2009年12月分


・特集
 2009年振り返り(その1−ゲーム、映画編)
 2009年振り返り(その2−漫画編)
 2009年振り返り(その3−小説編)


2009-12-31.

・大晦日です。2009年が終わるなど、未だ信じられぬ焼津です、こんばんは。大晦日どころか、今が12月だという自覚すら乏しいってのに……時の流れはまこと残酷無惨なり。

・ともあれこれでラスト。締めくくりとなりますのは小説ランキングです。

〔小説〕

 ああ、今年は250冊くらいしか読めなかった……この10倍はこなさないと積読など片付きゃしません。しかしそれは時間的に無理だし、仮に可能だとしてもそこまでやったら楽しくなくなるどころか頭がおかしくなる。困ったものだ。ランキングは「一般文芸」と「ライトノベル」に分けています。短編集は両手で数えられるほどしか読まなかったため充分な弾が揃わず、仕方なしに「短編」部門は廃止いたしました。

(一般文芸)

第1位 『乱反射』
第2位 『弥勒世(上・下)』
第3位 『非の王(全4巻)』
第4位 『応化戦争三部作(未完)』
第5位 『ボックス!』
第6位 『儚い羊たちの祝宴』
第7位 『武士道セブンティーン』
第8位 『阪急電車』
第9位 『秋期限定栗きんとん事件(上・下)』
第10位 『独白するユニバーサル横メルカトル』

 新刊は逐一チェックしており、チェックすることに精力を傾けすぎて積読の消化が捗らなかったという本末転倒な事態に直面しつつも、辛うじてベスト10を組めるだけの良作とは出会えました。『乱反射』は貫井徳郎の長編。直木賞の候補にも挙がりましたが、惜しくも受賞は逃しました。「不幸な事故」によって我が子を喪った父親が、新聞記者という己が職ゆえの取材力を駆使して死の原因を突き止めていく、なんとも重たい一冊。一種の群像劇であり、ミステリにしてはほとんど謎解き要素がなく、展開も御都合主義や牽強付会が目立つ。直木賞を取れなかったのも仕方ない、という部分はあります。が、断崖に向かう過程を綿密に描き、奈落へ消えた愛し児の影を執念のみにより捜し求め続ける主人公の姿を息苦しいまでに活写した点は理屈を越えて胸に迫るものがある。力作の割にあまり評価が振るわなかった本ですが、個人的には2009年における堂々の1位としてトップに据えておきたい。『弥勒世』は返還前の沖縄を舞台にした時代ノワール。去年出たものです。今年も馳の新作はちゃんと刊行されましたが、残念なことに崩し切れなかった。さておき『弥勒世』、『不夜城』でのデビュー以来ずっと「マンネリ」や「劣化」という批判に晒されてきた馳星周だけあって、過去の作品の焼き直しじみた箇所は多々あるが、「それが俺だ!」と言わんばかりの開き直りで全力投球してくれた。じりじりと空気の焦げるような匂いが伝わってくる馳文体、やはり心地よい。上下合わせて1200ページ近く、ファンじゃない方にはなかなか薦めがたい分量ながら、幸い当方はズブズブの馳ファンであり、大いに堪能させてもらった。『非(あらず)の王』は『孤狼の剣』『凄艶の牙』『業火の剣』『紅蓮の牙』の4冊から成る時代伝奇小説。剣聖・伊藤一刀斎が「小野善鬼の生まれ変わりだ」と確信するに足る赤子を育て上げ、「伊藤善鬼」として野に放つまでを綴った『孤狼の剣』が飛び抜けて面白い。進むにつれて勢いが落ちていき、3巻以降は少々物足りなかったりするものの、伊藤善鬼の生涯を最初から最後まで丹念に描き切った快作です。殺戮シーンが多いため血の気が多い話は苦手、という人にはあえて薦めませんが、「ぶっ殺し系? 超オッケー」というあなたは是非。

 応化戦争三部作は『裸者と裸者(上・下)』『愚者と愚者(上・下)』『覇者と覇者』の7冊から成る。残念ながら途中で作者が急逝したため未完となっています。恐らくあと200ページくらいあったら完結できていたと思うんですよね。感覚としては「全10巻予定だったのに、9巻までしか出なかった漫画」といったところ。各地で軍閥が幅を利かし、内乱状態に突入してしまった近未来の日本(応化はその時代の元号という設定)で、少年兵として動員された子どもや、AKを手にギャング化した少女たちが獰猛な時代をしぶとく生き抜いていきます。字がみっちり詰まっているタイプの小説ゆえ読む際には若干気力が必要だが、一度適応すると後はずるずる引き込まれる。本当、完結しなかったことがただただ悔やまれるトリロジーだ。『ボックス!』はボクシングを題材に取った熱く爽やかなのに、どこかドロドロしている青春小説。ソフトカバーということもあってパッと見じゃ厚くなさそうに映るけれど、約600ページものボリュームが一冊に詰まっている。平易な文章、分かりやすい筋立て、なのに「続きが気になる!」とグイグイ引っ張られていきます。弱々しかった主人公が努力と根性を発揮し、なけなしの才能を磨き上げることで、少しずつ強くなっていく……なんていう、今じゃもう少年漫画すらやらなくなった泥臭いストーリーを丹念かつ几帳面になぞる、その揺るぎなき姿勢に惚れること請け合い。「展開が遅い」というのはこの場合、むしろ褒め言葉ですね。『儚い羊たちの祝宴』は「奇妙な味」系統に属する連作サスペンス。毎回「バベルの会」という読書サークルがちょこっとだけ話題に上る以外、特にこれといって繋がりのない作品たちが、「儚い羊たちの晩餐」というラスト一編で集約される。そうした構成とは別に、個々の編のクオリティが高く、「奇妙な味」好きにはたまらない。「玉野五十鈴の誉れ」は屈指の傑作。とはいえ後味の悪い話がほとんどですから、黒よねぽ(米澤穂信のダークサイド)に馴染めない方は回避推奨。

 『武士道セブンティーン』は「武士道」を冠した女子剣道小説三部作の第2弾、つまり真ん中に位置する一冊。『武士道エイティーン』も既に刊行済ですが、まだ冒頭しか目を通しておりませぬ。すみません。早苗と香織、スタイルも性格もまったく違うふたりの少女がぶつかり合い、特別な友情とライバル意識を育んでいく汗臭さ控えめスポコン青春ストーリー。百合臭も控え目ですが、そっち趣味の人が読むと割合反応する箇所があったりするのかもしれません。真っ向からぶつかり合った『武士道シックスティーン』に対し、今回は片方が転校して会う機会自体が減ってしまうため、「衝突と和解」の要素が希薄になっているきらいはあります。しかし、各々が各々の判断で成長していく過程をしっきり切り取って描き出しているので、なかなか盛り上がる。時間を忘れて読書に耽る喜びが久々に得られました。誉田哲也作品はいきなりガツンと来るタイプじゃなくて、一冊、二冊と続けて読むうちにジワジワとハマってくスルメ的なパターンに該当しそう。『阪急電車』は電車内や駅の周辺に舞台を限定したささやかな日常連作小説。だいたい一作ごとに語り手が変わりますが、細かいところで話が繋がっていたりします。ひと駅ごとにエピソードが設定されており、半ばまで読み進めたところで「折り返し」に入って今まで経てきた駅を逆に辿っていく……っつー構成も実に心憎い。一編一編が短くスッキリまとまっているのでダレがなく、サクサクと一気に読み通せます。文庫化したら、これをポケットに忍ばせて阪急電車に乗る人も現れるだろう、などと考えて無性にワクワクしちゃうぜ。『秋期限定栗きんとん事件』は“小市民”シリーズの第3弾。秘密や謎があれば嗅ぎ回らずにいられない卑しき探偵の小鳩くんと可愛い顔して復讐の鬼な小佐内さんがコンビを解消、それぞれ彼氏彼女をつくって平凡な日常を謳歌するが……上下巻の割に一冊一冊が薄く、「これなら余裕でひとつにまとめられるのでは?」と思わなくもないが、小鳩くんと小佐内さんがほとんど顔を合わさずに終わってしまう意表を衝いた展開で終始やきもきさせてくれた。「ただ長いだけで密度は薄い」と指摘する声もあるが、その分たっぷりと底意地の悪いよねぽ節を味わえたのだからヨシとします。『独白するユニバーサル横メルカトル』はこのミスで1位を獲得して話題になった短編集。それも3年前のことであり、こうして話題に上げると今更感が漂うな。怪談実話の名手として鳴らした経歴があるだけに、語り口は一級品。表題作は「地図の一人称」と発想からして秀逸。アイデアが突飛過ぎて呆気に取られたり、猟奇描写や残酷描写の過激さに眉を顰めたりするかもしれませんが、一度ハマると底無し沼。もう平山なしでは生きられませんね。

(ライトノベル)

第1位 『戦闘城塞マスラヲ(全5巻)』
第2位 『境界線上のホライゾンU(上・下)』
第3位 『ソードアートオンライン(1〜2)』
第4位 『アスラクライン(1〜13)』
第5位 『鉄球王エミリー』
第6位 『偽物語(下)』
第7位 『アクセル・ワールド(1〜2)』
第8位 『お・り・が・み(全7巻)』
第9位 『アイゼンフリューゲル』
第10位 『へヴィーオブジェクト』

 まさかマスラヲが1位になるとは……自分で決めて書いたことなのに、つい驚愕しちゃいます。今年になるまでまったく注目していなかったシリーズですからね。ミスマルカがそこそこ良かったので、今年完結した『戦闘城塞マスラヲ』とか旧作の『お・り・が・み』にも手を伸ばしてみるかな、なんちゅー至って軽い気持ちで手を伸ばしたのに、結果として2作ともベスト10に食い込む結果となりました。ぶっちゃけどちらのシリーズも1巻や2巻の時点では、そこまでメチャメチャに面白いってわけでもありません。しかしどちらも、半分過ぎたあたりを境目にしてグングンとメキメキと面白くなっていき、確変起こして大フィーバー。後半の追い上げが凄まじいことこの上ありません。勢い任せで考えなしな部分も多々あり、決してすべての人にオススメできる作風じゃないにしろ、個人的には両方ともが心の底から「読んでよかった!」と思えるシリーズでした。進むにつれて残りページ数が少なくなっていく、ごく当たり前の事実さえもが寂しくなってくるほど没入した。あの瞬間だけ、文庫の紙束が現金の札束に勝る魅力を放っていましたよ。俗な喩え方ですみません。マスラヲは自暴自棄になったニートが口先だけでのしあがっていく異色の超常バトル、お・り・が・みは普通の少女に過ぎなかったヒロインが借金のせいでデタラメな世界に足を踏み入れて調教され順応していく伝奇アクション。ギャグとシリアスの配合が独特で、少しえげつないところもある。合う人はかなり合うはずです。合わない人は……あー、すみません、先に謝っておきます。『境界線上のホライゾンU』は遠未来の人々が「歴史再現」なる名目のもと、神州(日本)上空でアルマダ海戦を繰り広げたりするブッ飛びSFファンタジー。分厚さで話題になったTよりも更に厚みを増し、上下合算して2000ページ以上というアホみたいなボリュームで読者を圧倒。ちなみに1位のマスラヲは5巻全部を合わせても1600ページ弱です、と書けば境ホラのバカバカしいまでの厚さが伝わるでしょうか。下手な読み方すれぱ親指を攣ることになります。ネタは盛り沢山だけど、キャラクターの増加に伴って視点の拡散が甚だしくなり、勢い自体はTに比べて落ちている……と感じたこともあって2位に下がりました。下がっても2位止まりなのですから、地力の高さが異常だ。語り出すと止まらなくなる話なので、細かい説明はオミット。知らない人は機会があれば読んでみてください。ハマれば「新しい……価値観!!」に目覚めること必定です。『ソードアートオンライン』は元がネット小説で、大変好評を博したらしいが、書籍化するまで本文を読んだことはなかった。MMORPGをベースに、「ヴァーチャルリアリティの世界から脱出することができなくなった」という魅惑的な設定で進行していく。「ゲーム上の死」が「現実上の死」に繋がる、文字通りのデスゲーム。読む前は高畑の『クリス・クロス』を連想したが、時代の差も影響してか、読んでいる間はまったく思い出すことがなかった。主人公が「孤高で最強な俺」という中学生の妄想を体現するようなキャラのため、一部の人には激しい拒否反応が出るかもしれません。いざとなれば超必発動で強敵を瞬殺とか、行く先々で無自覚に女を惚れさせるとか、そういうノリに耐性があって且つ楽しめるのであればこの上なく面白いシリーズなんですけどね。ネット上が舞台なのは2巻までで、3巻からは現実世界へシフトするそうな。まだ読んでおりません。

 『アスラクライン』は三雲岳斗の作品で初めてアニメ化したシリーズ。話そのものはまだ続くものの、本編は13巻で完結なので、読み出すなら今がうってつけ。無垢な乙女を捧げることで起動する巨大ロボット「機巧魔神(アスラ・マキーナ)」を手にした少年が、「滅亡をリセットした二度目の世界」で様々な人々と出会い、激しい運命の渦に呑み込まれ翻弄されていく。最終目標が「世界の終焉を防ぐ」であり、途中で時空を超えて「かつて滅亡した一度目の世界」へ遡ったりするなどなかなか壮大な展開が多いものの、ほとんどのページが個々人のドラマに割かれているため、意外と感情移入しやすい。「悪魔との契約=性交渉」という設定を据えながら一度も濡れ場がない(準濡れ場的なシーンすらない)あたり非常に残念であるが、三雲岳斗の強みである「大勢のキャラクターそれぞれに見せ場を与えて捌き切る手腕」は見事に発揮され、7巻以降はドッカンドッカン盛り上がります。スロースターター気味で1巻や2巻が少しかったるいこと、13巻のラストが呆気ないことは減点材料ながら、なんだかんだで「読んでよかった」と思える出来でした。『鉄球王エミリー』は“鉄球姫エミリー”シリーズ第5弾にして完結編。遂に宿敵「血風姫ヴィルヘルミーネ」との対決が幕を上げます。1作目だけ話題になって2作目以降は忘れ去られてしまったシリーズだが、個人的に「ビミョー」と感じたのは2冊目だけで、3冊目以降は衝撃的な展開と火を噴くようなバトルで熱狂させてくれました。終わり方がやや打ち切りっぽいとはいえ、戦闘シーンの迫力はスーパーダッシュでも1、2を争うほどだし、もっと手に取られてもいい話だと思う。同作者の新シリーズ『神剣アオイ』も始まりましたが、こっちはまだエンジンがあったまってない感じ。次作以降に期待。『偽物語(下)』は上巻で眼球舐め嗜好(オキュロリンクタス)と判明したアラムギさんが「もうお兄ちゃん、妹のおっぱい触り過ぎ!」と叱られたりする西尾維新の趣味満載、怪異と変態に彩られた青春伝奇小説であります。前々作の『化物語』がアニメ化して話題になりましたね。結構ヒットしているらしいし、こっちもいずれアニメ化されるかしらん。散々発売延期を重ねたうえ、「事前公開されたあらすじは釣りだったのか?」と疑うほど内容に齟齬を来たしており、『化物語』のアニメ化と合わせるため相当無理したんじゃないか……などと勘繰ってしまう。それでも一応、面白いことは面白い。当初の予定ではこれがシリーズ最終巻になるはずだったらしいが、2010年に『傾物語』と『猫物語』、2つの続編というか番外編も出すつもりだそうです。ファンとしては嬉しい誤算。

 『アクセル・ワールド』は電撃小説大賞「大賞」受賞作であり、電撃文庫にしては珍しく「1巻」の表記を加えた(例外もあるが電撃文庫は通常、新人のシリーズに「1巻」の表記をしない。1巻が発売される前から2巻の発売が決定していた『悪魔のミカタ』さえ、『悪魔のミカタ1』ではなく『悪魔のミカタ』だった)ことから出版社的にも相当の自信作なのだと窺えます。詳しい説明は省きますが、要するに「グローバル・ネット通信で代償ありの対戦格闘ゲームを行う」ことを骨子としたシリーズで、同作者の『ソードアートオンライン』と若干被るところがある。あまり派手なところがなく、設定自体にもいろいろとツッコミどころが多いにせよ、「自分なら……」「もし参加したら……」とついつい妄想が膨らむ楽しいシリーズではありますね。2巻でいきなり話が飛んだりするなど、物語の転がし方に悩んでいる気配を感じますが、うまく行けば電撃の新たな看板になるやもしれぬ。というか、「元廃人ゲーマーでヤキモチ焼きな美人先輩」って設定がナイスすぎて死ねる。『お・り・が・み』は著者2番目のシリーズであり、出世作と断言してもいいでしょう。天使や魔人が存在するパラレルな日本で「魔王候補」にして「借金のカタ」というメイドヒロインが受難の日々を過ごす。基本的に行き当たりばったりで、突然の急展開に驚かされることもしばしばですが、キャラクターが生き生きとしていて話にも勢いがあり、「楽しければ正義」というライトノベルの王道をぐんぐん制覇していきます。世界観を引き継いで主役交代した続編が『戦闘城塞マスラヲ』であり、また『お・り・が・み』のヒロインである鈴蘭の妹・睡蓮と『マスラヲ』の主人公であるヒデオが登場する『レイセン』も来年2月に第1巻を発売する予定だ。『アイゼンフリューゲル』は虚淵御大こと虚淵玄が送るドラゴンファンタジーで航空ロマンなシリーズ。「人間が作り出した飛行機で、空の覇者たる竜を追い抜いてみせる」ことを目標に、デザイナーやエンジニア、パイロットが知恵、技術、度胸を振り絞る。ライトノベル版プロジェクトXと称されるのもむべなるかな、戦闘機乗り時代の回想を別とすれば血腥い要素もなく、「ただ単純に速度を競う」という一点で物語が支えられています。虚淵特有のやや硬めな文体が紡ぎ出す「天翔けるバカ」の世界はいっそ不思議に感じられるほどいとおしい。2巻も既に発売済ながら、お察しの通り積んでおります。『へヴィーオブジェクト』は犬江しんすけさんによるコミカライズが開始された鎌池和馬の新シリーズ。ショボい武装の主人公が人類史上最強と謳われる兵器「オブジェクト」に立ち向かいジャイアントキリングするSFバトルであります。端的に書けば「主人公<<<<(越えられない壁)<<<<オブジェクト」なのです。戦力差が大きすぎて、もうほとんどギャグだ。安易に「オブジェクトを打倒できるのはオブジェクトだけ……なら僕もオブジェクトのパイロットになるよ!」という方向へ乗っていかなかったこと、禁書目録とは比較にならないくらい展開がスムーズなこと、爆乳上官のフローレイティアが絶妙にエロいこと、以上この3点から傑作と評価するのが妥当と判断した(キリッ)。他、ランキングに上がらなかったところでは『ケモノガリ』がおもろかった。「少年セガール」「沈黙のホステル」と呼ばれたのも頷ける、構想段階で勝ち組な厨二妄想B級残酷アクション。しょっぱなから容赦ない展開が続くので、猟奇属性がない方は回避推奨ですが。

・拍手レス。

 XUSEが『久遠の絆』のリメイクを発表!とかでyoutubeにプロモーションがアップされとるのですが・・・。買いますが、凄く複雑な気分です。
 PS版を持ってるけど未だに積んでいる当方は買い直そうかどうか迷うところです。

・では良いお年を。


2009-12-30.

・酔っ払って「Rozen Vamp」流しながらヴィルヘルム・エーレンブルグごっこに興じているところを両親に目撃されましたけど気にしないで、私は平気。こんばんは、明日はめげずにヴァレリアン・トリファごっこをやるつもりでいる焼津です。ごるでねっしゅう゛ぁーんろーえんぐりん!

・では予告通り漫画のランキングをば。

〔漫画〕

 いちいち数えていませんが、少なくとも400冊は読みました。400冊の根拠は、読み終わった記録を『ディエンビエンフー(1〜5)』とか『水惑星年代記(正・続・環・翠・碧・月娘・月刊サチサチ)』とかシリーズごとに行単位で付けていて、その行数がだいたい400程度でしたから。去年同様、「今年読み始めたモノ」と「以前から読み続けているモノ」と「一冊で完結しているモノ」の3つに分けて書きます。

(今年読み始めたモノ)

第1位 『Landreaall(1〜15)』
第2位 『JIN―仁(1〜16)』
第3位 『坂道のアポロン(1〜4)』
第4位 『7SEEDS(1〜16)』
第5位 『でろでろ(1〜16)』
第6位 『ベルとふたりで(1)』
第7位 『バクマン。(1〜5)』
第8位 『しなこいっ(1〜2)』
第9位 『第七女子会彷徨(1)』
第10位 『とんぬらさん(1)』

 『坂道のアポロン』と『でろでろ』、『とんぬらさん』の3作品以外はどれもこれも他者の評価を参考にして読み出したものばかり。正直、店頭で勘を頼りにして買った漫画の打率はパッとしません。己の発掘力のなさとともに、口コミというものがいかに大切であるかを痛感せずにゃいられません。『Landreaall』は「ランドリオール」と読みます。作者の造語。竜がいて騎士がいて忍者がいて……とチャンポン極まりないRPGじみた世界設定ながら、多彩なキャラクターによる地道な駆け引きが蓄積されて「関係」が築かれていくあたり、どっしりと構えた作者の影が見えて妙に安心させられる。「冒険」とか「学園」とか、あるいは「傭兵」や「騎士」であった両親の過去とか、分かりやすいフックを用意しつつ、比較的どうでもいい細部までキッチリ作り込んでおり、なにげなかった描写が後々になって本筋とリンクする迂遠な演出もスパッと効果的に駆使されています。正直、最初は絵がちょっと……ですけれど、読むにつれて気にならなくなるし、チート臭い能力設定も「あくまで要素の一つ」と割り切れる内容だ。ギャグとシリアスの混ざり具合もちょうどいい。ちょっとずつ読んでいくと全体の設定を把握しかねますので、なるべくまとまった巻数を一気に崩すが吉なり。『JIN―仁』はドラマ化で急に注目を浴び始めましたね。現代の脳外科医が幕末にタイムスリップする異色の医療漫画です。医学知識は現代レベルであっても、設備や器具が整っていないせいで充分な力を発揮できない……という逆境に立ち向かい、少しずつ周りの環境を良くしていく。人情味を重視する一方で医学的な興味もしっかり満足させる。実に抜かりない仕上がりと申せましょう。新聞広告では「龍馬暗殺を食い止めて歴史を変えられるかどうか」が焦点みたいに書かれていましたが、原作でもまだそこまで話が進んでません。というか、ここ最近はすっかり展開がトロくなってしまって「うーん……」な感じ。面白さは鉄板なれど、これから先をリアルタイムで追うことにしたら少々イライラするやもしれません。いっそ完結まで待ってからまとめ読みすべきかも。『坂道のアポロン』は少女漫画。昭和40年代の横須賀を舞台に、詰襟の真面目眼鏡とバンカラ野郎が友情を結び、ともに音楽を奏で、恋の矢印がすれ違うようなもどかしいロマンスを繰り広げる。「少女漫画だから……」とか「少女漫画だけど……」とか、そういう調子で語る必要が一切ない、抜群の吸引力で読者を惹きつけます。小玉ユキはもともと注目していた作家ですが、期待を超える伸び上がりで歓喜することしきり。細かいことは抜きにして、ただただ読むことそれ自体が楽しい。まこと稀有な一作です。

 『7SEEDS』は孤島サバイバル、と見せかけて壮大な設定が待ち構えている群像サスペンス。バラバラな個性を抱えたキャラクターたちが絶え間なく衝突を繰り返しながら前進していく姿に生命のしぶとさを見る思いがする。最初の視点人物であるナツは引っ込み思案のイジメられっ娘で言いたいことが言えずにうじうじとし、読んでいるこちらとしてはとてもイライラするが、視点が彼女から離れてしばらくするとあのうじうじっぷりが懐かしくなってくるのだから不思議だ。登場人物が多い割にしっかり描き分けされていて、さほど混乱することなく読めるのは嬉しい。好悪は分かれるかもしれませんが、チャレンジしてみる価値はあるシリーズ。『でろでろ』は存在を認知しつつも長年タイトルの不気味さと絵の稚拙さから避けていた「幽霊を蹴って撃退することができる」連作ホラーギャグコメディ。同作者の『ミスミソウ』が面白かったので手を伸ばしてみたが、結果としてこれが押切蓮介にずっぽりハマる決定打となった。「妖怪リモコン隠し」レベルのくだらない日常妖怪たちを織り交ぜながら耳雄と留渦、ふたりの兄妹の絆をさりげなく描いている。読み始めた矢先に完結してしまって大いに落胆したが、押切蓮介の筆は早く、次々と新作が出るので悲しみに暮れている暇はないのであった。ちなみに当方は留渦と並んで相原岬の姉・水面が好きです。『ベルとふたりで』は4コマ漫画。女子小学生とグレートピレニーズのメスが戯れる平和な日常……と書くとなんだか萌え4コマっぽいが、作者の「笑い」に懸ける情熱がアツすぎ、もはや萌え要素と呼べるものは銀河系の遥か彼方に消し飛んでいます。躍動感および間の取り方が抜群。4コマ方面においては今年最大の収穫と断言しても構わないかも。

 『バクマン。』は漫画家漫画。「ジャンプの連載作家になって、アニメ化した作品で意中の子にヒロイン役の声優をやってもらう」という、やや即物的ながらもハッキリとした目標を据えているおかげでストーリーが迷走せずに済んでいます。デスノコンビ再結成、という謳い文句も伊達じゃなく、少年漫画的な面白さと漫画家漫画的な興味深さをキチンと両立している。「進展のなさ」「成長のなさ」から逆に青春時代の煌きを見出す『アオイホノオ』とは明らかに路線が異なるけれど、奇しくも同時期にこうして2つの漫画家漫画が話題となっているのは無性にワクワクしますね。『しなこいっ』はいかにも超能力を使いそうな連中が普通に竹刀とかで戦い合う、そんなミスマッチが美味しい伝奇チック剣道コミック。ヒロインは剣道よりも短い竹刀を用いる「短剣道」の選手で、「獲物が短いと不利なのでは?」という疑問に根性論ではないちゃんとした術理で答えてくれる。魔剣が飛び出したりするハッタリ系の演出もあるにせよ、あくまで術理を重視したバトルなので、『刃鳴散らす』のノリがたまらん御仁、試しに読んでみては如何? 『第七女子会彷徨』は尾崎翠の『第七官界彷徨』をもじった近未来SFコメディ。科学テクロノジーが生み出したヘンテコ技術とともに生きる女子高生たちの日常を面白おかしく描いている。ドラ○もんの秘密道具とか、そういうのを想像してもらえると分かりやすい。絵は癖があるもののネタの密度が濃く、あっという間に魅了されてしまいます。石黒正数好きの読者ならば九分九厘外れないでしょう。というか石黒自身が帯の推薦文書いてます。『とんぬらさん』は分類上「動物モノ」に属する……のかな? 三人姉妹の末っ子が拾ってきた異様にふてぶてしい喋るデブ猫「とんぬらさん」を焦点に、三姉妹(+母親)のてんやわんやな日常を綴るコメディです。おにゃのこがたくさん出てくるのに、とんぬらさんの存在感はそれらすべてを易々と上回っていて恐ろしい。個人的には三姉妹よりも母親の方が胸キュンです。さあ早く年増園を開園するんだ……。

(以前から読み続けているモノ)

第1位 『それでも町は廻っている(4〜6)』
第2位 『KING of BANDIT JiNG(2〜7)』
第3位 『ふおんコネクト!(3)』
第4位 『ムダヅモ無き改革(2)』
第5位 『HELLSING(10)』
第6位 『ちはやふる(4〜7)』
第7位 『弱虫ペダル(4〜9)』
第8位 『ブロッケンブラッドW』
第9位 『シグルイ(12〜13)』
第10位 『とある科学の超電磁砲(3〜4)』

 妥当っちゃ妥当だが、番狂わせもなく、やや面白みに欠ける選出となってしまった。が、選んだ漫画それ自体の面白さは揺るぎなく鉄板であります。『それでも町は廻っている』は「女子高生になったのび太」と表現したくなるお間抜け娘・嵐山歩鳥を主人公とした連作コメディ。歩鳥はメイド服着用の喫茶店でバイトしているが、だからと言って別に「メイド喫茶モノ」というわけでもなく、町のあちこちを舞台にして面白おかしい日常劇を繰り広げてくれる。時には歩鳥から視点が離れることもあり、話のジャンルもミステリ、SF、ファンタジー、ノスタルジー、ギャグと多岐に渡るため、内容を要約するのが非常に難しい。こうして書いていても『それ町』が持つ魅力の十分の一さえも伝わらず、非常にもどかしい。キャラクターの良さ、ネタの良さという点もあるけれど、それだけではない。なんなんだろう、この物語が放つ輝きの源泉は。「うまい推薦文がなかなか思いつかない」という点でファン泣かせの一作。『KING of BANDIT JiNG』はボンボンでやっていた『王ドロボウJING』の続編ですが、連載が休止して久しい。最新刊に当たる単行本(7巻)が出てからもう4年以上経つのか……掲載誌が変わったせいか雰囲気もグッと変わり、スタイリッシュというかオサレなムードをより一層濃厚に打ち出し、そしてあまりにも打ち出しすぎたせいで少し読みにくくなったが、慣れてくるとこの特異さが病みつきになる。6巻の「陽気な未亡人の宴編」、7巻の「黒天鵞絨の底編」は『王ドロボウJING』時代も含めた熊倉裕一漫画の白眉と請け合えます。『ふおんコネクト!』は人間関係のややこしさと小ネタの仕込み具合にかけては同じ4コマ漫画界で右に出るものがいない、と豪語してしまえる野放図学園ストーリー。「サザエさん時空」に突入することを潔しとせず、「描き漏らしていた時期を穴埋めする」と弁解したうえで2周目に入るなど、異様に気遣いが細かい。あれもこれもとネタをぶち込みまくるせいで最初は読みづらいけど、これで3巻目だから作者の腕も随分と上がって話を分かりやすく整理する技術も身についてきたし、我慢して読み続ければ黄金境に辿りつけるであろうことは確実。濃度の高さゆえ、お世辞抜きに何度読み返しても面白いシリーズです。

 『ムダヅモ無き改革』は北の将軍様がサイボーグ化したり、ナチスの亡霊どもが月面基地を築いて列車砲で地球に向けマスドライバー攻撃を加えたり、想像を絶する事態となっているのに「困ったことは麻雀の勝負で決めようぜ!」という話運びになる史上もっとも力任せな麻雀漫画。国家元首たちが世界の命運を懸けて牌を握ること自体がイカレていますが、更に使用するのが「劣化ウラン牌」とかで大和田秀樹の悪ふざけは留まることを知らない。アニメ化も決定したらしいが、この調子で進めば作者はいずれ×××に○されるのでは……なんて危惧さえ抱いてしまう。ともあれ、「笑い」の要素に関しては一切手加減抜きですから、不謹慎ネタOKな方ならば極上の一品となりましょう。『HELLSING』は吸血鬼とナチスと狂信者の三つ巴戦となった倫敦編が終結し、シリーズ自体もこれで完結。感動の締めくくりではあったが、大好きなシリーズだっただけに寂しくてたまらない。というか、広げた風呂敷を畳むことに専念しているせいで話の展開がややおとなしめになってしまったことが残念であり惜しい。全10巻に収めるのは前々からの構想だったということで、物語そのものは過不足なく綺麗にまとまっています。もし、まだヘルシングを読んだことないなんていう羨ましい方がいたら、是非この機会に全巻一気読みする贅沢を味わうがいい。『ちはやふる』はそのうちアニメ化か実写化するんじゃないか、というくらい人気鰻上りな競技かるた漫画。少女漫画でありながら色恋沙汰よりも熱血精神を重視しており、男が読んでも滅法面白い。ネームのひとつひとつに力が漲っていて、肌ビリビリします。壁にぶつかりながら成長していく主人公たちの姿、率直に言って眩しいぜ。

 『弱虫ペダル』はオタク趣味に耽溺する、いわゆる「アキバ系」の眼鏡少年がロードレーサーに魅せられていく自転車漫画。最近は「主人公がアキバ系」という設定も空気になりつつあるが、個性の強いキャラクターたちをうまく御して順当に盛り上げてきていますから、さして気にならない。さすがに『シャカリキ!』と比べるのは酷だけど、“週刊少年チャンピオン”の中で今もっとも続きが楽しみな一作です。『ブロッケンブラッド』は過去何度もプッシュしまくったせいか、そろそろ薦めるのに飽きてきた感がある女装少年魔法コメディ。「良い意味でマンネリ」を基本姿勢としており、ノリは終始一貫しております。とにかく、くだらない。それでいて異常にテンポが良く、また異常に主人公が可愛い。こんな漫画が長く続いている、その一点を以って日本は実に素晴らしい国であると実感できる。『シグルイ』は「無明逆流れ」がまだ終わんないっスね……さすがにダレ気味だけど、読めば夢中にならざるをえない、あの魔的な引力は未だ健在です。ただもう、これは完結してから読んだ方がいいかもしれません、ぶっちゃけ。『とある科学の超電磁砲』はアニメ版も絶好調であるらしいスピンオフ作品。「スピンオフ」はどうしても本編より低く見られがちですが、これに関しては本編と同等か、あるいはそれ以上のポテンシャルを有している。御坂美琴好き(と白井黒子好き)は涙を流してこの超電磁砲(レールガン)を讃えるがいい。ランク外では先の読めない『孤高の人(5〜8)』、暴力に淫しながらその先を見透かす『ウルフガイ(5〜6)』、スポーツ漫画でありつつ下手なサスペンスよりもドキハラする『ノノノノ(5〜8)』、雪女の愛しさが止まらない&現代の羽衣狐に股間が反応しまくる『ぬらりひょんの孫(3〜8)』あたりが伸びている印象です。

(一冊で完結しているモノ)

第1位 『ネムルバカ』
第2位 『柳生非情剣 SAMON』
第3位 『放課後プレイ』
第4位 『HOTEL』
第5位 『以下略』
第6位 『毎週火曜はチューズデイ!』
第7位 『かわいいあなた』
第8位 『ちちこき』
第9位 『シアワセ少女』
第10位 『PURE GIRL』

 最後の方は員数合わせのために成年コミックを引っ張ってきていますが、今年はアッチ系なにげに30冊以上目を通しましたし、己なりに厳選したつもりであります。たとえば『わたしたちのかえりみち』は表題作こそ素晴らしかったものの、古い作品と新しい作品が混在してゴチャゴチャとカオスな収録状況であったため、泣いてぽぷりを斬りました。『ネムルバカ』は『それでも町は廻っている』の作者でもある石黒正数の単巻コミック。同じ部屋で暮らしている女子大生ふたり、バカな先輩とバカな後輩の愉快で茫漠とした日常を淡々と切り取った青春モノです。始まった途端にいきなりセンパイが失踪するという超展開を迎えたりするが、基本的にはあまり波風が立たぬ緩い話運び。ダラダラしていて、なんてことなくて、つい笑ってしまうんだけども、この「満ち足りた虚しさ」と言うべき日々が異様に懐かしくて心地よい。かつて誰にでもあって、今や誰もが戻ることのできない瞬間をそっと丁寧な手つきで封じ込めています。なんてことない物語なのに、ラスト数ページが不思議なほど切ない。消去法だとか採点法だとか、そんな賢しい選び方は頭ん中から消え去り、本能的に「今年の1位はこれしかないな」と確信いたしました。『柳生非情剣 SAMON』は「男色」と「剣戟」のふたつに彩られた、あらゆる意味で男臭い一冊。隆慶一郎の短編が原作であり、「十兵衛の右眼を潰した美剣士」柳生左門友矩が主人公を務めています。帯に書かれた「尻一つで十三万石だとぉっ!!」のインパクト強すぎて噴きますが、迫力ある筆致と無駄のない絞り込まれたネームで駆け抜けるように魅せる。時代モノは苦手、という方も怯まず挑んでみられては。『放課後プレイ』は髪フェチとして外せない。名前すら分からない少年と少女、ふたりがゲームに関する駄弁りを延々と続けるだけの4コマ漫画で、ハッキリ言って画力やネタはそれほど際立ったところがなく、薦められて読み出せば「評判の割に平凡な作品だな」と感じる可能性は大。しかし、サドっ気たっぷりのようでいて実は骨の髄までデレデレというヒロインの存在それ自体が絶大に淫靡であり、猛り狂う性欲を前にして男の理性など紙屑同然なのです。長く艶やかな黒髪、すらりと伸びた御御足を包む黒タイツ、禁欲的なのが逆にそそる黒制服、そして釣り目の三白眼に前髪パッツンな貌(かんばせ)――記号に次ぐ記号の旋風(ヴィルベルヴィント)に抗う術などありませぬ。惚れた。要はその一言で足りるわけで、そんな当方が評価なんていう行為に及ぶのはもはやナンセンスです。

 『HOTEL』は『サンケンロック』のBoichi による短編集。B6判で900円弱と、少し割高感のある価格設定ながら突き抜けた画力と短編ならではの逆説的なスケールの壮大さで華麗に奇想を横溢させている。『サンケンロック』があまり好みでなかったため購入しようかどうか迷ったりしたものの、一編一編に読み応えがあって満足しました。中んずくコメディ色の濃い「すべてはマグロのためだった」が印象的。『以下略』はゲーム屋でオタクどもがくっちゃべったり騒いだりする様をハイテンションに綴ったギャグ漫画。『進め!!聖学電脳研究部』の後継(ただし続編ではない)に当たり、『進め〜』のタイトルが長すぎるため「進め!! 以下略」といった具合に表記したことから『以下略』の名称が定着しました。最初はエース桃組で連載されていて、途中からゲーマガに移籍した(その際に設定も一部変更したらしい)のですが、前の編集部と揉めているのかエース桃組時代の内容はまったく収録されておりません。桃組時代のエピソードを集めた『進め!以下略』の単行本が出るという話もかつて(確か3年前くらい?)持ち上がりましたが、いつの間にか立ち消えになっていました。ヒラコーは『コヨーテ』や『エンジェルダスト』といった初期作を復刻するって話も立ち消えになっていますし、未完に終わった『大同人物語』も単行本未収録分がずっと放置されたままであり、ファンとしては慣れ切った事態につき諦観モードへ入らざるを得ない。そうした事情さえ考慮しなければ、無心に楽しめるバカバカしさではあります。『毎週火曜はチューズデイ!』はネズミによく似た動物「チューズ」がドタバタする4コマ漫画。あくまでそういう設定になっているだけで、別に「ネズミの4コマ漫画」と捉えても支障はございません。チューズはほとんど描き分けされておらず、固体名も存在しないのですが、作者の特徴とも言える「個性的なキャラクター陣」をあえて封じたことによりシンプル化し、ネタの旨味がより強く増している面もあり。まずはWEB配信版でお試しあれ。本編からの抜粋ではなく、全部がオリジナル。なんでもページの都合で単行本には収録されなかったそうな。『かわいいあなた』は百合、つまり女の子同士の恋愛をテーマとした短編集です。どちらかと言えばプラトニック。長身と少年的な容貌から「王子様」扱いされているけれど本当は「お姫様」になりたい少女が、見た目はまさしく「お姫様」だけど屹然たる性格の持ち主であるオットコ前な少女と惹かれ合っていく表題作を始めとして、必ずしもハッピー全開ではないものの「素晴らしい女の子を好きになった自分が嫌いではない」という迂遠な自己肯定の念が感じられ、恋の首尾はともかくとして清々しい読後感を残していきます。同じ作者の『クローバー』は四姉妹それぞれの恋と青春を逆時系列に掘り下げていく連作百合コミックで、こちらもなかなか良い塩梅です。

 以下は成年コミックとなります、注意。『ちちこき』は絵柄と内容のギャップが最高にそそる一冊。ムチムチと肉感的で可愛らしい少女たちが男どもの身勝手な性欲に蹂躙されていく、どちらかと言えば「陵辱系」「鬼畜系」に属するタイプの漫画(逆にサド系幼女が言葉責めしつつエッチする和姦?もあるが)ながら、悲壮感の漂わない穏やかな明るさが却って背徳的でグロテスク。グチャグチャに汚されながらも本質的な「可愛さ」は破断せず、「穢すことで無垢を証明する」という理念をトコトンまで突き詰めんとする倒錯感が篭っています。汚しても汚し尽くせぬものは、つまり永遠に汚され続けるのみ。「無垢」も強姦者の前では玩具に過ぎぬと、反吐が出そうな腐臭を放つ思惟に欲情できる体質の人間ならば勃起は必然です。ただクセのある絵柄で、正直巧いとは言いかねる。これに馴染めないと実用度は高まりません。『シアワセ少女』もこれまた絵柄とのギャップが激しい。タイトルから「恋人同士のイチャラブエッチ」を期待して読み出せば確実に地雷と化す。状況は様々ながら「好きでもない男たちとセックスする」、いわゆるNTR(寝取られ)に近い内容が大半を占めており、そっち系に耐性がないとあっさり憤死します。表紙を飾っている時点で代表作に相違ない「手と手つないで」もさることながら、個人的には「お幸せに」に震撼した。「自分は黄金だ! 他の金メッキどもとは違う!」と金メッキですらない無塗装の少年がまったく根拠のない思い込みを抱いて砂金(おこぼれ)を拾い続ける醜悪さが胸と股間を打つ。片思いの少女を、不良たちの手下として犯し続けていれば、いつか自分に惚れてくれるはずだ――という思考は卑怯や屑を通り越してもはや悲しい。彼はただ不良どもの脅しに屈したのではなく、「ここで彼女を助けることに成功しても彼女に想い人がいる以上、決して自分と結ばれることはない。そちらのルートでは未来永劫、彼女とセックスすることはできない」と見抜いて彼女の幸福と自分の幸福を秤に掛けてしまったのでしょう。遠くで輝く金塊よりも近くで拾える砂金を欲した。両者の幸福が背反していることから目を逸らし、分不相応にも「自分が幸せになりつつ、彼女のことも幸せにする」と願望するから当然の如く論理は破綻し続ける。まるで『Dies irae』トリファ神父を見る気分です。自分の渇望を手放すことで初めて「どうかお幸せに」と祈ることができる、その皮肉が痛烈だ。『PURE GIRL』は絵柄と内容にギャップがないけれど、表紙がややミスマッチか。「恋人同士のイチャラブエッチ」を地で行く話が多く、和姦スキーにとってはかなりの収穫となりうる。とにかく女の子が可愛くて、とにかくエッチが気持ちよさそう。ラブコメと萌エロの理想的な融合形です。尺の関係もあってラブコメは少し描写不足だが、さすがにそれは仕方ない。しかし、まんま逢坂大河みたいなヒロインが登場して「くギゅゅゅゅ」とアソコの締め付け音を発するのは笑うところ?

・拍手レス。

 サマーウォーズについては角川文庫から出ている小説を読んだほうが良いかも知れません。先輩がケンジ君を選んだ理由とか、途中何を考えているのかとか映画を見てから読むと色々細かい所がわかったりしますよ。これを読んでから僕の中の先輩の好感度がうなぎ上りでございますですよ。ケンジ君の男前っぷりも上がっちゃってたりしますし、十二分にオススメできる内容でした。
 小説版の評判は聞いてますが、ストーリーがほぼ一緒ということでいまいち食指が伸びず。本編の内容がうろ覚えになってきた頃に読もうかと思います。

 ディエスは、一度やらかしたタイトルをここまで完璧に作り直してくるとは正直創造できませんでした。
 かつての理想もここまでは高くなかった。まさに07年版を破壊して超越してくれましたね。

 分割販売は…金銭的には痛かったですが、“未知”を二度も実感出来たからアリかなあと(笑)
 金銭的には気持ちに折り合いをつけられますけど、これから丸ごと未知を味わえるだろう「完全版が初Diesの人」に対する嫉妬心は堪えがたいです。

 ルサルカのHシーンが見れない・・・なぜだ・・・
 Diesは分岐条件が結構タイト。半端なところをロードするより最初からやり直して、6章で選択肢総当りした方が早いかも。

 propeller新作キター!  ……マーヴェル学園?
 今回ちょっとアメコミっぽい設定ですね。速報ムービーが洋画の予告編みたいで愉快だった。


2009-12-29.

『Dies irae〜Acta est Fabula〜』、我コンプリートせり。

 いつまでも終わらないんじゃないか、と夢想を抱きそうになったファーブラも当然ながら果ては存在するわけで、全種エンドを確認、CGも100%回収し、シーン回想すべて埋めてコンプ致しました。玲愛ルートは分岐以降だけ計算しても16〜18時間に達し、螢ルートも含めると、実に30時間超。蓮がフルボイス化したことを勘案してなお驚くべき分量であります。当方がもし仮に、この完全版からDiesをプレーしていたら、コンプするのに60時間どころか70時間は掛かったんじゃないでしょうか。ジョーク抜きで相当なボリュームですよ。使用されているCGはカットインも含めると200枚以上(差分抜き)、うち80枚弱がクンフトおよびファーブラで追加された新規CGです。と言っても「07年版で使用されなかった」という意味での「新規」であって、2007年当時に公表されたけど07年版本編では未使用に終わった絵や、あるいはドラマCDや販促など他の用途で掲載されたCGを使い回しているものもあり、純粋な描き下ろしに限ればもう少し減って60枚を切る程度かな? どちらにしても、1本のエロゲーに費やされるCG枚数としては破格の部類だ。用意されたBGMも40曲とかなり豊富。うち10曲が新曲です。三騎士全員にテーマ曲が付いており、更にはベアトリスやベイといったキャラにまで独自のテーマ曲が用意されている。当方はベイのテーマ曲「Rozen Vamp」が一番気に入った。次がファーブラのムービー第4弾、玲愛ルート紹介編で使われた「ΩEwigkeit」。三騎士ではシュライバーの「Einherjar Albedo」が好み。

 11章はベイ中尉ことヴィルヘルム・エーレンブルグを主眼とした内容で、ダイジェスト形式ながら彼の人間時代の過去も綴られている。少年ヴィルヘルムの声を演じている人が誰なのか、当方の耳では聞き分けられないが、この人もこの人で上手いな。ちゃんとベイっぽさが出ている。少し予想と違う形だったがヘルガ姉さんも登場したし、ベイ好きのDiesファンとして嬉し涙に濡れることしきり。シュライバーとの対戦は、互いの性質が影響するせいで描写そのものはあまり燃えなかったけど、67年越しの因縁を清算するショーとして見ればまこと甘美であり堪能致しました。何よりベイがメチャクチャ幸せそうで頬の緩むこと緩むこと。これでDiesに関する悔いがひとつ、「ベイとシュライバーのガチバトル」が完全消滅。なにせヘルガ姉さんとまで出逢えたんだ、満足するしかない。12章は蓮が究極の選択を迫られる。何かを切り捨てなければ、先に進めない。しかしそれはどれも僅かに残された大切なものばかり。何一つ、切り捨てられない。けれどそれじゃどんづまりになってしまう……と、だいたいこんなシチュエーション。いやあ、ビックリしたなぁ。なんでって、そりゃこの12章で、今まで散々ユーザーから「要らん子」扱いされてきた司狼が輝き始めるからですよ。「あいつが出てくるとご都合主義になる」「斃される敵が弱く見えてしまう」と批難囂々で、どう転んだって名誉挽回なんざできないんじゃないか――と不安になったものだったが、なんのなんの、杞憂でした。蓮が感情を剥き出しにして吼え狂うのもなんだか感慨深い。「ふざけんじゃねえぞ塵屑(ゴミクズ)共がッ! とっくに死んで腐りきった蛆まみれの頭でこいつを測るな、ブッ殺すぞォォオオオ―――ッ!」って、明らかにエロゲー主人公のセリフじゃない。ここに関しては蓮がフルボイス化してたことを喜びましたね。「ブッ殺すぞォォオオオ―――ッ!」の字面だけ見ると少々間抜けだが、声優の熱演も相俟ってゾクゾクするくらいの臨場感が醸されています。特に「ふざけんじゃねえぞ塵屑共がッ!」のところがイイ。ついつい何度もリピートして聞き惚れてしまった。これ、ごみ箱を空にするときのシステムボイスにするといいんじゃないかな。さて、明けて13章。長かった玲愛ルートもこれで最後です。早々に挟まれるイザークの流出講義がありがたい、より設定が呑み込めた。8つすべてのスワスチカが開き切り、完全体となった三騎士が立ち塞がる初戦からして既に熱い。「鳴けよ。貴様の慟哭はぬるすぎるのだ」と、エレオノーレ姐さんの魔王感も弥増すばかりです。最終決戦に至る流れも凝っていて固唾を呑んだが、螢ルート同様、ヒロインたる玲愛の存在感がどんどん薄くなっていくな……なんか最後の方は獣殿が全部美味しいところ持ってっちゃった気がするぞ。いやはや、ラストバトルはインフレが凄まじい。炸裂する必殺技も超新星爆発(スーパーノヴァ)とか訳分からん次元に突入してるし。ギャグ一歩手前と評されたのもむべなるかな。漫画化するとしたら作者は岡田芽武あたりかしら。

 なんにせよ、あまりにも面白くて、2年前の慟哭がもはやどうでもよくなってくる始末だった。「厨二病」という観点からすればまず間違いなく最強レベルの燃えゲーでしょう。無茶苦茶な屁理屈をぶっこく描写は枚挙に暇がない(「シュライバーは常に相手よりも速く動ける、だから理論上、蓮が光速を叩き出せばシュライバーは光速をも上回る」とか)ので、厨二病に罹患(おか)されたことも邪気眼に覚醒(めざ)めたこともないっつーごくまともな神経の持ち主がプレーしたならば開いた口が塞がらなくなること請け合いだ。相変わらず「学園伝奇バトルオペラADV」というジャンル名の「学園」には疑問符が付く(後半は学園の要素が皆無に等しい)けれど、「伝奇バトルオペラ」に関してはこの上なく達成されていて、終始酩酊し放題でした。螢ルートと玲愛ルートの両方でちゃんと三騎士や首領閣下および副首領閣下が出てきて見せ場も確保しているんだから、2年、いや6年近く待った身としては歓喜と法悦のあまり涙を流して讃えるしかない。おかげで香純ルートが益々見劣りするようになってしまいましたけども……いえ、当方は神父好きだから香純ルートも香純ルートで捨てがたいとは思ってるんですがね。どうしても見せ場の量と質が違いすぎますよね。特に玲愛ルートは大盤振る舞いにも程がある。燃焼し切った反動か、1つの章が終わるたびにドッと疲れの波が襲ってくるので、どんなに根性のボルテージを上げても一気呵成に攻略することはできなかったです。未知は素晴らしい。いずれ詳細な感想も書こうと思います。

・んじゃあ年の瀬も近いことですし、そろそろ2009年を振り返ってみましょうか。

 印象としては、「訃報でショックを受けることが多かった年」です。マイケル・ジャクソンは個人的にあまり思い入れがないけれど、それでもビックリすることはビックリした。国内の作家だと泡坂妻夫、伊藤計劃、栗本薫、中町信、中里融司、海老沢泰久、山門敬弘、北重人、原田康子。海外ではドナルド・E・ウェストレイク(リチャード・スターク)、デイヴッド・エディングス、ライオネル・デヴィッドスン、スチュアート・カミンスキーがお亡くなりに。こうして並べてみるにつけ、ため息が漏れそうになります。特に伊藤計劃は若かった(享年34歳)だけに、未だショックが抜け切っていません。「彼の新刊が出ることはもうないのだ」ということがどうにも信じられない。SF系の新刊リストを見かけると、つい無意識に彼の名前を探し出そうとしてしまう。最後の長編となった『ハーモニー』は読みかけのまま、再開する踏ん切りがつかないでいる。

 それ以外では、エロゲー界の動きがひと際目立った。lightが1年以上の沈黙を破って『Dies Irae』その後の開発状況を公表したり、Navelが約5年掛かりの大作『俺たちに翼はない』をやっとリリースしたり、ニトロプラスが『村正(仮)』の正式タイトルを『装甲悪鬼村正』と発表してまさかのロボットバトルであることを明かしたり、ケロQの『陰と影』が無期限開発停止に陥ったり、英国での『レイプレイ』騒動に端を発する陵辱エロゲー規制が始まったり、propeller『きっと、澄みわたる朝色よりも、』が完全な一本道でエッチシーンの本番も一回のみという「エロイッカイズツ」ならぬ「エロイッカイダケ」で「あまりにもひよゲーすぎる」と話題になったり、ゆ〜かりソフト『ひしょ×ひしょ』がコピペブログに取り上げられたり、Littlewitchが来年1月でブランドを無期限休止すると発表したり……なかなか波乱に満ちた一年ではありました。

・今日はゲームと映画の個人的年間ベスト10をやり、明日は漫画、明後日は小説の個人的年間ベスト10をやらせてもらいます。ちなみに「年間」というのは当方が今年にやった/観た/読んだって意味であって、「今年出た新作の中から選ぶ」という意味ではありません。あしからずご了承ください。

 ではまずゲームから。ほとんど、というよりすべてエロゲーソフトなのはご愛敬ってことでひとつ。

〔ゲーム〕

第1位 『Dies irae〜Acta est Fabula〜』
第2位 『俺たちに翼はない』
第3位 『装甲悪鬼村正』
第4位 『真剣で私に恋しなさい!!』
第5位 『漆黒のシャルノス』
第6位 『るいは智を呼ぶ』
第7位 『吸血奇譚ドラクリウス』
第8位 『俺たちに翼はない〜Prelude〜』

 星の巡り会わせなのか何なのか、今年は「年単位で開発された大作エロゲー」が津波の如く一気に押し寄せてきた。上位4本はいずれ劣らぬ大物ばかりであり、攻略に要する時間は少なくとも40時間、多ければ60時間以上と見積もってほしい。個人的な感覚からすると、『あやかしびと』『SWAN SONG』『最果てのイマ』『車輪の国、向日葵の少女』『パルフェ』『つよきす』と錚々たるソフトたちが名を連ねた2005年にも匹敵する豊作ぶりであります。規制絡みによるドタバタ騒ぎも影響してか、「昔のエロゲーは良かった、今はもう……」という囁きがそこかしこから漏れ聞こえてきますが、当方にとっては今こそまさに黄金期。そろそろ三十路も近いけれど足抜けなんて選択肢、一顧だにしておりません。

 1位は『Dies irae〜Acta est Fabula〜』、揺るぎありません。完全版であるファーブラを出す前にハーフサイズのクンフトを出す、という商法は正直肯定しかねるが、内容それ自体に関しては涎を垂らして擦り寄る他に術がないほど甘美で無二。まず間違いなく史上最強の厨二病エロゲーです。ご存知ない方のために一応説明しておきますと、日本の地方都市にナチスの亡霊どもが押しかけてきて霊的な戦争を繰り広げるという、「それっていったいいつの時代の伝奇バイオレンス?」なストーリーを「正田節」と言われるほど個性が強いシナリオライター正田崇の筆で紡いだ異形極まりないソフト――それが『Dies irae』なのです。企画開始から約6年を経て完成と、エロゲーにあるまじき壮大な期間を掛けて制作された一本であり、あまりにも開発が遅かったせいで一度は不完全な形で無理矢理発売されて物議を醸したりしました。このファーブラが世に出るまで、『Dies irae』は「未完成」の代名詞だったと言っても過言ではありません。期待作が悲惨な出来となって発売されるのは、実のところエロゲーだとよくあることですが、それをユーザーの望むクオリティで徹底的に作り直すなんてことは希であり、小手先のリメイクに留まらない真実真正の「完全版」が無事こうして陽の目を見ることができたのはまさしく奇跡。延々と期待の炎を燃やし続けたファンとしては、「僥倖」の一言で片付けられぬほど嬉しい。アクが強く、また全体的に勢い任せ、力任せなところが目立つものの、細かい設定まで偏執的に練り込まれている点は高く評価したい。気になる方は体験版をやってみてください、今度こそ「たいけんばんにだまされたっ」っちゅう最低の既知感(ゲットー)を清々しく豪快にブチ破ってくれます。

 2位の俺翼と3位の村正はどっちを上位に選ぶかで迷いました。かなり迷いました。迷った末に『俺たちに翼はない』を取ったのは、有体に申して「なんとなく」です。そもそも当方に「それはきっと何処にでもある、ありふれた物語」と「――これは英雄の物語ではない」に優劣をつけらける明確な基準なんてあるものか。路線が違いすぎて比べらんないんですよ。何なら同率2位って解釈していただいても結構。『俺たちに翼はない』は群像劇の色合いが濃い青春コメディで、章ごとに主人公が代わるところが特徴。開発期間の長さでは『Dies irae』に負けておらず、企画段階から数えるとやっぱり6年近く掛かってます。こっちは単にシナリオライターの王雀孫が安定して遅筆ってだけですけどね。遅筆でもじっと辛抱強く待ち続けるファンが存在するだけのことはあってテキストの質は一頭地抜けており、ストーリーを度外視してただ読んでいるだけでも幸せになれる。シナリオ量の割に攻略可能なヒロインが少ないのはやや難点ながら、来年に続編ないし外伝の発表があるとかで、そちらを心待ちにしています。先述した通りライターが遅筆なので実際に発売されるのは2012年くらいかもしれませんが、それでも耐え忍んで待つ価値はあると判断している。『装甲悪鬼村正』は「善悪相殺」をテーマに据えたスラッシュダークADV。鬱……というのとはちょっと違うが、軽い気持ちで手を出すと「うげぇ」ってなりかねません。空飛ぶパワードスーツみたいな鎧が古代から存在しているというパラレルな世界を舞台に、武者たちがそれぞれの思惑を秘めて屍山血河を築いていく。アンチヒーローと見せかけて案外王道的に燃える要素も盛り込まれており、いつしか夢中になって貪り読んでいた。奈良原一鉄という、これまた個性の強いライターが筆を執っており、今年は「ライター買い」派の当方にとってのまこと幸福絶頂な年でした。『真剣で私に恋しなさい!!』はヒロインを「武士娘」で統一した学園青春恋愛コメディ。しかしバトルに期待するよりも、多彩なキャラクターたちが織り成す掛け合いの軽快さを楽しむが吉だ。とにかく掛け合いのテンポが絶妙、しかも読んでも読んでも終わらない長大さを誇っていますから、いつまでも快楽を味わい続けることができる。個人的にはドイツ娘のクリスが気に入ったが、どうも不人気みたいで悲しかった。あと不死川心ルートが存在すると見せかけておいて実は単なるバッドエンドだったと判明したときは泣いた。

 『漆黒のシャルノス』はライアーソフト通算24本目のソフトであり、シナリオライター桜井光手掛けるスチームパンクADV第3弾。我々が住む地球とは異なる、パラレルな世界のイギリスで怪奇と幻想と科学が交じり合う。アガサ・クリスティーやシャーロット・ブロンテなど実在の作家をモデルにしたキャラクターが登場する一方で、シャーロック・ホームズのような「こちらの世界」では架空とされる人物さえ平気で出てくる自由さ加減。元ネタが分からないと面白さを判じかねる部分はあるにせよ、桜井光特有のきれぎれな文体が病みつきになってしまえば、元ネタとかそんなことは瑣末事となり果てる。AKIRAの美麗なCGや素晴らしい楽曲、そしてかわしまりのの見事な演技が相乗して極上の一品に仕上がっています。ライアーソフトの中でも一、二を争うほど肌に合った作品でした。『るいは智を呼ぶ』は「性別バレすると死ぬ」っていう過酷な呪いを背負った女装少年が似たような境遇の少女たちと同盟を組んで共闘する話。「本当は女装なんてしたくない、みんなに嘘つきたくない」と苦しむ主人公に自然と感情移入してしまう点で、このソフトは既に勝ち組と言えましょう。テキストの癖が強く、馴染むまでかなりの時間を要するが、一度ハマってしまえばこっちのもの。あとは独特極まりない掛け合いをひたすら楽しむばかりです。まずは体験版ダウンロードして無事クリアするところまで漕ぎ着けられるかどうか、試してみることを推奨。攻略制限のせいで某ヒロインのルートは最後まで解放されない仕組みとなっていますけれど、その最終ルートこそが一番面白いので、製品版を購入した際はなんとしても最後までやり遂げましょう。『吸血奇譚ドラクリウス』はクリア目前まで進めたのにPCが故障してしまって、以来長らく放置していた奴。一念発起して再インストールし、なんとかコンプリートさせました。なので正確には今年プレーしたソフトとは言いがたいが、そんなこと言ったら『るいは智を呼ぶ』も似たり寄ったりの事情(コンプするまで約500日掛かった)抱えているし、細かいことは無視した。真祖の血を引くハーフヴァンパイアの美少年が、吸血鬼たちとの激しいバトルに直面しながら「自分は向後どう生きていくべきか」を手探りで模索していく伝奇ストーリー。CGの出来不出来にバラつきがある、システムや演出がショボい、主人公に声が付いていない、ルートは2つあるがメインに比べてサブの内容が見劣りする、等々不満点を上げれば結構出てきます。しかし、「吸血鬼たる己を受け入れる」ことに主眼を置き、且つ繰り広げられるバトルも力任せばかりでなく頭脳戦を交えて変化に富ませたりと、シナリオ面での頑張りが効を奏して意外と心に残る一本となっています。もっとこう、年単位でしっかり入念に作り込まれていれば上位へ食い込む大物になっていたやもしれませんが、まあそれは虚しい仮定だ。『俺たちに翼はない〜Prelude〜』は本編に先駆けて発売されたFD。「有料体験版」と揶揄されることもあるくらいなので、その中身は……どうかお察しください。本編と被らないオリジナルの部分なんて、せいぜい3時間程度じゃないかしら。王雀孫信者にとってはその3時間すらも黄金に等しい奇跡なわけですが。実際、当方は短編「ある日の明日香」だけで元が取れた気がして、「ある日の京」でお釣りが来て、「ある日の美咲」に至っては払い戻しまで受けた心地がしました。短くキリ良くまとまっておりますゆえ、ふと王テキストが恋しくなったときに再プレーする分としてはうってつけなんですよね。俺翼本編に骨の髄まで浸り切って、王の作風に焦がれ飢えている人ならば買っても損なし。

 てなわけではい、中途半端な本数ですが、ランキングはこれで終わり。他にもいくつかやってますが残念なことにコンプリートまでは達せず、結果として10本も揃えることはできませなんだ。充分な時間がなかった、というよりも、充分な時間をつくることに失敗した我が身の不徳を羞じるばかり。エロゲーやれなかったことを「不徳」と表現するのもなんだか変な話ですが、来年はもっとガンガン積みゲーを崩していこう。

〔映画〕

第1位 『96時間』
第2位 『スラムドッグ$ミリオネア』
第3位 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
第4位 『ホット・ファズ』
第5位 『アルティメット』
第6位 『ウォッチメン』
第7位 『サマーウォーズ』
第8位 『イングロリアス・バスターズ』
第9位 『2012』
第10位 『バンテージ・ポイント』

 劇場で観た作品が11本。CATVやDVDで観たのが8本前後で、トータル20本弱ですね。当方としては多い本数です。文句なしの1位は『96時間』。元特殊部隊のパパが攫われた娘を救出するため4日間不眠不休で戦い抜くノンストップ・ジェットコースター・アクション・サスペンス。見所はとにかくワンマンアーミーなパパ、腕っ節強いし迷いもないしセガールばりの無双だしですごい、問答無用でスカッとする。出だしは平凡だし、ストーリーもあってなきに等しい代物ながら、鋼の如く非情で暴走特急のように止まらない主人公が放つ強烈な個性だけですべてがパーフェクトに成立してしまっている。もっともシンプルでもっとも強靭な一本でした。あれを劇場で観れたことが何よりも僥倖。『スラムドッグ$ミリオネア』はタイトルのせいで食わず嫌いしていましたが、いざ観てみれば評価の高さも頷ける出来だった。クイズ番組で順調に勝ち抜いていく主人公、しかし彼にイカサマ疑惑が持ち上がって……という具合に筋立てを紹介すると如何にも単調そうな雰囲気を感じるだろうが、いきなり拷問シーンから始まり、警察の取調べで「なぜ自分がクイズの答えを知っていたか」を説明する=クイズに仮託して主人公の人生を振り返っていくっつー技巧的な手法が厭味なく嵌まっていてするりと引き込まれる。技巧的すぎて鼻に付く部分もあるが、あそこまで徹底されると「つい足の裏や爪の間や腋の下を嗅ぎたくなる」気持ちにも似た悦楽を覚えます。合う合わないは別として、一度観ておいても損じゃないと思う。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』は新EVA第2弾。総集編に近かった第1弾と違ってオリジナル要素がふんだんに盛り込まれており、重度のファンが繰り返し観に行ったことも納得の出来映えです。追加キャラの真希波はまだ顔見せ程度の出番ながら、アスカ、レイ、シンジ、それぞれがそれぞれに懸命で、諦めを否定し足掻き抜く姿に胸が震える。「熱血EVA」「ド根性シンジ」みたいな揶揄もあるけれど、前世紀の鬱屈を晴らしてすべてを清算してくれるなら熱血もド根性も歓迎だ。

 『ホット・ファズ』は地方なので公開劇場がなく、CATVで観た。英国版バッドボーイズとも言うべきコメディ交じりのポリスアクション。ロンドンで活躍する敏腕オフィサーが片田舎に左遷され、のどかな村で連続する不審な死の謎を追う。前半と後半の落差が異常に激しく、冷静に観ると甚だバランスの悪い作品ながら、あえて冷静にならないで観れば「うひょー、すっげー!」と興奮すること請け合い。「まさかの時のロンドン騎馬警察!」以降に訪れる展開はB級映画史屈指の名シーンであります。DVDも買っちゃったし、いずれまた鑑賞するとしよう。『アルティメット』は『96時間』の監督(ピエール・モレル)が撮った一本。そうとは知らずに買いましたが、結果としてアタリでした。ストーリーは特に評価しないものの、パルクール描写を含むアクションシーンの迫力、スラム化した近未来のフランスが漂わせる煤けた空気、この2点だけで満足できます。2もあるが監督はモレルじゃないらしく、買おうかどうかちょっと迷っている。『ウォッチメン』は有名なアメコミを実写化したもの。アメコミ原作の実写映画は妙に能天気だったり妙にダークだったりするが、これはダークを超えて「ヒーロー物のアンチテーゼ」に差し掛かっている。ヒーローなんて正義の味方じゃなく、単なる暴力装置に過ぎない――と看破したうえで「暴力装置がもたらす平和」についてアンサーを出す。アメリカにもこういう作品があったのか、と素直に驚きました。ミーハーですけどロールシャッハが好き。やってることは通り魔的だけど、なんか健気でキュンキュン来る。

 『サマーウォーズ』は『時をかける少女』の細田守監督による劇場アニメ。400年以上の歴史を誇る武田家臣団の末裔が住む田舎と、アバターが歩き回るネット上のバーチャルシティ、この2つを舞台にして物語を紡いで行きます。はっきり言って両世界の接合が最後までうまく行かず、糊が乾き切らないまま終わってしまった印象を受けるが、ストーリーそのものは平明かつ明快で盛り上がることができた。ただ、「こいこい」が始まるまでヒロインの夏希先輩に好感を持てない構成となっているあたりはやはり残念。恋愛に関してはスタートラインに立ったばかりとしか思えないので、ラストのチューも効果的な幕切れとは映らなかったです。面白いんだけど、もっと練れなかったのかなぁ。『イングロリアス・バスターズ』はブラピ率いるならず者集団がナチスどもを殺して殺して殺す話。込み入ったところがなく、ただただ単純にぶっ殺し映画として観れる。間違っても感動はしませんね。むしろ最後は呆気なさが待ち受けている。とにかく前半は右肩上がりに面白くなっていくので、最初の1時間だけでも観る価値はあります。まだやってるかどうか知りませんが、例の「つまらなかったら返金する」キャンペーン実施中の映画館があれば試しに行ってみるがよろし。『2012』は人類がヤバい系の終末映画。CGを駆使した各種崩壊シーンの迫力は絶大です。危機一髪状況が連打されすぎて、ほとんどゲームみたいになっているのには笑った。半端にリアリティのある後半も笑えます。劇場で上映しているうちに観ておいた方がいいでしょう。『バンテージ・ポイント』は同一時間上の出来事を都合8つの視点に切り替えて反復するサスペンス映画。つまりハリウッド版エンドレスエイトです。というのは冗談で、感覚としては『街』に近い。最近だと『428』か? やってないのでわからないが。執拗に話をリピートする形式のため重複シーンも多く、「もうそれいいってば」とうんざりしてくる場面もあるにせよ、90分と比較的短い時間にまとまっているおかげもあって最後まで付き合えました。

・拍手レス。

 エピソードを掘り下げる事によりギロチン編で死ぬあの人のエピソードまで掘り下げられて心がチクチクします。
 むしろシュピーネさんの掘り下げられなさに号泣。結局出番の追加がなかったじゃないですか、あの人。

 こんいちは!いつも楽しく日記やレビューを見させてもらってます。ついに完結したDies最高ですね!もう全EDクリアしてまたやってますよw白本で異常なぐらいの設定の細かさやこだわりなどを知った後プレイすると何気ない所のネタの絡ませ方などがさらに発見できてまた面白いですよw焼津さんのFabulaのレビュー楽しみに待ってます
 やっとこ終わったところですが、まだ全然咀嚼し切れていないですね。もう何度かやり直さないと全身の細胞に染み渡らない。白本もこれから読むところです。未知はまだまだ当方を見放していないようだ。


2009-12-27.

『紅 kure-nai(4)』、これまではオリジナルエピソードを挟みつつも基本的に原作の筋をなぞる内容だったのに、ここに来て原作とは違う流れに突入していますね。読んでビックリしました。

 なるべくネタバレしない範囲で解説しますと、4巻では原作の2冊目に当たる『紅−ギロチン−』をベースに、原作3冊目である『紅−醜悪祭(上)−』から出演したキャラを前倒しで持ってくる、パッチワークじみた構成となっています。おかげでストーリーも随分と変わっている。斬島切彦(表紙を飾っている子、二つ名は「ギロチン」)が真九郎と友好的に出会い、「一緒に仕事しないか」って誘う流れになるけれど、真九郎が話を蹴って交渉は決裂。結果として対立する立場を取ることに……というのが原作『ギロチン』の大まかな流れだったが、漫画版ではそもそも「お誘い」が掛からず、従って両者が対立しないまま進行していく。一種のifストーリーっぽい感触。原作に比べると身を置く状況のハードさが減ってサスペンス要素も薄くなり、緊張感はなくなってしまったが、重い展開が消えた分だけ読みやすいことは読みやすい。それに、切彦のキャラクターを描く方針も、「刃物を握ると凶暴化し、少年っぽい粗雑な口を利くようになる」ところを強調して「少年的な切彦」がメインになっていた原作に対し、漫画版では「度を越した異質さのせいで満足に友達をつくることもできない少女」という部分に焦点を当て、扱いもややヒロイン寄りとなっています。どちらかと申せば原作のアプローチの方が好きですが、これはこれで面白い。少し意表を衝かれた心地がしました。5巻は「崩月家襲撃」なる原作にもなかった展開に差し掛かるみたいで、続きを楽しみにしています。それにしても、星噛絶奈が出てくると『醜悪祭(下)』の悪夢を思い出して心臓に悪い。あれからもう20ヶ月が経過したのか……片山憲太郎は今なにをしていることやら。

作家・多島斗志之が失踪

 ほう、多島斗志之の記事か、何か新作を発表したのかな……と思いつつ読んだので仰天しました。書置きを残して行方不明とは。どうか無事でいてほしいものですが……。

『Dies irae〜Acta est Fabula〜』、玲愛ルートの途中まで進みました。コンプリートは未だ叶わず。

 意気揚々と向かった「未知の塊」たる玲愛ルート、正直最初は「BADエンド行っちゃったか」と勘違いしそうになりました。何せ虜囚の身となった蓮のところにルサルカが現れて、性的な拷問を加え始めるんですから。そう、これは07年版のみに収録されていた「ルサルカBADエンド」と同じ流れ。拷問シーンの描写自体はほぼ一緒ながら、導入が違うせいで印象も若干変わっています。ただ例の「怖イッヒ」とかはそのまんまだ。マリィルートや螢ルートでは仄めかされるだけに終わった「蓮のルーツ」を暗示させるCGが一瞬だけ表示され、「もしかしてこれ、BADエンドに見せかけた普通のイベントか?」と気づいたところで玲愛登場。物語はルサルカから離れて本筋に復帰します。つまり、玲愛ルートを攻略しようとしてルサルカが出てきても、リセットせずにそのまま進めることが肝要なり。当方も危うく「ルサルカBADの確認は後でいいや」と回れ右するところでした。クンフトに収録されなかった時点で薄々察していましたが、やはり完全版ではBADエンドが存在しない仕様になったんですかね。これで現時点における07年版の価値は「ルサルカBADエンドが収録されている」だけとなったな。いえ、冗談抜きで、完全版と読み比べて「面白い、興味深い」と言える箇所はあそこのみですよ。勢いに乗じ、07年版の7章以降を2年ぶりに改めて読み返してみたが、他のところは本気でどうにもならん。

 気を取り直して玲愛ルート。7章はルサルカの性的拷問&偽りの日常を挟んだ後、ハイドリヒ卿との対面を経て、神父による開戦の報せで幕を下ろします。だいたいマリィルートをなぞるような形だが、最後に玲愛が教会から家出してしまうため、次の8章から早くも未知が押し寄せてくる。香純の部屋でエリーからの連絡を受け取り、電話が爆発するシーンの直後に思いも寄らぬ人物が訪ねてきたりとか、ワクワクする展開がいっぱいいっぱい。つか、マリィの「言ったでしょ、カスミみたいな扱いしたら怒るよって」というセリフにウケた。文脈からして香純を貶す意味ではないにしろ、だんだん「香純」の単語がDiesにおける不名誉の代名詞となりつつある気がしてならなかったです。あの子もなかなか可哀想なヒロインだ。さておき、8章の主舞台は展望台。そうです、「ヴァレリア・トリファは俺が殺す」の地です。合間合間に多少追加されているテキストもありましたが、ほぼ公式サイト通りに再現されています。ああ……これで2007年に撒かれていたセリフや文章はすべて消化されたことになるな。そう考えるといやに感慨深い。司狼の「女の陰でバトルの解説なんかしてる男は、死んでいいだろ」がドラマCDで喋っただけなので、これも本編で使ってくれたら完璧なんだがなぁ、と嘆息しつつ9章へ。「みんな大好きルサルカさん」の過去、彼女が辿ってきた230年間をザッと振り返る冒頭からして嬉しい。「さよなら」と言い合って別れたはずの蓮と玲愛が、しばらくその場に留まっていたせいで結局別れなかった――ってのはさすがに不自然だが、「ヴァレリア・トリファは俺が殺す」を変えるわけにはいかなかったという事情が理解できるだけに許容範囲内。この章では螢もルサルカっぽくネチネチしていて素敵でした。「ねえ、どんな気持ち? ねえねえ、どんな気持ち?」とハッハットントンせんばかりに喜悦しちゃってます。なまじ螢ルートを攻略した後だけにクるな、これ。各々が旗幟を鮮明にし始め、ふたつの陣営に分かれていき、アイン・ゾーネンキントたるイザークが降臨するところで〆。残酷劇(グラン・ギニョル)はこれから、という雰囲気を横溢させる。

 10章はラジオで予告していた「地獄めぐりツアー」がスタート。あらかじめ別府の地獄めぐりに言及しておいて「大分県ですか?」というボケを封じるあたりがなんとなく正田崇的だ。どうでもいいところにまで伏線張っている感じ。「地の星」を自負する魔女ルサルカは誰にも追いつけぬ運命を慟哭し、「邪なる聖者」と呼ばれたトリファ神父が己の業と渇望に直面し、リザとエレオノーレは長年の感情的対立に終止符を打たんとし、暴風纏う凶獣シュライバーは遂に枷を砕き鎖を壊して解き放たれ、そして相変わらずベイは美味しいところを掻っ攫われる。多すぎるくらいに見所が多い章というか、もうこれノリが完全に最終章ですよ。創造位階に達したうえで堕天モードを発動した蓮が三騎士全員を相手取ってゴチャマン繰り広げるという、心底ありえない展開。熱くなるの通り越してもう笑ってしまった。なんなんですか、まったく。軍服姿のニートが一瞬だけカットインする演出といい、ファンのツボを心得まくってやがるわ。音速超過バトルなくせして会話が成立するあたりは正直ギャグめいてるものの、セリフも何らかの術で霊的に発音しているのだと強引に解釈させてもらった。会話のテンポそのものは良いし、ライトノベルでよくある「感覚的な時間の引き延ばし」に慣れている人なら楽々順応できるだろう。いやホント、「あとまだ3章も残っている」ってことが信じられなくなる盛り上がりでありました。それと思ったことですが、一種の因果応報というのか、別のルートで殺された奴がこっちのルートでは逆に相手を殺し返している状況が目立ちますね。露骨なまでの皮肉さに痺れます。

 11章、ドラマCD『Die Morgendammerung』以来ずぅっとお預けになっていた因縁のバトル、「ヴィルヘルムVSシュライバー」という夢のカードが実現する章……みたいなのですが、残念、そこにはまだ辿りつけていない。すみません先輩、俺はまた(略)。少なくとも今年中に終わらせられればいいな。それにしても玲愛先輩の熊本に対するこだわりはなんなんだ……。

・拍手レス。

 長らく待ち望んだ怒りの日、頑張って23日中にコンプしようという意気込みの人も多いのではないでしょうか?かくいう私もそうですが。さぁ、私に未知を見せてくれ!
 一刻も早く結末を見たいという気持ちと、なるたけじっくり楽しみたい気持ちがぶつかり合うジレンマ。とりあえず時間が止まればいいと思いました。

 どすこい!女雪相撲 はエロゲ ギャルゲームにあまり興味のない俺でも面白そうじゃないかと思う。
 売れる気はしませんが尻のエロさはガチ。

 雷蝶というと狂乱家族日記の平塚雷蝶を思い浮かべます。
 狂乱、1巻だけ発売当時に読んだっけなぁ。

 擬似ハーレム制度の学園モノや、あるいは剣と魔法のファンタジーに食傷 最近のラノベにありがちと昔のラノベにありがち
 昔は同じような設定でも飽きずに読み漁ってましたが、最近はあらすじだけで「もういい」な感じ。やはり歳を取ったせいか……。

 とりあえずカスミはやればできる子ww
 とはいえ攻略可能なヒロインとは思えない扱いがチラホラと。

 2年前の怒りの日はもう許せますね。最高の未知の結末でした。
 最大のスワスチカが閉じた、と言ってもいいのでしょうね……。

 ここに既知感(ゲットー)は破られた、てことでしょうか。あの、全国のプレイヤーが猛り狂った正真正銘の「怒りの日」からここまで持ち直すとは、その地力を称えるべきか、「最初からやれよ」と言うべきか。
 最初からファーブラは無理でも、せめてクンフトぐらいはやっててほしかったです。にしても、まさかGardenよりも先に収拾がつくとは思わなんだ。

 lightHPにてクリスマス絵が…ってザミエルww
 エレオノーレは螢ルートで晒した灼熱乙女っぷりが凄すぎて、今じゃ普通にヒロインに見えてしまう不思議。

 ミスマルカの6巻、なかなか飛ばしてますよー。2月にはレイセンも出るみたいですし
 6巻読み始めましたけど、Diesが終わらないからなかなか進まず……というかこの年末、気になる新作出過ぎ。レイセン1巻は素直に楽しみです。


2009-12-24.

・明日は玲愛先輩の誕生日。そして、『Dies irae〜Acta est Fabula〜』の発売日――こんばんは、アップデートパッチでとりあえず螢ルートのみ攻略を済ませた焼津です。製品版の方は一部のシュリンクに不備があったとかでお詫び文が出ていますね。完全版は未開封のまま保存するつもりだったから、もし不備があったら再シュリンクしてもらおうかな。アペンド版は開封する予定なので別に不備があってもいいや。

 さて、22日に配布開始されたファーブラのアップデートパッチ、容量は驚きの3GB。紛うことなきギガパッチであり、ダウンロードするのに苦労した。落とし終わってインストールは恙無くフィニッシュしたけれど、いざ起動しようとなると「[1911]ライセンス認証に失敗しました。」の表示が出るばかりでシリアルコードを入力することすらできず、泣きかけた。Diesスレを読み、原因がウイルスバスターと分かったので一旦切ってから起動、認証には無事成功した。クンフトよりも手間が掛かったけど、22日中に動作させることができたのだから良しとしよう。起動直後恒例、既知感にまみれたメルクリウスの長々とした口上さえ愛しく思える有様だった。

 プロローグと1章〜3章は体験版でプレー済なのでさっさかスキップ。選択肢が少なくなっていることに驚きつつ、4章は蓮とシュピーネの掛け合いを楽しむことを重視。なにげに「形成(イェツラー)――我に勝利を与えたまえ(ジークハイル・ヴィクトーリア)」のところにエフェクトが加わってましたね。5章、6章はやや駆け足気味にクリック連打。6章最初の選択肢が一択化していたところを見るに、どうやらファーブラではフラグの立て方によって選択肢が変化するシステムになっているみたいですね。「誰寄りの選択をしているか」を判断して自動的に選択肢を削っている感じ。攻略がより簡易となりそうな気配だ。ほか、「代替」の読みが「だいたい」になってますが、クンフトでは「だいがえ」じゃなかったっけ? 個人的には「だいたい」の方が好み。

 そして遂に……遂にですよ? 螢の、櫻井螢の、07年版にもクンフトにも収録されていなかった、「幻となって消えるのではないか」とさえ恐れたルートが、出・現! おお、これが未知というものか……言葉では言い表せぬ感激に打ち震えたが、時間が時間だったので本格的な攻略は翌日に回して就寝。夢の中でまでファーブラをプレーしていた(蓮が条太郎、ニートがDIOみたいな感じで闘っていた。「時よ止まれ――お前はうつ」「否、断じて否否否否否否ァッ!」)のは我ながら笑った。螢ルートは香純ルート派生ということもあり、7章が始まった直後は「これ、ちゃんと螢ルート行けるよな? 間違って香純ルートに入ったんじゃないよな?」と不安でしたが、螢が捕虜になったところで選択肢が出てきます。上を選べばそのまま香純ルート続行、下を選べば螢ルートに分岐する。07年版で使われ、クンフトで削除された、「例のイベントCG」が復活するかどうかで分岐したか否かの判断がつきます。この調子だと玲愛ルートもマリィルート派生かな?

 上述の通り螢ルートは香純ルート派生であって、7章の展開は香純のそれとほぼ一緒。終盤が違うくらいです。にしても蓮の「勃たねえんだよ。おまえじゃ無理」発言にゃ噴いた。気持ちは分からなくもないが、エロゲー主人公が言うてはならんことを言ってしまいよった……! あと先月まで村正をやっていたせいか、「な、なによ――それ、ばか、さいいていっ」「いかにも!」「ひとでなし」「いかにも!」「へんたい」「いかにも!」「……自分勝手」「いかにも!!」という遣り取りが脳内再生されてしまった。結局この章、違いはこれだけだろうかな……と落胆しかけた矢先、リザが雨に打たれるシーンで異変が。「視線の先は遥か上方、橋塔の上」「総てを焼き尽くす紅蓮のごとき焦熱の塊――」 そう、いきなりザミエルさんが御降臨。テンションゲージが一気にドカンと跳ね上がります。ベアトリスを評して「頭の悪い我が手弱女」など、エレオノーレらしい歪んだ愛の溢れる言葉に頬のニヤニヤが止まらない。8章は小休止的内容で、話もほとんど香純ルートと変わらない。よって割愛。9章は問題の学園戦です。「問題の」と称した理由は、07年版におけるバトル描写でここが一番つまらなく、しかもクンフトでは部分的にしか修正されなかったため。古くからのファンにとって、ここの完全修正はまさしく悲願でした。螢ルートでは蓮に同行する相手が司狼からエリーに変化しており、しょっぱなから「今度こそ燃える学園戦が拝めるのでは」という期待を抱かせる。ちなみにエリー、「この制服可愛いのはいいけどやっぱ寒いね。デザインした奴、かなりキレたセンス持った変人でしょ」と月乃澤学園の制服にツッコミ入れています。二の腕が空いたデザインで、しかも作中の時期は冬ですから、本当に寒そうに見えるんですよね、あれ……ユーザーが常々思っていたことをようやく代弁してくれた。さておき、肝心の戦闘シーン。随伴者が変わったこともあり、戦闘の推移も異なってくる。前半こそ香純ルートと同じですが、後半はまるっきり違う。具体的に書けば、ベイの相手が櫻井螢となり、蓮が戦う対象もルサルカ本体からルサルカの操るカインに。新曲もバンバン追加されていて未知がドバドバ。蓮とルサルカのガチバトルが見たかったので切望したものとは少し違っていたが、これもこれで悪くない。いや、いい! ヴィルヘルムの可哀想な末路も含め、満悦致しました。ついでに確認のため香純ルートの9章もやってみたが、こちらは蓮にボイスが付いただけで特に加筆修正はなかった。残念。

 7章から9章にかけては香純ルートと被るところが少なくなかったけれど、状況が変化しまくったおかげで10章以降は完全に別物と化します。さながら未知の洪水。螢ルートの本領発揮だ。まず、公式ページでお披露目されたサンプルシナリオ――「私も、今デジャヴを感じた。……なるほど、これが副首領閣下の方術なのね。恐ろしくなる、本当に」のところ――を消化。急に「副首領閣下の方術」という単語が出てくるのは不自然に感じたが、それ以外はうまく話に馴染んでいる。次に、07年版では収録されなかった(CGだけは公開されていた)教室でのエッチシーン。「私も、今(略)」は屋上のシーンだから、どうやって教室のエッチシーンに繋げるんだろうかな、と眺めていたら突然屋上が崩落。ふたりして教室に雪崩落ち、「前回の戦闘でだいぶガタがきていたみたい」と言い訳臭い説明をしたうえで螢の蟹挟みが炸裂します。ご、強引なんて流れじゃねぇよコレ。場面転換をおもっくそ端折りやがったな。まあ、崩れ落ちた天井から差し込む月の光に照らされてズッコンバッコンするというのも風情があって宜しいんですが。とはいえ、肝心の濡れ場そのものにはあまり風情がないんですが。螢を嬲りつつ彼女のイキ顔を眺めようとする蓮、そんな彼を思いっきり睨みながら信じられないイキ台詞で絶頂する螢。いかん、エロシーンなのに違う意味でニヤけてしまう。螢が眉間に縦皺刻みながらあんな台詞を絶叫してイッたことを回想するだに股間が熱くなるな……『Dies irae』はバトル主体でエロがオマケというパラロス以来の伝統を守っているけれど、螢とのまぐわいはオマケって域を超えてなかなか良いではないか、良いではないか。嗜虐心旺盛な者同士の性交というのは意外と萌えるものですね。ラブラブじゃないのが却ってラブラブな印象を与えるというか、実に面白いイチャつき方をする。そして最大の見せ場、暴風(シュトゥルムヴィント)シュライバー卿襲撃で最高潮の盛り上がりに達します。いやあ、それにしてもシュライバー役の声優さん、07年版に比べて随分と演技が巧くなったなぁ。当時は「微妙……」って評価だったけど、今やこの人以外には考えらんないや。

 11章は2007年当事の我々が狂おしく求めた「夕暮れの街灯背中合わせ手繋ぎCG」が投下される待望の章。ベアトリスや櫻井戒といった螢ルートの重要人物についてもチラッと触れられるが、あくまで「チラッ」程度。本格的に俎上へ乗せられるのは12章以降であり、振り返ってみれば11章というのは大して話が動かなかった「繋ぎの章」って印象ですね。12章は激闘に次ぐ激闘。「幹部を除いた黒円卓のメンバーにおいて最大級戦力を保持する者」という触れ込みに反して香純ルートやマリィルートじゃイイトコなしでアッサリやられてしまっていたトバルカインが、これでもかと創造を連発する事態に瞠目させられた。さすがにマリィルートを上回るほどの燃焼度ではないものの、「自分はこういう『Dies irae』が見たかったんだ!」と歓喜に咽ぶこと必定の面白さでした。最終章たる13章ではベアトリスが本当の意味で「登場」する。随分勿体ぶった感があることに重ねて、ときたまセリフが螢のものかベアトリスのものか判断に迷うという混乱も生じるが、何であれこれこそが我々ファンの追い求め追い縋り追いついた未知。涙を流してこの既知感(ゲットー)崩壊を称えずにはいられない。ぶっちゃけ、螢ルートは香純ルート同様に獣殿やニートを打倒する条件が整わないので「やった! 大勝利! グランドフィナーレだ!」ってな結末には辿り着けず、「あれから○年。俺たちは今も、戦い続けている……」系のエンドに落ち着くことになるだろうなと、クンフトをプレーした頃から予想していてそれは概ね当たったのですが、そこに至るまでのバトル数が思った以上に多くて「あれから○年」エンドにも落胆を覚えないというか、テンションの上がりっぷりではマリィルートに匹敵するものがあると申しても過言ではない。新たに明かされたネタ、新たに示された繋がりを頭の中で整理するのに忙しいこと忙しいこと。そして各々が自分の渇望を癒すために仮借なく激突し合う様が燃えるのなんのって。もし、螢ルートと玲愛ルートが分売されてしまって、今年のクリスマスに発売されるのが螢ルートのみだったとしても当方は満足していたやもしれませぬ。エンディングを迎えてしばらくは余韻に浸るのに精一杯で、すぐさま玲愛ルートの攻略に向かおうなどという気持ちは湧いてこなかったですし。余韻とは別に、ただ単純にプレー時間が長かったせいでヘトヘトになったから、という事情もありますが。正確に計測したわけじゃないけれど、螢ルート分岐後のみに限っても14、5時間は掛かったんじゃないかな……蓮にボイスが付いた影響もあるとはいえ、追加シナリオにしては破格のボリュームでしょう。まだ玲愛ルートを終わらせるどころか突入すらしていないのに、07年版から丸2年も待たせたことに関して当方は早くも「許した」状態に転びつつあります。それくらい螢ルートが面白かった。特に13章は圧巻だった。黒円卓との決着が付かないことは織り込み済だったから構わないが……しかし唯一の不満を述べるとしたら、あまりにも多様なネタをぶち込みすぎたせいで、相対的にこのルートのヒロインである櫻井螢の存在が終盤あたりでやや霞んでしまったこと。この一点が残念と言えば残念である。螢自身は12章が頂点で、13章は他の連中に食われてしまってるんですよね。恋愛主体のストーリーじゃないんだからしょうがないっちゃしょうがないし、そもそも些細な不満でしかないのだけれども。

 とまあ、こんな調子でクリスマスに怒りの日を謳歌しております。一昨年の荒んだクリスマスが嘘みたいな充実ぶり。明日から玲愛ルートの攻略に取り掛かり、できれば次の日曜日くらいにコンプリートしてしまいたいです。明日はwebラジオが公開されるし、製品版が届いたら白本も読まなきゃですし、今は読まずに溜めているDiesスレの書き込みもチェックしなきゃですし。Diesに関する予定が目一杯詰まっていて、ああ当方はなんて幸せなんだろう。これが夢ならずっと覚めないでいてほしいわ。

何やら『俺たちに翼はない』に動きが……

 「2010 Coming soon... NEXT GENERATION COMES!!」の文字が躍っております。よもやこれが例のスピンオフ作品の予告か? 情報を漁るため久々に俺翼スレへ行ったら「201Xとかにしとけばいいのに いちいち変更するのめんどうだろ?」「20XXの方がいいんじゃないか」とか好き放題言われてて噴いた。確かに、7月31日に結果発表された人気投票の記念SSすら未だに公開されていない状況で「来年には新作が出る」などと楽観的に信じることはできません。2012年頃にはなんとか形になるんじゃないかな、と期待しつつ続報を待とう。


2009-12-21.

・雪が降るクソ寒さの中、『ヘヴィーオブジェクト』コミック版目当てで“電撃黒マ王”を本屋へ買いに行ったけど、品切なのか未入荷なのか、どちらにしろ置いてなくて憤死した焼津です、こんばんは。結局ネット書店でポチりましたよ。明日頃には届くかな。

・ハルヒ以来にスニーカー大賞の「大賞」を受賞したという新井円侍の『シュガーダーク』を読んだ。

 「大賞」作品は第2回の『ジェノサイド・エンジェル』、第3回の『ラグナロク』、第8回の『涼宮ハルヒの憂鬱』と来てこれで4度目となる。ちなみに今回は第14回なので、前回からのブランクがもっとも長い。発売前に記者会見を開くなど、熱心を超えて必死さすら漂わせる広報展開は不安材料の一つだったが、結論から述べれば悪くない出来だった。主人公が墓堀人でヒロインが墓守――擬似ハーレム制度の学園モノや、あるいは剣と魔法のファンタジーに食傷している人ならとりあえず新鮮さを味わえる設定となっています。文章も新人としては整っている部類でサクサク読める。

 ただ、基本的に主人公はひたすら穴を掘っているだけで話の進行がすごく遅いこと、可愛い女の子が一人しか出てこないこと(もう一人、性別不詳の奴がいるけど)、敵となるクリーチャーが「喰うためではなく、ただただ無目的に人を殺す」化け物であることなどもあって、紡がれるストーリーは非常に地味で淡々としている。半分くらい読み進んでもなお盛り上がる気配がなく、「これはハズレだったか……」という思いが脳裏をよぎったが、さすがに腐っても大賞作品だけあってクライマックスに差し掛かると勢いが増し、以降はススッと一気に畳んでくれた。読み心地としては「長い短編」であり、繊細さと巧妙さが潜んでいるものの多彩さや骨太感に欠き、「これが大賞ってのは持ち上げすぎじゃないか?」と懐疑する声に頷ける部分もあるが、なんであれ次回作も読んでみたいと感じさせてくれる魅力は充分に篭っていました。うまく行けば第二の長谷敏司みたいなポジションを取れるかもしれない。いやロリコン作家という意味でなく。

・今日は本来なら『Dies irae〜Acta est Fabula〜』のアップデートパッチが配布開始され、歓喜と哀絶、そして昂揚に打ち震えているはずでしたが、明日に延期されてしまってなんだか手持ち無沙汰。仕方ない、不貞寝でもしよう。しかし、時ここに至ってなおDiesが遂に完結するのだ、という実感が湧いてこないのは2年前に穿たれた傷の深さゆえだろうか。明日、この傷が聖痕と化して未知なる結末に繋がらんことを祈りつつ、今日はこのへんで。

・拍手レス。

 リトルウィッチは「ここはまだ大丈夫」と思っていたブランドだけに心胆寒くなってくるものが…
 危なそうなイメージまったくなかった。諸行無常……。

 難民探偵どうですか?
 冒頭2ページだけ読みましたが、今のところ「いつもの西尾維新」という印象。

 雷蝶閣下の人気に嫉妬!もし光に勝ったら、下手したら茶々丸とBブロック決勝いくかもしれないですね
 雷蝶の人気は底知れぬものがありますね。意外と健闘しそうな雰囲気。


2009-12-18.

・各所で「はじあくイイ」「はじあくオススメ」と頓に評判が良いのでまとめて買ってみた『はじめてのあく(1〜3)』、読み始めるやすんなりハマって「はじあくイイ!」「はじあくオススメ!」と口走り出した焼津です、こんばんは。でも3巻の帯はヒドいよね。

 作者は『こわしや我聞』の人。我聞が打ち切りに近い形で終わってから3年掛かって辿り着いた新作です。内容は「悪の組織で科学者を務めていた少年が、いとこであるヒロインの家に転がり込んで居候するドタバタコメディ」くらいで概ね伝わるかと。『秘密結社でいこう!』『しるバ.』『レベルジャスティス』など、悪の組織をユーモラスに描く作品は今や無数に存在しており、発想自体に何ら斬新さはない。開始時点で組織が壊滅していて、「主人公が一般社会に溶け込む(あとヒロインを改造する)」ことを目的とするストーリーがやや珍しい程度か。しかし、一番珍しいのはヒロインの造型。現漫画界の主流である「完全にウケ狙いの媚び媚びデザイン」に逆らうかの如く、「ボサボサ頭の眼鏡っ娘」なんていう恐ろしく飾り気のない子を投入してくる。同じサンデーの『神のみぞ知るセカイ』もキャラデザは割と地味な方だが、明らかにあれ以上。はっきり言って、服装次第では少年と見間違えるぐらいだ。初見のときは「ちょっ、これはあんもりでしょう?」とひと目でスルーしてしまいました。が、読者からの好感度がゼロの地点よりスタートするってのは、作者の腕の見せ所でもあるわけです。ひと目見て「かわいい」と思うようなキャラデザでないことは確かですが、ドタバタと賑やかな日常を積み重ね、ヒロインの良い面を少しずつチラッと覗かせることで読者の好感度は高まり、いつしか「もう、キョーコってばかわいすぐるでしょ……」と溜息を付いちゃう状態に己が陥っていることに気づく。漫画とは元来魔法であり、これくらいの魅惑(チャーム)など何も不思議なことはないのです。ボサボサ頭や眼鏡にまで愛着を覚え、髪を梳かしてコンタクトレンズに変えたインチェン後の姿を見て「キレイだけど、元の方がイイ」と素直に感じるほど、作者の術中に嵌まること請け合い。

 「かわいくない」から「かわいい」への滑らかな切り替わりを見事に描き取った良質コメディです。基本的なノリが良くも悪くも少年サンデーらしいベタベタな軽ラブコメ路線ゆえ、「サンデーは苦手」という人には薦めがたいが、「昔サンデーが好きだったなぁ」というオールド読者には是非ともプッシュしたい。悪の組織云々はあくまでスパイスであり、設定の一部に過ぎず、リソースの大部分が学園描写やホームドラマに割かれているので、タイトルに惹かれない、いまひとつピンと来ない、って人でも意外と読みやすいはずです。一定割合で暑苦しいウザキャラが混ざっているのが若干アレだけど、たまにホロリと来る要素を挟んで味を引き締めに掛かるあたりはグッド。ヒロインのいとこに当たる元女幹部(今は無職)なエーコが実に良いキャラしています。乳がデカくてサラサラの黒髪ロングヘアー、いつもニコニコ笑顔と「完全にウケ狙い」のキャラデザでありながら、働かずに家でぐうたらしてるだけのダメっぷりが美味しい。ヒロインとは「イジる側、イジられる側」の関係だが、それでも「お姉ちゃん」として慕われているあたりに二人のささやかな絆を感じさせるぜ。

lightの定期更新、今回はベアトリスラジオの第2回とカウントダウンボイスの1回目

 ベアラジはだいたい前回と同じノリ。「あの人」が登場して恋愛処女っぷりを炸裂させます。カウントダウンは初回が櫻井戒、まだ声が公開されていなかったので、言わばサンプルボイス代わりとなるな。湊斗景明の中の人ということで重々しい口調を予想していたが、あちらとはまた違った演技で一瞬「え?」となった。「中の人が同じ」と聞いていたから共通点を探せたのであって、もし聞いてなければ自力で気づくことはなかったでしょう。それくらい違っていた。改めて声優さんのすごさを思い知った次第。しかし、アップデートパッチの公開は1日延期か……それぐらいなら待てないこともないが、この期に及んで延期となるとどうしてもイヤなものが脳裏をよぎっていく。どうか杞憂に過ぎぬと証明してほしい。

げっちゅ屋、『Dies irae 〜Acta est Fabula〜』特典CDミニドラマのサンプルを公開

 本筋とは関係ない、気の抜けた雑談というか漫談といったテイスト。「げっちゅ屋さんの〜」といったセリフが出てくるし、テレカの絵柄ともリンクした内容なので、本当に「特典」というポイントを意識したボイスドラマのよう。螢のミニドラマと謳いつつゲストキャラも出演するし、どうやら掛け合いを楽しむのがメインみたいですね。この分だと本編の空隙を埋める番外編的なミニドラマとかはなさそう? ただ、店名まで出しているとなると今後FDや何かにまとめて再収録するのは難しそうだし、ゲットし損ねたらそれで最後っつープレミアムな品とはなるかもしれません。

ジョルジュ・ぺレックの代表作 "La Disparition" (「失踪」とか「消失」という意味)が『煙滅』として翻訳さる

 原文において一度も「e」の文字が使われず、英語版も「e」を用いずに翻訳した(そのため「The Void」とすべきタイトルが「A Void」になった)ため、「アルファベットを使わない言語では翻訳不可能」と言われてきた作品が、このたび「い段抜き」という試みで日本語訳化されるとのこと。おかげで「『し』っそう」や「『し』ょう『し』つ」といった語が使えなくて、『煙滅』なる見慣れない題名となってしまった模様。正直、「e抜き」と「い段抜き」とでは視覚的効果が違いすぎると思うけれど、翻訳者の努力は褒めておきたい。税抜で3200円といささか高価だが、財布に余裕があれば買ってみようかしらん。ちなみに日本では筒井康隆が『残像に口紅を』という小説で同じような試みをしています。こちらは話が進むにつれて使用される五十音が減っていくらしい。持っているけどまだ読んだことはないです。

最も地球に似た「スーパーアース」を42光年先に発(痛いニュース(ノ∀`))

 真っ先にカダス地方を連想した当方、着々と桜井光儲に化しつつあるようだ。『白光のヴァルーシア』はまだ開封すらしていませんけども。

Littlewitch、来年1月29日発売の『シュガーコートフリークス』を区切りにブランド無期限休止

 なんてこった……前回の更新で『白詰草話』を話題に上げ、それが呼び水となって様々な記憶が溢れ出し、目が遠くなるような心地良い懐古に浸ったばかりだというのに。「思い返せば設立当初からリトルウィッチは苦難の連続でした」とあるように、ブランドデビュー作である『白詰草話』は雑誌掲載された時点から注目していましたが、なかなか発売時期が定まらないせいで忘れてしまって、ふと思い出したころにはもう店に並んでいました。初回版は箱がデカすぎだったので通常版を買ったんだっけ。ストーリーやキャラの掘り下げ等、内容に関する不満はいくつかありましたけれど、それ以上に「ただ単にプレーすること」が楽しくて、何度も繰り返しちょこちょこと再プレーを重ねたものです。FFDというシステムにエロゲーの未来を見た気がしましたが、膨大な量のCGを必要とすることがネックとなり、FFDを本格的に搭載したソフトはブランド2作目の『Quartett!』で打ち止めになってしまいましたね。Witchが活動停止してから5年、名前以外は特に関係なかった両者だけど、「魔女」「小魔女」と呼ばれていた2つのブランドが共にエロゲー界から姿を消すことになるのだと、そう考えるだに世の無常を思わずにはいられない。ああ、久々に『白詰草話』やり返したくなってきたなぁ……それはそれとして、大槍葦人は同人に専念するのか、それともどこかに流れていくのだろうか。

・拍手レス。

 PCの不調が頻発する場合、コンセントのタコ足を改善したりすると改善される場合が。
 あと別のラインから電源引いてきたり、UPS(無停電装置)をカマしたり。

 部屋に置いてる電化製品はPCとエアコンぐらいなので、そもそもタコ足はしてないっス。その後調べてみましたが、結局HDDの故障だった模様。ぐぐってみたら故障率の高い地雷HDDだったとか。ギャフン。

 村正レビュー読み応えありましたー。ほっこり。俺つばドラマCDレポの続きはまだですか?w
 俺翼ドラマCD、今キーボードの真横に置いてるんでその気になりさえすれば1分で聴き始められますけれど、未だ機運が高まっておりませぬ。年を越しそうな気配。

 ずっと毎日正宗に入れ続けてたのに!蟻の人が勝ちそうな感じですなぁ。それよりふなが投稿数で一条さんを押し切りそうで恐ろしい!
 投稿と言えば、村正の支援CGがクオリティ激高で反則的過ぎる。


2009-12-15.

・ネット巡回中に突如フリーズ、パソコン本体から異音、「まさか……」と背筋を寒くしているうちにブルースクリーン。はい、お察しの通りまーたPCが壊れた焼津です、こんばんは。

 前回壊れたのが去年の9月。修理に出してからほんの一年ちょいで御釈迦になりました。HDDしか交換しなかったし、他の部分が壊れたのかもしれません。HDDが壊れたとき特有の「ガリッ」とか「カッタタタタカ」って乾いた音じゃなく、甲高い読み込み音が規則的に続く感じでしたし。一応HDDは取り出したから、さっき注文したUSBケーブルが届いたら試しに繋いでみよう。細かいデータもサルベージできるやもしらん。ともあれ、死に体のパソコンから必要最低限のデータをバックアップすることには成功したので、現在新しく買い直したPCに移行させている最中です。この文章も新パソで打っていますが、やはり使い慣れていないキーボードには違和感があるなぁ。旧機は確か2006年6月に買った分なのでおよそ3年半、そろそろ買い替え時かしらん、と修理に出した去年からコツコツと購入費用を溜め込んでいたのが役に立ちました。

 デスクトップ型が好きだけどやっぱり場所取るし、次はノーパソにしようかな……と思いつつ家電店の売り場に足を運んで吃驚しました。陳列されているのはディスプレイとパソコン本体が別々になっていない機種ばっかり。一体型なんてとっくに廃れたと信じ込んでましたけど、まさかまた盛り返していたとは。驚きつつ、予定が詰まっていたせいであまり吟味する時間もなかったから「当店のオススメ」とやらを購入して帰宅。箱を開けて更に驚愕。が、画面がでけぇ。20インチくらいあるんじゃないのコレ。デフォルトの解像度の数字を見て眩暈がしましたよ。慣れていないせいもあるが、ここまで大きいと逆に見辛いな。キーボードやマウスが電池式でワイヤレスになっているのは話に聞いていたことだけど、実物を見るとなんだか隔世の感が押し寄せてきます。当方が初めてPCに触れたのってまだOSがWindows3.1だった頃ですからねぇ。「パソコン=各種ケーブルでゴチャゴチャしている」が基礎的なイメージだったのに、今や電源ケーブルのみだなんて。ちょっとだけ近未来SF気分。

 設定に少し戸惑ったものの、こうして無事インターネットにも繋ぐことができたので、使いやすい環境になるよう徐々に整えていくとしよう。パソコンが死亡するのはこれで3回目ですから、手つきも慣れたものです。「どうせいつか壊れるんだ」と思ってこまめにバックアップを取り、極力余計なファイルは保存しないよう努めていたことも幸いしました。とはいえ、都合3年半に渡って親しんできた機が逝ってしまったことはやはりショック。こればかりは何度味わっても食欲がなくなります。さ、とりあえず諸設定を終わらせて『Dies irae』(07年版)をインストールしなきゃ。これ入れないとアップデートパッチ起動しませんからね。目立つところにドット欠けがあるのは残念だけど、画面おっきくなったし、再生してみたムービーも段違いの迫力。より一層すばらしい環境でファーブラをプレーできるようになった……って考えれば時期的に丁度良かったのかもしんない。『装甲悪鬼村正』も再プレーしたくなってきた。

中二病全快なエロゲ教えてください(⊂⌒⊃。Д。)⊃カジ速≡≡≡⊂⌒つ゚Д゚)つFull Auto)

 当然の如く、スレ内で紹介されているソフトはすべてチェック済でした。lightの『Paradise Lost』が挙がってないのは現在入手困難だからだろうか。ほか、挙がってない分では『朝の来ない夜に抱かれて』(主人公が無貌の神、つまりニャル様の力で怪物たちを瞬殺する。決め台詞を選べるシステムが特徴的。個人的にはルネッサンス山田という声優に注目するキッカケとなった一作。『エーテルの砂時計』という同一世界観の後継作もある、確かこっちの主人公はハスターだった)、『吸血奇譚ドラクリウス』(真祖の血を引くハーフヴァンパイアが主人公。「ムーンタイズ」と呼ばれる特殊能力でバトルを繰り広げる、ややJOJOチックなノリ。コンシューマ移植版『吸血奇譚ムーンタイズ』の追加シナリオでは宇宙に飛び出したらしい。同一世界観のソフトに『ひめしょ!』があるが、こちらはコメディ重視なので中二臭薄め)、『銀の蛇 黒の月』(無口な殺し屋と言葉の喋れない少女が出逢うダークファンタジー。ボイスレスを逆手に取った設定だ。後半はすごい駆け足だし、いろいろ投げっぱなしになっている設定も多いが、18禁ならではの「エロ!グロ!ヴァイオレンス!」をキチンと体現した貴重な一作ではある)、『黒と黒と黒の祭壇』(処女調教ゲーと見せかけて天使殺戮ゲー、予想外の展開でユーザーの度肝を抜いた。「聖地の守護者」にして「殺戮の皇子」たる主人公が国に裏切られて投獄され、脱獄後は復讐に走り、神の軍勢すら敵に回して戦い抜く。なお青山ゆかり演ずる真ヒロイン、チッセ・ペペモル及びその眷属ウロボロスは複数のソフトに渡って転生しています)、『ジサツのための101の方法』(電波ゲーとして有名な一本。テキストの巧妙さで定評があります。主人公がだんだん現実と妄想の区別を付けられなくなっていく。今で言う『カオスヘッド』みたいな話。「自殺波動」にやられて集団自殺を遂げた死体の山にリストカット癖のあるヒロインが腰掛けて自殺クイズを出すシーンが印象的。同一スタッフによる新作『末期、少女病』も、お蔵入りさえしなければビンビンに極まった中二作品として語り継がれていたことだろう。すごく無念)、『白詰草話』(遺伝子強化された少女たちが多脚戦車を潰したり、髭の中年に叩き潰されたりする。大槍葦人の趣味が前面に出すぎてややまとまりを欠く出来となっているが、『GUNSLINGER GIRL』がお好きな方なら手を伸ばしてみるのも悪くないでしょう、たぶん)、『二重影』(呪いのせいで「二つの影」を持った剣士が、呪いを解く手掛かりを得るため「必ず双子が生まれる島」に向かう。『月姫』とほぼ同時期に出たソフト。謎解き重視の薀蓄まみれな伝奇ストーリーにハッキリが利いた剣戟の数々と、実にマニア好みの内容だが、今やるとマップ移動システムが七面倒臭く、また形ばかりのマルチシナリオ方式にうんざりすること請け合い。モノクロのラフ画を多用して疾走感を醸しているものの、その作風が『無限の住人』を彷彿とさせるのはご愛敬である。ファンディスク『二重箱』収録の「砦に帰す」も、短いながら面白い。あと『Aria』という本に書き下ろし番外編が載っています。リメイク版とおぼしき『陰と影』は現在絶賛開発無期限停止中。ギギギ……)、『FEARLESS]』(今はLeafに所属している枕流というライターがシナリオを執筆。ある意味、『鎖』の前身か。主人公は学生なのに体術が完璧でスローイングナイフも隠し持っているなど、エージェント顔負けの最強ぶり。幽霊を蹴る描写さえあります。連続失踪事件がオカルト満載の儀式に結びついていく、至ってベタベタなストーリーだが、本編で説明されない要素が山ほどあって消化不良気味。何より許せないのは、「陵辱中」のシーンがバッサリ割愛されていて「陵辱後」のCGしかないことだ。雰囲気はちょっと陰惨だけど基本的にテンションが高くて展開もスピーディだから心地良くプレーできる。『ヘルシング』ばりのイカレ台詞や魅惑的な猟奇描写が散見されますので、もっとしっかり作り込まれていれば……と惜しむ気持ちは強い)、『リアライズ』(高橋龍也と水無月徹が久々にコンビを組んだソフト。街を舞台にした群像劇色の濃い異能バトルで、平たく書けばブギーポップみたいな感じ。テキストが非常に丁寧で、設定もよく作り込まれており、上質な中二エロゲーとなっています。が、如何せん話のスケールに比べてシナリオが短すぎ、釣り合いが取れていません。結末も尻切れトンボ。移植版では30%に及ぶシナリオの加筆があり、打ち切り感も少なくなったそうですが)などがあります。

・遅まきながら『このミステリーがすごい!2010年度版』で国内篇と海外篇のランキングをチェックしました。

 両方とも上位20作のほとんどが購入して積んでいる分でした。具体的には国内が6作だけ読了しており、残り14作中13作は積読。海外は『フロム・ヘル』以外の19作がすべて積読。計40作中読了6作、積読32作、未購入2作……無敵の積読ぶりだ。というか、いい加減そろそろこのミスを買う意義が薄くなってきたな。大半はチェック済で、目新しい掘り出し物はナシ。しかも今回、後半100ページ近くに渡って書き下ろし短編群でボリューム水増しという、あまり嬉しくないサービス精神を発揮。雑誌じゃないんだから……見所と呼べるのは「私の隠し玉」や「我が社の隠し玉」か。来年出す予定の新作をざっくり知らせる広報めいたページです。知らせておいて結局実現しなかったりすることも多く、そこまで精度の高い情報でもないが、「出るかもしれない、出ないかもしれない」という曖昧さだからこそ各作家が好き勝手に来年の展望を述べているわけであり、そうした暢気な部分も含めてなんだか楽しくワクワクとさせられるコーナーである。

・拍手レス。

 コードギアスの話題が少しでてたけど、アニメの話題はあまりありませんね。焼津さんのアニメ語りも読んでみたいな。
 ヱヴァ破やサマーウォーズ、ワンピのSTRONG WORLDと、劇場アニメはいくらか見てますがTVアニメやOVAはさっぱり。ヱヴァ破はもっかい観に行きたかったけど、都合がつかなくて1回しか観れなかった……。


2009-12-12.

・近頃DVDが「なにこれ安い」という感じなのであれこれ買い漁っている焼津です、こんばんは。返しに行く手間を考えると通販で買って好きなときに観た方が楽という気もしてくる。

 掘り出し物は『アルティメット』。作中にパルクール描写が出てくるという、ただそれだけの理由により購入したけれど、これが予想以上にアタリでした。ゲットー化したパリの郊外(バンリュー)を舞台に、野良鼠の如くしたたかに生き抜いていた男と、厳しい訓練を経て大尉(キャピテーヌ)にまでのし上がった軍人との奇妙な共闘と友情を描くアクション映画。「バンリューに中性子爆弾が持ち込まれた、爆発するまであと24時間」というデッドリミット設定が取って付けたかのようであまり盛り上がらず、ストーリーそのものはいま一歩面白くないが、とにかくアクションシーンがスピーディかつパワフルで単純明快にカッケェ。ほそ〜い小窓をジャンプしてするりと通り抜けるシーンだとか、パイプ伝いに壁面をよじのぼっていくシーンだとか、見ているだけで惚れ惚れとする。気が抜けているようでいてあっさり死人続出する「緊張感のない殺伐さ」とも言うべき独特のテイストがたまらない。ただ、一番面白いシーンが冒頭十数分のところに固まっていて、あとは進むにつれて見所が減っていく構成となっているのが難か。爆弾に辿り着く過程で巨漢の番人が立ち塞がるあたり、いくら何でもコミック的すぎてしょんぼりした。倒し方もかなりショボいし……『300』の見掛け倒し巨人を彷彿とする。あとギャングの手下でK2という奴がいるけど、存在感溢れる見た目の割にこれといって目立つ活躍をしなかったのが不満だった。『新宿インシデント』の葉山豪みたいな位置づけ。ちなみに監督のピエール・モレルは『96時間』という今年公開された映画も撮っているが、こちらは「娘を救出するためなら、一般人でも躊躇わず撃つ!」という鋼のようなパパが群がる敵をばったばったと問答無用でやっつける爽快な作品。セガールばりの無双というか、上映終了して観客たちが席を立つ際「まるでセガールみたいだった」「もうセガールでいいだろアレ」と口々に語っていたのが印象的だった。

 それと前々から気になっていた『イーグル・アイ』も観ました。『エネミー・オブ・アメリカ』のような超監視系サスペンスで、「どこまで行っても『その目』から逃れることはできない」という偏執的なシチュエーションがたまらない。「黒幕」の正体はすんなり判明するし、過剰なスリルの連続が却って安っぽさを強調してしまう面もあるが、巻き込まれ型チェイシングとしては理想的とも言えるまとまりです。タイトルの嵌まり具合もグッドだ。アクション映画をたくさん見ておけば冒険小説を読む際に様々なシーンが頭の奥から引き出されて想像しやすくなるので、やっぱ定期的に補給しておかないとな。

【漫画】 「このマンガがすごい!2010」 ランキング発表(痛いニュース(ノ∀`))

 オトコ編は5位と6位以外読んでますが、オンナ編は1位と2位と10位のみ。やはり少女マンガはチェックが薄くなってしまうなぁ。「これが入ってないのはなんで?」というのは言い出したらキリがないから割愛しますが、せめてそれ町くらいはベスト10入りしてほしかった。

light、『Dies irae〜Acta est Fabula〜』のアップデートパッチは12月21日18時頃に配布開始予定

 週明けになるのか……予想より遅かったが、近くに休日も控えていることだしまぁいいか。パッチ自体は土日の間に済ませて、月曜はプロダクトIDを発行してもらうことだけに専念できたら理想的です。それはそれとして、今回の更新で「Happy light Cafe」の第26回と「ベアトリスラジオ」の第1回が公開されています。webラジオの方はDies回というよりもかわしま回。ファーブラに関してのめぼしい情報は来週ぐらいでマスターアップする予定ってことと、事前登録キャンペーンの粗品が1月末の発送を目標にしているってことぐらいか。正田崇が「俺は永遠の中学二年生」と言っていて笑ったけど。粗品の一つである小冊子はまだ製作中の模様です。AXLの小冊子みたいな程良く砕けた内容になるのかしらん。

 ベアトリスラジオはなんと魔城(グラズヘイム)よりお届け。しかも香純エンド後です。軽くネタバレ、どころかクンフトやってねーとネタ分かんねーよ、これ。ベイのテンション高くてほとんど別キャラになっているが、本人楽しそうだし何か和んだ。シュピーネのその後がちょろっと触れられたりしているので、クンフトをプレー済の方は必聴ですね。

・拍手レス。

 Dies iraeを買おうかどうか迷っています。こんなボクの背中を押してみてください。
 21日にパッチ組が先行プレーを開始しますから、発売直前まで待てばだいたい感想が出揃うのではないでしょうか。焦る必要はありませんよ。

 一条生き残ってたーー!今回の見所はかかさまVS正宗とヒロイン対決でしょうか
 このふたりは迷う。決め手を欠いたまま伯仲する戦いになりそうだ。

(追記)lightのOHPを見に行ったらファーブラのマスターアップ告知が来ていました。これで25日発売確定です。やったね!


2009-12-09.

・最近読んだ4コママンガでは『PONG PONG PONG!』が面白かった焼津です、こんばんは。

 お稲荷さんの祠にお祈りしたらなぜか巫女服を纏った狸娘が「ミカンの中から出てくるタマ」の要領で祠から出現するという、ややシュールな走り出しの萌え系ドタバタコメディです。萌え系にしては表紙が大人しく、あまり目立っていない(同日発売の『チェルシー』『ねこみみぴんぐす』と比べれば華やかさに欠けることは確定的に明らか)けれど、いざ本編に入れば自称「神さま」のリコ(狸子)が可愛くって可愛くってしょうがない。とにかく勢いが良くて引き込まれます。太い尻尾を振って破顔する、こんな狸娘がいたら僕はもう…!! 表紙にピンと来るものがなかった方もとりあえず読んでみてはいかがだろうか。

・他はあんまりネタがないので、唐突だけど今読んでいる『戦場の掟』からの引用。

 バグダッドで、自分の小隊が壊滅状態になった少尉に、われわれは戦争に勝っていると思うかとたずねたことがあった。少尉は私の顔を見て笑った。「なにいってんだよ、戦争に勝つっていうのがどういうことなのかも知らないよ」

 「現場」というのは少なからず何を何のためにやっているか全体像も分からないまま動く部分がありますけれど、「目的も知らぬまま戦争に参加する」状況が厭らしいほど生々しくてつい納得してしまう。ぴゅ、ぴゅーなんとか賞受賞の帯に釣られて買ってみたが、堅苦しさや重々しさはなく、結構読みやすい。「傭兵」というと『傭兵ピエール』とか中世チックなイメージが強いものの、現代でも平然と横行している用語なのだと実感するだに妙な気分に陥る。「ソマリアで海賊が大繁盛」のニュースに通じる感覚とでも申しましょうか。向かってくる車がテロリストか一般人か判別しがたいのでとりあえず撃っちゃうとか、ゴツくてムキムキで刺青を入れているような男がピエロ恐怖症だとか、ノリがほとんど洋画のそれ。興味深いが爽快感とは無縁だなぁ。

・拍手レス。

 冲方丁のシュピーゲルシリーズの最新作のテスタメントシュピーゲルが今月にでましたね。1巻からボリュームも展開もすごいいきおいで、あっという間に読んでしまい、2巻が待ち遠しい。
 『天地明察』ともども崩すのが楽しみ。どちらも評判超絶イイし。

 2007版のアップデートだけですませようとしていたのに気がつくと数量限定セットをポチっていた件。黒白本が読みてぇんだっ
 既にクンフト持ってるから数量限定セットは旨味を感じない。つか、cuffsもlightの商魂を見習って新装版や完全版を出せばいいのに。

 秋田禎信←あとがきで否定されるまで「さだのぶ」と思い込んでたのもいい思い出です…………買っちまうか!
 そもそも読み方など気にしたこともない当方に死角はなかった。

 秋田禎信BOXの予約をすっかり忘れてて一瞬蒼白に。でも、まだAmazonで予約受付してたみたいでギリギリセーフでした。
 あと楽天ブックスもまだ予約受付している模様。

 秋田禎信box、Amazonはまだ予約できるみたいですが、悩む。書き下ろしが他の形で出版されるかどうかが問題ですねぇ。
 少なくとも現時点で「あとで廉価版出す予定です」とは言わないでしょうね。売れ行き次第ではひょっとするかも。

・CATVで『イントゥ・ザ・ワイルド』観てたせいで更新が遅れてしまった。

 両親へのアンビバレントな感情に悩み、物質礼賛・拝金主義の現代社会にも嫌気が差して、放浪生活に繰り出した挙句アラスカの大地に辿り着いた青年の話。原作はジョン・クラカワーの『荒野へ』。実話を元にした青春映画であり、サスペンスやアクション、ホラーといった要素はなく、やや退屈な場面もいくつかあったが、ダラダラ見ているうちにだんだん引き込まれていった。出不精というか外出嫌いの人間ですから、こういう「自分探しの旅」にはあまり共感を持てないし、主人公の言っていることもさして説得力があるとは思えなかったが、途中で観るのをやめられなくなる程度には心を掴まれる何かがありました。ヘラジカを撃ち殺して解体し、血まみれになりながら燻製肉を作ろうとするけど失敗して生焼けの肉に蛆が湧き、「狩った獲物をキチンと食べることができなかった」ことに激しいショックを抱くシーンが印象的。大自然は資格のないものを無為に生かすことはしない。自由とは「縛られないこと」であると同時に「守られないこと」であり、苦しみの末に「孤高」から「孤独」へと転じた青年がようやく幸福の意味を得る。人によっては、長く胸に残るかもしれない作品ですね。


2009-12-06.

『装甲悪鬼村正』をプレーしたせいか『狂い咲き正宗』というタイトルの印象がまるっきり変わってしまった焼津です、こんばんは。確か「正宗と銘の付く物は贋作が多い」って話から題名の「狂い咲き」が来ていたと記憶しているですが、今や奇声を上げて「少年法とか知らぬのだ!」と猛り狂う正宗さんの姿しか想像できない。あの人(あの劔冑)は天国に行っても元気に割腹していそうだ。むしろ地獄に堕ちてリアル悪鬼どもを震え上がらせている予感の方がより濃厚に漂いますけれども。

light、金曜日に定例更新

 そろそろベアトリスラジオの配信が始まるのかな、と身構えていたが全然そんなことはなかったぜ。Diesに関しては壁紙と事務的なQ&Aが来たくらい。注目すべき情報は「アップデートパッチの公開」が「Dies irae完全版・アペンド版の発売前を予定しております」ってことぐらいか。クンフトのときは発売6日前に配布開始していましたから、今回も同じ程度とすれば19日あたりか……ついでに新作『soranica』の予告ページも公開されていますけど、現時点で判明しているのは「泉まひるが原画」「『空を飛ぶ』ことと関連した内容」、この2つのみ。lightで「空を飛ぶ」というと『群青の空を越えて』を思い出しますな。機械が描かれていないところからして、今回は生身で飛行するのかしら? なんとなくストパンを連想したり。まだ詳細なストーリーやシナリオを担当するライターが不明なままなので、特に期待らしい期待は抱いてないが、とりあえず注目してみる。

なんと「コードギアス 反逆のルルーシュ」が復活、新プロジェクトの始動決定(GIGAZINE)

 あちこちで話題になってますね。ルルーシュとスザクの因縁は一応R2で決着しましたが、「で、結局ギアスって何だったの?」と訊きたくなる終わり方を迎えたことだし、新展開はいずれあるだろうなーと期待していました。毀誉褒貶著しい作品ながら、久々にリアルタイムで追うほどハマったアニメでしたので、素直に2010年の続報を心待ちにするとしよう。

・積んでいた『咲−saki−』既刊6冊をまとめて崩した。

 アニメ化して話題になった美少女だらけの麻雀マンガ。3年ほど前に1巻だけ立ち読みしたことがあり、そのときはあんまり感銘を受けなかったが、予選大会が始まる2巻以降はグッと面白くなりますなぁ。ハッタリの利かせ方も巧く、打つ際いちいち必殺技のようなエフェクトが掛かる演出に痺れた。大ゴマが連発されるせいでストーリーの進行は非常にのんびりしており、最新刊に至ってなお予選大会がまだ終わりませんが、一気読みした甲斐のある派手な爽快感が味わえました。アニメは原作を通り越してオリジナルストーリーまでやったと聞き、なんだかアニメの方にも興味が湧いてくる始末。映像化には感心の薄い当方なれど、これに関しては例外ってことでレンタル屋に行ってみようかな……って、DVDはまだ途中までしか出てないのか。アニメほとんど見ないから普通はどうなのかよく知りませんが、リリースするペースが遅いですね。

 遅いと言えば、原作の発刊ペースもそう。だいたい年に2冊程度だ。際立って遅いというほどではないにしろ、隔週誌に連載しているマンガとしては少々微妙なペースである。ぐぐって調べてみた感じ、どうも休載が多いらしい。展開のゆっくりさ加減に加えて頻繁な休載にも耐えねばならないとは、なかなかファン泣かせの作品っすなぁ。『Dies irae』『Garden』にきっちり掴まって現在進行形で焦がれている身としては、同情している余裕もそんなにないわけですが。そういえば麻耶雄嵩も来年そろそろ新刊を出すっていう噂がありますが……飛浩隆の『空の園丁』は相変わらず出る気配なし。さりながら『NOVA1』に「自生の夢」(約100枚)を載せ、“S-Fマガジン”2010年2月号には「零號琴」を掲載予定(約130枚)ですから、仕事してないわけでもない。ちなみに「零號琴」は未完らしく、結末に辿り着くまでもう2、300枚必要だとか。完結するのはいつになることやら。

・拍手レス。

 ディエスの特典テレカ絵も公開されてますね。しかし流石に書き下ろしはないとはいえ未だにルサルカあり(しかも三枚)とか、ベアトリス多めとかいろいろアレな気が。
 ふたりとも見せ場はちゃんとあるらしいから、特典に釣られた人もきっと満足するでしょう。するよね? すると言ってくれ……!

 まほよもいいけどDDD新刊もねっ! 1・2巻を何度読み返したか。春ごろには出てるといいなあ…。無理か。
 DDD……あまりにも音沙汰がなくて素で忘れかけていました。夏頃にでもまほよと同時発売されないかなぁ。

 かかさま激ファザコンなとこ以外は割と常識人だったよーな。江ノ島キックは光ちんでは?
 銀星号――つまり光&かかさまのコンビがネタキャラじみていると言及したのであって、かかさま自身がネタキャラとは申しておりませぬよ。が、んなこたぁどーだっていいです。かかさまの足コキば見たか。村正ではSっ気が足りぬ。


2009-12-03.

『ブンダバー!』の続編だと思って喜びつつ買った『ブンダバー!AuSF.B』が版型を変えた再録モノに過ぎないと知ってしょんぼりズム満開な焼津です、こんばんは。思わせぶりな副題を付けないで『ブンダバー!【新装版】』とか分かりやすいタイトル付けてくれれば良かったのにぃ。

 あ、内容は平野耕太や八房龍之助を彷彿とさせる好き勝手加減MAXのくだらな面白い系ミリタリーアクションギャグですから、未読の人にはとりあえずオススメしときます。女キャラがほとんど出てこないので若干表紙詐欺臭いところもありますが、イカレ軍人とかちょっとオカルト入ったところとか、広江礼威的なノリがイケる方なら大丈夫でしょう。

・今年最後の購入予定。

(本)

 『FIRE FIRE FIRE』/佐藤ショウジ(集英社)
 『欧亜純白(1〜2)』/大沢在昌(集英社)
 『ケルベロス壱』/古橋秀之(アスキー・メディアワークス)
 『アイゼンフリューゲル2』/虚淵玄(小学館)
 『秋田禎信BOX』/秋田禎信(TOブックス)
 『プリズマ☆イリヤ ツヴァイ!(1)』/ひろやまひろし(角川書店)

 『FIRE FIRE FIRE』は「トリプルファイヤー」と読むらしい。『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』で有名な佐藤ショウジの新刊で、巻数表記がないところを見るに短編集か単発作品? 詳しいところは知らないが、今月は新連載の『トリアージX』1巻も発売されるみたいで、サトショウファンにとってはたまらぬ冬となりそうな気配。『欧亜純白』は「ユーラシアホワイト」と読む。大沢在昌の新刊だが、連載自体は10年くらい前に終わっていて、長らく「幻の作品」とされていたらしい。原稿用紙2000枚に及ぶボリュームながら評判は散々で、「あまりにも迷走がヒドかったから書籍化を見送られていた」という噂もあるほど。さすがに手直しはされるでしょうが、「連載当時そのままの内容で出せば大沢史上最低の駄本になりうる」とまで言われる出来を是非ともこの目で確認したい。『ケルベロス壱』は今月新設されるレーベル「メディアワークス文庫」の創刊ラインナップに連なる1冊。秋山瑞人の『DRAGON BUSTER』と同じ世界観を共有する“龍盤七朝”の1冊でもある。メディアワークス文庫は10代ではなく20代や30代といった「ライトノベルを読んで大人になった世代」をターゲットにした対象年齢高めのレーベルとのことだが、ラインナップを見るかぎりそんなに違いはないですね。ぶっちゃけ電撃文庫から出張してきたシリーズ作品もありますし……MW文庫がポシャったら何事もなかったように出戻りそうだ。高畑京一郎の書き下ろし新刊も1月以降に予定している(どうも1月はなさそうだから2月以降?)とのことで、そちらも期待しています。

 『アイゼンフリューゲル2』は「ライトノベル版プロジェクトX」と評されたシリーズの2冊目。天翔けるドラゴンが実在する世界で、ドラゴンよりも速い飛行機を作ろうと足掻き抜いた男たちの熱い奮闘記です。あまりスケールの大きな話ではなく、むしろ地味とさえ言えるのですが、それゆえシンプルに虚淵御大のテイストが全編に冴え渡る。2巻で完結するのか、それとも3巻まで続くのか知らないが、当方はどちらでも一向に構わん。あ、ちなみに来月『ブラックラグーン』小説版第2弾も出る予定だったらしいが、そちらは延期になりました。残念。『秋田禎信BOX』は予約したのがだいぶ前だったので忘れそうになっていた。完全受注生産につき、恐らくほとんどの書店で注文受付は打ち切っていると思いますが、探せばまだどこか取り扱っているところがあるかも。7350円(税込)と、作者のファン以外には手を出しづらい価格設定であるにせよ、あのオーフェンやエンハウの続編が拝めるなんていう夢の箱を見逃す手があろうか。信者みな歓喜すべし。『プリズマ☆イリヤ ツヴァイ!』はFateスピンオフ漫画『プリズマ☆イリヤ』の続編。イリヤを魔女っ子妹キャラにするという、「とらハにとってのなのは」みたいな位置づけのパラレル作品だけど、これが意外と面白い。二番煎じめいた雰囲気も希薄で、程好くオリジナリティが醸されている。まほよが出ないせいで関心を失いつつあるTYPE-MOONに決定的な離別が告げられないのも、偏にこの漫画の存在があるから……と書いたら大袈裟か。なんにせよ楽しみ。

 ほか、遂に現実世界へ舞台を移す『ソードアート・オンライン3』、西尾維新の書き下ろし小説『難民探偵』、広川純の実に3年越しとなる受賞後第一作『回廊の陰翳(かげ)』、松本ドリル研究所の一般コミック(つってもチャンピオンRED)『このはな』、「そういえばアニメ化の話はどうなったっけ?」な『ムダヅモ無き改革』、3000円近い価格だけど『秋田禎信BOX』を買う当方ならば「怖くねぇよ!」と強がりを言える山尾悠子久々の作品集『歪み真珠』、このへんも注目作ですね。

(ゲーム)

 『Dies irae 〜Acta est Fabula〜』(light)

 ああ……遂にこの日が来よったか。「怒りの日」と称され、絶望裡に過ごした2007年のグランギニョルなクリスマスから丸2年、待ちに待って待ち焦がれ、待ちに待って待ち狂った『Dies irae』完全版――やっと我が許へ訪います。危うく「なかったこと」にされそうだった螢ルートと玲愛ルートを初めて実装する、正田崇の最終兵器(ファイナルアンサー)。lightが来年の1月で10周年を迎えるのだということを考えれば、ある意味これも「ニトロプラスにおける『装甲悪鬼村正』」と同じく10年間の集大成と呼べるでしょう。いや、そう呼ぶに値する仕上がりであってほしい。でなければパラロス以降、6年近くに渡って抱き続けた当方の期待が報われない。細かいことはいいからとにかくすべてにケリをつけてほしいものです。

 さておき、当方は既に製品版クンフトを所有しているので、何も完全版そのものを買わなくてもアペンド版の『Scharlachrot Grun』だけゲットすれば螢ルートと玲愛ルートの両方が遊べ、且つ白本も手に入る。年末で資金の余裕もあまりないですし、賢明な選択がしたいなら定価12390円(税込)の完全版などスルーするが吉でしょう。しかし、「『Dies irae』の完全版」という響きを前にすれば当方の理性なんかたちまち溶け出し、流れ出して、あっさり跡形もなくなる。賢明さなど望むべくもないのです。ゆえに完全版(の初回版)とアペンド、この2つを同時購入する。通常版にまで手を伸ばすのや、店舗特典目当ての複数買いに走るのは、悩んだけどやっぱりやめました。さすがにそこまでやったら金銭がもちません。なにげに『true tears』のBlue-ray BOX予約するつもりだしな……上田夢人がキャラクター原案を務めたアニメということで前々から気になってはいたんですよね、tt。

・拍手レス。

 ニトロ+ロワイヤルがアーケード版で出るとの情報がありました。
 果たして近所のゲーセンには来るだろうか……。

 一般ハードへの移植は、年齢制限が付くんでしょうね。
 コンシューマ移植って性表現はおろか暴力表現まで和らげられたりしますからねぇ。

 マイナーなギャルゲーSS祭りを開催したいです。(以下省略)
 ぐぐったら全文出てきますので、興味がある方は検索してください。

 ベイやんとシュライバーは、2人まとめてイザークにひねられそうな気がするんですよねえ。イザーク無双の手始めに、2人まとめてヤムチャだぜ、みたいな。
 「な、なにィ、あのヴィルヘルムとシュライバーを一撃で……!?」 だんだん男塾とか星矢のイメージになってきたな。

 ゲームする時は基本的に音無しでやってるんだけど、最近なんとなく音声ありで村雨をやってみた。雪車町のグリリバヴォイスがいい声過ぎて笑った。目を瞑って聞いてると、凄い美男子の声っぽいよ、笑い声以外。
 ちょっと前にそれ散るを再プレーしたせいか、山彦の顔がチラついてしょうがなかった。ヘアカラーも微妙に似てる。

 ディエス新OP、練炭堕天モードのインパクトが最後に全部持ってった感が。
 初見時、ベイVSシュライバーの歓喜と興奮が強すぎてシュバルツ練炭はうっかりスルーしそうになりました。

 一条対常闇斎の激闘の横で、何気にパンツ教授とかかさまも互角の勝負を繰り広げてて驚いた。というか、支援が完全に「足コキ」対「パンツ」という方向で固定されとる。あの銀星号がすっかりネタキャラになって……
 いや銀星号って元からネタキャラでは……江ノ島キックとか。


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