2008年10月分


・本
 『空の境界 未来福音』/奈須きのこ(竹箒)
 『ブロッケンブラッドV』/塩野干支郎次(少年画報社)
 『スイーツ!』/しなな泰之(集英社)
 『遠海事件』/詠坂雄二(光文社)
 『境界線上のホライゾンT(下)』/川上稔(アスキー・メディアワークス)
 『黒の狩人(上・下)』/大沢在昌(幻冬舎)
 『トクボウ朝倉草平(1〜2)』/高橋秀武(集英社)
 『しらみつぶしの時計』/法月綸太郎(祥伝社)
 『ミスミソウ(1〜2)』/押切蓮介(ぶんか社)
 『ココにいるよ!(1〜3)』/遠山えま(講談社)
 『されど罪人は竜と踊る4』/浅井ラボ(小学館)


2008-10-30.

・以前第1話だけ立ち読みして、そこにSEXシーンがあったせいで「エロい漫画」として認識していた『医龍』が実はそんなにエロくないと知ってガッカリしつつも既刊18冊を貪るように読み耽った焼津です、こんばんは。

 バチスタ手術を行うための医療チームを結成する、という序盤の流れは少年漫画みたいでベタながらワクワクさせられたが、やがて教授選に向けてドロドロした展開が始まるあたりはやっぱり青年漫画だなぁ。野口教授がほとんど妖怪みたいな描かれ方していて面白かった。あと鬼頭先生を始めとして堂々たる偉丈夫が多く、「いつ格闘バトルが幕上げするのだろう……」と勘繰ってしまったのは並行して読んでいた『東天の獅子』の所為かしらん。

 ある手術の最中、命令に従わぬ助手がいた。
「へっ、そんな術式が使えるかよ」
 馬鹿にするように、鼻で笑ってみせた。
 助手は、他流の技法を侮っていたそうだ。
 恥ずべき慢心である。
 驕り高ぶったその言葉を耳にして、鬼頭は唇を歪ませた。
 血のように赤い、艶かしい唇だった。
「りゃりゃりゃっ」
 素早く間合いを詰め、助手の腹に当て身を食らわせた。
「くむっ」
 たまらず屈み込んだ助手の奥襟を掴むや、
「ふんっ」
 と一息でERの外へ投げ飛ばした。
「ぐっ!」
 助手は勢い良く床に叩きつけられた。
 その際、受け身を取ることもできなかったらしい。
 危険な落ち方をした。
 廊下に異音が鳴り響いた。
 助手の腕がおかしな方向に曲がっていた。
「あぎゃあっ」
 身をくねらせ、激しい痛みに悶絶する助手に向かって、
「なら、使えるかどうか、まずはきみの体で試してみよう」
 と鬼頭は言った。
 そんな逸話が残っている。
 一種の異様人である。

 みたいな。そんな患者を素手でオペりそうな外科医はイヤだ。

 総じて画力は高いし、個々のキャラクターも立っているし、ストーリー展開にうねりがあって先が読めそうで読めず、それでいてちゃんとヒューマンドラマのツボを押さえていて、なるほどドラマ化されるほど人気が高いのも頷ける話です。ただ長期連載漫画の常で、最近はだんだん展開が遅くなってきてますね……未だに教授選終わりませんし。『ブラックジャックによろしく』は途中でダレてギブアップしてしまったけれど、『医龍』には最後まで付き合えるだろうか。そして同じ医療モノの漫画では『JIN―仁』も気になっている今日この頃。

竹井10日の漫画紹介コラム、第5回は『宙のまにまに』

 先月新刊が出ましたけど、相変わらずページをめくるたび勝手に目が姫ちゃん(蒔田姫)の姿をサーチしてしまい、彼女が登場するシーンでは「まず姫ちゃんを視認して大いに興奮→落ち着いてきたところで中身を読む」というトロ臭い手順を踏まないと先に進められません。これは何かの病気ですか? ともあれ、天文部ラブコメなる珍しいジャンルながら、騒がしすぎない程度の賑やかさでゆっくりゆったりと展開していくため非常に寛げる一品ですので、便乗してオススメ。星そのものに興味がなくても、「星に愛と熱情を注ぐ人々」を見るのは興味深い。野尻抱介あたりの小説を読むときによくそういう感覚を抱きます。

・浅井ラボの『されど罪人は竜と踊る4』読んだ。

「なにが出るかな、なにが出るかな♪ たらららんらん、たららん♪」

 ああ、そういえば浅井ラボってこういう作家だったっけ……前巻が比較的大人しい内容だったのでうっかり失念しかけていました。なんかもう、ここまでやられたら、バモーゾくんとか今更顔を出せないんじゃないかしら? 本気で『くちづけでは長く、愛には短すぎて』『そして、楽園はあまりに永く』がお蔵入りしそうな予感してきました。さて、ガガガ版4巻は3巻に引き続き完全新規書下ろし作品であり、ストーリーもそのままダイレクトに繋がっています。言わば下巻のような位置づけで、 <古き巨人> (エノルム)やピエゾの英雄・ウォルロットを巡る一連の騒動にやっと決着が訪れる。600ページほどあった前巻を上回り、640ページの大ボリュームを誇っています。内容もみっしり詰まっていて、読み終わる頃はすっかりおなかいっぱいになります。

 バトル描写自体は規模が派手になりすぎてインフレ状態と申しますか天井打っちゃってるうえ数も多くてダレてきますけど、戦闘に至る経緯やシチュエーション、たとえば敵対関係にあるキャラクターの活躍を祈らねばならない局面が存在するなど工夫が凝らされていて、細部は若干読み流し気味ながら最後まで飽きずに付き合うことができました。しかし、いくら後で回復するからって腕や足がバンバン斬り飛ばされる光景には「どこの特甲児童だよ」と気圧された。ホント『エルフェンリート』並みの気軽さで手足もげるんで度々「今こいつは片足でけんけんしながら戦っているのか」とか想像し、迫力に満ちているはずのシーンが不思議と間抜けに感じられたりも。つーか、身体が欠損しても戦闘を継続できるってことは、され竜世界の連中、特に軍人なんかは「よし、本日は片腕を失った状況を想定して訓練を行う! 総員、腕をもげ!」ってやってるんじゃないだろうな……ツザン並みのスーパードクターが相当数存在するという前提を立てたうえでの話ですが。

 それにしても今回は上で引用した「なにが出るかな♪」を始めとするやや不謹慎なパロディが多く、これに関しては笑えばいいのか脱力すればいいのか。「光の巨人」が「左腕を水平にし、立てた右腕の肘に当てる。光が収束していく」って、明らかにウ○トラ○ンじゃねぇか。大詰めを迎えているというのに、気が散って集中できなかった次第。でも「刃の王座」という“氷と炎の歌”由来とおぼしきネタが仕込まれていたことは少し嬉しかったり。

 640ページはさすがに厚くて、今月中に読み切れるかどうか不安になった日もありましたが、無事なんとかなりました。あとがきが収録されていないし、巻末予告も打たれていないため、今後の予定はよく分からないのですが、そろそろ旧作の短編(特に雑誌掲載のみの単行本未収録分)をまとめてほしいなぁ。どうあれ、続きを楽しみに待つとします。ちなみに読み終わって作者のブログに行ったら「携帯があれば、ほとんどの話は十秒で終わる」という記事が。確かに、ミステリにおいて携帯電話の存在は泣き所。現代を舞台にした作品ではクローズド・サークル(嵐の山荘、絶海の孤島、出口が見つからない地下洞窟など、外界と連絡が取れない「閉ざされた状況」の総称)の構築が格段に難しくなりました。クローズド・サークルは当方にとって密室モノと並ぶ好物ジャンルだけに嘆かわしいばかり。

・拍手レス。

 売り場の紅さに惑わされがちですが、実のところ少女漫画はSF・ファンタジィ分の補給になかなか好い場所ですよ。舞台もテーマも多種多様、欝もドロドロも少年漫画と同程度にはありますが、この方面なら中身と評判も比較的一致しやすいでしょう。もちろん、意外な掘り出し物に出会えることもありますし。隅まで味わい尽くすほどではないとしても、まったく未開拓のままにしておくには惜しい分野だと思います。
 少女漫画は意外と短編作品が盛んで、選び方次第では密度の高い読書が楽しめますね。


2008-10-28.

「火のついたガスコンロの上にカセットコンロを置いたら爆発した」

 燃え盛るガスコンロの上に「おお、炸裂よ(エクスプロード)――!」と叫びながらカセットコンロ設置する居酒屋の兄ちゃんを想像してしまったが、こっちのニュースによると「火のついたガスコンロの上にカセットコンロを置いた」のではなく「カセットコンロを置いたことを忘れてガスコンロに火をつけてしまった」みたいですね。それにしたってあんまりな事故ですけども。

・遠山えまの『ココにいるよ!(1〜3)』読んだー。

 少女マンガ――マンガ好きだというのになかなか手を伸ばすことができず、「暗黒大陸」に等しい未開の領域が多く残るジャンル。開拓しようと一念発起しても「売り場に行くのが恥ずかしい」「中身を確かめたいけど立ち読みする度胸がない」といった理由で発掘が遅々として進みません。頼みの綱はネット上の評判だけ。かくして「男性読者でも楽しめる」という評に釣られて『ココにいるよ!』既刊3冊をネット通販でまとめ買いしたわけです。3巻の表紙には少女1名、少年2名が描かれており、「ふたりの男の子に挟まれて揺れる恋心」系の甘ったるいラブストーリーを予感させますが、いざ読んでみると三角関係には陥っておらず、恋愛モノにしてはややユルめ・ヌルめの内容に仕上がっている。なるほど、これなら野郎でも安心して読めるはずだ。

 ヒロインの隅乃ひかげは絵的には可愛く描かれてます(犬耳みたいな髪がまた最高)が、設定上は存在感ゼロで友達がまったくいない、究極の地味っ娘となっております。どれぐらい存在感がないかと申せば、椅子に座っているのに「誰もいない」と勘違いされてそのままギュムッと腰掛けられてしまうほど。おいおい、お前は石ころぼうしでも被っているのか。存在感がないというより忍者スキルだろそれ。クラスのほとんどから存在を認識されていなくて、「三人か四人で班をつくって」と言われたら必ず余る。幼少時にかくれんぼをして、忘れ去られたのかずっと待ちぼうけを喰らい、結局見つけてもらえなくて泣きながら一人で家に帰ったという割とありそうなトラウマを持つ。特定読者の古傷を抉るが如き鬼造型です。そこからタイトルの「ココにいるよ!」に繋がるわけですね。オニさんを待っている最初のコマがすっげぇワクワクした表情でメチャ切ない。

 クラスで超絶的な人気を誇る美少年から「隅乃さんのこと ずっと見てた…」と囁かれたりなど、ご都合な展開も多少ありますけれど、クラスの輪に入れただけで涙ぐんでしまう描写や、引っ込み思案なせいで今まで無視され続けてきた彼女が「自分から変わらないといけない」と決心して勇気を搾り出す場面もあって普通に読める成長ストーリーとなっています。少なくとも、胸焼けするほどの乙女ドリームが詰まっているわけではない。『君に届け』と若干重なるシチュエーションながら、あれとはまた違った味わいで、こっぱずかしいのにどんどんページをめくってしまう。良い意味でムズ痒いコミックでした。女子からのイジメ描写は思ったより浅めで拍子抜けしたものの、やりすぎて『ミスミソウ』みたいな事態になっても困るから適切な範囲内に収まっていると見做すべきか。あれで血まみれの鉄パイプとか持ったら、ひかげの髪型からしてビジュアル的に『沙耶の唄』になっちゃうわ。

・拍手レス。

 >人工
 人工なんちゃらが出たら、本気でシビれるんですけどね〜

 せめて吉澤友章とのコンビが本格的に復活してくれればなぁ。あるいは小池定路と。

 >砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけないは社会派ミステリ が地味にツボにハマりましたw
 社会派ミステリという呼称自体がもはや懐かしい。

 ブログの某毒めぐ氏のイラストは消した方がよいのでは?人によっては不愉快に感じる可能性もあるので。
 閲覧する人ほとんどいませんし、あそこはもう放置していますが、いずれブログ自体をどうするか検討するつもり。

 おー、ミスミソウはマイナー出版社ですけど、ガチで名作だと思ってます。つか手に入れるの大変です。連載追っていますが、この先は更に胸くそ悪い展開が待っていますよ……
 そう聞きますと気が滅入るような、ワクワクするような……。


2008-10-26.

・『ファイナルファイト』みたいな横スクロール格闘ACTで、やたらゾンビが出てきて、地面から生えている……というより地面に埋まっているゾンビを蹴り潰していく「ゾンビ畑」なボーナスステージがあったりするゲームってなんだったかなぁ、と場末のゲーセンで見かけて以来ここ十数年ずっと気になっていたタイトルがやっと分かってスッキリした焼津です、こんばんは。

 その名も『ナイトスラッシャーズ』。開発元はデータイーストとのことで、「あー、道理で」と思わず納得してしまう。当時はまだ初々しい中学生だったこともあってビビリが入り、結局プレーせず終いでしたけれど、今ならちょっとやってみたいかな。ゾンビ大虐殺。

とらドラ!は数学

 スレタイに関しては中身を読んでもらうとして、478の一覧。

バンブーブレードは竹刀

 まんまじゃねぇか! せめてそこは「竹内」で。

 しかしこの調子でいくと「『ギャルゴ!!!!!』は民俗学」「『バカとテストと召喚獣』は教育論」「『円環少女』はロリータサディズム」とかになるのかしら。「本格ミステリは論理学」……って、ああ、ミステリ好きが嵩じて本当に論理学の講義を取ってしまった大学時代の記憶が甦ってくる罠。

・押切蓮介の『ミスミソウ(1〜2)』読んだー。

 伊藤潤二の描くマンガに「押切」という名前の少年を主人公にしたホラー連作があり、その連想から「押切蓮介=ホラー漫画家」という勝手な先入観を抱いておりましたが、実際にその解釈でOKみたいです。ただ、どちらかと言えばギャグ色やナンセンス色を前面に打ち出した作品が多く、読んでいてゾーッと産毛立つようなガチガチのホラーは少なかったらしい。が、「初の本格精神破壊(メンチサイド)ホラー」と謳うだけあってこの『ミスミソウ』はなかなか怖い。チビるところまでは行かないにしても、「イジメとか、陰惨な題材だなー。読む意欲鈍るなー」という気持ちを吹っ飛ばす勢いがあって夢中になって読み耽った。

 東京から家族とともに地方へ引っ越してきた少女・野咲春花――廃校寸前の学校に転入し、地元の生徒たちと溶け込むことができず、陰湿なイジメを受け続ける毎日。ジッと堪えて、耐え凌ぐことはできた。暴力の矛先が家族たちに向かうまでは。家に放火され、両親が焼死、生き残った妹も全身大火傷を負って意識不明の重体に陥る。厳しい冬を耐え抜いた後、雪を割るようにして小さな花を咲かせる三角草。吹雪が踊るなか、春花の心に復讐の大輪が芽吹き始める……。

 というわけで、イジメがエスカレートして両親を焼き殺された少女が、狂気と憎悪を静かに育んで復讐劇を開演するサスペンス色の強いホラーコミックです。始まって早々イジメの描写がありますから当然読んでいて胸糞は悪く、まったく楽しくない。ヒロインが通う学校は完全にモラルが崩壊しており、無軌道な振る舞いを見せる生徒とそれを留めることもできぬ無力な教師に囲まれ、さながら禽獣の巣に佇むが如きムードを醸し出す。事件後もニタニタ嫌らしい笑みを浮かべながら「バーベキューの焼き具合はどうだったの?」と聞いてくる始末で、ハイ、お分かりの通り放火はクラスのほぼ半数がグルになってやったことなのでした。最悪の状況だな! しかしヒロインは恨みがましいことを何一つ漏らさず、ただ物凄い目でクラスメイトを睨み返します。いや、アレは「睨む」というのとはちょっと違うな。昆虫が獲物を見据えるような、もはや人間らしい感情の要素が塵ほどもない無機質な視線。「バーベキュー」と嘲った側が怯むくらいの迫力です。

 とにかくこの春花、復讐鬼モードが一旦オンになると喋らない。普通なら怒りを迸らせて何かしら叫ぶところだろうに、ひたすら淡々と凶器を振るって殺す。あたかもジェイソンの如し。沈黙したままザザザザと雪を蹴立てて走り寄ってくるシーンとか、春花に肩入れして読んでいる人でも怖気を震うでしょう。いつも殺される連中だけが饒舌で、見苦しく醜悪に喚き散らす。この期に及んで生き足掻こうと声を張り上げますが、春花は耳を貸さない。一切、耳を傾けない。聞く耳持たず、シンプルな手段で声の源を停止させ、黙らせる。粛々と獲物を追い詰めるストイックなまでのサイレントキラーぶりが『ミスミソウ』最大の魅力であると確信致しております。静寂に慄け。

 ターゲットのほとんどは2巻終了までに死亡しており、今後単純に復讐劇を続けていくのも難しそうですから、3巻あたり趣向を変えて新たな展開に突入するかもしれません。こういう暗いと申しますか、陰々滅々としたストーリーは苦手だけれど、黙戮万歳な春花に惚れたことでもあるし、次巻にも期待するとします。にしても押切蓮介って、今『ミスミソウ』も含めて6つか7つくらい連載を抱えているんですっけ……頑張りすぎだよなぁ。

・拍手レス。

 そういう露骨さを出したら所長じゃないと思う >ろすくり
 だが、そこに痺れる憧れ(ry

 ここでまさかの人工失楽えn……はないか。


2008-10-24.

・先日届いた『エルフェンリート』全12巻を無事賞味し終えた焼津です、こんばんは。

 5年くらい前に一度挑んで挫折した経験があり、気が進まず積んじゃうかも……という心配もありましたが、まったくもって杞憂でした。読み出したが最後、ページをめくる手が止まらなくなった。正直、絵は稚拙な箇所が多い。特に深刻な場面で見せる表情、いわゆる「マジ顔」は「え? なんでヒロインの顔がいきなりオッサンみたいになってんの?」と首を傾げるレベルに達していて、ほとんどギャグすれすれ。これに比べたら『ノノノノ』は随分進化したなぁ、と逆に感心。ハッキリ言って『エルフェンリート』に登場したどんなキャラよりもアナルショップ皇帝の方が断然怖いしビビリます。

 とはいえ、終始「お約束」ガン無視で予測不能な世界を繰り広げてくれた『エルフェンリート』も一つのマンガとして忘れがたい出来ではあった。展開が目まぐるしく、うねりに満ちたジェットコースーターのようにラストまで一瞬の停滞もなくハイスピードを保って爆走する。その様はさながらロデオ。手綱さえ食い千切らんと暴れ回る物語を作者自身が制御し切れず、全体としてはアンバランスな印象になっています(ヨネコーにとっての『Damons』みたいな感じ)が、走り続けないと死ぬ、速度を緩めたらそこで試合終了――と言わんばかりに漲っている迫力は破格の代物。もはや存在の根本それ自体が『新幹線大爆破』みたいな作品です。

 大学生時代に読んだ際は萌え描写とグロ描写の露骨なギャップに「悪趣味だ」と不快感を覚えたが、今はそうでもない。萌えは萌え、グロはグロと分別して楽しめる。マリコの「おとーたんっ」がムチャかわええ。シリアス展開やバトルシーンに関してはやや物足りないところも残るが、コメディパートにおけるテンポの良さは最高。超コミカル。ていうかシリアスな場面でも喜劇の呼吸を結構流用してますよね。「ホッとひと安心、しかしここで突然ミサイルが!」みたいな。首チョンパオチが一つの定型にすらなっていますし。

 長年抱いていた苦手意識をあっさり裏切り、夢中になって堪能することができました。虐殺描写が多いマンガというイメージが強かったけれど、最後まで読むと意外なほど爽やかな印象が漂う。各所になにげなく仕込まれている小ネタも心憎ったです。おむつとか。ネクタイ鉢巻とか。お前は花見の席の酔っ払いか。他だと答案用紙の点数ですね。10万点って何よ、「すごいでしょ〜っ」じゃないでしょ、いったいどんな妄想だよパパ。でも、始まって早々に殺されたドジっ子秘書が過去編で再登場したときは和みました。

・法月綸太郎の『しらみつぶしの時計』読了。

 寡作家として知られる著者の最新刊。表題作含む10編を収録しており、ノン・シリーズの短編集としては2冊目に当たる。ちなみに1冊目は『パズル崩壊』。一番古い収録作は98年、逆に一番新しいのが今年(08年)発表と、10年に渡るスパンが「寡作家」のイメージを裏付けてくれます。『二の悲劇』のプロトタイプである「トゥ・オブ・アス」なんかも収録されていますが、『やぶにらみの時計』(現在は『女を逃すな』所収)をもじった表題作を始めとして『退職刑事』の贋作(パスティーシュ)である「四色問題」、カート・キャノン(エド・マクベインの別名義)の『酔いどれ探偵街を行く』のパスティーシュとして都筑道夫が書いた『酔いどれ探偵』を更にパスティーシュ化した「幽霊をやとった女」があったりと、故・都筑道夫への深い愛が詰まった一冊になっています。

 冒頭一発目の「使用中」は密室モノで、それも単に鍵の掛かった部屋から死体が発見されるという王道的なパターンではなく、「『使用中』と表示されているトイレ」が舞台となる怪作。場所が場所だけに尾篭な話題も出てくるけれど、なかなか凝ったお膳立てで楽しませてくれる。登場人物の作家が編集者に向かって一席ぶつあたりは「よくある新本格」ながら、途中で意外な展開を迎え、そこから更に物語が二転三転する。公衆トイレという密閉された狭い空間で息詰まる遣り取りを繰り広げるものだから、思わず脳内に荒木飛呂彦のタッチが浮かんだ。「ジョゼフ・ジョースター! きさま! 入っているなッ!」と内股気味でドアを叩くDIO。こんなに緊迫感溢れるトイレ攻防を読んだのは『そのケータイはXXで』以来ですよ。続く「ダブル・プレイ」は交換殺人モノ。ふたりの殺人者が互いに「殺したい相手」を交換してそれぞれの殺害時にアリバイをつくる、というサスペンス小説お約束のネタです。もちろん、普通にうまく行ってしまったら話になりません。ヒネリの利いたプロットでニヤリとさせてくれる。派手さはないものの、手堅くまとまっていて好き。

 他ではホルヘ・ルイス・ボルヘス作品のパスティーシュ「盗まれた手紙」(さっき誤変換で「盗まれ鬣」って出た……どんな鬣だ)が面白かった。ポーのアレと同じタイトルですけど、内容はアリスとボブがどうこうという暗号通信の問題をアナログに処理した感じ。「アリスが箱に手紙を入れて一つ目の南京錠を掛けてボブに送り、ボブは箱に二つ目の南京錠を掛けてアリスに送り返し、アリスは一つ目の南京錠を解いてボブに再発送、ボブは二つ目の南京錠を解いて箱から手紙を取り出す」ってのが大まかな流れ。しかしボブが箱を開けると、アリスの手紙はもうなくなっていた……堅牢なセキュリティをいかにして破ったのか、パズルめいた感触で取り組めます。表題作「しらみつぶしの時計」もパズル色が濃厚で、「すべて異なる時刻を示す1440個の時計から唯一『正しい時刻』を指している時計を探し出せ」というミッションが軸となる。軸ってか、これしか話の要素はない。小説化した「頭の体操」といった趣。『やぶにらみの時計』よろしく二人称形式で綴られた文章は「締め切りに追われながら書いた」というだけあってスリル満点です。あくまで論理的に思考し、候補を絞り、あと一歩で決定できる段階まで来て行き詰る。最後の最後、悩み抜いた末にもたらされる解答とは……ラスト1ページの手前、「自分で解こう」と思って真面目に考え込んでからオチを読めば壁に向かって本を投げつけてしまうかもしれません。クライマックスが近づいて来たらむしろ肩の力を抜き、リラックスしてサラリと読みましょう。

 ミステリというか「奇妙な味」に属するタイプでこれといったオチがつかない「猫の巡礼」とか、ほんの数ページで終わるショートショート「イン・メモリアル」など、バラエティに富んでいるというより雑多でごった煮に近いテイストが漂います。しかしながら一つ一つのクオリティは高く、「伊達に寡作家はやってないな」と感心させられる出来。読んで損はありませんでした。ちなみに「トゥ・オブ・アス」、学生時代に書いた「二人の失楽園」を再録したものなんだそうですが、雑誌掲載に当たってタイトルが変わったのはきっと渡辺淳一の『失楽園』をイメージされたら困るからでしょうね。そのへんの事情にちょっと時代を感じました。

・拍手レス。

 papatoldeme懐かしい。ドラマ化でがっかりした漫画ベスト10に入る
 papatoldemeが一瞬「phantom」に見えた当方は虚淵儲。未完かと思ったらいつの間にか判型の違う新作が出ていて喫驚しました。

 漆黒のシャルノス興味なかったんですけど、体験版ではまってしまいました。鬼畜野郎と健気な美少女の組み合わせはいいですよね
 体験版はダウンロードしましたけど、プレーする時間をなかなか抉じ開けられない……。

 いまさらですが、LostScriptが更新されていました。まだ新作発表予告なので、詳細は全くわかりませんが、楽しみです。
 所長もそろそろ露骨な売れ線を狙ってもイイ時期だと思う。が、次もやっぱりマニアック路線だろうなと予想。


2008-10-21.

・ダレるどころか面白さが加熱する一方の『ノノノノ(3)』読んで、発作的に『岡本倫短編集 Flip Flap』を購入し、若干迷いつつも『エルフェンリート』全巻をまとめてポチッた焼津です、こんばんは。

 迷った理由は「全巻セットでまとめ買いすると結構な金額になるから」というのもありますが、やはり一度途中で挫折した経験がトラウマ……ってほどではないけれど、ちょいとした心理的抵抗のフレームを形成した面もありやなしや。にしても、最近はこういう全巻一気に鷲掴みするような買い方が多い(この前の『銀と金』もそうだった)せいで、ほんの少しでも気を抜くと積読の山が盛り上がって凄いことになってしまいます。というかなってます。『勇午』『Papa told me』の既刊ひと揃いはさすがに勇気出しすぎたか……積み上げると見るからに大量な感じが漂うので、なかなか手をつける気になれず放置しちゃう弊害も発生中。

・高橋秀武の『トクボウ朝倉草平(1〜2)』読んだー。

 警察庁生活安全局特殊防犯課指導係警視・朝倉草平、略して「トクボウ」の朝倉草平が世に蔓延る害虫どもを誅すべく「行政指導」して回る劇画調ポリスコメディ。逮捕ではなくあくまで行政指導なので物証は不要、ひとたび主人公が「僕的に有罪(クロ)」と思えばそれだけでパニッシュメントが成立。平然と銃を乱射しSM緊縛ショーを公開する、気持ちいいほど職権乱用な制裁の数々を収録しています。言ってみれば「超法規的仕置人」。基本的に読切で、消費者金融の違法取立てや食品偽装問題など社会派っぽい時事ネタを絡め、痛快に悪人たちを懲らしめる。「あべし屋製菓」「たわば油脂」といったふうに細かいところにもネタが仕込まれていて脱力することしきり。画力は高く、荒木飛呂彦と原哲夫を足して割ったような濃いタッチながら安心して楽しめるクオリティを保っています。その割に新聞記事の原稿とか、見出し以外の小さな文章はテキトーにキーボード打ったような代物(例…「もそとてまはぜ、藻空と麻痺まらとむけちむむそも」)となっており、「どーせこんなとこ読まねーだろ」と言わんばかりで笑ってしまう。

 まず何より、主人公のキャラクターで読ませますね。容姿は眼鏡を掛けた陰気面、長身で筋肉質。「死にたい」が口癖なのに健康オタクで毎日の運動およびカロリー計算を欠かさず、「仕事」モードに入るとサドっ気を全開にして悪人(彼がよく使う言葉では「害虫」)を責め嬲る。一方で「卵料理に目がない」という設定もあったりして、硬軟取り揃っています。あと緊縛趣味でもあるのか、やたら亀甲縛りを繰り出すのですけれど、縛られる相手はほとんど男なので読者サービスにはなっていません。とにかくキャラが立っており、すぐにでもドラマ化できそうな存在感を放っている。その場合、CMでウザいくらい延々と繰り返される決め台詞は「行政指導、入ります」で間違いナシ。

 「スイーツ(笑)」「喪男」といったネットスラングを混ぜるだけじゃなく、「自宅警備員が自宅を襲撃して占拠する」という斜め上行くエピソードも用意されていて、良い意味でコメントに困る。しかし他の民放が一斉に占拠された現場のビルを映すなか、一局だけしつこくアニメを流しているテレビ局があるって……無駄に芸が細かいなぁ。女っ気が少なく、キモいオッサンが横行するマンガではあるものの、一応ヒロインに当たるとおぼしきキャラは何人か出てきます。「何人か」っつーか、二人ですけど。バッタリ遭遇して、朝倉草平を間に挟んだ修羅場へ突入する日が待ち遠しい。1巻読んだ時点では正直「そんなにすごく面白いってほどでもないなー」と思いましたが、2巻で徐々にハマってまいりました。3巻早く出れ。

 ちなみに同作者の『野獣は眠らず』が「自分の殺した刑務官がスタンドみたいな死霊となって憑き纏い、法で裁けぬ悪人どもをことあるごとに処刑する」っつーやっぱり仕置人系のマンガで、設定に期待してワクワクしつつ読んだら仇敵が出てきたあたりで「第一部・完」……決着がつかないまま打ち切られてしまったので不完全燃焼もいいところでした。続く『妖怪人間ベム』は第二次世界大戦前後のドイツ近辺を舞台とした外伝で、まだ若いベム・ベラ・ベロがナチスの残党に追い回されながら「早く人間になりたい」と彷徨するストーリーであり、なかなか面白かったけれど未だに2巻が出ない……トクボウは無事軌道に乗ってほしいものだ。

・拍手レス。

 「とある」の原作が「0\(●)/の使い魔」と同じ320万部の売れ行きにびっくりです。0、読んだことないけど売れているような風だったから「とある」がそれに匹敵してるのに意外…いや予想通りです
 とある〜はアニメ化効果でもっと伸びるでしょうね。加えていくらでもスピンオフできる内容ですし、そのうち『魔界都市 <新宿> 』みたいな状況になるかも。

 ソリッドファイターネット通販だと思っていたら電撃MAGAZINE通販限定っぽい?至高の一冊のために普段読まない雑誌買うのであっった。
 どうもネット通販はしない(少なくとも当分は)みたいですね……当方はもう少し様子見するつもり。


2008-10-18.

・福本伸行の『銀と金』全11巻を一気読みした焼津です、こんばんは。

 コン・ゲーム要素とサバイバル要素を混ぜ合わせたギャンブル系金融コミックです。詐欺師と詐欺師が丁々発止で頭脳バトルを繰り広げるかと思えば、殺人鬼に追い回されたり、深夜の高層ビルを舞台にしたバトルロイヤルに巻き込まれたりもする。さすがに核ミサイルとかは出てきませんが、ケレン味の少ない『嘘喰い』といった趣。行われるゲーム自体はどれも『カイジ』の「限定ジャンケン」に比べると若干面白みに欠くけれど、「一歩間違えれば底なしの破滅が待ち受けている」というスリル、容赦ないギリギリ感ではこちらの方が上かな。あと単純に、少ない巻数で緊密なテンションを保ったまま一つ一つのエピソードにケリをつけているところが高得点。カイジの「沼」編なんて「いつまでやってるんだよ……」と呆れましたし。

 一応キリのいいところで終わっているものの、全体のストーリーはまだまだこれから盛り上がりそうな気配でいっぱいですから、いずれ時が満ちればセカンドステージも始まるであろうと確信しつつ胸を期待で膨らませています。あくまでダメ人間で根本的なところが成長しないカイジもあれはあれで楽しいけれど、やはり主人公としては紆余曲折を経て徐々に成長していく森田鉄雄や、背中に負った悪のオーラを蠱惑的に揺らめかす平井銀二の方が熱いし燃える。

・大沢在昌の『黒の狩人(上・下)』読了。

「佐江さんも、ご自分を切り札にしているんですね」
「切り札? 俺はいつだってカス札だ」
 佐江はいった。切り札の近くにいて、しかし決して切り札になることはなかった。梶雪人、西野。二人の男が脳裏に浮かんだ。あいつらは切り札だった。そして、新宿から消えた。カス札の自分だけが、こうしてとり残されている。
(中略)
「あんたの知らないことがこれまでにたくさんあった。それで俺はつくづく、自分が切り札なんかじゃねぇってのを思い知ったんだ。だが、カス札にはカス札なりの意地がある」

 『北の狩人』『砂の狩人』につづく“狩人”シリーズ第3弾。シリーズといってもストーリーの繋がりはあまりなくて、それぞれほぼ独立した内容になっている。一応、四課(マルボウ)の刑事・佐江がレギュラーキャラとして毎回登場するのですけれど……あくまで主役を張るのは梶雪人や西野といった人物であり、さすがに「カス札」は自嘲し過ぎながら、今までずっと脇役の地位に甘んじてきた印象が強い。そんな佐江も、本書でとうとう主人公に大抜擢されました。中国人絡みの犯罪を捜査するには、中国人に関する知識が必要だ――という公安の意向から、日本語が堪能な中国人・毛(マオ)を通訳および解説役として引き連れながら中国人連続殺人事件を捜査するハメになった佐江。ぐちぐちと文句をこぼし、時に不審を抱きながらも、徐々に「男たちの友情」が芽生えていく。互いの背中を守り合い、殺人事件を介して見え隠れする中国国家安全部の策謀に立ち向かっていくふたりだったが……。

 刑事小説興味にエスピオナージュ(国際謀略)要素が加わって、これまでの“狩人”シリーズにないスケールの大きさで魅せてくれる。殺人事件の捜査そのものよりも情報戦に重きが置かれていて、誰が何を知っていて何を知らないか、誰と誰との間にコネクションや利害が生じているのか、といった部分の推測および確認が話の大半を占めています。ややこくして頭がこんがらがりそうになることがしばしば。そこまで凄く込み入っているわけではないことと、元が連載形式だっただけあって節目節目で情報を整理してくれる親切設計となっていることが救いか。登場人物こそ多いものの、見るべきドラマは「男たちの友情」という一点に絞られていて、終始ぶれがなくて読みやすい。「情報を取るために体も使う」女スパイが参戦してくるのに、佐江や毛に対してはまったく艶っぽい展開になりません。淡々と、しかし乾いているわけではない、大沢在昌特有の湿り気ある文体で綴られたストーリーは非オッサン読者でも安心して読める軽快さを保っています。

 ただ、今回はスケールを拡大したせいか、細部の詰めが若干甘くなっている感は否めません。殺人事件を解くうえで重要なキーワードとなる「五岳聖山」にしても、「なぜそれが選ばれたのか?」という詳しい説明が最後まで行われないままなのでちょっと消化不良な気がします。中国に関係していて「五」という数字さえ合っていれば他のものでも代用できる、という程度の扱いだったし。それに悪役とか黒幕も、かなりショボい。もともと“狩人”シリーズは悪役に大して存在感のあるタイプのストーリーじゃないけれど、にしたって今回はスケールのでかさに敢然と反する途轍もないショボさであり、せっかくイイ具合に混迷を極めていた物語も、あらゆる伏線が収束していくクライマックスにおいて盛り下がる一方でした。そこが残念。話がどんどん大きくなっていくワクワク感や、ずっとこれまで「カス札」として燻ってきた佐江が縦横無尽かつ獅子奮迅の活躍を見せ付けるあたりは「シリーズ最高潮」と評しても過言ではないレベルでしたが、読者の心をグッと掴んで揺さぶるような「うねり」については『砂の狩人』に及ばない。喩えるなら、「勢いはあるけど低い波」といったところでしょうか。

 話の規模を広げたことが裏目に出ている部分もあるにせよ、「男の意地」を貫く内容は『北の狩人』と『砂の狩人』を楽しんできたシリーズファンにとっては嬉しくて、やっぱり「読めて良かった」と思います。それぞれ独立した作品でありますが、『黒の狩人』には少しばかり『砂の狩人』のネタバレが混入していますゆえ、読むなら刊行順ってのが鉄板のオススメ。「ホントにこいつ刑事か?」と疑いたくなる中年オヤジの無茶な捜査、暴走としか表現しようのないアバレっぷりを存分に堪能するためにも『北の狩人』と『砂の狩人』は押さえておきたい。『北の狩人』はマタギの青年・梶雪人が新宿にやってくる――って話で、ストーリー展開が型通りなのと長すぎて間延びしている箇所があることを除けば「田舎モンとヤクザモン」っつー組み合わせの妙が面白い。『砂の狩人』は暴力団組長の子女が次々と殺されて……っていうありそでなかったシチュに冒頭からグイグイと引き込まれる。多少の問題点も散見される(下巻の後半あたりは息切れしたのか、失速甚だしい)が、それを軽々と凌駕する迫力&スピード感に圧倒されます。間違いなく傑作。『北の狩人』を後回しにして、まずはこっちを先に読んでみるのも一つの手です。実際、当方もこっちを先に読んで“狩人”シリーズにハマりました。

 しかし、高校生時代は大沢在昌の小説を読んで「どこが面白いかいまひとつ分からん」と首を傾げた(例外は『屍蘭』『氷の森』だけ)もんですけれど、気づけばジワジワと「定期的に読みたい作家」になりつつあって、ああ、これはつまり歳を食ったってことなのかなぁ。昔はさして興味を示さなかった警察小説の類も、今はひたすら面白くってたまりませんわ。

・拍手レス。

 本来のページ数で売ってたら川上稔の巻数って実際の三倍から四倍か?やっぱ勢い落としたくないからこんなに分厚くなるんだろうけど、分けて売れば1.5k円以上かかるのが1k円以内ですんでありがたい。終わクロのエロス担当がヒオだったが境ホラでは弓道巫女がそうなるのかな?なんにせよ楽しみですね
 境ホラ第1話上下の合計が1314ページで、4冊に分けたら平均328.5ページ。概ね同程度の『とある魔術の禁書目録16』(329ページ/599円)をサンプルにすれば2396円といったところでしょうか。現状が1723円ですから700円弱は安くなっている計算です。そして弓道巫女のエロさはプライスレス。

 遠海事件は首切りや倒叙のトリックは二の次でメインは最終ページの巻末資料だってのが、ミステリの中でも更に変化球として素晴らしかったっす
 読む前に奥付を確認しようとして、うっかりアレを見そうになりました。危なかった……。


2008-10-15.

・タイトルに釣られて先々月購入した『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』をようよう読み切った焼津です、こんばんは。

 現役女子中学生であり、自身が妹の位置付けでありながら「ロリ系妹キャラ(特に黒髪ツインテール)大好き」という異端の隠れヲタ娘をヒロインに据えた世にも珍しいコメディです。なんでも編集部の予想に反して物凄い売れ行きだったらしく、初版をたった一週間でほぼ売り尽くしたそうな。

 ヒロインの高坂桐乃はあくまで「妹キャラ」が好きなのであって自分の兄にはさして好意を抱いておらず、平凡な高校生である主人公を虫けらの如き扱いで済ます、なんとも変わった造形の妹キャラだ。ストーリーはなきに等しい内容だけど独特のユルさが魅力的で、「こんな妹いるわけねー」と呟きつつもついつい読んでしまう。誰かも書いてましたがVIPのスレを眺めるような感覚。「ニコニコ動画でウッウーウマウマ」といった流行ネタもチラホラあって、経年劣化が激しくなる気もするが、まぁ少なくとも今年中なら賞味期限は保つでしょう。警察に勤めている頑固親父が大きな壁となって立ちはだかる後半の展開に、『ナウシカ』の感動を息子と分かち合ったキャリア組の刑事・竜崎伸也(『果断 隠蔽捜査2』)をなんとなく思い出した。

何度目だ、ハイクオソフトの『さくらさくら』、またしても発売延期(10/24→12/19)

 「延期に延期を重ねた末、発売シーズンが春へ戻る」という説もいよいよ真剣味を帯びてきたな……。

・川上稔の『境界線上のホライゾンT(下)』読んだー。

 見せ場と山場が多すぎる――読んだ直後に湧き上がった気持ちは、この一言に尽きます。詰まるところ、感想が書き切れない。

 「境ホラ」第一話の下巻であり、シリーズ2冊目に当たる本書、まだ2冊目であるにも関わらず770ページといい感じに変態入った分厚さです。川上稔の本としては『終わりのクロニクル7』に次ぐボリュームを誇っている。価格も税込で935円と、ほとんど海外小説並みだ。シリーズ1冊目『境界線上のホライゾンT(上)』が540ページくらいでしたから、これと合わせて約1300ページ。原稿用紙2000枚……には届かないだろうけど、1500枚は軽く超えておいてようやく「第一話、完結!」というスケール感は何かが確実におかしいと思う。でもいいんだ、面白いから。それはもう、滅法面白いですから。

 割と絶体絶命の窮地に追い込まれた上巻の続きだけあって、開始早々シビアな状況に立たされます。ネタバレを避けるため詳述は控えますが、圧し掛かる事態に「徹底抗戦」するか「無抵抗」を貫くか、それすら武蔵アリアダスト学院に所属するキャラクターたちの間で総意がまとまっていないわけでして、いきなり前途多難。もちろん徐々にまとまっていきますし、後半ではちゃんと総力戦モードに突入する。しかしこの、「戦いへ赴く前に身内を説得する」っつー、普通の話なら極力省かれる箇所を存分に描き込んでくれたからこそ、後に来る総力戦も激しく燃え上がるというものですよ。ぶっちゃけ読んでいるこちらも最初は「物語の流れ的には徹底抗戦を叫ぶべきなんだろうけど、直面してる事態がアレで厳しすぎるもんなぁ、みんながみんな納得するわけないよなぁ」と後ろ向きな気分に陥り、ここからどう説得するんだろうって大いに興味を抱かされましたわ。そしたら拳と拳で語り合うような分かりやすい武闘展開を挟みつつ、ちゃんとディベートも行っている。実に抜かりない。細かく説明してくれたおかげで生活の舞台となる航空都市艦「武蔵」および「武蔵」を取り巻く状況の理解が実感として深まったように思います。

 そして何より、半ば追い詰められたシチュエーションだからこそ個々のキャラクターも活きてくる。上巻じゃアリアダスト学院の面々は模擬戦程度で、ガチにバトるシーンがなかったために本多・忠勝や鹿角といったサブキャラクターたちに活躍の場を奪われていた印象が強かったけれど、今回はほら、いろいろと解禁してますから。盛り上がらないわけない。具体的には賢姉こと葵・喜美のエロさが全開になっていたり。にしても姉ちゃんのパイオツ凄いよね、集合絵で見ても浅間・智と並ぶくらい突出しているし。つかむしろアサマチの巨乳巫女っぷりに驚きました。映像的にこの娘が一番エロゲーめいた濃度バリ強、エロス最高峰です。最高豊と書くべきか。「私のしてほしいこと」をレーティング:R元服級で描き抜くなど、なにげにそっち系の妄想も爆走していて超ムッツリっスね。弓射イラストもエロ格好いい。あとハイディを女顔の少年と思い込んでいたせいでカラーイラストの金髪少女を見て「新キャラ?」と錯誤したり、砲弾直撃喰らって「いたっ!」で済むアデーレの装甲強度に和んだり、本多・二代のキャラクターイメージが完全に「某としたことが!」ラインで固まってきたり……。

 まだまだこんなもんじゃ収まらず、延々と際限なしに感想を書き綴りたい心境ながら、これ以上書いてもグダグダとまとまりないだけで混沌に堕す末路は至って目に見えているからオミットさせていただきます。というより率直に申し、本気で書き切れそうにない。第一話でこんなに詰め込んでこんなに炸裂させちゃっていいのか……と心配するほど大盤振る舞いで、ひたすら退屈とは無縁な読書時間を過ごすことが出来た次第。とりわけ「湯ATARISHOCK」のネーミングセンスには脱帽。ァ千代みたいな脇役に近いキャラまで存在を主張し、飽きるということがまるでなかったです。

「死地に行くのは結構ですが、そこから戻ってこられないのでは私が困ります。他の人達にとって宗茂様の代わりを見つけるのは超簡単なことですが、私はそうも行きませんので」

 なに素っ気ないセリフに見せかけて惚気ちゃってるの、おァさん。関係ないけど正純に対する「セージュン」って呼び名を目にするたび『ギャルゴ!!!!!』のお嬢様系エロス誌「月刊セイジュン」を思い出してしまう罠。

・拍手レス。

 ホライゾン、この調子でいくと最終巻はどこまで分厚くなるのやら
 製本の限界から終わクロ最終巻を超えるのは難しそう……あんまり厚くても読みにくいですし。でも厚い本大好き。

 忌譚修、約一年半ぶりに最新話を更新しました。遅れたどころの話じゃないですが(ウエ紙)
 おお、遂に↑の表記を更新する日が。さすがに忘れかかっている部分もありましたが、いよいよクライマックスに差し掛かったこともあり、読んでいて興奮しました。

 境界線上のホライゾンの下巻の厚さに衝撃うけたぁぁ。一巻ですでに750ページオーバーとかww。このまま続いたらどうなることやらw
 あの分量で最後までハイテンションを保ち切るところがスゲェ。2話以降は1冊あたり600ページで上中下巻と予想してみる。

 ホライゾン下読んだー!後書きにもあったけど最終巻のような1巻だった。次からどうするんだろう?
 6ページも使った全員出撃図はどう考えても最終回演出。本当の最終巻では100ページくらい費やして境ホラオールスターズを描き切り、さとやすが過労で倒れると予想。


2008-10-12.

・今頃になって『仮面のメイドガイ』を読み、徐々にヘタレメイド化していくフブキさんに悶えている俺参上。こんばんは、焼津です。登場した時点では「にこやかな笑顔の裏で何か途方もないことを考えている風情のクール且つ有能なメイド」というキャラクターだったのに、風邪でダウンして「カロリーメイトとかをおじや風にかつお出汁で煮込ん」だものを食わされそうになったあたりが転機だったのか、以降は立場が急落。すっかり弄られ役・お色気担当として定着するハメに。やっべえ、フブキさんがダメになればなるほど面白くなるなんて、このマンガどんな黒魔術使ってるんだよ。というか総じて出番が増えれば増えるほどダメ子と化すヒロインが多いな、このマンガ。作者の趣味?

・詠坂雄二の『遠海事件』読了。

 副題「佐藤誠はなぜ首を切断したのか?」。店頭で目にした際「伊藤誠はなぜ首を切断されたのか?」と誤読しそうになった当方を誰が責められるだろう。著者は昨年に『リロ・グラ・シスタ』(the little glass sister)でデビューした新人であり、これが2作目に当たる。『リロ・グラ・シスタ』は買ってみようかと思案した時期もありますが、発売後しばらくして各所の感想を眺め渡してみたら「やっぱやめとこう」と翻意するぐらいクソミソに貶されていたので未だに購入しておりません。本書『遠海事件』は稀代の殺人鬼が遺した「斬首の謎」を解き明かすといった趣向で、結構気になりつつも前作の評判があまりにもあまりだったことからスルーしていた次第。しかし、ごく一部で「隠れた収穫」扱いされている事実を知り、時には瓢箪から駒が出ることもあるやもしれぬ、と勇を鼓して手を伸ばしてみました。

 日本犯罪史上、類を見ない数の殺人を自供した男、佐藤誠。死体を処分し、事件そのものを隠蔽する手際の良さからほとんどの殺人は発覚すらしていなかったが、彼の自供が正しければ少なくとも86人が殺害されている計算となる。途方もない大群を成す事件の山において、もっとも際立った謎を匂わせるのが「遠海事件」だった。当時、書店員の店長として安定した暮らしを送っていた時期の彼が「遺体の首を切断する」という猟奇的な犯行を見せた理由とは何か? 様々な疑問点を洗い直すにつれ、その理由は徐々に明かされていくが……。

 倒叙型、ではないのだが、裁判が終わって既に判決が下っている状態から時間を遡行し、「遠海事件とは何だったのか?」を語り上げるやや異色な構成のミステリです。ドキュメンタリィ風……と言えなくもないが、幕間で入る解説以外は小説形式で綴られているためルポっぽさは希薄。強いて言えば野沢尚の『魔笛』に近い読み口を感じたか。あれは捕まった後の犯人による一人称で、こちらは殺人鬼と面会した作家たちによる合作という設定になっていますけども。物語の焦点に据えられた佐藤誠が「狂気の殺人鬼」でも「天才型のシリアルキラー」でも「職業殺人者」でもなく、ただ「邪魔になった人間を排除するためなら『殺人』という極端な手段に訴えることも厭わない」、そして「可能な限り証拠を隠滅する」、善悪の基準が極めて曖昧な「習慣的且つ努力型の殺人鬼」っちゅう奇妙な造形になっている点は面白かった。もちろん、「86人殺し」なんて装飾にしても派手すぎる気がしますし、「一貫した動機がなく、常に違う動機で殺し続けている」って部分をいまひとつ活かし切れなかった印象はあるにせよ、読む前に危惧した「ハッタリ任せの設定倒れ」には堕していなくて安心しました。

 文章自体はあまり魅力的ではないと申しますか、気取った言い回しをしようとして滑っている箇所が多く、端的に書けばダサい。たとえば「死んだ命は還らない。死とは時と並び、生物の身近にある不可逆的な機構だ」とか……「死んだ命は還らない」だけでいいだろ、後半必要ないだろ、「不可逆的な機構」って書きたかっただけじゃないのかよ……みたいな部分がわんさか。また、会話文をあえて崩し気味にすることでざっくばらんなテイストをも醸そうと試みたのか、上記したような気取った言い回しに混じって「ったくよー」「マジすか!」「うぜー話でしょう?」と来るものだから勘弁してほしい。「気取っているようで気取っていないナチュラルな俺様のカッコよさ」を演出しようと狙っているのかもしれませんが、わざとらしすぎます。もはや、この痛痒さが心地良くなる場面すらある。良くも悪くもバリバリの厨二病文体です。「だが、運命という言葉で何もかも綴じ込み、リボンを掛けてショウウィンドウへ陳列されたストーリーなど、水谷は大嫌いだった」――ってな洗礼の数々に耐えられないと、最後まで読み通すことは難しい。逆に言えばそこさえ凌げるのなら、核心が見えるようで見えない、得体の知れないムードに包まれた「遠海事件」の謎に引き込まれること請け合い。首斬りの理由は若干強引に感じたし、「それで本当にいいのか?」という疑問とてなくもないが、設定の特異さを犬死にさせないスリリングな調理法で存分に堪能させてくれた。

 文体の問題もあって年間ランキングで頭角を現すなどといった捗々しい結果は得られないかもしれませんが、読んだ人の中から「傑作」という声が出るのもむべなるかな、といった出来。「厨二病」の謗りは免れないにしても、随所で新人らしいチャレンジ精神が横溢しており、実にワクワクさせられる。ちょっぴり斬新で意欲的、「端整な作風よりも荒削りな情熱」を好む方にはこっそりオススメしておきたい。読む前に期待しすぎなければ、なかなか楽しめるでしょう。さてと、前作もいずれ購入して読もうかな……あっちの方は厨二病が行き過ぎてほとんど邪気眼の領域にシフトしているらしいんですが。

・拍手レス。

 とっぱらは注目していたけど、ここで言われるまでやる気無かったので感謝しています。繊細な物語も素晴らしいですが、それよりも美影が最高です。たまらん。ホントたまらん。
 実は当方もここのWEB拍手で『とっぱら』の名前挙げられて、それでようやくやる気が湧いたクチ。なんだかんだで口コミは強いなぁ、と実感。美影さんの素晴らしさには涙が出そうです。

 悪徒、か……。トンデモ最終回伝説に、また新たな1ページを刻んだ感じでしたな。個人的に、結構好きだったんだけどなぁ
 あれっ、悪徒もう終わったんですか……『かるた』といい『フルセット!』といい、チャンピオンは「密かに面白いマンガ」の打ち切りが多いですね。


2008-10-09.

『オニデレ』『SKET DANCE』、どちらも読み始めは「うーん、そんなに……」って感じだったのに、進むにつれてだんだん「わはは、おもろ」ってな具合になって結果的に両方しっかり楽しませてもらった焼津です、こんばんは。

 『オニデレ』は『デトロイト・メタル・シティ』『バリハケン』みたいな「無茶なごまかし方なのに、相手の勘違いが重なってついうっかり通ってしまう」というタイプのコメディで、作者自身が認めている通り画力やネタはまだまだ成長の余地が山ほどあって今後の課題になっていますけれど、「開始時点で主人公とヒロインが既に付き合っている(でも周りにはそれを隠している)」という美味しいシチュの助けもあってジワジワ盛り上がっていきます。何より、ヒロインの育島紗夜がメラゾーマ級にかわええ。「金髪ロングでオニのツノっぽい突起がある」というキャラデザは無茶にも思えるが、これがまたヒロインの狂暴属性(&意外としおらしい内面)とガッチリ噛み合って一種ビックリするような魅力を生み出しています。あれで結構照れ屋なところがあって、それがまたたまらない。「ヤンデレ」を「ヤンキー娘がデレデレする」の意味だと思っていた人が案外多いっつー話ですが、もし『オニデレ』の連載が一、二年早く始まっていたら本当にそっちの使い方で定着していたかもしんない。それほどの威力。ちなみに、「オニで始まるカタカナ4字タイトル」繋がりなせいか、『オニナギ』と混同しそうになることがたまにあります。

 『SKET DANCE』は知らないうちに始まっていたジャンプマンガ。「助っ人団」と「SKET DANCE」を掛けている模様です。そういえば『HR〜ほーむるーむ〜』でも元バスケット部員が「助っ人部」に入るとかいうネタがあったな。よろず請負トラブルシューターというか、依頼人の願いを何でも聞き届ける便利屋ってな具合で、ノリそのものはちょっと古め。登場人物も美男美女を廃し、比較的平凡かつ地味めな容姿のキャラでレギュラーを固めるなど、今時のジャンプにしては珍しい素朴な内容となっています。推理あり、ドタバタあり、人情味ありで、「ああ、そうそう、こういうシンプルな少年マンガが読みたかったんだよ」としみじみ。適度に力が抜けていて、ちょっとしたパロネタやメタネタが混ざるのも嫌味がなくて気軽に読めます。空知英秋のアシスタントをやっていた時期もあるとかで、確かに『銀魂』と通じるノリはありますね。下ネタが少ない分あっちより爽やかな印象がありますが、良い意味で垢抜けないムードは似ている。今後伸びそうで楽しみ。

・しなな泰之の『スイーツ!』読んだ。

 第7回スーパーダッシュ小説新人賞「佳作」受賞作。タイトルから察するに主人公がパティシエ目指してお菓子づくりする話だろうか、と思ったりしましたけど全然違いました。平たく書けば異能バトル系です。「スタンド」とか「念能力」とか「攻撃力(攻校生)」とか、そういったのと同じノリで「スイーツ」という超常パワーが出てくる。なんでもこのスイーツとやらは思春期の女子に割と発現しがちで、作中においては全然「存在を隠匿されている力」なんかでなく「大っぴらに語るものではないが一般知識の範疇」という扱いになっています。男子高校生たる主人公はそんな能力が存在することさえ知らなかったものの、女性陣は年頃の娘さんたちのみならず叔母さんまでもがご存知という有様。スイーツって言葉は隠語に過ぎず、「それ」自体は何代も前からあったそうな。何やらちょっと伝奇っぽい設定ですね。

 「如何にも思春期」といった風情の自意識過剰な少年による一人称で、ハッキリ言ってしまえば文章がくどい。無論、そのくどさも含めて一つの味にはなっていますが、にしたって「肌と肌が触れ合ってドキッとする」程度のことを数行に渡って描写するのはどんなものだろう。しかもそれ、一度ならまだいいけど、触れ合うたびごとにいちいち繰り返すんですよ。さすがに読んでいて疲れる。ただ、ラブコメを書くセンスに関しては上々というか筋が良く、今後伸びていきそうな見込みはあります。自意識過剰なくどい文体ではありますが、少なくとも見当違いの方向には行っていない。成長すればこれもやがて「芸風」として確立されることでしょう。

 内容については、ややまとめにくい。詰まるところスイーツとは何なのか、っていう詳細を伏せたまま進行するため、主人公がずっと最後まで「ワケワカメ」な状態に陥っているのがもどかしいです。読んでいるこちらはだいたい想像がつくのですけれど……あと、見た目は至って明るい雰囲気なのに、いざバトルが始まると結構ガチでビビリました。刃物が飛び出したりとかで、普通に殺されそうになる。キャラ紹介の口絵じゃ和気藹々と争っているように見えて、「ふふ、なるほど、この娘さんたちが主人公を取り合って『ちょっとそこっ、なにくっついてるのよっ!』みたいな調子で楽しくバトルロイヤるわけですね」なんて腑抜けた予想を立てたものですけれど、そんな可愛い修羅場は一切ございませんでした。山は死にました。春も死にました。愛は死んでゾンビになってから蘇りました。「洗顔」と称してヒロインの顔に硫酸を浴びせようとするシーンがあるなど、表紙を飾るよもぎ絵から読み取ることが困難な殺伐さ。一方そんな緊迫した場面であってもちょくちょくギャグが入ったりするので、何ともアンバランスなムードが漂います。

「こいつ、なんでチャックを開けっ放しにしているのよ!」
「いや、開いてはいるけど仕方がない。もう、そうするしかないんだ」
「こんなの、ショウ兄にとっても不可抗力だよ! そっとしておくのが普通でしょ!」
「アンタたち……おかしい! 変態にもほどがあるわ! チャックは、普通閉めておくものでしょ! どうしてそれがわからないの!」
「なによ! そんなに言うなら、あなたが自分で閉めてみればいいでしょ! さっきから泣き叫ぶだけで何もしようとしないくせに、知ったような口をきかないでよ!」

 そこそこシリアスな場面で繰り広げられる会話がこれですよ。『悪徒』のスカジャンじゃあるまいに、チャックを閉めるの閉めないので戦闘中に激論を交わすんですよ。狂ってます。それから、文中のそこかしこで西尾維新や鎌池和馬みたいな無茶なルビの振り方(「恋占い」と書いて「サバト」と読ませるとか)をしているのですが、ここで問題。「魔獣、胎動」と書いて何と読ませるでしょう。正解は、

 ――――魔獣いやらしいもうそう胎動ぜんかい――!

「なっ……!」
 少女の肩がびくりと弾む。すぐに両腕で身をかき抱くも、しかし震え出すのを止めることはできないようだ。無理もない、今の俺の状態は、あまりに彼女の想像を超えている。
「わかったか。こいつは、俺自身でさえ御することができないんだ。まして君のような少女にとっては、悪夢以外の何物でもないはずだ。それが『健康な男子』というものだ」

 何をカッコ良さそうに言っているんだ、こいつは……(もちろん、ズボンのチャックは依然として全開)。

 こんな具合にドタバタしながらも、「スイーツ能力のせいで迫害されることもある」という負の側面を取り上げ、案外と重たい展開にもつれ込んでいく。若干急な気もするが、超展開と呼ぶほど慌しい流れではない点が救いか。新人らしい荒削りでいてフレッシュな部分もある一方で、狙いを絞り切れず不明瞭になっているっつー難点も残る。基本はラブコメなんだけどバトル部分でシリアス色を出しつつ「でもやっぱりギャグを混ぜたいんだよなー」みたいな、終始腰の定まらないフラフラしたストーリーが続き、コメディにもシリアスにもなりきれない。まさしく虻蜂取らず。結果として筋は良いのに誉めにくいという、ひどく妙な位置に収まる作品でした。月並みな書き方になりますが「次回作に期待」と結びたい。

 余談。イラストレーターの柏餅よもぎは見ての通り相当なムッチリぽっちゃり肉感スキーなので、本文中に「細い、長い」「華奢」「繊細」と描写されている伊乃のおみ足もしっかりムチッと太く描いております。挿絵を目にするや脊髄反射で「細くねぇ!」とツッコんでしまった読者は当方だけではないと信じたい。裏表紙見返しにある柏餅よもぎのコメント欄を見たら「しななさんに悪いことしたな」とあって、描いた本人も一応は気にしている様子。

・拍手レス。

 早くうちにも影女が憑いて人外パラダイスにならんもんかね
 影女の項目をよく読むと「※ただしイケメンに限る」という表記があるんじゃないか、って気がしてきた今日この頃。

 http://haijin.blog7.fc2.com/ ここのwebマンガが修羅場ものとしてワクワクのできです。萌え系で人生やりなおし系というパターンも新しいですし。 (合わなかった場合はコメント自体スルーして頂いて構いません)
 WEBマンガのタイトルは人生ゲームです。先程送った時に書き忘れました

 「強くてニューゲーム」系のやり直しモノですね。個人的には杏が好み。なにげに戦闘力高いし。黒ロングストレートの嫉妬深い幼馴染み少女は正義。あと妹の理沙も悪くない。いや、いい!


2008-10-06.

『ソリッドファイター 完全版』は昨日無事に先行発売されたみたいで、「実は幻だった」というオチがつかなくてホッとした焼津です、こんばんは。あとは通販の開始を待つだけだ。結構売れ行きも良かったようですし、「やっぱり通販中止」なんてオチはつかないでしょう……たぶん。

『とある衣装と女教皇様』再販中

 先ほどとらのあなメロンブックスの通販それぞれで確認。この機会をお見逃しなく。

・塩野干支郎次の『ブロッケンブラッドV』読み終わり。

 ドイツ系三世の男子高校生が「女子中学生アイドル」に成りすまして潜入捜査を行い、自分と同じ「ブロッケンの血族」たちが引き起こす怪事件を解決して回る女装最高マジカルコメディの第三期です。あらかじめ書いておきますがこのシリーズ、ストーリーはひたすら添え物であって「ブロッケンの血族」云々といった設定もお飾りに過ぎない体たらくであり、ただただ主人公の見事な女装っぷりをとことんナンセンスな笑いとともに楽しむ末世的内容に仕上がっています。同作者の『ユーベルブラット』みたいなシリアス展開を期待して読むと口の中に含んだものを勢い良く噴出することになりかねませんのでご注意を。にしても、一期や二期を読んだことのない人が今回の表紙を見たら確実に勘違いするだろうな……ファンの皆さんには言うまでもありませんが、表紙に映っている3名の「美少女」は全員♂です。衣装合わせの際に緊迫した面持ちで股間を押さえ「ずれた!」と叫ぶほどに純然たる野郎ども。考えれば考えるだけ解脱しそうになります。

 相変わらずないに等しい筋立てに危ないネタを山盛りしており、亀田三姉妹(実際は名前を伏せられているが、ネーミングの方向はきっとこれで間違いない)だのKGB48(カーゲーベーフォーティエイト)だの、「原始人みたいな服を着た状態で発見され『別に……』としか言わなくなる元セレブ・元アイドル」だの、ジョークにしても結構ヤバい領域まで突っ込んだネタが多く散見されます。大丈夫か、これ。一方で「地方のリゾートホテルのCMは一度作ったら四半世紀は使い回されるわ!」みたいな小ネタも冴え渡っており、緩急のついたドタバタギャグに腹筋を鍛えられることしきり。何者かの陰謀で不当な「ノイシュヴァンシュタイン桜子バッシング」を受け、凹むどころかこれでやっとアイドル業を廃業できる、と安心しつつ「なんだかんだいってこうまで叩かれるとちょっとムカつくけど」と素直な心情を吐露する件は、主人公の性格をうまく切り取っていてさりげに巧い。

 さすがにそろそろマンネリ化するんじゃないか、という危惧を抱いていましたけど杞憂もいいところ、物語はますますカオスの度合いを深めて後戻りできない&取り戻しの利かないゾーンへ足を踏み入れていく。巻末予告で第四期も発表されているし、このまま世界の果てまで突き抜けていってほしいものです。それにしても、むくれ顔で両手に魚持って踊る「地方のリゾートホテルのCM」は可愛すぎだろ。前髪パッツンのお天気魔女ホーエンツォレルン楓もたまらぬ。あと今回やっと主人公の妹でマジモンの魔女っ子たる守流津愛にも出番が。オマケですけど。

ジェームズ・クラムリー、死去

 まず、2週間も前の訃報であることに愕然。PCが壊れて以来ネット巡回をサボり気味だったとはいえ、今の今まで知らなかったとは……危篤に陥って復帰したという話は聞きましたし、新作が出せるものかどうか不安でしたけれど、結局『正当なる狂気』が遺作になってしまいましたか。ああ、シュグルーやミロの活躍がもっと読みたかったです……今はただただ目を閉じ合掌。

・拍手レス。

 本棚に余裕があれば「ふらふろ」(著カネコマサル)がオススメ
 ああ、あの『苺ましまろ』っぽいノリしたマンガですね。

 そういえばとっぱらは買われました?
 買いましたが封も切っておりません……。


2008-10-03.

・「優等生だけど腐っている」という黒髪ロングストレートなBL大好きヒロイン・黒田蝶子を目当てに買った4コママンガ『共鳴せよ!私立轟高校図書委員会』が、読んでみたら蝶子よりもオカッパ髪のポン刀使用人・モモが自分のツボに入っていた焼津です、こんばんは。

 世話をしている少年を深く溺愛しており、彼に近寄る害は全て振り払い、彼に近づく女子どもは悉く退ける。こういう一途で沸点の低い子はたまらんなあ。嫉妬に狂う怒り顔がまた最高です。「年下に興味はありませんか?」と擦り寄ってくる中学生に対し「あーりーまーせーんーあーりーまーせーんー 久仁也様はバリバリの熟女好きですぅ―――!!!!」と小学生口調で勝手なことを言い返すあたりも笑った。この『共鳴せよ〜』、どちらかと言えばキャラの個性で持たせるタイプの4コマでネタそのものは際立ったところがなく、ノリとしてはガンガン系に近いマンガですね。各々レギュラー陣の変人変態ぶりをアピールしつつ、大半は良くも悪くも他愛がない日常の連続。しかし、「図書委員はお金を本で換算する」の件には激しく頷いてしまった。確かに昔から大きな金額を耳にするたび「新刊○冊分じゃん」と計算したり、数百円の買い物でも「これを浮かせばB6判サイズのコミックが1冊買えるな……」と考えたりしたものです。というか未だにそれが直っていない。エロゲーマーがつい「エロゲ算(この金額でエロゲーが何本買えるか、という換算思考。定価か実売価格かで若干揺らぎがあるものの、だいたい6000〜9000円で1エロゲと数える)」しちゃうようなものです。あと、モモだけじゃなく蝶子さんも目当てとして読み出したキャラだけあってなかなか魅惑的だった。腐ネタはややワンパターンながら、邪悪な笑みを満面に湛えた絵とか素晴らしく、見ていて胸がキューンと縮みます。ちぢゅみます。「腐女子かよ……」という不安をあの顔が一切合財とっぱらってくれるんだ。

唐辺葉介の『犬憑きさん』、第1話「蠱毒」を公開

 「完全無料」を謳うWEBマガジン「ガンガンONLINE」の創刊ラインナップとして掲載されている学園伝奇小説、その1話目です。呪術を題材にしたストーリーで、「願ったり、呪ったり。」というキャッチコピーがちょっと面白かった。イラスト含めて100ページとそこそこの分量ながら、サクサクッと読める。どうやら連作形式みたいで、「犬憑きさん」というヒロインを軸に展開していく模様。「そして、闇の向こうにあったものとは――(第2話につづく)」みたいな、気になる場面で話が切れる感じじゃなくて、一通り物事にケリがつき、キリのいい地点に辿り着いたあたりで終わっています。物語はまだ開幕したばかりといった風情で「犬憑きさん」の世界は明瞭に見えてこず、現時点では「特に感想なし」ってのが正直なところです。読みやすいことは読みやすかったし、とりあえず2話目もチェックしようと思いますが……次回は11月とのことで、無事覚えていられるかしら。

 ちなみにガンON、他の掲載作では「生徒会のヲタのしみ。」が結構楽しかったです。ネタ的にもっとこう、残念な気配漂うマンガかと思いましたが、脱力感とマニアックさの混合比率がちょうど良くて和む。腐女子やエロゲーネタが出てくること自体は別段珍しくないものの、連載1話目からいきなり『羊たちの憂鬱』を挙げてくるとは……。

・奈須きのこの『空の境界 未来福音』読了。

 全7章から成る伝奇小説『空の境界』の8番目に当たるエピソードで、つまりボーナストラック的な存在。もともと『空の境界』は同人誌として刊行された経緯があるだけに、これも奈須きのこ&武内崇のサークル「竹箒」から同人誌として今年の夏コミより発売されました。当方が購入したのは委託販売分の2刷です。柱である「未来福音」に加えて武内のらっきょコミック3本を収録した、そこそこ充実感のある内容ながら、200ページ足らずで1800円(税込)という価格はさすがに少し高いか。装丁が特別な仕様なのでコストを下げられなかったとのことで、熱烈なファンはとっとと覚悟完了させて買いに走ったことでしょうけれど、コストパフォーマンスを秤にかけてまだ迷いが残る……という方は商業化を待つのも一つの手。現時点で予定はないそうですが、映画の画コンテ集を出版するくらい商売熱心な講談社のこと、これほど美味しいコンテンツをむざむざ放っておく理屈はない。

 さて、「未来福音」。タイトルと概要だけは前々から囁かれていたエピソードです。1998年8月だから、「痛覚残留」と「俯瞰風景」の間あたり、黒桐幹也は未来視を保有する少女・瀬尾静音と出会う――『月姫』の番外編「幻視同盟」を彷彿とさせる内容(未来視を持ったヒロインの名前が瀬尾晶)で、どうやら『空の境界』のプロットを組んだ時点では存在していたものの、あえなく没になってしまい、「幻視同盟」で活かす形と相成った……ってな模様。似ているというか明らかに設定の流用(逆流用?)だわ。30ページ程度の挿話として予定されていたとのことですから、だいぶ増量されている。恐らくプロット段階では黒桐パートのみで、式が活躍する予定はなかったんでしょうね。「大切な事だから二回言いました」みたいなネタが混入していることから察するに、全体が最近に丸々書き下ろしたものと推測される。若干短くて物足りないながらも一つの独立したパートとしてまとまっており、久々に読むらっきょだってのに何ら準備を要さずするっと気持ち良く入っていけて、はは、難なく楽しめました。

 本編自体が面白いのはもちろんのこと、オマケの漫画で微妙な扱いを受ける鮮花が愛しくて仕方がない。そして何より読者の心を騒がせるのが、そう――後日談の存在。ネタバレを避けるため詳細に触れることはよしておきますが、下手するとファンにとっては「未来福音」そのものよりもコッチの方が嬉しかったりするんじゃないかしら。「あれから○年――」という感じで一気に時代が飛びますので、いろいろ想像してニヤけてしまうこと請け合い。

 つくづく値段は高いと思う(通販だと送料が掛かるから尚更)にせよ、買って損したかと申せば無論そんなことはなく、こうやって通販を利用して軽々と入手できる状況をむしろ寿ぎたい。読めただけでも満足、って奴です。某BOXの阿漕な遣り口に慣れてりゃなんてことない。

・拍手レス。

 最初から最後までルルーシュの人生を描いていたという意味では、あれはあれで十分に面白かったと思います。謎多いけど。
 アニメしか見てないと分かんない部分多いですね。マリアンヌも登場したかと思えばいきなり退場して「何だったのあの人」ですし。

 個人的には、ルル山のやり方に何故かすごくデジャヴュを感じました。それが誰だったかまでは思い出せないけれど…感動とか以前に、なんか「ああ、やっぱりお前もそうするんだな」って感じで…同じように感じた人は少ないかもしれませんが。
 「この人を見よ(エッケ・ホモ)」と言わんばかりのクライマックスで、連想したのはやっぱり「贖い」かな。


2008-10-01.

・「名前は知っているけど偏見があって読んだことない漫画家」の一人である長月みそかの作品をなんとなく読んでコロッとあっさりハマってしまった焼津です、こんばんは。

 やっぱ根拠なき思い込みは良くないっスね。絵柄はロリロリしているものの描画に躍動感があって飽きず、スルスルと引き込まれます。ネタそのものは至ってシンプルで込み入っていませんが、賑やかで楽しい雰囲気を悠々と紡ぎ出す筆先に惚れ惚れ。爽やかな青春モノである一方、野暮ったさと甘酸っぱさがブレンドされた若気スメルも漂う作風――なかなかに中毒性高し。新たなる4コマ系の収穫を得て満悦することしきりです。

 成年コミックの『あ でい いんざ らいふ』と4コマの『HR〜ほーむるーむ〜』は舞台となる中学校が一緒で、チラッとクロスする場面があったりして『あでい』→『HR』の順に読むとニヤけてしまう。特に48ページの「ブルー」なんて、何気ない背景に見せかけて「あっ、このシーンは……!」なネタを仕込んでいるから侮れません。青臭い悩みの後ろで青臭いモノを洗い流す、即ち二重の意味でブルーなのか。個人的には「あでい<HR」で、つまり「濡れ場も悪くないがエロより非エロ描写の方が好み」ってな感じなんですけれども、『HR』は形式が4コマに制限されているせいか『あでい』の直後に読むとコマ割りが窮屈な印象を受けますね。巻末のオマケみたいな自由形式のショートコミックをもっと読みたいところ。それにしても夏目琴音、この娘ってば欲望を掻き立ててしょうがないサブヒロインですわ。眼鏡+吊り目+巨乳+ロング髪+片想い、すべてを併せ持ったHR界のレヴァイアさん也。

 しかし、「萌え4コマ」など一瞬の流行に過ぎず、すぐに廃れてしまうのではないか……という懸念を振り捨て、きらら系のマンガが近頃よく伸びていますねー。個人的に海藍、きゆづきさとこ、ざら、OYSTER、長月みそかは「萌え4コマの五本指」と勝手に認定中。萌えというにはいささかシモネタの配色が強い氏家ト全の『生徒会役員共』も実は相当ツボに入ってるんですが、あれは判型(サイズ)小さいのが難。地味なところではkashmir、saxyun、里好あたりも好きです。

「ジンガイマキョウ」の新刊『とある衣装と女教皇様』が再販される模様

 買い逃していた方々に朗報ー。早ければ来週にまた並ぶそうです。

『BLASSREITER』は12話の「審判の日」が男汁系エナジー漲っていて滾りました。儲の欲目かもしれませんが、虚淵脚本回はなんだかひと味違う気がしますぜ。

・おらの今月の購買予定ですだ。

(本)

 『東天の獅子(第一巻・第二巻)』/夢枕獏(双葉社)
 『夏休みは、銀河!(上・下)』/岩本隆雄(朝日新聞社)
 『新装版 大日本天狗党絵詞(1)』/黒田硫黄(講談社)
 『TOKYO BLACK OUT』/福田和代(東京創元社)
 『“文学少女”はガーゴイルとバカの階段を昇る』/アンソロジー(アスキー・メディアワークス)

 文庫化情報。えーと今月は……つい先日に弁当箱じみた新刊出した古川日出男の『ボディ・アンド・ソウル』くらいか。エッセイのようで小説のような、良い意味でごっちゃ混ぜになっているジャンルオーバー且つボーダーレスな一冊。どちらかと言えばファン向けで、古川日出男をまったく知らない、という人にはやや辛いかもしれませんが「読者には誤読する権利がある!」など面白い箇所も多いので、物は試しにどうぞー。

 『東天の獅子』は長らく雑誌連載されていた格闘小説であり、遂に書籍化されます。ずっと名前だけ目にしていて、まとまるのを待っていた本。完結したという話は聞かないからまだ続くみたいです。例によって夢枕獏の「シリーズをいつまでも終わらせられない病」が発症しないかすこぶる心配。『夏休みは、銀河!』、これもタイトルだけは何年も前から目にしていた奴です。当初の予定では朝日ソノラマ文庫から発売されるはずだったのにずるずると延期して、そうこうするうちソノラマ文庫のレーベルが廃止になってしまったため刊行が絶望視されていました。それが急転直下して新レーベル創刊ラインナップに選ばれ、しかも上下2冊でいきなり完結している。きっと、ファンの方々は未だに信じられない気持ちでいっぱいでしょう。当方自身は岩本隆雄の作品を読んだことありませんが、評判のいい作家ですしたまには手を伸ばしてみようかと。

 『大日本天狗党絵詞』は黒田硫黄の初期作。絶版してプチプレミア化していましたが、ようやく復刊されるみたいです。以前古本屋の廉売コーナーで全巻揃いを発見し、状態が悪くて「はて、どうしたものやら……」と迷っているうちになくなった苦い記憶を持つ身にはうってつけの特効薬。ちょっと前に『セクシーボイスアンドロボ』を読んで黒田熱が高まっていたところなのでちょうど良かった。『TOKYO BLACK OUT』は福田和代の第2長編。著者は『ヴィズ・ゼロ』という航空サスペンスで話題になった人ですが、マイナー出版社の出身なのでぶっちゃけ知名度は低い。東京大停電を描く本書でブレイクなるか。『“文学少女”はガーゴイルとバカの階段を昇る』はコラボアンソロジー。ファミ通文庫のHPで期間限定公開されたコラボ小説――つまり、たとえば「“文学少女”とバカテスの世界がクロスオーバーした作品」とか――を当事者たる野村美月や井上堅二などが手掛ける……という豪華な企画を書籍化したもの。公開期間が短かったせいで見れなかった分もあり、こうして文庫にまとめてくれるのはありがたい。書き下ろしも追加されるみたいです。

 他のところでは電撃文庫の新刊――アニメの公開に合わせて『とらドラ9!』が来たり、久々にウィズブレこと『ウィザーズ・ブレイン』の新刊が来たり、待ちに待った(といっても連続刊行企画なので僅か一ヶ月ぶりなんだが)『境界線上のホライゾンT(下)』が来たりなど。それから日本推理作家協会賞の短編部門を受賞した作品が表題作として収録される長岡弘樹の『傍聞き』、真保裕一初の歴史小説『覇王の番人(上・下)』、既に600ページオーバーが確約されている『されど罪人は竜と踊る4』、映画化して人気絶頂につき短編集(『ガリレオの苦悩』)と長編(『聖女の救済』)が同時発売される探偵ガリレオ、『実録・外道の条件』の続編『真説・外道の潮騒』あたりも忘れずチェック。マンガの新刊は最低でも『惑星のさみだれ』、『神のみぞ知るセカイ』、『ヒャッコ』、『大東京トイボックス』、そして施川ユウキの2冊(『サナギさん』最終巻と『12月生まれの少年』1巻)を押さえておきたい。

(ゲーム)

 『明日の七海と逢うために』(Purple software)

 注目ソフトが先月から延期してくることもなく、おかげでスッキリと予定を立てられます。『明日の七海と〜』は『明日の君と逢うために』のFDで、一番の人気ヒロインであったにも関わらず本編で攻略できなかった七海美菜を中心に据えたソフト。ちなみに明日君はふたり攻略したところで止まってます。データ吹っ飛んじゃったし、また一からやり直すのもタルいな……いっそ本編無視してFDだけやるか。あとは『恋する乙女と守護の楯』の移植版も気になるところ。ノベライズも今月出るらしく、両方ともまずは評判を見てから態度を決したい。

・拍手レス。

 nani?
 何?この丸投げENDは・・・orz>ギアス

 「結局ギアスって何やねん」な感は否めませんが、ルルーシュ周辺の事柄がまとまっただけでもヨシ。

 なんか、さりげなく存在がスルーされてるorz>シンクー
 吐血が死亡フラグだったのかどうかさえ判然としないですね。


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