2010年11月分


・本
 『猫物語(白)』/西尾維新(講談社)
 『PSYREN(1〜13)』/岩代俊明(集英社)
 『謎解きはディナーのあとで』/東川篤哉(小学館)
 『丘ルトロジック 沈丁花桜のカンタータ』/耳目口司(角川書店)
 『TABOO TATTOO(1〜2)』/真じろう(メディアファクトリー)
 『アイリス・ゼロ(1〜2)』/蛍たかな、ピロ式(メディアファクトリー)
 『撃てない警官』/安東能明(新潮社)
 『カウントダウン』/佐々木譲(毎日新聞社)
 『アナルエンジェル』/上連雀三平(三和出版)


2010-11-29.

・第17回日本ホラー小説大賞「大賞」受賞作の『お初の繭』、面白かったけど全体的にネーミングセンスがひどいと思った焼津です、こんばんは。若旦那の名前が瓜生二成(ふりいく・ふたなり)て。雰囲気が壊れるというか、読んでて腰砕けになること夥しい。

 ストーリーそのものに何ら意外性はなく、少し読み進めただけで話の真相が分かる仕組みとなっています。なかなか真相に気づかないお初をハラハラしながら見守るのが本書の楽しみ方。意外性を捨てた反面、設定の作り込みは偏執の域にまで達しており、オチが分かっていてなお引き込まれるものがありました。まだこの一作だけでは手放しに賞賛できないが、2作目、3作目あたりで大きく化けるかもしれませんね。第17回は『少女禁区』も傑作、ドS少女が好きな御仁にはたまらない出来です。『ながされて藍蘭島』でまちがあやねに対してよくやってる厭魅の術(わら人形とかのアレ)をもっとえげつなくした感じと申しますか。これに感動できたらM男の素質があると思います。

12月に刊行を予定しておりました『キッドナップ・ブルース』は、発売延期となりました。

 いつの間にかそこにいて、いつの間にかそこにいない。まるでゴキブリのような挙動を晒してくれやがります。いくら想定内とはいえ、こうも連続して延期かまされると……ハア、溜息が漏れます。

lightの『PARADISE LOST』新装版、サントラは本編で使用した楽曲全てを収録

 旧装版のサントラはいくつか抜けがあって不完全収録だったので、この仕様変更はありがたい。やっとこれでED曲がサントラから聴けるようになるのか。ついでに本編のボイスに関しても仕様変更してほしいが、それは無理か。せめてライル/ナハトの声を追加して、サタナイルの声を収録し直すだけでもしてほしかった……。

大河ドラマで取り扱ってほしい歴史上の人物(アルファルファモザイク)

 戦国なら剣豪将軍こと足利義輝、幕末なら村田経芳を希望。いっそ湊斗景明の生涯を大河ドラマで放映してくれたらいいんじゃないかとも思うが、そんな願望が実現したら世も末だろう。湊斗さんと言えば『装甲悪鬼村正 鏖』読んだが、予想通りどころか予想を超える後味の悪さでした。1冊完結なんで話自体は駆け足気味であり、剣術薀蓄もなきに等しかったが、スラッシュダーク成分は『カオシックルーン』ばり。もうちょっと膨らませてほしいところもあったにせよ、外伝としては悪くない出来だと判断いたします。

友人起こすため誤って実弾発射し射殺、悪ふざけ悲劇に

 二度寝した兄をバールで叩き起こそうとする妹よりも恐ろしい事故。『トランジスタ・ティーセット〜電気街路図〜』の新刊にも「オモチャと思ったら実銃だった」みたいなネタがあったし、案外リアルとフェイクの区別はつきにくかったりするんだろうか。トラティーと言えば、ちょうど『魁偉なり 広瀬武夫伝』を読み進めているところだったので「銅像をめぐる冒険」にはシンクロニシティを感じました。『魁偉なり』は「歴史小説」と謳われているものの、大半のページがインタビュー形式の「対話」とやらに割かれているため、起承転結のあるストーリーを求めて読むとガッカリするかもしれません。フィクションよりも評伝に近いノリですね。広瀬中佐をあまりヒロイックに描いていないあたりは読みやすいっちゃ読みやすかった。

神ゲー 『俺たちに翼はない』 がアニメ化決定 キタ━━━(゚∀゚)━━━!!(【2ch】ニュー速VIPブログ(`・ω・´))

 「ちんぽこ以下」と称されたあの人は存在自体抹消されそうだな。というかドラマCDでさえコードに抵触しまくりでセリフの大半を書き換えねばならなかった「移植前提でポルノが作れるか!」が合言葉のソフトをアニメ化とかどれだけ末世なんですか。『ヨスガノソラ』とはまた違った意味合いの問題作にするつもりなのか。この調子だと2009年の他の大作エロゲー群、マジこいや村正やバルスカやDiesもそのうちアニメ化の報が届く気がする。ただ、俺翼含めてどれもシナリオがメチャ長いので、仮に実現したとしてもかなり駆け足気味の展開になっちゃうでしょうね。「村正が4クール目に突入!」みたいになるのもそれはそれでちょっと……ですが。いやはや、それにしても驚きました。期待と不安が同時に高まるな。

・拍手レス。

 俺フィーはガチ。ダミアンのラスボス兼ライバルっぷりがヤバかった記憶があります。
 俺フィーは過去何度もプッシュしているけどまだまだ推し足りない気分になる、それほどの傑作。

 『ピルグリム・イェーガー』は怒涛の情報量とやたら混み入った展開を捌けるか否かで、楽しめるかどうかが決まる気がする。個人的に好きなので、続きが出てほしいものです。しかしあの頃の冲方さんは、本当に過労死するんじゃないか、というくらいに色々仕事してたような。
 一読目ではなかなか咀嚼し切れないですね。三読目くらいでやっと筋を追えるようになりました。そして冲方が過労死しそうなのは今もあまり変わらないような……どれだけプロジェクトを抱えているのかと。

 装甲悪鬼といえば、ミナゴロシは買われました?なんか品薄状態みたいですが
 奈良原っぽさを期待するとしっくり来ないところもありますが、「マンガで村正を表現する」ことは達成できていると思います。始まった頃の評判がいまひとつ芳しくなかったのでそれほど期待していませんでしたが、想像したよりも面白かった。

 アイリスZEROはアイリス能力が強力すぎる割にほのぼのとしてていいですな。ただ作中にもありましたがアイリスを犯罪に使うと楽々完全犯罪できるんじゃね?とかその辺思わなくもない。焼津十選はやっと空の剣をゲットして、あと残すところ2作です。王妃の離婚は主人公不○のくせに格好よかった!
 「パスワードが視える目」があったらいろんなセキュリティも無効になりますからね。王妃の離婚はタたない主人公が立ち上がるまでの流れに痺れました。空の剣はストーリーが小規模だけど文章が絶品です。

 ちょっと古くて未完で再開希望となると、なにを置いても『皇国の守護者』。原作者と喧嘩して連載止まったらしいけど、続いていれば日本マンガ史に名を残す名作になっていたと確信してます。
 皇国は千早が愛らしかっただけに連載終了は残念でした。佐藤大輔って本当にどうしてこう……(以下延々と愚痴)。

 オズヌは作者が納得いってないとかで最終巻が出ないとか。最終回は先代五天が核心に近い語り合いしてるんで完全版出るかどうかはさておきそれはそれで出してくれれば良いのに、とは思うんですがね。難しいんでしょうね。
 連載では最終回を迎えていたんですか。単行本派なので知りませんでした。完全版、出たら嬉しいですけど作者も読者も納得いく形の収め方となると難しいでしょうね。

 林トモアキ作品買われてるようですが、漫画のほうは買われてないのですかね?マスラヲもミスマルカもなかなか良いですよ
 機会があればチェックしてみます。積読多すぎるので、もう完全に「その時その瞬間に気が向くかどうか」だけが購読する規準。


2010-11-25.

・「この尻が実にたまんねぇな……」とオッサン臭いことを呟きつつ真じろうの『TABOO TATTOO(1〜2)』を読み終えた焼津です、こんばんは。

 超古代文明の遺した「呪紋」と呼ばれるタトゥーを刻まれた奴らがハイパーアクションチック異能バトルを繰り広げる伝奇コミックです。主人公が成り行きで呪紋を手に入れてしまう冒頭や、謎の刺客に襲われる展開など、目新しさがまったくない「いかにも少年マンガ」ってノリながら勢いの良さと尻のエロさでグイグイ読ませる。この作者が描く尻のたまらなさは2巻の表紙を参考にしていただきたい。前作の『ゾディアックゲーム』は絵が拙いうえに登場人物を出しすぎ(12人のプレーヤーと12体のゾディアック、つまり主要キャラだけで24もある)で捌き切れておらず、「ゾディアックゲーム」なんていう七面倒臭い儀式を執り行う意味が不明確なまま打ち切りエンドを迎えてしまった(『装甲悪鬼村正』で喩えると「湊斗景明の、最後の戦いに向かって」で終わっている感じ)から『TABOO TATTOO』も読む前はそんなに期待していなかったが、画力は向上しているし、キャラも出しすぎず人数をしぼってキッチリ描き込むようになっていて「すげぇ、成長している!」と感激しましたよ。遠隔攻撃が多くていまいちバトルに緊張感がなかった『ゾディアックゲーム』に対し、今回は近接した状態で繰り広げる肉弾戦がメインになっていて、アクションとしての面白さも随分底上げされています。『ゾディアックゲーム』といい『TABOO TATTOO』といい、何となくFateっぽい(絵柄もたまに武内崇っぽい)ところがあるので型月ファンが読むと気になるかもしれませんけれど、オリジナリティを発揮しようと模索している気配はそこここから伝わってくる。尻のまロさを信じて買いましょう、買いましょう。

・アライブ繋がりで、というわけではないが、『アイリスzero(1〜2)』も読んだ。

 生まれる子供たちのほとんどが「アイリス」と呼ばれる何らかの「特殊な視覚」を備えた瞳を持つようになった世界、アイリスを持たないせいで欠落者(アイリス・ゼロ)として差別されている少年。彼は「なるべく目立たず息を殺して生きよう」と心掛けていたのに、校内でも有名なヒロインに気に入られてしまい、ことあるごとに親しげな声を掛けられご自慢の「低視聴率主義」をベッキベッキに壊されていく。基本ほのぼの、時折シリアスな青春ストーリー。これもある種の伝奇か。主人公とヒロインの関係は米澤穂信の“古典部”シリーズ(こちらの主人公は省エネ主義)を少し彷彿とさせるが、それ以上に読んでいてやたらと「鍵ゲーっぽい」っつー印象を受けるのが不思議だった。なぜだろう? と首をヒネりつつ見たあとがきマンガで理由の一端が掴めました。この『アイリスzero』、軽エロス満載な“アライブ”で連載されている作品のくせしてパンチラやヒロインの裸といったサービス描写がまったくないんですよ。当然、主人公が偶発的な事故でヒロインの胸を揉んだり股間に顔を突っ込んだりする、いわゆる「ラッキースケベ」系イベントも一切発生しない。入浴シーンすらオモチャのアヒルだけでごまかしている。「オイロケzero」と自嘲するほど徹底したエロス排除と、辛い過去を負った主人公が周りを助けていく温かいノリが、どことなくKeyのゲームを連想させるんですよね。とはいえヒロインが「うぐぅ」とか「が、がお……」と言ったりするほど個性的ではないので、鍵ゲーに苦手意識を抱いている人でも安心して読める内容だと思います。トラブルが発生して、何の特殊能力も持たない主人公がそれを解決へと導く――というパターンの繰り返しでありながら飽きもせずに読み続けられ、「続きはまだか!」と切望させられるのは、ひとえに主人公自身の魅力が大きいからだろう。この作品で一番萌えるキャラは間違いなく主人公。そりゃヒロインも惚れるわ。視える者と、視えない者の絆。面と向かって罵倒されなくても相手の内心で「水島くんは欠落者なんだから…」とナチュラルに見下されている主人公が健気に友情を温めていく姿がいとおしい。掘り出し物でした。

・他に最近読んだ本では、安東能明の『撃てない警官』、佐々木譲の『カウントダウン』、そして上連雀三平の『アナルエンジェル』も面白かった。

 『撃てない警官』は連作形式の警察小説、第63回日本推理作家協会賞短編部門受賞作である「随監」も収録されている。主人公は管理部門に所属する柴崎令司という事務方の警官で、階級は「警部」ながらも一度も現行犯逮捕をしたことがなく、専らデスクワークに従事していた。昇進の見込みもあり、将来有望と周りから期待されていたが、一編目に当たる表題作「撃てない警官」において発生した事件で責任を問われ左遷、以降は綾瀬署で変死体を相手取った現場仕事も手掛けることになります。「撃てない警官」はタイトルこそインパクトがあるものの地味な内容で、権力闘争……というほどの規模じゃないけど警察組織内部における陰険な遣り取りがメインとなっており、お世辞にも読み心地が良いとは言えず、出だしは正直やや低調です。このシリーズはあくまで「警察」小説であって「刑事」小説ではなく、「真相を明らかにし、事件を解決する」方向よりも「警察の威信が傷つかぬよう、なるべく穏便な形で事件を処理する」方向をベクトルとしています。場合によっては揉み消されることもある。「撃てない警官」のラストで左遷が決まった主人公は「必ず返り咲いてやる、俺をこんな目に遭わせた奴に然るべき報復を喰らわせてやる」と私情剥き出しの怨念を晒すし、主人公に好感が持てないと読み薦めるのが辛い、という人には薦めがたい。現場で働く警官を蔑視する描写も出てきますからね。ただ、左遷されて鬱々とした感情を抱える主人公が現場での仕事を通じて少しずつ旧来の思考を見直していく成長物語めいた要素もあり、決して露骨な感動ストーリーにはなっておりませんが、意外と爽やかな読後感を残していきます。謎解き部分は至極シンプルだし、「エリートが左遷された地で頑張る」という点は『隠蔽捜査』のシリーズを彷彿とさせるがこちらの柴崎は竜崎ほどドラマティックなキャラではないので、やっぱり地味って印象は拭えません。とはいえ左遷されて以降の話は割と面白く、読んでいて素直に引き込まれました。特に受賞作「随監」は頭一つ抜けています。随時監察の略で「随監」、要するに抜き打ちチェックが行われ、隠れていた問題が露見する……といったエピソード。うまい具合に話が転がっていき、読者の関心を惹いて飽きさせません。さすがに賞を取っただけのことはあると感心しました。続くとも続かないともハッキリしない終わり方で、仮に続編が出るとしてもそんなに興味深くはないのだが、いざ店頭で見掛けたら買ってしまうだろうな。そう思わせるだけのひっそりとした魅力はありました。

 『カウントダウン』は政治小説。連載時のタイトルは『二度死ぬ町』でした。夕張市の隣に位置する、って設定された架空の街「幌岡市」を舞台に、ワンマン市長の六期連続当選を阻むため新人市議の主人公が選挙コンサルタントなどの協力を得て市長選に立候補する。「北海道夕張市は、今年の六月に巨額の隠し債務が発覚し、財政再建団体に転落することが決まった」と冒頭にありますから開始時点は2006年ですね。幌岡市は夕張市同様に財政破綻という危機的局面に立たされており、説明としてやたら夕張市が引き合いに出されます。つまりこの小説、間接的に夕張市をこき下ろしまくっているわけです。さすがに現在進行形な夕張市そのものを題材とするのはまずかったのか「夕張市に似た街」での再建計画を綴っているものの、こんだけ「夕張とは違う」「夕張のようにはさせない」「夕張よりはマシ」「夕張みたいになったらおしまいだ」とクソミソに書くくらいならいっそ夕張市そのものを扱った方がマシだったのではないか。あえて間接的な書き方をすることで「それだけ夕張問題は深刻である」と強調したかったのかもしれませんが。なにせ作者自身が他ならぬ夕張市出身者ですし。小説としては、選挙コンサルタントの多津美裕が個性的でキャラが立っている割に出番が少なく思ったより活躍しない、元が連載小説だったせいか同じような説明が何度も繰り返しされてくどい、これといった仕掛けもなく単調に進む、などといった不満点はあるものの、「奴を当選させたら幌岡は死ぬ!」という危機感に満ちた中で疾走するストーリーはなかなかサスペンスフルであり一気に読めました。責任転嫁も著しい市長が垂れる他人事めいたのらくら答弁には異様な生々しさがあり、「自分がここの市民だったら」と想像すると腸が煮える。あらすじからすると市長選が眼目みたいに見えるけれど、全体が360ページ未満で市長選に立候補するのが300ページ過ぎたあたりですから、市長選そのものは実にあっさりしています。選挙小説と思って手を伸ばすと肩透かしでしょう。再建案も具体的なものは講じられず、いささか尻すぼみ気味。「前置きが長すぎる、いざ本番に入ってからが短い」のはネックと言えばネックだが、おかげでダレずに読み切れた面もあり、少々物足りなさを覚えるにせよ「買ってよかった」とは感じます。たぶん出ないだろうけど、もし続きが出るとしたら読んでみたい。ちなみに作中で「茨城の高杉晋作」なる人物が触れられる(触れられるが実際に登場はしない)件、特に必要を感じないのでやや不自然に思ったが、現実に同じような人物がいると知って「ああ、ネタの一種だったのか」と納得。来年の夕張市長選挙にも出馬するそうで、何ともタイムリーな刊行となった。

 『アナルエンジェル』は有栖川桜という男の娘を主軸に据えたエロ漫画。有栖川桜といえばかつて“コロコロコミック”に連載された『バーコードファイター』のヒロインであり、「女と思わせて実は男だった」ことが判明して全国のちびっこたちにトラウマかスティグマを刻んだ伝説の存在……らしいが、当方は『バーコードファイター』をあまり真面目に読んでなかった(タイトルもずっと商品名そのままの『バーコードバトラー』だと思い込んでいたくらい)ので「桜=男」を知らなかったどころかそもそも桜の存在自体が「うっすらと覚えている」程度でした。むしろ印象に残っているのは主人公を「おやびん」と呼ぶ金髪の方。ぐぐって調べてみたところ「スティーブ・セコイア」というキャラらしい。さておき、『アナルエンジェル』は『バーコードファイター』の数年後(明言はされていませんが、恐らく3年後くらいかと)に当たるエピソードで、立派な「男の娘」としてオナニーとアナルセックスに励んでいる有栖川桜と、そんな彼女(彼?)に想いを寄せる少年・胡桃の、勃起と肛門と精液に満ち溢れておちんちんパンク寸前な性春をギュッと凝縮した一冊になっています。とにかく言葉のセンスが素晴らしいというか凄まじい。気の狂ったセリフを歯切れ良く並べ立てていきます。「さくら先輩は人を勃起させる天才だよ!! 男をおちんちん地獄へ誘う肉棒案内人だよ!! 肛門と精液のめくるめくハーモニーだよ!!」なんていう、常人には逆立ちして鬱血した頭部から鼻血を噴出させても編み出せないようなワードの数々で全編を埋め尽くしている。上連雀三平、タダモノではござらん。まっことツワモノにしてキワモノにござる。笑顔で「優しい気持ちで導かれた射精こそが… 正しい射精なの!!」と告げる桜がマジ天使で困惑するほど可愛い。最初から最後までセックスに一切♀が絡まない♂の饗宴ながら、アナルエンジェルに導かれ自らもアナルエンジェルの階段を昇っていく主人公はエロスを超えて微笑ましい。この本を読んだ後だと、空に浮かぶ三日月さえも「勃起して反り返ったおちんちんのようだな」と想ってしまう。後日談として『アナルジャスティス』なる本もある(てか前日譚として『アナルエンジェル』が描かれた)そうだが、探しても中古しか見当たらない……そもそも上連雀コミックは既刊が概ね品切っぽいですね。現在amazonで新品を取り扱っている商品は『アナルエンジェル』だけって状態。もっと読まれるべき才能だと確信される。

・期せずして尻に始まり尻に終わったな、今回。

今読んでも圧倒的に面白いちょっと古い漫画教えてよ(VIPPERな俺)

 『シャカリキ!』『俺たちのフィールド』は外せない。あとマイナーだけど、しろー大野の『オズヌ』も久々に読み直したら面白かった。歳取って好みが変わったせいか、購入した当時よりも楽しめたほど。6巻で未完になっていることがつくづく悔やまれる。「6巻で未完」と言えば、今話題の冲方丁が原作を務めた『ピルグリム・イェーガー』も面白いっスね。あれは内容が込み入っているせいか読み返すたびに理解が深まって「ああっ」となる。伊藤真美は『秘身譚』という新刊も出しています。こっちは始まったばかりだし、まだ様子見の段階かな。2巻以降から物語が動き出しそうな気配。


2010-11-20.

『かへたんていぶ(1)』が望外に面白かったので既刊全部をまとめて購入した『ながされて藍蘭島(1〜17)』、「これだけあれば一ヶ月は持つかな」と思っていたのに、10日も経たず貪り尽くしてしまった焼津です、こんばんは。

 いやはや面白ぇですわコレ。パッと見の絵柄が気に入らなかったことと「女しかいない島に漂着した少年のハーレム物語」って概要に偏見を抱いて長らく食わず嫌いしていましたが、まことに浅慮であったと言わざるをえない。結果としてこれだけの量を一気に堪能できたのだから「ま、いっか」でありますが。ご覧の通り描かれるキャラクターの目が大きくヒラメっぽい顔つきで、歳の割りにやたら胸の大きいヒロイン(13歳)が「うにゃあ」とか「うにゃん」とか言ったりする内容だから「そういうのはちょっと……」と遠慮したくなる人の気持ちも痛いほど分かるっつーか実際に自分がそうだったわけですが、いざ読んでみると予想を超える次元のノリの良さにすっかり骨抜きにされてしまった。シンプルな絵柄でありながら全編に渡って爽快な勢いに満ちており、ひとコマひとコマがすんなりと目に馴染んできます。話の方はだんだん同じことの繰り返しみたいになって進展が乏しくなっていき、恋愛方面の期待はなかなか報われないが、同時に「このままずっと終わらなきゃいいのに」って思いも存在していて、もどかしいながらもどことなく安心させられる。個性的なキャラの数々(人間のみならず動物たちも存在感あり)も魅力的で、「ああ、こういうガンガン系のマンガやっぱ好きだわ」と再確認致しました。パッパラ隊とかハーメルンとかにハマっていた頃を思い出したりして懐かしくなりましたよ。ラブコメ部分の読み口はガンガン漫画よりも『ラブひな』を彷彿とさせますが。

 次の18巻はamazonで初回限定特装版の予約を開始していますが、発売は来年の3月か……あと4ヶ月も待たなきゃふたたび藍蘭島へ赴くことができないだなんてサガること夥しいな。というか17巻すべてを読み切ったときの寂寥感というか虚脱感は尋常じゃなかった。仕方ないからまた1巻から読み直しましたが、順々に崩していくうちはあんまり気にならなかった絵柄の変化も、二周目だとビックリするくらい目につきますね。初期は最近に比べてギャグっぽさがより強いと申しますか、やや泥臭いほどコミカルに描いていきますが、時間が経過するにつれてスマートに萌えを強調するようになっていく。しかし初期も初期で好きなんですよね、良い意味で暑苦しい感じ。最近はソツがなさすぎて逆にのっぺりしている印象もあったりなかったり。ともあれ、以前の当方みたく食わず嫌いしている人にもオススメしたくなる出来でした。かへたんの評価が「面白い」とすればこっちは「楽しい」ですね。

「一冊まるごとミステリー!」 オール讀物創刊80周年記念編集ムック『オール・スイリ』

 平たく書けば文春版『Story Seller』。企画としての斬新さはないけれど、執筆陣が豪華なので即座に買ってしまった。というか麻耶雄嵩の名前を見て反射的に購入した感じ。アンソロジーの類は本来あまり好きじゃない(一編ごとに作風が変わり、読んでいて気持ちの安定しないところがイヤだ)けれど、「これを逃すと次に読めるのはいつのことか」と考えるとムラムラしてきて最近は割と手を伸ばすようになりました。でもやっぱり短編は同じ作家のものを立て続けに読む方がイイですね。今年読んだ中では朱雀門出の『今昔奇怪録』と恒川光太郎の『竜が最後に帰る場所』がグッと来る短編集でした。『今昔奇怪録』はオチとかそういう部分はちょっと弱いものの、ぞわぞわと皮膚の奥に迫ってくるような得体の知れない「怖さ」がキチンと描けており、久々にホラーらしいホラーを読んだ気がしましたよ。運悪く真夜中に読んでしまったのでビクビクしながら就寝した次第。もうすぐ出る2冊目の『首ざぶとん』もあらかじめ鳥肌を立てながら期待している。『竜が最後に帰る場所』は相変わらず恒川らしい揺るぎのないクオリティを誇っており、ファンとして自信満々に推したい一冊。どの短編も発想からして素晴らしいが、決してワンアイデアでは終わらせない見事なヒネりようが心憎い。個人的には「夜行の冬」が好き。寒くなってくるこの時期にちょうどいい一編です。

“メガストア”の今月号に『黒と黒と黒の祭壇』完全収録

 「ロリっ娘ゲーム」という但し書きを信じてプレーすると目が点になること請け合いの一本です。マルクトより出でてケテルへと至る復讐の儀式。これがキッカケでセフィロトの樹に興味を抱き始めたんですよね、懐かしい。『めぐり、ひとひら。』『きっと、澄みわたる朝色よりも、』へと繋がるチッセ・ペペモル・サーガの開始点でもありますので、お朱門ちゃん好きならばやっておいた方がベター。そしてトゥルーエンドという名のバッドエンドに泣くがいい。

『コップクラフト DRAGNET MIRAGE RELOADED』3巻の発売が1月に延期(主にライトノベルを読むよ^0^/)

 ガガガ文庫の現時点における刊行予定。12月がスカスカで、代わりに1月がギュウ詰め状態となっている。当方の購入予定は、12月がゼロ、来年1月は完全新作となる『コップクラフト3』(『コップクラフト』シリーズは以前に竹書房Z文庫から出ていた『ドラグネット・ミラージュ』シリーズがベースで、1巻と2巻は既刊を改題改稿したものであった)、シリーズ最終巻となる『とある飛空士への恋歌5』、一旦延期してその後音沙汰がなかった『ブラック・ラグーン2』、1冊完結だと思っていたので続編が出ると知って驚いている『ロマンス、バイオレンス&ストロベリー・リパブリック2』、前巻は文章がいまひとつ……だったけど賑やかで楽しかった『Wandervogel2』の5冊です。あれ? 『されど罪人は竜と踊る10』が消えてる? あれって最初は確か11月刊行予定で、それが12月へ延期になって、また更に1月へ延期したはずだったのに、1月の予定からさえ消え失せているとは何事か。積んでいるから詳しいことは知らないけど、され竜の10巻は9巻の続きで、言わば後編みたいな内容らしいから、こうやってズルズル延期を重ねていると終いには封仙娘娘みたいな事態に陥りかねない。結局『地獄に堕ちた亡者ども』の下巻や『さまよえるエロス』の後編を出さなかった中村うさぎのようになるよりはまだマシですが。

正田崇の初エロゲは『鬼哭街』

 「次に君望、ファントム、二重影、螺旋回廊」……なんとも歳がバレそうなラインナップじゃなイカ。どれも2000年から2002年に掛けてのソフトですね。特に『鬼哭街』の発売日は2002年3月29日。出てすぐにプレーしたのだと仮定しても、『PARADISE LOST』の初回版発売日が2004年1月16日だから……初エロゲからほんの2年足らずでエロゲーライターとしてデビューしたことになる。正田、おぬしはやはり、物が違う……というか他社ソフトについて言及するのは珍しい。『鬼哭街』や『ファントム』を挙げているところからすると虚淵スキーなのか。『二重影』を挙げているところからすると『陰と影』の開発無期限停止には歯噛みしているのだろうか。まあ開発停止発表があった頃はDiesの作り直しで忙しくてそれどころじゃなかったんだろうけども。

・耳目口司の『丘ルトロジック 沈丁花桜のカンタータ』読んだー。

 第15回スニーカー大賞「優秀賞」受賞作。応募時のタイトルは『風景男のカンタータ』。作者名は「ニメグチ・ツカサ」と読みます。第15回のスニーカー大賞は前回に引き続き大賞作品が出ており、ほとんどの注目はそちら――『子ひつじは迷わない』の方に向かうだろうと予測しています。『子ひつじは迷わない』も既に読み終えましたが、進行のテンポが整っており且つネタの処理も無駄がなく、「お悩み相談」というパンチが弱い内容のくせしてすらすら読めた。新人らしいぎこちなさは若干ありましたものの取っ付き易さが出色、「やはり大賞に選ばれただけのことはある」と頷ける出来でした。手を付けてからほんの2、3日で読み切ったほどで、「続きを見たい」と思わせる力はなかなか強かったです。それに対し、こちらの『丘ルトロジック』は着手してから読了するまで、実に半月も要しました。盛り上がってくるまでが長い、という以前にそもそもストーリーが動き始めるまで100ページくらい掛かりますからね。それまでの間、「丘研って結局何をする部活なの?」という根本的な疑問を抱えながらスロウガ喰らったようなゆっくり進行を見守るより他なかった。気の短い人は素直に『子ひつじは迷わない』を買った方が宜しいかと存じます。でも刺激が欲しいならば、丘ロジ一択。

 何よりも風景を愛する主人公は、「丘研」という表記に釣られてのこのこオカルト研究会にやってきた。が、会のメンバーは黒魔術やら呪いやらといった怪しげな話題に興じる素振りもなく、ただボードゲームで遊びながらくっちゃべっているだけで、どいつもこいつも変人であることを除けばその光景は単なる「放課後に集まる仲良しクラブ」としか映らない。戸惑いながらも「喋っていると楽しいし、まあいいか」と主人公はあっさり疑問を捨て去って丘研に入会した。ある日、「飛び降り男」なる都市伝説を聞きつけた丘研代表の沈丁花桜は、事実かどうかを確認するためにメンバーを連れ、「現場」として語られる高層ビルの屋上へ赴いたが……。

 真っ先に受ける印象を一言で申せば「ダラダラしている」。文章自体は読みにくいというほどじゃないけれど、とにかく構成に締まりがない。もっと要点を絞って書けば序盤から読者を引きつけられるのにな、と惜しまれます。このダラダラ具合を逆に持ち味として認識できないこともないけれど、冒頭を立ち読みした人が「よし、買おう!」と意欲に燃える、なんて姿は想像しにくい。いかにも「頑張ってる」って雰囲気の筆致、丁寧ではあるがメリハリに欠ける。表紙見返しのプロフィールによれば作者は1988年生まれ。良くも悪くも若さが反映されています。さて、あらすじだけ読むとオフビートな学園青春モノっぽいイメージが湧きますし、「目標は世界征服」と豪語するヒロインを見ると「またハルヒもどきかよ」とうんざりする方も出てくるやもしれません。正直、沈丁花桜に関してはうまくキャラが描かれているようには見受けられず、世界征服を目指すに至った生い立ちやら何やらも取って付けたかのようで、キャラクター性以上に「さぁ、この美しい世界を取り返そうじゃないか!」などといった決めゼリフの方が先行しているように感じられます。ヒロインってよりも、「作品のテーマを訴える装置」みたい。掛け合いは楽しいが、飛び抜けてギャグが面白いというほどでもなく、会話芸に関してはそこそこ止まりだ。また、内容もファウスト系というか、西尾維新とか佐藤友哉とか、ああいった作家の小説をスニーカー向けに少しマイルドに加工した悪趣味路線で、「学園青春モノ」を期待して読むと胸糞が悪くなるかもしれません。主張される「ロジック」は悪趣味なのに痛みが欠けている(正確に書けば「痛み」が単なる説明でしかなく、実感し辛い)ため、なんだか強引というかチグハグでアンバランスなムードが漂うところも気持ち悪い。いろんなエピソードが晒されるが、「んで?」と聞き返したくなるものもあります。ちょっと気負いすぎ。人に薦められるかどうか、の基準で申せば圧倒的に薦められない。けども、クライマックスに入ってからの盛り上がりは、それまでがやや低調だったことも相俟って異様に熱く感じられ、「荒削りならではの勢いがある」と言わざるをえません。バランスの悪さは最後まで解消されなかったが、ラスト50ページの畳み掛けは圧巻であり、細かいこととかどうでもよくなった。「中二病をこじらした結果がこれだよ!」と快哉を叫びたくなります。

 一見して無秩序であるかのようにバラ撒かれていた要素が合流して川を成していく、そんな話の収束させ方が伊坂幸太郎を彷彿とさせますが、文体は全然違うので伊坂好きには薦められない。「伊坂フォロワー」と揶揄されている山下貴光の『屋上ミサイル』を伊坂文体からファウスト系文体に直したらこんな調子になるかもしれない、と思いました。あるいはメフィスト賞の『少女は踊る暗い腹の中踊る』をライトノベルに変換したらこうなるかな、と。さっきから喩えが迂遠でさっぱり褒めている感じがしませんけど、実際読んでる途中で何度か挫けそうになったくらいなので、終盤が良かったとはいえ手のひらを返して褒め称えるのは心情的に難しい。ネタを料理する技術がまだ「作者のやりたいこと」に追いついてない気がします。ゆえに悪趣味なのがOKな人じゃないと耐えられないが、悪趣味モノが好きな人にとってはいろいろ不満が残る。嫌いじゃない。でも好きとはいえない。久々にモヤモヤとした読後感が残留する作品でした。とりあえず、次回作が出たら買ってみて、それで見極めようと考えています。でも出るのかしら?


2010-11-16.

・ちょぼらうにょぽみの『あいまいみー(1)』に深甚なる衝撃を受けた焼津です、こんばんは。

 まずペンネームからして衝撃ですよ。最初はてっきりエロマンガ家だと思っていました、あそこ界隈って変なPN多いので。「可愛い女子の表紙で釣ってメチャクチャな中身で読者の期待を吹っ飛ばす」っつー類の、詐欺を通り越してテロ紛いな不条理4コマなんですが……『伝染るんです』『ゴールデンラッキー』ほどの爆発力とナンセンス感はなく、どちらかと申せばまだ話に脈絡がある方です。漫研で真面目に活動している子と、ふざけて活動を邪魔しているばかりの子たち、みたいな。勢いに満ちたイマジネーションよりもキレのあるセンスを重視して、狙い澄ましたタイミングに突拍子もないネタを放り込んでくる。ハンマーを捨ててカミソリを手に忍ばせた凶手の如し。不条理ギャグ道を邁進しつつ、たまーに「アレッ? 普通のネタだ!」と驚いてしまうような正調4コマを叩き込んでくる手際からして侮れない。意外と起承転結をハッキリ弁えています。

 言ってみれば『あいまいみー』には3つのモードがあり、虎眼先生風に表現すると白眼を剥いて涎垂らしながらジョボジョボやってるような曖昧モード、時に媚びへつらって笑顔を覗かせる正気モード、そして曖昧でも正気でもない魔神モード、これらを絶えず往還しています。ゆきゆきて王冠の座へ駆け上らんとしています。曖昧モードや正気モードには慣れて対応できるようになってくるのでだんだん飽きが来ますが、一旦魔神モードに入ればもう無双状態、友達を原形留めぬほど惨殺してはあっさり蘇らせるワケワカメの地雷原に「まいったぁ! 俺はまいったぁっ!」と懐かしの高槻ゼリフを持ち出すしかなくなる仕儀。好き嫌いは分かれるだろうし毀誉褒貶も激しかろうが、とりあえずもう一冊の著書『不思議なソメラちゃん(1)』も読まねばなるまいと決心しました。あ、ちょぼらとはまったく関係ないが、『ヘルズキッチン』というニューヨークみたいなタイトルのマンガも面白かったです。地獄からやってきた悪食伯爵に目を付けられた少年が傀儡下僕と成り果ててこき使われる、身も蓋もない書き方をすると「料理コミックになった『魔人探偵脳噛ネウロ』」ながら、毎回毎回窮地へ追いやられて悪戦苦闘するハメになる主人公に対して催す同情はネウロ以上。お膳立てされるシチュエーションがいちいち極端すぎる気もするが、勢いはあるし、ノリもキャラも良好だ。今後次第ではどんどん伸びていきそうな部分もあり、実に楽しみ。

・東川篤哉の『謎解きはディナーのあとで』読了。

 「東川篤哉の新刊が発売から2ヶ月そこそこで16万部を突破したらしい」という噂を聞き、「ハハハ、ご冗談を」と笑っていましたが、どうもジョーク抜きのマジネタらしいと知って仰天しました。発売開始が9月1日頃で、売れ行き好調により早くも5日目にして増刷が決定。1〜3刷までの合計が3万2000部、9月下旬の4刷が2万部、10月中旬の5刷が3万部、今月頭の6刷が4万部、一週間ほど前の7刷で5万部と、凄まじいペースで重版しています。公称なので多少膨らませているのかもしれませんが、それでも驚異的な数字であることに違いはありません。「あそこ品揃えいまひとつだから置いてないかもしれないな……」と思いつつ寄った近所の本屋にもバカスカ積まれていて唖然としましたよ。まさか東川の本がこんなに売れる時代が来るとは、想像だにしてなかったぜ。文章に駄洒落が多く、一見してユーモア・ミステリの書き手に見えるけれど、実際はしっかりとした本格スピリットを持っている――ってのがこれまでの東川篤哉に対する印象だったものの、全体的にオッサン臭い筆致なので大アタリすることはないだろうなと感じていたこともあり、今回の件はまこと寝耳に水でした。しばらくチェックを怠っているうちに随分注目されるようになっていたんだなぁ、とまるで久々に会った親戚の子供がえらく成長していたときみたいなリアクションを咄嗟に取ってしまったのもむべなるかな。

 本書は連作形式の短編ミステリで、1編あたり40ページ程度とちょうどいい短さにまとまっており、大変読みやすい。おつまみ感覚で「あとちょっとだけ」とページをめくるうち、いつしか読み終えている……って寸法です。事件そのものはどれも割合シンプルで、奇想天外な怪事件や難事件は発生せず、またトリックも軽くサラッと流していくからミステリとしてはやや地味かもしれません。しかし、何と言ってもこのシリーズはキャラが立っている。イイトコのお嬢様であることを隠して女刑事をやっている主人公、必要以上に「僕って御曹司なんだよね」アピールを欠かさない上司、そして自分の仕えている令嬢(主人公)に面と向かって「アホ」「ド素人」「いらない存在」と罵詈雑言交じりの敬語で接する毒舌執事と、非常にマンガチックではありますがインパクトのある布陣を敷いています。「毒舌執事」とは書きましたが、何も四六時中失礼な態度を取っているわけではなく、ここぞというシーンでのみキツい言葉を掛けるため遣り取りにメリハリがついていて楽しい。優雅に白ワインを飲んでいた主人公が「ひょっとしてお嬢様の目は節穴でございますか?」と言われてパリーンとグラスを握り割ってしまうシーンなど、光景が容易に映像として浮かんでくる。コメディ的な演出と割り切れば面白いです。ただ、普段は慇懃ぶっている執事がここぞという場面でなぜ主の不興を買う無礼千万なセリフを吐くのか、理由がいまいち分からないあたりはモヤモヤしますね。ジーヴスだってもうちょっとオブラートに包むだろうし……影山さん、ド天然なのか。ともあれ、「これなら人気が出るのも納得いく」と頷ける仕上がりであり、まずコミック化は確約されたも同然です。いずれドラマ化もするでしょう。「刑事モノのドラマは手堅くアタる」というのが最近の風潮らしいから、きっと映像方面の関係者は今のうちに唾をつけておこうと動き始めているはず。もちろん、小説もこのままシリーズ化していくことは確定済。雑誌で続編を始めることが既に決まったようです。

 主人公の話を聞いて執事が謎を解く、という所謂「安楽椅子探偵(アームチェア・ディテクティブ)」に属するタイプですが、たまに現場にいることもあるので厳密な意味での安楽椅子探偵モノではありません。が、まあ些細なことか。もともと会話劇の面白さに定評がある作家だし、読者を飽きさせないようストーリーに変化を加える配慮も施されていて、「ミステリとしては地味だが安心してオススメできる作品」となっています。「地味」と言っても奇抜な事件や派手なトリックがないだけのことであって、犯人や犯行手段を特定するまでのロジック展開はコンパクトにうまくまとまっており、伏線の張り巡らしようも抜かりありません。雰囲気はごくごくライトにせよ、マニアも感心する出来であるかと存じます。このまま売れに売れて、いずれ東野圭吾と並ぶ作家になり、「ミステリ界の二東」と呼ばれる日が来るのかもしれない。なんちゃって。いや、あながちジョークでもないです。東野圭吾もデビューから10年くらいは「面白いのに大して売れない」という不遇の作家を続けていましたからね。東川篤哉はデビューからもう8年、そろそろブレイクしても良い頃合だ。

・拍手レス。

 集英社だったなら6分冊に加えて作者視点書き下ろしをアニメファンブックに載せるんだろうか。といまだに醜悪商法がトラウマになってる一読者。
 片憲は今頃何をしてるんでしょうね……なんか『電波的な彼女』がマンガ化するなんて噂もありますが。

 バノンさん、バノンさんじゃないですか!
 リコッテは挫傷。

 「みえるひと」も7巻までなので集めやすくてオススメです。ジャンプ王道の若干インコースで面白いし。ひめのんかわいいよひめのん。
 『みえるひと』は機会を逃し続けて未だに読んでませんが、「密かに支持されている『みえるひと』の作者」という予備知識があったからこそPSYRENを大人買いする踏ん切りもつきました。

 PSYRENは始まってから速やかに巻末に移動していって、あー打ち切りコースだなぁ、と思っていたら、なんか華麗に復活したなぁ。前作「みえるひと」から、あの作者さんは土俵際の魔術師っぷりが半端ない。
 PSYRENは是非ともこのまま大団円に向かっていってほしい。ここまで盛り上げておいて「そうさ、未来は俺たちの手の中にあるんだ……」な打ち切りエンドだったら泣く。

 初期の頃から打ち切りムード満載だったPSYRENがゴキブリの如く生き残り、無事に円満終了できそうなのには感慨を覚えずにはいられません。
 ライトノベルでいうと『Dクラッカーズ』の位置付けですね。あれも1、2巻くらいではそんなに長続きしそうな感じはなかったけど、最終的に全10巻の円満完結になりました。


2010-11-11.

・夏見正隆の“スクランブル”シリーズ(旧シリーズ名“僕はイーグル”)最新刊『尖閣の守護天使』がさりげなく発売されていますが、あまりにもさりげなかったせいでつい先日まで見落としていた焼津です、こんばんは。

 いや、あのシリーズ、完全に打ち切りだと思ってましたから……前巻『亡命機ミグ29』『哀しみの亡命機』として新書サイズで刊行されたのが7年前、まさか文庫化書下ろしで新作が出ようとは想像だにしなかった。出るとしてもEdgeの方かとばかり。最近は新人賞の作品も文庫で出しているし、新書方面からは撤退する方針なのかな、Edge。日本SF新人賞も休止が決まったとのことだし、徳間書店のライトノベル・SF離れは今後どんどん進みそう。

 しかし日本SF新人賞、休止まで計11回ありましたが、見事に新人が育ちませんでしたね。現在作家として一番知名度のある三雲岳斗は他に二つも新人賞を取っているから「日本SF新人賞出身の作家」とは言いにくいし、個人的に気に入っていた吉川良太郎はここ数年新刊がなく、『解剖医ハンター』という漫画の原作で生存確認された程度。第10回で休止した小松左京賞と大して変わらない成果になってしまった。こうなったらもう創元SF短編賞ハヤカワ・SFコンテストあたりに望みを託すしかないのだろうか。

手マンされてたら彼氏の指が骨折した(暇人\(^o^)/速報)

 そういえば某エロゲーに幼女のアナルで突き指したピアニストがいたな。懐かしい。

駆除しようとゴキブリに火→燃えたまま逃げ回り作業場が全焼…香川(痛いニュース(ノ∀`) )

 『アラクニド』のゴキブリたん(2巻表紙手前の子)が火達磨になりながら「ただでは死にませんわァ〜ッ!」と敵を討つビジョンが脳裏に浮かんで濡れた。そして「愛と平和と女装」を訴えるマンガ『トライピース』の最新刊にもゴキブリっ娘が出てきてシンクロニシティを感じました。ゴキブリを擬人化した同人誌も人気らしいし、これはヲタ界にゴキブリ世(ゆー)が来るという先触れなのか。というかホイホイさんの新刊はまだ出ないのか。ちなみにゴキブリ擬人化というと『ジャングルはいつもハレのちグゥ』を思い出す世代。パタリロでもゴキブリ関連のネタが結構あったような気がするけれど、そのへんは記憶が曖昧だなぁ。

密かに気に入ってる中二病セリフ(デジタルニューススレッド)

 うろ覚えですけれど、「クソ野郎どもに鉄槌を下さなければならない。その握り手が誰としてもだ」。

・岩代俊明の『PSYREN(1〜13)』をまとめ読み。

 そろそろ完結が近いらしい、という噂を小耳に挟んで先月まとめ買いした分をやっと消化しました。タイトルの「PSYREN」、ロゴ等では「R」が逆向きに表記されています(つまり『PSYЯEN』というふうに。表記を徹底させるのが難しいからか、奥付などでは普通に『PSYREN』となっています)が、現時点でその意味するところは不明。作中に「転生の日(リバース・デイ)」という用語が出てくるから、「転生(rebirth)の裏返し(reverse)」みたいなニュアンスではないかと推測している。さておき、『PSYREN』はジャンプ漫画の中でもとりわけ「読んだことない人にイメージを伝えるのが難しい作品」であると思います。実際、当方もいざ読み出してみるまで『PSYREN』がどんな話なのかいまいち掴み切れなかった。簡単に言ってしまえば「主人公たちが超常的なパワーで敵とバトルし、世界の破滅を防ごうとする話」であり、これもこれで説明として間違っちゃいないんですけれど、『PSYREN』独自の面白さはまったく表現できていません。聞いた相手は「ふーん、ありがちな少年漫画だね」と受け取って興味を失ってしまいそう。というか当方も最初は似た感じで興味を失った。「読まずに面白さをイメージすることが困難」ってのが『PSYREN』の抱える大きな弱みでしょう。

 進むにつれて超常的なバトル展開が多くなっていきますが、導入の時点においては主人公も「普通の高校生」という身分で、パワーが覚醒するまでちょっと時間が掛かります。都市伝説「赤いテレホンカード」を拾った主人公が、そのせいで異世界に飛ばされ、常軌を逸した化け物たちに命を狙われる「謎のサバイバル・ゲーム」に強制参加するハメになる……というストーリーも実際に読んでみるとサスペンスたっぷりで引き込まれるが、「異世界」やら「謎のゲーム」やらといった曖昧な説明じゃ聞き手のイメージはうまく喚起されず、話しているこちらの気分は盛り上がっているのに向こうは「ふーん」なテンションが続くという微妙な温度差が生じます。なかなか紹介者泣かせの傑作だ。とにかく「おっ」と感心するポイントを未読の人に対して並べることが難しい。「デスゲームものなの?」と聞かれたら「いや、最初はデスゲーム臭が濃厚だけど、だんだんバトルの比率が高くなるにつれゲーム色は減っていく」と言わざるをえないし、「キャラが魅力的なの?」と聞かれたら「正直地味。『じゃここにいなよ…えいえんに…』と時折キレて黒さを覗かせるヒロインはイイ味出しているが、眼鏡っ子ということもあって華に欠ける。サブキャラが増える4巻あたりからようやく賑やかになる」と言わざるをえない。決してスロースターターではなく、かなり早い時点から「おっ」となるポイントは出てくるのだが、ピンポイントすぎて書きづらいのです。あとネタバレを避けて面白さを伝えるのは無理ゲー。「異世界」とは○○○であり、主人公たちは×××のために戦う、つまりこれは△△△モノなのだ……なんて堂々と書けたら楽なのだが、それ言っちゃうと興を削ぐことになりかねない。もちろん単純に超常系能力バトル漫画として読んでも充分な内容で、「野心的かつ模範的な少年漫画」に仕上がっていることは確かです。絵柄とノリが若干古臭いが、『童夢』めいた迫力の数々に「懐かしい熱さ」が甦ってくること請け合い。

 「読んだらきっとハマるであろう人にもなかなか手を伸ばしてもらえない」という不遇のオーラを滲ませる傑作サスペンス。イメージが掴み辛い、なんかピンと来ない、という方はとりあえず5巻くらいを目処にまとめ読みしてください。主人公サイドの苦戦するシーンが多いなど、最近の少年漫画にしてはちょっと泥臭い部分もありますが、「弱い能力から強い能力へ」とシンプルに進化していくのではなく、むしろ初期段階では強大すぎて暴走してしまうパワーをあえてデチューンすることで制御可能にしていくあたり――いわば「劣化と練磨による成長」を軸とするところに新しい意欲を嗅ぎ取れるならば、あなたにとって間違いなくこの作品はアタリとなるはず。それにしてもマリーの成長は反則だろ……場違いなほどのエロさで、何か他のお色気漫画を見ているような気分に陥ってくる。そしてヒロインは黒い黒いと思っていたが途中で黒くなりすぎて噴いた。

・拍手レス。

 猫物語の羽川の独白でありゃりゃぎさんが傷物語以前から動き回ってたことが分かり上条さんといいあらららぎさんといい首突っ込んだ事件の数(作中で語られていない事件)に比べれば建てたフラグはむしろ少ないんじゃないかという気がしてきた。そしてフラグといえば上条さん並の吸引力を誇ったらしい上条さん父を射止めた上条さん母半端無い。ヒロイン達は上条さん直接墜とすより上条さん母に教えを請うべき。
 そんな母親が姑になるわけだから上条さんを落とすヒロインも大変だな。というかライトノベルは両親があんまり出てこないせいか嫁姑問題ってほとんど描かれませんね。「ネヴィル・シュート」と「いびる姑」は少し似てますが関係ありませんね。

 恋物語は、ひたぎ視点とあららぎ視点のミックスだったりして。講談社なら、二分冊にしかねないけど。
 『グリーン・マイル』とか『上と外』とか『北野勇作どうぶつ図鑑』みたいな6分冊でひたぎ視点・あららぎ視点・つばさ視点・まよい視点・するが視点・なでこ視点のすべてを網羅する可能性も視野に入れる必要があります、講談社ですから。


2010-11-07.

・「一つの物事に集中しすぎてしまう」という疾患を持った少女が「蜘蛛」の名を継ぐ暗殺者として覚醒していく『アラクニド』の2巻、敵として登場する「ゴキブリ(実際は漢字)」の放つ存在感がすっさまじく強烈で参った焼津です、こんばんは。

 読む前は「いくら『組織』の暗殺者だからって、女の子に『ゴキブリ』はヒドいだろ……」と考えていましたが、いざ本物を目にするや、そんなヌルい考えは捨てました。むしろ彼女と同一視されるゴキブリが気の毒でならない。なにせ初登場シーンで主人公の体操服をスーハースーハークンカクンカしてますからね。しかも「匂いを覚える」とかそういった特殊な事情もなく、素の風情で「たまりませんわァ〜」などとほざく始末。単なる趣味としか読み取れない文脈で嗅(や)ってやがる。思いっきり涎垂らしてるし、ってかアレ付着してないだろうか。「私がこんなことしてるなんて知ったら 藤井さん(主人公)もきっと嫌がりますわね〜…」「でも 嫌悪感に歪んだその顔を」「踏みつけて捻じ伏せて嬲り尽くすのが 最高なんですのよね…」「あ――――〜……… 嫌われ者でよかったですわァ〜…」と唾棄される己を全肯定しているのだから手に負えない。ですわ口調のゴキブリ少女……新時代の扉を開く確かな予感を抱かせます。

・同じガンガン系のコミック、『かへたんていぶ(1)』も「ついでに」という感覚で読み出したが、予想以上に面白くて収穫でした。

 「カフェ探偵部」ならぬ「かへたんていぶ」なる気の抜けたネーミングに発売当初から心惹かれていたのですが、作者の藤代健は名前しか知らない(『ながされて藍蘭島』は食わず嫌いしていた)こともあり、なんとなく手が伸びなかったものです。「カフェ」と「探偵」の融合するイメージもいまひとつ思い浮かばなかったし。けど実際に読んでみたら意外なほどのアタリ。どちらかと申せばカフェの方がメインで、探偵はオマケに近い(そもそも事件らしい事件が起きない)ものの、「ぽえぽえしたチビっ娘」に見える主人公が「洞察力のあるミステリ作家志望者」ってのが程好いギャップになっています。お約束から外れた方向でヒロインの魅力を探り出そうとする試みが随所に見られ、「ありがちなゆるゆるコメディ」に飽きてきた人でも充分に楽しめる素晴らしい仕様だ。ちょくちょくパンツが見える程度で他に目立ったお色気描写はないが、とにかくキャラが魅力的でグイグイ引き込まれる。こりゃ4、5巻くらいエピソードが溜まったらアニメ化されても不思議じゃないですね。

人生リセット願望を持つ人は6割以上 ・・・ リセットすればうまくいくの?(暇人\(^o^)/速報)

 永劫の永劫倍を繰り返した結果がアレではないか。ああ、そういえば垣谷美雨の『リセット』が12月に文庫化するみたいです。『サクラダリセット』の4巻も12月らしいが、まだ1巻すら読み終わっていない体たらく。

・西尾維新の『猫物語(白)』読んだー。

 “物語”シリーズ通算7冊目。7月に出た『猫物語(黒)』の続き……と言えなくもないが、話自体はダイレクトに繋がっておらず、両者の連絡は非常に緩いものとなっています。一読し、「なるほど、道理で(上・下)じゃなく(黒・白)だったんだ」と納得しました。ふたつとも「羽川翼の物語」という点では共通していますが、期間が割と隔たっているんですよね。“物語”シリーズの主要人物である阿々良木暦、戦場ヶ原ひたぎ、羽川翼の3名はシリーズ1冊目『化物語(上)』の時点では高校3年生。過去編に当たる『傷物語』は2年の終業式から始まり、シリーズ全体は「春休みから始業式へ→ゴールデンウィーク→5月から6月にかけて→夏休み→新学期」というふうに進行していきます。「春休みから始業式へ」の期間を描いたものが『傷物語』で、「ゴールデンウィーク」は『猫物語(黒)』、「5月から6月にかけて」が『化物語(上)』と『化物語(下)』、「夏休み」が『偽物語(上)』『偽物語(下)』……そうしてやっと訪れた「新学期」のエピソードこそが『猫物語(白)』に当たる。つまり、(黒)と(白)とでは4ヶ月くらい離れているので、続きと言えば続きなんですが『化物語』や『偽物語』ほどの連続性はありません。『化物語』に登場したキャラのほとんどは夏休みの間にいろいろとイメチェンしてるので、『偽物語』を知らずに(あるいは忘れて)アニメ版のイメージで『猫物語(白)』に手を伸ばすと混乱を来します。注意しましょう。しかし作中期間ってまだ半年も経ってないんですね。驚くほど濃密だ。

 さて、広告等で「新章突入」とくどいくらい喧伝している通り、“物語”シリーズはここから新しい展開に移ります。何を以って「新章」とするのか? 単に新学期が始まったからか? と訝る人もいるかもしれません。しかし、読んでみれば今までとの違いは一目瞭然です。これまで一貫して阿々良木暦の一人称で綴られてきた文章が、今回はなんと羽川翼の一人称に刷新されている。もはや明らかに昔日の“物語”ではない。この調子だと、『傾物語』は八九寺真宵の一人称、『花物語』は神原駿河の一人称、『囮物語』は千石撫子の一人称、『鬼物語』は忍野忍の一人称、『恋物語』は戦場ヶ原ひたぎの一人称になるのだろうか。未確定ながら、想像しただけでワクワクする。「千石撫子の一人称」はワクワクを通り越してガクブルですが。「心は進化するよ、もっともっと」なラスボスの語りがひたすら延々と続くなど、考えただけで慄然とする。「わたしの心は進化をあと2回残しています……その意味がわかりますか?」 わかれば正気など保てない。さておき、(白)のメインはあくまで翼なので、アララビさんの出番は数えるほどしかありません。『超電磁砲』における当麻さん程度。何か裏でいろいろやっているみたいだけど、そのへんの事情は次巻か次々巻あたりで語られるのだろうか? あの人が語り手を務めると他のキャラとの掛け合いが漫才ばかりになって話がなかなか先に進まなくなるという難点はありましたが、ここまで出てこないとさすがに寂しいっスね。翼も翼でそれなりにイイ味を出しているというか普通に可愛いんですが、ネタ的な意味合いではインパクトに欠け、少々物足りない。とはいえ漫才要素が減った分、語りの密度は増し、(黒)に比べてみっちり中身が詰まっている印象があります。「猫」を凌駕する怪異、「虎」に出遭った翼の精神的冒険。語り手が変わっても作者は一緒なので「いつもの西尾文体からの脱却」は果たされていませんが、それでも『偽物語』以降の過度な冗漫さがここに来て薄らぎ、キチンと読み応えのある話になっていることは嬉しかった。(黒)は「語られなかったエピソード」という性質上、翼の今後に対してハッキリとした結論を出すことができずやや消化不良気味でしたが、(白)は新章に突入したおかげもあって大きな進展が見られ、読み終わるや充分な満足が得られました。不遇と言われ続けてきた翼ファンもこれでやっと報われたのではないかな。

 黒と白で、繋げて読めば「こくはく」、つまり「告白」の意味ではないか……と考察する向きもあるそうですが、そういえば「しろ」を表記する漢字の中に「皓」ってのがありますね。これを逆に読めば「告白」であり、すなわち「皓(しろ)が反転する」と見るのは穿ちすぎだろうか。いま『彼女は戦争妖精』で地道に人気を稼いでいる嬉野秋彦のデビュー作が『皓月に白き虎の啼く』だったことをふと思い出しましたが……明らかに無関係なのでこじつけるのはやめにしました。ともあれ、次は『傾物語』か。予定では12月下旬だそうですが、本当に年内に間に合わせられるのかどうか不安。また「本当に出るの?」と疑いながらネット書店で注文可能になる瞬間を待つ日々が訪れる……。

・拍手レス。

 「空色勾玉」は350ページ・・・そんなもんだったんですね。中学の時読むのに丸一日かけた記憶があるのですが。
 文庫版だと700ページある『霧越邸殺人事件』ハードカバー版新書版だと420〜470ページ程度ですし、文章を2段組にすることで得られる情報圧縮率はなかなか。

 「士気折々!」敗残の兵が命からがら国に逃げ帰るさまを熱く描いた超大作!とかアホなこと思いついたッス。
 ひこにゃんの4コマ『滋賀おりおりっ!』が発売されて、更にそれをネタとしたPhantom同人『志賀おりおりっ!』が冬コミに出るという妄想。


2010-11-04.

・なんとなく読んでみた4コマ漫画『四季おりおりっ!』の絵柄がちょっときゆづきさとこっぽくて得した気分の焼津です、こんばんは。表紙はそんなでもありませんが、カラーページの塗りが結構似てる。

 『四季おりおりっ!』は四季に因んで春菜・夏希・秋乃・冬香と名づけられた四姉妹の日常をほのぼのと面白おかしく綴っています。内容面で際立った特徴がないため「キャラが魅力的」とか「ノリとネタが良い」とか、いまひとつパンチに欠ける平凡な感想しかヒネリ出せないけれど、「なんとなく読んでみた」にしては充分すぎる収穫と言えよう。オススメ。

・4コマ漫画と言えば『でらぐい』も面白かった。

 タイトル通り大食いの少女が主人公で、白黒ツートンカラーのケモノちっくな髪といい、なんだか絵柄が90年代っぽくて若干古臭いが、慣れたらこれも一つの味として楽しめた。ヒロインの名前が「稲穂むすび」だから、髪の白と黒はおにぎりの飯部分と海苔部分を見立てているということだろうか。とにかく詰め込みすぎなほどのネタが病みつきになります。山椒こつぶ(四次元ポシェット所有の腹黒リ)をして「萌えの見本市」と言わしめる絹越ハツ子(ツインドリルヘアーで巨乳で眼鏡で着物が似合う料理上手のおせっかい焼き風紀委員……属性ゴテゴテ)も確かに魅力的だが、やはり当方が好きなのは辛繰迅香ですね。クールな不思議ちゃんと見せかけてドジっ娘と一途っ娘のハイブリッドという萌えの塊。可愛さ半端ねぇよ迅香。とにかくキャラの良さが目立ちますけども、デフォルメの効いたコミカルな描画とともに紡がれるギャグのテンポも絶妙で、「キャラだけ」に終わらない巧みな一作であると請け合える。ちなみに巻末記載のプロフィール、巨乳キャラのウエストがあっさり60を超えているあたりは生々しいですな。62の紀奈子さん(@『俺たちに翼はない』)ですら物議を醸したのに、67の絹越先輩とか69のあんこ先生とか、勇気ある数字設定。実際の絵ではそれより細く描いている気がしてなりませんが。

・ついでだから『コンビニロボットぽぷりちゃん』についても書いとこう。

 目からビーム放ってお弁当温めている表紙に釣られて速攻購入してしまった一冊。お色気というかちょっぴりシモいネタが多いあたりに好悪が分かれそうだ。店長が転んでぽぷりのスカートをずり下げる、ってネタを、手を変えシチュを変え延々と執拗に繰り返すその情熱がいったいどこから来るのか不思議でしょうがない。設定のトび具合に反してネタの方は案外堅実というか、意味不明なオチを示すことはそんなにありません。熊に齧られたまま部屋に入ってくる奴はどうかと思いましたが。不条理ギャグのようでいて定番路線、というギャップが人気の秘訣なのかもしれない。キャラはぽぷりちゃんが安定して可愛いが、フコーさんのインパクトが他を圧倒する勢いで突出していますな。「いつもの不幸(コト)ですから(キリッ)」。あと巻末の寄稿イラストにアライブ繋がりで春野友矢のものが載っていますが、ちょうど犬江さん『真剣で私に恋しなさい!』(こちらにも寄稿している)を読み終えた直後だったので「またしてもか!」と唸りました。ハルトモ絵のクリスとぽぷりはまことに眼福。つーか読んでいて「春野友矢の描いたぽぷりが見てぇ」と思いましたからねマジで。

・拍手レス。

 >>Diesで正田ファンになった、パラロスも是非やりたい  ま、まさに自分のことではないですか。予備知識としては、主人公が最強と最弱の二人、ラスボスの声優が棒、アスト超カワイイ、程度なので、とても楽しみだったりします。まあ、一番楽しみなのは、新作の先行体験版なんですが
 サタナイルの棒っぷりはホントにひどかったです……あとパラロスはシュピーネ以下のクソ雑魚が多いあたりも楽しいです。

 黄昏の狙撃手は、ライフルを持って銃撃戦やってましたのでそこそこ満足できるかと 以前の誤訳ですがワイルドキャットを山猫用とかRPGをロールプレイングゲームとか色々やってくれてましたね
 扶桑社の誤訳・誤字・誤変換はお笑いレベル。「貪欲」が「貧欲」になっていたときは机に突っ伏しました。

 >パンストを凌駕する勢い あの作品を凌駕したらいかんでしょうw アレもハッキリと好き嫌いの分かれる作品ですよね
 あのカートゥーンっぽい絵柄はジワジワ来る。

 アラクニド面白いですよ〜。虫に詳しくない自分はトリビアの如くへぇへぇ言いながら読みましたw
 組織のコードネームが全部虫みたいですね。これでボスがスカラベ(糞転がし)だったりしたらどうしよう。

 リアルに日本版ヴィルヘルムktkrと思ったら良い話だったよごめんなさい。
 http://blog.livedoor.jp/roadtoreality/archives/51624231.html

 咄嗟に「略せば『俺姉』だな」と思った当方も反省。


2010-11-01.

・ネット書店で注文したエロマンガの梱包が破れていてちょっと焦ったでござるの巻。幸いタイトルの一部(差し障りのない範囲)が見えただけで宅配テロには発展せず、社会的に延命できた焼津です、こんばんは。やはりアレですね、18禁商品を頼むときは梱包の頑丈さも検討しとかないといけませんね。今回は際どいところでした。

虚淵玄×蒼樹うめのオリジナルアニメ『魔法少女まどか★マギカ』、公式サイトオープン

 虚淵御大は「シリーズ構成&全話脚本」と、かなりの大役みたいです。これが成功すれば「ガンダムの脚本をやる」という夢も近づくな。中身に関しては触れられていないので現時点だと何とも言えないところだが、とりあえずタイトルの語呂はいまひとつ……「まどマギ」と略してもしっくり来ないし、この分じゃ「血だまりステッキ」って通称の方が定着しそうだ。本人は「心の花が枯れそう」と語っているが、これまでの業績を振り返ってみるに自業自得じゃあるまイカ。ところで最近になって「腹パン」という用語があることを知り、そのニュアンスを未だ掴み切れずにいますが、身寄りのない(開始時点ではあったが、すぐになくなった)少女が殺し屋に顔と腹をブン殴られる『アラクニド』は1巻が割と良さげだったのでとりあえず2巻も買ってみることにする。

light、『PARADISE LOST』新装版の発売日と価格を決定(2011年1月28日、税込6090円)

 まあまあの早さですね。エピソードの追加もあるとはいえ、音声の録り直しナシで6090円というのはちょっとお高いけれど、正田崇とGユウスケの新作体験版が「超先行」で収録されるってんだから唯々諾々と買うしかない。悲しき儲のSa-Ga。パッケージ版にはサントラも付く模様ですが、「完全復刻」ということは今回もED曲の収録はナシか。あれ結構良かったのに、なんで未収録なんでしょう? 実売価格は恐らく5000円前後になるものと思われますので、「Diesで正田ファンになった、パラロスも是非やりたい」という方以外には少々オススメし辛いが、まあ新作の方が面白ければ強いてオススメするまでもなく手を伸ばす人が増えるだろうからいいや。

・今月の購入予定。

(本/小説)

 『最後の音楽』/イアン・ランキン(早川書房)
 『社会的には死んでも君を!』/壱日千次(メディアファクトリー)
 『折れた竜骨』/米澤穂信(東京創元社)
 『バウドリーノ(上・下)』/ウンベルト・エーコ(岩波書店)
 『エステルハージ博士の事件簿』/アヴラム・デイヴィッドスン(河出書房新社)
 『シエスターズ』/平山夢明(講談社)
 『アイ・スナイパー(上・下)』/スティーヴン・ハンター(扶桑社)

(本/マンガ)

 『っポイ!(29・30)』/やまざき貴子(白泉社)
 『セレスティアルクローズ(1)』/塩野干支郎次(講談社)
 『ブロッケンブラッドY』/塩野干支郎次(少年画報社)
 『プラナス・ガール(3)』/松本トモキ(スクウェア・エニックス)
 『惑星のさみだれ(10)』/水上悟志(少年画報社)

 まずは文庫化情報。東郷隆の大作『狙うて候』が上下2分冊で実業之日本社文庫から出ます。「村田銃」の開発者・村田経芳の生涯を追った伝記風小説であり、伝記風と申しましても何せ時代は幕末から維新に掛けてであり、戊辰戦争や西南の役なども絡めて充分すぎるほどの読み応えを提供してくれます。『武揚伝』の榎本武揚もちょっとだけ登場するのが個人的には嬉しかった。それとガルシア=マルケスの『誘拐の知らせ』も要チェック。恐らく角川春樹事務所から『誘拐』のタイトルで出ていた "Noticia de un secuestro" の文庫版だと思います。「Noticia」はスペイン語で「ニュース」の意味、「secuestro」が「誘拐」ですからこちらの方が原題に近い。この本はドキュメンタリー寄りのせいか、新潮社の“ガルシア=マルケス全小説”にも収録されておりません。似たような事情で『ある遭難者の物語』や『戒厳令下チリ潜入記』、『幸福な無名時代』も収録から漏れている。ノーベル文学賞を受賞していて、作品のいくつかは映画化されている(『誘拐』も映画化の話があったが、今どうなっているかは不明)割に新品で入手可能な文庫本が3冊程度と、やや手が伸びにくい状況に置かれていますので、ここに来て『誘拐』の文庫化は朗報だ。税込で1050円だから手の伸びにくさはあまり改善されていないけど、もう最近の翻訳書籍市場はスッカリ壊れている状態なので仕方ないと言えば仕方ない。買い手が少ない→単価が上がる→更に買い手が減る→更に単価が……という負のスパイラルから抜け出せない有様。特にシリーズものは進むにつれて売れなくなっていくから、どれも途中で切り上げて新シリーズに望みを移し変えるような出版社ばっかりになってしまって……これ以上はただの愚痴なのでオミット致します。

 まず小説の方から。『最後の音楽』は“ジョン・リーバス”シリーズ最終巻に当たる警察小説です。大好きなシリーズの一つなので完結するのは悲しいが、リーバスもさすがにそろそろ刑事を辞める年齢になってきたもんな……しょうがない。てかハヤカワよ、確かにこれがリーバスものの最終巻ではあるみたいだが、まだ未訳の初期作がいくつか残っているじゃないか。そちらも早く出してください、お願いします。『社会的には死んでも君を!』の壱日千次はここ2ヶ月間でポコポコと矢継ぎ早に射出されているMF文庫J新人の一人。応募時のタイトルは確か『ハチカヅキ!』だったっけ。タイトルのインパクトで言うなら『雑魚神様』をも上回る。大十字九郎の「やっぱ俺、ロリコンだったみたいでさ(以下略)」に匹敵する迷ゼリフは果たして飛び出すのか。ちなみに当方はロリコン邪神探偵の人よりも自ら片腕を叩き折って「 俺 は ! ロ リ コ ン だ !」と叫んだ人の方が、最近だったせいもあってか強く印象に残っています。『折れた竜骨』は『インシテミル』が映画化して現在絶好調なよねぽの新作。なんでも中世イングランドが舞台なんですって。「魔術や呪いが横行する世界」なのに、あくまでミステリを志向するそうだ。これもこれで楽しみだけど『犬はどこだ』の続編まだー? 『バウドリーノ』は寡作で知られるエーコの4作目の小説。十字軍絡みの話だとか。前作『前日島』の邦訳が99年刊行でしたから、かれこれ11年ぶりですね。原書自体は2000年刊なので、翻訳に手間取っていたのだろうか。Wikipediaの情報によると『バウドリーノ』以降も5作目、6作目の小説があるそうですが、これも翻訳に何年掛かることか……『エステルハージ博士の事件簿』は『どんがらがん』のデイヴィッドスンによる連作ミステリ。最近すっかり新作を書かなくなった殊能将之が入れあげている作家の一人で、確かに『どんがらがん』のクオリティは素晴らしかった。今回も解説は殊能将之が務めるそうで、もはや作家ではなく解説家だな。『シエスターズ』は講談社の企画“書き下ろし100冊”の1冊。つまり平山夢明の書き下ろし最新長編です。告知では『クレイジーズ』だったけどタイトルが変わったみたい。ぐぐってみると3年ほど前の“小説現代”に「シエスターズ論考」という短編を掲載しているようだが何か関係あるのだろうか。この人は仕事量こそ多いのになかなか成果がまとまらないので、単行本派はヤキモキする日々を送っております。『アイ・スナイパー』は「まだ続けるのか!」とファンも呻くスワガーシリーズの最新刊。押し並べて評価が低かった前作と前々作に対し、今回は原点に戻ったのか多少持ち直している様子。これでファンもちょっとは胸を撫で下ろせるはず。ただ心配なのは、扶桑社の翻訳・編集レベルが年々落ちてきていること。『四十七人目の男』は原書レベルでヒドかっただろうことは想像に難くないが、訳も訳で相当にヒドかった。『黄昏の狙撃手』はまだ積んでいますが良くない噂を耳に入れています。いろんな意味で起死回生を願いたいところ。扶桑社と言えば、ハンターとは関係ないがこんな記事があって「ああっ」となった。そうか、そういえば今年が没後百年に当たるのか。あの有名な逸話が遂に実現するのかと思うと感慨深いですね。

 お次は漫画。『っポイ!』は29巻と30巻の同時発売、そしてこれで遂に完結となります。連載開始から19年。同時期に始まった刃牙の方は未だに終わる気配がありませんが、とにかく漫画としては随分長く続いた方です。知らない方のために説明致しますと、『っポイ!』は中学3年生の少年少女が卒業して高校に入学するまで、つまり1年にも満たない期間を延々と30巻も費やして描いた青春コミックです。とはいえ過去編やら未来編やらがあるので厳密な意味で「1年にも満たない期間」を書いた作品であるとは言えませんし、主人公の父親と母親の出逢いはおろか、主人公の親友の父母の出逢い、果ては主人公の祖父母の出逢いにまで遡るのはやりすぎだと思いますが、これだけ長く続けばあばたもエクボ、すべてが愛おしく見えてしまう。少女漫画はあまり関心のないジャンルなので、正直ほんの2、3年も追いかければそこで飽きちゃう作品がほとんどなのですが、『っポイ!』だけは軽く10年以上付き合っています。キッカケは小学校の図書室でどこぞの女子が「最近の少女漫画は『っポイ!』が面白い」「面白いよねー、『っポイ!』」と会話しているのを小耳に挟んだことでした。高校生になってからふとその会話が記憶の底から甦り、「試しに読んでみるか」と手を伸ばしてずっぽりハマりました。『っポイ!』には主人公(女顔でチビ)の女装シーンがたびたび出てきており、これが今に言う「男の娘」属性の芽生えかと申せば別にそうでもなく、個人的な体験としては『ブレイク-エイジ』や『突撃!パッパラ隊』の方が根は深い。男の娘といえば、そちら方面でも顔が売れている塩野干支郎次は今月『セレスティアルクローズ』と『ブロッケンブラッド』を同時発売。代わりに『ユーベルブラット』の新刊は無期延期状態ですよ。さすがに仕事が重なりすぎて辛いのか。で、猫も杓子も男の娘な昨今、いささか濫造の傾向が目立ち、そちら方面が好きな当方でもちっとばかし食傷気味なんですが、「限りなく理想に近い」形の女装少年を描いて飽きさせない作品もあります。それが『プラナス・ガール』。「見た目が完全に少女で、単に『性別は♂です』と言い張ってるだけ」な女装モノが多い(そういうのが嫌いというわけではありませんが)中、『プラナス・ガール』のヒロイン(?)である藍川絆はギリギリ少年っぽさを残したデザインで「ひと味違うな」と変態紳士を唸らせる。あくまで当方の理想形に限りなく近いのであって、効果には個人差があります、あしからず。『惑星のさみだれ(10)』は万感の思いが込み上げてくる最終巻。バトル描写が手抜きということでは決してないが、バトル以外の部分に読みどころがあり、読めば読むほど味わいが増す。完結記念の小冊子も無論申し込み済です。

(ゲームと映像メディア)

 『紫影のソナーニル』(エロゲー)
 『ルーザーズ』(洋画)
 『オーケストラ!』(洋画)
 『ザ・ホード 死霊の大群』(洋画)
 『アーン 鋼の騎士団』(洋画)
 『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』(アニメ)

 エロゲーで「確実に買う」と請け合えるのは『紫影のソナーニル』だけですね。元長柾木と藤木隻のコンビってんで注目してた『猫撫ディストーション』は延期しちゃったしな……保住圭とミヤスリサのタッグが復活する『キッキングホース★ラプソディ』は現在体験版をプレー中、やり終えてから判断を下したい。ソナーニルは桜井光とAKIRAのシャルノスコンビによる新作で、ノリも大きく変わらないだろうから体験版をやらずに購入確定。でもたぶん積むな。

 以下、BD・DVD情報。『ルーザーズ』は良い意味で頭悪そうなB級アクション。トレイラーを観ても「撮る時代を間違えたな」というムードがプンプンします。こういうおバカでド派手な活劇モノは観逃したくない。『オーケストラ!』はたぶんタイトルに「!」が付いてなかったらスルーしていた。というのがあながち冗談でもない。たまには音に聞き惚れる映画を楽しみたいな、と思って調べているときに「!」が目に止まってなんとなくクリック、それで存在を知った。『ザ・ホード 死霊の大群』はゾンビもの。『ゾンビランド』の発売が延期して間が空いてしまったから、埋めるような意味合いでポチってみました。『アーン 鋼の騎士団』はテンプル騎士団を題材に採った映画。テンプル騎士団には興味あるし評判もイイみたいなのでチャレンジしようかと。『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』は人気シリーズの劇場版第1弾。なのは関連はまったく観たことがないけれど気になっていたのでこの劇場版は渡りに舟です。いや、よく考えると、なのはに限らず魔法少女モノのアニメってほとんど観てない気がするな……記憶を遡ってもCCさくらくらいしか思い当たらない。興味がある割にチェックが疎かすぎて愕然とした。こうなったらlightに頼んで『マジカル雌犬(ビッチ)ルサルカ』をどこかのアニメ会社に制作依頼してもらうしかないな。パンストを凌駕する勢いで「ウィッチでビッチな新時代のヒロイン像」を確立するチャンス。本当に実現したら「どんな判断だ、金を水底に沈める気か」ですが。

・拍手レス。

 邪神大沼の大沼くんはラノベの主人公とは思えないほど不遇な扱いを受けてますよねw
 大沼くんはバラエティ番組で観客なのに舞台へ上げられて弄られる素人みたいな位置付け。

 シグルイですけれど、個人的にはがま剣法の話もきちんと決着をつけてもらいたかったな、と。まぁ、がま剣法のところを細かくやっちゃったら、源之助と清玄の決着がさらに長引くことになるので、やらなかったのはまぁ正解だとは思いますけれども・・・。やはり頑之助の最期が読みたかったなというのが正直な感想です。
 がま剣法の半端っぷりは腑に落ちませんね。決着つけないなら過去の場面とかわざわざ無明逆流れ編に入れなくても……と思ってしまう。

 ダニエラいたし、確かに死にそうな立ち位置だったよなあ
 いっぺん死亡フラグが立つと生半な方法じゃ跳ね返せないシビアさに良くも悪くもエキサイティング。

 ニャル子の方向性に悩むって、あの作風で今さらシリアスはないだろうし、これまで通りのギャグ路線を貫くか、ニャル子と真尋さんのラブコメ路線に舵を切るか、て感じだろうか。真尋さんはデレてきてるしクー子もなんとなく真尋さんに傾いてるっぽい感じだし、後者でも行けるのかも。GA文庫で最も好きな部類の作品なので、頑張ってほしいところです。
 これとかこれを読むに、バトルを絡める展開が徐々にネックとなってきてるっぽい。今後はラブコメ重視方向に流れそうな予感。


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