2012年9月分


2012-09-26.

・いい加減に積読状態を解消しよう、と『勇午』の既刊全巻を一気にまとめ読みした焼津です、こんばんは。

 国内随一の成功率を誇る交渉人・別府勇午を主人公とする漫画で、現在単行本が36冊刊行されている。22巻までは普通にナンバリングされていたものの、日本編に入ったところで『勇午 ○○編』といった表記に変わり、「あれ? これって何巻目だったっけ?」と分からなくなってしまうことが頻発するように。とはいえエピソード間の繋がりは薄く、基本的にどの編から読んでも大丈夫な構成となっています。行く先々で勇午の知り合いが出てくるため「このキャラって以前登場した奴なのかな?」と錯覚しそうになりますが、ほとんどのキャラは初登場。主人公が交渉人とはいえ具体的な交渉テクニックの薀蓄を垂れることは少なく、だいたいが危険を顧みずに体当たり気味でズンズンと核心に向かって突き進んでいくパターンです。おかげでしょっちゅう怪しい連中に捕まっては拷問される。「交渉人が主人公の漫画」というより「主人公がよく拷問される漫画」の方が認識としては正しいかもしれない。それにしても勇午のしぶとさは尋常じゃなく、主人公補正がなければ十回くらいは死んでると思う。「交渉人(ネゴシエイター)のユーゴ」ってか「不死者(ノスフェラトゥ)のユーゴ」だよ。

 実は中学生のときに一度読んでいたんですが、そのときはパキスタン編(単行本1巻から3巻にかけて展開されるエピソード)の内容があまり理解できず、「もうちょっと後に読もう」と先送りしていたんですよね。そのせいで気がつけば30冊以上も溜まっていた。勇午はとにかく「意志の人」で、どんな危険だろうと逆境だろうと一切怯まずに不撓不屈の信念を掲げて突破していく。その覚悟が化け物じみていて、だんだん怖くなってくるんですけれど、やっぱりカッコいい。各エピソードが単行本2冊か3冊、短いときは1冊で終わる、ってのも程好い長さでダレずに読み進められます。個人的に面白かったエピソードは、「処女懐胎」をテーマに据えた「オーストリア・ハンガリー編」(文庫版のタイトルだと『マグダラのマリア編』)。20年近くやってる漫画だから当然ですが、初期と今とではかなり絵柄が違いますね。特に日本編に入ったあたりから勇午の容姿がどんどん青年期の夜神月みたいになっていってなんだか複雑な心境に。キラ相手に捨て身の交渉を行う勇午というのもそれはそれで面白そうだが。

ロリババアの逆で、身体的には明らかに非ロリでも年齢はロリにあたるような場合、何と言いますか?(ぶく速)

 「見た目は大人、頭脳(と実年齢)は子供!」のパターンか。少し古いけど『よいこ』という漫画があったな。小学生なのにモデル並みに発育している少女がヒロイン。エロ漫画だとこういうタイプを見たときの男の反応が判を押したように「けしからん!」の一点張りで笑ってしまう。単に発育が良いだけの場合と、何らかの事情(『ふしぎなメルモ』みたいに成長する飴を舐めたとか)で身体時間が加速(ないし跳躍)している場合があり、後者はよくよく考えると「幼児退行しちゃったタイプ」とあまり変わらない。身体時間の加速(跳躍)と精神時間の退行(逆行)がもたらす結果はほぼ同一なんですよね。そして『ベンジャミン・バトン』みたいに時間を逆転させてしまえば、ババアロリからロリババアへの移行も可能だろう、ということ……! 観念としての「ロリ」を巡る思考において「時間」の問題は外せない。しかしふと思ったが、『Dies irae』マリィが金髪巨乳ではなくてガチロリだったら、いろいろと話が変わってくるな……ただでさえキモいメルクリウスのキモさが更にハンパない次元へ突入して御堂筋くん絶叫レベルに達してしまうし、主人公のキーワードである「刹那を愛する」がロリコン宣言のように聞こえてくるし……それだと「刹那になりたかった」と語るロリババアまで邪推されてしまうよ。「来るがいい、第六天――貴様の宇宙に俺が縦筋を刻んでやる!」 最悪だ。

脚本:虚淵玄さん、監督:水島精二さんによる『楽園追放』公式サイトリニューアル、キービジュアル公開(萌えオタニュース速報)

 近未来を舞台にバツイチ元刑事従軍経験有りのオッサンが謎の特殊部隊と銃撃戦やカーチェイスを繰り広げるイメージで、キービジュアルもヒエロニムス・ボッシュの「悦楽の園」みたいな調子を想像していたけど、全然違った。エロスーツを纏った金髪巨乳……戦闘少女モノかしら? パッと見の印象は「コスプレした柏崎星奈(肉)」でした。とにかく今は近場に上映館があることを祈るばかり。

福山雅治主演で東野圭吾氏の人気ミステリー、ガリレオシリーズの「真夏の方程式」が映画化…来年初夏公開(ぶく速)

 実写版ガリレオの続編は絶対に制作されるだろうと確信していましたが、いきなり『真夏の方程式』? てっきり次は『聖女の救済』だろうと思っていただけに意外です。原作のガリレオシリーズはちょっと前に新刊が出たばかりですが、来月にまた新しい本(題名は『禁断の魔術』)が発売される。『容疑者Xの献身』が出る前は正直言って地味な印象のシリーズでしたけど、今となっては加賀恭一郎シリーズを凌駕する勢いの看板作品群と化していますな。実に面白い。

劇場版『まどか☆マギカ』上映時間は前編:130分 後編:109分(萌えオタニュース速報)

 130分って、前編だけで『もののけ姫』クラスかよ。アニメ映画としては結構な尺ですね。観ていて退屈しなかったけど割と長く感じた(そしてケツも痛かった)『おおかみこどもの雨と雪』でさえ120分くらいでしたから、これは事前にトイレ済ませておかないと厳しい。そしてこの配分からすると、前編はTV版の7話目か8話目くらいまでやって、後編が残りの4、5話分をこなす感じになるのかしら。公開日が近づいてきたおかげでだんだん実感が伴ってまいりました。

沙村広明「無限の住人」完結まであと4話、19年の連載が終幕へ(萌えオタニュース速報)

 19年か……当方はリアルタイムで追っていたわけじゃないが、それでも中学生の頃から読んでいたので長い付き合いである。不死力解明編のあたりで力尽きそうになりましたが、何とか凌ぎ切った。ようやく迎えた最終章は尸良のしぶとさと槇絵さんの相変わらずなチート掛かった強さが素敵。でも一番好きなキャラは吐鉤群です。むげにんに思いを馳せると同時期に読み出した『地雷震』をなんとなく連想しますが、あれみたいに何年も経ってから『無限の住人∞(infinity)』とか言って新作出したりしないだろうな……微妙にありそうな感じがするけど、たぶんその頃には懐かしくなっているだろうから別にいいか。にしても沙村、次の新作はどうするんでしょうね。個人的には『おひっこし』みたいなノリをちょっと望んでいたり。

・拍手レス。

 スチパンは本当に、独特の固定ファンを獲得するに至りましたよねぇ。第二のクトゥルー神話体系を狙ってるっぽい辺り、桜井さんマジ野望がでかい。そういえば、夏に出た同人小説によって、桜井さんが実はガチなバトル描写もかなりいける人だということが判明しました。ガクトゥーンでは是非ともその手腕を振るっていただきたい。
 メガラフターあたりから徐々に人気が出てきたライターですけど、まさかライアーソフトの柱になるほど人気が出るとは……ライアーと言えば、睦月たたらはちょっと前に百合エロゲを担当していたが、天野佑一は最近名前を見ないな。どうしてるんだろう。


2012-09-18.

・「底知れぬ品格、ではいい足りない、激しい品格。もはや、狂気の域に達しているような品格」という『餓鬼道巡行』の表現に噎せるほど笑った焼津です、こんばんは。

 町田康の文章は読んでいて笑いを堪えるのが難しく、これほど人前で読むことに向かない本もあるまい、と深甚なる確信が得られます。町田本を読んでいるときは肉親でさえ当方を見る目が不審者を見るときのそれに変わりますからね。今や「激しい品格」の一言だけで前後を思い出し、発作的に噴き出してしまう。ツボに入るどころかツボを抉って反対側まで突き抜けるレベル。書いていることは本当にしょうもないし、手なりとしか思えない駄洒落もふんだんに盛り込まれているが、それでも面白いものは面白い。今後もマーチダ中毒の道を邁進しようと誓いを新たにしました。

秋アニメ『PSYCHO-PASS』全22話の2クールで10月11日より放送!先行プレミア上映会開催決定(萌えオタニュース速報)

 公式サイトで出てくるマーク(絡み合う二匹の蛇と翼)はカドゥケウス(ケリュケイオン)かしら? しかし2クールもやるんですか、ギルクラ並みに気合が入ってますね。企画の始動が3年前、ということは虚淵玄が『アイゼンフリューゲル』を出していた頃か。スタッフコメントによれば、総監督の本広克行と監督の塩谷直義は当初の予定だとロボットアニメを作るつもりで、そこに後から参加した虚淵のアイデアで現状の方針が決まったらしい。深見真は「第一話から最終話まで、ほぼすべてに共同脚本として参加」しており、「ほぼ一年がかりの大仕事」だったということは去年から制作に加わった勘定になる。虚淵が「やらないか」と誘った模様だけど、虚淵自体も同時期に加わったのかもしれない。一緒に脚本を担当している高羽彩曰く「メインで書かれているのは虚淵氏深見氏のお二人」とのことで、つまりこれは22話丸ごと深見汁満載と考えて宜しいでしょう。あと、深見のツイッターを読んでいたらアサウラが「デビュー直後から何かとお世話になっている」とコメントしていて深く納得しました。今でこそ『ベン・トー』の原作者として知られるアサウラですが、デビュー作の『黄色い花の紅』と受賞後第一作の『バニラ』はガン・アクション小説で、特に後者はその強烈な百合っぷりにより「あれ? 『バニラ』の作者って誰だったっけ? 深見真だったかな?」と混同するくらい近接した空気を放っておりました。だから深見と同じような路線に進んでいくのかな、と思った矢先に「アサウラが今度出す新作は半額弁当を巡って死闘を繰り広げる話だって」と聞いたわけですから、当方が「無茶しやがって……」な心境に陥ったとしてもまったく不思議ではない。ぶっちゃけ「この『ベン・トー』が最後の作品になるかも」っていうイヤな予感がチラッと脳裏をよぎったほど。まさかアニメ化して10冊以上も続くとは、完全に予想外でした。それにしても……虚淵玄の代表作として『Phantom』『Fate/Zero』よりも真っ先に『魔法少女まどか☆マギカ』が挙がる状況にやっぱり笑ってしまう。劇場版は世界展開することが決定と報じられているし、今後もずっと虚淵の名前に『まどか☆マギカ』が付いて回りそうな勢いだ。『PSYCHO-PASS』がまどかを上回る域でヒットすれば「『まどか☆マギカ』の虚淵玄」から「『PSYCHO-PASS』の虚淵玄」と、多少は字面が良くなりそうだか……さて、どんなものか。

劇場版『まどか☆マギカ』上映時間は前後編合わせて240分?(萌えオタニュース速報)

 120分を2本ってこと? てっきり90分×2本かと思ってました。1クールアニメの総集編映画を前後編でやるというだけでも異例なのに、合計で240分って、それはもうTVシリーズをほとんどそのまま流すようなもんじゃないですか。上映時間が長いと1日あたりの上映回数が少なくなる=観客の回転も悪くなるので、普通は1分でも短くしようとするものなんですが……この調子で行くと完全新作の3本目も2時間くらいの尺になるかもしれませんね。あるいは『涼宮ハルヒの消失』並みに3時間近い作品だったりして。それだと観客のケツと膀胱がヤバい具合になりそう。消失のときは映画が終わった途端、観客たちがトイレに殺到したな。当方はおしっこならそれなりに我慢できるタイプですけれど、尻の痛みはなかなか耐え難い。ケツが痛くなってくると集中力も途切れてくる。だから長い映画は劇場に向かわずおうちでDVDやBDをゆっくりと何回かに分けて観るパターンが増えました。寝っ転がって気楽に観れるような設備を用意してくれる映画館があったら、それはとっても嬉しいなって。

【モバマス】新アイドル星輝子ちゃんがきのこでヤバイ(萌えオタニュース速報)

 モバマスは二次創作を通じて断片的に知っている程度ですけれど、これはまた随分とキチ……クセのあるアイドルが来ましたな。果たしてそのキノコは栽培していいキノコなのか。同人では逮捕オチが頻発しそうだ。CDが出るとしたらキャラソンはデス声で収録することになるのかしら。だとしたら声優さんも大変だな。この子を演じ続けていると空に輝く星になるどころか喉が超新星爆発を起こしかねない。あえて可愛い声でゴートゥーヘるのもそれはそれでいいかも。


2012-09-12.

・海苔巻きを「ウミゴケまき」と読んだら途端にゲテモノ臭くなるな……と益体もないことを考えた焼津です、こんばんは。

 肉料理のほとんどは肉を「屍肉」と置き換えるだけで充分な嫌がらせになる。豚の屍肉揚げ(トンカツ)。擂り潰し細切れ屍肉の捏ね回し焼き(ハンバーグ)。塩漬燻製豚屍肉(ベーコン)は漢字が並んでちょっと厨二臭いか。そうやっていろいろ考え詰めた結果、「グロいけど美味いならイイか」とあっさり割り切ってしまう当方は実に気楽である。高校生の頃に豚の屠殺ビデオ見せられたときも、「エグいなぁ、でも美味しそう」と痛痒だにしなかった。エビやシャコも冷静になって眺めるとアレだけど美味しいですよね。『ブラック・ジョーク』のネオン島(東京湾の埋立地に位置する)では山ほど死体が海に捨てられるため、やたらと肥え太った魚介類が獲れる――という件を読んだときも「美味しそうだな、食いたくないけど」と思った次第。食物連鎖は摂理と割り切るしかない。

ライアーソフトの新作『黄雷のガクトゥーン』、発売予定日が決定(12月21日)

 スチームパンクシリーズの最新作です。都合6本目、FDを入れると7本目です。ライアーもスチパンシリーズを主力とする覚悟が整ったみたいで、遂にポータルサイトまで公開されました。いやこんなサイトが出来ていたとは知らなかった……『蒼天のセレナリア』が出た頃は想像だにしなかったな、こんな事態。なんせワゴン行ってましたし、セレナリア。「本シリーズは現在のところ、ライターである桜井光(わたしです)の作品群しか存在していませんが、将来的には、複数の著者で展開したいとも考えています」と語っており、クトゥルフ神話のようなシェアード・ワールドを目指す模様。海外進出も目指すというのだから本格的だ。

 『黄雷のガクトゥーン』は1908年、フランスの港湾都市であるマルセイユを舞台にした学園モノ、より厳密に言えば学園都市モノです。学園都市って書くとやっぱり最近は『とある魔術の禁書目録』を連想する人が多いのかしら。「蓬莱学園」の名前を知らない人もいるんでしょうね。ちなみにライターの桜井光は元遊演体メンバー。今度はカダス地方の話になるのかな、と思ってましたが、また西亨(地球圏)とは。大雑把な解説をしますと、スチームパンクシリーズは「西亨」と「カダス」、大きく分けて二つの世界があり、用語辞典等で明記されているからバラしてしまいますが、それぞれ別々の惑星です。宇宙上ではかなり離れた位置関係にあるはずなのに、なぜか地続き(海続き?)で行き来することが可能になっていて古くから交流がある。カダスと西亨を繋ぐゲートのようなものはなんでも北海(カダス側からはロマール海の先)に存在しているそうな。シェアード・ワールドを目指すだけあって細かい設定が山ほどあり、全容を把握しようとすると疲れてしまうため怯みそうになりますが、スチームパンクシリーズの良いところは設定をあまり理解していない状態でプレーしてもそれなりに楽しめるところです。桜井光の作風が独特なので合わない人はまったく合わないでしょうが、ハマれば気持ちよくなってグイグイ読まされてしまう。当方も設定がよく分からないままシャルノスをプレーしましたが、さして支障なく堪能。設定やら世界観やらは後でヴァルーシアの用語集を見て「へえ、そうなのか」と感心したくらい。だからガクトゥーンもまったく予備知識ナシに手を伸ばしても「なんだか知らんが妙に引き込まれるわ」ってなる方がきっとおられるはずです。こっちの予告サイトにSSが載ってますから気になる方は読んで雰囲気を掴んでみては如何だろう。スチパンは基本的にどの作品からでも入れる構成になっています、躊躇する必要などありませぬ。ちなみに、スチパンという略称は当方が勝手に縮めているものではなく、公式でもちょいちょい使われていオフィシャルな呼称です。だから遠慮なく縮めて呼んじゃいましょう。これなら「スチームパンク」と発音するつもりで誤って「スチームパンツ」と口走ってしまう心配はありません。

最近クローズド・サークルって減った?(ぶく速)

 携帯電話が普及し始めた90年代後半あたりから恐ろしい勢いで激減していきましたな、クローズド・サークルもの。一応解説しておきますと、クローズド・サークル(閉じられた輪)とはミステリやサスペンス、ホラーなどにおける閉鎖的シチュエーションを指す用語で、具体的に申しますと「キャー! 人が死んでるー!」「はやく警察に通報しろ!」「……駄目だ、電話線が切られていて繋がらない!」「屋敷から出て直接行けば……」「さっきラジオで言っていただろ、この嵐で土砂崩れが起きて道が塞がってるって!」「風雨もどんどん強くなっている、いま外に出て山を降りるのは自殺行為だな」「ああ、このまま皆で固まって夜を明かすしかない……」「イヤよ! 人殺しと一緒に過ごすなんて真っ平ごめんだわ! あたしは自分の部屋に戻るからね!」 そして翌朝、密室から女性の死体が新たに発見されるわけです。「嵐の山荘」とか「絶海の孤島」とかがクローズド・サークルの代表的なパターン。警察に通報できず、助けを呼ぶこともできない、そうした中で次々と惨劇が発生することにより「逃げ場のない恐怖」が盛り上がっていくって寸法だ。また、警察の不在で「鑑識等が科学的な捜査をすればすぐにバレてしまうトリック」を採用することが可能というメリットもあるため、本格推理で特に好まれる状況でもあります。科学捜査の進歩はトリックの介在できる余地をどんどん奪っていきましたから、警察の手が伸びないクローズド・サークルはミステリにおいてある種のサンクチュアリと言える。しかしそのサンクチュアリすらも、通信技術の進歩に踏み荒らされ、衰退の一途を辿るのみ。現代でクローズド・サークル的な状況を作ろうと思ったら、まず「携帯電話を使えない理由」から設定していかないといけません。「山奥で圏外だから使えない」というのも、エリアが広がった今となってはあまり説得力がなくなってしまった。古処誠二の『フラグメント』(旧題『少年たちの密室』)は大規模な地震により倒壊したマンションの地下駐車場に閉じ込められる……と、かなり大掛かりなお膳立てでしたが、これくらいしないと「圏外」は発生しえない。「携帯電話を忘れた」とか「持ってきたけど充電していなくて動かない」とか、そんな理由で通話不可能なんじゃ単に登場人物がバカみたいに見えるだけで物語の緊張感を高める役には立ちません。『インシテミル』は「クローズド・サークルのためのクローズド・サークル」で、ジャンルとしてはむしろデスゲーム物に当たります。時代を遡って過去にする手もありますが、それだと「話を過去にする意味」がないと読者は納得しないでしょう。結局、無理矢理「携帯電話が使えない理由」をでっちあげてクローズド・サークルを維持しようとするとどうしても不自然になるし、読んでいる方のストレスも溜まる。『そのケータイはXXで』は携帯電話からの情報を頼りにして、村ぐるみで襲ってくる連中から逃げ回る……という、クローズド・サークルの鬼門とされる携帯電話を逆手に取った発想がなかなか面白かったが、あれもあれでそうそう真似できるネタではない。今後はたとえば宇宙ステーションのように「通信手段はあるけど簡単に手出しできないところ」とか、舞台に工夫を凝らさないと難しいでしょうな。しかし、「電話線が切られている!」というミステリに馴染んだ一クローズド・サークル好きとして、この伝統はどうか守ってほしいものだ。

カントク×シャフト『まじかるすいーと プリズム・ナナ』は変身美少女アニメ!うさぎのようなマスコットキャラ2匹公開(萌えオタニュース速報)

 魔法少女じゃなくて変身少女……? 特撮寄りってことか? 「愛ある限り戦いましょう。命、燃え尽きるまで」みたいなノリなのか。それとも「この世で、もっともかたい抱擁――『血晶!』」みたいなノリなのか。リンク先の記事で「変態した姿」や「なぜ変態するのか」等、「変身」ではなく「変態」を強調しているところが気に掛かる。変態(メタモルフォーゼ)の意味でしょうけれど、どうしても蛹から羽化して蝶になるような、虫めいたイメージを抱いてしまう。もしやヒロインたちは全員が虫と合一化するのかしら。朝起きたら芋虫になっていた、みたいな。そして『アラクニド』みたいにところどころで虫解説が入る。その「蟲」は後退を知らない! スピンオフの『キャタピラー』は本編より更にエグい内容なのでバイオレンス好きにオススメです。

『境界線上のホライゾン ENCYCLOPEDIA』、発売日変更(9月下旬→12月8日)

 なん……だと? って驚くほどでもないか。ちょっと前にアニメイト覗いたら発売日が12月って書いてあったし、延期の可能性は考慮しておりました。700ページもある大型本だから、恐らく編集作業が納期までに終わらなかったんじゃないかな、と思います。3ヶ月程度の延期ならまだ軽い方だ。ピンチョン全集の『重力の虹』新訳版なんて2年くらい延びたもんな……ヘイドン・ホワイトの『メタヒストリー』に至っては今どうなっていることやら。予定では2年前に発売される手筈だったのに、現在は状況不明。ああ、そういえば、長らく翻訳に時間が掛かっていたリチャード・パワーズの "The Echo Maker" が今月新潮社から出るみたいです。タイトルはそのまま『エコー・メイカー』。この調子なら "The Gold Bug Variations" (『黄金虫変奏曲』、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」とポーの「黄金虫」を掛け合わせたタイトル)もそう遠くないうちに邦訳版が刊行されることでしょう、たぶん。

秋アニメ『PSYCHO-PASS』スタッフ公開!総監督:本広克行(踊る大捜査線など) 監督:塩谷直義 音楽:菅野祐悟 脚本:虚淵玄、深見真、高羽彩 OP:凛として時雨 ED:EGOIST(萌えオタニュース速報)

 最近ニトロと付き合いがあるみたいだったし、深見真はいずれ遠くないうちにアニメの仕事に関わるはず……と予想していましたが、まさか本当にこうやって名前を目にするとは。押井守に推薦文を書いてもらったことがあるし、グアムで鉄砲の撃ち方を教えてもらったこともある仲でもあるので、押井と縁の深いProduction I.Gで脚本を書くというのもあまり意外な話ではないんですが……うん、それでもやっぱりビックリですね。「体育会系新本格」と銘打たれたデビュー作『戦う少女と残酷な少年』は肝心の密室トリックが「隣室から壁越しに衝撃波を打ち込んで絶命させた(浸透勁みたいなもの)」と珍妙極まりない代物で、「地雷作家」の代名詞にされていた時期もあるほどでしたから。『アフリカン・ゲーム・カートリッジズ』『ヤングガン・カルナバル』でバイオレンスに特化し汚名を返上、旺盛な執筆活動とともに独自のファン層を築き上げましたが、ここでまた新たなステップを踏むことになるのでしょうか。深見作品のオススメはさっきも挙げた『ヤングガン・カルナバル』。文庫版も来年くらいには完結巻が出そうな気がする。『PSYCHO-PASS』終わったらYGCのアニメもやってほしいな。ちなみに、深見作品は銃や兵器、軍隊にまつわる薀蓄がこってりと濃厚かつ冗長に盛り込まれているので、そのへんを楽しめる人か読み流せる人でないと少しキツいかも。そのへん割と平気な当方も『ゴルゴタ』の序盤はさすがにちょっとかったるかった。


2012-09-09.

・前回の更新で触れた夏見正隆の『空のタイタニック』は来月に延期した模様でガッカリしている焼津です、こんばんは。

 本屋に行っても置いてないから在庫切れかと思いきや、延期オチだったとは……本当、あまり話題にならないだけで書籍や漫画の延期は毎月恒例のイベントと化していますね。店頭で必死に探した挙句、「そもそも発売していなかった」と知らされたときの徒労感たるや言葉にできないものがある。『南国ちゅーばっか!』の2巻も一生懸命探したのに、発売されていないどころか公式サイトから情報が消えていて延期したのか発売中止なのか、それすら分からない状態になっていてガッカリ。こうした延期ってほとんどの場合が告知ナシで行われるので、なかなか情報をキャッチしにくい。延期するならせめて告知はしてほしいところです。

Gユウスケの個人サイト「あっちょんぶりけ」に「討伐」のイラスト

 パッと見では三つ巴ですが、奥に見える空っぽの曼荼羅こそ奴の証。あと『氷菓』の千反田えるのイラストもアップされています。しかし、アニメ化効果とはいえこんなにあちこちで千反田さんの絵を見かけることになるとは想像だにしなかった。久々にごとPのホームページへアクセスしたらTOP絵になっていましたし。同人誌のタイトル(『千反田慕情』)には笑った。アニメは今「あきましておめでとう」のあたりか。あれは結構好きなエピソードなので観る日が楽しみ。

『ハイスクールD×D』TVアニメ2期制作決定キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!(萌えオタニュース速報)

 むしろ来なければおかしいと思っていただけに既定路線。1期目は確か原作の2巻くらいまでしかエピソードを消化してなかったらしいし、今月13巻が発売される(限定版はもう出たかな?)ことを考えればストックも潤沢すぎるほど潤沢。『ハイスクールD×D』が本格的に面白くなってくるのは3巻以降なので、アニメの方も更なる盛り上がりが期待できるのではないかと予想されます。それにしてもつくづく石踏一榮は化けましたな。デビューから6年、芽が出るまで少し掛かりましたが、今後もこの調子で活躍していってほしい。

『ニンジャスレイヤー』書籍公式サイト始動(主にライトノベルを読むよ^0^/)

 イラストは『KEYMAN』のわらいなくか。見ての通り描き込みを重視した濃い絵柄で、まさにニンスレのイメージにピッタリと来る。というか、わらいなくもヘッズだったのか……どれだけ中毒者が広がっているんだ、この小説。

『ジョジョの奇妙な冒険』連載25周年記念ムック『JOJOmenon(ジョジョメノン)』、10月5日に発売予定

 荒木でメノンというと、どうしても「バオー・アームド・フェノメノン」とかそっちの方を連想してしまうが……もしかして『バオー来訪者』絡みの企画が? バオー劇場化フェノメノンを想像するだけで胸が熱くなる。でもバオーはJOJOと関係ないし、その線は薄いか。ロングインタビュー等、読み応えのある記事も含まれているみたいだからチェックしておこうっと。

・拍手レス。

 ニンジャスレイヤーは第四の壁を破ったニンジャがツイッタ―したりしているのでリアルタイムで追った方が楽しめるかもしれません、幸い今までのツイートはモーターヤブされないようですから ユウジョウ!
 とりあえず書籍版を読んでみてからリアルタイム堪能を検討致したく。しかしツイッターで小説が連載されるとは、時代が変わったものだ。

 ラノベのタイトルについてはハルヒが社会的に売れすぎたってのがあるだろうな。
 ハルヒはアニメ化によって天井ブチ破る勢いのヒット飛ばしましたからね。あれ以降、ラノベ原作のアニメが見境なく制作されるように……。

 ロードスとクリスタニアの関係はパプワ君と自由人ヒーローの関係が近いかなぁ。
 柴田亜美ですか、なんだか懐かしいですね。最後に読んだのは『変身王子ケエル』だったかな。

 DiesPCコンシューマ版が届いたのでプレイしました!相も変わらず燃えますね、5年前に切らずに追い続けて報われた感がハンパないです
 あの失意と落胆にまみれた惨劇のクリスマスからもう5年が経つとは……光陰矢の如し。陰茎槍の如し、は『らくえん』ネタだったか。

 Gユウスケさん休出して何やってるんすか…… http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=29878354
 Gユウスケの愛と情熱をヒシヒシと感じる。新作の情報を目の当たりにする日が楽しみだ。


2012-09-01.

・ちょっと前(先々月)に発売された藤本ひとみの新刊『モンスター・シークレット』が“鑑定医シャルル”シリーズの最新作と知って今更仰天する焼津です、こんばんは。

 マジですげー久々っスよね。シャルルというのはもともとコバルト文庫で展開されていた“まんが家マリナ”シリーズ(20冊くらいあった)に登場していたキャラで、フルネームは「シャルル・ドゥ・アルディ」。彼を主人公に据えたスピンオフが“鑑定医シャルル”シリーズに当たります。“まんが家マリナ”シリーズで10代だったシャルルが20代に成長、また判型が文庫からハードカバーに変わった(後に文庫化された)ため、内容もぐっと大人向けになっている。サイコ・スリラーの様相が強く、“まんが家マリナ”のイメージで読むとギャップに驚くこと請け合いです。93年に『見知らぬ遊戯』、94年に『歓びの娘』、97年に『快楽の伏流』と続きましたが、その後音沙汰がなかったせいもあって「三部作で完結なんだな」と判断しておりました。大元である“まんが家マリナ”シリーズ自体が94年の『まんが家マリナ赤いモルダウの章 シャルルに捧げる夜想曲3』を最後に中断している(続編として『シャルルの愛する葬送曲』を書く予定と告知していたが、書かれずじまい)こともあり、続刊を望める雰囲気ではなかった。個人的に“まんが家マリナ”シリーズはノリが合わなかったけれど、“鑑定医シャルル”シリーズは打って変わってハードなサスペンスで、あまり話題に挙げる機会がなかったものの結構好きだったんですよね。それだけに15年ぶりの復活はちょっと嬉しい。熱心なファンは「で、結局『赤いモルダウ』ってなんだったわけ?」と問い詰めたい気持ちでいっぱい(赤いモルダウの章は「赤いモルダウか!」と叫んで終わり、詳しい説明もなく、20年近く経つ今も依然として謎のまま)でしょうが、さして熱心でもなかった当方は赤いモルダウとか抜きで素直に喜ぶこととする。ちなみに『モンスター・シークレット』のシャルルは19歳という設定で、時系列的には既存の“鑑定医シャルル”シリーズよりも前のエピソードって位置付けになる模様だ。

 「藤本ひとみ? 知らないなぁ」という方もおられるでしょうが、あるいは別ペンネームの「王領寺静」でピンと来るかもしれません。そう、数多くの少年に拭いがたいトラウマを与え、未だに語り草となっている“異次元騎士カズマ”シリーズの作者でもあるんです。あれも未完で放置されていますな。最近の藤本ひとみは時代物やヨーロッパ物がメインになっていますが、『KZ少年少女ゼミナール』『探偵チームKZ事件ノート』としてリメイク(本文は別の作家が執筆)するなど、児童向けの仕事にも関わっています。いずれ“異次元騎士カズマ”もリメイクされるかもしれませんね。

【綾辻行人】麻雀強いらしいから、麻雀をトリックにしたミステリ書いて欲しいな(ぶく速)

 『むこうぶち』の巻末鼎談で天獅子悦也と安藤満に混ざって綾辻行人の名前があったときはビックリしましたね。「全員『あ』から始まる苗字じゃねぇか!」って。そういえば綾辻が麻雀好きってのはどこかで聞いた気がするけど、聞いた当時は麻雀に興味なかったからスルーしてたんだよな……ちなみに綾辻は手品も趣味だったはず。『バード』みたいな超絶イカサマ麻雀ミステリも狙い目か。奈須きのことか、麻雀が好きな書き手は結構伏在しているんですけれど、「麻雀を題材に採るとルールを知らない人や麻雀に偏見を抱いている人が敬遠してしまう」という難点があるせいか、なかなか麻雀ネタの読み物って出てきにくい。黒川博行も前は『麻雀放蕩記』なんてのを出してたけど、最近はそういう仕事していないみたいだし。あ、でも『悪果』にちょっとだけ麻雀シーンがあったか。あと麻雀を打つシーンって漫画やアニメで観てもちょっと地味に感じるくらいだから、テキストで魅せるとなるとかなりの工夫が必要になる。当方はおとなしく阿佐田本を漁ることにします。

少し前のラノベのタイトルってセンスよかったよな?(ぶく速)

 『皓月に白き虎の啼く』は今でもカッコいいと思っている。しかしあれももう20年近く前か。嬉野秋彦が未だにバリバリ現役という事実に驚かされます。現在は一部の文章系タイトルがいささか悪目立ちしておりますが、全体としては以前と変わらず『○○の××』『△△と□□』『(カタカナ)・(カタカナ)』って調子のものが多いように見受けられる。やたらと題名が長いものばかり、という気がするのは副タイトルのせいもあるかしら。『彼女がフラグをおられたら 大丈夫、この臨海学校は安全だから、絶対敵に見つかったりしないよ』はメインタイトルよりもサブタイの方が長いパターン。なんであれ、「特徴的」かつ「覚えやすい」タイトルであることが望ましい。没個性で覚えにくいタイトルは、その時点でかなり損をしている。

・今月の予定。

(本/小説)

 『レイセン5』/林トモアキ(角川書店)
 『空のタイタニック』/夏見正隆(徳間書店)
 『JORGE JOESTAR』/舞城王太郎(集英社)
 『償いの報酬』/ローレンス・ブロック(二見書房)
 『BEATLESS』/長谷敏司(角川書店)
 『無罪 INNOCENT』/スコット・トゥロー(文藝春秋)
 『ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上1』/ブラッドレー・ボンド、フィリップ・N・モーゼズ(エンターブレイン)

(本/漫画)

 『魔法少女プリティ☆ベル(8)』/KAKERU(マッグガーデン)
 『二輪乃花』/宇河弘樹(芳文社)
 『セントールの悩み(3)』/村山慶(徳間書店)
 『ブレット・ザ・ウィザード(3)』/園田健一(講談社)
 『焔の眼(2)』/押切蓮介(双葉社)

 文庫化情報。エドモンド・ハミルトンの『フェッセンデンの宇宙』が遂に文庫の世界へカムイン。表題作「フェッセンデンの宇宙」はとても有名な一品で、『神は沈黙せず』『神様のパズル』など、これを下敷きにした作品は枚挙に暇がないくらいです。タイトルは方々で目にする機会があったものの、未だ実物を読んだことがなく、喉に刺さった小骨のように気に掛かる存在でありました。“奇想コレクション”で刊行されたときに買おうかどうかよっぽど迷いましたけど、待っていて良かった。ほか、劇場アニメが近々公開される桜庭一樹の『伏 贋作・里見八犬伝』も文庫化します。これに合わせたわけでもないでしょうが、角川映画の『里見八犬伝』も今月ブルーレイ版が発売される予定。水生大海のデビュー作『少女たちの羅針盤』、円居挽のデビュー作『丸太町ルヴォワール』、シャーマン探偵ナルヒコ(ナルコレプシーを患っているため「ナルコ」とあだ名されており、「シャーマン探偵ナルコ」と表記されているパターンもある)シリーズ第1弾の『カオスの娘』も個人的にチェックしておきたいところ。映画化もしたスコット・トゥローの代表作『推定無罪』が再文庫化、というか新装版になって今月発売されますが、なぜ今頃になって? と首を傾げる方は↓の説明をどうぞ。

 『レイセン5』は「ひでおアフター」とも称される、『戦闘城塞マスラヲ』のアフターストーリー。『お・り・が・み』のアフターストーリーである。『ミスマルカ興国物語』にとってはビフォーストーリーに当たる。オマケというか御褒美みたいな感覚で始まったシリーズゆえ到達すべき目標もなく、割とダラダラと、野放図にやりたいことをやってる。その気儘さが最大の魅力であります。アフターストーリという性質上、いきなり『レイセン』から読み出すと内容が分かりにくく、「で、結局これってどういう話なの?」と訝ること請け合い。どういう話かって、そんなもん「ヒデオに萌える話」に決まっているでしょッッッ! 並み居るヒロインたちを押しのけて主人公が堂々たる最人気キャラとして君臨している、概ねそんなノリのシリーズです。ライトノベルは今月『されど罪人は竜と踊る0.5』も発売されますね。ジオルグ事務所時代を描く過去編です。スニーカー版で言うと『Assault』。これでスニーカー版のエピソードはだいたい回収された形になるかしら? 『空のタイタニック』は“スクランブル”シリーズ(ノベルス時代の題名は『僕はイーグル』)の新刊。前作『イーグル生還せよ』が「超人気シリーズ完結篇」と銘打たれていたのでもう出ないかと思っていましたが、普通に出ましたね。「遂に完結!」と謳っておきながらしばらく経つとあっさり続編が出るハリウッド映画のようなものか。この調子で『イグドラジル』も何食わぬ顔して続編出して欲しいなぁ(水月郁見は夏見正隆の別ペンネームです)。『JORGE JOESTAR』はJOJOノベライズ企画「VS JOJO」の第3弾。ジョナサンの息子でジョゼフの父親という、JOJO好きでも説明されないとなかなか思い出せないようなキャラに目を付けた舞城、ゲストとして九十九十九を登場させるなど、今回も例によって例の如くやりたい放題みたいだ。楽しみにするしかない。『償いの報酬』は“マット・スカダー”シリーズの最新作。都合17冊目になります。「酔いどれ探偵」として知られるスカダーはシリーズの途中で断酒するそうですが、今回は80年代に遡り、アルコール依存症と戦っていた頃のスカダーをふたたび描く模様。ちなみにシリーズ10冊目『獣たちの墓』がリーアム・ニーソン主演で映画化される予定とのことだ。スカダーの映画は『800万の死にざま』(1986年)以来だから実に四半世紀ぶり。『BEATLESS』は『円環少女』でコアな人気を誇る長谷敏司の新企画。既にメディアミックスも始まっており、コミカライズ版は『BEATLESS-dystopia』と『びーとれすっ』のふたつが本編と同時発売します。これだけ力を入れているとなると、当然アニメ化も視野に入っているでしょう。長谷作品をアニメにするのって相当骨が折れるだろうと思いますが……『無罪 INNOCENT』は『推定無罪』の続編。そう、これが出るから『推定無罪』の新装版が今頃になって刷られるわけです。今回は主人公サビッチの妻が変死を遂げ、彼に殺人容疑が降りかかる――と、のっけから衝撃まみれの展開。こういう時間が経ってからの続編モノってハズレが多いけれど、さすがに無視できませんね。海外ミステリはヴァランダー・シリーズの最新刊『ファイアーウォール』なども要注目。アンディ・マクナヴが似たようなタイトルの本(『ファイアウォール 』)出してるからややこしいな。『ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上1』は「忍殺語」と称される珍妙奇天烈なワードをまぶしたサイバーパンクSF。twitter上で連載され好評を博したらしいが、いちいち追うのが面倒な当方はのんびり書籍化を待っておりました。「アイエエエ!?」「ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」など、機械翻訳臭漂うカタコトテキストが忍殺の特徴、らしい。ストーリーそのものもちゃんと面白いらしいので期待しています。「ネオサイタマ炎上」は第1部に当たり、現在は第2部「キョート殺伐都市」と第3部「不滅のニンジャソウル」が連載中(ニンスレはわざと時系列バラバラの形式で発表している様子)だそうです。ああ、そうだ、そういえば今月は1万円もする極厚資料集『境界線上のホライゾン ENCYCLOPEDIA』が届くんだった。忘れないようにしないと。

 『魔法少女プリティ☆ベル(8)』は「『小学生の女の子に戦わせるなんて良くない』とボディビルダー(♂)が自ら魔法少女になる話」という、ほとんど一発ギャグみたいなネタだったのに、なぜか好調のまま続いている異形の魔法少女コミック。ギャグも多いけど随所にシリアス展開が盛り込まれており、「インフレ上等! 厨二病上等!」とばかりに拡大していくバトルはそっちの気がある人なら白熱すること間違いナシです。プリズマ☆イリヤもアニメ化しちゃうくらいだし、これもそのうちアニメ化しちゃうんじゃないかな……その場合はたぶんOVAでしょうが。『二輪乃花』は百合アンソロジー“つぼみ”に掲載されていた短編をまとめたもの。宇河が“つぼみ”で描いていたなんて知らんかった。表題作は「わたしのあたらしいお母さんは 同い年の女の子でした」という話だそうな。『セントールの悩み(3)』は半人半獣や半人半妖の少女たちが送る日常をフェチっぽいディテールとともに描く「ありえなさが心地良い」ほのぼのコミック。「セントール」はケンタウロスの英語読みで、主人公は上半身が人間で下半身が馬という少女。「自分のあそこがグロいかも知れない」と悩んで友人たちに見てもらう(自分で見るのは難しい)など、開始早々からドン引きするかガッツリ食いつくか、読者の態度が二つに一つしかない漫画です。Vanadisとか『プリンセスX』とか、ああいうのはちょっと……と抵抗を感じている方も、試しに読んでみると新しい世界が開けていいかも。『ブレット・ザ・ウィザード(3)』は刊行ペースがちょっと遅いけれど中身は最高な魔法ガンアクション・コミック。「近代兵器と魔法を一緒に利用した方が効率いいよね」と、魔術師がみんな衛宮切嗣みたいにあっさり割り切ってしまった世界を想像してもらえると分かりやすい。作者がソノケンだからメインは銃撃戦。しかしそこに「魔法」という要素を加えることで、よりアクロバティックな戦いを生み出すことに成功している。「園田健一って、名前は見たことあるけど読んだことはないなぁ」という方にも強くオススメしたい。『焔の眼(2)』は範馬勇次郎や江田島平八クラスの無敵っぷりを誇る格闘家・クロが一人の少女と出逢い、「無敵と無力」で以って「1945年の日本」という現状に立ち向かっていく話。押切蓮介版『北斗の拳』といったところか。ほか、塩野干支郎次が『セレスティアルクローズ(5)』と『ユーベルブラット(12)』と『ブロッケンブラッド(9)』を同時刊行します。2月に3冊同時刊行したのに、また3冊とは……この人の仕事量はとんでもないな。

(ゲーム)

 『ルートダブル−Before Crime * After Days−』(Yeti)

 Xbox360で発売されたアドベンチャーゲームのPC移植版。ほぼベタ移植で、18禁化などの際立った追加要素はなく、公式も「完全版といった位置付けのものではございません」と断言しています。評判は漏れ聞いていたけれど、Xbox360持ってないから諦めようかな……と思っていたソフトなので移植は願ったり叶ったり。ノベライズ版も発売されていますが、こちらはクリアした後でいいかな。そもそもいつクリアできるか分かったものではないが。あ、そういえば『魔法使いの夜』はやっと本編が終わってあとは番外編を残すのみとなりました。しかしこの番外編がまた長いそうで、いつになったらコンプできることやら検討がつきませぬ。

・拍手レス。

 小説のリメイクといえば、吉岡平の『無責任艦長タイラー』のファミ通文庫版は主人公が元々は冴えない男が二枚目でかっこいいという、とんでも改変設定でリメイクされています。
 タイラーは今年になっても新刊(総集編プラス書き下ろし)が出ることに驚いた。近頃はオッサンホイホイが充実している。

 実はクリスタニアもロードス島戦記のエンディングとリンクしている作品だったりします。まあ例えるなら、型月でいうロードスが月姫でクリスタニアが魔法使いの夜とでも例えれる位置関係かな。(クリスタニアは後日談だけどね)知らなくてもいいけど知っているとにやりとできます。
 クリスタニアだけでも「○○伝説」といろいろバリエーションがあって把握し切れず投げ出してしまった……設定が込み入っていると「興味深い」に転んでドハマリするか「ややこしい」に転んで脱落するか二つに一つですね。型月もメルブラとかで知らないうちに設定が増えてきているから、関連書籍を読むときよく分からない言葉が出てくることもしばしば。


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