2010年9月分


・本
 『この中に1人、妹がいる!』/田口一(メディアファクトリー)
 『墜落世界のハイダイバー』/六塚光(角川書店)
 『破滅の箱』『再生の箱』/牧野修(講談社)
 『僕のエア』/滝本竜彦(文藝春秋)
 『老猿』/藤田宜永(講談社)

・映画
 『ホステル』
 『ヒルズ・ハブ・アイズ』
 『サブウェイ123 激突』


2010-09-25.

「泥舟だから沈む、と? 浅はかな思い込みだな……」
「な、なにィィ!? 狸ッ、てめぇ、泥を焼き固めやがったのか!」
「背中を焼かれたお返ししてやろうと思ってな、火打石と薪持ってきて正解だったぜ」
「あッ! そうか、さっきのカチカチっつー音……どっかで聞いた音だと思ったが……」
「舟の体裁を保つために粘土質の土を使ったのが裏目に出たなァ、兎ィィィ!」
「ひ、ひぃぃぃっ!」
「そう、火だ! 俺の泥舟は火ィ点つけても燃えねぇけどよォォ、お前の木で出来た舟はどうかなァァァッ!」
「ミギャァァァァッ!!」
「ダイヤボー!」

・と、「かちかち山〜復讐請負人もまた死す〜」な白昼夢を見た焼津です、こんばんは。あまりのくだらなさに目が覚めました。泥舟というか土器舟やね。

『パティシエなにゃんこ』、廉価版を10月に発売

 DL版が1000円でパッケージ版が2940円。古いソフトで、しかもちょくちょく新作や雑誌のオマケにされてきた経緯があるとはいえ、サントラ特典も付いてこの値段とは頑張ってますな。「スーパーアペンドディスク」の収録内容はこのページの下部に記載されております。パテにゃんが発売されたのは今から7年前となる2003年で、戯画の『ショコラ』とほぼ同時期。喫茶モノの思わぬ傑作(2作とも発売前はそれほど期待されていなかった)が立て続けにリリースされたとあってなかなか印象に残っています。ケーキ職人の主人公が猫になる魔法を掛けられてしまい、人間と猫の二重生活を送ることに……という日常ファンタジー系ラブコメで、あらすじだけ読むと妙にキワモノ臭いけれど、やってみると主人公が割合好感の持てる奴で、且つ笑いのテンポが良いこともあり、最後までストレスなく遊ぶことができます。この頃のかんなぎれいの絵柄は癖が強く、視覚的なイメージで「好みから外れる」と感じる方もおられるでしょうが、安いしサクサク進むし妹が可愛いので試しに買ってみてはいかがかしらん。Lillianスタッフが手掛けた他のソフト(『プリンセスうぃっちぃず』『ティンクル☆くるせいだーす』)は気合が入りすぎててコンプするのに疲れる面があるんですよね。そのへん考えるとパテにゃんは古いながらも一番薦めやすいソフトかもしれません。あと、かんなぎれいが原画を手掛けたエロゲーは『奥さまは巫女?R』なんてのもありますが、あれはリニューアルと言っても「シナリオとCGの追加」を重視したため既存部分がほとんど描き直されておらず、一部の絵の古さが尋常ではない(何せベースとなった『奥さまは巫女?』は2001年に発表されたもの)うえにパロディネタが多い(『少女革命ウテナ』や『サフィズムの舷窓』など、今となっては通じにくいネタもわんさか。ただ『末期、少女病』ネタは未だに通じてしまうあたり非常に泣ける)し、ほんの数時間で終了するボリューム&終盤の展開が駆け足過ぎるせいもあって一番オススメしにくいソフトと言えましょう。でも好きです。

邦題がダサかった映画といえば?(ニュース2ちゃんねる)

 『ドラッグ・ディーラー 仁義なき賭け』(原題:EMPIRE Two Worlds Collide)

【リアル刃牙】「親指の関節外した」 手錠抜いて逃走の少年が出頭(暇人\(^o^)/速報)

 最近観た『ドッグ・バイト・ドッグ』にも似たシーンあったな。それにしても『ドッグ・バイト・ドッグ』は感想に困る映画だった。良くも悪くも予想を裏切られる展開で、驚きつつもどこか釈然としない雰囲気が付きまとう。面白いところもあるけれど、なんだか噛み合わない。生身の狗同士が互いを咬むっつーよりも、まるで「狗」という名の悪霊が乗り移っていくかの如き話で、イメージとしては一匹の狗が自分自身の体を咬みまくっている様を見るような感じ。ひたすら索漠とした虚しさを味わいました。

lightのwebラジオ「Happy light Cafe」に正田崇が久々に出演

 次で最終回だからか気合入れてきてんな。ラジオのページにある「Diesが一位取ったら特攻服で壇上に上がる!」の一文に笑いました。そういやどっかに特攻服着たライトノベル作家がいたな。ラジオの方は思い出話が多く、耳寄りな情報はあんまりなかったです。強いて言えば、Diesのプレムービーは基本的に正田崇がコンテを切っていた、という件か。「ひたすら釣りを考えていた」らしく、「このCG使いたいから早く描けユウスケ、ボケ」とせっついていた模様です。ニートと獣殿が今にも喧嘩しそうな緊張感を匂わせていたのとか、絶対にミスディレクションの意図があっただろうと思っていたから正田考案という話に至極納得。

・藤田宜永の『老猿』読了。

 講談社の100周年を記念して行われている企画「書き下ろし100冊」のひとつ。著者にとって12年ぶりの書き下ろし長編となるそうです。鳴海章の『マルス・ブルー』と同時発売でした。ちなみに『マルス・ブルー』は帯文がネタバレ(後半に迎える状況を明かしている)なので注意。さて、『老猿』はそのまま「ろうえん」と読み、高村光太郎の父・高村光雲が彫った「老猿」から来ています。もうすぐ還暦を迎える主人公が、妻に離婚状を突きつけられ、仕事もやめて半ば隠居の状態となり、軽井沢の外れに建つ不便な家に移り住む。隣人は高村光雲の「老猿」を彷彿とさせる偏屈な爺さんで……と、書き出しを読んでみてもいまひとつどんなストーリーなのかが分からない。タイトルにもなっているくらいだから、きっとこの爺さんが中心人物になってくるんだろうな、と思いつつも、開始時点で主人公は爺さんと親しくなっておらず、しばらく隣人を観察するような地味っちぃ展開が続く。

 近所に別荘を借りている男の愛人・孫春恋が絡んでくることで話は少しずつ動き始めるが、「中国人は嫌いだ」と言い放つ爺さんと、その爺さんを嫌い返す春恋の描写が繰り返され、やっぱり地味っちぃ雰囲気は払拭されません。堂々巡りとまではいかないけれど、なかなか先が見通せないスローペースぶりに焦れる。いったいこれは何の物語なのか? 直木賞を取って以来十八番となっている恋愛小説なのか? それとも原点復帰を目指したハードボイルドなのか? 死人が出てきてさえそのへんはハッキリとせず、ジャンルにこだわって読む人からすると相当に据わりの悪い作品かもしれません。が、悠揚迫らぬ丹念な筆致でじっくりと軽井沢の日々を綴ってくれることもあり、次第にジャンルがどうとかいったことは気にならなくなります。最初は「偏屈な爺さん」でしかなかった老猿が、少しずつ主人公に心を開いていく――その過程はなんというか、野生動物を飼い慣らすような心地に誘ってくれる。幾多もの不思議に包まれた老猿がぽつりぽつりと語ってくれる過去、それを深く知ろうとして余分に足を踏み出せば、サッと扉を閉ざすように拒否の姿勢を示され、話を逸らされたり喋ること自体を中止されてしまったりする。ゆっくりと、本当にゆっくりとしか思い出を明かしてくれない。なんだか、ギャルゲーの頑ななヒロインを攻略している気持ちになってきます。見せかけだけのハリボテツンデレではない、それこそ「ツンデレ」という用語がまだなかった頃の鉄壁ヒロインみたいな……喩えが古くてすみませんが、『To Heart』でいうと保科智子に類する硬さを有している印象。踏み込みにくい分、態度を緩めた後に見せる好意は胸キュンものだ。一応春恋っつーれっきとしたヒロインがいて、彼女との恋愛も重要な軸となってくるんですが、やっぱり老猿の方が正ヒロイン的な立場に位置しているよなぁ。彼の頑固さ、偏屈さが徐々に愛おしくなってくる。おかげで中盤以降はひたすら楽しく読めました。

 「恋あり、ドンパチあり、論争ありというハードボイルド風の作品」と作者は語っていますが、「ドンパチ」の部分は正直オマケに近い。ダレそうになるストーリーを引き締めるためのスパイス、って程度。「女を出せ、匿っているのは分かってるんだぞ」と凄んでいたチャイニーズ・マフィア風の男たちが、スタッドレスタイヤを付けずにスピード出したせいで谷から転落しちゃうあたりなど、もはや脱力して笑いが漏れてくる。軽井沢ということで馳の『沈黙の森』、略してちんもりを念頭に浮かべながら読み出したものですが、まったく重なる要素がなくて逆に感心しました。あ、ちんもりはネタとして手を伸ばす分には結構な出来ですが、普通に期待して読むとグダグダな終盤に腰が砕けること請け合いなので注意してください。『コマンドー』の「銃なんか捨ててかかってこいよ、ベネット!」をも上回る、「さあ、一対一でケリをつけようぜ」「ここだと邪魔が入る、別の場所に移ろう」「でも俺、いま足怪我していて歩けないんだけど」「しょうがないな、おぶってやるよ」に笑いを堪えられる人はいるのだろうか。初めて見ましたよ、これから殺し合いに興じる相手を楢山節考よろしく背負っていくノワール小説なんて。脱線しましたが、『老猿』は進むにつれて軽井沢の比重が軽くなっていくところはあるにせよ、過不足なくまとまっていてすっきりと終わる良作に仕上がっています。「還暦ハードボイルド」などと書けば如何にも枯れた風情が漂うが、『ファイナル・カントリー』のミロだって60過ぎても元気だったし、60なんてまだまだ瑞々しい範疇だ。藤田宜永は「還暦探偵」なる短編も書いているけど、このまま歳を重ねて「後期高齢ハードボイルド」にも挑戦してほしい。戯れ言はさておき、『老猿』はキャラクターに味わいがある小説なので、ハードボイルドが苦手な人や関心のない人にもオススメいたします。さあ、銃を持った暗殺者にただの単なるエアガンで立ち向かおうとして止められる老猿に君も胸キュンしよう。立ち向かおうとするところより、止められて素直に聞き分けるところが個人的に萌えた。

・拍手レス。

 禁書は絵師の人が自分の性癖(ロリコン)にも負けずにがんばってるおかげで割とカッコ良くむさ苦しい表紙が多い気がします。十五巻と十九巻の一方さんはガチ
 あれはかなり異色でしたね。ほぼモノトーンで男キャラだけとか、とても電撃文庫に見えない。ロリコンの人が「こんな色気のない表紙、少年/男性向けカテゴリのライトノベルじゃ普通は描けないだろうなぁ」と述懐するのもむべなるかな。

 村雨は、焼津さんの予想通りというかなんというか、コミカライズなどで「僕の考えた格好いい剱冑」がポコポコ出てきてますねえ。新撰組とか出ましたよ新撰組。もう堪りませんよ。
 ネタが無尽蔵にありますもの、考えずにはいられないでしょう。琉球の三宝剣(千代金丸、治金丸、北谷菜切)とか妄想してニヤニヤ。

 「桐咲キセキのキセキ」は食前絶後を現代風にした一品に感じました 流行り物の食材を使っていたりするのが、個人的にマイナス点ですがきちんと6502伝統のスパイスで調理されていました あとがきに有るように、このままコース料理になるかラーメンに分かりませんがお勧めですよ  久々に行ったら閉店してたとかないと良いな
 冒頭を読んだだけで安心しちゃって現在積んでいます。どうせ次の膳が運ばれてくるまで時間が掛かるだろうからゆっくり賞味しようかと。


2010-09-20.

『十三人の刺客』の刺客をガンダムに置き換えた『十三体のMS』という夢を見た焼津です、こんばんは。そういや武者頑駄無なんてのがあったなぁ、懐かしい……でもどうせなら『装甲悪鬼村正』にコンバートした『十三領の剱冑』が見たかったわ。

・映画は最近だとDVDで『ヒルズ・ハブ・アイズ』を、BDで『サブウェイ123 激突』を観ました。

 『ヒルズ・ハブ・アイズ』は『サランドラ』のリメイク。「炭鉱のある丘付近で米軍が核実験したところ、住民たち被曝! 彼らが産んだ子供は見るからに奇形で、しかも人を襲って人肉を喰うんだよ!」という、よくこれ日本で公開できたな……って感じのB級ホラーサスペンスです。核実験フィルムの合間に枯葉剤(エージェント・オレンジ)の被害者とおぼしき子供たちの写真を混ぜる冒頭演出もかなり悪趣味。映画にモラルを求める人は避けた方が吉。誰もいないな、と思わせておいて一瞬だけチラッと画面を横切るドッキリ演出など、ホラーのお約束はひと通り押さえており、斬新さはないし設定もアレだけど、基本的には安心してキャーキャー楽しめる娯楽作に仕上がっています。砂漠で立ち往生してフリークスのいい獲物になっていた一家が、後半になって猛反撃を繰り広げる――という展開はハッキリ言って安っぽいものの、分かりやすくてテンションが上がる。敵の連中に知能があり、会話もある程度成立するせいで恐怖は薄れがちになりますけれど、少なくとも観ていてダルくはなかったのでB級ホラーとしちゃ良い出来なんじゃないかと。ジリジリと肌に迫ってくるような緊張感を堪能することができました。ただ、続編が観たいかと申せば正直あんまり観たくは……『ディセント』みたいに終わった後も尾を引く興奮ってのはないですね。

 『サブウェイ123 激突』は『サブウェイ・パニック』のリメイク。しかし映画ってホントにリメイク作品が多いなぁ。『es』もハリウッドリメイクされて "The Experiment" とかいうタイトルになっていましたし。サム・ペキンパーの『わらの犬』もリメイクされる予定だとか。話を戻して『サブウェイ123 激突』。ブルーレイはやっぱDVDに比べて画面が綺麗ですね。色にくすみがなくてクッキリと鮮やか、暗いシーンも輪郭がハッキリしていて観やすい。音響も迫力がある。ストーリーは、ジョン・トラボルタをリーダーとする一味が地下鉄をジャックして乗客たちを人質に取り、100万ドルの身代金をニューヨーク市に突きつける、指令室で無線を通じてトラボルタと会話したデンゼルは成り行きで交渉人めいた役割をこなすことに……ってなもの。この映画は去年公開されていた時期に良い評判を聞かなかったので劇場での視聴は取りやめにしましたけど、家で寛いでときどき一時停止にしたり気になったシーンを巻き戻したりして観る分にはちょうどいい作品だと思います。デンゼル・ワシントンとジョン・トラボルタの会話が「交渉」という次元に達しておらず、ただトラボル太のワガママにデンゼルたんが振り回されるドタバタコメディ紛いの遣り取りに終始しており、ネゴシエイター的な頭脳戦を期待した人からするとガッカリかもしれません。銃撃戦やカーアクションなどの派手なシーンにしても、物語を燃え上がらせるための起爆剤というより、単にその場限りで観客の興味をひきつけるだけのネズミ花火じみた瞬間的狂騒に留まっている印象が強い。結末にしてももうひとひねり欲しかった。映画に関してうるさい人ほど点は辛くなるでしょう。が、「こまけぇことはいんだよ」っつー人ならばビールなりコーラなり烏龍茶なりを片手に何かつまみながら大いに味わって楽しむことができるはず。個人的には映像の美しさだけでも充分に元が取れた。あと、期待せずに観たおかげで思ったより盛り上がれたというか「そんなに貶すほど悪くないじゃん」って気持ちになりました。「期待せずに観る」というのは案外と効果がありますよね。ないこともありますけど。

「白背景+女の子」のライトノベル表紙ってAVのパッケージとそっくりだよね(偏読日記@はてな)

 ヒロインがジョジョ立ちしたりカトキ立ちしている表紙よりはAVポージングの方に惹かれます。それにしても、最近のライトノベルは表紙からどんどん主人公の存在が薄れていくなぁ。今月の富士見ファンタジア文庫の新刊はまだそれなりに主人公の存在感がありますけど、電撃文庫の新刊と来たらもう……常時画面に出てくるマンガやアニメの主人公と違って、ビジュアライズされる機会が少ないライトノベルの主人公はエロゲーやギャルゲーの主人公とほぼ同じ立ち位置ですし、表紙でハブられがちなのは仕方ないかな、とは思いますが。だいたい表紙を飾って「濡れるッ!」となる男キャラもそんなにいない気がする。先月の『ソードアート・オンライン5』はむしろ「抜けるッ!」ですし、『ゴミ箱から失礼いたします3』は「捨てるッ!?」という感じだし。若干古い『ゴスペラー』は惜しいところだけど正確には「血塗られるッ!」ですね。


2010-09-16.

・ちょっとだけ、ほんの50ページだけ読んでから他の本に取り掛かるはずだったのに、気がつけば『踊る星降るレネシクル2』を全部読み終えていた焼津です、こんばんは。このシリーズが自分の好みにすこぶる合うことを認めざるをえません。

 個々人の才能や想いの強さによって光り輝き超常的なパワーをもたらす謎物質「レネシクル」がキーポイントとなる学園バトルファンタジーであり、際物めいたキャラが続々と出てくるところが特徴です。今回も前巻に引き続き舞台説明をしながらストーリーを進めていく調子で、まだ本筋には突っ込んでいきません。「レネシクルが強奪される」という事件を巡って新キャラの七曜なななとともに捜査へ出向くわけですけれど、ぶっちゃけ話のスケールは小さくなり、バトルものとしての面白さが減じました。主人公に「腐海流は使うな、使ったら退学だ」って枷が掛けられ、「戦いたい、でも本気を出すわけには……」なんつー板挟みの局面に立たされることもあり、なかなかスカッとする場面が来ません。燃え要素に関しては前巻ほどじゃない、というのが正直な感想です。でもヒロインの可愛さにますます磨きが掛かってリアルに頬が緩んだから、ラブコメとしてはグングン盛り上がってきている印象です。周りに人がいる環境ではちょっと読めないですね、これは。すまるが何ともアホ可愛くてバ可愛い。新たに登場するなななもマヌケ可愛いです。そんなふたりが嫉妬で修羅場ですから楽しすぎて涎出るわ。売上が厳しくていつまで続くか分からないとの噂ですが、叶うことなら末永く続刊を重ねていってほしいものだ。まずは3巻。1巻から2巻までが4ヶ月(今年の4月と8月)だったから、年内発売も夢ではないか。心躍るぜ。

「余命一カ月の〇〇」←一番見たくなるようなタイトル書いたやつ優勝(VIPPERな俺)

 『余命一ヶ月のマンティコアvsU.S.A』

星海社ウェブサイト「最前線」プレオープン公開

 まずこのページに原稿を何回かに分けて掲載し、まとめたものを冬頃に創刊予定の新レーベル「星海社FICTIONS」より刊行する模様。こちらの方に「星海社文庫」なるものが表記されていることからして、判型は新書かソフトカバーあたりでしょうか。まさかハードカバーなんてことは……しかし、そもそも星海社って何なの? 聞いたことない出版社だけど、とぐぐってみたら「講談社出資100%の新会社」とのこと。代表取締役副社長として太田克史の名前が挙がっている点で“ファウスト”や講談社BOXの流れを汲むんでいる、と考えてもいいのかな。『ひぐらしのなく頃に』を文庫化するくらいだし。ともあれ、虚淵玄、元長柾木、犬村小六というラインナップを見せられては買うしかあるまい(ディスプレイ上で読むのは辛いからWEB公開版はスルー)。路線が微妙にガガガと被っている気もするけれど、どうなることやら。

・滝本竜彦の『僕のエア』読んだー。

 映画化した『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』やアニメ化した『NHKにようこそ!』で一世を風靡しつつ、スランプに陥ったのか、あるいは早々と成功を収めたせいで却って書く意欲が衰えたのか、『超人計画』なるエッセイとも小説ともつかない本を最後に長らく筆を休めていた滝本竜彦。雑誌やアンソロジーにぽつぽつと短編小説等を掲載していたものの、単行本はここ7年、長編小説は8年半に渡って刊行されておりませんでした。なぜこんなに時間が掛かったのか? もともと『僕のエア』は2004年に“別册文藝春秋”で3回に分けて連載された作品であり、今回の単行本化に当たって目立った加筆修正も施されていないので、ひたすら「不思議」の一語に尽きます。最初は2005年に出るはずだったんですよね。同時期に“ファウスト”で連載されていた『ECCO』は「終章に当たる第4話を単行本のために書き下ろす」という話があったから、『ECCO』がいつまで経っても刊行されない件に関しては「ああ、最終話が書けないんだな」と容易に推測でましたが……滝本スレのログを漁ってみたところ、「僕のエアは自分の納得のいくまで書き直すつもりでいて、それまで単行本化する気はなかった/しかし心境の変化があり新刊を待ち望む読者の為、連載時から殆ど直しを入れずに単行本化することを決意した」との書き込みがあり、これを信じるならば刊行の遅れはあくまで作者の意思であって、別に複雑なトラブルが絡んでいたわけではないみたいです。

 確かに『僕のエア』は『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』や『NHKにようこそ!』を書いた作者からすると不満足な出来かもしれません。192ページという分量は半端でちょっと短い気がするし、半分くらいを過ぎた以降の展開は一本調子でうねりに欠けます。「エア」という、脳内彼女ってよりも守護霊に近い存在の少女(?)も進むにつれてキャラクター性が希薄になっていく。厳密に読めばそもそもエアはキャラクターと言い難いから「キャラクター性が希薄」なんて意見は的外れでしょうけれど、交通事故で死に掛けた主人公が加速世界みたいな異様に時間が引き延ばされた臨死空間でエアに助けられる、っつう超常的なシーンに引き込まれた読者からするとなんとなく失望感が湧き上がる。無理にキャラと見做して読めば、エアの存在は結構魅力的です。守護霊チックな役割のくせして性格が気弱で「お、おはよう、ご、ございます」みたいなオドオド喋りをする、そのささやかなギャップがいい。主人公が幼い頃より抱いていた監視妄想が結実した存在でありながら、偉ぶったところのない謙虚かつ卑屈な態度がダメ人間な主人公の放つダラけたムードとマッチしており、何とも言えない軽妙さを漂わせます。主人公の人間性が地を這っているおかげでエアに対してイライラせず、むしろ「健気や……」と情にほだされそうになる。「卑屈ストーカー」なる新しいジャンルの芽生えを己が裡に見た心地がしました。49ページのセリフ、「く、黒猫がいたから、逆に目の前を横切ってやった! き、きっと何か良いことあるよ。すぐスミレのところに行けるだけのお金が儲かるよ!」が心臓を締め付けるような可愛さで大好きです。

 加筆どころかあとがきもなし、ボリュームも薄め、既刊に比べてパンチの弱い内容と、熱心なファンであればあるほどガッカリするであろう一冊。「滝本竜彦って久々に名前を見たな、暇だしちょっと読んでみるか」程度の軽い気持ちで手を伸ばすのがちょうどいい。短いおかげで休憩を挟まず一気に読めるのは利点と言えなくもないです。パンチが弱いとはいえ、出だしから勢いがあって楽しいし、やっぱり滝本竜彦の今後には期待したいなぁ、と思いました。ちなみに本書読了の余勢を駆って『中二病でGO!』の「アセンデッド・サガ 序章―天を照らせ我が空なる心―」を読みましたが、清々しい中二病ぶりを発揮しつつ思春期らしい欲望を正直に吐露させ、主人公の素の感じを出しているあたりが面白かった。定石を守りながらここぞというタイミングで外すのは重要ですね。


2010-09-12.

・先月同時刊行された牧野修の『破滅の箱』『再生の箱』をようやっと読み終えた焼津です、こんばんは。

 シリーズ名は「トクソウ事件ファイル」。宇宙人だの悪霊だの呪いだの毒電波だの、普通に話してもろくろく相手にされないような戯けた事案ばかりを専門に担当する、言うなれば「変人苦情処理」が役目の窓際チーム。それが金敷署の生活保安課防犯係特殊対策相談室――略して「トクソウ」であった。任務が任務だけに集う面子も一筋縄じゃいかない、元公安など訳有りの連中が揃っている。仕事とは名ばかり、今日も変人さんたちの持ち込む相談をだらだら聞いてのらりくらりと対処する――つもりだったのだが、なぜかトクソウの行く先々で奇怪かつ凶悪な事件が次々と巻き起こり……という、よくある「落ちこぼれの警察官たちがそれぞれの曲者ぶりを発揮して難事件や珍事件を解決へと導いていく奮闘録」に見せかけた異常犯罪多発サスペンスです。サイコホラーの要素も若干混ざっています。端的に書けば多重人格探偵の出てこない『多重人格探偵サイコ』、あるいはサイコメトラーの出てこない『サイコメトラーEIJI』。ひっきりなしに登場する変人どもといい、どんどん拡大して狂っていく事件のスケールといい、いかにも牧野修らしいケレン味が利いています。

 着手する前は、もうちょっとゆっくり……それこそ2巻目である『再生の箱』に入ってからおもむろに加速するのかと予想しておりましたが、なんと最初のエピソードからいきなりトばしてやがります。仰天、とまで行かないものの「なるほど、最初からクライマックスかよ」と感心しました。一応、超常的な現象は発生しない(部分的に「これ超常してね?」な箇所はあるが、「単なる幻覚かもしれない」で言い抜けられる範囲だ)し、ギリギリ合理的と言えなくもない展開を見せますが、核となる理論がかなりトンデモなため、「真っ当な警察ミステリ」を期待して読み出した人は投げ出してしまうかもしれません。あらかじめ牧野修の作風を知っておかないと少し厳しいものがある。けど、『破滅の箱』と『再生の箱』でうまく話がまとまっており、『多重人格探偵サイコ』みたいにグチャグチャのまま「つづく」となったりはしません。かつて『多重人格探偵サイコ』が好きだった、でも途中で挫折してしまった、そんなあなたには是非ともオススメしておきたい。もちろん、今でもサイコが好きで追い続けているあなたも試しに読んでみては如何でしょう?

light、『PARADISE LOST』リメイクのパッケージ版発売を決定

 「ダウンロード販売のみかも」と言われていたパラロスリメイク、ファンの渇望を叶えるかのようにパッケージ版の発売も決まりました。めでたい。発表時、ラジオのページでは「ボイスも新録!」とありました(現在は訂正されています)が、ラジオ本編では「ボイスも新しく録ろうという声もあったけど……」やら「ボイスは追加できないので……」やらと歯切れが悪く、どうも新録はなさそうな気配。代わりに「雑誌で展開した番外編のシナリオ等を使用する方向」とのことで、“TECH GIAN”2004年4月号から6月号まで3回に分けて収録されたTG版ASが悲願の再収録となりそうです。TS版AS、ボリュームは大したことないらしいのですが、本編を補足する内容だとかでずっと気になっていたんですよね。あとは旧版発売前に配布されたという小冊子の内容もどうにか取り込んで欲しいです。そして気になる発売時期は「来年予定」であり、つまり現状ほとんど決まってないみたい。

 他にラジオでは、Diesのディレクターを務めたまゆきが「正田の新作大変でねぇ……頭の方がそっちでいっぱい」「正田の新作はもうちょいしたら発表して、ってタイミング」と発言していましたので、年内発売は無理めでも情報公開はもうしばらくで始まってくれるかも、正田の新作。ちなみにlightのwebラジオ、あと2回で終了とあって、出演者たちが思い出話に耽っています。正田崇は今回出演しておりませんが、「正田がラジオに出た回は視聴数が増えてホームページが非常に重たくなった」と懐かしくなるような話題も。

・ブルーレイで『ホステル』を観ました。

 『ケモノガリ』の元ネタ。というか、単に「同ジャンルの先行作品」って表現した方が適切かもしれない。東欧の田舎町でバ観光客攫って好きなだけ痛めつけた末に絶命させる殺人クラブが焦点の、拉致・監禁・拷問・虐殺を四分の一ずつ(カトル・カール)な残酷無惨サスペンス・ホラーです。パッケージでは「サディスティック・スリラー」と形容されていました。「タランティーノプレゼンツ」と謳っているものの、監督はイーライ・ロス。タラちゃんは「製作総指揮」っつー扱いみたい。

 あらすじと呼べるようなあらすじもなく、ただ「スロバキアに行ったら女とやりまくれるぞ!」という話に引っ掛かってホイホイやってきた男どもの滞在したホステルがこっそり殺人クラブと内通している狩場だった、というだけのストーリー。この殺人クラブは地下にあって、個室の椅子に縛り付けた獲物をいろんな器具でいたぶる、非常にオーソドックスな拷問環境を顧客たちに提供している模様です。獲物に選ばれた人々はドリルを突っ込まれり、チェーンソーで体の一部を切断されたりなど、痛そうなシーンの目白押しであり、グロ系が苦手な人はショックを受けて視聴を取り止めてしまうかもしれません。が、逆にグロ耐性のある人や、ゴアシーンを目当てに観たという人は「なんだ、この程度か」とガッカリするでしょう。正直に申してエグさは控え目。冒頭の、拷問と虐殺が済んだ後の個室を洗い流すシーンの方が直接的な暴力よりも生々しかった、と思うくらいです。また、日本人女性という設定らしき登場人物の「いたいよーいたいよー」と喚く演技のショボさがすごい。目ん玉ぶらーん、な特殊メイクの間抜けさも相俟って「ギャグか?」と一瞬戸惑うほど。映像やテンポはいいけれど、全体的に絶望感が足りないのが難点ですね。状況はめちゃくちゃハードであるにも関わらず、「これから死ぬ奴の目をしてねえ」って雰囲気が漂うため、いまひとつハラハラムードが薄い。

 とはいえ後半の展開は面白かった。単調と言えば単調だし、意外性はないものの、まっすぐシンプルに盛り上げてくれる。ゴア描写のヌルさに対して湧き上がった不満もうまく帳消しされました。ってな具合で、結果としては収支トントン。観て損はなかったです。しかし、スプラッターをお望みでしたらやっぱり他の作品に当たった方が宜しいかと。痛みよりもショックやグロを求めるなら『デッドコースター』などがオススメ。ちなみにブルーレイの画質は、「くすんだ感じがなくて綺麗、でも感動するほどでは……」ってところです。


2010-09-08.

・設定に惹かれて買った『この中に1人、妹がいる!』がとりあえず面白くてホッとした焼津です、こんばんは。

 亡き父の跡を継いで社長になるため英才教育を叩き込まれて育った主人公は、最後の条件である「高校在学中に人生の伴侶を見つける」――つまり花嫁探しのために政財界の御令嬢が集まる学園へやってきた。転入早々に何人もの女の子たちと仲良くなり、出だしは順調だった。が、非通知で掛かってきた電話がすべてを一変させる。彼の「妹」を名乗る、正体不明の人物。彼女は主人公と血の繋がりがあり、幼い頃に生き別れたのだと告げるが、まったく心当たりがなくて混乱するばかり。やがて彼女は自分の目的を宣言する。「わたくしはお兄様と結婚する」と。ゆえに正体は明かさないと。そして、彼女はもう既に彼のすぐ近くにいるのだ、とも……。

 正体不明の人物から掛かってくる電話、身近な容疑者たち、次第に疑心暗鬼に陥っていく主人公。お膳立ては完全にサスペンス小説のソレながら、やってることはハーレム系のラブコメという、何とも変則的な設定の1冊です。「秘密裡に接近する妹」なんてネタを考え出した時点で設定勝ちと言って差し支えないでしょう。普通、近親相姦を題材とした恋愛モノは、最初から「血縁がある」と明かされているカップルがそうと知りつつ互いに惹かれ合って行くか、ある程度関係が進んだところで「実は血の繋がりがあった!」と判明してショックを受けたり懊悩したり「レッツ背徳♪」となったりするかの二択だというのに、まだ誰とも付き合っていない状態で「この学園に1人だけマジモンの妹がいる……でも誰かは分からない」なんていうバラエティ番組でありがちの「この中に1個だけワサビたっぷりのシュークリームが混ざっています」なシチュエーションを用意するとは目の付け所が違う。妹好きよりもミステリ好きのハートに訴えかける設定であります。基本的に可愛い子たちとイチャイチャするだけで楽しいけれど展開自体は正直ダルい、っつーハーレム系ラブコメの構造上生じる欠点をうまく補修している。「誰が妹だ?」と考えながら読むにつけワクワクする。人が死んだり傷ついたりするのだけがサスペンスではない。妹(ジライ)を踏んだらサヨウナラ、ってな倫理的危うさがドキドキハラハラ感を否応なく盛り上げてくれます。

 ただ、その設定を充分に活かし切れたかどうか、という点はちょっと微妙か。まず、「本気で妹を突き止める気があるのか?」と疑わしくなるほど主人公が行動しません。せいぜい戸籍謄本を確認した程度、細かい調査は協力者に丸投げ。具体的な策も講じず、漠然と周りの少女を怪しむばかりで、本当に英才教育受けた人物なのかと首を傾げたくなります。謎解きがショボい以前にそもそも積極的に謎を解こうとしてないので、物語の方式はミステリよりもサスペンスやホラーに近く、流れに身を任せてしまっている印象が濃い。加えて途中から「こいつが妹かもしれない、いやあいつかも……」と主人公が疑心暗鬼に陥るせいで、ラブコメとして肝心な「女の子とのイチャイチャ、キャッキャウフフなシーン」がどうしても薄くなっちゃうんですよね。怯えて消極的な態度を取る主人公に対し、ヒロインたちが異様なくらい前向きにガンガンと攻め立てて事態を動かそうとするので、傍から見ていてあまり羨ましくないと申しますか、必死すぎるヒロインたちの手管に不自然さが際立っていまひとつニヤニヤできない。主人公に恋愛を手控えさせて優柔不断ぶらせることは理解できるけど、それにしたって女の子の方をガツガツさせすぎだろ、と。「この子たちはなぜ主人公に猛アタックを仕掛けるのか?」という事情は終盤で明かされますが、長ゼリフで畳み掛けるように一気に喋り倒すこともあり、「クライマックスで登場した黒幕にベラベラと事細かく自白させて拾い損ねた伏線を消化する」っていう安物のドラマにありがちな状況を招いちゃっています。枚数の都合もありましょうが、せっかく終盤付近まで引っ張ったネタをああも慌しく大急ぎで開陳するのはなんだか勿体ない気がして残念です。

 展開にうねりはあるし、グダグダとまで言わないものの、アクの強い設定を制御し切れずストーリーが振り回されてしまった印象は否めません。個人的にはヒロインたちとの親密度が深まっていく過程をもっとゆっくり楽しみたかったが、それだと枚数が増えすぎて1巻じゃまとめられなかっただろうし、うーん難しいものだ。類例が少ないサスペンスチックなラブコメとしては評価するにせよ、他者へオススメしようかどうかは悩むところ。読んでみて「やっぱなんだかんだで単純なラブコメの方が好きだなー」と思う人もいるはず。「なんかもう普通のラブコメには飽きたわ」とボヤいている方にだけそっと推しておきたい。あと、1巻はとりあえず面白かったけど、話を続けたら2巻以降はグダグダになってしまわないかと不安です。梃入れに成功しなきゃいろいろ厳しいことになりそう。関係ないが「妹ガイル!」と表記すると他のヒロインを待ち殺した挙句「くにへかえるんだな……おまえにもかぞくがいるんだろう」と言い出しそう。

ライトノベルのタイトルってテンプレでもあるのかと思うぐらい個性がないよね(暇人\(^o^)/速報)

 ライトノベルに限らず創作物のタイトルはひと通りパターンが出尽くした気配もありますし、個性がないのは別に構いませんが、識別性が低いのだけは勘弁してほしいです。この前、『ハードキャンディ』を買うつもりで危うく『ハード・キャンディ』の方を注文しそうになりました。これは単なる偶然の一致でしょうが、映画界は伝統的に「紛らわしい題名で騙す」というデス・トラップが蔓延っていますから注意が必要。『トランスモーファー』はまさにコレジャナイロボ in U.S.A。

 造語じゃないありふれた二文字タイトルとかになると、検索してもなかなか引っ掛からないので往生します。今年の乱歩賞作品である『再会』も、同題異作と取り違える人が出てこないか心配だ。町田康の『告白』と湊かなえの『告白』、この二つは未だに「え? どっちの『告白』だろう?」と混乱することがありますし。SSなどを書く人も、深く考えずに一文字タイトルや二文字タイトルを付けるのはよした方がいいと思います。あとで他の人の感想をぐぐろうとしても全然関係ないページばかりがヒットして涙目になること請け合いですよ。

・六塚光の『墜落世界のハイダイバー』読んだー。

 某所の新刊情報で見かけたときは『堕落世界のハイダイバー』だったので「六塚、今度は耽美系か?」とビックリしました。本書は六塚光(むつづか・あきら)の新刊であり、通算して25冊目に当たります。デビューから6年でこの冊数なら「そこそこ筆が早い」部類に属しますが、端的に申せば「冊数の割にマイナーな作家」ですね。ライトノベルは裾野が広がってきた影響もあって「冊数の割にマイナーな作家」がゴロゴロしています。結構読み込んでいる方でも「名前はちょくちょく見掛けるけど、読んだことはないなぁ」という作家の思い当たりが幾人かあるはずだ。六塚の経歴を簡単にまとめますと、「04年:『タマラセ』でデビュー、1年半を要し全6冊で完結させる→06年:『レンズと悪魔』開始、合間に単発作品や新シリーズを挟みつつ09年に全12冊で完結→10年:『墜落世界のハイダイバー』」ってなふうになります。つまり、『タマラセ』および『レンズと悪魔』が代表作となるわけですが、この2作の知名度は……解説するまでもなく、皆さんがご存じかどうかを確認するだけで事足りるでしょう。「六塚もそろそろ一発くらい当ててもイイよね」、要はそんな具合です。

 さて、話を『墜落世界のハイダイバー』に戻します。「イセス・メリア」という異世界が舞台となる魔法ファンタジーで、主人公を含む少年少女3名はある日突然に現代日本からこの世界に墜ちてきてしまう。そして主人公の八浦要は巨乳の引導士(ハイダイバー)に救われ、イセス・メリアで生き延びていくために引導術を叩き込まれる。ありがちと言えば、ありがち。大枠はさして目新しいところのないライトノベルと言えます。んで、話のキーとなる引導術とは何か? を説明しますと、イセス・メリアは5つもの月が浮かんでいるせいか、人間の意志で引力をある程度制御できる不思議な環境が整えられています。自分自身を下方に押し付けている引力を、たとえば真上に動かすことで、大空の真っ只中へ墜ちていくことができる。「飛ぶ」のと「墜ちる」との違いはつまり引力方向、見た目は飛んでいるようでも本人は頭上への墜落感を覚えており、また血液も当然頭の方に昇っていく(下がっていく?)こととなります。『終わりのクロニクル』で言うところの5th-Gの概念です。引導術は術者本人のみならず周りの物体にも力を及ぼすことができる(ただし自分以外の生身の人間には効かない)ので、詰まるところハイダイバー同士のバトルは「大質量のぶつけ合い」っつー恐ろしく原始的な境地に辿り着きます。小石くらいじゃ決め手にならず、サーフボードみたいな形状をした金属の塊を突っ込ませ、上半身と下半身がズバッシャアッと分断されるグロい結末で以ってバトル終了となる。イメージとしてはカタパルトの撃ち合い、いや、終いには浮き島すら引力で動かすからほとんどマスドライバーの領域です。この設定を知った時点で思ったものでした。「ああ、六塚、これはアニメ化の欲を捨てたな」と。いくらヒロインが巨乳でバトルのたんびに乳揺れまくりとはいえ、毎回敵が真っ二つになったり潰れて血煙と化したりするのはちょっとキツいでしょう、規制とかが。日光さんや靄状の雲さんが頑張りすぎてしまう。

 「ヒロインが巨乳」で思い出しました。イセス・メリアにおけるハイダイバーのランクはカテゴリAからカテゴリGまでの7つに分けられています。日本から墜ちてきた人々はGすら超えるポテンシャルを持っているため「オーバーG」と呼ばれており、厳密に言えば8つなんですが……実はこのランク、女性のハイダイバーに限って「カテゴリと胸のカップサイズ」が一致する仕様なんです。「カテゴリFの実力を見せてやる!」と吼えるのは「私はFカップでぇす」とアピールするも同義。またイセス・メリアでは胸のサイズがそのまま社会階級に直結する「おっぱいカースト」を採用しており、巨乳は貴族として持て囃される反面、貧乳は下層民として蔑まれ、少しでも逆らえば石打ちの刑で処刑される、奴隷や家畜に近い扱いとなっています。「引導術が使えれば自然と全身の血行が良くなるため、優れたハイダイバーは必ず巨乳になる」と一応の説明は成されていますが、「貧乳は悪だ!」と叫んでガチに迫害している描写はさすがにヒく。あえてバカバカしく表現することで差別というものの理不尽さをストレートに伝える、という手法なのかもしれませんが、「これでまたアニメ化が一歩遠ざかった」と呟くより他ありません。さすがに日光さんでもフォローできない。また、本質が「大質量のぶつけ合い」であるがゆえにほんの一瞬で決着が付くことも少なくないハイダイバー戦では「相手の注意を引く」ことが重要で、だからこそ異性の目を引く巨乳は尚更有利――男のハイダイバーは揺れる乳に気を取られて死ぬこともある、それを防ぐためにわざわざ去勢した奴までいるなど、サラッと間抜け且つエグい情報が開示されることもあり、「なんつーか見た目よりもハードでヘンテコなライトノベルだな……」と戸惑う新規読者の顔が目に浮かびます。「明るくオフビートのようでいてなにげにエグい」のが六塚の作風、告げられるのはただただ「慣れろ」の一言です。勝つために手段を選ばないタイプの女性ハイダイバーは「わざと胸を晒す」のも戦術に加えているそうですから状況によってはポロリもあるよ、やったね!

 情感をかなぐり捨てた簡素極まりない文体、異世界に紛れ込んで帰る術もないのに割合あっさりと順応していく主人公たち、そして「死因は巨乳」が冗談で済まされない世界と、全編を構成する諸要素からして明らかに万人ウケすることはないであろう新シリーズです。表紙の巨乳イラストに釣られ、期待のしどころを間違えた人がページを繰れば「なんぞこれー!」と怒り出して壁にハイダイブさせるやもしれません。が、「おっぱいは無敵」「引力制御により巨乳は決して垂れない」「そして常時揺れっぱなし」「エロダイバーよ、おっぱいに生き、おっぱいに死ね」なストーリーを笑って受け入れられる人ならば大丈夫。ヒロインの揺れ乳を目一杯妄想して股間を堅くしましょう。そしていつの日かアニメ化が果たされ、「今期のおっぱいアニメ」と認定される未来を夢見ましょう。せめてコミカライズだけでもしてくんないかな、これ。

・拍手レス。

 封仙娘娘は「最終巻上下巻の応募券で完結記念プレゼントキャンペーンに応募出来ます」だったはずが「下巻が出るまでに間が空きすぎたので上、下どちらかの応募券だけでも応募出来るようにしました」とオビに堂々と書く開き直りが凄いなあと思いました。しかも途中で表紙の仕様が変わったため並べると最終巻だけ浮く・・・。
 そんな大団円の下巻さえ今や入手困難というのだから世知辛い。


2010-09-05.

・深夜にアニマックスでやっていた今敏監督追悼番組を観たおかげで睡眠時間が減り今もちょっと眠い焼津です、こんばんは。

 放映されたのは『東京ゴッドファーザーズ』『パプリカ』の2作品。今敏監督映画は『PERFECT BLUE』『千年女優』しか観たことがなかったので、このラインナップは渡りに舟でした。『東京ゴッドファーザーズ』はクリスマスの夜、3人のホームレスたちがゴミ捨て場を漁っていたところ、元気な声で泣く赤ん坊を見つけてしまい……という、ややコメディチックなヒューマン・ドラマ。ホームレスのひとり「ハナ」は長身のオカマで、「女の子が欲しい」とずっと願っていたため、他のふたりが「警察に届けよう」と説得してもなかなか応じない。とはいえ明日の我が身も知れぬ暮らしにあって赤ん坊の世話を診ることもままならず、「警察には行かない、直接この子の親を探しに行く」と代案を出し行動する。基本的にはこの3人の珍道中をメインに描いており、ところどころで起こる偶発的というか運命的な人間関係の交錯が物語を加速させていきます。アニメよりは実写映画に近いノリですね。似たような作品が既にありそう。ってか、ウィキペに『三人の名付け親』(3 GODFATHERS)に着想を得たとの記載が。「居場所を求める」ことと「居場所を与える」ことが表裏一体になっている様子を淡々と綴る内容で、クライマックスの見せ場以外は地味だったし、「何が何でも見ろ!」と他人に薦めるほどの熱意は湧かなかったが、エンドロールが流れるところでホッとして「観てよかったな」と自然に思えました。騒々しくも静かな傑作。

 『パプリカ』は筒井康隆原作ということで、如何にもそれらしいイカれたセリフが頻出するものの、想像していたよりは大人しかったかな。他者と夢を共有し、その夢をヒントとして治療に役立てるサイコセラピスト――彼らが仕事をするうえで欠かせない装置「DCミニ」が、研究所から盗み出されてしまう。開発途中でアクセス制限の掛けられていない機体だったため、盗み出した犯人は無制限で他の機に繋がることができる。DCミニを介して人々の夢へ侵入し、容赦なき侵犯を開始する犯人。覚醒したまま夢に囚われた人々は精神に変調を来し、極度の錯乱状態に陥っていく。事態を収拾するため、セラピストの千葉敦子は「パプリカ」という己の分身を駆使して立ち塞がる悪夢の中へと切り込んでいくが……平たく言えばサイコダイバーものです。今年上映された『インセプション』同様、「夢だから何でもあり」のイマジネーション炸裂な派手派手しい映像美が見所となっている。個人的に「夢だから何でもあり」はあんまり好きじゃないというか、たとえフィクションであっても他人の夢の話なんか聞きたくない(その割に自分の見た夢については語りたがる)ので大筋にはさほど関心が持てなかったものの、ヒロインのあっちゃんがすごく美人だから自分の好みとかどうでも良くなった。こういう切れ長の目をした涼しげな美女(でも内面は熱い)がアニメで主役を張るのはレアケースであり、物珍しさも手伝って最後まで眠気を覚えずに視聴することができました。声優を務める林原めぐみのあっちゃん/パプリカ演じ分けも巧かった。映画化するうえで内容にもだいぶ手を加えたとのことですから、いずれ筒井康隆の原作も読んでみようかしら。

・再版されていないのか、現在ほんのり入手困難となっている『火星ロボ大決戦!』の全3巻セットが手頃な値段で古本屋に並んでいたので即ゲットし、即読了。去年、『ダイミダラー』で「なかま亜咲いいじゃん」と感心して既刊を漁ろうと本屋に行ったら、いっそ見事なほど店頭から消えていた(『火星ロボ』のもっとも新しい3巻目すらどこにも置いてなかった)ので大いにビビったものでした。

 内容自体はドスケベ乱舞で『ダイミダラー』とほぼ一緒のノリっつーか、要するにこれ『ダイミダラー』を4コマ漫画にしただけなんじゃ……正確に書けば『ダイミダラー』が「4コマ形式をやめた『火星ロボ』」なんですが。この漫画、リョジョーク行為があまりにもサラッと流されすぎではないかい? エロ以外も非常にテンポが良くて夢中になりました。下ネタの多さもさることながら、なかま亜咲はとにかく「お約束の破壊」にこだわります。「ゲゲゲ 一つ忠告しておコう 同じ五人衆だからといってこの私をフルボルトと同列にはみないこトダ」「ヤツは五人衆の中でもナンバー2! 私はナンバー5なノだ!!(ドン)」「ナイス下っ端!!」だとか、「火星ロボはもう私の敵ではナイのダ!!」「貴様っ!」「味方になってくれるのかい?」「ならねーヨ!!」だとか、終始この調子。言葉尻を捉えたり揚げ足を取ったりおっぱいを揉んだりするのが大好きみたいです。勢い任せな作風は若干OYSTERに通ずるところがあるかも。でも「ロリ顔の巨乳」として出てきたペンギン帝国の司令官がだんだんロリ顔っぽくなくなっていくのはなんでだ? そこが一番気になりました。次に気になったのが、鬼八頭かかし弄りのネタを結構仕込んでいること。このふたりは義兄弟か何かなのか?

・その鬼八頭かかしの新刊『ぱんつぁープリンセス(1)』も程好いエロスとイカレたギャグの混合で素晴らしかったです。

 主人公のお姫様が「ミーティア・コモンズ」で、従者の少女たちは「サーシャ・スケジャブロー」と「アーシャ・カクノジン」……つまり水戸黄門と助さん&格さんに見立てた一種のパロディになっています。そして「この紋所が目に入らぬか!」の紋所が印籠ではなくパンツにプリントされています。ゆえに「ぱんつぁープリンセス」。正体を明かすたびにスカートをめくってパンツを晒さなくてはならないのだから、恥ずかしがりやのお姫様にとってはかなりの羞恥プレイとなる次第。そもそもミーティアの使う魔法というのが「羞恥魔法」――恥ずかしければ恥ずかしいほどに威力が増す変態版酔拳と言うべき代物なので、全編通してひたすら辱めに耐えるしかありません。エロマンガっぽく表記すると「恥辱のプリンセス」。萌え4コマ風に直すと「ちじょぷり!」。普通に露出狂の少女とか出てきますので「痴女」と受け取られても間違いではない。

 とにかく、涙を浮かべて羞恥に打ち震えるミーティアがあまりにもエロ可愛すぎておっきせざるを得ない内容でした。丸っこい絵柄は少し癖があるものの、慣れると却って異様な興奮を催すのだからたまらない。読めば読むほど熱が入る。敵もみんなスケベばっかりで、戦いながら「どうした!! 防戦一方じゃないか!! いいのは尻だけか!? ああ!?」とセクハラするツワモノっぷりを発揮するのだからトコトン畏怖させられました。パンツの紋所が披露されるや否や「ミーティア姫 頭が高うございました……(ばっ)」「わ!! 頭が低い!! そんな角度から見ちゃだめぇぇぇっ!!!」と腰砕けなシーンへ入るあたりにも脱力的な笑いを誘われる。お色気とユーモアが絶妙なハーモニーを奏でており、ぶっちゃけお色気だけが目当てで買った当方にも予想外の嬉しさを与えてくれました。しかしこれ、ダイミダラーのパイロットと羞恥魔法の使い手がコンビを組んだらドエロい、いや、ドエラいことになりますな。「パイロットがエロいことをすることによってダイミダラーのエネルギーが増大→羞恥魔法の使い手もエロいことをされたせいで魔力を増大」、つまり二倍の戦力になるわけだ。作者はふたりとも仲イイみたいだし、そのうちコラボネタやってくんないかしら。

・拍手レス。

 6502『食前絶後!!』は僕の舌にあった絶品でした おかげで封仙娘娘というオードブルから食欲を掻き立てられて、デザートまでの間長ーく焦らされ実はもう閉店してるんじゃないのかというコースを味わいました 空腹だったためこれ以上ないという絶品コースでしたがね 新しい皿はどんな味かなー楽しみです
 『チェーンソーを砕く復讐者(上)』が発売される未来を幻視しました。下巻を待つファンが飲むコーヒーは、苦い。

 STEINS;GATE始めました。不確定世界の探偵物語を思い出しました。うみねこを
 プレイしていると、黒死館を思い出します。

 すべてを積んでいる当方に隙はなかった。間違い、隙しかなかった。

 終わクロのドラマCD、復刊ドットコムだと泣かず飛ばずですね……。http://www.fukkan.com/fk/VoteDetail?no=50382
 価格設定が高め(通販で4500円)だったせいですかなぁ。冊子だけでも再販してくれれば言うことありませんが、望み薄。


2010-09-01.

お前らマンガばっか読んでないで小説読め、SF、ミステリー…どれも面白いぞ(こっちは必死なんだよ(#^ω^))

 小説ばっかりに偏るのもバランスが悪いからマンガ→小説→映画(orアニメ)という三角食べを推奨したい。いやダメだ、これだとエロゲーが抜けてしまう……さておき、最近読んだ小説では石持浅海の『八月の魔法使い』が地味っぽいサラリーマン・ミステリながらなかなか面白かったです。会議の最中に「報告されていなかった事故の報告書」が出てきて会社の上層部がてんやわんやする話。二つの視点を交互に使って進行していきますが、どちらも舞台が固定化しており、映像化すると制作費が非常に安上がりで済むでしょう。こういうのもソリッド・シチュエーションと呼ぶのかな。八繋がりで読んだ……というわけではないが、角田光代の『八日目の蝉』も良かった。題材が「嬰児誘拐」と、いかにも重そうなお膳立てだけに長らく敬遠していましたが、さすがドラマの原作にも選ばれたほどで読み応えは充分。食わず嫌いしていたことを後悔しました。「攫われた子供」が成長して主人公を務める第2部が特に圧巻です。ほか、コメディタッチの政治小説『民王』、島原の乱で槍働きした回想が興味深かった時代小説『侍の翼』なども収穫でした。

・今月の購入予定。

(本)

 『境界線上のホライゾンV(下)』/川上稔(メディアワークス)
 『桐咲キセキのキセキ』/ろくごまるに(ソフトバンククリエイティブ)
 『ふおんコネクト!(4)』/ざら(芳文社)
 『隻眼の少女』/麻耶雄嵩(文藝春秋)
 『エウスカディ(上・下)』/馳星周(角川書店)

 今月は桜庭一樹の『赤朽葉家の伝説』が文庫化。直木賞の候補作に選ばれ、桜庭の名を押し上げることに一役買った長編です。女三代に渡って繰り広げられる郷土史サーガであり、そういえば『製鉄天使』という番外編が既に上梓されていたが読むの忘れていた……さておき、『赤朽葉家の伝説』の発行元である東京創元社を含め、今月は海外ミステリの注目作が目白押しとなっています。MWA賞処女長篇部門にノミネートされたが受賞は逸した『湖は餓えて煙る』(ちなみに作者はピュリツァー賞受賞者)や、キャロル・オコンネルの新刊『愛おしい骨』(どうも単発モノらしい、マロリーシリーズの続きはまだか)、サラ・ウォーターズの新刊『エアーズ家の没落(上・下)』(ブッカー賞最終候補作)、『スラムドッグ$ミリオネア』の原作者の新刊『6人の容疑者(上・下)』、昨年このミス1位を獲ったドン・ウィンズロウの新刊『フランキー・マシーンの冬(上・下)』、「クイーンの定員」であるものの日本では「放心家組合」などがアンソロジーにちょこちょこ掲載されるだけだった探偵ウジェーヌ・ヴァルモン(ユージーヌ・ヴァルモン)の活躍をまとめた短編集『ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利』と実に盛り沢山だ。

 『境界線上のホライゾンV(下)』は2ヶ月ぶりの新刊。上巻と下巻が2ヶ月連続刊行だっただけに、たった2ヶ月でも随分と待たされた気分になるから不思議だ。今月の電撃文庫は竹宮ゆゆこの新シリーズ『ゴールデンタイム』も注目作です。個人的には新人のデビュー作『月光』も気になるところ。タイトルだけ見てると誉田哲也の同題作品と取り違えそうでややこしいな。『桐咲キセキのキセキ』は6502奇跡の新刊。封仙娘娘完結からもう1年半も過ぎたのか……あんまり65っぽくないタイトルに微かな不安を抱いたが、チェーンソー掲げて見下ろす銀髪娘の表紙を見て少し安心した。間違いない、『食前絶後!!』で条理を突き破ってニヒルなまでのギャグを披露した6502のご帰還だ。ところで『食前絶後!!』を「くうぜんぜつご!!」と読むことを今更知って驚きました。ずっと「しょくぜんぜつご」だと思っていたもので。『ふおんコネクト!(4)』は複雑な人間関係を高密度なネタで処理した「ハマる人はとことんハマる」4コマ漫画の最終巻。4コマで4冊なら保った方だよね。そういや『けいおん!』も今月の4巻で完結するんだっけ。一方、4巻費やしてまだ肝試しが終わらない『かたつむりちゃん』なんて4コマ漫画もきららにはあったり。『隻眼の少女』は待ちに待って、待ち焦がれ、待ち侘びて、待ち呆け、待ち狂い、待ちくたびれてなお待ち続けた麻耶雄嵩の新刊。チャンピオンの連載漫画風に表記すると「マチマチ」。今でも「本当に出るのか……?」と半信半疑です。440ページとなかなかの分量になった模様であり、本当に出るならばこれほど嬉しいことはない。緻密につくりあげた世界を徹底的に壊して晒す手腕から「大破局(カタストロフィ)」の二つ名をほしいままとする麻耶。彼ならではの凄みを見せてくれるだろうと期待しています。『エウスカディ(上・下)』、タイトルはスペインの北部、バスク地方を指しているらしい。バスク語ではバスクのことをエウスカディと呼ぶそうだ。そこが舞台になるのかな? 馳の小説は台湾を舞台にした『夜光虫』、バンクーバーを舞台した『ダーク・ムーン』、バンコクを舞台した『マンゴー・レイン』などがあり、海外を材に取った作品は別段珍しくない。どうせやってることはいつも通りでしょうしな。

(ゲーム)

 『るいは智を呼ぶファンディスク−明日のむこうに視える風−』(暁WORKS)
 『BALDR SKY DiveX "DREAM WORLD"』(戯画)
 『fortissimo//Akkord:Bsusvier』(La'cryma)

 当然、今月の本命は『魔法使いの夜』――と書きたかったが、ご覧の有様だよ。つくづくTYPE-MOONもふざけたメーカーになってくれたものだ。「『まとめて発送』にしてたんだ……なのに、まほよのせいで全部遅れるじゃないか!」と激怒するシナリオもありえたが、るい智FDだけは個別に予約を済ませていたので被害は最小限に留まった。バルスカは本編を全然やってない(バルフォすら終わってない)ので積むこと確実だったし、『fortissimo//Akkord:Bsusvier』(フォルテシモ アコルト:ビーサスフィーアと読む)という長たらしくてとりあえず「最強さん」と略したくなるソフトを予約したのは単なる衝動買いだったし、怒ることは怒ったけど「激怒」というほどでもないな、ってところ。で、この最強さん、本編そのものは全年齢向けなのに、エロエロ特典付きの「18禁特典同梱版」を同時発売するという謎の挙動を見せている。まるでスタッフのつくったエロ同人誌をあらかじめ紛れ込ませておくが如き奇怪な商法だ。最強商法とでも名付けようか。『ゴスデリ』といい、なぜ厨二系のエロゲーは濡れ場関連が取って付け臭くなってしまうのか。なぜ『村正』はメイド服着用した村正の本番シーンを収録しなかったのか。あ、思い出して腹が立ってきた……早く邪念編で妄想補給せねばなるまい。

 今月はアニメのDVD・BDも注目作が多いです。『劇場版 Fate/stay night UNLIMITED BLADE WORKS』のほか、『学園黙示録』、『世紀末オカルト学院』、『ストライクウィッチーズ2』の1巻が発売される。「Fate(破滅)」やら「黙示録」やら「世紀末」やら「ウィッチ」やら、なにげに禍々しい言葉が並んでますな。洋画は『処刑人2』と『パリより愛をこめて』が要注目。パリ愛は流行っているのか何なのか、最近よく見かけるDVD&BDのセットです。あれっていったい誰が得するんだろう……「オレBDしか見ないから、DVDのディスクはお前にあげるよ」みたいな使い方を想定しているのか? 『処刑人2』はDVDと、1と2両方合わせたDVDツインパック、それにBDツインパックの3種類が予定されていて、『処刑人2』単体のBD発売は今のところ予定されていない。BDで見たけりゃ1とのパックを買え、というわけ。1もBDで見たい、というファンにはむしろうってつけかも。amazonとかで買ったら5000円ちょっとですし、そんなにクソ高い価格設定でもない。高画質や高音質に執着しないのであればDVDパックがお買い得です。『処刑人 アナザーバレット』は類似品(ですらない)ので間違ってもポチらないように。関係ないけど最近 "44 Inch Chest" という映画が気になっています。主人公が妻の不倫相手を攫ってきて痛めつけるクライム・ムービーらしい。予告編を見るとこれでもかとばかりにオッサンだらけで胸が熱くなる。「内容は初期のガイ・リッチー風」ってな話もあり、日本公開を今や遅しと待つ日々です。あとサミュエル・L・ジャクソン主演の "Unthinkable" とフランシス・コッポラのモノクロ映画 "Tetro" と『狼よさらば』の系譜に連なりそうな自警(ヴィジランテ)モノの "Harry Brown" とフランス映画の "Un Prophet" も早急にお願いな(さも映画通のように未公開作品を列挙してみせましたが、単に米amazonで "44 Inch Chest" を検索してクリックしてから「Customers Who Bought This Item Also Bought(この商品を買った人はこんな商品も買っています)」欄に表示されたソフトをチェックしただけです)。

 ああ、そうそう、うっかり忘れるところだったけど、今月もうちょっとしたらダブルブリッドのイメージアルバム『Depth Break』が出ます。ハードカバーの書き下ろし短編小説も同梱されるのでファンはご一考されたし。当方は……どうしよう。後の祭りになって悲しむ可能性を排除するため、早めに押さえておこうかな。終わクロのドラマCDで特典に没原稿(終わクロ最終巻はあまりにも分厚かったため80ページほどカットされたシーンがある)を収録した冊子があることを知りつつスルーしてしまった過去をちょっと後悔しているだけに、「迷うなら買え」な気持ちが芽生えてきていることは確かであります。

・拍手レス。

 「惑星のさみだれ」最終回は、よかったですよ。小冊子も9月末までの申し込みですので、お忘れなく。
 これですか、初めて知りました。情報ありがとうございます。応募用紙をゲットすべく、これからマッハでアワーズを買いに走ります。(出発)
 (帰宅)近所の書店に1冊だけ残ってました。応募用紙のみが目当てだったのに、ドリフターズの小冊子が入ってたり竹山祐右の新連載があったりして得した気分。


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