2014年4月分


2014-04-27.

・菊地作品を読み漁っているうちにだんだん「ちょっと古めの小説」に対する関心が高まってきて、今度は平井和正を渉猟の対象に定めた焼津です、こんばんは。

 平井和正(ひらい・かずまさ)。恐らく30歳以上の人であれば、読んだことはなくとも最低限名前を見聞きしたことはあるはずです。少し前に『ウルフガイ 狼の紋章』も漫画版としてリメイクされたし、若い読者の中でも興味を持っている人はいるかもしれない。しかし、全盛を極めた時代に比して、今や信じられないくらい話題に上らない存在となっています。彼はSF作家として出発したのですけれど、「正気の沙汰ではないH書房の原稿料」では食っていけず副業として漫画原作を手掛けるようになり、1963年の『8マン』で一気に知名度が上がる。これは東八郎という刑事が殺害され、死体から記憶と人格を抽出し電子頭脳に移植したことで誕生したロボット「8マン」が様々な事件を解決するという、『ロボコップ』の先駆的な作品だ。連載開始から僅か半年後にアニメ化されているが、最初からアニメ化込みの企画だったわけではなく、本当にたった半年でアニメ化に向けての作業が行われたという。平井ひとりでは脚本を賄えない、という理由で豊田有恒も引っ張り出された。ちなみに原作のタイトルは『8マン』だが、アニメ版は『エイトマン』。「8」が8チャンネル(フジテレビ)を連想させる、という理由で忌避された。更に余談だが、平井の設定によると8マンは本来「8番目の男」という意味ではなく、正式名称「008(ダブルオーエイト)」で12番目のロボット(1、09、08、07……01、009と数えていくと12番目に当たる)を指す。これのヒットによって月数百万にも及ぶ収入をゲットしたが、漫画版の作画を担当した桑田次郎が拳銃不法所持による銃刀法違反の容疑で1965年に逮捕され、また1976年に主題歌を歌っていた克美しげるが殺人容疑で逮捕されたこともあり、『エイトマン』は半ば封印作品扱いされることになる。とにかく平井和正はやたらトラブルに見舞われる作家だった。

 有名なのが1969年の「『狼男だよ』改竄事件」。平井自ら「ふざけたタイトルの小説」とコメントしているこの本、実に800箇所以上に渡って著者の許可なく勝手に文章を弄られた(「山野組のさしがねらしい」が「山野組のさしがねが入っているらしい」など)という事件で、当然平井は大激怒。出版社を相手取って8ヶ月にも渡る交渉を行い、どうにか騒動は収まったが、この一件がもとで仕事を干されてしまう。『狼男だよ』は一匹狼のトップ屋(ルポライター)「犬神明」を主人公にしたシリーズの1冊目として構想され、それとは別に中学生の犬神明を主人公にした短編「悪徳学園」も書かれていた。これが雑誌編集長の目に止まり、漫画版『ウルフガイ』が開始することになる。平井はそのまま「悪徳学園」の続編を小説で書くつもりだったが、漫画化の打診が来たためシリーズ化は中止となった。漫画版『ウルフガイ』のヒットにより息を吹き返した平井和正だったが、連載終了後に作画を担当した坂口尚がアニメに転向し、音信不通の時期が数年に渡って続いたこと、オリジナルの原稿が散逸してしまったことから長らく単行本が出なかった。復刻版が発売されたのは8年も経ってからのことだ。また、漫画版の原作をもとに平井本人がノベライズした作品が『狼の紋章』と『狼の怨歌』である。少し前にリメイクされた『ウルフガイ 狼の紋章』は第1弾『狼の紋章』を膨らませた漫画で、“ウルフガイ”全体から見ればほんの序章に過ぎない。大人版と少年版、ふたつのウルフガイはそれぞれ別々の作品であって、共通の時間軸が存在する(つまり、中学生の犬神明が成長すると大人の犬神明になるという)わけではなく、一種のパラレルワールドみたいになっています。漫画化したおかげで少年版の方が有名になり、中学生(登場時点)の犬神明が出てくる方を単に“ウルフガイ”シリーズ、大人版が出てくる方を“アダルト・ウルフガイ”シリーズと呼び分けるのが通例となった。少年版の方にも“アダルト・ウルフガイ”の犬神明に相当する「神明」というキャラが登場します。複数の犬神明が出てくるクロスオーバー作品『ウルフランド』もありますが、これは自己パロディみたいなものか。

 73年に“ウルフガイ”シリーズの実写映画『狼の紋章』、75年には“アダルト・ウルフガイ”シリーズの実写映画『ウルフガイ 燃えろ狼男』が公開され、ウルフガイ人気は絶頂を極めていくが、76年の『人狼白書』(“アダルト・ウルフガイ”シリーズ)から平井の作風が変化していく。不死身の狼男・犬神明が悪党どもやCIAを敵に回して活躍する痛快伝奇バイオレンスだったストーリーが、なぜか「天使の導きに従って異次元の魔族と闘う」スピリチュアルでオカルト色の強い代物に変貌。突如前世がどうのと神がかり的なことを言い出す犬神明の姿に戸惑った読者も少なかったという。この頃、新興宗教に傾倒していた平井和正の精神は境界線を越えて「向こう側」に達しつつあった。「自分は頭が悪い」「論理的思考が不得手」と語りながらも、科学考証のいい加減なフィクションに対して怒りを露わにする、「子供だまし」を嫌悪してやまないSF魂を持っていた平井和正。そんな彼が神秘主義に走るキッカケとなったのは、意外にも「麻雀」だったそうだ。「あのツキという神秘的なメカニズムは、いったいなんなのだろう。なにか得体の知れない、超自然的法則の実在を信じたくなってくる。一種の呪術信仰だ」「麻雀を始めて以来、合理主義者の線がしだいにほころびてきてしまった」――30を過ぎるまで牌を握ったことのなかった平井は麻雀に耽溺した結果、唯物主義を捨てることになった。「30過ぎてから麻雀を始めるのは危険」という教訓である。もしその時代に『咲―Saki―』が存在していれば平井は咲ヲタになっていただろうか。2年ほど経って新興宗教の団体から離脱するが、神秘主義への執心は依然として続く。中島梓(栗本薫)の評を受け、「言霊使い」を自称するようになったのが70年代後半。以後、平井はことあるごとに「言霊」云々の発言を繰り返すようになり、あらゆる作品を「言霊があるか/ないか」で判断していく。石ノ森章太郎とタッグを組んで挑みながらも中断の憂き目にあった『幻魔大戦』の小説化に取り組むのもこの頃である。

 『幻魔大戦』は1983年にアニメ映画化もされた作品(なんと興行収入20億円)であり、“ウルフガイ”と並ぶ平井和正の代表作で「超能力を持った少年少女が人類の存亡をかけて超越的な存在と果てしない戦いを繰り広げる」、その後何度となくアニメや漫画で繰り返される邪気眼的な「輪廻転生ハルマゲドン物」の原型に位置付けられる。経緯の複雑な作品で、漫画版『幻魔大戦』(1967年)が誌上で人気を得られず打ち切られた後、『新幻魔大戦』(1971年)として仕切り直されるも、「人類の勝ち目が見えない」ため平井のモチベが上がらず未完。しばらくして平井と石ノ森のタッグは解消され、以降それぞれ個別に「幻魔の続き」を書く(描く)ことになります。喧嘩して決裂したわけではなく、合意の上で別れたらしい。石ノ森はふたたび『幻魔大戦』のタイトルで連載を開始(現在『幻魔大戦 神話前夜の章』というタイトルで文庫版が出ているバージョン)するも、やはり未完となってしまった。これを最後に石ノ森は幻魔を描いていない。一方、平井は『真幻魔大戦』の連載を開始。同時期に小説版『新幻魔大戦』も刊行するが、これはリメイクというか単なるノベライズである。「真」と「新」、響きが一緒だから混同しそうになるが、時系列に沿って並べると「新」→「真」になります。本当にややこしいけど、『新幻魔大戦』は無印の『幻魔大戦』とは別の宇宙を舞台にしており、『幻魔大戦』の主人公である東丈の存在しない宇宙で生まれ育ったヒロインがタイムリープして江戸時代まで遡ってから「将来東丈を生み出すことになる血脈」を築き上げる壮大なエピソード(ただし未完)だった。『幻魔大戦』も『真幻魔大戦』も両方『新幻魔大戦』を根に有するストーリーであって、それぞれ枝分かれする形というか、ゲームの別ルートみたく「60年代に幻魔と戦うシナリオ」と「70年代に幻魔と戦うシナリオ」になっている。『真幻魔大戦』の執筆と並行して漫画版『幻魔大戦』をリメイクした小説版『幻魔大戦』(世紀末に集英社文庫から刊行された「決定版」はこれの合本)も連載し始めた平井和正は、かつて寡作家と見做されていたことが嘘みたいに量産体制へ突入し、ほぼ毎月のように新刊を送り出すことになる。これが80年代前半のことで、当然量産の代償として筆は荒れ質もどんどん低下していきます。言霊に衝き動かされ、ほとんど自動書記の勢いで原稿を積み重ねる「お筆先」の平井和正に付いていけなくなり、リタイアする読者が続出したそうな。リメイク程度に留めるはずだった小説版『幻魔大戦』も途中からオリジナル展開に舵を切り、東丈が「GENKEN」なる組織を立ち上げてカルト教団化し、ドロドロした人間関係から組織に亀裂が走って内部崩壊を起こすなどと、どんどん話に収拾がつかなくなっていく。挙句の果て、“ウルフガイ”ファンの高橋留美子と対談したことがキッカケになって幻魔をほっぽり出し突然“ウルフガイ”シリーズを再開(関係ないが時期としては“魔界都市ブルース”が始まった頃である)。結局、『幻魔大戦』と名の付く作品は軒並み未完となりました。2000年代に入って更に『幻魔大戦deep』や『幻魔大戦deep トルテック』といった続編も出るけど、キリがないので割愛。80年代後半に『地球樹の女神』という作品でまたしても改竄事件に巻き込まれ、ゴタゴタする。トラブルを引き寄せる体質なのか。

 “アダルト・ウルフガイ”シリーズは今に至っても未完のままだが、少年・犬神明を主人公にした“ウルフガイ”シリーズは全10巻の大作『犬神明』で一応完結した。1巻の発売が1994年12月で10巻が1995年10月だから、ほぼ月刊状態でした。西尾の『刀語』(全12巻を12ヶ月連続刊行)みたいなものである。「一応」と書いたのは、90年代に「犬神メイ」という少女を主人公にしたスピンオフ『月光魔術團』がスタートして、その続編『ウルフガイDNA』の更に続編であり、“月光魔術團”3部作の完結編となる『幻魔大戦DNA』で犬神明が再登場したから。前述した『幻魔大戦deep』や『幻魔大戦deep トルテック』では遂に幻魔の世界と“ウルフガイ”の世界がクロスオーバーしたらしい。ただ、90年代に入った頃にはもう脱落者が多くなりすぎていたのか、平井和正の作品を紙媒体で出すことが難しくなってくる。『月光魔術團』は全巻文庫化されたけど、『ウルフガイDNA』は文庫化されず、『幻魔大戦DNA』に至ってはオンライン出版が主で紙媒体は完全予約制のハードカバー全集が発売されたのみです。『幻魔大戦deep』は書籍版そのものが存在しない。『幻魔大戦deep トルテック』は全3巻セットが発売されたものの、驚きの税抜価格2万円だ。小説作品としては2008年に発売されたこの『幻魔大戦deep トルテック』が最新作に当たる。もう5年近く音沙汰がなく、「ひらりんは今どうしているだろう……?」と熱心なファンは心配しているそうな。かつて古本屋に足を運べば、びっしりと棚を埋め尽くす緑色の背表紙がお出迎えしてくれたものだが、今や電子書籍で読むのが一番手っ取り早い状態になっていて時代の変化を感じずにいられない。「読めるだけいい方」ではあるが、初期作らへんは是非紙媒体で復刻してほしいものです。

【悲報】エロゲー開発中止キタ━━━(゚∀゚)━━━!!(暇人\(^o^)/速報)

 銃騎士はCGの少なさが問題だったけど、こっちはシナリオが原因か。「ライターが逃げ出してポシャった」みたいな企画の噂はちょくちょく聞いたことがある(『ANGEL TYPE』が一度開発停止したのもそれだったとか)けれど、ここまでハッキリと「失踪」をぶちまけたのは初めて見る気がする。しかしこのMaple software、「聞いたことのないブランドだな」って方もおられるでしょう。それもそのはず、開発停止した『夏色マキアート』がデビュー作になる予定だった新興ブランドなので、これまでの実績はゼロ本。まだゲームを出していない、恐らく今後も出さない(出せない?)ブランドなのです。ちなみに昔はいむらきよたか(当時の名義は灰村キヨタカ)原画のエロゲーを何本か出した「maple」とは無関係。代表の「みやび」は元を辿るとPurple softwareの広報・営業で、2007年末にPurple softwareを退社しています。このへんの経緯はよく知らないが、「Maple software」というブランド名自体が明らかにPurpleを強く意識したものであり、Purple側も「訳のわからない当てこすりみたいな名前」とコメントしている。しかし、みやび代表はPurpleを抜けてすぐMapleを立ち上げたわけではない。間に「Aile」というブランドが入る。これが確か2010年くらいの設立だったかな……ブログの初投稿が2010年10月8日、10月22日に公式ホームページ稼働の告知がある。退社からAile立ち上げまで苦労したらしく、「我々は3年待ったのだ」なんて記事も。念のため解説しておきますと、「浦社長」は北海道にあったエロゲーメーカー「Abogado Powers(アボガドパワーズ)」の社長・浦和雄で、2005年に35歳の若さで死去しました。「岩崎くん」こと岩崎考司は原画家で、Purpleの看板的存在でしたが2007年に27歳の若さで亡くなりました。スーパーダッシュ文庫で『めぞんdeぎゃらくしぃ』の挿絵を描いた人、と書けば一部のライトノベル好きには通じるかな。

 そうして始まったAileは2011年と2012年にそれぞれ1本ずつ新作をリリース。どちらも原画は「かみやまねき」が担当している。『私立!三十三間堂学院』のイラストを手掛けた人。「それにしてもAileって何て読むんだろう……あれ? なんか前にもこんな疑問を持ったような」という方は、恐らく2011年の「実況プレイ動画問題」が記憶にあるのではないかと思われる(ご存知ない方は「プレイ動画」に「徹底抗戦」 あるゲームメーカーの宣言に波紋を参照されたし)。発売したばかりの新作の実況プレイ動画をニコニコ動画にアップロードされたことでみやびが激怒し、「正規購入ユーザーのゲームを楽しむ権利を貶める、愚弄する行為には徹底交戦します。不退転の決意というものを思い知って頂きますよ。いまさら削除しても無駄です。悪しからず!」とツイッターで宣言した。当時方々で話題になったので、「みやび」や「Aile」など具体的な単語を忘れている方でも「あー、あれか」と今まさに思い出しているところかもしれません。ちなみにAileは「エール」って読みます。フランス語で「翼」を意味する単語、『Fifth Aile』ってエロゲーもありました。そういえば来月に『野々原幹アートワークス(仮)』が出ますよ、200ページ超の大ボリュームだそうだ。あ、それで実況プレイ動画の件については最終的に示談金貰って決着したみたいです。2013年に違法DLTwitter公言騒動というのもありましたが、こっちはPurple software。

 2013年にようやくMaple softwareを立ち上げ、現在の話に繋がってくる。AileのOHPは2012年を最後に更新が途絶えており、相互リンクの類も確認できないので、姉妹ブランドというよりは単なる「乗り換え」って印象です。OHPが出来たのは7月頃? 当初の予定ではブランドデビュー作『夏色マキアート』を11月に発売するつもりだったようですが、まあよくある話で早々に延期しちゃいます。それも1ヶ月や2ヶ月ではなく、一気に4ヶ月もジャンプしてしまった。「ゲームの根幹となるシナリオ制作におきまして致命的なトラブルが立て続けに発生」したと。このときはまだ表現をボカしている。新たに設定された発売日は「2014年3月28日」。ん? あれ? 最近この日付を目にしたばかりだったような……デジャ・ヴ? というか『銃騎士 Cutie☆Bullet』の発売日じゃねーか。これも確か11月発売予定だったのが今年の3月に飛んできたんですよね。なんという偶然の一致だろうか。ヒロインの名前も「藤倉みやび」だし。銃騎士の方は強行発売に踏み切って炎上騒ぎに発展したわけですが、『夏色マキアート』は更に延期を発表して「2014年冬予定」に。もうこれ発売しない流れに入ってしまったのでは……というところで今回の開発凍結発表が来てフィニッシュ。卵の殻を破れず、雛鳥は生まれぬまま死にました。

 田中ロミオの幻の大作『霊長流離オクルトゥム(仮)』は「制作に億単位の資金が必要であり、捻出するのが困難」という理由で立ち消えになってしまった(でもファンはまだ諦めていない)が、オクルほどのビッグプロジェクトじゃなくても延期が重なれば重なるほど余計な費用が発生してくるため、ゲーム業界じゃ「これ以上は開発を続けられない!」と悲痛のストップが掛かってしまうことがちょくちょくある。枕(ケロQの姉妹ブランド)のデビュー作になるはずだった『サクラノ詩』(2004年春発売予定だったのに未だリリースされていない)とか、開発凍結ソフトの代名詞としてたびたび名前が上がったものでした。面白いことに枕は『サクラノ詩』を凍結しただけで以降は普通にソフトを出し続けている。そして今年に入って『サクラノ詩』の企画もようやく解凍された。私個人としてはケロQ本体の『陰と影』も早く解凍願いたいところである。

・拍手レス。

 姫川友紀CDデビュー決定により、焼津さんオススメだったサンキューユッキが最終回になってしまいましたね。まあ作者失踪による更新停止が圧倒的に多いニコ動であそこまできっちり完結できたのは素晴らしいことなのだが、やはり寂しい。なんというか、ユッキ人気の何割かは確実にこの動画が担ってた気がするしなぁ。まあなんにせよおめでとう。フォーエバーユッキ!!
 観始めたのが去年の末くらいなので古参ほどの喪失感はないけれど、それでもEDの名場面集に寂しさを誘われましたね。『ダイヤのA』崩したのもコレで野球に関する興味が高まっていたから、って面があるし。気に入った回はまたちょくちょく観返したい。リメンバーユッキ。

 ハンター×ハンターはキメラアント編のクライマックス〜ハンター会長選挙編まで30週続きましたからね。今までの富樫氏の執筆ペースでは奇跡とも呼べるくらいのものでしたよ。今回は何週まで連載されるかがいろんな意味で楽しみです。
 また今度も30週以上続いてくれるといいですね……いい加減そろそろ完結も視野に入ってきているとは思いますが、どうなることやら。


2014-04-22.

・今期開始アニメのうち26本を、とりあえず第一話だけ観てみたが、「是非とも最終回まで視聴したい」と思ったのは約半分の14本だった。以下にそれらの短評というか感想を書いていく。

 『悪魔のリドル』 … タイトルは「悪魔のトリル」のもじりか? 高河ゆん原作のサスペンス。「クラスメイトほぼ全員が暗殺者で、たった一人のターゲットを狙う」というシチュエーションが『暗殺教室』を連想させるが、「暗殺を行う際は事前に予告状を出さないといけない」「一定時間内に殺せなかった場合は失敗と見做す」などルールが細かく、よりゲームっぽい雰囲気になっています。なんでここまで回りくどいことをするのか? 黒幕の真意は何なのか? と気になるが、果たして明かされるのであろうか。暗殺者だったはずの主人公はターゲットに取り込まれ(女王蜂とおぼしきカットがあったけど『アラクニド』の軍隊蟻みたいに支配の権能でも持っているのか?)、息の根を止める立場から守護する役割へと転身する。主人公とヒロインの関係が百合百合しく、『Noel』を思い出した。「殺伐としたキルミーベイベー」なる形容が言い得て妙であり、サスペンスよりも百合的なイチャイチャ部分に期待して継続視聴に臨む。ちなみに「高河ゆん原作」と書いたが、これは「原案」めいた意味合いが強く、漫画版の作画は「南方純」が手掛けています。『Fランクの暴君』のイラスト担当ですね。アニメも南方のキャラ原案準拠でデザインされており、観ていると『Fランクの暴君』(2巻まで出たが、作者が新作書いてるのでどうも打ち切り臭い)を連想して切なくなる……。

 『エスカ&ロジーのアトリエ〜黄昏の空の錬金術士〜』 … ガストの名物“アトリエ”シリーズの最新作であり、初のアニメ化作品。“アトリエ”シリーズは1997年、プレイステーションで発売された『マリーのアトリエ〜ザールブルグの錬金術士〜』より始まるシリーズだが、関連作含めて20個近い作品が存在しているため全貌を簡潔に説明するのは困難である。タイトルに必ず「アトリエ」が入るのが特徴で、舞台や時間軸に繋がりのある作品と繋がりのない作品が混在しています。『エスカ&ロジーのアトリエ』は“黄昏”シリーズの第2弾に当たり、滅びへ向かいつつある「黄昏の世界」を舞台に男女二人のダブル主人公が活躍する。「未踏遺跡」という空中に浮かぶ遺跡(要するにラピュタの城みたいなの)を目指す、というのがアニメ版のストーリーになるのかな? ゲームやってないから細かい部分はよくわからないが、ヒロインのエスカが可愛い&衣装がエロくてムラムラするので気にせず観れている。ゲーム原作のアニメって未プレー者にとっては入りづらく、プレー済の人にとっては原作との差異に違和感を覚えて馴染みにくく、どっちつかずの出来に仕上がってしまうことが多い。なので観る前は期待していなかったが、意外にスッと入っていけた。「錬金術」の要素がゲーム的すぎるけど、そこさえ目を瞑れば問題なく楽しめる。エスカとロジーが惹かれあっていく、ラブコメみたいなストーリーになることを望んでいます。可能なら夫婦になるところまで行ってほしい。しかしタイトルを眺めていると、どうしても「スカトロジー」を連想してしまって複雑な気分に陥る。

 『シドニアの騎士』 … 個性的な作画とムードによってマニアックな人気を誇る弐瓶勉の漫画が原作。巨大ロボを操縦して戦うSF作品であり、『蒼き鋼のアルペジオ』みたく3DCGで描画されています。開幕早々、主人公が米泥棒として追いかけられたり、出撃するロボの外装がボロボロで年季を感じさせたりと、弐瓶らしい煤けた雰囲気が漂っている。まだ開幕したばっかで何とも言えないけど、2話目のアクションシーンは迫力あって良かった。こうも平然と弐瓶作品がアニメ化されてTVで流されるなんて、実にイイ時代が来たもんだなぁ……と、しみじみ思う。劇場アニメ企画が有耶無耶のうちに立ち消えとなってしまった『BLAME!』(リンク先はOVA)も、シド騎士の反響次第では復活するかも。あとクローン姉妹で『てさぐれ!部活もの』のモブ子(見た目の区別がつかない18人姉妹)を思い出した。

 『極黒のブリュンヒルデ』 … 『エルフェンリート』の岡本倫による漫画が原作。エルフェンとコレの間に『ノノノノ』というスキージャンプを題材にした漫画もあったが、無情の打ち切りを喰らっています。OPがインストルメンタルのみ、つまりオフボーカルでやっていて驚いた。普通ならグッとインパクトが下がってしまうところだが、却って耳に残って時折鳴り出しては脳内でループしてしまう、なんとも癖になる曲である。原作読んでるから先の展開はわかってるし別段ハラハラしない。なんというか、アニメにするとツッコミどころが目立つ話だなぁ、というのが正直な感想だった。『エルフェンリート』の時よりも岡本倫の作風が堅固になっているため、漫画以外の媒体に移すと独特の風味が消えてしまいがちになる。「アニメならでは」の表現で突破口を開いていってほしいところ。

 『健全ロボ ダイミダラー』 … 「ミダラ、ミダラ、ミダラー」というOPの斉唱がやたらと耳に残るロボアニメ。原作は『火星ロボ大決戦!』のなかま亜咲。今回の敵もペンギン帝国だから『火星ロボ大決戦!』と繋がってるっちゃあ繋がってる。それにしても、ネタとはいえチカチカして目に痛い公式ページだ……3秒で閉じてしまった。原作はマヌケさやバカバカしさを強調した作風だったが、アニメはより暑苦しく、熱血系ロボアニメの調子を貫いていて「これはこれで」な感じ。「乳揉みは子供の遊びじゃあないんだ!」という叱責の威力が尋常じゃなくて噎せた。リッツ出てくるの楽しみ。

 『ご注文はうさぎですか?』 … きらら系日常アニメ、と書いただけですべてを説明した気分になってくる不思議。主役(ココア)演ってる声優は誰かな、と思ったら「あやねる」こと佐倉綾音か。『夢喰いメリー』のメリーや『じょしらく』のマリーなどを担当した人です。最近よく聞きますね。今期も『星刻の竜騎士』『selector infected WIXOSS』に出てたな。アニメはホントいっときに特定の声優が集中しやすい。佐倉綾音で天然ぽわぽわ系というのは最初ちょっと違和感があったけど、すぐ慣れた。まだ1話目だけでキャラは少ないし強烈なフックも仕掛けられていないけど、「とりあえず観続けるか」的な安心感が強い。ぬるすぎないぬるま湯というか。気づいたときには手遅れでのぼせ切っていそう。

 『彼女がフラグをおられたら』 … 原作は竹井10日のライトノベル。「講談社ラノベ文庫」としては『アウトブレイク・カンパニー』につづく2番目のアニメ化作品。友情フラグや恋愛フラグなど、未来を暗示する概念的な条件要素を「対象人物の頭の上に立った旗」として視認することが可能な少年「旗立颯太」を主人公に据えた学園コメディです。颯太は「自分に関わると不幸になるから」という理由で次々と意図的にフラグを折って友人や恋人を作るまいとしていたが、意に反して彼の周りに次々と人が集まってくる。1話目の時点では比較的おとなしく通常の学園モノっぽいノリを維持していたけど、2話目で蛇口が壊れたように竹井節全開となる。ツッコむ暇もないくらいに連打されるドタバタ劇の嵐。これだ、これこそが10日たんのノリだ! 観ていると『ニニンがシノブ伝』並みに疲れるが、実に心地良い疲労感であると言えよう。そういえば、初期の竹井10日関連スレでは「10日たんのノリが好きな人には古賀亮一がオススメ」ってよく言われてたな。私もそれで古賀亮一の名前を認知した記憶がある。読み出したのはもっと後になってからだったけど。あ、一応解説しておくと竹井10日はエロゲーのシナリオライター出身であり、商業デビュー作『秋桜の空に』によってコアな人気を獲得していた。リンク先を見て「絵柄が古いなぁ」と思った方もおられるでしょう。ぶっちゃけ発売当時ですら「この絵柄はちょっとアナクロだよね」と苦笑されていました。しかしファンにとっては懐かしさで涙が出そうだ。原画を手掛けた「岩舘こう」は既に故人ですからね……ちなみにキャラ紹介ページで確認できるSD絵は「ぱるくす」の「すめらぎこう」によるもの。あの人は外注スタッフであると同時に熱心なMarronファンでもあって、同人誌もいっぱい出してたし、『こすもすきゅーぶ』なんていう同人ゲームまで制作した。

 『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』 … JOJOの第3部。シリーズ全体通して一、二を争うほど人気の高い部だけにファン待望といった雰囲気だ。実は昔OVA版が発売されたこともあって、私はレンタルでちょっと観たんですけど……正直ガッカリするような出来で、「JOJOっぽさ」は欠片もなかった。DIOの声も全然イメージと違った。これのせいで長らくJOJOアニメに期待しない気分が醸成されていたのですけれども、今回はちゃんとJOJOっぽくて安心した。キャストもハマっているし、引っ掛かりを覚えることなくスッと小気味良く観れる。描き文字の演出はちょっとくどいかな、って思いましたが、スタンドの演出についてはほぼ完璧だ。初期ハイエロファントグリーンの気持ちを悪さもよく出ている。気になるのは全何話でやるのかっつー点。この調子で2クールだと後半バタバタしそうだし、しっかり4クールやってくれるのか? 3クール説も囁かれていますが、さて。

 『ソウルイーターノット!』 … 5年ほど前にアニメ化された『ソウルイーター』のスピンオフ。私は『ソウルイーター』の漫画もアニメも知らない(いや、漫画は1巻だけ読んだけど内容だいぶ忘れた)のでハッキリしたことはわからないが、本編よりも前の出来事か、本編がスタートして間もない時期のエピソードに当たるらしい。本編がどんどんシリアス展開に突入していった結果、「で、死武専って結局どういうところなの?」という疑問が読者の間で生まれるようになったため、それに対するアンサーとして「死武専はこういうところ!」な番外編を描くことになったらしい。女の子3人がキャッキャと仲良くする微百合コミックとしても読めるが、日常系というわけではなく、裏ではちゃんと殺伐とした事件が進行している。これを解決すればオシマイ、って運びなんでしょうな。単行本4冊程度で終わらせるつもりが急遽アニメ化されることになったせいで終われなくなり、現在も連載中。5巻で完結する予定とのこと。『ソウルイーター』知らない人はそれだけで敬遠しそうなアニメですが、僅かでも百合スメルの漂っているアニメは貴重。贅沢言わないで百合スキーはこっちの甘い汁を啜るがいい。

 『ラブライブ!2期』 … 今期は漫画原作が多いが、これはオリジナル。正確に述べると雑誌の読参企画をベースにしたメディアミックス作品なのだけど、もともとストーリーらしいストーリーがなかったことを考えると「オリジナルアニメ」で括っても構わないだろう。タイトル通り、2期目である。最近のアニメは2期目で微妙にタイトルが変わることが多いけど、これは特にそんなことなく単に「第2期」としか言われていない。そのためちょっと区別しにくい難点はある。9人組ユニット「μ's」結成までにストーリーの大部分を費やした結果、「ラブライブ」という大会に出場するところまでは進まず、「出場辞退」で終わってしまった第1期。下手すれば「ふざけるな!」と非難されかねない結末だったが、一人一人のキャラを魅力的に活き活きと描いた効果もあってか、「是非とも彼女たちがラブライブに出場する展開を目にしたい」との要望が連なり、遂に「大会編」とも言うべき2期が放送されることになりました。出場辞退を取り消す、みたいなパラレル展開ではなく、「新しいラブライブが(同年度に)ふたたび開催される」とやや強引な設定で押し切っている。『ラブライブ!』にはぶっちゃけアイドル版『ザ・松田』といった趣があり、設定や展開に少し強引だったり無茶だったりする箇所も存在します。「いんだよ 細けぇ事は」の精神で乗り切れる人でないと辛いかも。ムチャクチャな部分がキャラの魅力に繋がっていたりするんで、一概に否定することもできないんですよね。とりあえず、名前の割に山岳好きな海未ちゃんで笑った。

 『ノーゲーム・ノーライフ』 … 『グリードパケット∞』を連載中に癌が発覚し、復帰した後も「漫画執筆は体に負担が掛かりすぎる」という事情からライトノベル作家兼イラストレーターに転身した榎宮祐の再デビュー作が原作。本文も挿絵も両方自身が手掛けている。コミカライズ版は嫁さんが担当。廃人ゲーマー兄弟が「すべてをゲームの勝敗で決める」という異世界に召喚され、元の世界に未練がないからこっちの世界でビッグになってやろうぜ!と張り切る話。駆け引きというか頭脳戦というか腹の探り合いが見所なんですけれど、アニメだと尺が限られているせいであまりじっくり解説できず、バーッとまくしたてて済ませているところがややもったいないか。じゃんけんのあたりは表を用いることでうまく説明したけど、「引き分け」の条件が一瞬飲み込めなくて「?」ってなりかけた。主人公だけだと「ありふれた召喚モノ」という印象に留まっていたかもしれないが、一心同体の妹とともにいないとダメ、って設定がうまく特徴として機能しています。しかしこのコンビ、見れば見るほどグリパケのカシオとノキアを思い起こさせて、切なくなる。グリパケは一時アニメ化されそうな勢いがないでもなかった。そういえば4巻の特装版にはドラマCDが付いていたけど、あれの脚本書いたのって竹井10日なんですよね。がをられ放送しているクールでノゲノラもアニメになってるだなんて、ふたりはつくづく運命の赤い無線で結ばれているんだな……10日たんが榎宮祐の復帰フラグをせっせと立ててくれたのだと妄想したら心が和んだ。

 『一週間フレンズ。』 … “月刊ガンガンJOKER”連載の漫画が原作。「一週間するとトモダチの記憶が消えてしまう」云々のメメントみたいな設定に強烈なお涙頂戴臭を感じて原作漫画は敬遠していたのだが、実際にアニメで観てみると「あれ? まるで問題ないじゃん」と普通に楽しんでしまった。なんかイイ意味で肩透かしでした。今期のダークホース。親しい人(ただし家族は除く)の記憶が一週間ごとにリセットされる体質のせいでトモダチができない、というヒロインの基本設定は相当に強引だし、「泣かせるシチュエーションありきの人工的な設定」と批判されたら言い返せない部分はある。そのへんは『イキガミ』あたりと一緒だ。しかし、『ONE』や『秋桜の空に』、『それは舞い散る桜のように』といった「後半で記憶の要素が絡んでくる」エロゲーのラインを覚えている身としては、人工的だろうが何だろうが引き込まれずにはいられない。「ああ、なんで『秋桜の空に』がアニメ化しなかったのだろう」と涙ぐんでしまう。ドラマCDで尼子崎初子役を演じた川上とも子がこの世にいない以上、もはやどうやってもオリジナルキャストでのアニメは叶えられない。脱線してしまった。元に戻そう。『一週間フレンズ。』、記憶が途切れる直前にヒロインを襲ったらそのことも忘れられてしまうのだろうか……と下衆な想像力を働かせたりもしたが、それだと「あんなヤツ、トモダチじゃねぇ!」って否定されて記憶が継続しちゃうんでしょうかね? エロゲーにすると面白そうだと思ったが、単にヤった後で記憶を消す催眠モノと大して変わらないような気もしてきた。

 『魔法科高校の劣等生』 … WEB小説として「小説家になろう」に掲載されていた作品が電撃文庫から紙媒体で発行され、アニメ化に至った。そういう意味では「ネット小説が原作」とも「ライトノベルが原作」とも言える作品。売上の面で言えばSAOに次ぐレベルであり、まだアニメ化が決まっていない作品の中でこれよりも売れているライトノベルは確か存在しないはず。ゆえに「ライトノベルの最終兵器」だの何だのと称されたが、山のように膨大な設定があっていちいちそれを説明している余裕がないだけに、アニメから観ると若干わかりにくい。漫画版を併せて読むとちょうどいいんじゃないかって気がします。あと挿絵の時点で気になっていた女子の制服、アニメになるとやっぱりメッチャ目立ちますね。あれ角を曲がるときとかに引っ掛かったりしないのか、見ていて心配になる。ダボダボの服着てると突起に引っ掛かってガクンッとなったりする、あんな感じで。

 『蟲師 続章』 … 漆原友紀の漫画が原作だが、原作は5年以上も前に完結している。「続章」とあるようにアニメとしては2期目に当たり、1期目では映像化できなかった取りこぼしのエピソードを全部アニメ化する企画として立ち上がった。1期目が終了してから既に8年が経過するものの、熱心なファンが多いために結実した模様。私は原作をひと通り読んだけど、アニメは観ていなかった、という層です。なので続章も「待ってました!」って感じではなかったのだが、せっかく配信されているんだからと観ることにしました。一話目の「野末の宴」は「ふーん」程度の感想だったけれど、「囀る貝」から一気に引き込まれ、「雪の下」でノックアウト。「なんちゅうアニメを食わせてくれたんや……なんちゅうアニメを……」と京極はんの顔つきで泣いてしまった。素晴らしい。確かに素晴らしいが、「これに比べると○○のアニメはカスや」とまで言うつもりはない。「なぜもっとこういうアニメをつくらないんだ」と嘆く気持ちもわかるが、『蟲師』はそうポンポンと簡単に量産できるタイプの話ではない。上っ面だけ真似たアニメが出てきても、きっと悲しい結果にしか終わらないだろう。『蟲師』は『蟲師』の道を行く。あくまで唯一無二(ユニーク)であり、他が追随する必要などさらさらない。非常に稀有な、字義通り在り難いアニメだと思います。

HUNTER×HUNTER : 2年ぶり連載再開へ(まんたんウェブ)

 冨樫が2年ぶりに仕事し始めた……だと? いったい何が起こるんです? ちょうど総集編を買って一から読み直そうとしているところだったのでグッドタイミングと言えばグッドタイミングかもしれない。問題はいつまで仕事するのかですね。「最終回までずっと休まず書き続けろ」と言いたいのはやまやまなれど、まず無理だろうからせめてキリの良いところまで進めてほしいものだ。

・拍手レス。

 星海社から出てる新装版シズルさんが新作部分に行き着いたので買ってきました。「騎士は恋情の血を流す」の文庫版なのかと思ったけど違うみたいですね。あっちもその内出すのかしら。それはそれとしてハヤカワと星海社の文庫の裁断が気になってしまう当方は神経質なんでしょうかね。他レーベルの文庫本と並べて見た時にどうももにょっとします。
 私も最初は騎士血の文庫版だと思い込んでスルーしていましたが、未収録含む新作だとわかって慌てて購入しました。裁断というと角川文庫の天もたまにすごくガタついていますね。あれ埃が溜まりやすいから嫌だなぁ……。

 今年のエロゲトレンドが「35」になりそうな勢いですからねえ。2007年にKOTYを震撼させた四八に続く、数字で分かるクソゲーの誕生だといえるかもしれません。
 「6ヶ月後を目処にパッチを無料配布」って告知が来ましたね。憂姫はぐれが原画描くかどうかは明言していない……。


2014-04-18.

・あ、ありのまま最近起こった事を話すぜ! 「おれは“魔界都市ブルース”の気になった巻だけを買い漁ろうと思ったら、いつの間にか全巻集め終えていた」 何を言ってるのかわからねーと思うが、おれも自分が何をしたのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだった焼津です、こんばんは。

 根っからのコレクター気質と申しますか、集め出したらアドレナリンが沸騰してドーパミンもドッパドッパになって止まらなくなってしまうんですよね。“魔界都市ブルース”は菊地秀行のライフワークとなりつつある「魔界都市サーガ」の中核を成すシリーズで、現在49冊の本が出ている。前回は「48冊」と書いたが、あれは間違いだった。『〈魔震〉戦線』は文庫版だと全1冊だけど、新書版は正編完結編の2冊に分かれていたことを失念しておりました。「49冊」というのは新書版で数えた場合の巻数であって、『夜叉姫伝』『死人機士団』が合本されている文庫版で数えると7冊少なくなります(『夜叉姫伝』が全8冊から全4冊、『死人機士団』が全4冊から全2冊、『〈魔震〉戦線』が全2冊から全1冊になっている)。ただ、“魔界都市ブルース”は2005年あたりを境にしてあまり文庫化されなくなってきており、文庫基準で計算しようとするとチグハグな感じになってしまう。短編シリーズは定期的に文庫落ちするけれど、長編シリーズは『シャドー“X”』以降の作品に関して文庫版が出ておらず新書版のみとなっております。ファンの評価が低下し始めるのもそのあたりからですね……高校生の秋せつらを主人公にした『青春鬼』(全4冊)らへんは文庫にしてもいいんじゃないかな、と個人的に思ったりしますが。

 菊地作品全体の評価も80年代から90年代がピークで、2000年代に入った頃からどんどん下がってきている。当方はもともと菊地の作風があまり合わない(文章を読んでいて所々つっかえるような感じがする、「え? なんでそれがそうなるの?」と戸惑う局面があまりにも多い)せいで、初期の作品も最近の作品も主観的に大して変わらず、そういう意味では特に「劣化した」という印象を受けない。だから別段嘆くこともなく読み続けられるわけで、皮肉なことに「合わない」ことがプラスとなっています。元からさほど期待を寄せていないので何ら失望もしない、つまり「信じてないから裏切られない」を地で行く状態だ。期待している作品や愛着の深い作品ほど気合を入れて挑まないといけないような気がするし、もしそれで面白くなかったら大いに幻滅しちゃうだろう。ゆえにこそ「本命ほど後回しにしてしまう」、それが当方のSa-Gaなのかもしれない。戦神館は言うに及ばず、ホライゾンもされ竜も氷と炎の歌も、全部途中で止まってしまっている……そろそろ本命から逃げ出さないで向き合うことを真剣に考えた方がいいかもしれない。けど差し当たっては買い溜めた“魔界都市ブルース”を全巻読破することにしよう。

『対魔導学園35試験小隊』(著:柳実冬貴/イラスト:切符)アニメ化企画進行中!(萌えオタニュース速報)

 作者は『量産型はダテじゃない!』の柳実冬貴でイラストは『のうりん』の切符です。量産型とコレの間に『Re:バカは世界を救えるか?』というのもあったんで、柳実にとっては3つ目のシリーズに当たりますね。『のうりん』のイメージが強すぎるせいか、イラストを見るたび「いつになったらギャグ展開が始まるんだろう?」と思ってしまう。『エンジェル伝説』を読んだ後に『クレイモア』を読むような状態。けど試験小隊までアニメか……もうファンタジアでアニメに回せそうな原作って、あとは『おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ!』『フルメタル・パニック! アナザー』『ライジン×ライジン』『スカイ・ワールド』くらいか? 弾を撃ち尽くしそうな気配が漂っている。なんというか、ファンタジアもすっかり「決め手に欠けるレーベル」になってしまったな。中堅の層は厚いんだけど、「これは……!」と目を瞠る看板シリーズが空位っていう。

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』2期製作決定! (萌えオタニュース速報)

 ガガガアニメ、初の2期到来! もはや渡航に関しては「ガガガ随一の看板作家」と謳っても過言ではなくなりましたな。『あやかしがたり』の路線から転身して大正解だった。今は亡き「渡航日誌」(アーカイブが残ってるみたいで、検索するとまだ読めるけど)は涙なしには読めない代物だったので、是非この機会に書籍化してほしいものだ。「作品よりも日誌の方が面白い」と言われ、路線変更するキッカケにもなった奴ですからね。溢れ出る恨み節をチャーミングなユーモアで包んだアレは、『あやかしがたり』ともども渡航ファン必読のコンテンツ。

『きんいろモザイク』続編はTVアニメ2期の模様 (萌えオタニュース速報)

 ヤッター! ウレシイ! これで『けいおん!!』以来となるきらら系アニメの2期目がようやく来ることになりますね。きらら系アニメで2期目が来たのは『ひだまりスケッチ』と『けいおん!』だけだったから史上3度目ですよ。『のんのんびより』の2期も確定したし、ホントもうこんなに嬉しいことはない。せかいはきんいろにかがやいているのだー。

エロゲメーカー『エフォルダムソフト』が解散…(ひまねっと)

 経緯をザッとまとめよう。まず「エフォルダムソフトって何?」という方のために、そこから説明を始める。エフォルダムソフトはあかべぇ系列のエロゲーブランドで、「株式会社エフォルダム」が擁するブランドの一つでもある。株式会社エフォルダムは他に「あっぷりけ」なども擁している。ブランドとして「エフォルダムソフト」が立ち上がったのは2011年、今から3年前です。同年の9月30日にデビュー作『恋騎士Purely☆Kiss』を発売。甲冑を普段着のように纏った「騎士」の少女たちをヒロインとする恋愛モノで、シナリオの評判は今ひとつだったが、「憂姫はぐれ」原画による美麗なCGと、妹キャラ「由宇」の可愛さで一定の人気を得ました。売れ行きの良さから18禁OVAも制作され、現在第2巻まで発売されている。「エロゲーマニアはあまり評価しないけど、萌えゲー好きやライト層からの反響はそこそこ」という感じ。当然の成り行きとしてエフォルダムソフトの第2弾も期待されていました。恋騎士から2年後の2013年、遂にブランド第2弾『銃騎士Cutie☆Bullet』の情報が公開され、11月29日にリリースされる……予定だったのだが、延期。なんと4ヶ月も先の2014年3月28日まで飛んだ。「これ、全然制作が間に合っていないんじゃないか?」と不安がられる中、2月末にようやく体験版がアップロードされます。その内容はと言いますと、オススメ記事を書いていた某ブログの管理人が「前言撤回」するほどの代物だったそうで……3月に入った時点でシナリオに期待する層は概ね去り、あとはただ憂姫はぐれ原画のCGとHシーンを目当てに地雷処理覚悟で挑むファンが残されたわけですが……彼らを待ち受けていたのは「SD絵と差分を抜いたCGが35枚だけ」、しかも「大半がHシーンに費やされ、日常イベントでは一枚絵がほとんど出てこない」という、フルプライス(税抜8800円)のエロゲーとしては信じがたいくらいに低ボリュームな製品仕様でした。

 ちなみに恋騎士のときは66枚だったそうです。これはこれでちょっと少ない(通常は70枚〜100枚くらい)けれど、炎上騒ぎに発展するほどではなかった。CG総数に関する業界の明確な規定はなく、時代を経るにつれて徐々にインフレしていった経緯もあるので「フルプライスのエロゲーソフトにおいて適正なCG枚数はどれくらいか?」というのは答えの出ない議論に迷い込むクエスチョンなんですけれど、それにしても「35枚」というのは、あまりにも……同じあかべぇ系列が2008年12月に発売した『暁の護衛〜プリンシパルたちの休日〜』という税抜3800円のFDでさえ、新規描き下ろしCGは差分抜きで40枚以上あった。ゆえに低価格帯(3000円前後)なら「まあ、こんなもんだろう」とあっさり受け止められたかもしれない。せめてミドルプライス(6000円前後)だったら「ま、まぁ……うん、ちょっと少ないね」って若干引きつり気味の笑顔ながら辛うじて許容されていただろう。フルプラスだったこと、そして(絵に関しては)期待されていたソフトだったこともあって派手な炎上騒ぎに縺れ込んでしまった。3月に発売した中では売れた部類だから、騒ぎの規模も自然と大きくなった次第である。4月4日に追加パッチが配布されるも、CGが2枚増えただけ。35枚が37枚になっただけであり、まさしく焼け石に水。にっちもさっちも行かなくなり、とうとう4月16日にエフォルダムソフトは解散する旨をOHPで告知した。あかべぇの社長はニコ生で会見して釈明を行おうとするも「なぜこんなことになってしまったのか?」という原因をハッキリさせない曖昧な物言いから余計火に油を注ぎ、炎上は拡大の一途を辿っていく。かくして「怒りの庭」や「アイ惨ショック」に続く「銃騎士事件」が新たにエロゲ史へ刻まれることとなりました。まだ現在進行形だが、業界全体に影響しかねない(同様の事態が再演されることを恐れたユーザーたちが今後予約を渋りかねない)だけになるべく迅速な収束を願いたいものだ。銃騎士、アニメーションをふんだんに盛り込んだオープニングムービーの出来はすごくイイって評判になってたんですけどね……まさかアレで資金を使い果たしたのか? そんなわけないか。系列ブランドということで解散後はあかべぇが尻拭いのパッチ制作を引き受けることになりそうですが、ファンの「憂姫はぐれ原画のCGをあと40枚は追加してほしい」という要望にどう応えるのか。別の原画家を起用して描かせる、という案もあるそうですが、果たしてそれで騒ぎが収まるのかしら。エフォルダムソフトとは関係ないけどCuffsの『永遠(仮)』もどうなったんだろう……「代替補填タイトルに関するお知らせ」からもう一年以上が経過していますよ。トノイケたん、生きているのかな。

 それにしても35枚か……ひょっとして「34(三銃士)+1(ダルタニアン)」を意味する頓知なのか? と勘繰ってしまいました。

ガルシア・マルケス氏死去=「百年の孤独」のノーベル賞作家

 ガルシア=マルケスの本は4冊くらいしか読んでおらず、あとは全部積んでいるから「もう彼の作品は読めないのか」という悲しみはなく、せいぜい「ゆっくり崩していかないとな」って程度なんですが……それでもやはりショックはショックだ。『百年の孤独』を始めとする、日常と幻想が融合して地続きになったような「マジックリアリズム」で有名な南米の作家ですけど、ジャーナリストとして活躍した時期もあるだけにノンフィクション作品の本もいくつか翻訳されています。最近はバルガス=リョサとの対談本『疎外と叛逆』が出たし、もうすぐ講演記録の『ぼくはスピーチをするために来たのではありません』も発売される予定となっていました。ハードカバー作品が多く、お値段が嵩むことから未読の方にはちょっと手が出しづらい印象があるかもしれませんが、『予告された殺人の記録』『族長の秋』といった代表作は文庫版も出ているので、ここから入るといいかもしれません。ノンフィクションだと『誘拐の知らせ』が入手しやすい。


2014-04-14.

『ねこのこはな』の殺人的な可愛さに心臓発作を起こしかけた焼津です、こんばんは。無論嘘です。

 が、二足歩行で服を着て喋る猫の「こはな」が途轍もなく可愛いのは本当。見た目からすると猫っていうより「猫耳幼女」。飼い主がSF作家で、各章のタイトルも有名SFのパロディになっており、「獣耳……SF……『ネコっかわいがり!』……うっ! 頭が……! にゃーにゃーぜあっついんぞぶとーたーしぇー♪」となる。実際脳が溶けて知性崩壊を引き起こしそうなほど可愛いので、この危険性の高さはもっと周知徹底させるべき。ちなみに各話の元ネタを列挙すると、

 第1作 上弦の月を喰べる猫 → 『上弦の月を喰べる獅子』(夢枕獏)
 第2作 バケツ一杯の猫 → 『バケツ一杯の空気』(フリッツ・ライバー)
 第3作 百億の猫と千億の犬 → 『百億の昼と千億の夜』(光瀬龍)
 第4作 マイナス・ネコ → 『マイナス・ゼロ』(広瀬正)
 第5作 猫は無慈悲な夜の女王 → 『月は無慈悲な夜の女王』(ロバート・A・ハインライン)
 第6作 ネ航船団 → 『虚航船団』(筒井康隆)
 第7作 猫は沈黙せず → 『神は沈黙せず』(山本弘)
 第8作 猫転世界 → 『逆転世界』(クリストファー・プリースト)
 第9作 猫へ贈る真珠 → 『美亜へ贈る真珠』(梶尾真治)

 ってな具合。そういえば『非公認魔法少女戦線』の章題もSFネタが多かったな。「魔法少女はすべて星」も『天の光はすべて星』だろうし。SFはかっこいいタイトルが多いからよくパロられますね。

・前回特集したのをキッカケに菊地秀行の著作数などを調べているが、ファンサイトの情報とネット書店のデータを元にしてリストアップしたところ、単著の小説はバージョン違いや合本の類をカウントしないで数えると400冊弱あった。その中で「魔界都市・新宿」のシリーズに属するものはまだ100冊も行ってないらしい。てっきり200冊くらい行ってるかと思ってた。

 パラレル扱いの十六夜京也シリーズも足した魔界都市が100冊くらい(うち48冊が魔界都市ブルース、ドクター・メフィストは17冊)、Dが40冊、八頭大が21冊、闇ガード10冊、妖魔20冊、他いろんなシリーズの作品が100冊くらいあって、残りの単発作品がざっと80冊ほど、という構成。今年でデビューから32年になる菊地さん、平均すると毎年11冊か12冊くらいは出していることになります。あたかも月刊誌の如し! 一番すごい年は20冊超えていた。ひょえー。参考までに書いておくと、夢枕獏が現在2、300冊くらいで、故・栗本薫が約400冊。刊行ペースとしては栗本>菊地>夢枕って感じです。でも日本最強は赤川次郎、去年「著書が555冊を突破した」とかでお祝いがあった。西村京太郎は一昨年に500冊を突破しているが、デビューから48年くらい掛かっているのでペースとしては菊地よりも遅めです。全盛期と比べれば幾分かペースダウンしているにしろ、菊地はこのまま行けば十数年後に500冊超えそう。

 ちなみに単発作品の中には『妖戦記 魔界都市1999』『銀座魔界高校 魔界都市異伝』など副題に「魔界都市」が入っている作品もありますが、これらは「魔界都市・新宿」のシリーズとは関係ないらしい。まあ「銀座」とか言ってる時点で新宿は関係ないってわかりますけど、シリーズの中には「区外」(二十三区外ではなく新宿区外という意味)を舞台にした作品もあるので何か繋がりがあるんだろうなって思っていました。なかったのかよ。

 あと“魔界都市ブルース”の最新刊は『美女祭綺譚』といって、なんと魔界都市でミスコンを開催する話らしい。審査員はせつらとメフィスト……あらすじ曰く、「賞品は美しき二人の魔人の口づけ。“区民”たちはキスを求めてエステ、整形に殺到、街はたちまち阿鼻叫喚の坩堝と化した!」 本当に菊地さんの発想は自由だな。正直、毎度毎度のお約束である秋せつらやドクター・メフィストの美貌誉め描写はギャグにしか見えなくなってきているんだけど、ネタとしてここまで徹底するならアリだと思います。

・拍手レス。

 小説界だけでなく漫画界でも、黎明期を拓いたような作者には緻密な伏線より熱さと勢いを重視する人が多いですよね。武論尊、鳥山明、車田正美、宮下あきら、ゆでたまご・・・・・・。まあ漫画界には、「この時代にいったいどういう思考回路をしてたんだ」と思わずにいられない超々大ボス
 続き 超々大ボス、手塚治虫氏がいるのですが。この人はもう、意識のチャンネルが我々とはどっか違うとこに繋がってるんじゃないかという気がしてくるレベルだなぁ。

 「既に手塚がやってた」の嵐はさながら日本漫画界におけるカウプラン・パテントのよう。でもあの人スポ根だけは描けなかったんですっけ。

 王雀孫 新作は入稿済みらしい。あとは出版社次第とか。
 これですね。噂によると某社が立ち上げる新レーベルの目玉に予定されているとか。

 林トモアキ氏新作出してましたね。読んで相変わらずこの人は自由にやってるなーと思いました(笑)
 「比良坂初音や羽衣狐のような超美人お姉様系を想像してもらえれば充分です」に笑った。まさしく「初音姉様のようなキャラデザだ」と思っていただけに。


2014-04-07.

『のんのんびより』2期決定の報に喜び舞い踊っていた焼津です、こんばんは。

 舞い踊ったというのは嘘というか比喩ですけど、これ見て血圧上がったことは確か。うれしいのん。7月に出る限定版のOVAで打ち止めじゃないかと危惧していましたが杞憂だったようだ。しかし原作ってそんなにストックあったけ? 7月に出る新刊が7巻で、正直1クールも持つネタがないような……いざとなれば『こあくまメレンゲ』で埋めるか。それにしても、“月刊コミックアライブ”の作品で2期目が来たのって『まりあ†ほりっく』以来ですね。あのときは第1期終了から2期決定の発表まで1年半くらい掛かったけど、今回は終了からほんの3、4ヶ月で発表が来た。『のんのんびより』はセールス的に見てもメディアミックスを除いたアライブ作品の中でもっとも成功した一本だそうだから、機を逃すまいと必死なのだろう。その必死さが良い結果に繋がればいいと思う。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』公式サイトオープン、アニメ化決定PV公開!監督:高雄統子、構成:高雄統子・橋龍也、キャラデザ:松尾祐輔 (萌えオタニュース速報)

 配信を開始したのが2011年11月だったから約2年半、アニメの開始時期(2015年1月)を考えると約3年。遂に課金兵たちの血と硝煙と金に塗れた夢が実った。映画のエンドロールにしぶりんが映ってたから「来るだろうな」と確信はしていた。『アイドルマスター シンデレラガールズ』はアイマスの派生企画であり、モバゲーが配信するアイマスということで「モバマス」等の略称が普及しています。同じ要領でグリーの配信している『アイドルマスターミリオンライブ!』も「グリマス」と呼ばれている。モバマスの特徴はなんと言っても登場キャラクターの多さ、日々増加していくので当方も把握し切れないが、確かもう200人超えたんだっけ? まだだったか? とにかくそれぐらいの人数が揃っており、アニメで全員の見せ場を作ることはまず不可能です。コンテンツとしての人気はあるけど、下手すると主要アイドルを紹介するだけで終わってしまうかもしれない。元のアイマス自体、ゲームやってない人からすると最初からキャラが多いように感じられただろうが、あっちはせいぜい20人くらい。モバマスの1/10です。それなりのストーリーを紡ごうとしたら最低2クールは必要で、もし1クールだけだったら本当にキャラ紹介のみとなりかねない。ゼノグラシアですら2クールあったんだから、1クールってことはたぶんないでしょうが……ちなみにこの『シンデレラガールズ』、本家アイマスとの繋がりもなくはない(765プロも出てくる)けれど、「765プロ=数多あるプロダクションのひとつ」であってそこまで密接にリンクしているわけでもありません。だから「アイマスとかよく知らないし……」という方もウェルカムな作りになる。はずです、たぶん。ぶっちゃけモバマスはオリジナルキャラが多いので本家アイマス知ってても知らなくても大差ないというか。当方みたいに実際のゲームやらないで二次創作界隈で楽しんでるライトな層もあるし、「物は試しに」と緩い気分で挑んでみては如何。

 ちなみに当方の好きなモバマス二次創作はニコニコ動画のサンユキこと「サンキューユッキ」です。野球好きアイドル「姫川友紀」を主人公にしたシリーズで、ほんの数分で終わる短いノベル形式のものが主ですが、2012年8月から開始して既に100本以上を超える長期シリーズになっています。「野球好き」という設定のないヒロインも話に絡んできたり、実在の野球選手(をモデルにしたキャラ)が登場したりと、公式のレールから外れる内容ではあるが面白い。さすがに100本以上もやってるとシリーズ特有の人間関係も生じてくるし。凛と卯月の組み合わせが好きな当方だが、凛とユッキのコンビも悪くない。いや、いい! 「ユッキ」はネットスラング由来の愛称で一部のファンのみが用いていたが、最近は公式でも「ユッキ」表記が散見されるようになってきたという。また「B.B.ロワイヤル」というユニットも結成されたが、そのメンバーはサンユキでお馴染みの3人組(姫川友紀、村上巴、難波笑美)だった……偶然の一致か? それとも必然? 公式と二次の垣根が意外と曖昧なのはモバマスひいてはアイマスの特徴であります。二次創作じゃないけど「春香と段ボール箱」(中の人ネタ)もあったな、そういえば。

“ラノベの神祖” 菊地秀行について(あざなえるなわのごとし)

 今現在も勢い良く新刊を出し続けている(今年に限っても『D―貴族祭』で3冊目)せいか、総括して語られることが少ない作家・菊地秀行。奈須きのこや虚淵玄、平野耕太など、あの年代のエンタメ作家(70年代生まれ)はだいたい菊地秀行の影響を受けていると申し上げても過言ではない。田中ロミオあたりは夢枕獏の影響の方が強いかな。当方は文章のノリがいまいち合わないせいであまり読んでおらず、「菊地秀行について詳しい」などとは到底口にできないポジションだが、「菊地秀行について断片的な知識しか持っていない人間」があえて語ってみるのも一興かと、恥を忍んで打鍵する。

 さて、菊地秀行の作風を簡潔に表現すると「見損なうな! 策などない!」。これに尽きる。先のことなど何も考えず、いつもでたとこまかせで書いていることを本人自らが豪語して憚らない。作者自身がどういうストーリー展開になるか知らずに書き始めている、だから予想外で面白い話になると。この方法論は板垣恵介の漫画にも通じる。夢枕獏も割と無計画に書き出すタイプの作家だが、菊地はそれよりも徹底しています。「前半と後半の乖離が激しく、ほとんど別の話になっている」とか「残り僅かになったところで慌しくまとめに入る」とか「伏線を投げ捨て、風呂敷を広げたまま終わる」とかいったパターンに出くわすのは、たまたま当方がそういう作品を読んだわけじゃなくて「菊地なら日常茶飯事だぜ」ってことらしい。チマチマと細かい設定も出てくるが、本質としては「緻密さよりも大胆さ」を重視する人です。だから、「菊地秀行って名前はよく見かけるけど、本が多すぎてどれから読み出せばいいのかわからない」と途方に暮れている方は、もうシリーズの途中だとかそんなことは一切気にしないで惹かれるオーラを感じた本へバッと手を伸ばせば宜しい。合わなかった当方が言うのもなんですが、波長が合えばそこからどんどん読み出したくなるはずです、きっと。

 「どれでもいいから気になった奴を読め」と言われても、何百冊もある著書を前にすれば菊地未体験者はやっぱり戸惑うでしょう。もう少し話を続ける。菊地秀行の小説デビュー作は『魔界都市〈新宿〉』で、これが1982年だったから作家歴は30年以上と言うことになります。「魔震(デビル・クエイク)によって外界から隔絶され魔界となってしまった新宿」を舞台にした伝奇アクションで、要するに『PARADISE LOST』の源流みたいな位置付けだ。その後、魔界都市化した新宿は菊地作品の主要ワールドとして拡大していくことになるが、デビュー作の時点ではあまり設定を詰めていなかったせいか、後の作品と話の繋がらない部分が多々ある。ファンの間では「一種のパラレルワールド」と受け止められているようです。「作家としての菊地秀行」を遡りたい方はともかく、「巨大シリーズとしての魔界都市」を把握したい人は後回しにした方がいいかも。「魔界都市」の全容を視界に収めたいと熱望するなら素直に『魔界都市ブルース』(美貌の糸使い・秋せつらを主役に据えた連作シリーズ)から読みましょう。デビュー作版『魔界都市〈新宿〉』では「十六夜京也」という少年が主人公を務めるが、6年後に出た続編『魔宮バビロン』以降、しばらく出番はなかった(彼の愛用する木刀「阿修羅」について言及する作品もあったそうで、決して菊地が十六夜京也を忘れていたわけではない)。復活となる十六夜京也シリーズ第3弾『騙し屋ジョニー』が出たのは2008年、なんと20年後です。2010年に第4弾『牙一族の狩人』、2011年に第5弾『地底都市〈新宿〉』、2013年に第6弾『狂戦士伝説』と、なぜか最近になってシリーズが再始動している。『魔界行』3部作の続編も20年後に出ていた(間に『魔童子 魔界行異伝』って番外編もあったけど)し、菊地的には「20年」というのが一つの節目なのかもしれませんね。『魔界行』は3部作を一冊にまとめた完全版も発売されており、現在もなお新品が入手可能なので「とりあえず何かひとつ」って考えている方はアレからがいいかも。

・奇水の『非公認魔法少女戦線 ほのかクリティカル』読んだ。

 「2巻が発売が間近になってようやく1巻を読み出す」という泥縄式積読解消法によって崩された1冊。出たのが今年の1月だったから、積んでいた期間はほんの3ヶ月だ。3年どころか13年くらい積んでいる本もある当方にとっては短い方である。さておき、本書は新人のデビュー作に当たります。作者名はそのまま「きすい」と読む。デビューへ至る具体的な経緯はあとがきにも書かれていない(抽象的には書かれている)が、「担当様に拾い上げていただいて」という記述があることを察するに新人賞からの拾い上げでしょう。検索すると第18回に『奇説二天記』のタイトルで応募している「佐藤奇水」の名前を確認できる。『非公認魔法少女戦線』の中に「マジカル二天一流」が出てくるし、原型みたいな位置付けの作品だったのか? ジョークか本気かわからないが、あとがきによれば本書のタイトル案は他に『俺の彼女が魔法少女なはずがない』や『非処女魔法少女プリティスターほのか』があったらしい。

 牧瀬琢磨の彼女である美守ほのかは、現役時代に「伝説」と呼ばれるほどの華々しい活躍を繰り広げた魔法少女だった。現在は引退し普通の女子高生として日々を過ごしている……表向きは。実は全然普通じゃなくて、「非公認魔法少女」として傭兵稼業を営むことで貧しい家計を支えていた。非公認魔法少女、それは現役引退した後も魔力を失わず、「正規の魔法少女」には頼めない汚れ仕事を高額の報酬と引き替えに請け負う存在。3億円プラスαの条件を提示されてほのかが引き受けた新たな依頼――それはかつて彼女へ力を授けた「〈星〉の魔法界の女王」を討ち滅ぼす、という内容だった。悪に堕ちた女王は現役の魔法少女たち、すなわち「公認魔法少女」の討伐隊を悉く返り討ちにして「バッドソウル」の色に染め上げ、闇の軍勢へ引き入れている。そのため現役メンバーはほぼ壊滅状態にあった。もはや金のために命を張る消耗品(エクスペンダブルズ)、非公認魔法少女だけが頼みの綱。危険を顧みず死地に赴くほのかの胸に去来するものは、愛しき彼への想いか、旧き仲間たちへの友情か、それとも……。

 ダークで煤けた感じの魔法少女譚、というと今では『魔法少女まどか☆マギカ』を連想する人が多いかもしれないが、だからと言って「こうした暗黒系魔法少女の流れはまどマギが切り拓いた」などとドヤ顔で語ったら千、いや万の反論とツッコミが押し寄せてくるだろうことは確実である。「魔法少女モノ」の歴史が古い以上、その影に当たる「ダークネス魔法少女」もまた古い歴史を持つ。が、遡るとキリがないので、個人的に強烈なインパクトを受けた『魔法少女アイ』の名を挙げるのみに留めておく。これは2001年6月22日に発売されたアダルト向けPCゲーム、いわゆる「18禁のエロゲー」です。「悪と戦う魔法少女たち」が敗北すれば触手をはじめとする敵キャラに徹底的に嬲られる、という容赦のない陵辱モノだった。細い体をした孤高の魔法少女「アイ」が直向きに戦い、無惨に穢されてゆく。これ以前にも魔法少女がヒロインのエロゲーは何本かありましたが、「変身系ヒロインがグチャグチャに犯される」路線を明確に打ち出したことで、翌年の『超昂天使エスカレイヤー』ともども後続のソフトに強い影響を及ぼします。いろいろあって最後は「ごらんの有様だよ」になってしまいましたが……茜色に染まる空を背景にステッキを手に提げて電柱の上で佇むアイの姿、心を撃ち抜かれずにはいられないものでした。風にたなびく長いリボンと画面を遮るように張り巡らされた電線の対比は、何度眺めても美しくて寂しい。

 『デビルマン』めいた叙情を誘うダーク系魔法少女モノは最近密かな水流として暗渠を這っているようで、ざっと見ただけでもコレの他に『魔法少女育成計画』『魔法少女禁止法』『アンチ・マジカル』の改題改稿版)、『ロストウィッチ・ブライドマジカル』『魔法少女サイト』『魔法少女・オブ・ジ・エンド』のスピンオフ)などがある。ダーク、ってのとは少し違うかもしれませんが、『魔法少女プリティ☆ベル』『魔法少女地獄』『魔法少女管理官・半村久雪』らへんも変り種だ。『ばいおれんす☆まじかる!』は続いていればシビアなストーリーになっていただろうかな……閑話休題、『非公認魔法少女戦線』はタイトルの時点で察せられるように「シビア&ダーク」な魔法少女モノだが、あんまりキツすぎると読者がヒいてしまうってことを心配したのか、バランスの取り方に苦労したようなムードがそこかしこから滲んできます。まず、ヒロインであるほのかが戦うのは「悪堕ちした公認魔法少女」で、彼女たちは性格どころか人格まで変わって「世界を守るために身一つで戦う、健気な良いカモ……もとい、良い子」から「他人を痛めつけることが三度の飯より好きなサディスト」になっている。このため話し合いは通じず、バトルで打ち負かすしかない。最終的には光属性の魔法をぶつけて浄化(ぶっちゃけ洗脳)することによって元へ戻すことが可能らしいが、本文中において「浄化(洗脳)」の描写がほとんどないため、バトルに敗北した悪堕ち公認魔法少女たちがどうなったのかがよくわからなかった。「愛と勇気」を合言葉にする路線の魔法少女モノだったら、善の心を取り戻した魔法少女たちが味方に加わる展開へ雪崩れ込むだろうけど、『非公認魔法少女戦線』はキャラ数が多いこともあってか倒したらそれっきり、ほとんどが使い捨ての状態になっています。「マジカル捕縛術」を使っていたくらいだから基本的に非殺傷設定のはずだけど、空を飛んで逃げようとした魔法少女をライフルで撃ち落として、その子に関してはそれっきり……みたいな扱いだと「ライフル自体は非殺傷でも墜落の衝撃で即死したのでは?」って心配になる。生存していて「彼女はもうすっかり元気です」な姿を描いたら読者が安心してしまってダークなムードが台無しになるし、かと言ってガチに殺害したらさすがにドン引きだろうし……そんな思惑があったかどうか知らないが、とにかく負けたキャラが生きてるのか死んでるのかよくわからないのでモヤモヤします。

 シリアス路線を重視しつつ、魔法少女モノに対するパロディやメタっぽい要素を盛り込んでいるあたりも評価に困るところ。公認魔法少女の活動期間を三ヶ月(ワンクール)とか半年(ツークール)と呼んでいるのは明らかにTVアニメ番組を念頭に置いたネタだし、「魔法少女はキャラ付けが重要」と嘯いて変な口調をしたり奇天烈なポーズを取る子が出てくるのも、なんというか邪道系のノリだ。どう考えてもこの世界の魔法少女は「世界を守るため」というより「人々の見世物として」戦っている気配がプンプン漂うけど、チクチク刺す程度に留めて掘り下げない。パロディ要素が宙に浮いている感じで据わりが悪いです。だって、ほのか自身は「今まで三人、私の目の前で死んだ魔法少女がいたよ。あっけなく、死んじゃった――」とキッツい思い出を語っているのに、直前で「非公認魔法少女――世間では、傭兵魔法少女って言われている」「世間って何処だよ!」みたいな気の抜ける遣り取りもあるんですよ。「シリアス」と「ギャグ」の切り替えがちょっと中途半端な印象を受ける。このままギャグを突き詰めていけば「グロテスクな真実」に辿り着けるかもしれないのに「いや、このへんにしとこう」と引き返しちゃってるせいでコメディライクな部分が話に溶け込まない。本来外部、つまり読者に入れさせるべきツッコミを内部で処理しようとしているため、雰囲気の不整合が起こっています。作中のキャラが「こんなの御都合主義じゃねぇか」とか「なんて設定だ、チートすぎるだろ」とか「打ち切りエンドは勘弁だぜ」とか口にする、いわゆる「メタ発言」は「あらかじめ外部的な反応を取り込んでおいて内部的に処理することで内外の温度差を埋める」機能があるわけだけど、この場合は温度差を埋めずに却って活かす方向で掘り進めてほしかった。

 あまり誉めてないのでそろそろ「良かったところ」をピックアップしに掛かろうか。一番目立つ長所は「話の展開が早いこと」ですね。第一の刺客が襲ってくるのが44ページ、設定解説を挟んで第二の刺客が訪れるのが90ページ、そして116ページ以降の第三章で敵の本拠地に乗り込むため異世界へ赴く。全体が約350ページですから1/3くらいでお膳立てはほぼ終了し、あとの200ページはバトルに次ぐバトルとなります。「マジカル新陰流」とか「魔法の番長」とか、「何だかよくわからんがとにかくすごいもの」を矢継ぎ早に繰り出すあたりは菊地秀行に通ずるものがあるか。登場する魔法少女も口絵の紹介だけで10人、更に「イラストのない魔法少女」も何人かいるので、密度としてはワンクール分のアニメにも匹敵するストーリーに仕上がっています。「ライトノベルのシリーズ物はなかなか話が進まず、『読者サービス』とは名ばかりの水増し日常描写や投げやり気味のお色気描写、そしてどーでもいい会話ばっかりでイライラする」という方にはもってこいでしょう。続刊アリなので完結するわけじゃないが、1巻目の「ほのかクリティカル」だけでもキリの良いところまで進む。日常シーンと呼べるのは30ページくらいで、あとはひたすらストーリーを推進させているし、主人公とヒロインの関係も「くっつきそうでくっつかない」もどかしい代物では断じてなく、開始時点で付き合っているし、過去の行為として言及されるのみだがキスやそれ以上も済ませています。最初から一線越えてるせいでラブコチックなところがないのは、まあちょっと残念ではあるが……ノリさえ合えば一冊で充分な満足感が得られる、そういう本になっています。

 とはいえ、さすがに早すぎて「余裕のない構成だな」と感じなくもない。良くも悪くも遊びがないというか。緩急を喪失しているため、最初の刺客が襲ってくるあたりと最終決戦のテンションが概ね一緒になってしまっています。不要な日常シーンはバッサリ削ってるけど、必要な日常シーンもバッサリ捨てちゃったな、という印象。「魔法少女アニメの総集編を観ている気分」ってのが一番近いかもしれません。文章は簡潔明瞭で読みやすいけど、全体的に駆け足っぽいし、際立つ個性もなくて物足りない。魔法少女に対する偏執的な思い入れ、というのは文章から特に感じなかった。むしろイラストの方にそれを強く感じました。相互的な補完ではじめて成り立っていると申しますか、この『非公認魔法少女戦線』に関してはイラストあってこその作品だなぁ、と。テキスト偏重主義の当方がそういうふうに考えるのは珍しいことですが、「本編半分、イラスト半分」が偽らざる心境でした。

 というわけで第二の長所は「bun150のイラスト」だ。表紙は逆光気味のショットで「暗い」とか「地味」な印象を受けますが、実はイラストが表紙見返り(あらすじが書いてあるところ)まで食い込んでおり、帯を外してカバーを広げるとなかなか壮観です。見返りまで見ないと「ボロボロのマント」という中坊神経を刺激するカッコいいファクターは拝むことができないので、これは実物を手に取った者の特権と言える。魔法少女はみなそれぞれの衣装に腕章やワッペンを付けていて、これが「公認」であることを示すIDになっているのですが、公認期間が終わると(メタ的に言えば放送期間が終了すると)腕章やワッペンに描かれたマークへ大きくバッテンが入る。バーゲン本(ゾッキ本)に入る赤線やB判みたいなもんですね。バッテンのついている子が「非公認」であり、魔法は使えるけどどこかで存在を否定されているような物悲しさが付き纏います。イラストではバッテンが目立つような構図が採択されており、中でも100ページで降臨するほのかや287ページにおける後半戦の様子は本書を象徴するイメージとして「バッテン(非公認の証)」を強調している。裏表紙のSD絵、(>□<)顔でステッキをブンブン振っている「現役時代のほのか」の腕章にはバッテンがなく、ゆえにこそバッテンが「過ぎ去った日々」を想わせる。どうでもいいが目の部分の「><」はバッテンに見えなくもないな……サブリミナルか?

 最後に挙げたいのは、やっぱり「ヒロインであるほのかの魅力」だ。「数多の戦場と死線を越えてきた歴戦の猛者」という設定はギャグっぽく映るし、「そんな馬鹿な! 生身でマジカル八陣を突破してきた!?」「マジカル八陣なんて過去の遺物、変身するまでもないよ」みたいな会話には正直笑っちゃいましたが、なぜほのかがここまで無双の存在と化しているのかを説明する部分もあってジーンと来てしまった。彼女はもともと5人組ユニット(プリティスター)の最年少で現役時代は小学三年生だったのですが、他のメンバーたちが強大な敵を下せず次々と倒れていく中、その使命と魔法を引き継ぎながら戦い続ける道を選んだわけです。ほのかが駆使する複数の魔法は先輩たちから譲り渡されたものであり、見方を変えると「押し付けられた」力なのだが、彼女自身は「預かった力」と主張して憚らない。決して「自分の力」とは認めず、戦線から離脱していった仲間たちの想いごと背負って戦い抜いた。このへんは詳しく描写されないのですが、いろいろと妄想を刺激されて美味しい。ほのかは「たったひとりのレギオン」、もうちょっと魔法少女っぽい言い回しに変えると「ワンマン・プリキュア」なんですよ。彼女がこれまで辿ってきた苦難に満ちた道筋を、ほとんど概要だけの大まかな解説のみで妄想できるかどうかが本書を楽しむ上での鍵となる。正直、描写されている範囲に限れば「強えー、マジ強えー」ぐらいで、そこまで魅力的なヒロインとは言えません。表面的に読めば「『魔法少女リリカルなのは』『大魔法峠』」という安易なインプレッション止まり。「書いていないことまで想像を強いるのはちょっとね」とおっしゃる方には向かないかもしれません。「妄想! せずにはいられない!」って若DIOのような顔つきをするアナタには是非オススメしておきたい。並の魔法少女パロディだったら恥ずかしい口上をまくし立てた後で「何が綺羅星だよバカバカしい」とばかりに吐き捨ててキメ台詞やキメポーズ、「様式美」と呼ばれるものなど陳腐だ黒歴史だと否定しに掛かるところでしょうが、この作品は逆。かつて自分に力を与えた女王、ひょっとすると尊崇の対象であったかもしれないけれど、今や悪堕ちして見るも無惨な姿を晒している「なれの果て」に向かって少しの躊躇いを挟みながらも、堂々とかつてのキメ台詞を叩きつける。「傭兵」としての自分ではなく「魔法少女」としての自分、過ぎ去った覚悟と矜持をふたたびその胸へ取り戻すために。何もかもを背負い込もうとする少女が、捨てたはずのキメ台詞をどんな想いで喉から絞り出したのか、想像するだに震えます。

 結論を述べますと、「『魔法少女のその後』を描くアニメの、そのまた総集編みたいなシナリオ」であり、「イラストが好みに合わなければ厳しい」けれど、「行間を読んで『書かれていないこと』まで妄想することのできるスキルを所持した人」であれば大いに楽しめるだろう。妄想スキル不所持でも、テンポの速い深夜アニメに慣れていて「ほとんどのライトノベルは話がチンタラしていて読み通すのも苦痛」という方には、このスピーディな展開と簡素な表現、加えてアイデア盛り沢山で送るサービス精神の旺盛さがうってつけでしょう。反面、「本筋を追うばかりではなく、遊びの要素も欲しい」という方には不向きでしょう。「遊び」は妄想で埋めるしかない。当方は差し当たって2巻も読むつもりですが、果たしてここからどう話を広げていくのか、期待よりも不安が大きかったり。ページが変わらないのに価格が上がる(1巻は税抜630円、2巻は税抜650円で、ともに360ページ)って、これ2巻か3巻で終了するフラグが立ってますよね……いや、増税で紙の値段や印刷費用が嵩むことを見越して、定価に転嫁しただけや。そう思い込むことにします。余談だが、主人公の牧瀬琢磨。普通の少年で戦闘能力がないため、ほとんどの局面において傍観役・人質役になってしまい、ラスト以外では特に活躍するところがありませんでしたが、どうも聞いた話によると担当編集の要望で追加されたキャラの模様。つーことはコレ、当初は女の子ばっかりの話として構想されたわけか。そう聞くとなんだか納得しちゃいます。道理で妙に百合百合しい空気があるわけだ。


2014-04-03.

TYPE-MOONのエイプリルフール企画「TMチャンネル」が面白くて抱腹絶倒した焼津です、こんばんは。

 『Fate/EXTRA』の赤セイバーをメインに「赤生@ちゃんねる」をニコ生配信するというのが今回のエイプリルフール企画だった。当方は時間が合わなくて録画版の方で観ましたが、なんというか進めば進むほどフリーダムでカオスになっていくネタが楽しくて仕方なかった。TMの四月馬鹿企画で艦これの実況とか、想像の斜め上です。最後のゲストにも顎が外れた。EXTRAは一応持ってるけどやっておらず、せいぜい大まかなネタバレを喰らった程度の身ながら問題なく馴染めた。ただ、キャス狐さんの声があの人とは知らなかった。もっとこう、ロリっぽい感じだと思ってましたし。いやあの人もロリ声使えるタイプの声優ではありますけど。オマケで配信された「ろじうらじお」にて元気なさっちんの姿を眺めることもできてホロリ。楽しさでは赤生の方が上なれど、嬉しさに関してはろじうらが勝つ。しかし、弓塚さつきの不憫な扱いに同情を誘われた日からもう13年近くが経つのか……愕然とします。リメイクはまだまだ出そうにありませんが、レンの立ち絵?も出ましたし、進んでいることは進んでいる様子。とりあえず積んでいるEXTRAをやりたくなったが、先にドラマCDの方を聴いちゃおうかな。

『ニンジャスレイヤー』アニメ化決定! (萌えオタニュース速報)

 忍者が動いて殺す! 人気っぷりからアニメ化はまず間違いなしと見做されていたが、問題はどうアニメ化するかだ。マッドハウスが制作しているマーベル・コミックのアニメみたいなノリだったらあまり話題にならない気がする。かと言って下手に独自色を出そうとすると、演出がうるさくなりすぎて実写版『謎解きはディナーのあとで』みたいになっちゃう危険性も低くない。匙加減が難しいところでしょう。ヘッズは喜びつつ「どうか『ワッザ!?』な黒歴史になりませんように」と祈っているに違いない。このまま劇場化するまで突っ走って行ってほしい。

早見裕司 ジュニアの系譜(ライトノベルファンパーティー)

 書かれたのは10年くらい前のようだが興味深くて読み耽ってしまった。「早見裕司」は『メイド刑事』(全9巻、イラストは「はいむらきよたか」、2009年に実写ドラマ化)を手掛けた作家で、現在は名義を「早見慎司」に変えて活動中の模様。

 88年ごろというと、ジュニア・バブルの全盛期だった、と言っていいでしょう。今もジュニア文庫は、点数だけはたくさん出ていますが、初版部数が全然違います。今、相当な人でも、初版は1万5千、新人になると1万以下スタート、という話を聴きます。私がデビューしたときは、それまで全くの無名に等しく、アニメとも何の関係もないのに、いきなり2万5千部でのスタートでした。おかげで私は、「小説は儲かる!」という勘違い君になって、後で苦労するのですが……。

 ポッと出の新人でも2.5万部刷ってもらえる世界……別次元としか思えませんね。「キミィ、10万部未満なんてのは、売れてるうちに入らないよ」みたいな驕った発言が出版界のあちこちで飛び交っていたのもこの時代だろうか。花井愛子がティーンズハートで2年半に渡って45点出した小説群が累計900万部を突破したとか、聞いてるだけで失神しそう(最終的に彼女はティーンズハートで2000万部くらい売ったらしい)。当方は花井小説って読んだことない(手に取ったことさえない)んですが、古本屋の軒先に配置された「10冊で100円」のワゴンにギッチリとピンク色の背表紙が詰まっていた光景は今も懐かしく瞼の裏に甦ってくる。ティーンズハートは既に休刊して久しいレーベル(2006年3月、もう8年前だ)ということもあってか、ラノベ史やラノベ論の類ではコバルトよりも話題に上がりにくい。皆川ゆかの『運命のタロット』とか、なんで俎上に上らないのかが不思議だ。Fateと龍騎の設定類似を指摘する人はよく見かけるけど、そこに運タロのトピックが持ち出されることは滅多にない。「皆川ゆか」の名前で記憶を刺激される方は「番外編 : 皆川ゆかさんからのメール」をどうぞ。ティーンズハートの本は井上ほのかの作品が好きだったけど、買うのが恥ずかしいこともあってあまり熱心に集めていなかった。でも小野不由美の『バースデイ・イブは眠れない』『メフィストとワルツ!』『悪霊なんかこわくない』は持っています、と自慢。しかし数十円で投げ売られていたこれらにプレミアが付くとは予想だにしなかった。

 ライトノベルの来歴を巡るコラムは「ラノベ史探訪」あたりも面白いのでオススメ。“獅子王”(朝日ソノラマが発行していた雑誌)とか、古本で買ったソノラマ文庫の折込チラシでしか知らなかっただけに詳しい解説を加えてくれるのはありがたい。“電撃hp”は創刊当時から「欲しいけど高くて買えない……」と指を咥えて眺めていた雑誌だけに懐かしさで気絶しそうになる。正確に書けば雑誌じゃなくて書籍扱いでしたけどね。だから大きめの書店に行くと“電撃hp”のバックナンバーがズラッと並んでいたものでした(雑誌扱いだと返品期限があるため、通常の書店でバックナンバーが置かれることは少ない)。

エロゲメーカー「貧乳キャラもひとり入れとくか」←こういうのいいから(2次元に捉われない)

 巨乳にするとセックスアピールが強くなるので、「このキャラは貧乳とまで行かなくても、もう少し胸を控え目にした方が魅力を前面に押し出せたんじゃないかな」と感じることはたまにあります。胸が大きいせいで却って没個性に感じられてしまうというか。古いけど『めいくるッ!』の依音とか、胸の膨らみ具合が却って邪魔になっている気が今でもする。誰でも巨乳にすればいいというものではない、というのが当方の考えだから貧乳キャラが混じっているのは別にいいことなんですが……「バランスを取るためだけに貧乳キャラを追加」というのは「一人くらいは眼鏡っ子にしておくか」ってのと同じぐらい、思惑とは裏腹にバランスを壊す結果へ繋がりかねない。「調和」という概念は、相手に「違和感を覚えさせないこと」ではなく「『調和している』という幻想を抱かせること」によって成立します。つまり「バランスを取って調和させる」という行為は「相手の幻想を巧妙に刺激する」積極的な行為に他ならず、「一人くらいは〜」と消極的な態度で臨むと逆に相手の幻想へシミを残すことになりかねない。端的に述べると「蛇足になる」ってことです。たとえば6人の魅力的なヒロインを揃えたとしても、後から追加した1人のヒロインが魅力的でなかったらせっかくの努力が一気に台無しとなる。「最初から6人だけの方が遥かにマシだった」とユーザーは感じるでしょう。冗談抜きで記憶から抹消されますよ、『輝く季節へ』(『ONE』の移植版、PC版の正式タイトルは『ONE〜輝く季節へ〜』)の「清水なつき」とか。名前言っても「誰それ?」で、「PS版で追加された眼鏡っ子の……」と付け加えてやっと思い出してくれるレベルの存在感。『To Heart』の雛山理緒(隠しヒロイン、PC版の時点で存在していたがPS版は大幅にシナリオが追加された)が移植の影響でグッと人気を上げたのとは大違いだ。「えいえんの世界」に旅立ったのは浩平じゃなく、なつきだったのかもしれない……と茶化したくなるが、彼女の名前で検索すると詳細なシナリオ分析のテキストが未だにヒットする。麻枝ファンや久弥ファンからは完全に視界の外へ置かれている(『ONE』の移植は二人が退社した後に行われたため、追加要素に関しては両者とも一切関わっていない)なつきをこれだけ真剣に考察してくれる御仁がおったとは。少し感動してしまいました。

・拍手レス。

 まどかでメリーが埋まった、というのは認めざるを得ないかもしれませんが、原作の熱さ面白さはアニメ版とは比べものにならないと思うのです。そもそも雰囲気の違う別物、と言われればそうなのですがね
 「原作の面白さをそのまま再現」ってやれたら理想ですが、アニメはアニメなりの良さを目指すしかないですね。


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