2013年6月分


2013-06-29.

・昨日はPC版『神咒神威神楽 曙之光』の発売日だったが、それはそれとして『相州戦神館學園 八命陣』の情報公開来ました! ヒャッホウ気分満喫の焼津です、こんばんは、

 相変わらず初日はクソ重かった。涅槃寂静・終曲(アインファウスト・フィナーレ)でも発動しているのかと疑うほどページが黒々と止まった。『ゆゆ式』のアニメ観ながら読み込んでひと通り情報を眺めたけど、「発売日:今冬発売予定」か……遡ること7年前、『Dies irae(ディエス・イレ) Also sprach Zarathustra』の速報ページにも「冬予定」と書かれていたんですよね。思い出したくないけど忘れられない。が、とりあえずその記憶はデリっておいて話を戦神館に戻す。柊四四八(ひいらぎ・よしや)という少年が主人公で、彼は「筋の連続している明晰夢」を物心ついた頃から見続けているという。つまり、夢と現実を行き来しながら「24時間ずっと覚醒している」ような状態に置かれているわけだ。自分だけが特別、かと思いきや同じような境遇の少女がいて、更に他の友人たちも夢の世界へ招けるようになって……といった具合にストーリーが進行していく模様。

 夢の世界、作中用語で言うところの「夢界(カナン)」は8層構造になっているそうな。ああ、ずっと前に正田崇が『東京バベル』見て「設定被った」って言っていたのはコレか。『東京バベル』の方は7層構造なんだっけ。さておき、夢界の「第一層/モーゼ」は普通に見るただの夢、「第二層/ヨルダン」は連続した明晰夢、開始時点の主人公がいる箇所。「第三層/エリコ」は連続明晰夢を他人と共有することでMMORPGみたいになっている世界。第一層から第三層にかけては特に危険のないエリアみたいだけど、第四層以降は「死んだら現実でも命がなくなる」「そこでの行動が歴史に影響を及ぼす」といった重大な効果が付帯するようになります。そして「第四層/ギルガル」にひとたび降りれば、もう二度と引き返すことは出来ない。「ペナルティが死そのもの」というデスゲームを強制的に続けさせられる、まるで『ソードアート・オンライン』のアインクラッド編みたいな状況だ。SAOも夢界も「フルダイブ」という点では共通している。ただ、こっちはちょくちょく現実に戻れるって点で相違がありますね。「夢から逃げられない」のだから、深刻さはあまり変わりませんが。そして第四層以降はなぜか明治時代の日本に遡り、「第五層/ガザ」は日露戦争の頃の、「第六層/ギベオン」は第一次世界大戦の頃の日本が舞台となる。「第七層/ハツォル」と「第八層/イェホーシュア」は現時点じゃ不明扱い。夢界の行動次第で現実の歴史を改変することになる、っつー設定は『STEINS;GATE 』の世界線云々を連想する人も出てくるだろうが、個人的には『ねじの回転』を思い出した。なんというか、随分と欲張りに欲張った設定ですな……ライターが正田でなければ「おいおい、まとめられんのかよコレ」と不安がっているところだった。

 夢界には、主人公たち「戦真館」(彼らが現実世界で通う学園は「千信館學園」だが、かつては「戦真館」と呼ばれる軍学校だった) 除いて6つの勢力が対立している(神祇省、裏勾陳、鋼牙、逆十字、貴族院辰宮、べんぼう)とか、明晰夢ならではのイメージの力によって生み出される超常能力とそれを操る技法「邯鄲」が10種類ある(身体能力強化“戟法”のパワー型“剛”とスピード型“迅”/耐久力強化“楯法”の防御型“堅”と回復型“活”/イメージ遠方放出“咒法”の矢型“射”と爆発型“散”/解析・解体“解法”のすり抜け型“透”と破壊型“崩”/イメージ具現化“創法”の物質創造型“形”と環境創造型“界”)とか、複数の夢を掛け合わせる高等技「五常・顕象」も存在するとか……現在判明しているだけでも歯応えありそうな設定の目白押し。正田はもともとRPGが作りたかった、というのは本当のようですな。明らかにゲームシステムを意識した設定だわ。これをやり込みゲーとして実装するだけのノウハウがlightにないことは確実だから、ひたすらテキストを読み進めるだけのいつも通りのノベルゲーに仕上がるでしょう。当方はそれをこそ待望しているのですが、中にはこういう設定を見てアリスソフトのようなゲームを期待しちゃうユーザーも出てくるかもしれませんね……とにかくこれ、めっさくさ楽しみですわ。キャラ数からして既に半端なさそうな雰囲気だし、細かいネタを拾い出したらキリがなさそうだし、こりゃ今年の冬は熱くなることが確定的に明らかだな。

 それにしても我堂鈴子(がどう・りんこ)の顔芸ナニコレ珍百景。神野明影はもう存在自体が芸になってるレベル。そして大杉栄光は名前から漂うオーラがヤバい。時代的に。

王雀孫さんがスーパーダッシュ文庫からラノベ作家デビュー。タイトルは「始まらない終末戦争と終わっている私らの青春活劇〜おわらいぶ〜」(家宝は2次元)

 やっとか……驚きはなく、むしろ待ちくたびれた感さえある。タイトル長すぎで、正直ジャクソンじゃなけりゃ様子見に徹しているところだったけど、これは即日購入せねばなるまい。たぶん一冊完結でしょうね。続刊モノだったらそれこそ『続かないライトノベルと終わっている王らの頭頂部〜つらいぶ〜』になっちまうぞ、マジで。

メガストア9月号の付録にライアーソフトの『腐り姫』が収録されることに!(家宝は2次元)

 ギャグゲーメーカーの印象強かったライアーソフトが「うちだってシリアスとかイケんだぞ!」という事実を証明してみせた記念碑的一作。プレミアが付いていることで有名な『腐り姫読本』は座談会のメンバーが超豪華。「星空めてお、虚淵玄、田中ロミオ、奈須きのこ、中村哲也」の5人ですよ。この座談会で奈須と知り合ったことが、『ガールズワーク』などTYPE-MOONの企画のあれやこれやに星空めておが関わる遠因になったと言われている。虚淵と中村もこれが縁だったのか『エンシェントミスティ』でコンビを組んでいる。気になる人は検索して詳しいストーリーを知るのもイイですが、まったく知らないというのであればいっそ予備知識ゼロで臨むのもまた一興。「えっ? えっ? どうなってんのコレ? どうなんのコレ?」とグイグイ引き込まれること請け合い。終わった後はいろいろと謎解きや答え合わせをしたくなるでしょう。そんなときにうってつけなのが『腐り姫読本』、だったんですが……現在入手困難となっています。復刊が待ち望まれる。

「アニメ化が決定!!!」←昔の俺「やったぜ!」(ひまねっと)

 これに関しては逆かな。昔は「原作再現」とかそういう部分は完全に諦めて妥協しないといけない感じだったけど、最近は技術の向上もあってか原作再現度が高まってきた。アニメから入って原作読み出しても、驚くくらい違和感がない。おかげで最近はアニメ化決定してもすぐにその作品を読み出さず、アニメが終わるかある程度進むまで待ってからおもむろに手を付ける塩梅となっています。ただ、昔のアニメって技術や予算がアレだったりする反面、妙な熱意が篭もっていてクオリティ以上に面白かったりするんですよね。最近のアニメは作画等、クオリティの維持でいっぱいいっぱいになっていて少し窮屈なムードが漂ってこないでもない。商品として見るならクオリティも大事ですけど、「面白さ」とクオリティはそれほど密接な相関関係があるわけじゃないのかもしれません。

・吉河美希の『山田くんと7人の魔女(1〜7)』読んだ。

 ドラマ化決定のニュースで知り、それがキッカケで読み出した漫画。キスをすることで魔法のような超常現象を引き起こす存在、通称「魔女」を巡ってドタバタ騒動が繰り広げられる。正体不明の魔女がいたり、明らかに魔女だけど能力が判明するまで時間の掛かる子がいたり……とサスペンス調の造りをしているものの、ドが付くほどのシリアス展開はなく、騒動が持ち上がるたび主人公が翻弄され、足掻き切ったところで割合あっさりと騒動が終結し、次のフェーズに移る。そのため、サスペンスとして読むと「え? もう○○編終わり?」といささか拍子抜けすることになります。基本は主人公が女の子たちとチュッチュしまくるライトなテイストのラブコメだ。とにかくこの漫画、キスシーンが多い。「能力を使用するためにキスが必要」という設定だからそうなるのは当然だけど、もう誰と誰がキスしたのか把握できないくらい接吻が頻発する。いちいち描いていくとキリがないため、「話の流れ上はキスをした」んだけど実際のシーンは省略、ってなることも多々あるほど。何せ、男同士のキスも多いですからね、コレ。主人公は魔女じゃないんだけど、ちょっと特殊な位置付け(最新刊でもまだ具体的なことは分かっていない)なので、野郎と唇を交わす必要に迫られる場面が何度も訪れる。最終的にはキスが単なる挨拶みたいに思えてきますね。中には舌を入れる子もいますが……アレって伏線かと勘繰ったけど、何も解説がなかったところを見ると単に舌を入れたくて入れただけなのか?

 いきなり核心を明かす形で紹介を書き出してしまったけれど、『山田くんと7人の魔女』はゆっくりと外堀を埋めるようにしてストーリーを薦めていくタイプの漫画なので、展開自体は結構遅い。1巻の時点では、前段で説明したような設定はほとんど詳らかにされない。「魔女」という存在について触れられるようになるのも3巻あたり、話数にして24話目以降です。読者は作品タイトルから「ああ、このキスすると不思議な現象が発生する女生徒たちを『魔女』と呼ぶんだろうな。『7人』ってことはあと○人ヒロインがいるのか」と推察するわけだけど、最新刊(7巻)の時点じゃ「7人目の魔女」はまだUNKNOWNのまま。次巻予告にも「そして最後の魔女が姿を現す!」的な惹句が載ってないし、最短でも正体が明かされるのは9巻以降でしょう。焦れる。

 が、申し上げた通り、この漫画はあくまでラブコメチックな遣り取りを基調としているから、なかなか謎の答えが暴露されなくてやきもきしていても、それはそれで面白かったりする。ハーレムってほどじゃないが、主人公に気を寄せるヒロインは既に何人かいるし、無表情なメインの子も徐々に腹立ちや嫉妬心を覗かせるようになってきている。修羅場の果実が育ちつつあるわけですよ。予感ですが、たぶん『山田くんと〜』は「7人目の魔女」が判明してからが本番だと思うんですよね。タイトルに冠するくらいだし、無計画に展望もなく新ヒロインたちを投入していったわけではあるまい。きっと、「ここからが(ラブコメ的な意味での)ほんとうの地獄だ」になるはず。ちょう楽しみです。

 個人的に好きなキャラは小田切寧々。悪役っぽい言動の割にいろいろと抜けていて、パンモロサービスとかしてくれる素晴らしさといったら。愛が重い飛鳥美琴もイイ味出してるけれど、まだまだ掴みどころがないからな、あの子は。それはそれとして滝川ノアを見てると、どうしてもロボノの神代フラウを連想してしまう……設定がややこしくてちょっとゴチャゴチャしているけども、ラブコメとしてはスナック感覚でサクサクと読める一品なので、表紙を見て「おっ、この子いいな」と惹かれるものがあったらそこから読み出してみるのも一興。

・拍手レス。

 劣等感の姿を見る度に気持ちが沈んで、更に劣等感が煽られて、その姿を見て更に落ち込んで……なんて負のスパイラル
 劣等感の振る舞いがひどすぎて「自分がどうにかしなければならない」と却って落ち着くも結局問題は何一つ解決していない罠。

 王雀孫ラノベデビュー、マジ?定期的に出せるの?
 定期的に出てるかと思いきやいつの間にか作者名が別人に……とか。


2013-06-26.

・人は誰しも劣等感と優越感の振幅によって生きていくものですが、もしも劣等感や優越感が美少女姿で具現化したら……? とくだらない妄想を育む焼津です、こんばんは。

 常に得意気な顔を崩さず鼻と背が高い金髪碧眼ゆるふわ愛されカールの「関越優子」と、美人だけど陰気でいつも青白い顔を俯かせてギリギリと歯軋りしながら相手を上目遣いで睨めつける低身長市松人形系黒髪ロングの「関東劣花」。主人公が内心優越感を覚えるたび、傍らに佇む優子がドヤ顔で顎を反らせたり、足取り軽くスキップしながら「ねぇ今どんな気持ちです? ねぇねぇ、どんな気持ちなんですぅ?」と付きまとい相手の顔を覗き込み増上慢な本音を容赦なく撒き散らす。一方、劣等感を必死に隠そうとしても、背中に張り付いている暗黒オーラ全開の劣花が血の涙を流し、マンドラゴラもかくやという悲鳴を挙げる。「あ、あ、あ……もう駄目! き、き、消えてなくなりたい! 消えてなくなりたいぃぃぃ!」と叫びながら袖を掴む。裾を引っ張る。素肌に爪を立てる。震えながら主人公の股の間に潜り込む。股間から響く泣き声交じりのバイブレーション。

 もっとも危険なのがアレですね、コンフリクトって奴です。葛藤状態というか、劣等感と優越感が鬩ぎ合う瞬間。文字通り優子と劣花がぶつかり合ってキャットファイトを繰り広げるわけです。がっしりと両手を組んで玄翁の如く大上段から振り下ろされるスペリオリティ・ハンマー。「地べたに這いつくばりあそばせ、蟻ィィィィ!」「こ、こっちは最初から地面這いずり回ってるんだよ、肉トーテムポールがあぁぁっ! ロケットみたいにどっか飛んでけやぁぁっ!」 地を這うような超低空のインフェリオリティ・ドロップキック。どっちを取るのか、選択を迫られる主人公。漫画やライトノベルだったら最後はふたりが和解・融合・消滅して何か良さげな結論出してFinだろうけど、エロゲーだったら確実に3Pルートがあるだろうな……「俺は劣等感にしゃぶらせながら優越感の乳房を揉みしだいた」とか。何か高度な比喩表現のように感じられてくるから不思議だ。

生徒はパンツ着用禁止、紺野あずれの赤面ラブコメ開校(コミックナタリー)

 『こえでおしごと!』が来月出る10巻で完結するけど、しんみりしてる場合じゃねぇ。異常な世界を平然とにこやかに描く作風の紺野あずれが本領発揮しすぎなくらいフルパワー出してます。普通なら「いかにも出オチ臭い設定だな」と鼻白むところですが、紺あずであれば問題ない。「赤面する女の子が大好き」という彼のリビドーが存分に炸裂するであろう。ところで『こえでおしごと!』最終巻の限定版には特典としてPCゲームが付いてきますけれど、amazon限定版では更にそのゲームのラフ画資料と脚本集が付いてくるらしい。が、それはそれとして通常版の表紙がすごいインパクト。クレイジーヘヴン状態。

『巡幸の半女神』講談社ラノベ文庫8月刊に新井円侍新作(主にライトノベルを読むよ^0^/)

 「どっかで見た名前だな」とは思ったが、言われるまで気づかなかった。そうか、『シュガーダーク』の作者か。スニーカー大賞を受賞して、発売前に記者会見までやって、プレッシャーが掛かりすぎて次回作書けなかったのではないか……と噂されていましたな。もう4年近くが経つことになる。あれだけ華々しく宣伝された作品が、今や「品切れ 重版未定」なんだからショッギョムッジョだ。果たしてこれが再起の契機となりうるだろうか。そして『約束の柱、落日の女王』のいわなぎ一葉も復活。調べてみるとこの人は少女向けレーベルに移っていたみたいですね。それでも新刊は3年ぶりか。こういう「ひっそりと久々の新刊を出す作家」が意外と多くて退屈しないですわ、出版界。

週マガの剣戟バトルマンガ「我間乱」約4年の連載に幕(コミックナリー)

 終わっちゃったか……「虚蹴跳」みたいな変テコ理屈の技(落下する直前に後足で前足を蹴ることによって空中で加速する)もあったけど、最初から最後までひたすらバトル尽くしのストーリーを貫いてくれた、血腥くも懐かしい少年漫画でした。一応女性キャラもいたけど、9割以上は男同士の殺伐とした遣り取りで埋め尽くされている。1巻発売から少し経った頃にたまたま「この漫画が面白い」という感想を見かけて、それ以来3年以上に渡って読み続けてきました。完結するのが寂しいと申しますか、ぶっちゃけ話ちゃんと畳めたの? という疑念が湧いてくるけれど、ラストはこの目で確認するとしよう。最終巻は8月16日発売予定。全22巻、絵柄もキャラも話も流行り狙いじゃなかった作品にしては長く続いた方である。新作も期待したい。

・真実一郎の『サラリーマン漫画の戦後史』読んだ。

 サラリーマン漫画はほとんど読んだことないし、あまり興味もなかったが、「丸ごと一冊サラリーマン漫画論」という新書はユニークで面白そうだな、と手を伸ばしてみた。『マンガホニャララ ロワイヤル』で著者が「最近こういう本を読んだ」って具合に紹介していたことがキッカケとなった。サラリーマン漫画論だから当然『課長 島耕作』は無視するはずもなく、多くのページを割いて言及しています。「へえ、島耕作ってこんな話だったのか」と初めて知りました。肩書きがどんどん偉くなっていくとか、「遂に社長になった」とか、初恋を描く「少年 島耕作」までやったとか、終いには「宇宙皇帝 島耕作」や「胎児 島耕作」までやり出すだろう、みたいな話は耳に挟んでいたけれど、詳細な内容について語られているところを読むのはこれが初めてでした。冊数のせいでどうしても読み出す気にならない島耕作だが、紹介文の端々から「雰囲気」みたいなものが伝わってきて、ちょっと読みたい気持ちも湧いてきたり。

 本書の特徴は、「サラリーマン小説の大家」として長者番付に載るほど上り詰めておきながら、あっという間に読まれなくなってしまった源氏鶏太(amazonで著者名検索すると700冊近くヒットするのに、新品で手に入る本は今や2、3冊程度)を大きく取り上げていることでしょう。源氏鶏太の小説で繰り返し描かれる「勧善懲悪」(誠実な善人である主人公は報われ、主人公と敵対する卑怯な悪役は必ず失脚する)、「人柄主義」(仕事の成果よりも人柄がものをいう)、「家族主義」(会社をまるで家族のように永く愛する居場所としてとらえている)、この三要素をまとめて「源氏の血」と呼んでおり、「〈源氏の血〉を継ぐ弘兼憲史」といった調子で以降の論を分かりやすくスムーズに展開できるよう工夫している。源氏鶏太は当方にとって、「古本屋に行くと棚を埋め尽くすぐらいの在庫がある作家」というイメージがあります。赤川次郎、内田康夫、大藪春彦、菊地秀行、西村京太郎、平井和正、横溝正史、これらに並ぶか上回るくらいの冊数がビッシリと詰め込まれていました。あの緑色の背表紙(うろ覚えだけど、角川文庫だったかな)の群を見て「あのへんが源氏鶏太のコーナーか」と遠目から識別できたものです。「け」で始まる名字の作家は珍しく、他は軒上泊くらいしか思いつかないし、コーナーとして認識可能なレベルの売上を誇った「『け』で始まる日本の小説家」など恐らく源氏鶏太だけでしょう。なにぶん小中学生の頃だったから「サラリーマン小説の大家」にはまったく興味が持てず、あれだけの冊数があったのに結局一冊として読むことはなかった。そうこうするうちに、古本屋ですら源氏鶏太の小説を見かけなくなった。探せば見つかりますけど、せいぜい数冊。あの山のような在庫は何処へ行ったのだろう……と、そんなふうに個人的なノスタルジーを誘う作家なんです。

 源氏鶏太を真正面から取り上げたうえ、彼の小説群が与えた影響を分析していく、「源氏鶏太が気になっていたけど、気になっただけで終わってしまった」当方みたいな人間にはうってつけの一冊でした。タイトルも知らないような作品や、タイトルは見たことあるけど読んだことはない作品が大半だけど、「源氏の血」というキーワードでアウトラインを取ることに成功しているおかげで最後まで飽きずに読み通すことができた。中には「劇画・オバQ」『東京トイボックス』みたいに「サラリーマン漫画」として認識していない作品もあり、「劇オバやトイボをサラリーマン漫画論の俎上に乗せるとこんなふうに見えるのか」と目から鱗だった。「あまり興味もなかった」けど、これだけ語られると読みたくなってきますね、サラリーマン漫画。特に『ツルモク独身寮』は引用されていたイラストが魅力的でした。

・拍手レス。

 FLIPFLOPsならスズログも面白いですよ。三巻で終わっちゃいましたけど
 『スズログ』はあまりピンと来ず……それで『ダーウィンズゲーム』ちょっと迷ったけど、買ってよかった。


2013-06-22.

WHITESOFTの新作『ギャングスタ・リパブリカ』、ふたたび発売延期(6月28日→7月26日)

 なんとなくそうなる気はしていた。タイトルを『ギャングスタ・パプリカ』と間違われることに定評のある『ギャングスタ・リパブリカ』、発売ギリギリになって延期を繰り出す態度はなるほど、悪党そのものだ。と文句を垂れながらもまだ購入予定ではいます。でも、次延期したら……さすがに考え直すかも。

藤原竜也「俺が……エヴァに?」(暇人\(^o^)/速報)

 藤原竜也系のスレではブッチギリの脳内再現度を誇っています。「おばさん臭いから」という理由でミサトを射殺する藤原版シンジ。殴りたさが更に上昇して臨界突破するだろうな。

今井神「NEEDLESS」連載10年で完結、新作は来年初頭(コミックナタリー)

 え? 本誌ではもう最終回? 単行本派だけど、そんなに話が進んでいるとは思わなかった。『白砂村』もそろそろ終わりそうな気配だし、何だか寂しいですね。来年には新作が来ると書かれているから、「今井神の漫画が読めなくなるのでは」という心配はないけれど……しかし、『NEEDLESS』もなんだかんだで10年続いたのか。当方が読み始めたのは8年ちょっと前ですね。当時の感想、そうそう、「セカンドサイト」の亜式が好きだった。アニメ化もされましたけど、OPとEDの差が激しかったなぁ。OPが熱くて格好良くて、今でもたまに観返したくなる。

 『NEEDLESS』とは関係ないが、記事の下の方に「niniが新連載「黒田と片桐さん」をスタート」とあって、一瞬「なにっ、『まじんプラナ』の人が新連載!?」とビックリしかけた。焼津、そっちの作者はniniやない、nicoや! たまにごっちゃになります。niniは『しゅたいんず・げーと!』の人ですね。ちなみにniniが作画を担当した『パラドクス・ブルー』の原作は『ドリムゴード』を描いた中西達郎。『ドリムゴード』はクセが強く、絵も巧いとは言いかねる漫画だったが、妙な勢いと情熱が感じられる作品で好きだった。あのノリは初期の川上稔に通じるものがあると密かに思っている。少し前にも『カーマトリック』という新刊を出したみたいだが、これはさっき検索するまで知らなかった。チェックしとかないと。

『恋に変する魔改上書』想像以上にはまちだったわw(主にライトノベルを読むよ^0^/)

 これ、表紙見たとき「イラストレーターが同じ人なのか?」と思ってチェックしたら違ったのでビックリしました。こういうこともあるんですね。

TEATIME『らぶデスFINAL!』の販売をもって解散(家宝は2次元)

 3Dエロゲにおける「萌え」のフロンティアを開拓したブランド、茶時ことTEATIMEが遂に解散か……当方自身は3Dエロゲって買ったことないけど、「こういうのもあってこそジャンルの裾野は広がるだろう」と興味深く見ていただけになんだか残念な話です。このまま本家イリュージョンが最後の砦みたいな感じになっていくのだろうか。

・6月中旬、漫画とかの感想まとめ。

・内藤泰弘の『血界戦線(7)』読んだ。

 「ヘルサレムズ・ロットでピタゴラスイッチやったらどうなんの?」「7巻を読め」 まさにそんな話でした。これだけ巻数を重ねても鮮度が衰えず、「次に何が来るかわからない」ワクワク感がなおも持続するとは素晴らしい漫画。汲めども尽きぬ混沌のおかげで面白さが安定している。『トライガン』とはまたちょっと異なるノリなので、「内藤泰弘って『トライガン』の人? アレは好みに合わなかったな」という方も『血界戦線』試しに読んでみてもらいたいですね。

・鈴木央の『七つの大罪(1〜2)』読んだ。

 タイトルからだとイメージが湧きにくいけど、ファンタジー漫画です。この内容だと『大罪の騎士団』とかの方が雰囲気伝わりやすいのかもしれない。「大罪人どもを起用して結成された最強最悪の騎士団」という、黒犬騎士団みたいな連中が「七つの大罪」。戦功めざましかったが10年前に「国家転覆を謀った」咎で逆賊として指名手配されている。鷹の団状態である。散り散りになった「七つの大罪」メンバーを集めて回るのが差し当たっての目標だ。1巻から既にインフレバトルに突入しており、「一撃で村一つ消し飛ばす」くらいが当たり前の世界になっている。最初からこんなに飛ばして大丈夫かな……と心配になるがヒロイン可愛いし、いろいろな謎の用意されているみたいだし、当面は購読を続けるつもり。

・原作:附田祐斗、作画:佐伯俊、協力:森崎友紀の『食戟のソーマ(2)』読んだ。

 女の子が可愛くて、少しエロくて、ごはんが美味しそうなグルメバトル漫画。なんだよ、つまり最強ってことじゃねぇか。魚料理も肉料理も美味しそうで、読んでいて腹が減ることしきりである。昼食前か夕食前に読むことをオススメします、というか夜間に読むとヤバイ。夜食の淫らな誘惑に抗えなくなる可能性大。それにしてもムチムチしたスタイルの巨乳女子高生がペロッと唇を舐めながら「肉の快感を教えてやる――!」とか言うと完全に別の意味に聞こえますね。郁魅もイイ味出していたが、腹黒っぽい司会役の川島麗が気に入った。再登場しないかな。しかし改めて眺め返すと「水戸郁魅」って名前、「水月郁見」にちょと似てるな……護樹騎士団物語、次の新刊出るのはいつだろう。文庫版の刊行も5巻で止まってるし、続きがちゃんと発売されるかどうかちょっと不安だ。

・原作:夢枕獏、作画:野部優美の『真・餓狼伝』読んだ。

 夢枕獏にとって初となる書き下ろし漫画原作だそうな。ということは『餓狼伝BOY』って板垣さんのオリジナルストーリーだったの? 大正三年の前田光世が「激動の明治時代」を回想する形式で、丹波文七ならぬ丹波文吉という格闘少年が登場します。夢枕獏で明治というと『東天の獅子 天の巻』がある。「前田光世の小説を書こうとしたが、2000枚かけて前田光世が出てくるところで終わってしまった」って作品。続編として前田光世を主人公にした『地の巻』の構想もあったらしいが、今のところ実現していない。そういう意味では「『真・餓狼伝』=『東天の獅子 地の巻』の代替」と言えるかもしれない。熱気と狂気、武術と暴力の狭間に伝う血と汗の温度やヌルつきを野部さんの筆が写し取っている。続きが楽しみだ。いや、でも『地の巻』は『地の巻』でちゃんと書いてほしいな、獏さん。欲を言えば『人の巻』も。ちなみに、明治時代を舞台にした格闘小説は『武士猿』もオススメです。本部朝基が主人公。

・FLIPFLOPsの『ダーウィンズゲーム(1)』読んだ。

 プレイヤー同士が殺し合ってポイントの争奪戦を繰り広げる物騒なソーシャルゲームをテーマにした漫画。ポイントは1p10万円で現金化できるし、溜めた分を消費することでいろいろと便利な力を振るうこともできるので、ゲームの結果は現実世界まで侵食していく。作者は『猫神やおよろず』のコンビ……なんですけれど、PN変えていたらほとんどの人が気づかないだろうと思うくらい絵柄変わってます。ヒロインのタッチには面影が残っていますが、頭身だいぶ違いますからね。ネアンダルタール人が絶滅したのもダーウィンズゲームのせいでは……と匂わせるなど、スケールも壮大だ。勢いだけに頼らずキッチリと話を作り込んでいる印象もあり、じっくり再読するのにも向いている。しかしこれ、殺人鬼がウヨウヨ湧いてくるようなもので、怖すぎるシチュエーションだな……。

・大暮維人、舞城王太郎の『バイオーグ・トリニティ(1)』読んだ。

 舞城王太郎と大暮維人、「大王」コンビによる漫画。舞城が原作かと思ったが、表紙や奥付を見ても「原作」とはハッキリ表記されておらず、どの程度関与しているか不明です。手に空いた穴から取り込んだものと同化しちゃう病気「バイオ・バグ」が蔓延する世界で切ない片想いに悶えている少年を主人公にした青春コミック。派手バトル満載ながら1話芽読んだ直後は正直「???」だ。最初からすべてを説明し切る形式ではなく、少しずつ小出し気味に情報を開示していく構成になっていて、「1話ごとに理解が深まる」という素晴らしい仕上がり。当たり前のことを書いているようですが、キッチリと段差を揃えてスムーズに昇れるようなシナリオ作りってのは言うは易し行うは難しである。段差がバラバラどころか、「昇っているつもりで降りていた」なんて珍妙な事態を招いて混乱させる漫画も割とよくある。読者はそういう作品に対し、ポルナレフにならざるをえない。大暮維人のこれまでの漫画も「昇っているのか降りているのかわからない」話がいくつかあったけど、『バイオーグ・トリニティ』は右往左往しているようでいて1話ごとにしっかりステージを上げていっている。1巻のラストで「ああ、つまりこういう方向の物語か」と途轍もなく腑に落ちた。変な漫画っちゃ変な漫画だ、それは間違いない。当方のふわっとした説明でピンと来る人もおらんだろう。ともあれ、舞城と大暮っていう奇跡的な組み合わせが実現して『バイオーグ・トリニティ』を結実させたことは私にとってすごく幸せなことだ、としみじみ実感する。続き? 勿論楽しみに決まっています。

・中村歩の『ネムリノフチ(1)』読んだ。

 クローゼットの向こうに広がる異世界……それはナルニア国のように素晴らしいファンタジーワールドではなく、おぞましい「迷宮」だった! ってなホラー漫画です。新人の作品らしく、前情報ナシになんとなく買ってみただけだが、これはちょっとした収穫だった。ホラーながら、ダンジョン探索の趣があってワクワクします。厭世的な気分に陥っていた主人公は、「この世に未練などない」とカッコつけて深慮なく悪夢じみた「迷宮」に足を踏み入れる。そしてガチホラーぶりにビビって逃げ出すが、迷宮の魔手は現実世界へ伸び、彼の日常をも侵食するのであった。迷宮には「潜ると過去に戻るドア」などのギミックが用意されていて、不気味を通り越してシュールレアリスムめいた「なんでもあり」の無法地帯になってくるけど、こういう徐々におかしくなっていく異常拡大・加速タイプのサスペンスはハラハラすると同時にホッとする。容赦のない無惨さ、中途半端でない徹底した恐怖に安心するのだ。ホラーには「怖い物見たさ」のみでは収まらない、「恐怖を直視し、最悪の事態から目を逸らさない」ための、精神安定剤的な側面がある。あのヒキから言って2巻も依然「最悪の事態」は継続であろう。心の底から安心感が湧いてきます。

・澤野明の『おきつね日和(1)』読んだ。

 主人公にところにあらゆる願いを叶えてくれる「天秤狐」が転がり込んでくる。但し……代償が必要となります。表紙から「ほのぼのしたりドタバタしたり、時々ちょっとエロスなコメディ漫画」だと思ったが、これって話の骨格はもろにサスペンスじゃん! たまげたなぁ。基本がラブコメで、ドタバタして、ちょっぴりエロスな要素があることに間違いはない。しかし後半で明かされる意外な事実で俄然ストーリーの続きが気になった。ヒロインの狐っ娘は可愛いし、コメディのノリも軽妙だし、それだけで充分なのに更に倍率ドン。いやはや嬉しいサプライズであった。

・東田裕介の『九泉之島(1)』読んだ。

 やたらと乳や尻がエロい伝奇漫画。女キャラ全員が衣通姫かと見紛うほどのたまらなさだ。服の下からムンムンと牝のオーラが漂ってくる。女性たちが実権を握っている閉鎖的な島が舞台であり、弥が上にも淫乱儀式への期待が高まって股間がはち切れそうになります。が、ネタバレになりますけど、1巻では直接的な濡れ場はなかった。「ここまで淫らな絵で乱交の一つもナシじゃと……?」と私の愚息もキレ気味である。伝奇としては増幅する不穏なムードや島を巡る謎など美味な箇所もあるけれど、兎にも角にもまずはエロでしょ! しかしまぁ、この人の描く乳と尻は神々しいまでのエロさなので、ぶっちゃけ現状でも実用に耐える。むしろ服を着ているせいで却って淫靡だったりする。「裸よりも着衣の皺の方がヌける」というアデプトクラスに達した御仁は是非とも夜の棒高跳びにチャレンジしてみてほしい一冊です。って、見事に「やらしさ」だけを強調した感想ですね、コレ。ひぐらしで言うと富竹の時報が発動したあたりで終わるようなものだから、現状だと伝奇モノとして語れる部分は少ない。

・活又ひろきの『午後のグレイ(1)』読んだ。

 磯野ー、異星人のDNAブチ込んでキメラ化しようぜ! という『自分の体で実験したい』なSFコメディ。キメラ化と言ってもそこまで激しい変化はなく、時間が経てば元に戻るし、「短期間だけ特殊能力や特殊体質をゲット」くらいに捉えれば宜しいかと。宇宙人父娘が実験を主導するわけですが、ぐうたらの父親がイイ味出してます。実験に対する意欲も薄く、いちいち娘のやる気に冷水をブッ掛ける。そんな父親の分も頑張ろうと奮起するヒロイン、やってることは「現地人攫って人体実験」と非常に非道だが、なんだか健気に見えてくるから不思議。テンポが良く、わかり易く、それでいて「頭のおかしさ」も丁度イイ、まさしく理想的なギャグ漫画に仕上がっています。宇宙人云々といったSF的意匠のせいで食指が動かない人もいるでしょうが、まずは1話目を試し読みしてはどうだろう。

・古味直志の『ニセコイ(7)』読んだ。

「うお!? なんか小野寺さんが倒れているぞー!?」

 アニメ化も決まったのにこの扱いとは、さすが伝説の不遇体質保持者・小野寺さん……千棘がまた一歩リードし、ヒロイン格差は広がるばかりだが、今巻のハイライトは万里花の「フフン!」なドヤ顔で間違いなかろう。輝く貌のマリカッド。あと、ポーラの「言ってしまえばただの粘膜と粘膜の接触でしょ?」発言は確実に拡大解釈されるだろうな……「ただの粘膜と粘膜の擦り合いでしょ?」とか。このセリフだとエロいっつーよりもなんかシギサワカヤっぽい絵柄がイメージとして浮かぶ。

・白井もも吉の『みつあみこ』読んだ。

 15歳でデビューした超若手の初単行本。表題作含む4つの漫画を収録した作品集です。どれも女子ふたりの会話劇が主体となっており、テンション高いんだか低いんだか判断に迷うコントのような掛け合いが延々と続く。無意味なじゃれ合いにも見えるが、軸にあるのは離れがたさだ。お互いに惹かれ合い、お互いの気を引こうとする。特に表題作の「みつあみこ」はそれが顕著で、琉子と蘭のふたりが「私達」という距離感を獲得する物語と言えるかもしれない。不定形なグニャッとしたギャグが独特で初読時は戸惑ったが、慣れた頃に読み直すと丁度いい塩梅になって寛ぎながら楽しめる。ネタがどうこうというより、ふたりのクリアーな遣り取りが楽しいのだ。パッと見の印象は全然違うけど、そういう点においては『ゆゆ式』とも相通ずる部分がある。毛繕いみたいな言葉の応酬があやふやで見えない関係を可視化してみせる。関係というのは「ある」と思うことで生まれるもんなんだな。進むにつれてぎこちなさが取れていったし、まだまだ成長途中で作風が固まるのはこれからってところですけれど、表紙に惹かれるものがある人は投資の意味も込めて買ってみてはいかがでしょう。そして白井もも吉との距離感を獲得するのだ。

・押切蓮介の『ゆうやみ特攻隊(11)』読んだ。

 主人公の姉を惨殺した大悪霊「ミダレガミ」が遂に降臨。疾走感溢れるバイオレンス・アクションもますますヒートアップする。目にも止まらぬ瞬撃と滅戮の旋風、加速する暴虐は官能的ですらある。次巻からいよいよ本格的なミダレガミ討伐フェーズに移るみたいだけど、正直しばらまはまだ倒せそうにないですね。決着までもう何冊掛かるか。そしてミダレガミ編が終わった後も『ゆうやみ特攻隊』は続くのであろうか。気になる。

・中田貴大の『戦場アニメーション(1)』読んだ。

 極度のアニメ声がコンプレックスになっていて人前で喋れない女の子が主人公。『電波教師』にもそんな娘いたっけ。ともあれ彼女がすったもんだの末にアニメを自主制作する部に入り、部活として「現場」に立つ身となります。地声がアニメ声なだけでアニメそのものには大して興味がない、というフラットな立ち位置がイイ。ここからどういう経緯を辿って「声優」としての自己実現が叶えられるのか(あるいは叶えられないのか)が楽しみだ。そういえば、『それは舞い散る桜のように』の星崎希望って主人公から「アニメ声」のカテゴリに分類されていたっけ。で、付き合い出したときに携帯のアドレス帳の「アニメ声」から「彼女」に移された、っていう。些細な小ネタだけど、こういうのって結構記憶に残りますね。

・原作:ルーツ、作画:Piyoの『てーきゅう(4)』読んだ。

 「ツッコミの声が追いつかない」って意味では超音速とも言えるあのアニメの2期を間近に控えたナンセンスギャグ漫画。笑顔でユリちゃんのシャツに手を滑り込ませている表紙のまりもが眩しい。インパクト溢れるアニメのおかげで声オタじゃない私も花澤ボイス再生余裕です。今回も説明するだけムダなシュールギャグ満載で相変わらず感想書き泣かせというか感想屋殺しというか。おみくじのオッズが出てくるネタは笑ったが、冷静に考えると何の倍率だアレ。吹き出しで隠れている「三連○」は三連単や三連複として、「四暗○」は四暗刻? なぜ麻雀が……いや、そもそも「三連○=三連単or三連複」が引っ掛けで、「三連刻、四暗刻」という並びになっているのかもしれない。どちらにしろ「なぜ麻雀が」という疑問は未解決のままだけど。

・三上小又の『ゆゆ式(1〜5)』読んだ。

 アニメでハマって既刊をすべて揃え、ゆっくりじわじわ崩すつもりだったが、ほんの五日、つまり一日一冊のペースで消費してしまった。ああ、なんともったいない。けどいずれ再読するだろうし、いいか。『ゆゆ式』は典型的なきらら系……って括るとさすがに乱暴か。「萌え系」「ゆる系」「空気系」「日常系」など様々な呼び方をされるジャンルに属する4コマ漫画で、『あずまんが大王』『トリコロ』『らき☆すた』『ひだまりスケッチ』『けいおん!』等の系譜に連なる一作であります。しかし、そうしたジャンルの中でもひと際ユルいのが『ゆゆ式』の特徴。「オチらしいオチがない」や「起承転結の原則が忘却されている」くらいは序の口、いきなり話が脇へ逸れたりまた戻ったり、ナックルボールのようにフラフラして軌道が定まらない。ロジックよりも感覚を重視するタイプである。4コマにキッチリしたギャグやコメディを求める人が『ゆゆ式』読むと、ほとんどのネタは「問題外」になるでしょう。たまにスピードの乗った球が出ても途中でいきなり失速したり、あらぬ方向へ飛んで行ったりで、呆然とすること請け合い。私も最初はこのノリが苦手というか馴染めず落ち着かなかった。

 結果、「こんなの、キャラが可愛いだけ」「絵さえ好みならネタはどうでもいい、という読者しか楽しめない」と見切りをつけて去っていく人も現れる(私もそうなりかけた)わけですが、果たして『ゆゆ式』は本当にキャラや絵がイイだけだろうか? 個人的にはNOだと思う。細かく語り出すと長くなって収拾がつかなくなるので結論だけ述べると、『ゆゆ式』の魅力は「行動と承認」です。どんなにしょうもないネタでも、単なる思い付きでも、とにかくやってみる。たまに自重するけど、基本は当たって砕けろの精神でぶつかっていく。それが相手にウケたりウケなかったりする。「ウケる」ことが承認なのではありません。「行動」に対して「何らかのリアクションを返すこと」が既に承認の一種なんです。「くだらない」と切り捨てられたり、「?」で返されても、相手はそこに立って(座って)いてこちらの意図にリアクションしてくれる。そんな慎ましやかな幸福が『ゆゆ式』の要になっている。ぶっちゃけネタそのものが面白くある必要は強いてなく、ネタを応酬し合う様子――くだらないネタを振られたらくだらないネタで返す、みたいな他愛もないじゃれ合いを面白がれるかどうかが『ゆゆ式』ワールドの扉を開くうえで重要な事項となる。

 キーとなるのは縁です。彼女は平素、天然気味な言動で割かしポンポンとボケを飛ばすけど、ゆずこや唯が言い合っている横で口を開けて大笑いしていることも多い。アレは「ネタがツボに入った」部分もあるだろうが、「ふたりの他愛もない遣り取りを心ゆくまで堪能している」という面もある。この、「縁の位置」まで行けるかどうかが『ゆゆ式』最初にして最大の関門なのだ。感覚的な部分に拠るところも大きいので、誰もがスタートラインに立てるわけではない。私はたまたまそこに行くことができたけれど、本当にたまたまで、それは全然特別なことではない。強いて言えば幸運だっただけです。ゆずこでも唯でもない。縁になって、みんなの縁をさりげなく結ぶような視点に立てるか否か。これが『ゆゆ式』を楽しむ上で由々しき問題となってくるはずです。

 しかしそれはそれとして、唯の発育ぶりはまことにけしからんな。5巻59ページの水着姿なんて、あまりの悩ましさにアイコラを疑ったほどだ。あ、この場合の「アイ」はあいちゃんのことです。一方で84ページの先生の述懐にもしんみり。正直、「キャラだけ」や「絵だけ」で飽きっぽい私が5巻も立て続けに読み通せるわけがない。分析力の乏しさゆえ薄ボンヤリとした文章になってしまったが、『ゆゆ式』に何らかの強い魅力が宿っていることは確かであろう。でもだからと言って格別誰かに薦めたいとも思わない、というのが不思議なところ。


2013-06-17.

・放送終了を待ってからおもむろに動き出すつもりでしたが、なんとなく公式サイトで原作最新刊を試し読みした瞬間。目に届く、何かが。刹那、あらゆる魅力を伝えてきて。それを無視することは、無意識でも出来ず。矢も楯もたまらず『ゆゆ式』既刊5冊を買っちまった焼津です、こんばんは。そして既に3巻まで読み終わってしまった。

 こうして原作読んでみると、アニメ版は内容を結構シャッフルしてるんだって分かりますね。てっきり原作そのままの順序でやってるんだと思ってました。カットされているネタも多いし、アニメ観てハマった人はちゃんと原作も読んだ方がええですな、コレは。何より絵柄がまんまアニメのソレで嬉しい。より正確に表現するならば、「アニメの原作絵柄再現度がバリ高」ってことなんでしょうけれども、とにかくアニメから入ってきた人でもすんなりと馴染むことができる。もうね、この絵柄を眺めているだけでドッパドッパと多幸感が脳の奥から湧いてくるんですよ。正直ネタの良し悪しとか二の次である。セリフもアニメのボイスが勝手に耳に甦ってくるから、じゃれ合いの臨場感がすごい。すぐ横でゆずこたちが騒いでいるような錯覚に囚われる。自分でもここまで『ゆゆ式』に陥落(おと)されるとは予想だにしなかった。1話目観たときの反応、「うわぁ……」でしたからね。たまたま時間が空いていたから2話目も観たけれど、そうじゃなければ「『ゆゆ式』のノリは当方に合わない」とあっさり見切りをつけていたかもしれません。ただ、人に薦めたいか、布教したいか、と訊かれるとそんなでもないかな……ひとりでコソコソと楽しみたい部類の作品である。むしろ『ゆゆ式』のファンに『第七女子会彷徨』を薦めてみたい。唯にちょっかいかけるときのゆずこの表情で。どんなリアクションが来るかワクワクしながら。

庶民化が進む? 最近の魔王や勇者たち(ぶく速)

 「魔王」は言葉としての普及率は高い割に定義が曖昧なので好きに書けるってのがありますね。これが「大統領」とか「皇帝」だったらいくらか制約も生じてくるけど、魔王は「正しい意味」が特にないので、「魔物を率いているから魔王」とか「魔界を統べているから魔王」とか「なんか悪そうなイメージ定着してるから魔王」とか自由に言い張れる。「魔物」や「魔界」だって、言葉で書くとなんだか説明されたような気になるけれど、実はそんなにハッキリした意味がなくて錯覚だったりします。勇者も魔王もイメージばかり広まって内実があやふやというかフワフワだからアレンジの余地がある。そして最終的に「魔王とはこういうものである」「勇者とはこういうものである」と言い切ることによってオチがつく。イイこと尽く目です。ただ、最近の魔王は「読者に嫌われないこと」を意識してか、悪逆非道な行いを一切しない「名ばかり魔王」が多くて、陳腐化を通り越して形骸化しつつある。『お気の毒ですが、冒険の書は魔王のモノになりました。』はギャグっぽいタイトルと裏腹に、犯すも殺すも気分次第という極悪ぶりで人間たちを隷属させ、その屍や魂までも己の覇道のために利用する――という魔王らしい魔王が登場する、実にKAKERU原案らしい漫画になってますけど、これが広い人気を集める「魔王」になれるかどうか、即答できず困る。「歪んだ正義」ではなく「自身の欲望」に拠って行動する魔王ってのはハードロマンの文脈、漫画で言うと「劇画」の路線で描かれるタイプだから、劇画的な価値観が甦らないかぎり「庶民化」の流れは止まらんでしょうな。もうエンタメにおいて「悪のカリスマ」が君臨するような時代じゃなくなってきているのかもしれません。

キスしまくり萌え百合4コマ『桜Trick』 TVアニメ化決定!(ひまねっと)

 百合の波が本格的に打ち寄せてきたな……いずれもっと派手なビッグウェーブが来るに違いない。百合4コマ専門の“まんがタイムきららLily”が創刊してもおかしくないというか、創刊するまでもなく既にそうなりかけているというか……我々が百合の大海へ赴ける日も近いだろう。あ、そういえば『百合男子』の4巻は来月18日発売です。

【速報】ラブライブ!TVアニメ2期きたあああああああああああ!!(ひまねっと)

 絶対に来るだろうと確信していたが、まさかこんなにも早かったとは……! 第2期は2014年春(4月〜6月)予定、第1期が2013年冬(1月〜3月)だったので、ちょうど放送終了から1年して再スタートって感じですね。今度こそ「ラブライブ」に出場するのだろうか。『ラブライブ!』観てない方のために軽く解説しておきますと、『ラブライブ!』の世界では学校を活動拠点とする「スクールアイドル」が流行していて、主人公たちはμ's(ミューズ)というアイドルグループを結成し、廃校が決まりかけている学園を救うために活動を開始。そしてスクールアイドルの祭典「ラブライブ!」への出場を目指す……といったストーリーでした。しかし、1クール全13話という短い尺、フルメンバーが揃うまで8話掛かる構成も相俟って、「なんやかんやと事情が重なりラブライブには出場できませんでした」っつー展開になってしまった。圧倒的に話数が少なかったから仕方ないとはいえ、アイドルアニメ的にはやや中途半端な締め括りを迎えちゃったわけです。ファンとしてはやはり、大舞台で汗を輝かせて歌い踊るμ'sの面々を観たいところである。しかし、1期目の続きをダイレクトにやっちゃうと先輩たちが卒業してしまうのでは……? という不安点があります。新入生を加えてメンバー入れ替えを行ったニューミューズ(νμ's?)もちょっと観たいところではあるが、「例の9人」じゃなきゃ、という気持ちも強い。まさかのパラレルストーリーか? 続報を楽しみにしたい。

 ちなみにラブライブネタの中ではこれが最大級のインパクトを誇っています。「オカルト肉だるま」というフレーズが強烈すぎる。


2013-06-11.

・松実玄が虚淵姓の人と結婚したらドラゴンロードどころではなくなりそうだな……と本編にまったく関係しないことを考えながら『咲-Saki-阿知賀編episode of side-A』第16回観終わった焼津です、こんばんは。

 あわあわこと大星淡の毛がブワーッと広がって波打っている様子を見て、つい獣殿が麻雀を打っているような錯覚に陥った。演奏会とかやってるくらいだし、ルール知ってたら麻雀大会くらい開きそうな気はしますね、レギオン。さておき、阿知賀編の主人公である高鴨穏乃にようやっと見せ場らしい見せ場が訪れる回でした。オカルト通り越して「咲世界特有の法則」が働いているとしか思えない超次元的闘牌であったものの、基本的な見立てが機能していることもあって何度か観ているうちにだんだんと納得できてきます。嶺上開花を得意技とする咲に対し、山が深くなればなるほどその真価を発揮する穏乃。森林限界を超えた高い山の上に花が咲くことはあるだろう、しかしたとえば雪を頂くエベレストの果てで蕾を綻ばせることは可能なのか? このふたりの戦いは相当息苦しいものになりそうですね。こう、酸素濃度が薄くなる高高度での攻防みたいなイメージで。しかし「魔王」と称される咲のこと、穏乃を破るどころか、全国大会終えて世界戦に飛び出したら「オリュンポス山開花」とか炸裂させてしまいそうです。もはや神々の住まう次元であり、魔神である。「火星のオリュンポス山」だったらテラフォーマーズの開始だ。ゴキブリどもと卓を囲んでいるシュールな光景が目に浮かんだ。

ラノベでロボものは鬼門という風潮(ぶく速)

 『護樹騎士団物語』がありますけど、あれもなかなかロボ(守護騎)乗るところまでいかないんですよね……生身で危機一髪な展開多くて。最近も、探せばロボ系ラノベはちょこちょこある(『オズのダイヤ使い』とか、『白銀の救世機』とか、『朽ちた神への聖謡譚』とか)ものの、あまり話題にならなかったり続かなかったりで厳しい状況。正直、ロボってだけではなかなか売りにならない。ロボにプラスする何かがなければ、ってところでしょうか。小指を代償に必殺技を繰り出すケジメ=ウェポン搭載の極道最終兵器「ジンギ・エクステンド」とか。対するは指定暴力団の構成員を狩るニンキョウスレイヤー、魔都上海からやってきたサイバー武芸者だけど話の都合でなぜか巨大化できて「鋼の巨人術師(フルメタル・タイタニスト)」と呼ばれている。「慈悲はない、ジンギ殺すべし」「うるせぇ、全てのロボットは道を譲れ!!!!」 ソウカイヤと大して変わんないか。

・6月上旬、漫画とかの感想。

・原作:MITA、作画:太田羊羹の『ヒト喰イ(3)』読んだ。

 獲物たちを「巣」と呼ばれる世界に引きずり込み、一人残らず狩り尽くそうとする化け物「ヒト喰イ」を巡るサスペンス漫画。人間狩り(マンハント)要素に加え、「誰がヒト喰イなのか?」という犯人当て(フーダニット)要素をも複合させた、魅惑のシチュエーションで送る。これまで「ヒト喰イ」そのものに関する謎は放置され気味でしたが、この巻から「人為的にヒト喰イを造り出そうとする者たち」の存在が明らかになってくる。同時に、状況も意外な方向へ転がり、サスペンス度が増していく。「狩る側」と「狩られる側」が固定されているとは限らない。面白くなってきた。

・原作:榊一郎、作画:茶菓山しん太の『棺姫のチャイカ(3)』読んだ。

 同題ライトノベルのコミカライズ。タイトルは「ひつぎひめ」ではなく「ひつぎ」と読む。前半は原作1巻の終わりまでを描き、後半は原作2巻の冒頭を漫画化しています。女の子は可愛く、バトルは格好良く、テンポ良く、と理想的なコミカライズに仕上がっています。原作読んでストーリーを知っていてもなお素直に「続きが楽しみ」と言いたくなる作品。作画を担当する茶菓山しん太の手によるチャイカは見ているだけでウットリします。最初コミカライズが始まると聞いたとき、なまにくATKさんの描くチャイカが大好きだから内心「あたしゃなまにくチャイカ以外認めるつもりないよ!」と頑なに思っていたが、いざ実物を目にした途端「茶菓山チャイカもイイヨネ! 別腹別腹」とあっさり転向してしまった。それほどの威力である。

・大和田秀樹の『ムダヅモ無き改革(10)』読んだ。

 「ゲリラのボスが闘牌による戦闘を提案してきた」 おい、この世界では政府高官のみならずゲリラまで麻雀嗜んでんのかよ……のっけから異常さ満載の大和田ワールド全開で安心しました。今回も危険度高め、全力で鋭角を攻めている。以前のナチスに対し、今回の敵は紅衛兵。尖閣諸島を巡っての闘牌が始まる。相変わらずのネタのヤバさで「どこまでやるつもりだ」とハラハラさせられます。気になるのは次巻予告。まさか、ポルさんまで復活しちゃうのか? 確かにアレも一種の赤(ルージュ)ではあるが……。

・原作:鎌池和馬、作画:冬川基の『とある科学の超電磁砲(8)』読んだ。

 半年以上経っちゃったけど、ようやく発掘できたので読みました。いろんなキャラの見せ場が用意されていて満足、絵柄はサッパリしているけれど中身は濃い巻だった。脇役に近い扱いだったキャラが「おとなしくするのはもうおしまい」とばかりに活躍する展開は大好き。薄い本というかリョナが捗りそうな巻でもあったけれど、ぶちギレ金剛状態の美琴を最後まで温存しておく構成のおかげでスカッと爽やかにページを閉じることができました。8巻とは関係ないけど、最近みさきちよりもむぎのん見てるときの方がムラムラするようになってきた。好みが変化してきているのか?

・小幡文生の『シマウマ(7)』読んだ。

 「回収屋」と呼ばれる一種の復讐代行業をメインにしたサスペンス漫画。凄惨なバイオレンス描写が多く、「暴力シーンに耐性がある」という人相手でないとオススメしにくいが、「どうなっちまうんだよ……これ」という展開の連続であり、もどかしいほど続きが読みたくなる。復讐代行というと、漫画では『怨み屋本舗』、小説では『溝鼠』、アニメでは『地獄少女』など、いろいろありますけど『シマウマ』はそのどれとも似通っていない。ヤバいところに手を出してヤバい目に遭った主人公が、ずぶずぶと泥沼に沈むような調子で「回収屋」の世界に踏み入っていく。憎しみの連鎖、凄惨な暴力に凄惨な暴力で応じる世界へ進んで堕ちる。心に負った傷を治すのではなく、傷を負わせ返すことによって心の残骸を回収する闇稼業はどこまで行っても果てがなく、「底のない悪意」が茫漠と広がっているばかりです。うんざりしても、しなくても、どのみち終わりがない。引き返す道などないし、引き返すつもりもない。「自分が一番大切である」ことを主張する主人公の運命やいかに。それにしても、帯の一文が「もう読めない……」だから、一瞬「完結!? えっ、打ち切り!?」と早とちりしてビックリしちゃったじゃないですか。「もう(先の展開が)読めない」って意味でしょうけれど、そんなの1巻の頃からそうでしたわ。常に一寸先は闇で五里霧中、そんな漫画です。

・万乗大智の『機動戦士ガンダム 黒衣の狩人』読んだ。

 サンダーボルトの横にあったから危うく間違えそうになった……レジへ並ぶ直前になって気が付き、慌てて引き返しました。で、サンボルの新刊と交換するつもりだったけど、「これも何かの縁」と思い直して一緒に購入。作者は『DAN DOH!!』の人です。例によって一年戦争モノ。「性能の高い欠陥機」という烙印を押されたMS「ヅダ」を駆るジオン公国軍のエースパイロットが主人公で、「なぜ漫画の題材にヅダを選んだのか?」という意図もクライマックスになって判明する構成となっています。「これが……本物のガンダムだ」は言いすぎだと思うけど、MSバトルは短い中でちゃんと迫力を醸せている。駆け足感は否めないものの、一冊完結にしてはよくまとまっている方ではないかと思います。ただ、サンダーボルトのノリを期待するとズッコケるかもしれない。少年誌的な面白さなんですよね。「大気圏を水面に見立て、水切り石の要領で跳ねつつ高速機動する」とか「敵ビームサーベルの刀身をガイドラインにしてヒートホークによる交差斬撃を繰り出す」とか、そういうハッタリの利いたバトル描写。某監督が読んだら「ビーム相手にそんなチャンバラできるわけないでしょ!」って言いそうだけど。

・施川ユウキの『鬱ごはん(1)』読んだ。

 史上かつてないほど後ろ向きなごはん漫画。言うなれば『孤独の非グルメ』であり、「美味しさの追求」という従来のテーマを完膚なく振り払っている。食事そのものへの嫌悪感を交えつつ悲喜こもごもに綴っており、人によっては笑えて、人によっては落ち込むかもしれない。暗い食事の裏にあるもう一つのテーマが「自意識過剰」。主人公は自分が食べている様子を他人に見られることを恥じ、概ね人目を忍ぶような形で摂食したがる。ちょっと異様なくらい、周りに対し「気にしないでほしい」ことをアピールする。脳内で生成された「他人の目」に常時監視されている状態です。正直「気にしすぎだよ! もっと気を楽にして食えよ!」と言いたくなるが、人もまた動物である以上、食べる瞬間は無防備となる。だからどうしても神経質になる。神経質になりすぎて食が細ることもある。主人公は自意識を持て余すことによって辛うじて食欲が保てるのではないか、と思った。途中、映画内における食事について語るところがあったが、そういえば『ネクロマンティック』は食事シーンが映像的に物凄く不味そうに見えたことで印象に残っている。彩りの乏しさが際限なく食欲を低下させる。「見た目も味のうち」という言葉をひたすら痛感した一本でした。

・おおひなたごうの『目玉焼きの黄身 いつつぶす?』読んだ。

 題名通りの漫画。「フード・ソウル・ロマン」と銘打たれている。毎回主人公が「食べ方の流儀」を巡ってカノジョと喧嘩する。仲直りしても、また喧嘩。驚くほど進歩のない主人公に呆れながら読者は「食事」の作法と向き合っていくことになります。全体的に軽い調子だし、作者もギャグ漫画として肩肘張らずに読まれることを想定して描いている感じですが、ほとんど無意識に近いレベルで行われる「食べ方の選択」を意識上に顕在化させる、という点では啓蒙的だと見做せるかもしれない。主人公は「美味しくそれでいて自然に」食事を楽しみたい、という欲求を抱えている。たとえ美味しかったり合理的であっても、変に手間の掛かった食べ方は「不自然だから」とばかりに生理的に拒否してしまう。あくまで「無意識のレベル」で食事を楽しむべく、作法や流儀を意識する。常識という、詰まるところ「理屈のようでいて本当は成り行きで築かれたものでしかない偏見」を克服しようとする試行錯誤する姿は、「フード・ソウル・ロマン」というジャンル名があながちオーバーではないことを示してくれます。読んでいて「これはねーよ」と思う食べ方はいくつか出てきます、正直言って。「人の遣り方を否定してはならない」と無理に意識を高く持つよりも、まずは拒否感を素直に受け止め、「なぜ自分はこんなに嫌がるのか?」を分析すると更に面白くなるとかもしれない、この漫画。

・原作:藤見泰高、作画:岩澤紫麗の『家電探偵は静かに嗤う。(1〜3)』読んだ。

 「家電」を題材に選んだ推理漫画。家電を利用したトリックを暴いたり、あるいは家電を利用することで事件や事態を解決してみせる。謎解きもさることながら、巨乳ヒロインのアンヌがエロい。ピチパツのライダースーツなんて犯罪だろ、本当に刑事かよ。周りの同僚はよくあの尻や胸を見て平然と仕事ができるな……さすが刑事、と言うべきか。豆知識めいた家電薀蓄をうまく絡めたストーリーに、ほんのりとけしからんエロさを加えたミステリコミック――といった塩梅でサクサク気軽に読めますが、7月に発売される予定の4巻で完結とのこと。もっと読みたかっただけに残念だ。原作担当と作画担当、それぞれの新作を期待したい。次回作が同じコンビでも当方は一向に構いません。

・ハロルド作石の『RiN(1)』読んだ。

 漫画家を目指す地方の少年を主人公にした青春コミック。作者は『BECK』『ゴリラーマン』を描いた人、作中にも『ボイラーマン』という架空の漫画タイトルを出したりなど、ファンサービス的なネタをちょいちょい盛り込んでいる模様だ。持ち込みして、バッサリ切り捨てられて、落ち込んで、それでも「おれには漫画しかないんだ!!」とめげずに投稿して、認められて……と、1巻時点では王道というか手堅いストーリー展開で、突飛な部分は少ない。今後ライバルになるであろう連中も登場しますが、『RiN』最大の特徴はヒロインにある。先程「少ない」と申し上げた「突飛な部分」を請け負う一人の少女、石堂凛……つまりタイトルは彼女の名前から来ています。サイコメトラーや未来視のような力を持つ凛は、主人公の漫画から何かを読み取るが、その「何か」は不明なまま「つづく」となります。漫画家志望の青春物語に程好い謎のパウダーをまぶした内容で、なんとも次巻以降が待ち遠しい。帯によれば2巻は7月、3巻は9月に発売する予定とのこと。まだ読んでない方は9月まで待っていっぺんに買ってみる、というのもいいかもしれません。しかし、『RiN』は『RiN』で楽しみとして、『7人のシェイクスピア』はどうなっているんだろう……あれすごく面白かったから続きが読みたいです。

・岡崎純平の『ディアボロのスープ(1)』読んだ。

 「地図すらない辺境の公国」に強大な帝国軍が攻めてくる話。公国はインフラが整っておらず、科学技術も遅れており、帝国からすれば「資源溢れる未開の地」即ち採掘場であった。しかし、公国には悪魔を召喚して使役する「魔女」が民衆の熱狂的信仰心を集めていた! というノリのあらすじ書いたら「魔女十傑衆」とかが八面六臂の大活躍を見せ付けるような気がしてきますが、死にます。強そうな悪魔を出現させた次のページでは物言わぬ無惨なボロきれと成り果てている。多勢に無勢、魔法の力を以ってしても圧倒的な物量差と技術力の違いは埋めがたい! 残念! 無念! シビアな状況に追い詰められた魔女たちは、ひとりの重罪人に頼ることで窮地を切り抜けていく。10年に渡って磔にされた思想犯テンマ、「魔女は5人……いいね 4回も失敗できる」と何やら邪悪なことを嘯く彼の真意とは? まだハッキリしないことも多いが、要するにこれはファンタジー版西部劇です。開拓精神に燃える帝国、民の命や住処を奪われながらその侵略に抗う公国。「魔女」という割に宗教色は希薄、どちらかと申せば軍記色が濃厚です。戦争の知識がまったくない魔女たちに対し、帝国に精通しているテンマは「人望のない将」として彼女たちを率いていくことになる。1巻はスープにいろんな材料を放り込んでいる段階で、煮込みや味付けに入るのはまだまだこれから、といったところ。「この鍋、ちゃんと仕上がるのかな?」って不安はなくもないですが、まずはお鍋に張った水がグツグツと沸騰して材料が煮えてくるまで待ちたい。ちなみに『ディアボロのスープ』の掲載誌は『進撃の巨人』と同じ“別冊少年マガジン”だけど、こっちの方はマガジンよりガンガンあたりに近い作風かな……特に根拠はないが、読んでてなんとなくそう感じた。良くも悪くもごった煮の混沌としたスープで、ドキドキ且つワクワクする。

・渡辺航の『弱虫ペダル(28)』読んだ。

 アニメ化も決まった自転車レース漫画。しかし、目の錯覚か? 選手の中にエヴァンゲリオンが混じっているような気がするんですけれど……この漫画、御堂筋くんが出てこなくなったらパワーダウンしちゃうんじゃないか、と密かに危惧していたが全然そんなことなかった。っべー、やっべーよ、この葦木VA初号機。相変わらず「誰が主人公かわからない!」というくらいに個々のキャラクターが激しく自己主張し合ってぶつかりながら「ホイールの絆」を育んでいく。EVAと見紛うばかりの長身を誇る新キャラ・葦木場が放つ存在感もさることながら、新キャプテン・手嶋が見せる凡人の意地も滅法熱かった。

・板場広しの『アニメーター、家出少女を拾う。』読んだ。

 アニメーター(原画)が主人公の「つけぱん」全6話と短編2個を収録した成年コミック。単行本タイトルは半ば釣りのようなもので、ヒロインが家出していたのは1話目だけ、2話目以降は家に戻ってちょくちょく主人公に会いに来る形となります。前半は業界内幕話と濡れ場の接合がチグハグに感じたけど、「一回折られただけで逃げちゃう人は怖くないわよ」「犯す? 子供みたい……」とヒロインが挑発するあたりから急速に物語がまとまっていく。キレイに畳んで終わったけど、欲を言えばもっと続きが読みたかったところです。タイトルにもなっている「つけPAN」は作中でも解説されていますが、対象物を追いながらPANする技法。遠近や角度の変化が加わるため、綿密な計算が必要となるそうです。アニメってホントつくづく手が込んでますね……毎日当たり前のように観てるけど、成立していることが不思議な業界だ

・田中圭一の『死ぬかと思ったHスペシャル』読んだ。

 「低レベルな臨死体験」、つまり恥ずかしかったり衝撃的だったりして「死ぬかと思った」体験談の中から、シモネタ寄りのエピソードを集めてコミカライズしたもの。既刊2冊分を1冊にまとめ、300ページのボリュームで550円(税込)と、大変オトクです。「保健室でなんとなくチン長(チ○コの長さ)を測っていたら人に見られた」みたいなしょーもない話が満載ですけど、「小4のときに自転車事故でサドルがアソコにずっぷりハマった」という割とガチでニアデスしている体験談もあったりして色とりどり。一個一個が短いのでちょっとした時間潰しにもってこいです。まあ、人前で読むにはちょっとアレな一冊だから場所は限られますが……作者は手塚模倣絵でお馴染みの人。来月には『あわひめ先生の教イク的指導』という新刊も出る予定みたいなので忘れずに購入したいところだ。

・森博嗣の『スカル・ブレーカ』読んだ。

 『ヴォイド・シェイパ』『ブラッド・スクーパ』に続くシリーズ3冊目。「森博嗣」と「剣豪小説」、意外な取り合わせなのにこれがなかなかハマっていて面白い。己の弱さを知り、「強くなる意味がわからなくなっている」と迷いながらも歩みを止めぬ主人公。「死ねば終わり」なのに、天へ届けとばかりにひたすら剣の腕を高め続ける必要があるのか。問いに少しだけ答えが見えてくる。掴み所がなく、重要なことをあっさりバラしたりなど、どこかトボけているが、静と動の際立つ描写で飽きさせない。スカイクロラよりは場面を想像しやすいし、森博嗣の小説を読んだことがない人にも薦めてみたいところです。

・あと『エンド・オブ・ホワイトハウス』が面白かった。

 北朝鮮のテロリストがホワイトハウスに襲撃してくる映画。アントワーン・フークア監督作品で、原題は "Olympus Has Fallen" 。想像以上にグッチャグチャの殺し合いで驚いた。予告編は観なかったけど、ここまで死傷者が出るような話だったとは……襲撃が始まるまではやや退屈で眠気を誘われたが、国籍不明機(アンノウン)がアタックしてくるところで目が覚めて、後は一直線。テロリストたちはあまり死なず、アメリカ側の人間たちがバタバタ死んでいく。「いくら何でも死にすぎやろ!」ってくらい死ぬ。大盤振る舞いである。ストーリーはありきたりかもしれないけれど、後半の畳み掛けが見事だった。個人的には「観て良かった」と思う一本。死体がゴロゴロ転がるドッロドロの殺戮劇を好む方にはうってつけだろう。主人公も容赦なくトドメ刺すマンであり、殺人に対しためらいとかは一切ゼロ。敵も味方も両方キリングマシーンだ。北朝鮮はテロへの関与を否定してシラを切っているせいか国そのものの存在感は薄く、結果的にアメリカという国のヒステリーめいた慌てふためきぶりが強調される形となっています。やたらと過剰なほど死傷者が続出する展開も、映画評論家あたりは「米の被害者意識や被害妄想の強さ」を表していると裏読みするかしら。

 ところで、8月にも『ホワイトハウス・ダウン』とかいう似たようなシチュエーションの映画をまたやるみたいですね。こちらの監督は『インデペンデンス・デイ』等でお馴染みローランド・エメリッヒ。アメリカにホワイトハウス襲撃ブームが来てるのか? リンカーン映画が続いた時期もあったし、『スリーデイズ』『4デイズ』『5デイズ』が立て続けに公開されたこともあったし、こういうことはちょいちょい起こります。なんであれ混同しないよう注意されたし。


2013-06-07.

・宮部みゆきの『初ものがたり』完本が発売されると知って、買おうかどうか迷っている焼津です、こんばんは。

 うーん、一応PHP文庫版は持ってるんですよね……収録内容は新潮文庫版もPHP文庫版も一緒で、「お勢殺し」「白魚の目」「鰹千両」「太郎柿次郎柿」「凍る月」「遺恨の桜」の6編でした。愛蔵版は文庫未収録の「糸吉の恋」を加え、7編。その後「寿の毒」と「鬼は外」が書かれ、シリーズは9編となった。もうあと2、3編あれば続編として出していたところでしょうけれど、「そこまで溜まりそうにない」と判断したのか、「完本」として発売することになった模様だ。つまり、旧文庫版を持っている人は「糸吉の恋」「寿の毒」「鬼は外」の3編のために買えるかどうか、ってことですね。「イラスト多数を添えた」ことも売りではあるらしいが……悩む。短編3個のために文庫本一冊買うのは少々割高な気もするけれど、書痴のSa-Gaか、「完本」という言葉には弱い。たぶん本屋で見掛けたら買ってしまうでしょう。あ、『初ものがたり』持ってない人はオトクだから気兼ねなく購入すればいいと思います。持ってる人は財布と相談しよう。

田中芳樹「タイタニア」第4巻脱稿 22年ぶりに新刊刊行へ(ひまねっと)

 ヨシキ、遂に動く……! 『タイタニア』は冒頭だけ読んで積んでるので詳しいストーリーはよく知りませんが、「タイタニアにあらずんば〜、人にあらず〜」な話だった気がします。アニメ化もされてるんでしたっけ。3年前に発売された1〜3巻までの合本(DVD付)はamazonでも「在庫あり」だし、探せばまだ置いているところもあちこちにあると思います。DVD要らなかったら普通に文庫版揃えた方がリーズナブルですけどね。さておき4巻は講談社ノベルから年内に刊行予定とのこと。7月の予定に入っていないから最短でも8月です。校正に3、4ヶ月掛かると仮定したら発売は10月前後くらいが妥当だろうか。この調子でアルスラーンと灼熱の竜騎兵も頼むぜ、ヨシキ。創竜伝は……うん。

・なもりの『ゆるゆり(10)特装版』読んだ。

 今年の夏は『ゆるゆり』ファンにとって大忙しの季節である。6月から8月にかけての3ヶ月間、『ゆるゆり(10)通常版』『ゆるゆり(10)特装版』『なもり画集(仮)』『ゆるゆりプレミアム(仮)』『ゆるゆりファンブック(仮)』『大室家(1)限定版』『大室家(1)通常版』が発売される予定となっている。というか10巻はもう発売した。計7種、「全種コンプリート」の使命に燃える熱心なファンは1セット揃えるだけで約1万2千円が吹っ飛ぶ。「保存用、鑑賞用、布教用で3セット」とかいうことになると3万6千円、もはやBD-BOX並みである。当方みたいな「通常版はいいや」というカジュアルなファンでさえ、諭吉さんを差し出すことになる。中には「特装版とか限定版とか高いし、通常版でいいや」という方もおられるでしょうが、ちょっと待ってほしい。『大室家』の限定版は「花子様の絵日記帳」という描き下ろしの特典が付く……という程度のことしか判明していないので様子見する気持ちも分からんではないが、10巻の特装版は何が何でも手に入れんといかん一品ですよ。なんせ、特典の小冊子『ゆるゆり10.5』は「どこが“小”冊子だよ!」という厚さですからね……当方も最初はそのことを知らなくて「特装版は1800円(税込)か、ちょっと高いな……小冊子程度だったら見送ってもいいかな」と危うく通常版にするところでした。ちなみに、『ゆるゆり』の通常版は900円(税込)なので、特装版はちょうど倍の価格になります。しかし、約150ページの10巻に加え、全編描き下ろし約110ページの10.5巻が付いてくるのだから、「こら倍額でええわ」と納得するボリュームである。両方合わせると約260ページ、かなり読み応えがあって満足しました。

 10巻はいつも通りごらく部メンバーをメインにした連作集で、1回だけ(第70回の「これも愛のチカラなの?」)さくひま回が盛り込まれている。お互いの考えが一致せず会話がすれ違い続ける、いわゆるアンジャッシュ状態を描いています。というか、第70回、トビラでは「これも愛のチカラなの?」と表記されているのに目次では「これも愛の力なの?」になっている。いったいどっちの表記が正解なんだ? 誰か説明してくれよ! 特典の10.5巻はすべて描き下ろしで、「intermission」の17から24まで、計8本を収録している。ちなみにintermissonの1〜8は7巻、9〜16は9巻に当たる。7巻と9巻は全編描き下ろしの巻だったから、連載分に影響しないようこういうナンバリングにされていたものと思われる。つまり、「intermisson」は全編描き下ろしの際にのみ発動するナンバリング、と捉えておけばほぼ間違いない。intermission.17〜24はあかねを主人公にしたエピソードや、千鶴と楓が公園で出会うエピソード、花子とあかりの遣り取りを綴るエピソードなど、番外編的な内容をギュッと詰め込んでいます。ファン垂涎であり、「ようやってくれた、なもりィ……!」と喝采するに吝かでない。『ゆるゆり』とはまったく関係ないが、一応解説しておきますと、「吝か」とは「躊躇」の意味であり、つまり「○○するに吝かでない」という言葉は「○○することに関して一切ためらいはない」とか「○○することに対して努力を惜しまない」とか、もっと平たく言えば「喜んで○○する」という意味になります。消極的な肯定ではなく積極的な肯定を指す言葉なので、使用する際はニュアンスに注意しましょう。

 さて、10巻も10.5巻も読み切ってしまった今、気になるのは来月発売の新刊群である。『なもり画集』と『ゆるゆりファンブック』はだいたいどんな内容か想像がつくけど、2000円もする『ゆるゆりプレミアム』はいったいどんな収録内容なのか……ぐぐってみたところによると、「店舗特典のイラストやグッズなどをまとめたアイテム本」らしい。グッズって、具体的にはどんなのだろうか? あまり嵩張らない奴だと嬉しいが……もう部屋に物の置き場がほとんどないです。

・拍手レス。

 『タイタニア4』脱稿とか。長生きはしてみるものだ。
 内容忘れている人も多いだろうから既刊がセットで売れそうな予感。

 >クレセント 第2部なんて無かったんだ。天野先生はもうああいった感じの能力物は描かなそうだなー。あの作品のあの作風はあの時代だったからこそって感じですかね。
 クレセントの第2部はさすがに難しそうだけど、「今の天野」だからこそ描けるようなバトル物も読みたいなー、と思ったり。


2013-06-03.

・神咒の随神相みたいに兵士たちそれぞれが固有の巨人を召喚して戦う、という設定の『進撃の巨人』を夢に見た焼津です、こんばんは。

 夢の中で思ったこと。「うわっ、すっさまじい凡作臭!」 ハッキリ言って面白くなさそうでした。だって、召喚した巨人が戦っている間、兵士はほとんどすることがないんだもの。巨人同士が戦っているところに立体機動で割り込むと、画面がゴチャゴチャしすぎて何が何だかわからなくなるし。改めて「巨人 VS 立体機動する人間」は絵的に完成されているなぁ、と確認しました。

ラノベネタを扱ったメタ系業界系ストーリーが皆無に近いのはなんでなんだろ(ぷく速)

 『ばけらの』、とリンクを張って1巻発売から既に5年近くも経っていることに驚いた。アシスタントを抱える漫画や、多数のスタッフが制作に加わるアニメやゲームに比べ、ライトノベルは基本的に「字を紡ぐだけの個人作業」といった様相が強いから人間関係とかチームワークとかいった部分で魅せることが難しい。イラストレーターとかデザイナーとか編集者とか、いろんな人の助力もあって興味深くは書けるだろうけれど、それを物語的な見せ場として機能するレベルで提示できるかどうか、ってことになると……うーん、でも業界内幕話とか裏話には関心持ってる読者って結構いると思いますよ。今月下旬に『「マンガ家」嫁さん「ラノベ」夫くん』というコミックエッセイが発売されるので、もしこれが話題になってドカ売れするようなら追随する本も続々出るんじゃないかな、と思います。

暁WORKSの新作『Bradyon Veda』、公式サイトオープン

 『GANTZ』のスーツみたいなものを纏った男女がズラッと10名並ぶCGを目にして「おっ?」と期待が膨らんだ。萌え作品が主流となりつつあるエロゲーで、あえてバトル系を志向する、と宣言しています。タイトルは「ブラディオン ベーダ」と読む。ブラディオンは「ゆっくり」を意味する接頭語「brady-(語源はギリシャ語のブラデュス)」に、粒子を意味する接尾語「-on」を繋げたもので、「超光速で動くと仮定されている粒子」タキオンと対比されるもの、つまり「光速より速く運動しない素粒子」を指す用語みたい。ベーダはサンスクリット語で「知識、科学」を意味する言葉であり、インドに伝わる一連の古文書を指すことが多い。乱暴に訳すと「素粒子文書」ってな感じになるのかしら。ライターの門倉敬介はこの名義だと初めてですが、以前から「味塩ロケッツ」という名義で何本かシナリオを手掛けています。あまりメジャーなライターではないけれど、知っている人は「味塩ロケッツか……」と微妙な表情になるかもしれない。

 当方はそんなに詳しいわけじゃないからしたり顔で解説することはできませんけれど、なんというか評価に困るんですよね。比較的メジャーな担当作は『つくとり』と『終わりなき夏 永遠なる音律』かな? シナリオに光るところはあるんだけど、全体的にギャグが滑り気味なのと、日常シーンが少々かったるいところが難点。ライターデビュー作『STEEL』は日常とギャグがイマイチだったものの、シリアスというか緊迫した場面に切り換わると一気に雰囲気が引き締まるので「このセンスを使いこなせれば化けるかも」と思ったものでした。あれから8年。『Bradyon Veda』は「いままで自分が手がけてきたゲームとは段違いにシリアスな内容」とのことで、作品イメージを崩さないためにPNまで変更したそうだ。この覚悟と挑戦のマインドを信じて、購入予定リストに入れてみるか? とりあえず前向きにチェックしていきたいです。

・5月下旬つぶやきまとめ。

・片陸遼助の『ボクのマンガ(1)』読んだ。

 隣の席の井上君(仮)が授業中こっそりノートの端に描いた漫画を休み時間に見せてくれた、あの頃の気持ちを甦らせてくれるギャグ漫画。ハッキリ言ってくだらないネタてんこ盛りですけど、この素朴さがすごく懐かしい。ギャグなのに、ノスタルジーを刺激する。しんみり。子供の頃はひどくブラックなネタや極端に残虐な展開が「普通に好き」って感じで、何の構えもなく素で堪能していました。漫画内に築かれた「ヒドくて、懐疑的で、シニカルな世界」を無心に享受していましたっけ。ついしみじみとしちゃうくらい、全力で真面目にふざけたことを連打してくれる。あと、途中で『ボクのマンガ』は『アホガール』と交互に読むと心理的にちょうどいいバランスを保てることに気づいた。ザッピング読書も乙なものです。

・青稀シンの『ねこぐるい美奈子さん(3)』読んだ。

 『あねちゅう!溺愛悶絶美奈子さん』(全3巻)の続編であるが、前作を知らなくても特に問題はない。てか、あまりにもキチ過ぎてストーリーとかどうでもよし。知らない人に読ませたら「よくもこんなベースアウト漫画を!」と怒り心頭になること請け合いである。青稀シンさんの漫画は多かれ少なかれ狂っており、「アヘ顔」を通り越した「おへ顔」が乱舞する怪奇スポットですので、興味のある方はもう「ワクチン接種みたいなもの」と割り切って読んでください。『少女芸人トリオ ごるもあ』が比較的キチ度の低い漫画ですので、まずはここからどうぞ。それにしても、まさか『ANGEL+DIVE』のイスラトを描いていた人の漫画がこんなのだったとは……今見返すと溢れる正気度に却って失神しそう。

・森博嗣の『「やりがいのある仕事」という幻想』読んだ。

 「義務感や思い込みに囚われて不自由にならなくてもええやない」といった趣旨の内容。仕事云々に関わらず、「最近の自分はちょっと必死すぎるのではないか」と思っている人は読めば気が楽になるかもしれない。雑談感覚でサラリと目を通せる。森博嗣の新書はどれも「なにを熱くなってるんだ? 力抜けよ」くらいのニュアンスでだいたい要約できます。程好い低温で読者の頭を冷やし脱力を促す活字のアイスノン。既読の中では『小説家という職業』が一番興味深かった。

・満田拓也の『BUYUDEN(8)』読んだ。

 ボクシング部を新設しようと奔走するも、部員が全然集まらない。そこで萌花は「不良であっても構わない」と方針を大きく変更するが……まさかの「不良を取り込んで更正を目論む」という展開に。スタンガン喰らわした男子を平然と受け入れる萌花の度量は底なしかよ。しかし白皙の美少年だった亘が、まさか中指をおっ立てて「瞬殺してやるからよ!!」と凄む茶髪野郎になるとは……この調子で行くなら、東も今後どれだけ変化するか楽しみですね。

・伊織の『蹴魂(1)』読んだ。

 「宇宙人と戦え! ただしサッカーで」な少年漫画。宇宙条約によって武力戦争が禁止された未来、星々はフットボールを代理戦争に見立て銀河規模の大会を開催していた。「悪魔の右足」を持つガイは地球代表として参加するが、出場条件は「人類を滅亡させること」だった……。勝っても負けても人類はジ・エンド。それなんて『惑星のさみだれ』? 最初の相手が巨人族チームだったから『蹴撃の巨人』という言葉が浮かんだけど、別に巨人ばかりでなく、水銀みたいに不定形な異星人とかもいます。最初から真面目なサッカーをやる気はナッシングで、テニヌどころではない「フットボーノレ」になっていますが、開始時点で「そういうものだ」と割り切っている分、違和感はないです。しかし、ボールは人間用サイズなのに、巨人族の連中はよく蹴れるな……人間で言ったら仁丹でサッカーするようなもんですよ。あとこの漫画読んだ人が共通してツッコむであろうポイント、それは「ボールが頑丈すぎるだろ! いったいどんな素材で作ってんだ!?」ってことですね。もはや兵器の部類。

・我孫子祐の『スライムさんと勇者研究部(2)』読んだ。

 局所的に流行している「モンスター娘」を主要陣に据えたコメディ漫画。同ジャンル作品は他に『モンスター娘のいる日常』『セントールの悩み』などがある。むろみさんもこの系統と言えなくもないが、ぶっちゃけ「娘」と呼べるような歳では……いえ、何でもありません。むろみさんは永遠にうら若き海の乙女(マーメイド)、これ究極公理にして絶対真実な。さておき、『スライムさんと勇者研究部』、「魔物の末裔」としての性質を持つ主人公たち(スライム、ゴーレム、キメラ)は勇者の復活に備えて「勇者研究部」という部活に励むが、具体的な対策を立てられないままただダラダラと日々を過ごしています。のんべんだらり感がすごい。やる気は確実にない。一方、生徒会は「モンスターの殲滅」を掲げて動き出し……次巻、まさかのシリアス展開突入か? ちなみに、『死天使は冬至に踊る』という20年くらい前のライトノベルに確か「主人公の姉でハーピー」ってキャラがいました。モンスター娘の話題になるとつい彼女を思い出してしまう。あと2巻になってやっと気づきましたが、「一今仏子」って「スライム子」をバラして再配列した名前なんですね。変なネーミングとしか思ってなかった……。

・原作:村田真哉、作画:新崎コウの『ヴァイアンメイデン(1)』読んだ。

 『アラクニド』の村田真哉さんが原作を担当するコミック。タイトルは作中で「機甲聖女」のルビとしても使われており、平たく申せば『テラフォーマーズ』+『IS』な感じ。メカメカしい装甲を虫や動物になぞらえ、女子高生たちが野蛮に戦い合う。目的は「兵器開発」らしいが、状況はさながら蠱毒の壺。「顔面パンチが挨拶代わり」な殺伐とした村田ワールドは今回も健在である。バトルもいいけどバイオレンスもね! という雰囲気はまさにチャンピオンRED。次巻は更なる暴力の渦が主人公たちを飲み込むに違いない。

 キャラは「シャコパンチTUEEE!」な蝦蛄ちゃんが可愛かった。「小足見てからシャコパン余裕でした」と言わんばかりの悠然たる表情がたまらない。鍬型の苺ちゃんは噛ませ臭が半端ナイン。でも外見的に一番好みなのは「蛍(ルシファー)」の輝島朋恵ちゃん。そういや聞いた話だと、日本ではキレイなイメージのあるホタルって海外じゃ「ケツの光る不気味な昆虫」として気持ち悪がられる傾向にあるそうですね。海外のホタルはしぶとくて獰猛だから、というのもあるらしい。櫻井螢が黒円卓で冷遇される理由の一端が分かった気がしないでもない。

・須賀達郎の『マックミラン高校女子硬式野球部(1〜2)』読んだ。

 4コマ主体の部活漫画です。主人公(男)はマネージャー。ハーレム状態なんですけれど、極度なお色気に走ることもなく、ちゃんと野球やりながらキャラ立てていくのが好印象だった。あ、下着程度の軽いお色気要素ならチラッと投げ込んできます。主将(キャプテン)の和泉皐はM気質で、痛いのが好きだから死球や野次を喜ぶ……って、ちょっとアレなキャラ設定も盛り込まれているものの、過激化することはなく終始ほのぼのとしたムードが漂っている。幼馴染みのハクが可愛かった。でもヒロイン的な意味では門馬飛鳥がもっとも好み。怪力可愛い。内容的にちょっと刺激が足りない、と不満を覚える向きもあるだろうが、私個人としては「こういうのでいいんだよ、こういうので」って感じです。程好い緩さ。ゆっくりと染み渡ってくる魅力。チマチマと読み進めてもガッと一気に読んでも、どちらでも変わらず楽しい。しかし、漫画自体は文句なく面白いけど、やっぱり少年漫画の単行本サイズで4コマはちょっと窮屈です。絵がちっちゃくなっちゃって勿体無い。『生徒会役員共』と一緒にB6判(青年漫画で多いサイズ)へ移ってほしいな、と思いました。あとこの漫画って別冊少年マガジンの連載作でしたけど、『マックミランの女子野球部』と改題して現在は週刊少年マガジンに移籍したとのこと。そっちの単行本も7月17日に発売されます。内容はコレの続き? それとも一から仕切り直しか?

・板垣恵介の『檄!』の読んだ。

 完結した刃牙と、彼本人が送ってきた半生について綴る自伝本。『成りあがり』に強い影響を受けた、というのは前にもどこかで読んだ気がするな。理想を語りながら現状を嘆かず呪わず、前向きな姿勢で「俺はすごい」と自慢を交えてやや挑発的に言葉を並べています。「この人は頭のスイッチがずっと『ハイ』になったまま仕事してるんだろうな」と感じました。それこそ刃牙で言うところの「後退のネジをはずしてあるんだよ」状態。漫画家になってからの話をもっと読みたかったところだけど、150ページという低ボリュームにしてはよくまとまった一冊。

・松江名俊の『史上最強の弟子ケンイチ(51)』読んだ。

 ジュナザート編が終了、次の大きなエピソードに向けてのインターバルといったところ。アタランテーこそ小頃音リミの出番が多くて嬉しかった。相変わらずエロい格好してる。ケンイチはお色気要素を常に忘れないところが好きだ。「龍斗のためならどんなことでもする」と誓うリミに対しては、当然薄い本的な妄想を掻き立てられずにはいられない。残像が見えるほどの高速グラインドとか高速ブロージョブとか高速ハンドジョブとか。摩擦熱がすごいことになりそうだけど。とりあえず、騎乗位で奉仕しようとするリミのケツを鷲掴みして腕の力だけで持ち上げて激しくピストンする龍斗が達する瞬間に「グングニル!」と叫んでトドメを刺すところまで想像しました。

・大亜門の『わたしはキャワワワ!!』読んだ。

 圧倒的に汚い魔法少女モノ。マスコットキャラ的なエイナスのセリフ、「このクソアマ…! 知り合いのエロ漫画家にコイツを犯す同人誌を描かせてやるアス!」が清々しいほどゲスくて笑った。というかエイナスの綴り「ANUS」かよ。あわじひめじみたいだな。残念ながら打ち切りになって一冊完結となっているが、人類にとって早すぎるどころかいつまで経っても追いつけないこと確実なので仕方ない面もある。ネタが強烈すぎてキャラがなおざりというか置き去りにされてしまった感もあり。次回作に期待か。

 単行本派ということもあり、
「日曜くらい休ませてよ〜 YJ(ヤンジャン)のマンガだって毎週何かしら休んでるじゃん…」
「載ってないだけで仕事はしてるアス 第一全部載せるにはページが足りないアス」
 の遣り取りがもっとも興味深かった。

・青木ハヤトの『トラウマ量子結晶(6)』読んだ。

 ギャグとシリアスが混ざり合ってマーブル模様を描く異能バトルコミック。一言で表すなら「得体の知れなさにハマる漫画」。絶えず迷走していてグダグダっぽいところもあるんですけれど、「なんかすげー楽しい」点に関してはずっと一貫している。殺伐と和気藹々。作者自らが推薦帯を描く(誰か友達の漫画家やイラストレーターが描いてあげてよ!)などネタに走っている面もあるが、結構率直に熱血するような箇所もあって最低限の部分はガッチリと締めている感じです。少年漫画を茶化す態度を取りながら、根底に固い愛が漲っている。

「満身創痍でボロボロ
 特殊な血筋もねーが
 お前をブッ倒すって言ってんだよ」

 吼え方一つにも主人公の格というものは滲み出るものですね。

・伯林の『ケモノシマ(1)』読んだ。

 臨海学校を襲う脅威、それはクマでもオオカミでもなく「ただの野犬」だった……! という獣害スリラー。楽しい夏の思い出になるはずだった日々が、次々と屍の転がる阿鼻叫喚流血メモリーへと変わっていく。野犬って他のフィクションでは容易く撃退される存在だけれど、舐めてはいけない。反応速度からして段違いだし、人間が真正面から掛かって勝てる相手ではありません。野生動物というのは本当に、気持ち悪いくらい動きが早い。自主規制が強くて残酷なシーンはかなりボカされており、ゴア描写目当てで読む人にとってはガッカリかもしれない。が、「たかが犬」ごときに恐慌を来たし、互いを罵り合い怒鳴り合う中学生たちの姿、不和が広がっていく様子にハラハラさせられる。そう、これはスプラッターではなくパニックものなのだ。そして、タイトルが『イヌシマ』ではなく『ケモノシマ』であることを思い出してほしい。そう、こんなにも太刀打ち困難ですごく恐ろしい野犬ですら、この漫画における前哨戦でしかないのだ……次巻、何のケモノが来る?

・雑君保プの『BUPPAなビッチーズ(1)』読んだ。

 「ビッチ」と言いつつ晩生(おくて)で「色欲」だけ赤点な地獄の優等生・バリリドムが地上へ留学してきて毎度毎度の大騒動を引き起こすドタバタコメディ。地獄は「七つの大罪」(暴食・色欲・強欲・怠惰・嫉妬・傲慢・憤怒)が必修科目のようです。とにかく密度が高くて賑やかで、読んでいておなかが一杯になるというか、詰め込まれすぎて爆裂する。『DEAD OR ALIVE』(哀川翔と竹内力が共演した映画の方)のオープニングみたいに中身をブチ撒けそうになりました。一冊で二冊分か三冊分くらいの満足度が味わえるオトク仕様だ。作者は、コミックゲーメストの読者だったならば誰もが一度は真似したことのある、あの特徴的なデフォルメ絵の雑君保プ。「あの目」と書けばだいたい通じるデフォルメは今回も健在で安心した。ひたすら賑々しくて楽しくてカオス飛び散る漫画が読みたい、という方に断然オススメである。ちなみにタイトルは作者も解説してますが「ぶっぱ」という格ゲー用語から来ている。「ぶっ放し」の略で、リスキーな大技をまったく戦略ナシに繰り出すこと。ニュアンスとしては「後先考えない」「本能任せ」。

・新久千映の『ワカコ酒(1)』読んだ。

 明らかに誤読狙いのタイトルだが、エロス要素は皆無。『孤独のグルメ』ならぬ『おひとりさまのグルメ』といった趣のお食事&酒飲み堪能コミック。濃すぎず薄すぎず、短いページ数で充実した時間を過ごすことができる。単純に「美味そう」なムードが伝わってきて寛げます。「今夜の予定は自分とデート」と、「ひとりであること」を明るく捉えて静かに堂々としており、後味スッキリ。目の描き方がほんのり雑君保プを彷彿とさせるのも好きです。というか、目に惹かれて買ったような部分がある。そう、『ワカコ酒』はもう表紙だけで買いたくなる域に達した漫画です。それにしても、ここまで「もし薄い本が出るとしたらどんなタイトル?」という設問に迷わず即答できる漫画は珍しいな。実質一択じゃないですか。そら豆を剥いて食べるところは普通にエロかったし、本気でやるところが出てきても驚かない。いや、むしろ裏をかいて『さけぐるいワカコさん』みたいな同人誌も……?

・拍手レス。

 天野こずえは浪漫倶楽部から入った口ですが、その後、短編集を読みあさり、浪漫倶楽部と毛色の違うほろ苦さに驚いた思い出が
 天野こずえはARIAがヒットしたおかげもあって復刊も進み、旧作が手に入りやすくなりましたね。でもクレセント……うっ、思い出しただけで頭にノイズが……。

 こう見てみるとファントムはたくさんありますね…アニメもありますし、虚氏の人気に乗るなら他の作品も何とかならないでしょうかね…
 ヴェドは再評価されてほしいですね。アニメ化は難しいとしても、せめて再漫画化くらいは……。


>>back