感じるらしいし、難しいところか。

・そういえば『少女たちは荒野を目指す』のアニメ、第1話を観ました。

 『少女たちは荒野を目指す』とは3月に発売を予定している全年齢対象PCゲーム(要するに、エロゲーではない)のタイトルであり、アニメはその宣伝を兼ねたものです。ゲームのシナリオは「学生編」と「社会人編」に分かれるが、アニメでは学生編のみを描く。物語の核心は「美少女ゲーム制作」。いや、「美少女ゲーム」と言っているけど、作中に出てきたパッケージからしてどう考えてもエロ……ゴニョゴニョ。さておき、内容は田中ロミオ版『冴えない彼女の育てかた』と申しますか『SHIROBAKO』と申しますか『エロゲの太陽』と申しますか。もっと端的に書けば「餓弄伝」で『野望の王国』な『らくえん』です。

「誇大妄想と思うなら思って下さい、我々は自分たちの痴力と変態力を信じているんです!!」
「この業界は荒野だ! 唯一欲望を実行に移す者のみがこの荒野を制することが出来るのだ!!」

 ゲームの方は体験版が出ているけれど、私はやっていません。だからアニメでほぼ初見ということになる。イラスト見てるからメインキャラの顔はだいたいわかるが、まだ名前が一致しない状態。とりあえず主人公が「ブンタ」というのは覚えた。どうしても菅原文太の顔がよぎるけど……って、OHP見たら正確には「文太郎」か。アニメの1話目はメインキャラの顔見せといった調子であまり話が動いておらず、「長い前フリだなー」って印象。特にまとまった感想はない。夕夏ちゃん水上桜の2Pカラーに見えるなー、とか。黒田さんはポンコツ感があって可愛いなー、とか。概ねその程度。主人公を勧誘するシーンで、どう見てもまどマギがモデルとしか思えないアニメを指して「あれの脚本を書いたライターも美少女ゲーム業界の出身だ」と解説するシーンは半笑いになってしまったが。田中ロミオと虚淵玄の付き合いは長く、『CROSS†CHANNEL』が発売する前から座談会で顔を合わせているし、『Fate/Zero』の解説を手掛けたこともあったし、『ユリイカ』の臨時増刊号でまどマギについて対談したことさえある。なのでネタにするのは自然な流れなんだが、「これが20年前だったら『ときめきメモリアル』、15年前なら『To Heart』、10年前なら『CLANNAD』をモデルに持ってくることができたんだよな」とつい考えてしまった。今でも一応Fateあたりが挙げられるだろうけど、Fateは野郎キャラ多くてあんまり「美少女ゲーム」って感じじゃないですからね……美少女ゲームをテーマとしているのに、現在の時流においてマスターピースとなりうる「誰でも知っているような代表的ソフト」を「これだ!」ってふうに指摘することができない。業界が弱体化してきている事実をまざまざと思い知らされた。

 本筋と関係ない部分でしんみりしてしまったが、それはそれとして続きが楽しみである。2004年発売の『らくえん〜あいかわらずなぼく。の場合〜』は「早過ぎたエロゲー制作エロゲー」だったが、少荒は「時代が追いついた作品」となるのか。それとも「遅かりしロミ之助」になってしまうのか。そしてオクルトゥムはいったいいつになれば……。

・拍手レス。

 ネットでの情報によれば、BORUTO THE MOVIEのヒットを受けて、週刊少年ジャンプでBORUTOの漫画が月一で連載されることが決まったそうです。漫画担当は長年作者のアシスタントをしてきた方なんだそうで……。せっかく長期連載が終わったのに、NARUTOもドラゴンボールのように無理矢理作品展開の延長を余儀なくされてしまうのかと感じます。久米田康治が自分の漫画の中で書いていたことですけど、新しい作品が売れるかどうかわからないから、既存作品の連載延長、もしくは、続編や番外編で稼ぐしか、出版社には打つ手がないんでしょうかね……。
 ボルトは絶対やるだろうと思いましたね。人気があまりにも高いと終わるに終われなくなるのはシャーロック・ホームズからの伝統です。今の10代は紙媒体というか「お金の掛かる娯楽」に対してあまり愛着がないみたいだから、20代以上の層を繋ぎ止めるために「馴染みのある作品」を推していくしか道がないんでしょうね。私も最近は純粋な新作より復刻版とか○年ぶりの続編を「おー、懐かしい」と言いつつ買っちゃう傾向が……つい『ザ・サード【完全版】』購入しちゃったり。


2016-01-01.

・紅白観てたら突然腹痛に襲われてトイレへ駆け込み、「ヴァッフェラーデン起動! 直ちにファフナー部隊を出撃させろ!」「ナイトヘーレ開門!」とか「ヤマト直上!」「全肛門開け、ここで奴らを仕留める!」とかやってるうちにμ'sの出場シーンを観逃してしまった焼津です、あけましておめでとうございます。

 録画してたから非リアルタイム視聴はできたけど、なんともウンを落としてしまった感が拭えない大晦日でした、ちゃんちゃん。

水島努×岡田麿里×ディオメディアによる新アニメプロジェクト『迷家』始動!2016年春放送開始!(萌えオタニュース速報)

 マヨヒガというと、未だに『水月』を思い出してしまうな。『水月』……『Aria』……『Garden』……『永遠(仮)』……トノイケは、そこにいますか? 久弥直樹や伊達将範でさえカムバックしたのだからトノイケダイスケが復活する可能性はゼロじゃない、はず。今年(2016年)こそトノイケと奈良原が再臨する展開を望む。話が逸れた。『迷家』、あらすじからすると群像劇系のサスペンス? 監督が水島努だけに『Another』『BLOOD-C』を思い出す人もいるみたいだが、さてどうなるやら。とりあえず放送が始まったらエロゲヲタ界隈で『水月』の雪さんとトノイケの行方に関する話題が定期的に上がることになりそうだな。

新作エロゲ「ノラと皇女と野良猫ハート」がTVアニメ化の企画進行中!!!(ニュー速VIPブログ(`・ω・´))

 と言ってもショートアニメみたいですけどね。てーきゅうとかちょぼらうにょぽみ劇場とかあにトレ!EXとかと似たような扱いになるのかな。『ノラと皇女と野良猫ハート』、公式略称「ノラとと」は私も注目していたソフトだが、9月頃に「今冬予定」から「2016年2月26日発売予定」になって「随分先だな……」と溜息をついた。主人公・反田ノラが冥界からやってきた皇女「パトリシア・オブ・エンド」に魔法をかけられ、眷属――黒猫になってしまう、という学園恋愛ストーリー。つい『パティシエなにゃんこ』を思い出して懐かしくなったり。パテにゃんは夜間だけ猫になる設定だったが、こっちはパトリシアが望んだときだけ猫にされてしまう模様。さすがに獣姦プレイはない……と思う。

 ブランドの「HARUKAZE」は2年ほど前にできた割合新しめのところで、ノラととが2本目。ライターの「はと」は戯画で『シュクレ』や『彼女はオレからはなれない』のシナリオに参加しています。もともとは同人ゲー出身みたいで、癖の強いテキストが特徴……と聞いたがまだやったことはない。かなり賛否の分かれる作風らしく、HARUKAZEのデビュー作『らぶおぶ恋愛皇帝 of LOVE!』も毀誉褒貶が激しい。評価している人もほとんどテキスト面の支持に留まっていて、シナリオについてはあまり擁護していない。ノラととの体験版が出るのはまだ先だろうし、恋愛皇帝の体験版でもチマチマとプレーするかな。

・じゃ、例によって去年一年を振り返りますか。

 平井和正死去のニュースに心が沈んだのも束の間、3月には漫画家の藤原ここあが31歳という若さでこの世を去り、絶句しました。アニメ化もした『妖狐×僕SS』が代表作ということになるだろう。自分よりも年下のクリエイターが亡くなるショックは筆舌に尽くしがたい。今でも『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』3巻の出る日を待ってしまう気持ちが心のどこかに残っている。同じく30代の若さで亡くなった声優の松来未祐に関してもショックだった。下セカであんなに元気そうにアンナ会長を演じていたのに……ファフナーの一期目を観返し、羽佐間翔子の出てくるシーンで胸が詰まった。ROLのヒロイン、生駒祐未の名前がちょうど松来さんの名前を後ろから書いたものだと新たに気づいたりも。他にも白川道や船戸与一、ヘニング・マンケル、水木しげるなど、相変わらず目に止まる訃報が多い年だった。しんみりしちゃったけど、娯楽方面についても振り返ろう。

(小説)

 去年はライトノベル以外ほとんど読めなかった。既刊を一気読みした『冴えない彼女(ヒロイン)の育てかた』『六畳間の侵略者!?』『落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)』『覇剣の皇姫アルティーナ』、このへんが特に面白かったです。

 『冴えない彼女の育てかた』、略称は「冴えカノ」ないし「冴えヒロ」。エロゲーライターとして活動し、溢れ返る昭和スメルで強固なファン層を築き上げた丸戸史明のライトノベルデビュー作です。タイトルの「彼女」は三人称的な意味合いが大きく、「主人公が付き合い始めたばかりのイケてない女を一流のレディに磨き上げていく」とか、そういう『ピグマリオン』系のストーリーではありません。暑苦しい主人公が集めたメンバーとともに同人ゲームを制作し、クリエイター(立場としてはプロデューサーとかディレクターの方が近い?)としての道のりを歩き始める。言うなれば現代版『まんが道』であり、ちょっとユルめの『東京トイボックス』。基本は明るく楽しいノリですが、決して順風満帆というわけではなく、そこらへんが丸戸史明の腕の見せ所。旧き良きドラマを思い起こさせる、軽快でほんのり熱くてグッと来る感じがしっかり詰まっています。アニメ化されたことで有名になった(というか、私もアニメ版を観てようやく崩し始めた)が、アニメでやったのは4巻まで、面白くなるのは5巻からです。2期目も来るようだから待っていても観ることはできるでしょうが……本編の他にFDやGirls Sideといった番外編も存在するが、読まなくても本筋は追える。ただ、ヒロインたちの心情をより詳しく知りたい場合は避けて通れないかと。読む順番は単に刊行順でOKです。FDが6巻の後、Girls Sideが7巻の後。3種類あるコミカライズのうち、私がオススメするのは『恋するメトロノーム』。ゲーム制作の要素をバッサリ削って、「主人公が霞ヶ丘詩羽の担当編集として頑張る話」に特化したオリジナルストーリーとなっています。シナリオは丸戸本人が担当しており、「スピンオフ漫画って大抵『コレジャナイ』になるからなぁ」と心配するアナタも手に取る価値は充分あります。詩羽先輩が好きな人であれば尚更。

 『六畳間の侵略者!?』、これも積んだきりになっていた既刊をアニメ視聴がキッカケで崩したんですが、だいぶタイムラグがあったな。おかげで「ああ、物語はこんなに盛り上がってるのに2期目は来ないんだろうな」と複雑な気持ちを味わいながら読み進めることに。幽霊、宇宙人、地底人、魔法少女など属している世界からしていろいろと違い過ぎるヒロインたちが一つの屋根の下に集まって領土争いを繰り広げるドタバタコメディです。打ち切りの可能性を見越して序盤は伏線等を小出し小出しにしていましたが、途中から打ち切りの心配がなくなって一気にスケールを拡大していきます。アニメはちょうどスケールを広げる直前のところで終わっており、「ここから面白くなるのに!」と落胆したファンは数知れず。アニメの後のストーリーが知りたい人は7巻から読み出すと良いです。アニメと重複する箇所も多いけど、この巻飛ばすとワケ分かんなくなりますよ。でも本音言うとアニメは削られてる箇所がかなり多いので、1巻からキチンと読んでいった方がベターです。声優が同じだった「お兄様」ほどではないが、こっちも結構凄いことになるからマジで2期来ないもんかな。

 『落第騎士の英雄譚』は「才能がない」と周囲から断定されてしまった主人公が、それでもなお諦めずごく少数の支援者から助力を受けながら現実に抗っていく、ややスポ根テイストの入った学園バトル・ファンタジー。現在本編が9巻まで、あと番外編が1冊出ている。テロリストに襲われる展開もあったりするが、「七星剣舞祭」――要はインターハイみたいな全国大会への出場が本筋に当たる。アニメ版は校内選抜戦までで終了だけど、原作小説ではがっつり大会本番も描いています。バトル物として面白くなってくるのは4巻からなので是非2期目をやってもらいたいが、現状だと難しそう……原作にあった伏線も削られていて、「2期が来ないこと」を前提とした作りになっていますし。アニメが始まる前は「たぶんしょーもない出来になるだろう」とあまり期待を寄せていなかったが、予想を覆す仕上がりになっていたこともあり、ここで終わらせるのはどうにも惜しまれる。剣士殺し編の演出はかなり不満が残るものだったけれど、桐原くんとの戦いは断然アニメ版が良かった。というか桐原くんキャラ立ち過ぎだろ……松岡禎丞の演技力恐るべし。正直、ステラのいやらしい肢体目当てで読み出したシリーズだったのですけれど、気が付くと倉敷蔵人とか加我恋司とか、野郎キャラに骨抜きにされていたという。特に倉敷くんはイイですね。バトル系の敵キャラとしては今年ナンバーワンのお気に入りかも。それだけにアニメのアレは……原作だと登場時点は「なんか卑怯な手を使って主人公を苦しめそう、でもあっさり逆転されそう」というイメージで噛ませ臭プンプンながら、実は真正面からぶつかっても苦戦するタイプだったと判明する意外性、徐々に明らかとなっていく特質に「どうやって勝つんだよコレ」と込み上げてくる軽い絶望感――ほんの一瞬チラッと「勝てないかも」と思わせる匙加減が絶妙でした。アニメだと「ちょっと強そう」程度ですね。戦っているうちにちょっとずつ相手のことが分かってくる、という過程を端折りまくったせいで倉敷くんの手強さ・厄介さがあまり伝わらなかった。大蛇丸を呼び出すシーンも「そうじゃないだろ」と。総じて「こいつ、こんなに強いのか!」という驚きがアニメ版にはなかったです。

 『覇剣の皇姫アルティーナ』は戦記ファンタジー。剣と魔法ではなく「剣と大砲」の世界ですが、見た目は華奢なヒロインが大剣振り回して雑兵どもを一掃する無双シリーズじみた描写が気にならない人向けです。読書狂の軍師、レジス・オーリックが本人の意に反してどんどん成り上がっていく、銀英伝のヤンみたいなキャラなので「ああ、みんなやっぱこういうのが好きなんだな」と思いながら読んでいただければちょうどいい。1冊1冊の展開が遅めだからまとめて読まないと魅力が伝わってきにくい難点もありますが、読んでいて疲れないあっさりした文体のゆえ10冊くらい一気に行っても大丈夫です。『アルティーナ』はシリーズ1巻と2巻の内容を2、30代くらいの読者向けに書き直した愛蔵版で、入門用にはうってつけの一冊。

 去年出た新作で気に入ったのは、『異世界食堂』『ゲーマーズ!』『妹さえいればいい。』『ようこそ実力至上主義の教室へ』など。

 『異世界食堂』は「異世界にある食堂」ではなく「異世界から客がやってくる食堂」で、剣と魔法のファンタジーな異世界から訪れる冒険者・戦士・魔王使い・王族・亜人・人のフリをしたモンスターが庶民的な料理に舌鼓を打つ、ほぼそれだけの内容です。こういう「異世界グルメ物」が一つのトレンドになっているみたいで、類似作品はたくさんありますが、まだそのへんはチェックし切れていない。『ダンジョン飯』も一応このジャンルに属するかしら。『異世界食堂』は1つ1つのエピソードが短め(十数ページ)なので、細切れに読んでも面白いのが利点です。

 『ゲーマーズ!』はゲーム好きな少年少女の恋愛模様を描く、ほんのり群像劇要素が入ったラブコメ。ゲームに関するポリシーが正反対なのに惹かれ合っていくカップルや、大筋では意気投合しているのにある一点でだけソリが合わず犬猿の仲に陥っている二人など、「ゲームに対する姿勢」がちゃんと物語にリンクしているあたりが読みどころ。みんな勘違いしていたり鈍かったりで関係がゴチャゴチャに拗れていくところも面白く、純粋にラブコメとして続きが楽しみなシリーズです。

 『妹さえいればいい。』は妹欲しさのあまり頭がイカレてしまったライトノベル作家とひと癖もふた癖もあるその友人たちの愉快な日常を描くコメディ。ほとんどが「ラノベ作家あるある」ネタで埋まっており、オムニバス方式なので特段これといって幹となるようなストーリーは存在しない。連載ギャグ漫画に近い構成ですね。どこから読み始めても笑える、みたいな。最近の平坂読にしては好調なペースで巻を重ねており、私はとても嬉しい。

 『ようこそ実力至上主義の教室へ』、長いので「よう実」と略されている。「外部との連絡を遮断されている全寮制学園都市」を舞台に、「学業の成績や生活態度の評価で支給される学園内通貨が決まる」という設定を敷いた、少し風変りな学園ストーリーです。最低限の食糧は無料で貰えるから使い込んでも餓死することはありません。そういう点ではヌルいが、ポイント(学園内通貨)がないとちょっとした贅沢も出来ず、自然と学園内で「経済的格差」が可視化されていくことになる。真面目に勉強することが豊かさに直結しているので、みんな必死になって授業を受ける……一部の落ちこぼれたち以外は。一度転落したら這い上がりにくいシステムの中で「落ちこぼれクラス」に回されてしまった主人公が現状を打破するために動く。清々しいくらい競争原理を押し出した設定で、展開がやや遅めで焦れるのはネックだが、衣笠彰梧の新たな代表作になりそう。あとこの作品が好きな人には『Fランクの暴君』がオススメ。競争が激しすぎて「弱肉強食学園」と呼ばれるところを舞台にした下克上ストーリー。3巻は出ないみたいだが、既刊の部分だけでも充分面白い。作者本人も「Fランクの暴君もね、続きを出したい気持ちはあるよ。「新装版1,2、からの、新刊!」って形ができるなら……ありかなとも思うよ! しかし、そんなわがままはね、なかなかね……」と語っており、望みが捨てきれぬ。講談社タイガで新作出す予定らしいから、そっちがバカ売れしてFラン再評価&再始動する僅かな可能性に賭けるしかない。

 話題作ばかり挙げてしまったので、最後にマイナー作品のオススメも書いておこう。

 『ファング・オブ・アンダードッグ』『ベン・トー』のアサウラによるちょい和風テイストなバトル・ファンタジーだ。アンダードッグ=負け犬。「最強」と呼ばれる兄のもとで育ち、出来損ないだなんだと罵られ、強い挫折感を抱いている主人公が自分自身を勝ち取るために足掻き抜く。こう書くと「また劣等生モノか」「落ちこぼれと言いつつ本気出したらスゴいんでしょ」ってウンザリされそうながら、主人公の心情描写が丹念で引き込まれます。雰囲気はやや煤けている部分もあるにせよ、概ね前向き。あまり今風のノリではないし話題にならないことも頷けるが、もうちょっと注目されてもいいと思う。非常にストレートな物語をクラシックなスタイルで綴っておりますゆえ、「最近の流行りに馴染めない」という人は是非挑んで欲しい。

(漫画)

 『ヴィンランド・サガ』『血界戦線』『凍牌〜人柱篇〜』『イノサン』『ケンガンアシュラ』は安定して面白かった。どれも安定しているぶん、特に語ることがない。『ヴィンランド・サガ』は最新刊の展開もあり、そろそろ最初から読み直さなきゃな、と思った。『血界戦線』は今月の新刊から『血界戦線 Back 2 Back』にタイトルが変わって巻数リセットされますね。タイトル変更と言えば『イノサン』も『イノサン Rouge』になっています。店頭で初めて知って、慌てて買った記憶が。『凍牌』もそろそろ人柱篇が終わるかも。無印が全12巻なので、巻数リセットするなら頃合の時期。人柱篇12巻と同時発売で『牌王血戦 ライオン』の1巻も出ます。タイトルからして凍牌屈指の人気キャラ・堂嶋を主人公にしたスピンオフ漫画『牌王伝説 ライオン』の続編でしょう。様々なしがらみから命懸けで麻雀を打つことになっているK(『凍牌』の主人公)と違い、堂嶋は自ら望んで死地に飛び込んでいくので読み口はだいぶ違う。前シリーズの「牌王伝説」は『破滅の獅子』というタイトルで廉価版(全2巻)が出ているので、単行本をコレクションしたい人以外はこちらをオススメする。『ケンガンアシュラ』は過去編に当たる『ケンガンアシュラ0』がもうすぐ発売される予定。ドラマCD付き特別版もあります。

 新作だと『ゴールデンカムイ』『高機動無職ニーテンベルグ』『ゴロセウム』が三強。『ゴールデンカムイ』は日露戦争を生き残った兵士が北海道で金塊争奪戦に参加する、迫力と熱気に満ちた活劇コミック。アイヌの少女も可愛くてグッド。表紙を眺めて「あ、これは面白い奴だ」と確信できる人は即座に買うべし。ニーテンベルグは「働きたくないから戦う」というメチャクチャなコンセプトのロボット漫画。お色気要素を削ったダイミダラーとでも言おうか。社畜軍とNEET勢の戦いをガンダムパロディの文脈で描くためファーストガンダム知らない世代にとっては厳しいかもしれないが、「無職罪」などパロ以外の小ネタもなかなか印象的。サンライズでアニメ化しないかな、これ。監督は高松信司で一つ。『ゴロセウム』は銃器、刃物、そしてミサイルなどあらゆる近代兵器を防ぐ技術が誕生したため、ふたたび素手での闘い、すなわち「ステゴロ」、肉弾の時代へ逆戻りした世界を描く。「大ロシア連邦 終身大統領 ウラジスラフ・プーチノフ」に大爆笑した。アイデアを盛り込めるだけ盛り込んだ、ミックスフライ弁当みたいな油ギットリの漫画です。

(アニメ)

 TVシリーズで全話観た新作は3、40本くらいかな。オリジナルと原作付きに分けて語ると、

 オリジナルで印象に残ったのは『蒼穹のファフナー EXODUS』『戦姫絶唱シンフォギアGX』『ヴァルキリードライヴ マーメイド』の3つ。『シャーロット』も1話目の時点ではすごく面白そうだったが、2話目以降はそんなに……特殊能力モノですが、コードギアスとかに比べて主人公の能力があまりストーリーに絡んで来なかった。声優が一緒の『甘城ブリリアントパーク』同様、飾りに近い能力となってしまったのが残念。ヒロインの友利奈緒が可愛かったからどうにか最後まで観れました。最終話の展開は『ケモノガリ』みたいで好きだけど、1話でやる内容じゃないよな、っていう。

 ファフナーEXOはTVアニメとしては10年ぶり、劇場版も含めると5年ぶりの新作。ストーリーは劇場版の続きなんで、TVシリーズしか観ていない人は「???」でしょう。ファフナーの世界は2114年に宇宙から飛来してきた珪素生命体「フェストゥム」によって人類が壊滅的な被害を被りました。それから30年以上たった2146年に本編1期目がスタート。ここを起点に説明すると2年後(2148年)が劇場版で、5年後(2151年)がEXODUSです。本編より前のエピソードとしてROL(RIGHT OF LEFT)もありますが、これは1期目を最後まで観てからの方がいいかも。ファフナーは知らないとストーリーが呑み込めないっていう重要な設定が山ほどあるのに、そのほとんどが後半になってから開示されるものだから、とにかく出だしが取っ付きにくい。2周、3周と繰り返し観ることが前提となっています。私も劇場版は3回観てやっと心の底から「面白い!」と思えるようになった。EXODUSは主人公たちが「竜宮島(たつみやじま)」という故郷から離れ、「外の世界」と「竜宮島(当然ながら居残り組がいる)」を交互に描く構成を選びましたが、スケールが拡大しすぎて「2クールじゃまとめ切れないだろ、コレ」とかねてより危惧されておりました。案の定、最終話は駆け足気味で不完全燃焼に……スッキリ終わらなかったが、それでも今年一番熱中させられたアニメではあった。でも観ていると心がボロボロになるため、反動でヒーリング効果のある日常アニメを大量に欲するように。去年の秋から冬にかけては「ファフナーで荒れた胃をゆるゆりとごちうさで癒す」みたいな感じになった。

 『戦姫絶唱シンフォギアGX』は“戦姫絶唱シンフォギア”シリーズの3期目。「歌いながら戦う」バトルの奇天烈さから珍作扱いされた1期目を思うと、隔世の感がある。期を経るごとに予算が上がっていくのか画面作りも豪華になって「最近の深夜アニメはすごいな」とひたすら感心させられた。ただ最初から全力投球のスタイルで臨んだためあまり緩急が付かず、オートスコアラー(自動人形)が全部散ったところで実質的なクライマックスを迎えてしまった印象。ガリィちゃんはもっと粘って欲しかった……4期目もやってほしいが、響や翼の家庭問題はほぼ落着し、そろそろネタがなくなってきた気配も漂う。だが私は観たいのだ、『虚無戦姫絶唱シンフォギア』で宇宙の果てまで飛び、ラ=グース的なものに恒星破壊級パンチをブチ込む響ちゃんの姿を。

 『ヴァルキリードライヴ マーメイド』は「絶頂すると武器になっちゃう」女の子たちの戦いを紡ぐ企画「ヴァルキリードライヴ」 プロジェクトの一部。要するにメディアミックス作品である。ヴァルドラでは「世界政府」なるのが樹立していて、全世界から集められた「絶頂すると武器になっちゃう」女の子たちを5つの人工島に隔離しています。島には人魚関連の名前が付けられており、「マーメイド」もその一つ。他に「ビクニ」や「セイレーン」が存在する。隔離政策が始まったのは5年前、本編開始時点で島から脱出できたものはいない、という設定です。そんな島に送り込まれた少女ふたりの戦いが軸となるわけですが、何せ絶頂しないと武器になれないので、緊迫したムードそっちのけで乳繰り合うシーンが入るというシュールさ全開のアニメになった。お色気描写が濃厚で、「さすがにここまで来ると下品だな」と思わないでもなかったり。あるキャラの秘密がバレてしまうシーンがあって、そこはストーリー上すごく重要なシーンなのに、肝心のキャラが大股おっぴろげて倒れるものだからなんだかギャグみたいになってしまっている。おっぱいが揺れるたびに「タパンッ」と布を叩くようなエフェクトが鳴ることもあり、話に集中できない箇所もあった。ネタアニメ扱いされてもしょうがない作品だけど、脚本が黒田洋介と雑破業のふたりで、なにげに熱いシナリオ書いてるんですよね。生きる目的を見出せなかった魅零がまもりとの出会いを経て戦いの決意を固める。非常にシンプルな筋立てを堅守しており、サービスシーンの過多に目を瞑ればスクライドばりに燃える展開もある。メディアミックス作品らしく「続けようと思えれば続けられるし、ここで終わってもそれはそれで支障がない」という結末。今度はビクニやセイレーン、もしくは残りの二島を舞台にしたアニメが観たいですね。

 原作付きは『冴えない彼女の育てかた』『アイドルマスター シンデレラガールズ』『グリザイアの楽園』『ハロー!!きんいろモザイク』『のんのんびより りぴーと』『わかば*ガール』『干物妹!うまるちゃん』『ご注文はうさぎですか??』『ゆるゆり さん☆ハイ!』『響け!ユーフォニアム』『血界戦線』『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』『城下町のダンデライオン』『オーバーロード』『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』『落第騎士の英雄譚』『ワンパンマン』。多いので駆け足気味に語ろう。

 『冴えない彼女の育てかた』はライトノベル原作。原作者本人が脚本を担当したため、改変された箇所も違和感のない仕上がり。むしろアニメ版こそがこの作品の完成形では? とさえ思った。どちらかと言えば脚本に近い書き方なんですよね、原作。感情の起伏が乏しいヒロイン、加藤恵を演じる安野希世乃の平板なボイスが素晴らしい。もうこれ以外には考えられない。安野さんはうしとらの真由子とかもやってますね。『アイドルマスター シンデレラガールズ』、通称デレアニは1話目の滑り出しがとても良かった。良過ぎて、それ以降がちょっと見劣りする部分もあった。連続2クールだと思っていたのに分割2クールになっていたり、分割したんだからスケジュールは余裕だろうと思ったら特番入れまくったり、制作側の苦しさがもろに露呈してしまった。2クール目に入ってからの話がちょっと暗くてデレマスの明るい雰囲気にマッチしないところもあったが、歌って踊る島村卯月が観られるだなんて、ただの願望でしかなかった時代を振り返るとヘヴンですよ。劇場版やTVシリーズの続きもやってほしいが、もう制作スタジオはボロボロなんじゃないかと思うと気が引ける。でもやっぱ観たいわ、と年末の劇場版アニマスを視聴しながら改めて思いました。『グリザイアの楽園』は『グリザイアの果実』続編。過去編に相当する『グリザイアの迷宮』も消化しています。ツッコミどころ満載ながら力技で押し切る勢いの満ちたアニメになっていて素晴らしかった。

 ここから日常系ラッシュ。『ハロー!!きんいろモザイク』は『きんいろモザイク』の2期目。シノやアリスにまた会えるなんて……と感激。世界がきんいろに輝いている、祝福に満ちたアニメとなっていたが、果たして3期目は来るかどうか。『のんのんびより りぴーと』は時間を巻き戻して「語られなかった隙間エピソード」を埋めていく、ちょっと変則的なスタイルの2期目。4コマ漫画だと『ふおんコネクト!』がコレをやったことありますね。時間が遡っているせいでちょっと混乱するところもあったが、相変わらず素晴らしく心が潤う。さすがにもうこれ以上は巻き戻せないだろうが、それでもワシャ3期目が観たい。『わかば*ガール』はきんモザと同じ原作者(原悠衣)による漫画をアニメ化したもの。ショートアニメなので全話(BD/DVD収録の新作エピソード含む)合わせても100分程度しかありません。原作が単巻(しかもたった90ページ)ですから仕方ない面もある。短いながらも若葉ちゃんたちの魅力が余さず発揮されたアニメになっており、是非繰り返し視聴したい。ちなみに公式ファンブックには16ページもの書き下ろし新作が載っています。ドンミスイット。『干物妹!うまるちゃん』は分類上「日常アニメ」にされているけど、どちらかと言えば普通のギャグ漫画に近い。ギャグ要素を可能な限り希釈することで日常アニメを装っている。なので日常アニメ好きから支持を得られるか微妙なところだったが、うまるがストレートに可愛く描かれていたこと、そして担当声優がハマリ役だったことから「日常アニメとしての側面も持つ」ことに成功した。この調子なら2期もきっと来るだろう、たぶん。ひょっとしたら海老名ちゃんが主人公のスピンオフが来るかもしれないが。『ご注文はうさぎですか??』は言わずと知れた、ここ数年の日常アニメでもっとも話題になった『ご注文はうさぎですか?』の2期目。「?」の数で判別します。「1」で検索すると『ご注文はうさぎですか?』の1話目がヒットするくらい有名。2期目はチノちゃんの友達、マヤとメグ、3人合わせて「チマメ隊」の存在感がアップしたせいでかなりロリコン色が強くなっています。EDなんて「ロリコン殺し」とまで呼ばれるほど。ココアの上位互換としてモカさんも登場し、主人公の影がやや薄く……千夜は心なしか1期目より目立っていた気がしますね。そろそろストックも尽きかけだが、ごちうさに関しては3期目も余裕と考えている。考えたい。考えさせてくれ。『ゆるゆり さん☆ハイ!』は脚本に深見真が参加した3期目。2期との間には『なちゅやちゅみ!』および『なちゅやちゅみ!+』もある。さん☆ハイ!は露骨なあかりイジメがなくなってホッとした。このまま4期目まで突き進んでくれ。

 疲れてきたので流し気味に。『響け!ユーフォニアム』は吹奏楽アニメ。1クールでしっかりまとまっていて好印象。微百合が空気を邪推できるところもベネ。『血界戦線』は内藤泰弘版『魔界都市 <新宿> 』。カオスな街のドタバタ騒動を一話完結方式で見せてくれるが、アニメオリジナル要素を加えたためストーリー物っぽい感じに。オリジナル要素はいまひとつだったが、原作の楽しさはよく再現できていた。続きも楽しみ。『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』はUBWのシナリオをベースにした、stay nightとしては9年ぶりのTVシリーズ。公式外伝『Fate/Zero』の内容も反映されている。バーサーカー戦などアクションシーンの迫力にたまげたが、キャスター戦が何話も続いてしまうあたりに「TVシリーズ向けの話ではなかったな」という感触を得た。まとめて観る分には気にならないが。『城下町のダンデライオン』は春日歩の4コマ漫画が原作。いやあずまんがの大阪ではない。「国民投票で王様一家の中から次の王様を決める」という不思議な政治体制が敷かれた世界を舞台にした学園モノだが、「王座を巡って兄弟が骨肉の争いを繰り広げる」とかいうことはなく、ノリとしては日常系のギャグアニメである。両親(国王&王妃)と子供9人、計11人の大家族がメインだけに、最初は誰が誰だか区別が付かない。半分くらい経ってやっと名前と顔が一致するようになった。三女の茜が主人公ポジションではあるが、それ以外の兄弟を主役にしたエピソードもちょこちょこあり、ハッキリ言って1クールアニメにしては話が雑多でまとまりに欠ける。私も自分が途中で脱落するんじゃないかと思っていたが、ダラダラ眺めているうちに気に入ってしまって、今じゃCMで茜様が映るたびテンション上がる体質に。原作本も買いました。2期はなさそうだけど、原作は続くみたいだしまあいいか。

 『オーバーロード』は「小説家になろう」で連載されていたファンタジーが原作。ただし、なろう版と書籍版はストーリーや設定に相違点が多く、たとえば「アルベド」というキャラはなろう版には登場しない。アニメは書籍版準拠です。もともとそれなりに売れていた(だからこそアニメ化された)シリーズでしたが、放送が始まった途端に大きな反響を呼んで、原作小説が各地で売り切れる事態に陥る。「増刷したから大丈夫だろう」と出版社が安堵したのも束の間、全然足りなくてふたたび品薄に。結局、需要と供給が調和するまで数ヶ月掛かった。放送前は累計60万部だったのが200万部なんですから凄まじい。モモンガ様の見た目と中身のギャップ、なんちゃって魔王様ではなく本当の魔王として君臨しそうなダークさ満載の雰囲気が魅力的な『オーバーロード』、2期目はほぼ決まったようなもんでしょう。もしやるとしたら、もうちょっとモモンガに匹敵する存在が出てくるのかな。『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』はオバロ同様ネット連載小説が原作。ただし、なろうではない。連載開始が2006年4月だったそうだから、今年でもう10年ですか。意外と古株なんですが、版元が弱小だったせいもあって多メディア展開は立ち遅れました。『戦国自衛隊』ならぬ『異世界自衛隊』、ミリタリーとファンタジーの融合が楽しい。今月から第2シーズンの『炎龍編』開始予定。第3シーズンや第4シーズンはあるのかな。『落第騎士の英雄譚』は……原作のところで語ったし割愛。『ワンパンマン』はWEBコミック原作。原作はこちらで読むことができます。この原作を村田雄介が描き直したリメイク版もあり、アニメはこちらを踏襲していますね。あまりにも強すぎるせいでほとんどの敵を一撃で倒してしまう、マキナみたいな主人公がその最強さを理解されず、低ランクヒーローの地位に甘んじている……というギャグアニメ。しかし村田版が下敷きとなっていることもあり、アクションシーンの迫力は群を抜いている。「これ劇場版か?」ってくらい動きまくります。フブキの出番が少なくて残念だったけど、総じて期待以上の出来だった。

 劇場版は『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』『バケモノの子』『劇場版 蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-Cadenza』がベスト3。『心が叫びたがってるんだ。』『ラブライブ!The School Idol Movie』もまあまあ。『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』はうずまきナルトの息子・ボルトを主人公に据えたオリジナルストーリー。『NARUTO』の後日談みたいな要素も持っている。アクションあり、主人公の成長あり、仲間たちとの結束もあり、父親との和解もあり、かなり凝縮された内容になっています。NARUTO映画としては『ROAD TO NINJA』の次くらいに好き。『バケモノの子』は母親の死後、親族に引き取られることを拒否した少年がバケモノの棲む世界「渋天街」に迷い込んで「強いけど人望(バケ望?)がないバケモノ」に弟子入りする話。成長ストーリーで、ボーイ・ミーツ・ガールの要素まで加わっている。欲張り過ぎた印象もあるが、出し惜しみするよりはマシか。『劇場版 蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-Cadenza』は劇場版第2弾。第1弾は「総集編+新作」だったが、今回は完全新作です。EVAの旧劇場版みたいに新作部分が重複するわけじゃないので、ちゃんと第1弾の『DC』観てから『Cadenza』観ましょう。ちなみにCadenza(カデンツァ)は音楽用語だが、DCは「ディレクターズ・カット」であってダ・カーポではない。TVシリーズが原作から内容を変えたオリジナルストーリーなので劇場版も当然オリジナル要素が強い。アドミラリティ・コード云々といった核心部分の謎をほっぽることでドラマの内容を一点に絞り込んでいます。とにかく「映像重視!」とばかりに観応えのある絵になっていて、「何がやりたいのか」すごくハッキリしている。アニメしか観ていない人にとっては「これで終わりなの?」と呆気なく感じるでしょうが、オリジナル主体でよくぞここまでやってくれたものだ。『心が叫びたがってるんだ。』、興行側は感動ストーリーとして売り込みたいみたいだけど、実際は感動させる気ナッシングなストーリーである。普通、感動系の映画はクライマックスで感情のピークを迎えるように作られているんですが、ここさけは逆。クライマックスで感情のボトムに辿り着く。「よくぞここまで臆面もなく……」と感心させられる。ヒロインの成瀬順を受け入れられるかどうか――共感できるか、興味深いと思うか、ただ単にイラつくだけか、そのへんで面白さが変わってきます。『ラブライブ!The School Idol Movie』は「あのラブライブが映画になった!」というイベント性の高さが補正として加わっており、単品の映画としてはちょと物足りない部分も残る。「μ'sは3年生の卒業を以って解散する」という2期後半で出したはずの結論を蒸し返すのは、正直言って蛇足感が拭えない。多少の足踏みはあれど、TVシリーズは穂乃果たちが未来に向かっていく前進の物語(ススメ→トゥモロウ)だったのに対し劇場版はほとんど堂々巡りになっている。「これは映画ではなく、お祭りの一部なんだ」と割り切ることでどうにか楽しめた。紅白出場にはビックリしたけど、これでもうアニメとしてのラブライブ(μ's)は「Fin」でしょうな。

(映画)

 映画は『セッション』『キングスマン』『マッドマックス 怒りのデス・ロード』がベスト3。『セッション』は学生を死に追い込むぐらい厳しいというか頭おかC音楽教師フレッチャーの圧迫レッスンによって主人公がボロボロになっていく話。とにかくJ・K・シモンズ演じるフレッチャーの存在感が桁違いである。「ハートマン軍曹か!」って勢いですからね。当然主人公は泣いたり笑ったりできなくなっていく。この映画の凄いところはフレッチャーが「悪役」ではないところなんです。あまり書くとネタバレになってしまいますが、興味を引くために簡単に触れておくと「主人公の狂気と野心の前にはフレッチャーのような鬼教官でさえ踏み台でしかなかった」ことが言葉ではなく音楽で表現されている。間違いなく今年観た中でのナンバーワン。『キングスマン』は昨今の深刻ぶったスパイ映画を蹴り飛ばして粉砕するような、デタラメで荒唐無稽で「調子こかせてもらうぜ!」な一本。人によってはまったく受け付けないであろう「高級駄菓子」とも呼ぶべき怪作。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』はなんと30年ぶりの新作。マックス役がメル・ギブソンからトム・ハーディに変更となっているが、リメイク等ではなく前作からそのままストーリーが続いている。『北斗の拳』の元ネタの一つとして知られる(『北斗の拳』はマッドマックスの他にもクメール・ルージュによって荒廃したカンボジアがモチーフとなっている)シリーズだが、ズタボロになった世界でそれでも懸命に生き足掻く人々の姿を映しており、ある種の生命賛歌として受け取ることもできる。単に「ヒャッハー!」な映画として観てもOK。

(ゲーム)

 ゲームは……実は今年、1個もクリアしたソフトがなかった。戦神館あたりを集中的にやり込む予定だったのに、なんだかんだで時間が取れず。だから感想抜きで、「今年はこんなゲームが出たな」と確認する程度に留めておきます。

 1月、『時計仕掛けのレイライン』3部作完結編『朝霧に散る花』が発売された。第1弾の発売が2012年7月なので約2年半。こう書くと「そんなに長くないな」って気もしますが、第2弾が割と早くて2013年1月発売だったから丸2年も間が空いていたんですよね……ファンは「いつ出るの?」とやきもきしたことでしょう。私は「どうせパック版が出るだろう」と待ちの姿勢を貫いていました。実際フルパック版が完結編と同時発売されましたが、私と似たような考えで待っていた人が多かったのか発売してすぐ品薄になり、現在は新品での入手が難しい状況。調べてみたところ、中古でもメーカー希望小売価格並みか場合によってはそれ以上で、プチプレミア化しています。確実に入手したい物は予約、があくまで基本。ちなみにレイラインには『A Clockwork Ley-Line 運命の廻る森』という外伝小説が存在しますが、発行がユニゾンシフトなので扱いとしては同人誌、一般書店では売っていません。送料が掛かるけど公式通販の在庫がまだ残っているので、欲しい人はこちらを利用しましょう。

 2月、るーすぼーい約7年ぶりの新作『ぼくの一人戦争』が発売。税抜で6800円というミドルプライスだし、最初から大作ではないことなんて分かり切っていたが、予想以上に微妙な評価に落ち着いた模様。るーすは11月に『白蝶記』でライトノベルデビューを飾っており、2巻目も発売予定ということで、もうPCゲー業界には戻ってこないかもしれませんね。3月には王雀孫とタカヒロがタッグを組んだ『姉小路直子と銀色の死神』発売、白猫参謀が久々に原画家として活動したソフトでもあった。君主以来だから8年ぶりか? 豪華スタッフで話題になったものの評価は振るわず。私はゆっくりチマチマと進めていて、今のところ結構楽しんでいるんですが……。

 4月、『相州戦神館學園 万仙陣』発売。『相州戦神館學園 八命陣』の続編です。開幕早々、前作の核心をガッツリとバラしているので「動作確認のために起動してみよう」なんて考える人は注意されたし。“神座万象”シリーズもあるけど、それを別にすればlightがこれだけハッキリしたシリーズ作品をフルプライス(税抜9800円なので、より正確に書けばオーバープライス)で出すのは珍しい。一応『ドキドキしすたぁパラダイス』があるけど、あれはヒロイン総取っ替えでしたもんね。しかし、しすパラか……クソ懐かしい。アニメ化が決まったDiesは言うに及ばず、『シルヴァリオ ヴェンデッタ』も続編出す予定らしいし、lightのカラーも随分と様変わりしました。あ、それと戦神館は『相州戦神館學園 誅仙陣』という万仙陣の後日談に当たるドラマCDも出てるので、これからプレーする方は忘れずに買っておきましょう。

 5月から7月は飛ばして8月、『ランス03 リーザス陥落』発売。なんと24年前に出たソフトのリメイクです。アリスソフトはおろか18禁ゲーム業界全体においてある種のシンボルと化しているランスシリーズもいよいよ2016年発売予定の]で完結予定。その前哨戦としてリリースされた03は、話によると01ほどの売上ではないらしいが、固定ファンのおかげで安定して売れているとのこと。完結と言ってもまだリメイク作業はしばらく続く――と言っても02の再調整が済んだら、次の04で最後? 4.1や4.2はやる気なさそう、鬼畜王は「ひょっとしたら……」という情報もあるが詳細不明。これから始める人は、01→03でプレーするのをオススメします。02は飛ばしてもストーリーはだいたい把握できるはず。

 9月は『うたわれるもの 偽りの仮面』がPS系ハードで発売。販促も兼ねて10月からTVアニメがスタートした。『うたわれるもの』はもともとはエロゲーからの移植で、それに伴って2006年にアニメ化されました。単に『うたわれるもの』と言った場合、このアニメ版を連想する人が多いみたいです。再放送で見たクチだけど、「キンッキンッキンッキン!→子供のこ〜ろのゆめっは〜」のコンボには胸が躍った。2016年には完結編『二人の白皇』が発売予定であり、それに備えて早く『偽りの仮面』もやっておきたいが……まだPS4のセッティングすら完了していない。

 10月、11年の時を経て『サクラノ詩』が遂に発売。2004年時点でシナリオは既にある程度上がっていたらしいが、その出来にSCA-自が納得できず延々と作り直し作業に入って気が付けばあっという間に10年が経過していたという。すばひびもサクラノも終わった今、あとは『陰と影』を残すのみとなったな……オクルトゥムや『末期、少女病』、ドグラQ、太陽の子と並んで私が長年待ち続けている『陰と影』、仮に作るとしてもあと5年は掛かりそうだが、それでも望みは捨てずに持ち続けていきたい。

 11月は『果つることなき未来ヨリ』とか『Maggot baits』とか『僕はキミだけを見つめる』とか、いろいろ注目作が出ましたが目玉には欠ける印象。12月も『巨乳ファンタジー3』『見上げてごらん、夜空の星を』『IZUMO4』などが出て、どれも面白そうだけど積ゲー崩しが一向に捗らない私はただ指を咥えて眺めるしかない。来年の新作はうたわれ完結編と、『恋する乙女と守護の楯〜薔薇の聖母〜』『乙女理論とその後の周辺』『少女たちは荒野を目指す』『タユタマ2』あたりに熱視線を送っています。って、ほとんど続編タイトルだなコレ。

・拍手レス。

 個人的にタユタマは続編を作ってもらいたくなかったなと感じます。一応ファンディスクで話はまとまったのだから、続編を作っても蛇足にしかならないんじゃないかと思います。それに、タユタマ本編の後の世界観であるナーサリィライムとは、どういう整合性を持たせるのかと、心配でならないんですよね。キャラデザ担当の萌木原氏も近年絵が劣化していると自分の周りで言われていますし、どうなってしまうのか不安です………。
 タユタマの500年後がナーサリィライムというのはウィキペにも書いてありましたけど、「ある種のifですから」で押し通されそうな気もする。シナリオは新人(誰かの別名義?)なので整合性はあまり期待しない方が宜しいかと。萌木原さんの絵、私は最近のも割と好みですね。癖が抜けたせいか、ちょっと個性が薄くなっている感じはしますけど。


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