2015年1月〜2月分


2015-02-22.

ニコニコ動画で『仮面ライダー龍騎』全50話の無料配信をやっている(ただし今日で終了です)のでせっかくだから、と一気観した焼津です、こんばんは。

 本放送は2002年2月から2003年1月まで。今から12、3年前ですね。うちのサイトもまだ開設していない。私はその時期『それは舞い散る桜のように』や『悪魔のミカタ』『グラン・ヴァカンス』に夢中になっていました、どれも続きが出なくなる運命だとは知らずに……閑話休題、龍騎はクウガ、アギトに続く“平成ライダー”の3作目。この次が555でした。「13人のライダーが最後のひとりになるまで戦い合う」というバトルロイヤル方式であり、放送開始前は「ライダー出し過ぎだろ」「迷走してきたな」とあまり評判が芳しくなかったように記憶している。実際に始まると前評判を覆す勢いで盛り上がって人気に火がつきまくりましたが、当時は日曜朝早くに起きる習慣がなかったこともあって結局1話たりとも観ずに終わっちゃいました。その後の評価を見聞きして気になってはいたものの、「全50話+α」という量を観るのはしんどいな……と尻込みして着手する機会をなかなか得られなんだです。今回は「無料だし、とりあえず何話か視聴して続きを追うかどうか決めよう」と軽い気持ちでアクセスした結果、どっぷりハマってしまいました。いやあ、確かにこれは面白いわ。まだ比較的規制の緩かった時代で、子供が観たらトラウマになりそうなポイントもいくつかあり、ヌルくない感じでハジけている。王蛇みたいなキャラ、今ならとてもニチアサには出せないだろうな。

 「ライダー同士のバトルロイヤル」ってことで50話ずーっとひっきりなしに戦い続けるものと思っていましたが、実は龍騎って作品イメージの割にバトルロイヤル色が意外と薄いんですね、そこは驚きました。基本的なストーリー構成は「鏡の世界(ミラーワールド)からやってきて人々を襲う怪物たち(ミラーモンスター)を仮面ライダーが倒す」という従来通りの路線で、モンスターを倒すと経験値のようなものがゲットできて各々の契約モンスター(ライダーは特定のモンスターと契約することで色と名前と力を獲得する、複数契約も可能だが育成コストが嵩み、餌に不足するとライダー自身が喰われかねないという危険を背負い込むことになる)を強化することができるシステムになっており、ちょっとゲームっぽい。1話目でふたりのライダー(龍騎とナイト)が登場し、以後しばらくはそのふたりを中心に進行していく。3人目のライダーが出てくるのは4話目、しかもラストでカードデッキをチラ見せする程度なので、本格的な出番は5話目に入ってからだ。4人目は6話(これも本格的な出番は次の7話から)、5人目が13話、6人目が15話目で、みんな大好き浅倉威(王蛇)は17話目にしてやっと出番が回ってきます。40話で本編最後となる10人目のライダー(オルタナティブは勝手につくられたライダーなので数に含まれない)が推参する。平均して4話につきひとり登場、バトルロイヤル物のペースとしてはかなり遅いです。

 てか、「13人のライダー」と言いつつ本編には10人しか出てこない! 残りの3人(ファム、リュウガ、ベルデ)は劇場版やTVスペシャル版のみで活躍する。劇場版やTVSP版は本編と一部の設定を共有しつつも、細部がいろいろと異なっていて一種のパラレルワールドというか……簡単に言うと「世界線が違う」話になっています。劇場版は開幕時点で13人中7人が脱落しており、タイムリミットの迫る中、6人のライダーが生き残りをかけて混戦を繰り広げる。TVSP版は1時間という枠(実質45分)でライダー13人全員を召喚する無茶なストーリーになっており、正直何人かは無理矢理出てきた感が拭えません。「本編には不在の3人のライダーってどういう奴らなんだ?」と気になる方であれば両方観ておくべき。特に気にならないって人は本編のみでOKだと思います。本編と直結していないストーリーって、観てても満足感が得られにくいですからね……ただ、劇場版は本編のラストを先取りしている(まったく同じというわけではないが、シチュエーション的に重なる部分は多々ある)のであかかじめ観ておくと「ああ、いよいよ終わるんだな」と感慨深くなる。TVSP版も、「本編であっさり死んじゃったあいつに出番が!」みたいな楽しみはありましたし、「ファイナルベント」「ファイナルベント」「ファイナルベント」「ファイナ(以下略)」は燃えましたが、やっぱりブチ面白いのは本編ですよ。ゾルダから王蛇までの約10話は若干中だるみしている(とはいえ14話の猿芝居には爆笑)印象を受けたものの、王蛇が暴虐を振るい始めてからは滅法ヒートアップします。王蛇こと浅倉威は徹底した粗暴犯であり、「いるだけでヤバイ」という素敵なキャラに仕上がっています。こいつが顔を出すと一気に緊張感が漲りますからね。掠れた声もセクシーで、悪役を演じるときの松田優作にも通じる魅力が発散されている。演技って点では浅倉が一番好きです。後半に好き勝手やらかす某キャラも喋り方からして不気味でなかなか素晴らしいけれど。

 タイガを冒頭でチラ見せする34話は龍騎屈指の名エピソードであり、50話の中からベストを選ぶとしたら間違いなくココでしょう。挿入歌の「Revolution」だけでもテンションMAXなのに、サバイブ(使用したライダーが一定時間パワーアップする強化カード。00で言うところのトランザムみたいなもの)を使ったライダーふたりが燃え盛る炎の中で切々と言葉を交わす。凝縮されたセリフの応酬に痺れました。コレで「あ、最後まで観なきゃ」と使命感に駆られたものです。10年以上経つのに、未だ観た人たちの間で龍騎の評価と人気が衰えないのもむべなるかな。クライマックスの畳み掛けも「しゅごい」の一言。最後まで悩み、迷い続けた城戸真司が信念を抱いて戦う。その痛々しくも力強い決意といったらもう。打ち明けますと、最終話後半の展開には(理屈としてはわかっても)やや納得の行かないものを感じる。それでも、この地点で視聴者の感情がピークへ達するよう、丁寧にうまく仕上げてきたスタッフの熱意には呻きました。今回の配信期間は約2.5週間と、それなりに長かったこともあってどうにかギリギリ観通すことができましたが、さすがに疲れた……555とか他の平成ライダーの一挙放送もあるみたいだけど、そっちはとても完走できそうにない。が、555は最初の何話かくらいは観てみようと考えています。劇場版の『パラダイス・ロスト』も気になるし。

『ケイオスドラゴン』プロジェクト始動!虚淵玄×奈須きのこ×紅玉いづき×しまどりる×成田良悟によるTRPG「レッドドラゴン」を原点に、TVアニメ化&ボードゲーム化&スマホゲー化!(萌えオタニュース速報)

 多メディア展開は絶対に狙っていると思っていたから、そういう意味では特段驚きの念も湧かない。無事漕ぎ着けることができたみたいで何より、といったところです。『ケイオスドラゴン』プロジェクトの元になった『レッドドラゴン』というのは勿論トマス・ハリスのアレ(ハンニバル・レクター初登場作品)ではなくて、一種のリプレイ本――集まったメンバーでTRPGをやって、そのプレー内容をまとめたものです。ゲーム上のストーリーだけでなく、メンバー同士の遣り取りも収録されている。「テーブルを挟んで口頭で行うRPG」ことTRPGはコンピューターゲームの進歩とともに廃れていったジャンルですが、「物語の裁量権がプレーヤーたちの手に委ねられる」ことで柔軟性に富んだ遊び方をすることができ、今でも密かに熱気のある分野……だそうです(私自身は経験したことがなく、又聞きのみ)。プレーヤーたちの掛け合いが思わぬ化学反応を起こし、誰も予想しなかった展開を迎えるなんてことはザラ。『レッドドラゴン』も、出だしは「ありふれた雰囲気の異世界ファンタジー」だったのに、プレーヤーの一人(というか虚淵玄)が裏をかくような真似をしでかして場を引っ掻き回しました。あいにく私は途中までしか読んでないのでちゃんと収拾がついたのかどうか知りませんが、こうして企画が継続しているところを見るにどうにかなったんでしょう。TVアニメは『レッドドラゴン』のストーリーをなぞることになる(メンバーの掛け合いはさすがにオミットされるでしょうが)みたいで、原作読んだ人にとっては「先の見えない面白さ」が味わえないことに不満を覚えるかもしれませんが、「アレ準拠なら大きく外すことはないだろう」という安心感は得られるはず。私も早く積読を崩さないと。

あかべぇそふとすりぃ最新作 「聖騎士Melty☆Lovers」 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! 2015年夏に発売予定!!原画は『唯々月たすく』氏!!(ニュー速VIPブログ(`・ω・´))

 シナリオは有名なライターにオファー出している、みたいな話があったけど、まさかの「おぅんごぅる」だ! 前にも書きましたが、かつて「おるごぅる」名義で数々のエロゲーシナリオを手掛けてきたベテランです。名義が微妙に変わったのは、一度引退宣言をしちゃったせいかもしれない。公然と「おぅんごぅる=おるごぅる」を認める真似はしていないが、こういう記事(「おるごぅる」が同業者のよしみで「おぅんごぅる」の新作を紹介する、といった設定で綴られているが、記事の署名は「おぅんごぅる(企画・シナリオ)」になっている)がある時点で本人もそこまで熱心に隠し通そうとしていないことは明白です。おるごぅる時代に手掛けたソフトとして『ワルキューレロマンツェ 〜少女騎士物語〜』がある(ただしピンではなく複数ライターの一人として、また本編のみであり、More&MoreやRe:tellなどのFDには関わっていない)から、起用されても特に違和感はないな。復帰作『キミのとなりで恋してる!』も面白かった(おぅんごぅる曰く「渋○凛ちゃんみたいな女の子と同棲するゲームを作ろう!というのが、きっかけでスタートした企画だったようです(笑)。」、言われなきゃわかんない、どころか言われてもわかんないくらい初志の名残がないよ!)し、これは尋常に期待できる。

 ご存知の方もおられるでしょうが、この『聖騎士Melty☆Lovers』は“○騎士”シリーズの3作目に当たり、前作『銃騎士Cutie☆Bullet』が「異様にCG枚数が少ない」という理由で急遽制作が決まった企画である。ユーザーの怒りは甚だしく、「CGを追加するパッチを早急に用意しろ」とメーカーに迫りましたが、「銃騎士のスタッフを再度集めることは現状難しい」とのことで破談。お詫びとして騎士ヒロイン物の3作目をつくり、銃騎士ユーザーに無償で配布することを約束して騒ぎは(完全にではないにせよ)沈静化しました。無償配布の詳しい手続きはこちらですが、要約すると「銃騎士のゲームディスクをゆうメールの特定記録で郵送してくれた人に『聖騎士Melty☆Lovers』と銃騎士の『パッケージ配布対応済みを示す新しいディスク』を送付する(無限交換コンボを防止するため)」ってふうになります。つまり、プレー済であっても既に中古ショップ等へ売っ払ってしまった人は「ユーザー」と見做されず対象外になるわけだ。逆に中古で買った場合は、確認が難しい(というか不可能だ)から配布対象になっちゃうんだろうな。仮に中古OKだとしても、半ば羞恥プレイに近い方法でディスクを送らないといけないみたいだから、私は素直に製品版を買うことにします。配布版と製品版の違いはパッケージの箱だけみたい。ともあれ、来年もおぅんごぅるシナリオのエロゲーが遊べるとわかったし、ホントもうワクワクするぜ。

・拍手レス。

 録画溜まってた夜のヤッターマンが意外に面白いですね・・・ガッチャマンクラウズの時もそうでしたが、意外な伏兵です。
 夜のヤッターマン、見た目に反してカッコイイOPが決まってますね。

 コアちゃんの名前は織姫じゃないですかね・・・いや、根拠は無いですが。俺の想像に過ぎませんが。
 芹ちゃんにユキねえに髪おろしたサリアさん・・・好み過ぎて困る。

 本編にはまだ出てきてないからトボけた方がいいかな、と。ユキ姉はアルドノアで一番好みなんですけれど、ポジション的にいつ死んでもおかしくないので毎回ヒヤヒヤしてます。

 そういえば森見登美彦氏の有頂天家族第二部がようやく出るそうですね!!
 森見登美彦の小説、買ってることは買ってるんですが全然読んでない……。

 弓子さん、死んだけど生きてるとか、もうね・・・ あと、予想一つ大当たり。ノートゥング全機がザインとニヒトに匹敵する力と代償とか絶望的過ぎ。冲方さんがここまで外道とは・・・前々からずっとそう思ってましたw>ファフナー7話
 まだ1クール目の折り返しを過ぎたばかりなのに押し寄せる絶望感が半端ないですね。弓子さんの呆気ない死とそこからの復活(指輪がない→肉体からして別物?)で完全にテンションが1期の頃に戻りました。ここまで心が凍えたり燃えたり気温差の激しいアニメは久々な気がします。

 これはどうも、クソの方向へ分岐するみたいですね・・・なんか、一気にモチベが下がりました>アルドノア19話
 個人的には面白くなってきましたが、スレインの顔にはもう死相しか見えない。あと2、3話で「コウモリ、還らず」になってスレイン不在のままクライマックスを迎えそう。


2015-02-16.

伝説のエロゲー「サクラノ詩」が2015年7月24日に発売決定!!登場人物・声優情報が公開 “さぁ、全てのエロゲーマーたちよ、存分に震えるがいい”(ニュー速VIPブログ(`・ω・´))

 ここからまた延期かまされる可能性は残っているけど、とりあえず発売予定日を公表する段階にまでは達したのか……非常に感慨深い。キービジュアルはすばひびを意識したような構図になっていますね。『サクラノ詩』はケロQの姉妹ブランド「枕」のデビュー作として制作されたエロゲーで、当初の予定だと2004年くらいに発売するはずだったのですが、上がってきたシナリオの内容にすかぢが満足できず、一旦白紙に戻って「開発停止」になってしまいました。その後、枕は『サクラノ詩』を迂回する形でソフトを出し続け、『サクラノ詩』に関しても何度か開発再開の姿勢を覗かせましたが、なかなか本腰を入れてリスタートする段階には至らなかった。去年ようやく本格的な再始動が告知され、やっと発売されそうな気配が漂ってきたのです。

 何せ10年以上も前の企画で、当時はワイド画面が主流じゃなかったからサンプルCGのサイズも「4:3」でしたけど、さすがにリサイズしていますね。というか、昔のCGは使われていない……? 全部描き直したのかな。ぶっちゃけ、『サクラノ詩』はそんなに注目していなかったソフトなので記憶が曖昧だ。昔の画像調べて見比べたけど、結構変わってますね。6人いたヒロインが5人になってるし……川内野優美はサブヒロインに降格か? すかぢのツイートでは「ボイス量的に言うとまったくサブでも何でもありません」「サクラノ詩は誰がヒロインで誰がサブか判断しづらいのです、構造的に……」とのことだが。企画が凍結した頃は「もし解凍されても買わないだろうな」と思っていましたが、想像以上に多くの月日が流れ去ったこともあり、ただ「懐かしい」という理由だけで購入したくなってくる。不思議。しかし、10年掛かりの大作とはいえ税抜で9880円ってすごいな……たぶん買ってもコンプできないだろう、やり込む時間の確保が難しくて。それでも、『サクラノ詩』が売れることで『陰と影』開発再開の可能性がほんの1ピコグラムでも上がるというのなら……。

・拍手レス。

 >え? 『AYAKASHI』は既にアニメ化してるだろって? し、知らないなぁ、そんなこと……  そういえば漫画化もアニメ化もされてましたね、一応。懐かしい……
 漫画版……ありましたね、すっかり忘れていました。アヤカシのデザインを担当した鳥取砂丘も最近はちょこちょこと単行本出してますね。

 次回のアルドノアは姫前決闘やるみたいなんですが、なんか子連れ狼のオマージュやりそうな雰囲気ですね・・・つか、現時点(2/9)の予想なんで当たってるかは知りませんが。
 果たしてあいつは勝算あって決闘を申し込んだのか、それとも単にスレインを舐めているのか……と考えていたら、勝算はあったのに舐めてて負けたという。

 あやかしびとアニメ化、絶対ないだろうと思いつつも妄想だけで血が滾ってきますねー。オープニングは維持で、カラオケでも歌えるようになって欲しいと切望。
 「最高ニジマス釣り!」でしたっけ。あ、そっちは替え歌だった。動く九鬼先生と加藤先生がホント見たくてしょうがない。

 うわ〜、やっぱそうきたか・・・ヤる気満々だな、冲方丁。とことん人間のクズだわwww(褒め言葉)>ファフナー6話
 ちなみに、ヘスターさんの声が変わってますね・・・
 つか、何とかなりませんかね・・・このままだと、俺が想定した中で1、2を争う「犠牲が重い」ルートへまっしぐらですな。正直、カンベンして欲しいっすよ・・・ワクテカ過ぎてw>ファフナー

 順調に四面楚歌ってきていると申しますか、絶望へのカウントダウンが始まったようで気が重くなる一方。冲方……お前はいつもそうだ、私たちの心をバラバラにする。それはそれとして「吾輩はコアである。名前はまだ無い」ちゃんと芹ちゃんの掛け合いが微笑ましくて好き。

 アルドノア18話、やっちゃいましたね〜。これ、次が神かクソかの分岐点ですよ。どっちになるんでしょうね。ワクテカです。
 「冗談ですよ」とやめた時点で「ああ、この子は最後スレインを庇って死ぬな」と思いました。エゴの足りないキャラは大抵不憫な末路を迎える……。

 ち○ぽには勝てなかったよ・・・とか、ナニやってんだアンタらはwww 一方、既に汚れてた姫様は平気だったとさ、とかw>アンジュ19話
 最近、土日が楽しすぎてしょうがないですよ・・・あ〜、腹が痛ぇw

 録画の消化が遅れていたけど、やっと18話まで進みました。目的のために上官や部下とレズってたんだよ! と吐き捨てていたヒルダがアンジュにベタベタで「真性じゃないですかーやだー」と喜びました、まる。


2015-02-04.

『うしおととら』2015年TVアニメ化決定!監督:西村聡、構成:井上敏樹、キャラデザ:森智子、制作:MAPPA & studio VOLN(萌えオタニュース速報)

 『妖怪ウォッチ』の影響なのか? はたまた天運に導かれたのか? 遥かな時を越えて今、遂にうしとらがTVアニメ化! 驚きと歓喜と不安に揺さぶられているファンの方々はひとまず置いといて、まずは概要を解説。『うしおととら』は1990年、四半世紀以上も前に連載を開始した伝奇アクション漫画です。「富士鷹ジュビロ」のモデルとしても知られる漫画家・藤田和日郎の連載デビュー作であり、現在30代から40代くらいの「かつて少年だった者たち」に多大な影響を及ぼした。少年漫画にしてはかなり猟奇色の強い内容だったこともあり、トラウマに等しい恐怖や悲哀を覚えた人も少なくないだろう。具体的には衾とか、「おまえはそこでかわいてゆけ」とか、ジエメイのアレとか。

 寺の息子であること以外はこれといって目立つところのなかった少年・蒼月潮(あおつき・うしお)が、地下で槍に貫かれて封印されている妖怪「とら」(潮が命名)と出会ったことから物語は動き出します。仕方なくとはいえ槍を抜いてとらを解き放ってしまった潮は、人々の暮らしを脅かす妖怪たちと時に戦い、時に対話して衝突を避けるべく奮闘することになる。荒々しいタッチによって紡がれる激しいバトルが読みどころの一つですが、「妖怪と人は折り合えないのか、それとも折り合っていけるのか」という問いにも真摯に向き合っており、少年漫画的な戦闘描写にまったく興味のないうちの母ですら夢中になって全巻読破したほどです。「不朽の名作」との呼び声も高く、90年代にも一度アニメ化されていましたが、いわゆるOVAであり、TVで放送される形式ではなかった。単行本だと全部で33巻、かなりのボリュームを誇るにも関わらず、OVAはたった10話。「全エピソードアニメ化」を希求するファンと、「うしとらは思い入れの強い作品だから、そっとしておいてほしい」と望むファンとの鬩ぎ合いが十数年に渡って続いてきました。私は希求する気持ちが半分、そっとしてほしい想いが半分という実に中途半端な態度でした。さすがに『からくりサーカス』が終わったあたり(2006年頃)で「藤田作品のアニメ化は望み薄だな」と諦めモードへ入ったが、2012年にJOJOがTVアニメ化したことで「ひょっとすると……?」って希望がふたたび芽生えてきたわけです。そして今、時は来た。アニメ向きではない独特のタッチ、規制が入りそうな猟奇描写、取捨選択の難しい膨大なエピソード数と、不安材料も多くて易々と楽観できる状況ではありません。しかし、まずは「潮たちにもう一度会える」ことを素直に喜びたい。幼い頃にせっせと買い集めた少年漫画類は既に相当な量を処分してしまったが、「うしとらだけはどうしても捨てられない」と大切に仕舞い込んでいるくらいには思い入れのある私なのですよ。是非1クールと言わず2クールと言わず4クールと言わず10クールくらい続けてほしい。

 エロゲーでも、10年前に発売された傑作『あやかしびと』が『うしおととら』をリスペクトしたソフトとして有名。『あやかしびと』も妖怪ネタが豊富だし、『うしおととら』が再プレイクした暁にはその流れに乗ってアニメ化しないかしら。妖怪繋がりのエロゲーというと、他にも『AYAKASHI』『とっぱら』などがあるけど……え? 『AYAKASHI』は既にアニメ化してるだろって? し、知らないなぁ、そんなこと……『怪〜ayakashi〜』あたりと混同しているんじゃないですかねぇ。下手なすっとぼけはさておき、TVアニメ版『うしおととら』のシリーズ構成は井上敏樹が務めるそうです。仮面ライダーの脚本で有名な人。常にタメ口で喋ったりして本人のキャラが異様に立っているため「全部井上敏樹って奴の仕業なんだ」などといった具合にネタ扱いされることもしばしば。今回はオリジナルじゃなくて原作付きだから、強烈な個性を発揮することはないと思われるが……。

完全新作アニメ『ARIA The AVVENIRE』制作決定!ARIA全TVシリーズBlu-ray BOXの発売も決定(萌えオタニュース速報)

 アニメ化が始まったのは2005年で、その後3年近くにわたって50話以上のエピソードが放送されました。なかなかBD-BOXが出なかったのは、単純にボリュームが多すぎるからでしょう。私はアニメ版をまったく観ておりません。これはひとえに原作が好きで、イメージが壊れることを嫌ったためです。何せ『浪漫倶楽部』どころか、デビュー作の「前夜祭」が雑誌に載った頃から天野こずえを追っかけていた古参中の古参でしたので……「どんなに評判が良かろうと、アニメ版など認めん!」と頑なになっていました。さすがに今はそれほど凝り固まった態度を取ることはなくなったので、BD化を一つの機会として観てみようかと思っています。そういえば「前夜祭」で思い出したが、『あまんちゅ』の6巻を読んだときは懐かしさのあまり胸が詰まった。階段のコマとか、構図がもろにまんまでしたからね。

 『ARIA』はもともと『AQUA』というタイトルでエニックス系列の雑誌で連載されていましたが、お家騒動が勃発し、マッグガーデンへ移籍。題名を現行の『ARIA』に変更して再出発しました。なのでこれから読もうとする人は『AQUA(全2巻)』→『ARIA(全12巻)』の順にどうぞ。『ARIA』はテラフォーミングが済んだ未来の火星、その観光地たる「ネオ・ヴェネチア」を舞台にしたSFなんですが、ぶっちゃけストーリーは特にありません。一人前の水先案内人(ウンディーネ)を目指す少女が主人公になっており、一種の成長物語と言えなくもないけれど、ページの大半がネオ・ヴェネチア観光と主人公たちの日常描写に割かれていて、事件らしい事件も起こらず淡々と始まってあっさりと終わるエピソードがほとんど。アニメ版を視聴した新房昭之は、ヤマもオチもない話がアニメとして成立していることにひどく驚いたそうだ。「他愛なさ」を大切に綴る、今で言う「日常系」のはしりかもしれません。

 しかし、アニメ版のアテナ役は川上とも子だったのか。故人ですからキャスト変更は避けられないだろうし、アニメ版のファンは複雑な気持ちだろうな。川上さんは『秋桜の空に』のドラマCDで初子役を演っていたから、連鎖的に「秋桜があのキャストでアニメ化することはもう絶対にないんだ」と思って悲しくなる。この話題は前にも書いたが、機会があれば今後何度でも執拗に言及するつもりです。

・拍手レス。

 私はガラケーでモバマスやっていた時期もありましたけど、声が無いというのはやはりもどかしかったですね…w タブー・タトゥーはシリアスとギャグの入り乱れ方が独特な漫画ですよね。普通は緊張感を損なうのでそういうのは嫌いなんですけど、あの漫画はそれが何となく受け入れられてしまうといいますか
 ガラケーだと演出も制限されてしまうそうですね。タブー・タトゥー、バトル自体はハードなのに根が明るい感じで、どことなく生活感の漂う漫画といった印象です。

 BFT16話が神過ぎる・・・
 ロマンのわからんやつはぶぶ漬けでも食っとれ!←これは関西人に同意。

 こちらは消化が遅れていてまだ15話の途中。評判を聞くと心形流の人気が高まっているみたいですね。

 今回、なかなかいいですね。スレインは伯爵殺したけど、その瞬間にあの二人が本当の意味で親子になったところが本当に秀逸だった。今まで物足りなかったけど、15話にして一気に化けた気がしますね。>アルドノア15話
 13、14話あたりは正直言って低調感が否めなかったけど、15話目にしてやっと歯車がガッチリ噛み合った気がします。状況に翻弄される一方だったスレインが、状況を乗り越えていくために肚を据えたんだな、と。


2015-01-27.

・デレアニこと『アイドルマスター シンデレラガールズ』のアニメが期待よりも面白かったせいで金曜以外は毎日「次の放送まであと○日……」と指折り数えるマンに成り果てた焼津です、こんばんは。

 『シンデレラガールズ』は原作をプレーしておらず、二次創作界隈でしか知らないんですけれど、そんなヌルいファンの私でも「ああ、○○が動いてる! ××が喋っている!」と感激してしまう。私程度でこんななら、お給料の一部をせっせと貢いできた重課金兵は涅槃の境地に達してしまうのではなかろうか。歓喜しすぎて「いま自分が生きているのか死んでいるのかわからない」と錯乱した発言をかますPまでいる。デレマス(シンデレラガールズの数多ある略称の一つ、他に「モバゲーのアイマス」という意味でモバマスやモゲマス、中にはシンデマスなんて略称も)のことを知るには原作をプレーするのが手っ取り早いだろうが、残念ながらスマホを持たぬ身ゆえやりたくてもできませぬ。「いっそデレマスのためにスマホを買ってみては……?」という気持ちが湧かないでもないが、買ってもたぶんそんなに時間割けないだろうし、やっぱり二次創作界隈の渉猟をメインにするつもり。二次創作とはちょっと違うけど『モバマス実録』みたいな実録モノも面白いですね。namoのコミカライズ『アイドルマスター シンデレラガールズ ニュージェネレーションズ』も読み返したくなってきた。ニュージェネレーションズ(渋谷凛、島村卯月、本田未央のユニット名)を主軸に据えている点ではアニメと一緒だが、例の強面Pは出てこないし、凛と卯月の出逢う過程も異なる。あくまで「アニメとは別物」ながら、たった2冊という限られた分量の中でシンデレラガールズの魅力をガンガン伝えてくれる。うづりん要素濃厚なのも嬉しかった。

真じろう『タブー・タトゥー』アニメ化企画進行中!(萌えオタニュース速報)

 私の中では「尻がエロい漫画」として知られているアレが遂にアニメ化か。具体的にはこんな感じです。本編中にも尻にこだわったとおぼしき絵が随所に配置されている。作者の真じろうは『Fate/Zero』のコミカライズで有名ですが、開始は『タブー・タトゥー』の方が先です。確かZeroの1巻目が刊行された頃にTTの4巻が出たような……連載2本抱えるのはキツいけど、Fate好きだから引き受けた、みたいな話でしたね。連載デビュー作の『ゾディアックゲーム』から「明らかにFateの影響を受けている」と言われ続けてきたが、『タブー・タトゥー』自体はFate色が若干薄め。一種の超能力バトルですけれど、肉弾戦要素も強くてアクションに見応えがあります。ダメなバトル物にありがちな「何がどうなっているのか、画面をよく見てもわからない」感じがなくて、「動き」がキチンと伝わってくる。反面、ストーリーは入り組んでいて話が動いているのかいないのか、ちょっと判じがたい調子で盛り上がりに欠けますけれど……掲載誌の“コミックアライブ”は連載陣の大半がライトノベルやアニメ、ゲームなどのメディアミックス作品で占められており、オリジナルでそれなりの巻数に達しているものはほとんどなくて、消去法的に決まったのではないかと考えられます。TT以外だと、オリジナルの弾はもう『アイリス・ゼロ』くらいだな。最新刊が3巻の『ゆめくり』もギリギリいけるか? 『くだみみの猫』はまだ2巻だから難しいだろうな。っていうか、くだみみがアニメ化したら絶対に「いぬぼくの2期?」と言われるでしょう。何せ「影響を受けている」レベルではなくて、知らない人に見せたら藤原ここあの新作かと勘違いされそうなゾーンに達していますもの。むしろ今月単行本が出る『ブレンド・S』の方が先にアニメ化されるかもしれませんが。

玉木宏、天才探偵役で堂本光一と初本格共演!島田荘司「御手洗潔シリーズ」初映像化

 あれ? 御手洗の映像化って初めてなんだ。『火刑都市』とか、映像化されている島田荘司作品はいくつかあるからとっくになってるかと思ってました。“御手洗潔(みたらい・きよし)”シリーズは開始が1981年で、関連作も含めると30冊以上あります。文庫だと1000ページ近い『アトポス』など、メチャクチャ長い割に探偵役の御手洗潔がなかなか出てこない作品もあって映像化にはあまり向いてなかったんですよね。今回ドラマ化される「傘を折る女」は『UFO大通り』に収録されている短編で、今後続編が制作されるとしても短編メインになりそうな気配。島荘は私にとっても思い入れの深い作家で、この人の小説がなければミステリにはハマってなかっただろうと言い切れるくらいです。原作に興味がある人は刊行順に読むことをオススメします。基本的に一話完結式のエピソードばかりだけど、最近の作品からいきなり読み出すとキャラ配置がわかりにくい可能性もある。『異邦の騎士』という作品が「御手洗潔の最初の事件」になっている(この作品の原型となった小説が島田荘司の処女作)ので、時系列順にこだわる方はここから読み始めるのもアリですが、御手洗シリーズは時代が行ったり来たりするので全部時系列順に読もうとするのはキツいというかあまりオススメしません。個人的に好きなのは2冊目の『斜め屋敷の犯罪』です。

『ご注文はうさぎですか?』TVアニメ第2期制作決定!(萌えオタニュース速報)

 発表は時間の問題だと睨んでいた。きらら系の日常アニメとしては『けいおん!』に次ぐヒット作(規模にだいぶ差があるけど)だっただけに、続編が来るであろうことはほぼ確実視されていた。2期に焦がれていたファンたち、通称「ごちうさ難民」は無事救済される見通しが立った。一方、『Aチャンネル』『ゆゆ式』の2期を待ち望む者たちは依然として六道ヶ辻を彷徨っているが……難民というよりアハスヴェールの群れ。ともあれ、きらら系で2期目以降が来るのは『ひだまりスケッチ』、『けいおん!』、『きんいろモザイク』と来てこれで4本目ですね(よく間違われるけど『のんのんびより』はきらら系じゃありません)。『きんいろモザイク』と『ご注文はうさぎですか?』は両方ともきらら系4コマ誌の一つである“まんがタイムきららMAX”に掲載されており、ここ2、3年MAXの表紙はきんモザとごちうさのヘビロテ状態と化しています。文字通り2枚看板。きらら系で今話題になっているのは「がんばるぞい」こと『NEW GAME!』3月に2巻が出ます)ですが、これもアニメ化するところまで行くのだろうか。ちなみに私が楽しみにしている新作は器械の『スクール・アーキテクト』です。

・拍手レス。

 前の日記でひめしょ!の話題が出てたので。あんな笑えるド下ネタゲーは初めてでした。懐かしい。ディスクレス起動不可だったんで手放せず、まだ持ってます 笑
 アンケートハガキ送ったら全員プレゼント、のお返しディスクもまだ持ってます。2月発送予定だったのに届いたのが10月でしたっけ。用語集は重宝した記憶が。あと制作と営業の確執みたいな裏話も……。

 アルドノアは1期ラスボスの合体ロボが欠点だらけであんま強くなかったイメージしか・・・
 にんにく姫やイン子はぐうかわなんですけどね・・・ただどっちも池沼皇女が目覚めた後は不幸になる予感しかしない、という

 合体ロボには「マーシャルチャンピオンのサラマンダーかよ……」と呆れた記憶が。とりあえずお姉ちゃんが生き延びますように、と祈りながら観てます。

 公開フ○ラとか、今回もやりたい放題ですね・・・ここまで汚れた姫ヒロインにエロゲ以外でお目にかかれるとは思わなんだ>クロスアンジュ14話
 最初は「クリムゾンの同人誌っぽい」とか思っていたけど、最近は「同人誌よりもフリーダムだな」という感想に。

 平井和正氏は残念でしたね。賭博と宗教で駄目になった作家の1人ですが、それでも完全な破滅に至らなかっただけでも良かったと思うしかありませんね。作品の方は既に10年以上前に完全に見限っていたんですが、それでも時代の変わり目を意識せざるを得ません。
 幻魔はいろいろとアレだけど、ウルフガイあたりは今読んでも面白いし、初期作周りはもっと再評価されてもいいと思います。追悼特集しようにも並べる本が書店にないだなんて、そんなのいくら何でも……。

 火星のカタクラフト自体はそんなに強い機体じゃないですよ。アルドノアドライブの高出力と、それにモノを謂わせた特殊兵装がチートってだけで。最初から、それは徹底して描写されてますよ。主人公の無双も、相手が舐めプしてる隙と不馴れな環境を利用して凌いでるだけで。わりとその辺は良く書けてると思いますけど。問題は戦術がお粗末な事と、無意味で洗練されてないメカのセンスだと思いますけど。
 あくまでイナホ中心で進めるせいもあってか戦術が縛りプレー的になりがちですね……鞠戸大尉が有能さを発揮して別働隊率いて補うとか、そういう方向でもないし。


2015-01-20.

【訃報】SF界の巨匠、平井和正氏死去「幻魔大戦」「ウルフガイ・シリーズ」「8マン」など数々のヒット作(軍事・ミリタリー速報☆彡)

 あの平井和正が……確かにここ数年どうしているのか情報が伝わってこなくて不安を覚えていたけど、まさかの事態に絶句して呆然。SF作家としてデビューしたものの、肝心の原稿料が正気じゃないほど安くて食っていけず、仕方なく始めた漫画原作の『8マン』がヒットして即アニメ化し有名になりました。ちなみに『8マン』の「8」がフジテレビを連想させるということでアニメ版のタイトルは『エイトマン』に変更された。『狼男だよ』改竄事件を経て、紆余曲折の末に始まった“ウルフガイ”シリーズでブレイクを果たし、70年代および80年代を代表する娯楽小説家の一人となります。しかし、途中から宗教色が強くなって「あっち側」の領域に達してしまったため、疾風怒濤のスピリチュアル・ストーリーテリングに付いていけなくなったファンが脱落し始めます。90年代頃はまだ僅かながら勢いが残っていたけれど、00年代以降は書店に著作が並ぶことも少なくなり、活躍の場を電子書籍へ移していきました。『幻魔大戦』等はいろいろ設定を変えて延々と続いていたのですが、結局『幻魔大戦deep トルテック』が最後の作品になった模様だ。過激なバイオレンス描写とセックス描写が目立ち、好悪の分かれる作風ではあったが、根底にはレイモンド・チャンドラーを愛するハードボイルド魂があった。彼が「あっち側」に行ってしまった理由の一つは麻雀だった(「ツキ」や「流れ」の概念を合理的に説明できず、神秘主義に傾倒していった)そうで、世が世なら咲ヲタとして開花していたかもしれません。高橋留美子の大ファンということでも知られていたことを振り返ると、あながち冗談でもない。現在新品で入手できる著書はほとんどなく、読もうとすれば古本か電子書籍に頼るしかない状態である。紙媒体フェチとしては是非とも代表作群の復刻を願いたい。ちなみに私が初めて読んだ平井作品は『月光魔術團』でした。「地獄の蜷川」という二つ名が印象的で、黒歴史ノートに「地獄の皆川」というパクリヒロインを書いてたっけ。

 2009年に出た『幻魔大戦』の文庫版に寄稿したのが「物書きとしての平井和正」に関する最後の足取り。寄稿された文章には「今自分が書いている『幻魔大戦』の話」が書かれていたそうで、トルテックの後も書き続けるつもりだったんだろうな……合掌。

冬が舞台の名作エロゲと言えば 一般人「Snow」 ゆとり「はつゆきさくら」 ニワカ「ホワイトアルバム2」(2次元に捉われない)

 あまり本編に冬っぽさはないけど『Dies irae』も一応季節は冬なんですよね。冒頭、屋上で司狼と殴り合うあたりが10月で、蓮が退院するのが12月。クリスマスムード一色に染まる街で、ナチスの亡霊どもが蠢く常軌を逸した世界へ引きずり込まれていく。ギロチン痕を隠すためにマフラー巻いてますが、あれ夏だったら暑いし目立つしで大変ですよ。逆に香純とかの穴開き制服は寒そうだが。名作エロゲ、と言えば『同級生』も本来は冬の終わり頃(卒業シーズン)を舞台にした話だったそうですね。急遽企画が変更されて夏になったけど、一部訂正が間に合わず妙に厚着しているキャラがいたり、パッケージが卒業写真のイメージだったり。ちゃんと冬っぽさがあるのは『俺たちに翼はない』。「学園」ではなく「街全体」が舞台だから、目一杯冬らしさを堪能するにはオススメ。

・拍手レス。

 艦これは元のゲームで確定している設定がほとんど無いので、逆に脚本家の力量次第では如何様にも面白くできそうな素材だと思うのですけどねぇ。まぁファンの目もあるので難しいと思いますけど、そこは開き直ってほしかったかなと
 やっぱりキャラクターとしての提督は出してほしかったな、と。個人的なイメージとしては後藤喜一みたいなタイプ。

 アルドノアがイマイチなのは、御大と高山カツヒコ氏の相性が悪いのではないかと邪推。複数人脚本だったサイコパスやガルガンティアは悪くなかったですし。
 ニロケラス(トリルラン)以降の火星騎士があまり強そうに見えないのが難点なんですよね……ハッタリの利かせ方次第でもうちょっと盛り上がるのではないかという気もするんですが。

 平井和正氏の訃報が…
 結局、幻魔大戦もアダルトウルフガイも未完になりましたね……予想していたこととはいえ、寂しい。


2015-01-15.

第152回「芥川賞」は小野正嗣氏の『九年前の祈り』 「直木賞」は西加奈子氏の『サラバ!』(オリコン)

 やっぱり『サラバ!』か。以前の直木賞は「高齢の選考委員が『長い話を読むのはしんどい』とばかりに大長編モノを落としてきた」と囁かれるくらい分冊作品が鬼門となっていましたが、最近はそうでもなくて『等伯』みたいに上下巻でも割とあっさり受賞するようになりましたね。ただ、全体的に弾が不足気味というか、候補作一覧を眺めて「今回はこんなのが来たか!」とワクワクすることは少なくなってきた気もする。四六版(ハードカバー)の文芸書って、今はごく一部を除いて恐ろしいくらい売れないそうです。直木賞の選考対象は特定出版社の四六版作品オンリーだから、どんどん土壌が痩せ細って振興しようにも既にだいぶ枯れてきているという……売れる作品は気絶するほど好調なのに、売れない作品は失神するほど不振、凄まじい勢いで二極化が深刻になっている。現在はソフトカバーの、どちらかと言うとライトノベルに近い作品群の方が元気です。具体的に言うと『ニンジャスレイヤー』とかあのへん。メチャクチャ売れてる、というほどではないにしろ、ハードカバー作品に比べて割安感があるのか比較的調子がイイ雰囲気。てか増税の絡みもあってハードカバー作品の割高感が前より強くなっている。ハードカバーが売れなくて文庫書下ろし主体に切り替えている作家もおり、文芸書の厳しさはいよいよマックスに達しつつあるか?

エロゲ売ってる店って少ないよな(2次元に捉われない)

 エロ本やDVDがメインのアダルトショップでちょこっとオマケ程度の取り扱いをされていたりするけど、きちんきちんと毎月の新作を取り揃えるようなタイプの店は地元じゃ完全に死滅しましたね。10年くらい前まではまだ残ってたかな。今はネット通販が充実しているから特に困らないけど、発売日にいそいそと出かけるあの昂揚感は久しく味わっておらず、ちょっと寂しい気がしないでもない。エロゲーやり始めた頃とか、ドキドキしながらパッケージを手に取って矯めつ眇めつCGやら説明書きを眺めたものだったが。最近始めた人の中にはDL販売オンリーで、実物のパッケージに触れたこともないユーザーなんてのも存在するんでしょうね……彼らはクソデカいエロゲーの箱が所狭しと並ぶあの光景を肉眼で目にすることはないのだろう。時代の流れというものか。

・冬アニメもいろいろ始まりましたが、あまり無闇に本数をこなすのではなくある程度絞って観ていく方針です。具体的には『蒼穹のファフナー EXODUS』『ユリ熊嵐』『アイドルマスター シンデレラガールズ』『艦これ』あたり。クロスアンジュやアルドノア・ゼロなどの続きも含めて週10本前後に抑えたい。

 『蒼穹のファフナー EXODUS』は2004年、今から10年以上も前に放送されたアニメの続編です。ファフナーには本編のほか前日譚に当たる特別編『RIGHT OF LEFT』や後日談を紡ぐ劇場版『HEAVEN AND EARTH』があり、作中の時系列に沿って並べると「RIGHT OF LEFT→本編→HEAVEN AND EARTH→EXODUS」ってふうになります。作中の年号はROLが西暦2145年、本編が2146年、HAEが2148年、EXOが2151年――なので今やってるEXODUSは本編から5年後、劇場版から3年後の出来事ってことだ。本編のキャラも引き続き登場するうえ、劇場版で追加された新キャラも継投するため、新規に入ってきた視聴者や本編しか観ていない視聴者は混乱するだろう。劇場版を2回観た私でも最初「えーと、こいつが西尾姉弟の下の方か……」といちいち確認しないと頭に入ってこなかった。「フェストゥム」という意思疎通が困難な宇宙人に侵攻され滅亡間近まで追い込まれた人類が「ファフナー」という巨大ロボットとそのパイロットに希望を託す、SFアクション。パイロットは若年層ばかりだけど大人たちもちゃんと防衛のために働いているし、「子供たちを戦わせること」についても内心忸怩たる想いを抱いている。「世代を超えた繋がり」がうまく活きている話です。一応本放送でも前半部は観ていたけど、最終回までキチンと視聴したのは3年くらい前だから、古参のファンほど「メチャクチャ懐かしい」という気分は味わわなかった。それでも馴染みのある連中に再開できてジーンとした。アニメのクオリティは上がっているし、声優の演技も格段に上達していて、これは予想以上に素晴らしい。総士の思わせぶりな語りにハラハラさせられる部分もあるが、是非ラストまで付き合いたい。でも続き観るのが怖い気持ちも……。

 『ユリ熊嵐』は『少女革命ウテナ』や『輪るピングドラム』を手掛けた幾原邦彦監督の最新作。ある日一斉に知性を持って連携し始めた熊たちと、それらに喰われまいと必死で壁を築いて防衛する人間たち――という図式だが、ハッキリ言って1話観ただけではストーリーがよくわからない。熊は人間、それもうら若き乙女を食べたいと願っていて、人間社会に紛れ込むため「なりすまし」までするのだけど、なぜか自身も美少女になって百合百合しい空気を醸し出す。「食べる」が文字通りの意味なのか何かの比喩なのか、現時点ではいまひとつ判然としない。頻繁に繰り返されるフレーズのひとつ、「透明な嵐」も何を指さんとしているのか謎だ。表面的に受け止めれば「目に見えない同調圧力」とか「根拠のない差別意識」といったふうになるのだが……わけわからないなりにも観ていて楽しい、というか気持ちイイので、意味不明でも最後まで付き合うつもりです。

 『アイドルマスター シンデレラガールズ』はモバゲーによるソーシャルゲームをアニメ化したもの。『アイドルマスター』の派生企画であり、アイマス本編とも繋がっているけどあくまで緩いリンクに留まっており、密接な関係はない。知ってても知らなくてもOK。元のゲームでは総勢200人を超えるキャラクターがアイドルとして登場してくるが、さすがに全員出すとなると何クールあっても足りないのでアニメ版は「14人の少女がアイドルデビューを果たすシンデレラストーリー」として構成されています。アイドルを目指している島村卯月、街でスカウトされてきた渋谷凛など、ヒロインの立ち位置も微妙に異なる。が、一番の特徴は「プロデューサーが出てきた」ことですね。P(プロデューサー)はプレーヤーの分身であり、間接的にヒロインたちの口から「Pがこんなことを言った」みたいに示すセリフはあっても、P本人のセリフは描かれていない(私はゲームやってないから知らないが、たぶんそのはず)。なのでPが具体的なキャラクターとして出てきたらファンたちの思い描くデレマス世界は崩壊してしまうのではないか……と危惧されていたが、実際にPが登場するとあまりに際立った個性(三白眼、ガタイが大きい、声が渋い、顔が厳つくて基本的に無表情、口数が少なく朴訥とした性格)で話題になって、一夜にして人気キャラと化した。担当する声優もほとんど無名の新人であり、まさにリアルシンデレラストーリー。下手するとアイドルよりPの方が大人気になりかねない。また、かつてLeafで『雫』や『痕』、そして『To Heart』のシナリオを手掛けたことで今も30代エロゲーオタの間で伝説的な存在となっている高橋龍也が今回シリーズ構成に加わっています。高橋は2011年放送のアニメ版でも脚本家として何話か担当しており、2014年の劇場版でも脚本に参加しているから既にファンの何割かには認識されていましたが、シリーズ構成に関わるのはこれが初。「Pのキャラクター構築は高橋の寄与するところが大きいのではないか」「さすが藤田浩之というアイドルを生み出した男」と再評価の機運が高まっているとかいないとか。1話から3話までは高橋脚本回の模様です。それにしても、「藤田浩之」という文字列を見ると「てんでん・はおじぃ」とルビを振りたくなるあたり『既知街』の呪縛は重く深い。

 『艦これ』は同題ブラウザゲームをアニメ化したもの。海の底からやってくる正体不明の化け物たちを、「艦娘(かんむす)」と呼ばれる武装少女たちが撃退する、言うなれば特撮みたいなノリの話。膨大なキャラクター数とそれらを支える詳密な設定、そして実在した艦艇とリンクする部分があるなど、随所に盛り込まれた「気配り」と「遊び心」が肝である。言い換えれば枝葉ばかりが茂っていて幹や根の存在は不透明となっており、「艦娘の存在する世界で、鎮守府以外の人間たちはどうしているのか?」など俗世間の描写、いわゆる「世界観」の類がまったく伝わってこない。そもそも艦娘はどういった過程で生まれるのか? 志願制なのか、徴兵制なのか? 地域ごとに適性検査でも受けるのか? 装備(艤装)はどういった基準で割り当てられるのか? 艦船名はコードネームか何かで、別に本名が存在するのか? 給金は出るのか、出ないのか? 保護者との連絡は取らないのか? あるいは艦娘って全員孤児なのか? なんでみんな制服があんなにバラバラなのか? 考えれば考えるほど「艦これワールドとは如何なる世界なのか」がわからなくなる。艦娘が海をどうやって移動するのか(つまり、泳ぐのか、浮かぶのか、飛ぶのか、水面を走るのか、サーフボード類に乗るのか)さえ原作じゃ不明確だった。これをアニメという映像媒体に移すのは相当ホネだろうな、と予想していたし、案の定多方面からツッコミの入る結果になった。ファンは自分の好きな艦娘が画面に映ればそれで充分というスタンスで、放送時の実況はまるで運動会の保護者席みたいだったと語られています。「提督」というプレーヤーの分身に当たる存在も画面には出てこず、おかげでただ単純にわかりにくい(主人公である吹雪と提督の会話が丸きり端折られており、いきなり場面転換し戸惑うことも)。少なくとも性別が男であったことは確定だったアイマスのPに対し、艦これの提督は性別も年齢もまったく不明で「女性提督」や「ショタ提督」、果ては「猫提督」やら「犬提督」やら人外提督まで想定される始末だったから、万人が納得しうる提督像を生み出すことは至難を通り越して無理ではあった。あ、ちなみに私が好きなのは松竜提督です。世界観の曖昧さ、そして原作のイメージを壊すまいとする制約の多さゆえか不自由なつくりになってしまったが、率直に申せば「思ったよりは良かったな」と。もっとまとまりに欠いた悲惨な出来になるのではないかと危ぶんでいたため、ツッコミどころは多いにせよ充分及第点と言えます。「これなら最後まで観てもいいかな」と思える程度には魅力の残る仕上がりでした。それにしても兼役が多いアニメで、次から次へ別キャラを演じる声優陣(特に佐倉綾音、驚きの八役兼務)には笑ってしまった。

 まとめると、一番「続きが観たい」と願うのはシンデレラガールズですね。ファフナーも期待度は高かったし、それに充分応えてくれる出来ではあったが、正直続きを知るのが怖いというか不安というか……愛着の湧いてきたキャラが戦死するのではないかという、1期目後半で常に感じていたあの落ち着かない焦燥感が今回も絶えず付き纏ってきそうで。細かいことはどうでもいい、ただ単に観ているのが楽しい、ってのが『ユリ熊嵐』。『艦これ』はアニメ放送自体が一つのイベントであり、一種のお祭り騒ぎとして楽しみたいかな。デレマス(シンデレラガールズ)は卯月と凛それぞれの可愛さ、そして濃厚なうづりん空間に満足したが、やっぱりPの存在感は外せないですね。世間ではレッドショルダーだのゲシュペンスト・イェーガーだの朽ちた殺人鬼だの執行官だの装甲悪鬼だのマージナル・オペレーションだのと無茶苦茶な言われようだが、ゴツイ顔に似合わぬ純朴そうな振る舞いはある種のギャップ萌えを誘発する。これで仕事になるのかよ、みたいな不安もあるが、陰でアイドルを支えつつ自身も成長していく青年になってほしい。ちなみに私が真っ先に連想したのは黒円卓の天秤さんでした。「俺を逮捕するならあと二十万は警官を持ってこい」 しかし、あのPの愛されぶりは川村ヒデオに通じるものがあるな。まさかヒデオが神霊班をやめた後でプロデューサーに転向した……? あるいは「もしヒデオが神霊班に就職しなかったら」というif?

・拍手レス。

 ホロウ10年前・・・時の流れを実感します。当時からお世話になってます。
 ついこないだ移植版が出たり、UBWのアニメやってたりで、時の流れを感じにくい部分もありますね……。

 田中ロミオの同人誌といえば、最果てのイマの設定資料集(同人)発売当時スルーし、品切れ、プレミアム化で買えなかった思い出があります。フルボイス版が出た時に再販されると思ってたんだけどなー。真完全版が出た時に再販すると信じてます。
 ラフ原画集ですね、ロミオが「原形行使者」って短編を寄稿した奴。フラン陵辱の落書きが印象的でした。イマの真完全版……出るといいですねぇ(銀河系の彼方を見遣りながら)。

 不可能を可能にするラブホとかwww 嫁の絡まない福田が如何に有能かが思い知らされますなw>クロスアンジュ14話
 福田監督はやたらとSEED関連で悪評が聞こえてくるから「そんなにひどいのか?」と身構えていたけれど、蓋を開けてみるとしっかり面白くて安心しました。大雑把な部分も多いにせよ、そこも味になっている。

 2期1話もなんかやる気無くて、というか、1期の途中からパワーダウンしてて、ずっと「虚淵ヤル気無いな」とか思ってたんですが、4話から脚本家が別人になってた事に今更ながら気が付いた・・・馬鹿だ、俺>アルドノアゼロ
 鎧武で忙しくて抜けちゃったそうですね。虚淵は筆の遅い点が脚本家としてはネック。関わったアニメ作品のうちシリーズ構成と全話脚本をピンでやり切ったのは今んところまどかマギカだけ。しかもあれ脚本執筆に1年掛かったそうですし。


2015-01-09.

『田中ロミオの世相を斬らないセットBOX』がとらのあなで予約開始していたので今度は忘れずにポチった焼津です、こんばんは。

 田中ロミオが今は亡きエロゲー雑誌“PC Angel”(および“PC Angel neo”)に連載していたコラム「世相を斬らない」を文庫にまとめたものです。ISBNを取得していない(JANコードはある)ので扱いとしては「同人誌のようなもの」になる。ただし、とらのあなでは「コミックス・書籍」のカテゴリで取り扱っているため、「同人誌」で検索しても出てきません。前は「PCゲーム」カテゴリにあったんですよね、確か。扱いがころころ変わるので本当に情報が追いにくい。セットBOXなので当然ながら全1冊ではなく、無印と烈の全2冊に分かれています。前編に当たる無印は2013年の夏コミで販売され、後編に当たる烈も2014年の夏コミで販売される……予定でしたが延期となり、同年の冬コミにやっと発行されました。私は去年7月に初めて単行本化されている事実を知って、中古屋で無印を定価の9倍くらい払って買ったんですよ……いずれ再販されるだろうとは睨んでいたが、それまで我慢することができなかった。

 セットBOXは先着順で特典(書き下ろしSS入りリーフレット)も付きますが、特に欲しくない、という人はバラで購入した方がオトクです。『田中ロミオの世相を斬らない 【再販】』『田中ロミオの世相を斬らない 烈』、それぞれ500円プラス税なのでセットBOXより200円くらい安い。既に無印を手に入れていて、烈だけ買えればいいや、という人もこちらからどうぞ。買い逃した挙句プレミア価格に手を出さざるをえなかった私はその悔しさを晴らすためにBOXひとつとバラ売りそれぞれ1冊ずつを購入するつもりです。

 コラムの内容についても触れておこう。コラムと書いたが、業界の裏話めいたものがある一方、登場人物が何人か出てきてストーリーらしきものもあって……と、コラムっていうよりショートショートみたいなノリの話もあって、虚々実々というか虚実皮膜というか、ウソかホントかは読者が判断してくれ、といったテイストです。同じP天で長期連載されていた大槻涼樹のコラム「北の国から」と相通ずる部分はある。ちなみに田中ロミオと大槻涼樹が対談した号もありました。興味深い話を一個引用しますと、「シナリオ量の話」。エロゲー業界ではシナリオのボリュームをページ数や原稿用紙の枚数ではなくKB(キロバイト)、つまりPC上の容量で伝え合うのが通例になっています。余談だがエロゲー声優界ではセリフの量を表す「ワード数」が一般的な尺度として用いられているらしい。これはシナリオライター(外注)がKB幾らで仕事を引き受け、声優はワード幾らで仕事を請けるからだと思われる。文庫本1冊が300KBというのはファミコン時代からの常識だ(1MBが文庫3冊分相当、と言われていた)が、通常のエロゲーは1.5MB〜2.0MB程度のシナリオが必要とされるため、これを一人で書き切るのは辛い。乏しいkb数でユーザーの要望に応える策として発案されている「セリフだけでシナリオを構成する」というアイデアは、フルボイスが基調とされるエロゲーなればこそ実現可能となる。全編セリフだらけなら、なるほど「声優がそれを発音する時間=プレー時間」となり、地の文に力を割くよりもずっと見せかけ上のプレー時間を多くすることができます。ドラマCDをテキストに起こすと案外少なく感じられるのと理屈は一緒だ。しかし、それが「エロゲー特有のだるさ」に繋がっている(たとえば「セリフの鸚鵡返し」が多用されるのは明らかにセリフ主体シナリオの弊害だろう)部分もあり、一筋縄ではいかない問題となっているわけです。

なんで18禁のエロラノベって流行らないんだろね(2次元に捉われない)

 俗に「ジュブナイルポルノ」と呼ばれるアレですね。昔「ナポレオン文庫」ってレーベルがあったっけ。理由の一つは「アニメ化しないのでどうしても知名度が低い」ということでしょう。とにかく「知られていない」点がネックになる。そういうのが存在していることを漠然と知っている層でも、具体的な作品名は一切思い浮かばない……ってケースが多々あります。なぜアニメ化するような話題作が出てこないのか? 商売の性質上、単巻物が多くてシリーズ作品がほとんど存在しないからです。「あとみっく文庫」あたりを見るとシリーズ化している作品もいくつかありますが、それでもせいぜい3巻くらいまで。さかき傘の『思春期なアダム』はジュブポルにしては珍しく6巻目まで刊行されましたが、どんな事情があったのか7巻目が出ないまま3年以上経っている。ジュブポルは章ごとに濡れ場が要求される構成になっているため、どうしてもストーリーが添え物になりがちだ。しかも「複数のヒロインがいる」ことを売りにするとなるとキャラの魅力をひとりひとりじっくり掘り下げていくのは当然困難であり、「わざわざ続き物にするよりも毎回キャラと設定を取り換えた方が効率的」っていうエロ漫画と同じ状況に直面してしまう。せめて菊地秀行のバイオレンス作品程度のエロさでOKならばもう少し幅が広がるのだろうが、読者のニーズを考えるともっと濃い目の描写が必要になるわけで、やっぱりストーリーは二の次にならざるをえない。ジュブポルにおいて物語は「面白いこと」よりも「エロを邪魔しないこと」の方が優先されるのです。前向きに言うなら、ジュブポルにおけるストーリーとはエロとエロを繋ぐ架け橋なのだ。そして最後の理由としては、「エロ業界全般が衰退傾向」っつー身も蓋もない現実が……。

 アニメ化やシリーズ化など、話題性と継続性を強めるには「一線を越えそうで越えない」、絶妙な寸止め感を駆使するギリギリ系ライトノベルの方が有利になります。ジュブポルって、エロゲーで言うとシナリオ重視とか萌え系とかじゃなくて「ヌキゲー」と呼ばれるジャンルに近い世界なんですよ。流行り廃りと関係なく常に一定数のコア層が付いていて「天井は低いかわり爆死もなく、仕事として成立させやすい(わかつきひかる談)」。ユーザーの欲望を充足させることが第一であり、発展性の高さよりも完結性の高さを尊ぶ。その潔さは評価したい。数年前に買った『お姉ちゃんは3歳児!?』とか、無理はあるしバカバカしいんだけど「たまにはこういうのもいいよな」と思いました。「月島」姓の主人公が出てくる『生徒会長姉妹を毒電波で堕としてみた』は「おいおい『雫』かよ」と笑ったが。

10年前に発売されたエロゲ(それなんてえrg`・ω・´))

 2005年は個人的に当たり年だったと記憶しています。具体的なタイトルを挙げると『あやかしびと』『車輪の国、向日葵の少女』が発売された年ですね。私が車輪をやったのは翌年以降だ(冒頭のみちょびっとプレーして後はずっと積んでた)から年末ランキングには入っていないけど、それでも候補が多くてベスト10を選ぶのに苦労した覚えがある。『Fate/hollow ataraxia』とか、普通の年だったら上位を狙える出来なのにランク外でしたからね。『SWAN SONG』、『最果てのイマ』、『パルフェ』、『つよきす』と、本当にドッと傑作の波が押し寄せた一年でした。そのへんに比べると知名度はいまひとつ低いけど、『ひめしょ!』や『刃鳴散らす』も夢中になれるソフトであった。『ひめしょ!』のメインライターを務めた藤崎竜太は後年“グリザイア”シリーズの企画に加わり、『刃鳴散らす』の奈良原一鉄は巨編『装甲悪鬼村正』を手掛けることになるわけで、みんなもっと注目しておくべきだったと思います。というか今からでも遅くない。まだの人はひめしょとハナチラやりましょう。

・拍手レス。

 『なれる!SE』は、大好きで読んでますが 『慣れる!SE』解釈はすばらしい感服しました
 アニメ化したら絶対「やれる!」みたいな同人誌が出るだろうな、と思いながら新刊を待っています。

 グリザイア、悪くはないですよ。正月休みとか利用して消化しておくことをお奨めいたす。UBWは4月が待ち遠しいです。
 グリザイアはダイジェスト感がすごいので先にゲーム版やっとこうかな、と。UBWは最後に麻婆の活躍が見れて嬉しかった。

 エロゲはラノベに行ったりする人とかがいる中で何だかんだで結構出てて昨年も中々楽しめましたね。
 知らないブランドが多くなってきたし、情報を追い切れない部分もあるけど、やっぱりプレーしていて楽しいと感じますね。


2015-01-01.

・大晦日に更新するつもりだったけど、PCの調子が悪くて梃子摺っているうちに『憑物語』の放送開始時刻が来ちゃって更新作業を諦めた焼津です、あけましておめでとうございます。

 何ヶ月か前(調べたら去年の6月だった)に「HDDが変な音立ててる、逝きそう」ということをお伝えしましたが、あれから異音が収まってきたので物臭な私は新PCに移行せぬまま旧PCを騙し騙し使っておりました。しかし、たまに起動にコケることもあって「やっぱダメかな」と薄々感じていたところ、年末に差し掛かって一層絶不調に。ダウンロードしたCrystalDiskInfoでチェックしてみると「代替処理済のセクタ数」の生の値がみるみるうちに上がっていく。まだ「注意」の段階ですが、ここから好転することはないでしょうしいよいよ寿命が近づいてきた印象です。今使ってる旧PC、買ったのが2009年12月だから丸々5年ですね。長く保った方ではある。が、やっぱり移行するのは面倒臭いな……そんな愚痴を呟きつつ、去年一年をザッと振り返ってみる。

 去年も有名人の訃報が多くてしんみりしましたね。高倉健と菅原文太の死が立て続けに報じられた時期は呆然としてしまった。作家は坂東眞砂子、山本兼一、大西巨人、ガルシア=マルケス、渡辺淳一、ダニエル・キイス、P・D・ジェイムズ、水玉螢之丞、香月日輪など。このうち坂東・山本・水玉・香月の4人は50代で亡くなっており、「早すぎるだろう」と嘆かずにはいられなかったです。

 明るい話題に目を向けると、カタケンこと片山憲太郎の復活。やはりこれが大きい。第3回スーパーダッシュ小説新人賞「佳作」を受賞した『電波的な彼女』(応募時のタイトルは『電波日和』)で2004年9月に彗星の如くデビューしたライトノベル作家、それが片山憲太郎であります。1973年生まれなので当時31歳くらい。やや遅筆ながらも順調に新刊を積み重ねていた彼が消息を絶ったのは2008年、『紅 kure-nai』がアニメ化を果たした年です。7冊目の著書である『醜悪祭(下)』がどう見ても「アニメの放送されるタイミングに合わせて無理矢理出した」としか言いようがないもの(本編が100ページくらいしかなく、あとは全部水増し。話自体も中途半端、焦点となるイベント「醜悪祭」が終わらないままフッツリと切れる)でファンが怒ったり悲しんだりした、通称「醜悪祭事件」が勃発しました。『醜悪祭(上・下)』の後日談に当たる短編を掲載した『紅 kure-nai 公式ファンブック』を最後に片山憲太郎の新作情報は一切入らなくなりました。『紅 kure-nai』そのものは山本ヤマト(原作イラスト担当)によるコミカライズ版が継続するものの、これも2012年あたりに完結。もうこれで『紅 kure-nai』に次の展開はなくなったか……と悲観するファンも多い中、私を含む粘着質な面々が「カタケンは帰ってくる」と信じ続け、ようやくその時を迎えたわけです。2014年12月19日、待望の新刊『歪空の姫』発売……! 私はまだ読み切っていませんが、懐かしさに涙した人も多いでしょう。

 カタケンがデビューしたスーパーダッシュ文庫はリニューアルによって消滅しました(現在はダッシュエックス文庫)し、『紅 kure-nai』の原作がスタートしたのは2005年12月だからもう丸々9年が経過しましたし、カタケンも既に40代となっているわけですが、すべてはここからふたたび始まるのだと、そう願って次なる新刊が来る日を熱望したい。つか出すよな? 「出すけどこの次も6年後」とかはナシにしてほしい。そのときまでダッシュエックスが残ってるかどうかも怪しいし。

 復活と言えば、報せが来ただけでまだ実際に復活したわけじゃないけどYU-NOのフルリメイクが発表されたときは驚きましたね。この件に関しては前回の更新で書いたから繰り返しませんが、18年ぶりという数字の凄さに気が遠くなりそうです。YU-NOが出た1996年というのは『賭博黙示録カイジ』が始まったり『すべてがFになる』の原作者・森博嗣がデビューした年ですよ。ライトノベル(この呼び名はまだ普及していなかった)方面では古橋秀之がデビューしているし、最近になって再開した『星くず英雄伝』の1巻もYU-NOと同じ頃に発売されたはず。この年に生まれた子供がそろそろエロゲーデビューを果たせるようになっているわけで、隔世の感がすごい。

 さておき、去年一年間に読んだ本は漫画以外が190冊くらい。漫画はいちいちカウントするのが面倒だから、冊数に関しては記録していません。漫画以外の本はライトノベルとノンフィクション類が大半で、一般文芸作品はほとんど読まなかった。避けたわけじゃなくて単に時間がなかったと申しますか……やっぱり余暇が乏しいと短時間で手っ取り早く楽しめる漫画やアニメ、ライトノベルに傾斜してしまいがちです。ライトノベルで夢中になったシリーズは『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』『天鏡のアルデラミン』『ノーゲーム・ノーライフ』『なれる!SE』『百錬の覇王と聖約の戦乙女』あたり。

 やはり〜はアニメ2期の放送も来年に控えているガガガ随一の人気シリーズ、超常現象や異世界抜きで「スクールカースト」を根底に据えながら展開していく青春ストーリー。主人公の八幡を好きになれるかどうかで評価がガラリと変わる。かなり思春期をこじらせているんだけど、ユーモアがあって憎めない。むしろ愛おしい。ぼっちだった彼の人間関係が広がっていく様子が楽しい。作者の俺翼愛をヒシヒシと感じる。原作はそろそろ完結が近づいてきて、作者の渡航も新シリーズを開幕させる段取りに入っています。

 『天鏡のアルデラミン』は怠惰な性格の主人公が成り行きで軍人になって、心ならずも「英雄」として部下を率いていくことになる戦記ファンタジー。身も蓋もない表現をすると、銀英伝と皇国の守護者を混ぜてライトノベル風に仕立てたようなシリーズ。普通の作品だったら2冊に分けて書くような話をたった一冊に凝縮するなど、見せ場と山場をてんこ盛りにした内容であり、一冊あたりの満足度が高い。うるさ型の戦記好きに読ませたらあれこれ文句を言ってきそうではあるが、そのぶん初心者向きとも言えます。「戦記はちょっと……」と尻込みする方にこそ読んでもらいたい。

 『ノーゲーム・ノーライフ』はアニメもヒットした異世界ファンタジー。直接的な武力行使は禁止されていて、あらゆることがゲームの勝敗によって決まる世界に、廃人ゲーマー兄妹が挑む。作者は元漫画家だけど健康上の理由からライトノベル作家に転向した人で、イラストも本人が手掛けている。なのでアニメ化絡みで仕事が増えた時期の苦労は倍だったとか。健康上の理由と、単に忙しいことが重なって刊行は滞り気味である。7巻はいよいよ位階序列1位の「神霊種(オールドデウス)」の情報が詳らかになるらしいと聞いてワクワクしながら待っているのですが……。

 『なれる!SE』はSE(システムエンジニア)の仕事をズブの素人である主人公を通して学んでいく「お仕事」系ライトノベル。ライトノベルの主人公は大半が10代の少年なので、20を越した青年が働く様子をひたすら描くだけのシリーズというのはちょっと珍しい。おかげでファン層も「普段はライトノベルを読まない大人」が多いのだとか。IT業界のブラックぶりをオブラートに包みながら活写していきますが、7巻の「不自由! 非合理! 理不尽! 戦慄の客先常駐編!」はあまりのガレー船ぶりに絶句しました。タイトルは「なれる!」だけど実態は『なるな!SE』、そして最後まで読めば『慣れる!SE』だと判明する恐怖。お仕事モノって漫画では多いけどライトノベルじゃまだまだ少ないからもっと増えるといいですね。

 『百錬の覇王と聖約の戦乙女』は異世界召喚ファンタジー。「ある一点」を除いて平凡な少年に過ぎなかった主人公が北欧神話みたいな世界に飛ばされ、辛うじて動くスマホを武器に無双していく俺TUEEEE!系小説です。チートでハーレム、俗に言う「チーレム」ながら慢心した結果ひどい目に遭った主人公がいろいろと学んでいく成長ストーリーでもある。「プロローグ明けたら2年も経過していて主人公がいきなり部族を率いるリーダーになっている」など序盤の超速展開には唖然としたが、空白の2年間については後々埋め合わせもあるし、この手のTUEEEEノベルとしては比較的バランス良くまとまっているシリーズだと思います。『うたわれるもの』をよりエロゲーっぽくするとこうなるかな、って感じ。いや本来はあっちの方がエロゲーなんですが。

 『甘城ブリリアントパーク』『スクランブル・ウィザード』『異能バトルは日常系のなかで』『俺、ツインテールになります。』『オレのリベンジがヒロインを全員倒す!』らへんも良かった。

 甘ブリは京アニがアニメ化して、冬コミにいすずの薄い本が並びまくったシリーズ。閉園寸前のテーマパークを建て直す、一種のお仕事モノと言えなくもないが、なれる!SEとかに比べるとやや緩いムードが漂っている。コメディチックな掛け合いをダラダラと眺めるのが楽しいというか、肩の力を抜いて読むタイプですね。スピンオフの『メープルサモナー』は執筆している人が違う(原作者の賀東もネタ出しには参加しているらしいが)ので、本編のノリを期待して読んだら「コレジャナイ!」と序盤で投げ出すことになるかも。公式二次創作と割り切れば、そこまで悪い出来ではない。

 『スクランブル・ウィザード』はやさぐれた青年が才能ある女子小学生を「魔法士」として導いていくロリコン御用達の現代ファンタジー。誤解を招く書き方をしたが、一応言っておくと主人公本人はロリコンじゃありません。魔法設定が「オーフェン」や「お兄様」より簡略化されていて個人的にはちょうどいい。テロリストが跋扈して死体も山ほど転がる凄惨なストーリーだが、3巻から4巻にかけての盛り上がりがすごかった。苦しみこそが己を規定し救済する、という錯誤が痛切で胸の奥も重くなる。必見。

 『異能バトルは日常系のなかで』はトリガーがアニメ化した「物凄い異能が備わっているのに全然活用しないで普通の学校生活を送る」という変なライトノベル。ダラダラ感が程好くて、気を抜くと異能設定を忘れそうになる。アニメ版は尺の関係からか細かいネタを削除しているので、アニメが気に入った人は原作も読むべし。アニメは原作の魅力を結構活かしていたけど、日常組メインで異能バトル組の扱いがだいぶ悪かったですからね。原作5巻と9巻が異能バトルサイドのエピソードです。あとアニメでは見送られた過去編(6巻)もシリーズにとって欠くべからざるピースなので是非読んで欲しい。

 『俺、ツインテールになります。』はタイトルも内容もふざけているが、作者の熱意と特撮愛はビンビン伝わってくる、言ってみれば「真剣にふざけた」シリーズだ。私も1巻を読んだ頃は「バカバカしい」と笑っていましたが、4巻あたりで謎の感動が押し寄せてきて5巻じゃスッカリ夢中に。是非とも5巻は劇場化してほしいですね。

 『オレのリベンジがヒロインを全員倒す!』はタイトルと表紙が恥ずかしいからか店頭ではあまり売れなかったけど、電子書籍の売れ行きが好調だったと噂される異能アクション、たまにエロスなライトノベル。以前は全能に近いパワーを持っていて女の子とも節度ある接し方をしていた主人公が、裏切りによって異能を喪失し、ショックから性格がねじ曲がってヒロイン相手に平気でセクハラ行為を働くようになってしまう。超単純に書くと典型的なライトノベル主人公から陵辱エロゲーの鬼畜主人公にジョブチェンジする。作者は異能バトル方面が本領なのか、エロ周りはややぎこちないがギリギリでバランスは取れている。全3巻で完結したが、「性的な意味でリベンジする」という根暗な題材は個人的に超好みなので今後も似たようなシリーズがどこかで誕生することを祈っています。

 今年始まった新シリーズは『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』『クロニクル・レギオン』『天網炎上カグツチ』『ひとりで生きるもん!』あたりに期待している。

 ロクでなし〜は最近流行りつつある「主人公が教師・教官を務める」、言わば「師匠モノ」のライトノベルです。TUEEEE系というか無双系は主人公が既に完成型へ達しているため成長の余地がなく、だんだんネタ切れ状態に陥っていく&市場がとっくに飽和してしまっているため陳腐化が進んでいますが、「無双系の主人公が弟子を育てて鍛え上げる」ことによって無双系にはない成長要素を加えたのが師匠モノである。弟子は落ちこぼれ(でも隠された才能がある)か、有能だけど精神的に未熟でまだ人間が出来ていないかで、師匠は身体的あるいは精神的なダメージからかつての力を振るうことができず前線の任務を外され後進育成に回された、みたいなのが定番パターンとなっています。アニメ化予定の『空戦魔導士候補生の教官』もこれに属しますね。私が気に入っているのは『祓魔科教官の補習授業』だけど、これは3巻が無事出るかどうか不安。話をロクでなし〜に戻すと、作中でちゃんと授業風景が描かれるなど、「なんちゃって師匠モノ」にありがちな育成する過程をまったく描かず「わしが育てた」とばかりに結果だけを提示するダメな展開になっていないところが好感触です。際立って面白いわけじゃないが、掛け合いも軽妙でサクサク読める。これからどんどん伸びていきそうな気配を感じます。

 『クロニクル・レギオン』は『カンピオーネ!』の作者による、パラレルな現代を舞台にした戦記モノ。過去の英雄たちが甦って軍勢(レギオン)を率いる、『ドリフターズ』のスケールを更に拡大したような話です。過去の英雄というのは、具体的な名前をあげるとたとえばカエサルとかですね。一種の超架空戦記で、設定の作り込みを細かくしたせいか1巻の時点ではまだあまり話が進まない(主人公の正体も判明しない)けど登場する英雄が増えていくにつれ盛り上がっていくだろうと思われる。

 『天網炎上カグツチ』はネットで炎上することによって力を得るパワードスーツを纏う、『アイアンマン』のパロディみたいなアクション。人々を守るために人々から罵倒される、滑稽劇のようなヒーロー像をどこまで掘り下げられるのだろうか。ネット社会の潮流を通じて「正義」の見えにくさに挑んでいるシリーズでもあります。

 『ひとりで生きるもん!』はクラスの最底辺である「ぼっち」の主人公が、高値の花とも言うべきクラス一の美少女と成り行きで仲良くなっていくラブコメ。こう書くと「ベタだ」って感想しか抱かれないだろうが、特徴としては主人公が「美少女嫌い」だという点が上げられる。すっぱいブドウみたいなニュアンスだけど、「美少女に関わるとろくなことにならない」という思いが主人公にはあって、実際他の男子から「ぼっち如きが!」と絡まれたりする。『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』ほど密接ではないが、これもクラスカーストを背景した話であり、「ぼっち特有の立場の悪さ」を抜きにしては成立しない。ただ、ぶっちゃけ主人公が普通の少年すぎて「最底辺のぼっち」という設定にあまり説得力が感じられず、そこが後半の盛り上がりを弱くしています。とはいえ、両想いなのにモジモジして互いに気持ちを伝えられなかったり、勘違いを重ねてすれ違ってしまうようなじれったいを通り越してイライラする展開が何巻も続く関係無進展ラブコメと異なって1巻でちゃんと想いを告白し合う点はすごくイイです。タイトルの「ひとりで生きるもん!」も、ラストで別の意味を孕むところが面白い。1冊完結でも充分なくらいのまとまりだが、実はこれ来月に2巻が出る予定なんですよね……蛇足にならなきゃいいんだけども。

・今年のアニメで最後まで観たのは40本くらいかな……途中で脱落したのがザッと20本くらい。数が多いのでどうしても削らざるをえない。しかし、40本観た中で「メチャクチャハマった! 夢中になった!」というアニメは特になかった。強いて言えば『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』のクオリティに感激したけれど、「もっぺん原作やろうか」というところまでは行かなかったし。『ピンポン』も原作の良さを再確認したって感じ。佳品は多かったが熱狂するところまでは至らなかったな、ってのが正直なところ。個別に見ていくと小紅のエロさと紅緒の残念さが光る『未確認で進行形』、原作の雰囲気が好きだから心配だったけど「アニメはアニメでいいじゃん」となった『ウィッチクラフトワークス』、ロボットアクションを意外なほど頑張っていた『健全ロボ ダイミダラー』、3DCGの違和感を凌駕するサウンドの素晴らしさに聞き惚れた『シドニアの騎士』、原作の独特な色遣いをうまくアニメ世界に落とし込んだ『ノーゲーム・ノーライフ』、千代ちゃんの声が癖になる『月刊少女野崎くん』、駄菓子のような気安さで自然と引き込まれる『クロスアンジュ』などが面白かった。

・映画は劇場で30本くらい観て、自宅で80本くらい、計110本くらい観ました。劇場公開作品は『猿の惑星:新世紀』が最高。予告編には全然そそられなかったけど、蓋を開けてみれば130分という上映時間の長さがまったく苦にならない面白さだった。人類側も猿側も戦争を望んでいるわけじゃないのに、「他者への不信感」が募って最悪の局面へ雪崩れ込んで行く。銃を捨てなければ平和なんて訪れないけど、恐ろしくてそんなことはとてもできない。ゆえに殺し合うしかない。銃に縋って銃に滅ぶ愚かしさを笑い飛ばせない現状こそがこの映画を写す鏡となっている。次に良かったのが『ベイマックス』。これも予告編には惹かれなかったが、良質な男の子向け映画に仕上がっていて良い意味で裏切られた。ベイマックスのAIがあまり優秀でなく、ところどころトンチンカンな受け答えをするのもイイ。「ベイマックスに感情が宿った!」「奇跡だ……!」みたいな、うんざりする展開もなかったし、ベタとはいえラストにもホロリと来た。ベイマックスってのはアレですよ、川上稔作品に出てくる自動人形みたいな印象。感覚ではなく判断で動く。その無機質さが温かみを与える不思議。コンビニ弁当に対して「ベルトコンベアーの愛を感じる」と表現するノリに通ずるものがありますね。ベイマックスはキャラクターというより「人為の象徴」なんですよ。ほか、筋肉信仰が迸る『ヘラクレス』、映像のカッコ良さにウットリする『イコライザー』、ブラピ主演にしては陰鬱で戦車の閉塞感をうまく醸していた『フューリー』、長すぎて辛かったけど要所要所で打ち出されるインパクトが出色だった『インターステラー』、たとえ展開を予測できたとしてもどうにもならない『ゴーン・ガール』、3部作全体は「間延びしている」と感じるが単体での盛り上がりは久々に指輪級だった『ホビット 決戦のゆくえ』も良かったです。国産アニメは性別・年齢関係なく全方位的に楽しめる『たまこラブストーリー』がイチ押し。

・漫画は、40冊以上まとめて読んだ『ダイヤのA』が個人的な一位。あくまで2014年刊行の新作に限定するなら、3年ぶりの再開となった『喧嘩稼業』がベスト。それ以外だと「平成の劇画」とも言うべき『リクドウ』、しなこいコンビによる待望の学園アクション『武装少女マキャヴェリズム』、デスゲーム系異能バトルの注目株『殺意の戦鬼』あたりに期待を寄せています。あと、まとめ読みをオススメしたいのは『ちるらん』『四月は君の嘘』の2作。『ちるらん』はヤンキー漫画の作法で時代劇を描く珍妙な作品ですが、これがなかなかハマっています。1冊だけだと「なんだこれ」になりかねないものの、まとめて読めばズップリ浸れる。いつしか「いいぞ、もっとやれ!」って声援を送っている自分に気づくかと。『四月は君の嘘』は今アニメ放送中なんですっけ、BSフジのノイタミナ放送がなくなったからうちの地方じゃ観れないんですよね。これも最初の1、2巻は幼なじみの少女による暴力描写が、ほとんどギャグとして処理されているとはいえ執拗で少しウンザリするけれど、主人公のライバルたちが登場するところから俄然ヒートアップしていきます。過去と現在が錯綜する演出がいささか過剰に感じられるかもしれないが、そこはまず一気に突っ切って、テンションが落ち着いてきたらもう一度じっくり読み返せばいいです。来年刊行の11巻で完結ですから、今のうちに読み始めておくとベターですよ。

・拍手レス。

 『YU-NO』の5pb.にてフルリメイクの決定。ファミ通.comの記事を読むと、やはり今のエルフでは扱いに困っていた様子。 そしてついでに探偵紳士シリーズの完結作の『ミステリートF』なるものの存在を知りました。自分は菅野信者といってもいいですがさすがにこれだけの為にXBOXONE 買えないかな。こちらも5pb.の開発のようなので移植まちになりそうです。
 YU-NOリメイク、プラットフォームがどうなるかは今のところ不明ですね。是非PC版を出してほしいところ。できればWIN移植版YU-NOも特典として付けるor単体で18禁商品として発売する方針で行ってほしいが……。


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