2009年10月分


・本
 『ニトロプラスコンプリート』(角川書店)
 『ベルとふたりで(1)』/伊藤黒介(双葉社)
 『非の王(全4巻)』/柳蒼二郎(中央公論新社)
 『シャングラッド神紀』/祭丘ヒデユキ(秋田書店)
 『木造迷宮(1〜2)』/アサミ・マート(徳間書店)
 『花と流れ星』/道尾秀介(幻冬舎)

・ゲーム
 『さくらテイル』体験版(Fizz)
 『白光のヴァルーシア』体験版(ライアーソフト)
 『紫電〜円環の絆〜』体験版(暁WORKS響)
 『るいは智を呼ぶ』(暁WORKS)


2009-10-31.

ニトロプラス10周年記念作品『装甲悪鬼村正』は恙無く入手致して候。

 話にゃ聞いてましたが、初回限定版は本当に木箱でした。どこからどう見ても紛うことのないKI・BA・KO。しかも鉤状の帯(前面が細長く、背面が箱の裏すべてを覆う大きさ)を巻き、薄手のプラスチックケースへ収納し、ご丁寧に封印のシールまで貼ったうえ柔らかめのビニールでシュリンクされている厳重さ。無駄に金の掛かったパッケージであり、ほとほと感心させられます。「ニトロ10年間の集大成」という意気込みは伊達じゃないようだ。

 外装にばかり気を取られていても始まりませんのでさっさとインストール。例によって例の如くシリアルコードを要求されますが、一旦インストを済ませれば今回はディスクレスでも起動するみたい。ふとプレーしたくなったときにディスクなしで起動できる仕様はありが太陽(テイダ)。冒頭からスキップしてザーッと流してみましたが、だいたいの内容は体験版と一緒ですね。ただ、装甲の構えがアニメーションになっており、急にスキップが止まって湊斗さんが「鬼に逢うては――」と言い出したのでビックリしました。あと「ザシュッ」は何度聞いても心臓に悪い。

 飛ばしに飛ばして第三編「逆襲騎」に突入。六波羅→警察→GHQ→八幡宮の順で会話中心な展開が続き、出だしはちょっと地味な印象を受ける。さりながら、しばらく進むと件の「どんふぁっくうぃずみー!」が炸裂して唐突にヒートアップ。さすが声優が商売道具(喉)を痛めて演じただけのことはあるな……元から結構好きな声優さんだけに、こんなギリギリ限界ニアデス演技を聴かされると複雑な心境とならずにはいられないな。とまれ、そんな具合で香奈枝(&さよ)と一条と湊斗さんが一堂に会するところから徐々に話も動き出してきて地味さ加減が払拭されていきます。一条の名前通りなまっすぐさを前にして在りし日の雄飛がフラッシュバックするシーンは、来ると分かっていても辛いですね。湊斗さんが銀星号を追う理由と、銀星号の大まかな正体、そして「卵」が孵化するとどうなるのかも明かされましたが、銀星号本人の行動目的など依然として謎は山積みである。とりあえず「銀星号の気配を感じる」ということで一行はレース場に赴き、第三編の要となる「装甲競技(アーマーレース)」が始まります。装甲競技とは劔冑をレース用のマシンにチューンして速さを競うスポーツであり、感覚としてはF-1や何やに近い。たぶん「装甲」と「走行」を掛けてもいるんだろう。ニトロ繋がりということもあって、レース場の背景が出てきた瞬間脊髄反射的に「ゲルトォォォォォォォッ!」「チャンプゥゥゥゥゥゥゥッ!」と叫んでしまったのは当方だけじゃないはず。走行シーンのBGMとして「デタラメな残像」(BLASSREITERのOP曲)あたりが流れたら面白かったんだが、そこまで悪ノリしてくれなくて残念。でも奈良鉄のことだから『走行悪鬼MURAMSAREITER』くらいの真似はいずれ仕出かしてくれるでしょう。どうでもいいけどナラテツとナラティブって響きが似てるよね。

 で、話を戻して第三編。かったるめの序盤を乗り越えてアーマーレース始まるあたりからがやっぱり本番です。グンと一気に面白くなる。茶々丸陛下が流暢な口舌で解説役を務めてくれるのも嬉しいが、何より眼目は走行(飛行?)描写。決勝戦に至る前の予選段階より長々と綴ってきた甲斐があって、盛り上がること盛り上がること。このゲームが最初からレース物であったかのような錯覚すら湧いてくる。合間に挿入されるエロシーンもただの投げ遣りなサービスじゃなく、ちゃんと物語を構成する一要素になっている点が良かった。女の子よりも男のセリフの方が多いのはどうかと思ったがな。そして迎える決勝戦。戦闘力では真打>>>レーシング用ながら、単純な速度で競えばレーシング用>>>真打と逆転する仕掛けになっており、成り行きでレースに参加することになった村正さんが当然のように後塵を拝してドベに陥り、「凡庸」「駄作」と散々貶されムキになって陰義(シノギ)を使い追いつこうとする場面――笑い転げずにはいられなかった。おとなげなさすぎるよ村正さん。なんでこういちいち遣る事為す事可愛いんだか。そんな具合でほのぼのしたり、白熱するレース展開に手に汗握って興奮したりと実に堪能しましたが、これはあくまで装甲悪鬼。なんだかんだで最終的には「善悪相殺」に到達いたします。相殺で重要なポイントとなるのが好感度――無論、それまで取った選択肢によって変化している。当方は意図的に特定のヒロイン(ぶっちゃけ香奈枝)への好感度を上げてきましたが、心のどこかでこのシステムを舐めていて「はいはい、どーせ抜け道あるんでしょ、確か五編までは共通って聞いてたし……」と高を括り、さして気に掛けてはおらなんだった。むしろ、「溜めたら殺す」と見せかけて「溜めることで殺そうとするが未遂となり個別ルートに分岐」とか生温いことを考えておりました。

 死にました。いともあっさり、ザシュッと汎用テキストで。え……いいの? まだ共通のはず……だよね? それがこんなにいとも容易く退場してしまって……まさか本当に殺すとは思っていなかったから頭がポルナレフ状態です。もしかするとバッドエンドに直行してしまうのでは、と勘繰ったりもしたが、ついさっき何事もなかったかのように第四編が幕上げされた。テキストでは香奈枝の死について触れられておらず、仮に生存していたとしても特段支障なさそうなことが書かれている。メイン級のヒロインが共通シナリオの時点で死のうと生きようと、ストーリー自体は大過なく進行する仕様になっているのか。なんという異形のエロゲーだ。やっぱり攻略したかったら好感度を上げないように心掛けねばならない様子。初周は香奈枝ルートから……と密かに予定していましたが、いきなり狂った。死んでしまったものは仕方ない、このままで進めていくとします。良くも悪くもトンデモない話になりそうだ、村正。

・各所で評判が沸騰している『Steins;Gate』は肝心のハードを所有していないので移植待ち。でもとりあえずオープニングテーマのCDだけは購入しました。もともといとうかなこは好きだけど、「スカイクラッドの観測者」は歴代で一、二を争う良さかもしんない。

・そして当然の如く、『コミュ』はまだ終わっておりません。なんとか一周しましたが、このゲームで攻略可能なヒロインは合計5名であり、つまりあと4人も残っている。うち1人は「ボリューム半分のおまけルート」らしいから、3.5人と書くべきかもしれない。『コミュ』はるい智と違って一周目から選択肢が出てくるが、たった一回だけで、しかも間違った方を選ぶと即バッドエンドに直行する「選択死」。なので結局、るい智同様に初周ルートが固定されています。

 で、初周は誰のルートかと言うと、体験版で既にキスシーンがあったからだいたい予測はつくと思いますが、竹河紅緒です。「正義の味方」に憧れる少女にしてぺったんこ。声優が例のロボットみたいなニックネームを持つ人だけあって一定以上の魅力を放つが、掛け合い等どうも似たような遣り取りが何度も繰り返されるせいか、後半あたりで伸び悩んできますね。エンディング迎えても暁人の傍らに魔女が残ったままであり、どう眺めても「彼女」というより「愛人」ポジションです。シナリオそのものも、最終決戦がいまいち盛り上がらないせいで微妙……主人公の「戦う動機」がいまひとつしっくりとこない。お膳立てが中途半端で勧善懲悪にも思想対決にもなっておらず、ひどく宙ぶらりんな雰囲気。ボリュームはともかく、内容面に関して言えば不完全燃焼な一周目でした。以降での挽回を乞う。

 一周すると共通ルートに選択肢が2箇所増え、更に初周では登場しなかった副島密がやっと出てきます。選択肢の取り方次第でジャック・ザ・リッパー戦の裏側も拝めたりする。ジャックが暁人と紅緒を追い詰めておきながら殺さずに逃したシーンは「あれ? なんで?」ってずっと気になっていたんですが、真意を知ってようやく腑に落ちました。2箇所に現れる2個の選択肢、計4通りの取り方があるわけで、とりあえず全部調べてみたが、それぞれの組み合わせで2周目は4つのルートに分岐する……のではなく、組み合わせの半分は初周と同じくまた紅緒ルートに入ってしまい、残り2種類の組み合わせでそれぞれ新たなルートに突入できる仕組みとなっている。つまり、2周目に攻略するルートは二者択一。さて、どっちに突っ込むべきか……迷いながら2種のシナリオを並行して進めているものの、そろそろひとつに絞りたいところ。つっても無論、本格的な攻略は『村正』をコンプしてから再開するつもりですが。まぁ合間を見てちょくちょく進めてみようかな、と。『村正』やるのに疲れたら『コミュ』をやる、みたいな感じで。「エロゲーの休憩にエロゲーやって疲れが取れるのか?」というもっともな疑問が湧きますけど、なぁに、当方はもともと「本を読むのに疲れたら別の本を読んでリフレッシュ」という書痴技を駆使してきた男、寸毫の支障もございませぬ。そして『コミュ』に疲れたら『村正』に戻る。やっべこれ永久機関じゃね……ってな戯れ言はともかく、両方ともなるべく早めに片してしまいたいものだ。またるい智みたいに500日とか掛かったりしたら難儀しますけぇ、いろいろと。

lightの『Dies irae 〜Acta est Fabula〜』、ムービーを更新。特典テレカ画像とボイスコンテンツ一覧も公開。

 テレカはまだラフ段階。色が付くまでどうなるかまだ分かりませんが、パッと見ではメディオ!の裸エプロンが良さそうか。ボイスコンテンツCDは7店舗で決まったみたいです。出演するキャラはソフマップの「聖槍十三騎士団」、げっちゅ屋の「櫻井螢」、メディオ!とヨドバシカメラの「ベアトリス」、ラオックスの「氷室玲愛」、グッドウィルの「ルサルカ」、メロンブックスの「ヴィルヘルム」。聖槍十三騎士団て……全員出動なのか、何分くらいの尺があるのか、細かいことは不明ながら飛び抜けて豪華じゃね? シュピーネさんはやっぱりなかったけれど、ベイ(ヴィルヘルム)があったことに少しホッとする。香純やマリィといったヒロインを押し退けて男キャラが予約特典になるのはどうよ、と思わなくもないものの、ヴィル公は07年版における一番の功労者と言っていい存在だからなぁ。うーん、まだ本決まりではないが、特典目当てで買うとしたら祖父かメディオかメロブの三択ですね。さすがに全種コンプリートする元気はない。

 新着ムービー、『村正』にかまけて危うく忘れかけていましたが、つい先ほど慌てて視聴しました。前回が螢だったから今回は玲愛かな、と予想していていましたが、ハズレ。驚くなかれ、今回はベアトリスのムービーでした。まだ螢が幼かった頃の回想を枕に始まり、○○○化したベア子が登場。そこで画面が暗転しBGMも途切れるため「あれ? もうこれで終わり? ちょっと短かったな」と落胆しかけたが、アインザッツ(Dies iraeの旧主題歌)のイントロが流れ出した瞬間に悟る。むしろここからが本番なのだ――と。事情を知らない人が見たら「ベアトリス=攻略キャラ」と錯覚すること請け合いな全面プッシュぶりに頬の筋肉が緩みまくった。すげえ、ベア子、お前もう完全に「エレオノーレ姐さんのわんこ」じゃねぇか。「たとえ出来の悪い駄目な部下でも、私を譲らないと言ってほしい」というセリフで「わんわんお! わんわんお!」と尻尾振ってエレ姐に縋りつく犬耳ベア子を幻視してしまったわ。賢い不服従全開で「今こそあなたを救ってみせる!」とまで豪語しやがるし、『愛犬ベアトリス』というタイトルで絵本にするべきだよね、これは。

「べあとりすは かいぬしのえれおのーれが わるいおとこにだまされて せんそうどれいとして とおいとおいところへ つれていかれて いろんないみで ぼろぼろになっていくことをおもい かなしみました そして べあとりすは もういちど えれおのーれにあいたいと おもいながら ふかいねむりに ついたのです いつか えれおのーれがかえってくる そのひまで……」

 冗句はともかく、ベア子の渇望が「敬愛する上官の理想が輝くように。闇を切り裂く閃光に――英雄たちを栄光に導く戦乙女になりたい」で、そこから二つ名である「ヴァルキュリア」や雷系の能力が来ていると分かったし、「このベアトリス・キルヒアイゼンが、ブリュンヒルデと違うところを見せねばならない」以下の文章から「ブリュンヒルデ=炎に包まれて眠り、英雄の到来を待つ戦乙女」「ベアトリス=眠りから覚めたならば、いかなる炎をも突き破る剣」と対比したうえで「炎を突き破る=蒙昧を晴らす」と読み取ることもできました。これで彼女の立ち位置がだいぶハッキリしてきた。にしても「エレ姐の露払いをしたい」という一心で創造位階に指を掛けるなんて、ベア子もかなりイカレてるな。

・拍手レス。

 コミュをコンプするか、村正に手を出すか、それが問題DEATH
 迷わず村正に浮気しました。焼津、多情な男。

 積まれてるって言ってもまだ漫画だと楽ですよね(棚にある読んでないラノベ30冊弱を眺めながら
 でもそろそろ積める場所がなくなってきてきました。


2009-10-28.

『るいは智を呼ぶ』の感想文をアップした焼津です、こんばんは。えらく長い期間プレーしていたせいで記憶が曖昧になっている部分もいくらかありましたが、テキトーにごまかし……いや必死に思い出して書きました。ぐぐればwikiとか出てきて情報漁れるなんて便利な世の中になったもんだよね。

 で、まとめwikiによると隠しサブタイトルの一つに「殺す者、殺される者」というのがあるそうですが、そういえば長らく絶版が続いて入手困難だったヘレン・マクロイの『殺す者と殺される者』が12月に復刊されるそうですよ。『幽霊の2/3』も新訳で復刊されたことだし、ようやく創元も本腰入れて仕事する気になってきたか。で、田口俊樹訳の『大いなる眠り』まだー?

TailWindブランド並びにTailSkidブランドが解散

 TailWindって確か5月に『Trample on "Schatten!!"』を出したところだったっけ。結局買わなかったけど、ギリギリまで購入を検討したソフトでした。あれはそこそこ評判が良かったような話を聞きましたが……ログ漁ってみると先月の時点で「もうダメだろう」と囁かれていますね、公式サイトもここしばらく繋がらなかった(サーバー移行中という表記が出ていた)そうですし。CROSSNETといい、知っているブランドがなくなるのは切ないものです。

 そういや解散はしてないけど、既に一年以上サイトの更新がないシリウスもどうなっているんだろうか……ミヤスリサは『ハチミツ乙女blossomdays』で、保住圭は『ましろ色シンフォニー』で存在確認されていますから、ふたりがいずれこの業界でふたたびタッグを組む日とて巡り来るのかもしれませんけれど。

・しかし、『装甲悪鬼村正』の発売がもう明後日に迫っているとは……全然実感が湧かないし、各種の予定もまったく片付いておりません。『コミュ』はもうちょっとで一周するかな、程度。るい智で物語の前提として据えられていた「みんなの呪いを解きたい」に相当する明瞭な願望や目標がないせいか盛り上がる場面とそうでもない場面のムラが激しく、たまにモチベーションが途切れそうになることもあったけれど、均して見ればまずまずの面白さだ。アバターをめぐる諸々の制約(近くにメンバーが揃っていないと充分な力を発揮できない、意思の統一も図らないとやっぱり充分な力が発揮できない、そして完全破壊されれば己のみならず仲間もすべて死ぬ、etc)が単なる足枷のように思えて少々鬱陶しくなる場面とてあったものの、むしろ「鬱陶しさ」こそが『コミュ』の要なのかもしれないと感じつつあります。しがらみだの何だのに縛られずにはいられない、その一方で何をすればいいのかもよく分からない、「雁字搦めの曖昧さ」が今後どう解きほぐされていくのか。是非とも心待ちにしたい。

 他、新刊マンガが二十冊近く山積みになっていたりとか。俺翼ドラマCD第2期の3巻『夢テレビ・群青色メトロポリス』なんて開封すら済ませていませんよ。ああグズグスしているうちに4巻出ちゃうわ。『護樹騎士団物語』の新刊はどうにかあと少しで読み終えられそう。1000円の大台に乗ったせいか今回ちょっと分厚めだけど、相変わらず話の進行がとろいわ。この巻から『幼年学校編』がスタート――という体裁になっていますが、あくまで体裁だけであって内容はもろに前巻の続きであり、露ほども仕切り直された感じがしない。さすが「これ下巻じゃなくて中巻だよ!」をやってのけた水月郁見、「新シーズン開幕と見せかけて何の変化もない」くらいの真似は平気でかましてくれる。告知されていた副題「熱剣、蹂躙鬼を討て」(告知されただけで製品版には付いてない)は羊頭狗肉になりそうな予感MAX。現在のペースで行けば蹂躙鬼を討つどころかシュエット様のエピソードに目処を付けられるかどうかさえ覚束ない。それにしてもリジュー、お前はどんだけ分厚いノートに筆記してんだよ……(『護樹騎士団物語』は「一冊のノートに綴られた回想録」という設定になっている)。

 と、今回はひどく取り留めのない更新になってしまった。次回はもうちょっとだけ整然とさせておきたい。無理だろうけど。

・拍手レス。

 今さらながら、境ホラの2巻下を読んでます。焼津さんと同じく分厚い本スキーながら、比類無き読みにくさになんかもう感服です。
 境ホラの厚さもいい加減限界と申しますか、3巻あたりは上中下になりますかな。それで4巻は起・承・転・結。最終巻は甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の十干組。

 今月のコミックラッシュで、「しなこいっ!」が巻頭カラーでした。色々不安を煽ってたけど、とりあえず打ち切られずに済んでるっぽい。
 『しなこいっ』もそろそろ伸るか反るかの正念場、どうか打ち切られずに飛翔を遂げてほしい。

 じょぶれす!はとりあえず養父的なキャラを追加すれば生活費の謎は解決ですね。例えばそうだな…かつて派遣お姉ちゃん業界で「完璧な姉(パーフェクト・シスター)」と噂されるほどの美少女だったがある時から性転換手術を受けて「完全な男」になってしまった過去を持つナイスミドルとか。
 生活費周りはあえてツッコミどころとして残しておくのも手かもしれない。ヒッキーでロリな実姉が青褪めた顔してぷるぷる小刻みに震えながら「ロ……カ……ットが」「え? カカロット?」「ろ、ロスカットがまにあわなかったよぉぉぉぉっ!!」と『じょぶれす!〜樹海編〜』の開始を告げる布石として。


2009-10-25.

・「ライトノベル感覚で楽しめる経済小説」と小耳に挟んで手を伸ばしてみた『雷撃☆SSガール』が本当にそんな感じで「タイトルにヒかなくてよかったな」と思った焼津です、こんばんは。

 SSは「世界征服」の略で、ナチスとは一切関係ありません。とはいえナチスSSの意匠は稲妻だから「雷撃」と符合するし、章題に「電撃戦」とか「攻防戦」とかいった語句が出てくるしで、多少は連想させることを狙っているのかもしれませんが。零細企業の社長だった主人公が、世紀の大天才で異様なくらい自信に満ち溢れたヒロイン水ノ瀬凛に文字通り引っ張り回されて(どこかへ向かう際、いちいち主人公の手を取って引っ張る癖がある)、億単位の金を動かすビッグステージに立ってしまう話です。終始トントン拍子で進むため若干起伏に乏しい印象はありますが、連作形式で一話ごとにスッキリとケリがつく構成になっているため、チマチマとゆっくり読み進める分には良かった。「頭脳を強化した涼宮ハルヒ」といった趣のヒロインがややチート存在であるものの、「零細企業を如何に梃入れしていくか」を分かりやすく丁寧に順番を追って説明していってくれるので、経済小説に苦手意識を抱いている当方も易々と付いていけました。良い意味でヌルい。終盤が急展開すぎて呆気ない結末に見えてしまうあたりや、前半の主な登場人物たちが後半ではほぼ名前だけの存在になっているあたり、「宅急便」というヤマト運輸の商標を一般名詞のように使っている(ちなみに「宅配便」は一般名詞)あたりは引っ掛かったにせよ、なんか妙に気に入ってしまう一冊ではあった。次回作も期待します。

lightの新作『Dies irae 〜Acta est Fabula〜』、発売予定日が12月25日に

 予想通りクリスマスに合わせてきたか。新規Flashムービーは螢をクローズアップしています。幻と化した屋上のシーンや手繋ぎイベントがしっかり復活しているあたり感無量ですね。このムービーは公式サイトへ掲載される前にミラーサイトで先行配布されたのですが、なぜかほんの数時間で内容が差し替えられました。そのため「差替前」と「差替後」、2つのバージョンが存在することになっています。両者の違いは、「1.差替前よりも差替後の方が長い(20秒くらい)」「2.差替前ではエレオノーレの出ていたところが差替後は神父になっている(エレオノーレの場面がマリィルートのネタバレだったせい?)」「3.差替前には存在しなかったキスシーンが差替後には入っている(長くなっているのは主にこれのせい)」と、こんなところ。

 貴重な情報源であるwebラジオ「Happy light Cafe」も更新。今回はゲストにGユウスケが出てきているせいか、シナリオよりも原画の話題が多いですね。例によってちょろっと要約。「ショップ特典のボイスコンテンツは、各店でお気に入りのキャラクターを応援していただいて販売促進に繋げてもらおうと」「1店舗につき1キャラクターに特化したボイスコンテンツをつくる、サブキャラクターが混じる可能性もあるが……」「基本的にショートショート、2分前後の録り下ろし」「たぶんシュピーネさんはいない(笑)」「ムービーはまだまだ続く、毎週チェックしてほしい」「スティックポスターの絵柄、全部カッコいい路線でまとめようかと思ったが挫折した」「最初は螢と玲愛をカッコよく描いてベアトリスをオチ要員にするつもりだったけど、玲愛に取らせるカッコいいポーズが思い浮かばなかった」「特典テレカ、2007年版はルサルカが大人気すぎて代表が泣いていた、『香純とマリィのご要望が!』って泣き叫んでいた(補足説明:07年版は攻略できるヒロインが香純とマリィだけだったので、lightとしてはこの2人を特典の絵柄にプッシュしたかった。が、描き下ろしテレカの発注はルサルカ・螢・玲愛の3人ばかりで、香純とマリィの2人は結局オフィシャル通販の特典にしか使われなかったという経緯があります)」「櫻井戒の正面向いたCGはあるっちゃある、内容に関わるシーンなんであんまり言えない」「ベアトリスのデザインはドラマCD以前にもプロトタイプがあったが、ドラマCDではまだ16歳と若いので……ぶっちゃけ勢いでガーッと描いた」「まさかこんなに本筋に絡んでくるキャラになるとは思わなかった」「ちょうどタペ(『タペストリー』)の原画やってる最中に『(ドラマCD版の)キャラデザだけやってくれ』と正田からじかに頼まれて、時間なかったからタペの合間にガーッとラフを仕上げた」「(今Diesのディレクターをやっている)まゆきは当時タペの監督だったから反勢力だった、『そんなに描かなくてもいいんじゃないか』って」「ベアトリス、エレオノーレにああまで絡めるし、人間的にはかなり強キャラ」「イザークは特殊なキャラ、もともとは設定の印象から大人バージョンにしていたが、『いやいや違う、少年っぽくしてくれ』と言われて縮めたらああなった」「ねぇ、あんな……鋼の(ピー)術師的な」。で、次回もGユウスケがゲストとのこと。

 うーん、ショップごとに新規のショートボイスドラマか。これから小売側の要望を聞きに入るんだろうけど、だいたいルサルカ、螢、ベアトリス、玲愛あたりに集中するんだろうな。野郎キャラの人気も高いので、ラインハルトやヴィルへルムあたりもひょっとしたら……この手のショップ特典には関心の薄い当方ながら、もうちょっと情報(総数および割当)がハッキリしてきたら1個ぐらい買う気になるかもしんない。しばし静観の構えで行く。

『コミュ』は残念ながらあんまり進んでません。まだ一周もしてない。「こんなペースで月末までに終わるのか」と不安になるほどゆっくり進行。それにしても、

「年上ですっごく格好いい人がいてね。憧れてたら向こうから強引にキスされて……もう死にそうになった」
「ハーフだかクォーターだかのすっごく綺麗な女の人で……」

 これ花鶏じゃね? 確かるい智の舞台は「田松市」で、コミュは「高倉市」だからクロスオーバることはなさそうですけど、ちょこちょこ小ネタが出そうな予感。

・拍手レス。

 夢ネタ、エロゲ化かラノベ化してほしい面白さですね。となるとライターは誰に
 てか、プーとニートとヒッキーが一箇所に屯しているだけの話なんて……下宿を3つの陣地に分けて三國姉でもするのかしら。

 季節的にあれだけど、ちょっとぶりに巡回したら焼津殿の関心事が全てあれで吹いた。バチバチは週刊誌で今一番の期待株。EXEは気軽に攻略するなら味噌と体当たり関係ですよね。こんな可愛い子が女の子な訳がない。の三本だったので……お姉ちゃんで一本オリジナルを書いてくれませんか?wktk
 バチバチは相撲始まるのが楽しみ。EXEは来月までお預けで指が寂しい。「こんな可愛い子が女の子な訳がない」と言えば桜子ちゃんもさることながら和久津智の愛らしさも異常だった、FDが待ち遠しくて仕方ない。お姉ちゃんのアレは僻みと蔑みと憐れみの描写で大半が埋まって気分も沈みそうだからパスで。

 もういっそのこと更新を一ヶ月放置してもかまわないから臓器たんの話とじょぶれすを小説化してくれよホント。天才の発想だからな、それ。
 更新を一ヶ月もサボったら積読の消化に励まずにはいられないな。しかし臓器たんとはまた懐かしいネタを。キレた膵臓たんが「てめこら膵臓舐めんじゃねぇですよ、インスリンの分泌ば切られて糖尿病にされてぇんですかド低能」と脅したり逆に「裏奥義・低血糖昏睡(インスリンショック)」で主人公の死の淵に追い込んで「あらあら、これじゃあ私もおっ死んでしまいますね……ドロー、『グルカゴン』カード! 肝細胞に作用してグリコーゲン分解! 効果は『血糖値の上昇』ッ!」とか考えたりしたけれど、大劣化され竜であることに気づいて投げました。

 コミュ、体験版でもありましたが作中掲示板から公式サイト内にリンクとかちょっと面白い試みしてますね
 へー、そんな仕掛けがあるんですか。気づいてなかった。今度試してみます。


2009-10-22.

・マンネリだ何だと言いつつも『ブロッケンブラッドW』を存分に楽しんでしまった焼津です、こんばんは。ちょろっと1話だけ読むつもりだったのに、気がついたら1冊全部読み終えていたぜ……。

 ドイツ系三世の美少年がほぼ全編に渡って女装しまくるドタバタコメディであり、同じ作者の代表作『ユーベルブラット』とは目指す方向が180°異なる爽やか変態マンガながら、相変わらずクオリティの高さは確かなもの。「このネタで4冊は引っ張りすぎだろ……」とも思うけれど、つい夢中になってページをめくってしまう。全体的にパロネタが多く、お台場ガンダムみたいな時事ネタが混ざっている一方、どう見てもベガなオッサンが「サイコブラジャー」とほざいたりする少し懐かしめのネタも入っていて無意味に幅広い。このバカバカしいナンセンスギャグを時に盾として、時に矛として構え、力任せのハイテンションで押し切ってみせる鮮やかな腕前、心底感心しますわ。決して焼き直しじゃなく、「見慣れた未知」を揺るぎない安定感で以って紡ぎだし、大いに楽しませてくれる。世の中には素晴らしきマンネリというものがあるんですね。マンネリっつー言葉自体、いい方に解釈すれば「ブレない」ってことである。とにかく5巻も楽しみだ。

シンジ「ATM全開!!」(暇人\(^o^)/速報)

アンタ生きてるんでしょ!だったらしっかり保険かけて、それから死になさい!!

 ミサトさんが概ねヒドいキャラになっているな。連帯保証人(ダミープラグ)など細かい小ネタも利いていて笑えます。

暁WORKS響の『紫電〜円環の絆〜』、体験版をプレー。

 あかべぇそふとつぅの姉妹ブランドである暁WORKSの派生ブランドに属する「暁WORKS響」、そのデビュー作がこれです。暁WORKSは他に「暁WORKS BLACK」というブランドも抱えている。あかべぇ系列は枝葉が増えすぎでもう訳分かんねぇな……とりあえず、暁WORKSブランドは「スタッフのほとんどを社員ではなく外注で賄っている」あたりが特徴ですね。おかげで一作ごとの変化が激しく、ブランドカラーと呼べるようなものも持っていない。るい智やコミュのスタッフを主力にしようと目論んでいる雰囲気は感じますが、さてはて。

 ブランド紹介はさておき、『紫電〜円環の絆〜』自体の説明に移ります。「円環の絆」というタイトルから『魂響〜円環の絆〜』を連想し、「『魂響』の続編かな」と思っていました(ブランド名の「響」もそこから来ているものかと)が、別に関連作品というわけじゃないみたいです。登場するキャラクターにしろ団体にしろ設定にしろ、繋がりを窺わせる要素は見当たらなかった。噂によると「作風が似てるから」という、ただそれだけの理由で『魂響』と同じ副題を冠しているんだとか。路線も『魂響』と一緒、現代社会を舞台にした伝奇アクションです。「六波羅」や「陰陽寮」といった異能集団の存在する世界設定を背景に、「金剛斎」と名乗る男が幻魔大戦を勃発させて主人公やヒロインたちがそれに巻き込まれていく。若本規夫がボイスを担当する金剛斎の目的は至ってシンプル、「人間をいっぱい殺したい」です。この星の一等賞になりたいの、戦争で、オレは。そんだけっ! と言わんばかりだ。正直言って容姿が某文学のバーサーカーに見えて仕方ないし、自衛隊相手に褌一丁で戦うのは絵的にどうか(そもそもなんで自衛隊がいきなり市街地に治安出動しているのか)と甚だ疑問だが、細かいことを脇に措けば行動理由が明確で分かりやすいところに好感が持てる。込み入ったところのない、率直な「悪」として屹立してくれるラスボスは昨今だと逆に珍しくてありがたいわ。

 プレー時間はだいたい3、4時間程度かな……るい智やコミュに比べれば短いが、体験版としては充分な長さだし、却って手頃なボリュームと言える。どうもダブル主人公制らしく、神津ミソカと壬生ツヅキのふたりが音声なしのキャラクターとして登場します。が、体験版だとミソカの視点が大半を占めていて、ツヅキの出番はほとんどない。顔グラや立ち絵も出ないので、ツヅキの存在感はかなり薄いです。で、ミソカは六波羅という異能集団の諜報部に所属していて、かつては一刀を携え危地に飛び込む工作員であったが、仲間たちの手ひどい裏切りによって死に掛け、今は現場から退いている。裏切られたときのショックが原因で「誰かに信頼を寄せる」ことを忌避するようになってしまった彼はクラスメイトにして謎の戦巫女、稗田朔と成り行きで共闘することになるが……ってな具合で、過去にふたりが出逢っていることをそれとなく匂わせる(主人公は忘れているが)など、同じ暁WORKSの『僕がサダメ 君には翼を。』を彷彿とさせる内容になっています。「ミソカ(晦日=つごもり、月が隠れること)」と「朔(新月、月が現れること)」で主人公とヒロインの名前が対になっているのは面白いというか分かりやすい。

 ハッキリ書いてしまうと、テキストやシナリオに関してはあまり面白みがないです。金剛斎が殺戮を繰り広げながらくだらない冗談を吐いたり、ところどころでパロネタが挿入されたり、戦っている最中に互いの武器を薀蓄混じりで解説し合ったりと、殺伐たる伝奇アクションのくせして全体的に緊張感が乏しい。目も当てられない、と嘆くほどではありませんが、どうにもまどろっこしさが拭えないのでバトル面はさして期待せぬ方が吉です。普段の掛け合いにしても、やたらトリビア的な解説が目立つと申しますか、説明臭いセリフ多くて流れが途切れがち。残念ながらダレてしまう場面がいくつか……けれども、最後までやり通すに足る見所はありましたね。なかなか続きが気になる終わり方だったし、振り返ってみればラブコメチックな掛け合いをする箇所は悪くなかったです。ヒロインの朔が期待以上に可愛い。分類すれば「教養はあるけど世間知らずの天然武闘派」で、ウブな性格との兼ね合いもあって素直に「エロシーン見てぇ」と願う魅力が詰まっています。

 特に気絶から目を覚まして「何かいかがわしいことをされたのでは……!」と不安になりスカートたくしあげて下着さげて股間を確認しているところで主人公の存在に気づくシーン、あそこは神懸かってますね。慌ててパンツを履き直すなんていう平凡なリアクションはしません、一刻も早く隠したかったのか、なんとパンツさげたままスカートを両手で押さえるんですよ。太ももの間に取り残されたパンツこそエロスの権化なり。今回は唯々月たすくが原画を手掛けているだけあってビジュアル面のエロさは結構なものです。くノ一ふたりや金髪巨乳は立ち絵だけでも充分そそる。話を朔に戻すと、ファーストフード店にて「これはこうやって食べるものだろう」とフフン顔で思いっきり間違った摂食法を提示してみせる豪胆っぷりに惚れました。明らかにメインヒロインがやっちゃいけない光景を晒してやがるぜ……下手な陵辱シーンよりも衝撃的。あ、陵辱といえば若干「そういう場面」も入ってましたが、あくまでオマケ程度でそんなに本腰入れて鬼畜展開をやろうっていう意欲は感じられなかったです。金剛斎が「人間が死ぬところを見ながら女を犯すのは格別だ」とかゲンハ様みたいなことを言ったり実行したりしてますが、テキストはレイプ描写よりも殺人描写の方に気合が入っているくらいで、こりゃ本番のエロシーンに対して不安が募るな……。

 さして心惹かれるストーリーではないし、主人公が「普段は学生、正体は諜報部員」と裏表あるのにそれぞれで明確にキャラクターを使い分けているわけでもなく、終始一本調子で通すため違和感と物足りなさを覚える(ヘラヘラ笑いを浮かべた学生の顔からキリッと諜報部員の顔に切り替わる、ってなシーンが全然ない)けれど、ヒロインはちゃんと可愛かったり、CGもやや安定感は欠けるにせよキレイだったりエロかったりで、結局収支トントン。伝奇バトル好きに薦めるのは躊躇うものの、唯々月たすくが好きな人なら買っても損はなさそう。個人的には、体験版だと冒頭くらいしか出番のなかった姫乃が気に入った。着物の襟が婀娜にはだけて胸元を覗かせる……かと思いきや巨乳にしっかりサラシが巻かれていた、というガッカリ感でむしろ燃えました。

・そして懸案事項だった『るいは智を呼ぶ』もやっとのことでコンプリート。ギリギリ間に合いました。まとまった感想はいずれ折を見て書くつもりですが、やはりグランドフィナーレを迎える最終ルートの面白さは格別でしたね。シナリオの文体やキャラクターの言動など、クセが強いソフトなので誰にでも薦められるってわけじゃないけれど、個人的にはとても気に入りました。

・本日発売の『コミュ−黒い竜と優しい王国−』はインストールが終わり、体験版終了セーブデータをダウンロードしてきて当てたところ。本格的な攻略は明日から取り掛かることにしますが、『装甲悪鬼村正』の出る30日までに目処を付けられるかどうか……ともあれプレーさせていただこう。

・拍手レス。

 バルドフォースは言葉…いやいや、ゲンハがイイ味を出してますな。正に理想の外道っぷり。
 『Duel Savior』のムドウがなぜ「劣化ゲンハ」と呼ばれていたのかが分かりましたわ。

 放映は何時だ!>>じょぶれす!
 きっと今、誰かの夢の中で……。

 夢ネタ、いっそ全編書下ろししませんかー?ごっつい読みたいw
 全編も何も、あそこで終わり。ED曲は制服着た従姉(ニート)が「だってだってだっ低☆学☆歴〜♪(クスクス) 低☆学☆歴なんだもん〜♪(プークスクスクス)」と半笑いで歌っていたような記憶がうっすらと。

 最初に作品名がないから予測はできたが、長いw 実際にゲームにありそうで困るw
 テキストに起こしてるとき『だめがね』を思い出しました。

 じょぶれす!モニターの前で手をたたいて笑いました。是非焼津さんがノベル化を!あと惑星のさみだれお勧めです。
 さみだれは読んでいて思わず泣きそうになる。目が離せない作品ですな。

 そのアニメと言うか夢を小説にするんだ!
 結末は「さぁ… いこう… 俺たちの就活は これからだ!(第一部・完)」ですね。


2009-10-19.

・主人公(一人暮らしをしている大学生)のもとに、ある少女が転がり込んでくる。経歴不明の謎美少女――ではなく、単なる従妹だった。年下なので近所住まいだった昔は本当の妹みたいに可愛がってやった記憶があるものの、互いの引っ越しによって近頃はすっかり疎遠になっていた。久しぶりだな、と懐かしむ暇もあらばこそ、いきなり従妹は「お願いです、わたしにお兄ちゃんの『姉』をさせてください!」と奇々怪々な懇願をし始める。説明によると、彼女は中学校を卒業後に「派遣お姉ちゃん」という職種に就いていたという。所謂「レンタルお姉さん」とは違い、家政婦やベビーシッターの延長のような仕事内容で、両親が忙しくて構ってくれる相手のいない幼児の面倒を看る、労働契約上の「姉代わり」だったそうだ。しかし、折りしも世界的な大不況、リストラを喰らって彼女は「派遣お姉ちゃん」から「野良お姉ちゃん」、もっと言えば「ただの無職」になってしまった。

 「ええ、今は雌伏の時ですね。捲土重来のタイミングを虎視眈々と狙っています」 インタビューされる著名人みたいな表情で語る従妹は、「擬似お姉ちゃん」に並々ならぬ未練と執着が残っているらしい。「ほら、わたしって実生活ではずっと『妹』でしたから……知人の手伝いとしてやってみた『姉』に最初は違和感と戸惑いを覚えつつも、小さな子どもたちに『お姉ちゃん』と呼ばれて頼られるうち、次第に『ああ、姉こそ我が天職』と自覚するようになりまして……」 かくして、「お兄ちゃんの『姉』」という突拍子もない結論に辿り着いた。「姉とは純粋な精神理論であって、本来歳の差など瑣末事である」という珍説を披露しながら、微妙に嫌がる主人公(結局流されるヘタレ)を尻目に「プーお姉ちゃん」「年下のお姉ちゃん」として強制的に住み込み始める。「天職」と言い張るだけあって従妹の生活サポートのスキルは常軌を逸しており、「まるでマンガやアニメに出てくるメイドみたいだな……」と呟く主人公に「姉」ならではの可愛がり(相撲用語ではない)パワーを発揮して、「メードとは違うのですよ、メードとは!」となぜか新聞表記でグフい豪語をする。

 やがて年下のお姉ちゃんという異次元存在にも慣れて馴染んできた主人公だったが、そんな彼らのもとに一人の来訪者が現れる。ヒロインたる従妹の姉、主人公よりも年上、正真正銘の「お姉ちゃん」に当たる女性だった。詰まるところ従姉である。「姉より優れた妹なぞ存在しねぇ!」 ジャギい発言とともに乗り込んできた姉を、「あれだけ外を出歩かないでって言ったのに……」と妹は蛇蝎の如く忌み嫌う。生まれてこの方家事などしたこともない、ただただ怠惰で横柄で驕慢で、顔とスタイルとSっ気の良さで男どもに傅かれ今までの人生をテキトーに凌いできた女――「姉とも呼べぬ姉」であるとして唾棄。最強最悪の身近な反面教師、すなわちザ・ハウス・オブ・ザ・デッドならぬザ・恥・オブ・ザ・ハウスである。「弟は道具。妹は家具」と言い切り、カウチに寝そべって懶惰な姿態を余すところなく見せ付ける従姉はわがままおっぱいと生意気おっぱいに恵まれた天性のけしからん姉であり、また妹に「あなたにとって労働とはなんです?」と訊かれれば一拍おいて「敗北だ」と嘯く生粋の「ニートお姉ちゃん」でもあった。懐かしの地雷震ネタである。主人公を顎で使い、妹の小言を聞き流し、真昼間から酒を飲んでだらしなく酔いどれる。もちろん酔えば酔うほどにエロくなる。教育に悪い女である。当然、妹との仲は険悪になり、諍いが絶えない。

 姉妹の板挟みに悩む主人公は連休を利用してとりあえず実家に避難。しかしそこにはFXのハイレバ取引によって当分働かなくてもいい金額稼いだのをいいことに、仕事辞めて家から一歩も出なくなった実の姉――「ヒキコモリお姉ちゃん」が待ち構えていた。童顔低身長のせいでしょっちゅう小学生や幼稚園児と間違われることに倦みつかれ、「お布団さいこぉぉぉっ!!」を合言葉に昼まで眠りこける、自堕落極まりないロリ姉が。イメージ的には『ふおんコネクト!』の英夕が近い。「あの座敷童女をなんとかしてくれ」と泣きつく両親を袖にできず、愚図って部屋から出ようとしない姉に当て身を喰らわせダンボールに詰めて拉致っていく主人公。こうしてプー、ニート、ヒッキーから成る「三種の姉貴」が揃った。ハーレムとは名ばかりの家事手伝い群(実際は手伝わない奴が約2名)を前にした主人公の明日はどっちだ。むしろ「姉たちに明日はない」のか。What a hopeless tomorrow。

 ……というアニメを鑑賞する夢を見た焼津です、こんばんは。多少脚色しましたが概ねこんな感じでした。ニートの従姉がなぜかお嬢様女子高に通っていた頃の制服を引っ張り出して着用しながら「この中で学歴は私が一番上! 中卒とFラン卒が舐めた口利いちゃいけないねぇ!」とふんぞり返り、他のふたりに「うるさいよニート、空気吸ってる暇があったら早くそこらへんの道端で体売ってきて」「お姉ちゃん、働かないで食べるご飯は美味しいですか?」と罵られ嫌味を言われる場面が印象的でした。同じ穴の狢たちが五十歩百歩のアドバンテージを根拠に排他し合うギスギス感は言葉にできない。冷静に考えると「ぜんいん☆ムショク!」というシチュエーションが凄まじいな。いったいどこから家計費が捻出されるのか不思議でならない。あ、ちなみにタイトルは『じょぶれす!』でお願いします。数年前だったら『姉、ちゃんとハロワにいこうよ!』だったかもしれない。

戯画の『BALDR FORCE EXE』、プレー開始。

 今年は戯画の大作『BALDR SKY』が2部作として世に出る運びとなっています。既に第1部『Dive1 "LostMemory"』が3月に発売されており、第2部『Dive2 "RECORDARE"』も11月発売予定だ。分割商法だ何だと謗りつつも評判がイイので気になっていた当方、来月にリリースされるDive2(俗称「大仏」)を入手してから一気にプレーしようと目論みましたが、「そういえば『BALDR FORCE』がまだ積んだままだった」ということをはたと思い出し、こうして押入れの奥から発掘してインストールを済ませた次第であります。保存状態悪かったからすっかり箱が歪んでいましたよ……ちなみに廉価版ではなく箱のデカい方です。記録を見ると2003年の4月に買っている。かれこれ6年半も放置していたことになりますね。しかし2003年の4月って、なんとまあデモベが出た頃じゃないですか。まだこのサイトが影も形もなかった時代ですよ。しんみりせずにはいられません。

 さておき。『BALDR FORCE EXE』、このタイトルは「バルド フォース エグゼ」と読みます。2002年11月に発売された『BALDR FORCE』がベースとなっていて、多少追加要素があるから「EXE」なんだと思います。バルドシリーズの中でも割と人気の高いらしい一作ですが、そもそも「バルド」とは何ぞや?を軽くサラッと説明いたしましょう。バルドシリーズは1999年7月発売の『BALDRHEAD 〜武装金融外伝〜』を端緒とする、平たく書けば「ロボットを操作して戦うACT(アクション)エロゲー」です。エロゲーはその特性上、ソフトのほとんどが電脳紙芝居に等しい読み物(ノベル)であるものの、中にはRPG(ロールプレイングゲーム)やSLG(シミュレーションゲーム)など「やり込み要素」を備えたソフトもいくつか伏在している。しかし、メカでバトルな2Dアクションは珍しく、その稀少さゆえにバルドシリーズは話題となっていきました。『装甲姫バルフィス』、『BALDR BULLET』と来て、シリーズ4番目に当たるのがこの『BALDER FORCE』。Wikipediaによるとバルドヘッド、バルフィス、バルドバレットは同一の世界で、バルドフォースはそれらと異なる世界が舞台になっているらしい。で、『BALDR SKY』はバルフォの続編に当たる、と。なんだかドラクエみたいな関係だ。他に『BALDR BULLET "REVELLION"』というバルドバレットのリメイク(CGやキャラデザは一新されているが、シナリオはそのまま)、『Xross Scramble』というバルドチームのFD(バルドもコンテンツに含まれているが、どちらかと言えば『Duel Savior』寄りみたい)もありますが、今のところエグゼ以外何一つ手をつけていない当方に語れることは多くなく、このへんで説明を切り上げさせてもらいたい。

 バルフォ本編に話を戻す。ハッカー集団“草原の狼”(ステッペン・ウルフ)の一員であった主人公は、チームの解散記念として盛大に仕掛けたハッキングの最中に軍とテロリストの交戦に巻き込まれ、親友を喪い、当局に身柄を拘束された。そんな彼を救い出したのは、なんと軍属の人間。ハッカーである主人公に「いい腕してるな、入隊しないか?」と気軽に声を掛けてくる。軍には、無抵抗の親友を殺した憎き仇がいる。外から探し出すよりも、中から探した方が手間は省けるだろう――と、主人公は自ら獅子身中の虫となる道を選んだが……。仮想世界へダイブして、電子上に構築された機械の体「シュミクラム」を操り敵と戦う。敗北すれば最悪、脳死(フラットライン)に至ることもある。文章のあちこちに鏤められたルビの数々が「いかにも」な雰囲気を編み上げるサイバーパンク調アクションであります。ストーリーはちょっと重たいが、ノリ自体は結構軽め。おかげでサクサクと読める。元が7年近く前のゲームだけあって、グラフィックはさすがに見劣りします。音質もショボい。けど、それでも内容はしっかりしている。一つ一つの章が適度な緊張感を保ちつつ過不足のない長さにまとまっていて、1章あたり30分と掛からないのにガッツリと読み応えあります。程好く切り詰められたシナリオが実に小気味良く、短時間でスッと楽しめるあたり、ホント魅力的だなぁ。昔のゲームはとにかく水増しテキストが少ないというか、ひたすら単刀直入なのがイイですね。3時間もしないでゲンハ様が出てきたときは感動すら覚えました。なんつーかこう、面白いとか言うよりも、もっとシンプルに「遊べて嬉しい」感じです。ついつい夢中になってしまう。アクション苦手なヌルゲーマーの当方も、「こいつムカつくー!」とムキになってバチェラを倒しちゃった次第。十数回チャレンジした末にやっとクリアしたときは心底ホッとしました。そういや小学生の頃、躍起になってストUのベガを倒したり、必死になってワーヒーUのデュオをやっつけたりしたっけ。エロゲーなのに童心に返るとは不思議なものだ。

 3日後にはコミュが来るし、月末には村正が待ち構えているので、もう少し進めてから当分中断することになりそうですが、この面白さなら大丈夫でしょう。いずれガッツリ攻略したくなって、気づいた頃にはエンディングを迎えているはずです。余談。アクションパート、敵をフルボッコにするのは楽しいけれど、逃げる敵を追いかけるのがめんどい……画面外に消えると一瞬どの方角にいるのか分からなくなってしまうし。

・拍手レス。

 シュピーネさん自重。ファーブラでの挽回に期待ですね(ねーよ)
 過去の回想シーンでいいからチラッと出てこないかナァ。

 私は向日葵の咲かない夏とシャドウがお気に入りなんですが。特に前者は、土砂降りにあって下着までびしょ濡れになると不快を通り越して刹那的な爽快感を覚えて爆笑したくなる気持ちというか、不思議と気分が上向きました。…病んでなんかないですよ?
 『向日葵の咲かない夏』は前知識なしにブシドーブレードをやらされるくらいの衝撃がありました。


2009-10-16.

・漫画漁りに精を出している今日この頃、佐藤タカヒロの『バチバチ(1)』が面白くて軽く興奮した焼津です、こんばんは。

 表紙から一見チャンピオンお得意のヤンキー漫画と錯覚しそうになりますが、実は相撲マンガ。「実力は横綱並」と囁かれながらも不祥事を起こして角界を去るハメとなった力士の息子・鯉太郎が、亡き父を超えるために横綱を目指す……みたいなストーリーです。「鯉」が滝登りを果たして「竜」になる、といった目論みなんだろうか。1巻は相撲部屋に入ることを決意して家から出て行くあたりで了となり、まだ本格的な相撲は始まっていないけれど、タイトル通りバチバチと火花が散るような激しいぶつかり合いはしっかり描写されていて、今後がとても楽しみである。「死んで生きれるか」を合言葉に鯉太郎がどこまで登り詰めるか、是非とも期待したい。ぶちかましはどんなに喰らっても構わないが、少なくとも打ち切りだけは喰らわないで欲しい。チャンピオンって面白そうな漫画が結構な確率で早期終了してしまうんですよね……。

light、『Dies irae〜Acta est Fabula〜』の情報更新

 ファーブラ追加パッチは12月中に配布される――と約束された程度、めぼしい情報はなし。

 それにしても、シュピーネのバナーなんていったい誰が得するんだ……。Dies irae〜Acta est Fabula〜応援中!

 単体だと違和感バリバリなので他と組み合わせて使うしかない。

“Dies irae〜Acta est Fabula〜応援中! “Dies irae〜Acta est Fabula〜応援中! “Dies irae〜Acta est Fabula〜応援中!
“Dies irae〜Acta est Fabula〜応援中!
“Dies irae〜Acta est Fabula〜応援中!

 せっかくニートと練炭が激突感を醸し出しているのに台無しムードでいっぱいだよ。

・道尾秀介の『花と流れ星』読了。

 現時点で著者唯一のシリーズ、“真備庄介”シリーズの3冊目です。『背の眼』『骸の爪』はボリュームのある長編ミステリでしたが、今回は短編集。30〜60ページ程度の作品を5つ収録しています。真備シリーズは「亡くなった妻にもう一度逢いたい」という願いから霊現象を探求している真備庄介と、亡き妻の妹で真備の助手を務めている北見凛、そして売れない作家・道尾秀介の3人がオカルトめいた出来事の数々を調査していく、ミステリとホラーサスペンスの中間に位置するようなシリーズです。だいたいは合理的な解決が施されるため、一応「本格ミステリ」に属するとされていますが、時折「ひょっとすると霊って実在するんじゃ……」な空気を漂わせる。ノン・シリーズの単発作品を主体とする道尾小説の中では正直あまり存在感のないシリーズながら、最初に読んだ道尾秀介の本が『骸の爪』だった影響もあって個人的には続きを切望しています。早く長編の3作目が来ないものか……。

 では以下、収録されている各編のあらすじと感想を書いていきます。

「流れ星のつくり方」 ―― お茶を買ってこようと、屋外の自販機目指して旅行先の宿から抜け出した北見凛。自販機横のベンチで一休みしていると、すぐ後ろの民家から声を掛けられる。窓辺でラジオを聴いていた少年が、バス停近くのベンチに座っている凛を気遣ったらしい。彼は凛に「流れ星のつくり方」と、ある殺人事件の話をする。侵入時の姿は目撃されているが、現場から立ち去るところを誰にも見られなかった殺人者。そいつはいったい、どうやって逃げたのか……。

 一番古い作品ですね、2005年の発表です。真備や道尾の出番は無に等しく、全編が凛の視点で綴られている。少年が語る「事件の状況」を元にして思考する、一種の推理クイズというかアームチェア・ディテクティブみたいな趣向。回りくどい構成になっているのもちゃんと意味があり、それこそ少年の話が始まる前から手掛かりは提示されています。今、あらすじを書く前に冒頭読み返し、かなり早い段階で伏線とおぼしき箇所がいくつか潜んでいることに気づいた。よくよく考えてみると、付近の民宿の浴衣を着ている凛に「バスを待ってるの?」と訊くことが不自然なんですよね。うっかり読み流していました。「伏線の鬼」と称される道尾だけあって、初球からなかなかのキレを見せます。

「モルグ街の奇術」 ―― バーでのんびり真備と飲んでいる道尾に、一人の酔漢が話しかけてきた。彼は「マジシャン」と自称し、己こそがかの脱出王ハリー・フーディーニの曾孫だと豪語する。呆れる道尾を尻目に、これから見せるマジックのタネを見抜け、見抜けなかったら自分の酒代を払ってくれ、と持ちかけてくる男。気が進まない道尾は「ミステリー小説なら大抵はトリックがわかるんだけどね、マジックってのは……」と言葉を濁して断ろうとするものの、男は「それでは、ミステリーのほうで勝負しましょうか」となおも迫る。彼はかつて、衆人環視にも等しい状況で自分自身の手首を「消して」みせたと言い出すが……。

 タイトルは無論「モルグ街の殺人」を意識したもの。当然のようにネタバレされていますので、「モルグ街の殺人」が未読の方は注意してください。さて、こっちも「流れ星のつくり方」同様アームチェア・ディテクティブっぽい趣向です。嘘か真かも知れぬ怪しい話だけを頼りに、「密室状況下での手首消失」という謎を解き明かさなければならない。シチュエーションの面白さに比べて解決編はややテンションが低いと申しますか、率直に言って肩透かしですけれど、最後のオチが特徴的なエピソードです。解釈次第では「奇妙な味」とも受け取れる一編。

「オディ&デコ」 ―― 真備の事務所に、幼い少女が「仔猫の幽霊に取り憑かれている」と相談を持ち込んできた。聞くところによると、彼女は友人と一緒に公園で仔猫を拾ったらしい。が、友人はペットの飼えないマンション住まいで、自分のところは一軒家だったが親に「捨ててきなさい」と命令されてしまった。誰か他の人に拾ってもらえることを祈って箱に使い古しのセーターと使い捨てカイロを詰め、道端に置いてきたが、そこはカラスの多いゴミ集積所。翌朝、箱の中はセーターとカイロだけになっていた。大量の赤い染みとともに、仔猫の姿は消えた。しかし、直前に少女がケータイで撮った動画には仔猫の顔とおぼしき白いものが映っていて……。

 やっと霊現象に関連した話が来ました。今回は真備が風邪でダウンしていますが、代わりに凛と道尾が「現場」まで足を運びます。「オディ&デコ」という変なタイトルの由来は真相とも関わってくるので、解説を割愛。なんというか、あまり特徴はないんですけれども、読切でコミカライズするとしたらこれが一番適しているのではないかな――と思える一編でした。情けない役割の多い道尾秀介が珍しく活躍する話なので、もし本当にマンガになったら「このシリーズは道尾が主人公」と勘違いされてしまいそう。

「箱の中の隼」 ―― 発刊を予定している本の直しと確定申告の帳簿整理で真備と凛が忙しい中、のこのこ事務所にやってきた道尾秀介。手持ち無沙汰で退屈していたら、こともあろうに真備が「こちらが真備先生です」と嘘の紹介で来客の応対を丸投げしてきた。訪問客の女性は美人だったが、どう見ても怪しい新興宗教の団体に所属していて、辟易する道尾を意にも介さず「是非うちの施設を見学してほしい」と頼んでくる。勢いに負けて頷いてしまった道尾は偽真備として宗教法人「ラー・ホルアクティ」の本拠地へと向かうが……。

 70ページ弱あり、今回の短編集においてもっとも長いエピソードとなっています。多忙を理由に真備が欠席して、またしても道尾が主役みたいに。真備が登場すると早々に事態を解決してしまうせいか、他の編といい、やたら出番が制限されていますねぇ。デウス・エクス・マキナな探偵というのも結構扱いに困るものみたいです。だから真備シリーズが少ないんだろうか……長いだけあって読み応えはありますが、エピソードが凝縮されているせいか後半の展開は若干慌しい。もっと長くしても良かったのでは、と思わなくもないが、ネタを考えるとこれぐらいがちょうどいいのかもしれません。

「花と氷」 ―― 亡くなった孫娘にもう一度逢いたい。真備の事務所を訪ねてきた老人は、そう語った。自分の不注意が原因で事故を防げず、幼い身でありながら帰らぬ人となってしまった孫に、どうしても謝りたいのだと。真備霊現象探求所はあくまで「霊現象を求め、それらしい事案を調査する」ところであり、真備自身は霊媒師でも何でもなく、こうした依頼に応えることはできない。三日後、当の老人が公園で笑顔を浮かべて子供たちと接している様子を目にして、密かに気に病んでいた凛はホッとするのだが……。

 これと「流れ星のつくり方」を合わせて『花と流れ星』という短編集のタイトルが来ているのでしょう。依頼を受けて調査に乗り出す、というパターンからは外れているにせよ、「霊現象に救いを求める人がいる」点ではもっとも真備シリーズらしい雰囲気となっています。老人のやろうとしていることは早い段階で察せられるため、サプライズ要素には欠けるけれど、「理不尽だと、お思いになりますか?」という問いに「思いません」と答える場面で、ああ、真備だなぁ、と感じ入った。

 どれも同程度の水準で仕上がっていてバラつきがない、逆に言えば突出して面白い作品がない、やや地味な一冊となっています。ファンには嬉しい内容だし、短いおかげで読みやすいけれど、ここから手を付けると「ふーん、まあまあじゃん」みたいな感想に落ち着いて真備シリーズ、ひいては道尾小説に対して深い魅力を覚えにくいのでは……と心配してしまう次第。道尾未経験者はできれば後回しにしてほしい。シリーズの前作に当たる『骸の爪』、あるいは『シャドウ』『カラスの親指』といった代表作、最近のであれば『龍神の雨』あたりを入り口に、「読みやすさと衝撃の一体感」をまずは味わっていただきたい。

・拍手レス。

 暁worksのサイト更新が一週間以上無かったんで延期を危ぶんでましたが……一安心ですな
 今月は注目作に延期がなくてホッとした反面、スケジュールがすごいことになって内心惑乱公。

 小説読ませてもらいました。面白かったです。
 ありがとうございます。楽しんでいただけたなら幸いです、本当に。


2009-10-13.

『そらふね』のデモムービーを見て、ずらずらと出てくるキャラクター名の数々に思わず噴き出した焼津です、こんばんは。

 エルリック・C・クラーク、エレコーゼ・アシモフ、コルム……どれだけエターナルチャンピオン好きやねん、とツッコミたくなるネーミングです。C・クラークは「アーサー・C・クラーク」由来だろうし、アシモフも当然「アイザック・アシモフ」が元ネタでしょう。主人公のシンイチ・スターは「星新一」、幼馴染みのティカ・ペペンシー・ガーンズバックも、ぐぐってみた感じペペンシーは『ナルニア国物語』の「ペベンシー兄妹」のもじり、ガーンズバックはヒューゴー賞で知られる「ヒューゴー・ガーンズバック」から来ているっぽい。となるとシド・K・サキョウは「小松左京」か? ああ無節操にもほどがある。ふと元長柾木が笠井潔ネタ使いまくってて笑ったりしたことを思い出したけど、やっぱりエロゲ業界の中にもミスオタやSFオタが相当数潜みよるのかしらん。たとえば原田宇陀児は名前の時点で勘繰っていましたが、「サウスベリィの下で」を読んで完全にミスオタと確信しました。

 具体的にどんな「冒険」をするのかさっぱり不明でかなり漠然としているストーリー、および統一感に欠けるネーミングのせいかいまいちSF好きからの反応は良くないみたいですが、11月発売予定という『そらふね』、とりあえず注目してみんとす。

暁WORKSの 『コミュ−黒い竜と優しい王国−』、マスターアップ

 めでたい。これで今月は安泰ですな。そして当方は早くるい智を終わらせねば。イヨコ可愛いよイヨコ。伊代って地味だけど、なにげない一言に胸が締め付けられることもあるから侮れない。これは良い眼鏡。

ライアーソフトの『白光のヴァルーシア』、体験版をプレー。

 「白光」と書いて「ひかり」と読む。ライアーソフト通算26本目のソフト。シナリオライター桜井光が手掛けるスチームパンクADVシリーズの第4弾であります。『蒼天のセレナリア』→『赫炎のインガノック』→『漆黒のシャルノス』→『白光のヴァルーシア』の順。スチームパンクADVは必ず「What a beautiful 〜」という副題が付けられている。今回は「What a beautiful hopes」。ちなみに一連のシリーズで『蒼天のセレナリア』だけファンディスクが発売されていますが、ダウンロード限定販売であり、パッケージ版は出ていないので注意されたし。『蒼天のセレナリア』本編もDL販売が始まったので、いずれまとめて購入するつもりではいます。

 さて、『白光のヴァルーシア』の解説に入る前に「桜井ワールド」とも言うべきスチームパンクADVの世界を起点にしてザッとお浚いしましょう。既作はシャルノスしかコンプしていない当方ですが、体験版付属の用語解説を読んで大まかな設定は飲み込みました。まず、桜井ワールドは大きく二つに分けられます。「西亨」と「カダス」。西亨は要するに我々が住む地球のことで、カダスとは北海の果てに位置する「門」を通じて行き来する異世界――というか別惑星です。シャルノスでは西亨(地球)の都市ロンドンが舞台でしたが、基本的にスチームパンクADVの主舞台はカダスの方だ。惑星の面積は地球のほぼ5倍、その1/5が「北央帝国」や「王侯連合」と呼ばれる列強によって支配された「既知世界」であり、残り4/5が依然として謎の多い大辺境「未知世界」となっています。ヴァルーシアは未知世界に分類される砂漠都市。「大天蓋」と称するきわめて巨大なシェルターに覆われて鎖国していたが、本編開始2年前に開放されて異邦(カダス既知世界、西亨)との国交を持つようになった。と、こんな具合にコチャコチャした背景設定があって、スチームパンクADV初プレーの人からするとやや取っ付きにくいかもしれません。大丈夫、分からないところはテキトーに読み流して、後で読み返せばいい。雰囲気を味わうこと優先で行けばOK。実際に当方もシャルノスをプレーしたときは桜井ワールドをよく理解しないままテキトーに読み進めていたが、さして支障なく楽しめた。桜井ワールドはスチームパンクADVのみならず『ANGEL BULLET』や『絶対地球防衛機メガラフター』にまで広がっているらしいし、また微妙にクトゥルー神話が絡んでくるので、ハナから「全容を把握しよう!」と意気込まないでテキトーに臨めば宜しいかと。ハマれば自然に読み込みたくなってきます。まずはその醍醐味を味わうところから。

 今回は幼い少年が主人公で、ショタ路線? と一瞬勘繰ったものの、これまで以上に群像劇の様相が濃いストーリーとなっており、ショタ好きを狙い撃ちにしようと構えている印象はありません。黄金瞳を二つ持つヒロイン「機関姫」クセルのほか、姐御肌に見えて実は道ならぬ恋に身を焦がしている乙女なアデプトのアナとか、愛らしくも主君への暴言と毒舌が絶えない召使にして「フォース」という名が意味深なリザとか、エロ要員の踊り子ナナイとか、「まともな濡れ場が一つもない」と言われた(つか当方が言った)前作『漆黒のシャルノス』を克服するような強力布陣となっていますが、そもそもライアーに過度なエロを期待することは禁物です。エロなしのキャラがいても泣かないようにしましょう。

 体験版は砂漠都市に暮らす人々の生活を綴る日常的な描写が大半を占めており、ときどき思わせぶりな断章が挿入されますが、話の進み先はなかなか見えてきません。ヒロインのクセルが「ホラー」という敵?に狙われていることはなんとなく察せられますが、各々の思惑は掴めそうで掴めない。収録は1話目のみなれど、その1話目が予想よりもずっと長かったため、正直やっていて途中でダレそうになる。しかし後半、ホラーの総大将たる「アブホール」が降臨することで物語のテンションは一気に上がります。あのへんの演出はシンプルながらも効果的で好きです。アブホールを打ち砕く黒鋼の巨神も参上してウルトラマンみたいな事態になってくるものの、例によって戦闘シーンはあっさりしていて、一方的にやっつける形で終了となります。桜井シナリオは戦力が拮抗している状態でのバトルってあんまりないですね。「概ね瞬殺」というイメージがありますよ。慣れてきたせいもあるのか、この瞬殺っぷりが逆に心地良く思えてくる。「俺TUEEEEEEE!」めいたワンサイドゲーム、やりすぎは単調化の元にせよ、スカッするので意外と嫌いじゃないです。

 「つづく」という表示が出たところで終わりとならず、盲目の歌姫ルナと主人公アスルの問答という形式で3つの選択肢が3回出てきます。ライアー恒例「キチンと攻略性のあるゲーム要素」ですが、シャルノスほど凝った内容ではなく、インガノックのゲームパートをより簡略化した感じ。選択した後すぐに体験版が終わってしまったのでどういう効果があるのかいまひとつ実感できないが、むしろ攻略に詰まる可能性は低そうで安心した。シャルノスは黒妖精に追い詰められて絶望することがしばしばありましたからね。ショタということでやや不安だったアスルのキャラも悪くない雰囲気で、これは割と期待できそうだ。大石絵も、一部色遣いで生理的に受け付けない箇所はあるが、独特の線で引き込まれる。プレーしている最中は何度か迷ったにせよ、最後までやって購入確定と相成った。今はただ来月の発売を待ち望むのみ。と、その前に、そろそろインガノックもプレーしなきゃな……セレナリアは、まぁ、ヴァルーシアが終わった後でいいか。セレナリアに出てきたキャラがヴァルーシアにも登場しているとのことだが、やる順が前後してもたぶん楽しめるはず。

・拍手レス。

 MW文庫、まったく期待していなかったのに面子を見たら胸キュンしました。気合入ってる面子だなぁ……。どれも作風きっちり確立してる人ばっかりだ。……ところで古橋さん、ドラゴンバスターは一体どうなって(ry
 「古橋、寂滅!」「高畑、タイムリープ!」「原稿間に合いません――奈落堕ちします!」なオチが来ないことを祈ります。あと龍盤七朝は「諦める時だ」な気配が濃厚になってきました。

 今月の電撃文庫に、牧野修の名前があってびっくりしました。
 店頭で見かけた時は、思わず微苦笑を…

 『呪禁官』はジュヴナイル風でしたし、そんなに違和感ないかも。ただ、一覧で見ると明らかに浮いている。


2009-10-10.

・さして期待を寄せていなかった『シャングラッド神紀』が存外面白くて得した気分の焼津です、こんばんは。

 作者は祭丘ヒデユキ。成年コミックの中で「古代レイプ文明」云々を唱えるなど、異様なセンスが一部の好事家の間で知れ渡っています。ヒ連(ヒンドゥー梵我主義連邦神和国)だのヴ国(ヴッキョー神民共和国)だの、舞台となる国の名前からトばしていて、そのイカれたセンスは如何にもチャンピオンRED向け。インド神話をベースにしつつ、ヒ連の神がヴ国に行くと名前が変わる(インドラ→帝釈天)など細かい設定も敷かれていてなかなか楽しい。「反神反祈(はんしんはんぎ)」や「理不神(りふじん)」といった言葉遊びも多く、アクションシーンのノリを含めて若干岡田芽武っぽい雰囲気があります。ギャグとシリアスが入り混じったアクの強いムードに読み手の好みが分かれそうですけれど、「神敵」と書いて「テロリスト」と読む、みたいな厨二病バリバリの感性にエレクトする方なら大丈夫でしょう。余裕で燃えます。「神」を相手に戦う「無神論者」が主人公だけあって、「懺悔無用!!!」「臠殺してやる!!」「お前らの名は神話にも残さない!!」等々、熱気漲るセリフ目白押し。というか「臠殺」なんて単語、初めて見ました。「臠」は「肉片」を指し、要は「バラバラに切り刻んで殺す」という程度の意味らしい。

 巻数表記がないので1冊完結かと思いきや、そうでもない模様。「俺たちの戦いはこれからだぜ!」と言わんばかりの打ち切り臭いラストを迎えるが、売れ行き次第では続編が出るかもしれないとのこと。作者自身も「物語はまだ途中です」と明言しており、続きを描かせてもらえるのかどうかは不明確ながら、チャンスさえあれば依然トライする意思はありそうだ。予想以上にヒートアップしてくれたので、当方も続きを切望する所存。ただ、この1冊だけで3年近く掛かってるんですよね……同じペースで行くなら次は2012年かしら。

ニトロプラスの新作『装甲悪鬼村正』、マスターアップ

 製品情報のHDD欄が長らく「未定」のままでしたから一抹の不安が漂っていましたが、無事マスターアップしたようで祝着至極。マスターアップ記念ボイスも耳にして和んだ。それにしてもホント野郎の色が濃いゲームですね。微笑みとともに機関銃を乱射する雑魚様こと大鳥香奈枝の凛々しさもなかなか乙ですが。

12月創刊の「メディアワークス文庫」創刊ラインナップが発表に(平和の温故知新@はてな)

 12月に古橋秀之、1月に高畑京一郎――電流が背筋を駆け抜けていくようなラインナップですな。「すべて書き下ろし新作」と謳っている以上は過去の復刊とかでもなさそうで、もうワクワク感がすごい。「こんなに期待しては裏切られる!」と危惧するほどの勢い。面子がそのまんま過ぎて結局電撃文庫との違いはよく分からないが、何はともあれ年末を心待ちにしたい。

【撃沈】期待外れだったゲーム TOP10発表!(暇人\(^o^)/速報)

 エロゲーなら間違いなく『Dies irae』(2007年版)『Garden』(パッチ未適用)でワンツーだな……アイ惨はそもそも期待する要因が少なかった。それ以外はあんまり思い当たるソフトがないなー。『ヴェドゴニア』は戦闘システムでガッカリしたけど、作品としては好きな部類に入るし。『Quartett!』はボリュームの薄さに驚いたけど、その分密度が濃くて満足したし。『SEVEN-BRIDGE』は後半が駆け足すぎて唖然としたけど、エンディングの素晴らしさで帳消しになったし。思えば、恵まれたエロゲー遍歴であった……「怒りの庭」が到来するまでは。擁護しかねるほどの深い失望を立て続けに味わったという点では稀有な体験だったものの、もう二度と経験したくないです、あんな気分。

で、その『Dies irae』の完全版『Acta est Fabula』の公式サイトが更新されました

 キャラ紹介に櫻井兄、ベアトリス、イザークの3人を追加。櫻井兄の名前は「戒(かい)」だとようやく判明。一人称は「僕」みたいです。ベアトリスはさして目新しい情報がない(黒円卓に所属していた理由も「ある目的のため」とボカされている)けれど、「だって少佐、友達いないじゃないですか」というセリフに噎せた。なんて遠慮のない性格……。

 そしてDiesスキーにとって重要な情報源たるwebラジオ「Happy light Cafe」も更新。例によって要約。「初回特典である白本は160ページ以上」「黒本未収録CGや版権画の他、正田崇直々によるDies用語辞典や聖槍十三騎士団のパラメータなども」「用語辞典がまだ出来上がっておらず、どれくらいの量になるか分からない」「用語辞典はネタバレだらけで裏設定満載」「櫻井戒は顔出しないかも、あるかも」「今回は前回(クンフト)解決できなかったことを解決しないと」「正田が『イザークをなんとかしたい』という話なんで」「ホームページで公開されているベアトリスはキャラ紹介用のCG、本編では立ち絵ないかもしれない、その分イベントCGバンバン描いてる」「イザークは話の根幹に関わりすぎて説明しづらい」「玲愛ルートは『玲愛を解放するとはどういうことか』を追究するシナリオ」「正田の引き出しはすごい、『あれもあるんだよ!』『おおっ?』みたいな、いろんなものが詰まってる」「正田のアイデアには社員も驚かされる」「螢ルートはタグもだいたい打ち終わった、後はCGが上がってくるのを待って演出強化するだけ」「そろそろ音声収録へ向けた台本作業に取り掛かる予定」「正田が『音声収録には全部行く!』と張り切ってシナリオ書いてる」「ファーブラの体験版もつくっている、蓮の声やら何やら調整中」「lightはスタンディング・ミーティング(立ったまま打ち合わせ)することが多い、不思議」。次回はGユウスケが出演する模様。CGの進捗状況は如何程か。

・アサミ・マートの『木造迷宮(1〜2)』読んだー。

 メイドさんを題材に取ったマンガは星の数ほどあるのに、不思議と少ないのが女中さんをクローズアップしたマンガ。「女中」という響き自体が既にしてアナクロなれども、昔の小説等で「書生」や「細君」といった言葉に混じって使われていたこの見慣れぬ文字列に奇妙な引力を感じる人は当方以外にもおられるはず。「お手伝いさん」や「家政婦さん」ではダメなんです、風情がない。何が何でも「女中さん」でなければ。真白い割烹着の味わいを思い起こさせなくてはなりません。

 というわけで、「女中萌え」を合言葉にして三文小説家と女中のヤイさんが送る日常をほのぼのとコミカルに描く、穏和でいてテンポの良い理想的なマンガがこの『木造迷宮』であります。タイトルに「迷宮」とあるせいで読む前はサスペンスの匂いを嗅ぎ取ってしまいましたが、ぶっちゃけ終始ひたすらまったりとした空気が流れているため、明かされる秘密とか解かれる謎とか、そういうミステリっぽい要素は一切ありません。一話完結方式で日々の由無し事を綴っている。タイトルがちょっと合っていないですよね、これ。具体的な時代は示されていませんが、ケータイもパソコンもなく、剣玉や黒電話が出てくるところからして「昭和」のいつかでしょう。さすがに大正とか明治ではありません、看板などの横書き文字も左から右に向かって書かれていますから、恐らく戦後しばらく経っているものと思われます。ま、細かいことはいいんです。「よく出来た女中さん」だけど、時々抜けたところのあるヤイさんが心底かいらしいわぁ。1巻の前半は方向性がハッキリしなくて話もフラついているものの、後半あたりから目指す路線が明確になってきて、2巻では完全にスタイルを確立、まったき安定期に入ります。1巻だけしか読んでなかったら「ふーん、まあまあじゃない」という感想で片付けていたかもしれません。2巻まで立て続けに読んだからこそハマってしまった。そんな気がします。

 パッと見地味だから手が伸びにくいやもしれませんが、日常コメディ系のマンガがお嫌いでなければ試しに読んでみなさいませ。ヤイさんの魅力にコロッとやられること請け合いです。なんていうかこう、遅効性の面白さなんですよねぇ。ジワジワと効いてくる。いつの間にか「ヤイさんハァハァ」になっている。侮れぬ奉仕力だ。とか言いつつ、1巻に一回だけ登場してきたミカネくんの元気さも好きだったりして。今のところ恋愛方面の読みどころはごく僅かながら、亀の歩みで進展していくふたりの仲が微笑ましく、のんびりとしたペースがずっと続いても良いような大らかな心持ちさえ生まれてきます。

・拍手レス。

 富士見が持て余すといえば瀬尾つかさかな…
 瀬尾は一つのシリーズが長続きしないですね。絵師には割と恵まれている方だと思いますが。


2009-10-07.

『ましろ色シンフォニー』の体験版をプレーしてなんだか無性に『俺たちに翼はない』を思い出すなぁ、とモヤモヤしていたらヒロインの声優が一部共通していることに気づいた焼津です、こんばんは。

 五行なずな(俺翼では玉泉日和子、ましろでは瀬名愛理)と森谷実園(俺翼では渡来明日香、ましろでは乾紗凪)、ふたりが掛け合いするとどうしても「ひよ・あす」の組み合わせを連想してしまう。天羽みう役の松田理沙は『タユタマ』で「ましろ」という名前のメインヒロインを演じていたし、単なる偶然だろうけど奇妙な符合がチラチラあって驚く。ゲームそのものは鉄板の学園青春恋愛エロゲーで、目立った特色こそないものの、手堅く丁寧なつくりをしている。一番気に入った子は乾紗凪。でも扱いからして非攻略っぽい雰囲気であり、しぼむわー。

スティーヴン・ハンターの新作『黄昏の狙撃手』は10月30日刊行予定

 相変わらず扶桑社ミステリーの邦題センスは……いや言うまい。ただただボブ・リー・スワガーに「ボブ・ザ・ネイラー」の名誉挽回を期待するのみ。ハンターとは関係ありませんが、A・L・マカンの『ザ・ホワイト・ボディ・オヴ・イヴニング』『黄昏の遊歩者』になるみたい。奇しくも今月は二重黄昏となったか。

まだ1・2巻しか出ていない面白い漫画教えてくれ(VIPPERな俺)

 こういうスレを開けば半自動的に財布が軽くなってしまう……そう熟知しつつも開かずにはいられない。ついでに当方のオススメは以下の通り。

 『ベルとふたりで(1)』
 『第七女子会彷徨(1)』
 『とんぬらさん(1)』
 『おいでませり(1)』
 『ディーふらぐ!(1)』
 『黄昏乙女×アムネジア(1)』
 『お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!(1)』
 『つづきはまた明日(1)』
 『しなこいっ(1〜2)』
 『生徒会役員共(1〜2)』
 『グリードパケット∞(1〜2)』
 『からん(1〜2)』
 『裁判員の女神(1〜2)』
 『ブラック・ジョーク(1〜2)』

 充分な巻数が出揃った漫画を一気読みするのも爽快ですが、新しくてまだ少なめの巻数しか出ていない漫画をあれこれつまみ食いしてみるのも楽しいものです。新刊コーナーに寄ってついつい予定にない買い物をしてしまう――この、甘美な誘惑にあえて屈する愉悦は実に最高だ。たとえどんなに地雷を踏もうとやめられません。

・柳蒼二郎の『非の王(全4巻)』読了。

 「あらずのおう」と読む。『孤狼の剣』『凄艶の牙』『業火の剣』『紅蓮の牙』の4冊から成り、総計すると1000ページ近くにも昇る。新書上下二段組で、字の密度もそこそこありますから、原稿用紙に換算すれば2000枚は超えるでしょう。てなふうに書くと「ずっしり来るような大作」っつー印象を抱かれるやもしれませんが、いざ読み出すと「大作」のイメージはなく、驚くほどスルスルと滑らかに読めてしまいます。1巻目、物語全体の序章に当たる『孤狼の剣』は休憩時間を挟まず一気呵成に貪り尽くした。著者・柳蒼二郎は率直に申し上げてマイナー作家であり、事実この“非の王”4部作も完結してから早5年が経つというのに、未だ文庫化される兆しもありません。“元禄魔伝”3部作はタイトルを変えて去年と今年にようやく文庫落ちしましたから、“非の王”もまったく望みがないわけでもないんですが……あと「柳生十兵衛の左目は金色の光を放つ邪眼であった」なんていう、発想が中学生レベルで逆にカッコいい第2作『邪眼』もそろそろ文庫化してほしいです。

 小金ヶ原の決闘――御子神典膳と小野善鬼は、ふたりの師である伊藤一刀斎が見守る中で刃を交え合った。武家の誇りを尊ぶ麒麟児と、何物にも縛られない漂泊の魂を持つ牙狼。勝負は決し、御子神典膳、後の小野忠明が一刀流を継ぐことと相成る。しかし彼は、業物である「瓶割の太刀」を一刀斎から譲り受けることは拒んだ。「瓶割は、言うなれば野獣の牙。御師や兄者(善鬼)の腰にあってこその牙でござろう」と。かくして善鬼は死に、典膳は去り、一刀斎は独りとなった。やがて「一刀斎」の名も捨て、ただの「弥五郎」として流離う浮浪者に身を窶す。そして終の棲処と見定めた場所で、鋭い犬歯を持ち「狗神憑き」と蔑まれる赤子と出会う。これぞ小野善鬼の生まれ変わり、と感じ入った弥五郎は母を亡くした幼児に「善鬼」の名を与え、山奥の小屋にて男手一つで育て上げていった。伊藤善鬼。後に弥五郎の肉と骨を喰み、遺品である瓶割を腰に携え、行く先々に災厄をもたらすことになる男。激動の生涯の果てに、彼が辿り着いた境地とは……。

 剣聖・伊藤一刀斎を始めにして、非人頭の車善七や穢多頭の矢野弾左衛門、棕櫚柄組の水野成貞など、実在の人物を絡めつつ展開する時代伝奇活劇です。伝奇といっても妖怪や異能といった超常要素はナシで、せいぜい主人公である伊藤善鬼の剣技が超能力じみている程度ですが。読み口は隆慶一郎と夢枕獏を足して割った感じ。ただ内容としては隆慶作品や夢枕作品よりも丸山健二の『日と月と刀』を彷彿とした。さすがにあそこまで文体はくどくないものの、エネルギーの満ち方や主人公の存在感には幾らか共通するものがあります。

 人の集いを否定こそしないものの、「集団の和」ばかり腐心して思考停止に陥る衆愚を何よりも嫌い、「孤で立つ」ことを是として苛烈に生き抜く伊藤善鬼の姿――禍々しくも生命力に溢れている。山地を主な舞台に据えた、言わば「山編」と呼ぶべき1巻と2巻に対し、3巻と4巻は江戸の町が舞台の「江戸編」で、町に馴染むことができない善鬼は押し込み強盗の一味に加わり、用心棒めいた真似事をします。正義の味方には程遠く、しかしニヒリズムに淫しているわけでもない、「人里に下りた野獣」といった趣の生き様はピカレスク・ロマンとか、そういうジャンルに近いかもしれません。「立ち塞がるものすべてを一刀にて殺伐す」、そんな風情が漂っています。たとえ情が通じた仲でも、状況が変われば、斬ることに躊躇いはない。何せ躊躇えば己が死ぬのですから。

 ぶっちゃけ1巻の時点が最高峰で、巻が進むにつれて面白さの度合いが減じていき、「すごい」という感想が「ふつう」に落ち着いてきてしまう難点は抱えています。やっぱり、「山編」に比べて「江戸編」は少し退屈なんですよねぇ。作者が主人公を持ち上げすぎで鼻に付くというのもあります。剣術バトルとして見ても、危なげないと申しますか、相手が数に恃んで押し包んできたって「孤が最強」理論発動で善鬼無双状態に突入し、全然追い詰められている感じがしない。そもそも主人公に対抗できるレベルの武芸者が、師匠である弥五郎(一刀斎)は別格として、全4巻中2、3人程度しか存在しません。ゆえにアクションを期待するとやや肩透かし。とはいえラストバトルの盛り上がりはなかなかで、最終的な決着も納得がいく形に収まった。なんだかんだ言っても主人公が非道の限りを尽くしていることに変わりはなく、読んだ人すべてが肯定し得るストーリーでは到底ないでしょうが、当方個人としては満足した。「シンプルでいて力強い」ことだけは確かです。1巻目の面白さはかなりのものなので、まずは体験版感覚で『孤狼の剣』だけでも読まれてみては如何だろう。後はお好み次第ということで。

・拍手レス。

 焼津さんは白光のヴァルーシアをプレイする予定とかってないんでしょうか
 いま体験版をプレー中。アナがでら可愛いっスね。ただ、11月はバルスカ大仏とかがあるので予定としては少々キツいかもしれません。

 正直、貴子潤一郎には富士見以外に行って欲しい……。もうちょっと多様なジャンルを扱えるレーベルの方が合っていそう。
 うーん、富士見以外で貴子を活かせるレーベルがあるのかどうか……作風は違うけど、古橋秀之にも通ずる器用貧乏さを感じますし、扱いが難しそう。

 姉三乗のまな板は真剣でいらなかった。置き場所に困る。
 あと地味に重くて困りました。俎板のせいで買わなかった人がいても不思議じゃないほど。

 戦塵外史は渋くて面白いよなぁ。『八の弓、死鳥の矢』以外のだと、結構萌えそうな女性キャラもいたと思うけど。盲目軍師とメイドさんとか。
 実は『八の弓、死鳥の矢』以外まだ読んでなかったり。例の5部作が終わってそろそろ“戦塵外史”を再開しそうな気もするし、いい加減崩しておくべきか……。


2009-10-04.

・ニトロプラス10周年記念本として刊行された『ニトロプラスコンプリート』を読み終えた焼津です、こんばんは。

 見所は大きく分けて6つ、「虚淵玄の自作解説を含むロングインタビュー、虚淵玄と高橋龍也の対談、東出祐一郎と鋼屋ジンの対談、書き下ろし小説、描き下ろしイラストギャラリー、『ドグラQ』の情報」ってなところ。虚淵はプロットを組まずに好き勝手書くのが基本スタイルだとか、鋼屋の新作開発が遅れたのはいろんな仕事を虚淵から任された所為だとか、『ドグラQ』は2010年後半の発売を目指しているだとか、興味深い情報は多いが……ハロワや塵骸、ハナチラや月カルあたりが好きな人からすると少し寂しい内容かもしれない。奈良原一鉄なんて、インタビューや対談はおろか、一言コメントすら載ってませんし。村正の制作が大詰めで忙しかったのかな?

 描き下ろしイラストは中央東口の沙耶が可愛かったです。にしーの風のうしろを歩むものや大崎シンヤの戒厳も良かったが、服装違うせいで最初は誰だか分かりませんでした。そしてなまにくATKの茶々丸は尻。この一言に尽きます。書き下ろし小説のデモンベインとカオスヘッドとスマガの3つ。デモンベインは小説という体裁を取っておらず、細かなネタの寄せ集めといったムード。以前鋼屋ジンがサイトで公開していた小ネタとか、ああいうノリ。まとめる気がないぶん、やりたい放題にやってくれてなかなか楽しかった。デモベは心底ネタの宝庫だと思う。カオスヘッドは新作『STEINS;GATE』のキャラと絡む、言わばクロスオーバーの番外編。本編をやってないせいか、あまりピンと来なかった。スマガは本編が始まる少し前のシーンを切り取った、いわゆるプレリュード。体験版をプレーしていたおかげもあって、こっちはだいたい分かった。

 というわけで要約すれば、主に虚淵玄や鋼屋ジン、そして各イラストレーターのファン向けっつー感じです。値段も980円(税込)と辛うじて3桁を死守していますし、「『ファントム』とか『デモンベイン』とか、懐かしいなぁ」と感慨に耽る見込みがある方なら買って損はないでしょう。欲を言えば、奈良原のインタビューとか塵骸のアナザーストーリーとかも読みたかったところですが……。

みなとそふとの『真剣で私に恋しなさい!』、人気投票の結果を発表

 作品紹介ページの「川神通信」第42回にて発表されています。1位が意外な子で驚いた。そこまで人気あったとは……当方が投票しまくったキャラはメイン5名の中で最下位。なんてこった。サブキャラのトップはほぼ予想通りだった。次は男性キャラ投票か。誰に入れるとしよう……。

lightの『Dies irae〜Acta est Fabula〜』、CGギャラリーを更新

 これまで幻扱いされてきた先輩の展望台CGと螢の背面手繋ぎCGが遂に復っ活――とでも言やァいいのか、この場合はよ。螢の屋上CGも前にキャラ紹介ページで載った奴、だったかな……? よく覚えていない。ついでにルサルカの足コキも復活してますね。ルサルカBADエンドは結局ファーブラの方に収録されるのかしら。年末に向け、少しずつボルテージが上がってきたー。

最近のライトノベルは萌えに走りすぎ。どれもこれも似たような作品ばっかりじゃねーか(【2ch】ニュー速VIPブログ(`・ω・´))

 最近のMF文庫Jは表紙を眺めてもどれがどのシリーズだか、本気で見分けつかなくなってきたわ……さておき、「萌え要素が皆無に等しくて且つ面白いライトノベル」を、「なるべく単巻で楽しめること」っつー条件据えて5つほどピックアップしてみた。

 『キマイラ青龍変』(夢枕獏)
 『連射王(上・下)』(川上稔)
 『八の弓、死鳥の矢』(花田一三六)
 『眠り姫』(貴子潤一郎)
 『ケモノガリ』(東出祐一郎)

 『キマイラ青龍変』は未だに完結する兆しすら見せない“キマイラ”シリーズの外伝。少年が青年へと成長していく過程を綴った伝奇色の薄いバイオレンス・ストーリーで、非常に男臭い。とにかく男だらけ。女性キャラは登場したかもしれないが、少なくとも記憶には残っていない。本編に目を通しておいてから読んだ方が望ましいが、ほとんど独立した話で本編との絡みも薄いし、こっちから先に手をつけても大丈夫。主人公を務める龍王院弘は“闇狩り師”シリーズの『崑崙の王』にもゲスト出演しているので、興味があればそちらもどうぞ。ただ、こっちは“キマイラ”本編に目を通していないと意味不明な内容です。

 『連射王(上・下)』は四六版作品。早く文庫化しないかしら……そうしたら布教しやすくなるのに……と念じているが、未だその気配はない。幼馴染みの少女が登場して恋のトライアングルとか発生したりするものの、主人公はただひたすら最後までシューティングゲームをやり込んでいるだけという、恐ろしいまでに色気レスな物語。無我夢中になること、言い訳が不可能なくらい本気になること、を求めて無為徒労の荒野――弾幕と連射が支配する世界へ赴く空虚さがいっそ清々しい。一見変化球のようでいて、実はこれ以上ないって断言し得るほど直球の青春ライトノベルです。

 『八の弓、死鳥の矢』は“戦塵外史”の2冊目であり、短編集。異世界ファンタジーながらもあまり華々しさが漂わない、良い意味で「古臭い」と呼べるシリーズです。一編ごとに主人公が変わり、暗殺者・策士・老傭兵・伝令兵と、様々な視点が楽しめる。ホント、派手さは全然ないんですが、かと言ってお堅いわけでもなくて、ごくごく気軽に読み通せます。最近になって復刊され、入手も容易になりましたし、是非ともシリーズ既刊4冊まとめてチャレンジしてほしい。

 『眠り姫』もこれまた短編集。恋人との思い出を濃縮した表題作はまだしも「萌え」を見出す余地がありますけど、後半の「探偵・真木」連作では私立探偵とヤクザが麻雀打ちながら延々と会話するっていう、もはやどうしようもないほど煤けた展開に入ってしまう。それを抜きにしても、女性キャラクターの魅力に頼らない話ばかり収録されていますので、「この人はウケを狙う気がないのか……」と傍から心配になってくる。今はエスクード・シリーズを書いている著者ですが、いずれまたこういった短編集を刊行してほしいものです。と言っても、ライトノベルにおけるノン・シリーズ短編集の需要は少ないらしく、売る側も苦労を強いられると申しますし、難しいか。でも「探偵・真木」はもっと読みたいなぁ。

 『ケモノガリ』は割と最近の作品。人狩り(マンハント)ゲームをやろうと思ったらセガールばりの豪傑が紛れ込んでいたせいで野獣狩り(ビースト・マスト・ダイ)無双に変じてしまったという、見方次第では「ドタバタコメディ」と言えなくもないスプラッター・ホラー。「スプラッター」と「スラップスティック」はちょっと似てるよね。冗談めかしてはみましたが、終始一貫して殺伐としたムードが続く胸糞の悪いスローター・ストーリーゆえ、俗悪耐性がある読者でないとキツいかもしれない。B級アクション好きにはきっとたまらないであろう悪趣味極まりない要素が満載ですけども。

・伊藤黒介の『ベルとふたりで(1)』読んだー。

 ここ最近4コママンガにハマり、軽く20冊は読み耽ったんですが、その中で圧倒的に面白かったのが今回紹介する『ベルとふたりで』であります。著者のデビュー作であり、これが初の単行本となる。7歳の小学生(女子)すずと、7歳のグレートピレニーズ(♀)ベルが織り成す平和でいて終始ドタバタしている放埓な日常を面白楽しく綴った、言わば「生活感重視系コメディ」です。特に大事件とかは発生せず、ひたすら仲良く遊んで、時に仲良く喧嘩する。ただそれだけの内容であり、細かい説明をするのが難しいけれど、とにかく「こいつら本当に息ピッタリ合ってやがんなぁ」と感心させられる阿吽の呼吸っぷり。随所に覗く作者のセンスも切れ味抜群で、早い人は数ページと読まないうちに魅了されてしまうでしょう。当方もその一人でした。

 読む前は「女子小学生と犬」――つまり「ロリ&ペット」という如何にもあざといお膳立てからして露骨なほのぼの路線か萌え路線の二者択一だろうと睨んでいましたが、あにはからんや、メチャ騒がしくて全然ほのぼのしてないし、萌え要素なんて虫眼鏡で探さないと見つけられそうもない(ののかちゃんは「萌えキャラ」を意識してるが、だからって萌えるかと言うと……)。すずはロリっ娘のくせして心底アホそうで、活発というより落ち着きがなく、変なことに関してのみ頭が回るところや、冬にコタツから出ようとしないグウタラぶりは「懶惰」の一言に尽き、悪ガキ的な可愛さはあるものの胸がキュンと来る要素などひと欠片もなし。ベルも、『とんぬらさん』ほどではないにしろ常時ふてぶてしい顔つきと態度でアクティブに攻めてくる。「まったりとか萌えとか、そういうのは他所でお買い求めください」とのたまわんばかり。純粋にギャグとコメディとナンセンスとで勝負してきます。今時珍しいくらいにまっすぐで潔い4コママンガだ。潔すぎてコーナリングを誤り、獣道に突っ込んじまった風情すら漂うぜ。

 この面白さを文章でお伝えできないのがまことに残念ですが、個別に付された「おともだち来襲」や「七歳児の殺意」といった各タイトルのチョイスから是非とも際どいセンスを嗅ぎ取っていただきたい。慣れていない人が描いた4コママンガはテンポが悪いというか間延びしているというか、もっと端的に述べて「間が持たない」っつーとても居たたまれない雰囲気に満ちており、更にヒドい場合は「オチてない」ってことすらありうるのですけれど、『ベルとふたりで』はそんな惨状一切ナシ。しっかり間が整っていて、かつ無事にオチも付いている。デフォルメの仕方や顔の崩し方が堂に入っていて、しかも躍動感に溢れているのだからこれで楽しくないわけがない。ともすればネタが暴走しそうになる箇所もありますが、「元気が良い」という一点においてブレることはありません。愉快なまでに暴れっぱなし。

 七歳児がしなやかに倒れこんで「憐れみの目をやめろ」と懇願する世界へようこそ、さあどうか満足行くまでグレートピレニーズの全身から醸し出される準シシガミ級貫禄と、違う意味で将来が楽しみな女子小学生の自由闊達すぎる無縫精神をご堪能ください。寝っ転がって壁をゴンゴン蹴る動作など、些細なアクションの描写もなにげに冴えています。さりげない筆遣いの積み重ねで、犬とか猫とかそういった動物ネタを格別好むわけじゃない当方さえ、容易く引き込んでしまう。すずのアホさ加減からして、『それでも町は廻っている』の歩鳥や『第七女子会彷徨』の高木さんがイケる人ならたぶん大丈夫なはずだ。でも個人的に好きなのは親友のアキなのだった。あの微妙な距離感がたまらない。

・拍手レス。

 そういえば果てしなく青い、この空の下で…。のPS版を買った時に付いてきたマグカップが家で現役活動中ですが、いつ親にその正体がばれるか気が気じゃありません。
 PS版は確かタイトルが変わったんですっけ。おねきゅーの俎板といい、特典のグッズ類は使った覚えのあるものがほとんどない……。


2009-10-01.

・依然として『Garden』の姫宮瑠璃シナリオパッチ配布が遅延しているけれど騒ぐ気も失せ始めた焼津です、こんばんは。

 CUFFSめ、ファンを袖にすることにかけて余念がないな。「後数週間以内」ということは、早ければ10月中、遅ければ12月に食い込むかもしれない、といったところでしょうか。いっそもう来年の1月に合わせてください、ちょうど2周年でキリが良くなりますよ……と投げ遣りなコメントをしたくなりますが、それでもトノイケのテキストと☆画野朗のCGを心置きなく味わえる日が来ることを夢見て待ち続けてしまうのは確実というか必定。彼の日こそ庭の日なり、世界を尿に帰せしめん、トノイケと☆画野朗の寝言のごとく。

Fizzの『さくらテイル』、体験版をプレー。

【朋乃】「ご飯にします? お風呂にします?」
【正宗】「は?」
【朋乃】「それとも、の・ろ・し?」
【正宗】「戦が始まるな」

 ああ、いいなぁ……このどうでもいい遣り取り。というわけで、2005年から地味に活動していたエロゲーブランド、Fizzの5作目に当たるソフトです。ファンディスクを除くと4作目。パッと見はフツーの学園モノに見えるが、「ロベリア」なる架空の王国を舞台にした異世界モノで、「平民と貴族」という階級制度が活きていたりする。そのくせ人々の生活や文化の水準は現代日本とほぼ一緒、名前もカタカナより漢字とひらがなが多く、あんまり異世界って感じがしません。ちょっとはファンタジー臭を出そうとしたのか、制服の上に兜や手甲、脚甲を付けた騎士スタイルで出てくるキャラもいますが……シュールというか完全に浮いています。路線としてはドタバタコメディなので、シュールさも一種の味付けかもしれませんが、事前情報ナシでやればポカーンとすること請け合い。ああ、それと大丈夫です、「ロベリア」を「ロリベア」を見間違えたのはあなただけではありません。

 設定は特殊ですが、やってることは基本的に「フツーの学園モノ」です。だいたいエロゲーで「設定は異世界ファンタジーなのに内容は単なる学園モノ」ってパターンはそんなに珍しくなく、多少は面食らってもすぐに順応できる。冒頭、異常な勢いで迫ってくる部活勧誘の魔手から逃げ回る展開があり、次々と変な部活が出てきてドタバタする。王道と言えば王道、お約束と言えばお約束のネタだが、少し引っ張りすぎでサムかった。正直、ここで体験版を終えようかと真剣に悩んだほどです。しかし、そこを越えればテンポも落ち着いてきて、まったり楽しめる学園コメディに突入したから安心した。メチャクチャ笑える、ってところまでは行かないものの、クスッとできるくらいには気持ちが寛ぎます。たとえば幼馴染みとの思い出を回想するシーン。お約束に則ってオルゴール風のBGMが流れます。常道で捌くならここは「ちょっといい話」っぽく美化して描くところなのに、なぜか「しゅしゅっ、しゅっ、しゅっ……てやっ……ふぅー……」と電灯の紐でシャドーボクシングする場面から始まって、絵本のドラゴンに「やっべ。まじやっべ」と興奮した挙句、年上の幼馴染みに膝枕されて眠るっつー非常にどうでもいい記憶が再生される。たまらず噴いた。下手すっとこれ、本編よりも回想の方が面白いかもだぞ……。

 複数原画なので立ち絵にバラつきがあり、ところどころで絵柄の不揃い感が気になったけれど、予想以上にオフビートだったテキストのおかげもあってかなんとか馴染むことはできた。評判に釣られて体験版をプレーしてみたわけだが、うん、これは釣られて良かったと思います。好きなキャラはみかげ姉一択で。構いたがりのダダ甘お姉さん。どんよりした前髪がたまんねぇよハァハァ。

・今月の購入予定。

(本)

 『ブロッケンブラッドW』/塩野干支郎次(少年画報社)
 『へヴィーオブジェクト』/鎌池和馬(アスキー・メディアワークス)
 『沈黙の森』/馳星周(徳間書店)
 『ディーふらぐ!(2)』/春野友矢(メディアファクトリー)
 『或るろくでなしの死』/平山夢明(角川書店)
 『ソウル・コレクター』/ジェフリー・ディーヴァー(文藝春秋)
 『ナイト・オブ・サンダー(上・下)』/スティーヴン・ハンター(扶桑社)
 『製鉄天使』/桜庭一樹(東京創元社)

 久々に文庫化情報ー。文春文庫から『いっしん虎徹』と『泣き虫弱虫諸葛孔明 第壱部』が出ます。『いっしん虎徹』は直木賞作家の山本兼一が書いた時代長編。実在した刀鍛冶・虎徹を主人公とする話で、謎が多い人物ゆえフィクション部分も多いみたいですが、目立つ殺陣もない「作刀」オンリーの内容で引き込んでくれるんだから面白さは尋常じゃありません。今月末に発売される『装甲悪鬼村正』に興味がおありの方、鍛冶繋がりで読んでみてはいかがでしょう。『泣き虫弱虫諸葛孔明 第壱部』は酒見賢一による抱腹絶倒なんじゃこりゃ三国志。元は『泣き虫弱虫諸葛孔明』と無印のタイトルでしたが、文庫化に際して「第壱部」が付きました。小説というよりは解説書に近いものの、終始一貫してふざけた調子のまま突っ走る姿勢は良い意味で噴飯モノ。三国志ファンは怒るか笑うか呆れるしかない。また三国志に疎い人でも楽しめる親切設計。現に「三国志なんて断片的な情報しか知らないなぁ」という当方も充分すぎるほど楽しめています。第壱部はこれでもまだ比較的おとなしめですが、第弐部に至るとEVAネタ、第参部では神聖モテモテ王国ネタが炸裂するなど、本気で好き勝手こいてますのでどうぞ覚悟を決めて読んでください。

 『ブロッケンブラッドW』、待ってましたの4冊目。ドイツ系三世の美少年が様々な事情から四六時中女装してバカバカしい敵と戦う時事ネタ満載魔法少女パロディ風ドタバタコメディであり、ほとんど一発ネタに近い内容ゆえ4冊目まで来ると引き伸ばしすぎな雰囲気が否めませんが、主人公の振り撒く可愛さが常軌を逸していて理性や正論はどうでも良くなる。嫌々ながら女装して媚びを売り、後で自己嫌悪に陥る一連の流れはもはや麗しき様式美。どんなにグダグダでもいいから今後もしぶとく続いてほしいシリーズです。『へヴィーオブジェクト』は『とある魔術の禁書目録』で有名な鎌池和馬の新作。「殺人妃とディープエンド」など、短編で『とある〜』以外の作品も書いていた著書ながら、長編でシリーズ外の作品を発表するのはこれが初めてとなる。ちなみに現時点で既にコミカライズも決定しており、漫画版は“電撃黒マ王”に連載されるそうですが、作画担当がなんと犬江しんすけさん。やべぇ、まさかこんなに早く犬江さんの一般向けコミックが読めるとは……ちなみに成年向けコミックは“コミックメガストア”9月号と“コミック快楽天”11月号に掲載させてますぜ。『沈黙の森』は軽井沢を舞台にした避暑地ノワール。例によってゆるゆるとしたテンポで開幕し、後半で一気に殺戮卓袱台返しをかます趣向なのでしょう。馳の作風はワンパターンとかマンネリとか、そういう域を超えてもはや歪みねぇな。

 『ディーふらぐ!』は「勢いとセンスだけで描いている」としか思えないノリ重視のギャグ漫画。冷静に考えるとツッコミどころ多過ぎなんですが、これは冷静になって読むようなものじゃありません。あしからず。乳属性の高尾部長がより一層活躍してくれることを祈る。『或るろくでなしの死』は著者4冊目の短編集。結構久々の新刊だ。寂しさを紛らわすために著者が手掛けた実話怪談本もいくつか読んでみて、これはこれでなかなか面白かったんですけれど、本音を言えばやっぱり小説が欲しかったわけですよ。今月は長編小説『ダイナー』も刊行予定とのことで、平山ファンには嬉しい季節となりそうな気配。『ソウル・コレクター』はリンカーン・ライム・シリーズの最新作。当初は原題通りの『ブロークン・ウインドウ』(割れ窓理論のことだろうか?)になる予定だったが、変わったらしい。このミスランク入りを狙ってか、毎年ギリギリのこの時期に当ててきますね(このミスは年内発売に間に合わせるため、投票対象作品を10月刊行分で締め切る)。価格は2500円と、ライトノベル4冊分に相当するお高さですが、もう慣れた。もう慣れたのだ、こんなことには。『ナイト・オブ・サンダー』はボブ・リー・スワガー・シリーズ最新刊。前作『四十七人目の男』がとんでもない珍作だっただけに不安が拭えないが、どうか失地回復してくれと願うばかり。『製鉄天使』は『赤朽葉家の伝説』のスピンオフ。プロット段階では『あいあん天使!』と、作中作そのままのタイトルでしたが変更になった模様。イイ具合に本編の内容を忘れてきているので、無心に楽しめるだろうと思います。

 今月は他にキノコを裸の幼女に擬人化して菌糸にまみれさせる『ゴほうし!』や、「幼年学校編」として仕切り直しに入る『護樹騎士団物語』、町田康のエッセイ集「テースト・オブ・苦虫」第7弾『自分を憐れむ歌』、『神様のパズル』の続編なのかスピンオフなのかよく分からない文庫書き下ろし作品『パズルの軌跡』、アナピア編が完結する『されど罪人は竜と踊る8』、このまま3巻目も書き下ろしてくれと懇願したくなる『ストーム・ブリング・ワールド2』、『のぼうの城』の作者が雑賀衆スナイパーズを題材に取った『小太郎の左腕』、興味はあるけど高すぎてちょっと怖気づいてしまう『ザ・ホワイト・ボディ・オヴ・イヴニング』なども注目作です。

(ゲーム)

 『コミュ〜黒い竜とやさしい王国〜』(暁WORKS)
 『果てしなく青い、この空の下で…。[完全版]』(TOPCAT)
 『装甲悪鬼村正』(ニトロプラス)

 延期がなければスマートにこの3本で決定。『コミュ』は『るいは智を呼ぶ』のスタッフによる厨二バトルチックなエロゲー。肝心のアバターによる戦闘が紙相撲みたい(立ち絵のパターンが一種類しかなく、それを無理矢理動かして使い回している)という欠点を抱えているものの、厨二バトルに要求される「お約束」はひと通りこなしていて、意外と燃える出来に仕上がっている。発売決定した『るい智』ファンディスクのためにも是非売れて欲しい。『果てしなく青い、この空の下で…。[完全版]』は9年前に発売されたソフトのリメイク。というか、フルボイス版。追加要素はそんなに多くないみたいだけど、来月発売される続編『アトリの空と真鍮の月』に備えて買っておこうかと。無印版は購入済ながら、ずっと積んじゃってるし、この際イイ機会かも。『装甲悪鬼村正』は今月のド本命。期待度MAXです。奈良原一鉄による剣戟三昧のシナリオというだけで既に涎が垂れてきますが、なまにくATK原画のCGも素晴らしくてたまらぬわ。発売されたらあらゆる予定を押し退けて一心にプレー致す所存。

 他、ミヤスリサ原画の『ハチミツ乙女blossomdays』、「原画家の正体は後藤なお」と囁かれている『恋色空模様』、↑に体験版の感想を載っけた『さくらテイル』、違う意味で話題になっている『幼なじみは大統領』見た目がローマ教皇で名前がシュピーネさんのパロディとか……)あたりも気になっているが、『村正』に集中するため切らせていただきます。評判が良ければ11月になってから購入するやもしれませんが、11月は11月で予定多いから難しそうだなぁ。

・拍手レス。

 当初は小太郎ルートもあったけど没ネタになったんだよ!と脳内補完。勿論喘ぎも爺声。
 一旦スキップした後でCGギャラリーを覗くしか手がありませんね、それ。

 村正…。第一編の主人公がいいやつ過ぎて、最後のシーンで心が折れました。
 あらかじめ結末を聞いていた当方も「もしかすると……」という仄かな念が萌さずにはいられなかった。無論瞬時に伐採されましたが。

 村正……勘弁してよ本当に。体験版で心が折れそうです。というか、ニトロプラス10周年記念作品ってことは、ニトロの10年の集大成がコレなのだろうか……あながち間違ってもいない気もする。
 ファントムはなにげにヒロインが死亡しまくっているし、ヴェドもほとんどのルートでリァノーンが死んでいたし、鬼哭街に至っては言わずもがな。集大成というからには更なる凄惨が待ち受けているのでは……。

 これは好感度ゲージでは無い、もっとおぞましい何かだ。
 そういえば「今宵は一献……」で「今宵はめでたき日にござる……」を思い出しました。


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