2008年9月分


・本
 『世界制服(1)』/榎本ナリコ(小学館)
 『孤独の要塞』/ジョナサン・レセム(早川書房)
 『偽物語(上)』/西尾維新(講談社)
 『境界線上のホライゾンT(上)』/川上稔(アスキー・メディアワークス)
 『とある衣装と女教皇様』/犬江しんすけ(ジンガイマキョウ)
 『おませで御免!』/御免なさい(コアマガジン)
 『彼女は戦争妖精1』/嬉野秋彦(エンターブレイン)
 “海”三部作(『海神』『海贄』『海宴』)/霧恵マサノブ(ヒット出版社)
 『電子遊戯黙示録』/マツダ(宙出版)
 『されど罪人は竜と踊る3』/浅井ラボ(小学館)
 『看板娘はさしおさえ(1〜3)』/鈴城芹(芳文社)

・ゲーム
 『とっぱら』体験版(キャラメルBOX)


2008-09-28.

・一切の予断を遮蔽するべくあえて体験版をプレーせずに待ち侘びていた(というのは嘘で単に体験版をする暇がなかった)『ティンクル☆くるせいだーす』に熱中したり、いつの間にか期間限定で全話無料配信を始めていた『BLASSREITER』を夢中になって視聴したりと大忙しの焼津です、こんばんは。

 おかげで他の予定は滞りまくりだぜフゥハハー。いやもう、ヤバいくらい新刊が崩せてなくて積みっ放しの大山脈と化してますが、気にするのはやめにしました。クルくるは爛漫天使のロロットさんや相談役(コンシリエーリ)のリアさんあたりが好みながら、実は主人公のビジュアルが一番ツボというネタでも何でもない真実。そして九浄(くじょう)という姓で『クージョ』を連想。ブラスレは序盤が少々分かりづらくて視聴者おいてけぼりな気配もあったものの、見ているうちにだんだん面白くなってきました。アクションシーンの描画が派手で、「アニメにCG混ぜる遣り口は好かんなぁ」と文句を垂れつつもついつい見入ってしまう。ジルの考えなしなビッチぶりに笑ったり、エレアのキャラデザをあざといと思いながらも出るたびガン見したり、存分に楽しんでおります。どうでもいいけどデモニアックの徴を目にした瞬間「二境紋?」と言いそうになった。

10月2日オープンの「ガンガンONLINE」で唐辺葉介の新作を掲載「気が向いたらのライトノベル週報」経由)

 欲を言えば紙媒体で読みたいところですが、無料なんだし文句は慎むとします。しかし「蠱毒」か……いかにも「らしい」。

恋空よりひどい小説あった「GF団」経由)

 アタシ
 タオロー
 仕事?
 凶手
 まぁ今は復讐鬼
 仇?
 まぁ
 当たり前に
 いる
 てか
 いない訳ないじゃん
 みたいな
 仇は
 五人
 てか
 アタシはこの一刀に
 賭ける修羅
 みたいな

 ――「あたし鬼哭Guy」

 夢枕獏やハセガワケイスケも戦慄を覚えるクラスの乱脈改行、お美事なり。書籍化するときは『砂のクロニクル』みたいに三段組、いや雑誌みたく四段組でもいいんじゃないかしら。てか、途中でリンクされている「鼻からイカソーメンをすする女」が強烈すぎてどうでもよくなりました、みたいな。発想からして尋常じゃねぇわ。「内臓」が「内蔵」という、『さらば、カタロニア戦線』でやっていたのと同じ誤字があったのは気になったけれど、そんなもの些細な問題。乗るしかない、このソーメンウェーブに。是非箸を使わず川辺でせせらぎとともにアウトドアライフ満開なイカソーメンを啜り上げる「流れイカ」および目を瞑って顔を上げたままパートナーがそっと鼻に流し込んでくるイカを啜り下ろす「無明イカ流れ」も体得してほしい。

・鈴城芹の『看板娘はさしおさえ(1〜3)』読んだー。

 質屋の日常を淡々ほのぼのと描く4コママンガ。小学一年生のヒロインは日給50円のお小遣いを稼ぐために家業の手伝いをしているのですが、名前が早潮小絵――さしお、さえ。胸に手作りの名札を付けており、しかもそれがよりによって赤地に白で「さしおさえ」なのだから、店頭で掃除をしている彼女が「抵当に入れられ強制労働させられている幼女」の如き風情を醸し出す。無論そういうネタなのであって人身売買の事実はありません。「小絵、あなた実は赤ん坊の時に質草にされて、そのまま質流れになった子なのよ……」と驚くべき出生の秘密が明らかになったりもしません。代わりに行李に憑いた幽霊少女が出てきますが。あれ? その行李を売り買いすれば間接的な人身取引ってことになるかしら?

 確かな鑑定眼は持っているけれど商売が下手で家族から溜息をつかれている父親、共働きで会社勤めをしているはずなのに何故かいつも家にいる母親、齢七歳にして既にシビアな金銭感覚を有し帳簿を見る能力もある小絵、江戸時代に生まれて死んだ身ながら異様に変形合体ロボが好きな幽霊少女・十世と、レギュラー陣は一通りキャラが立ってます。進行に合わせて小絵の年上の友達や十世の姉(当然幽霊)も出てくる。登場人物が個性的かどうかで言えば、申し分ありません。ただ、ネタそのものはあまり破壊力がなく、全体的におとなしい雰囲気。「ヒロインの名前が『さしおさえ』」、「祖母が熊殺し」、「三十路にしてエロスが止まらない母(趣味はコスプレ)」と、要素要素で見ていけば「好き勝手やっているなぁ!」と思うのですけれど、良くも悪くも読者をおいてけぼりにしない堅実な構成で話を支えています。

 なので、一読するや即座に引き込まれるとか、強烈に魅せられて続きを買わずにいられなくなるとか、そうした派手なチャーム効果が目立つことはありません。でも、読めば読むほどに味が染みてくる作品ではあります。守銭奴じみている面こそあるものの、「お小遣いは労働の対価としてあるべき」という信条を抱き、一方で商売下手の父から「お金に拠らない価値観」を学んでまっすぐに成長していく小絵の姿が眩しい。健気の極みに立つような満面の笑顔を見るにつけ、心が軽くなりまする。

 充実して笑う眼鏡幼女、血の繋がりも何もない、幽霊の「お姉ちゃん」。ロリ属性がなくともふたりのささやかでいて強い絆を目にすれば温かいものを覚えることでしょう。地味にオススメ。本編は普通にオチをつけて、タイトルに小ネタや時事ネタを絡ませるセンスもグッドだ。3巻では原田たけひとの特別寄稿でお雛様プレネールさんがお目にかかれます。

・拍手レス。

 佐藤賢一風に噴いたwwそのメンツならヨーロッパを制服出来ますwそれにしても特徴ある文体でなくてもそれっぽく書く連中は凄いです
 ああいうのって勘所を掴むセンスが重要なんでしょうね。

 「巨娘」ときいて、ジャンボジェットの燃料をすすりながら街を破壊する身長100m女子のニッチエロスジャンルに目覚めてくれたのかと思ったら、どうやら違うんですね。よくわからん間違いをした罪の償いに巨娘を買ってきます
 一応「街を破壊する」の部分は合ってます。基本は居酒屋経営なのにバトルシーンが結構あるし。

 くるくるファナティック。普通コレ、ヤンデレじゃなくてキチガイって言うでしょ、と最大限の賛辞を込めてみる今日この頃。スゲエ、ぜ。
 もはやキチデレっスか。しかし「くるくる」と「クルくる」が同じ日に出るとはなんたる奇遇。

 個人的にはGIGAZINE版がツボでしたw
 GIGAZINEはあんま見ないのでピンと来なかった……。


2008-09-25.

『Q.E.D』がドラマ化という報に素で驚いている焼津です、こんばんは。

 高田崇史の小説シリーズじゃなくて加藤元浩のマンガの方。ミスヲタからの評判も高く、映像化としてはむしろ遅すぎる気もするけれど、黒歴史にならない程度のクオリティを保ってくれたら言うことなしです。ちなみに、ミステリで「Q.E.D」という用語を普及させた作家はもちろんエラリイ・クイーン……なのに、クイーンの本は2、3冊しか読んでいないことにふと気づいた。そもそも黄金期(主に1920〜30年代を指す)の古典なんて50冊も読んでいるかどうか。ちょうど新本格が隆盛を極めていた頃にミステリ方面へ入ったこともあり、周りから散々「古典を読め古典を読め」と呪文の如く言い募られて本自体はかなり買い漁っている(でも指図に従うのが業腹であんまり手をつけてなかった)ので、いずれ古典探訪もキチンとやらなきゃな。

ハルヒの原作者が別のやつだったら「GF団」経由)

「この中に傭兵隊長(シェフ)、善人(ボノム)、超戦士王(ヴェルチンジェトリクス)、完徳者(ペルフェクティ)がいたら」
 あたしのところに来なさい。などと、小気味良く声を響かせながら、意気揚々と言い切った。ああ、そうか。そうなのか、と俺は思った。呆れるを通り越して感心した。すごい女だ。もはや、普通ではない。もはや、億劫がってなどいられない。真後ろなどという、位置関係はすでに問題でなかった。
 振り向くと、背後の席に女がいた。そこに立っているからには、涼宮ハルヒに他ならない。なるほど、クラス全員の視線を傲然と受け止める顔に意志の強そうな大きく黒い目がある。その目を、異常に長いまつげが縁取っている。長く真っ直ぐな黒い髪にカチューシャをつけ、淡桃色の唇を硬く引き結んでいる。つまるところ、えらい美人なのだ。後々語り草となる言葉を、涼やかな声で堂々と告げるに足る女子なのだ。
「なんとなれば、ただの人間など興味はない」

 佐藤賢一風。やってみたけど本当にムヅいですね。文体が特徴的な馳星周なら「ただの人間――興味はない」みたいに「――」と体言止めを地の文で駆使し、センテンスを短めにした上で「とち狂ってる」を鏤めれば通じるから比較的模倣しやすい。最近の冲方丁も、クランチ文体だから「+=/」と記号を多用すれば表現しやすいか。どちらも大元はエルロイ。スレにある中では町田康が似ていて面白かった。佐藤友哉も巧い。

・マツダの『電子遊戯黙示録』読んだー。

 コンシューマーのゲームハード及びゲームソフトを題材に採ったショートコミック集。ある日ブラウン管の向こうからやってきた悪魔(クソゲー大好き)と天使(良作ゲー志向)のふたりに居候されるハメとなった少年が主人公ですが、これといってストーリー性がなく、毎回ネタや趣向が変わります。如何にも「ゲーム雑誌に連載されていた掌篇マンガ」って感じですね、まぁ実際にそうなんですけれど。この手の作品と言えば『進め!聖学電脳研究部』が容易に連想されるものの、さすがにあそこまで野放図ではないです。とはいえ、途中で「ギャルゲー魔界からやって来たギャルゲー魔界人」が登場したり、主人公のママンが「案外まだ出るものねえ…」と呟きながら母乳を飲ませたりと、そこそこフリーダムではある。「ギャルゲー魔界人」については試し読みページの7〜9話で確認可能です。個人的には8話の「ンな馬鹿みてェに短ェスカート穿いてて見えねえように転ぶ方が難しいっつうんだよ!!」が秀逸だと思う。

 これといってストーリー性がない分、小ネタが命という塩梅の作品になっており、ゲーム好きならクスッと微笑むであろう要素は数々仕込まれております。昔のコロコロやボンボンにあった「ゲームソフトのコミカライズではなく、ゲームそのものを題材にしたマンガ」のパロディ『ゲームエージェント光』(PS2を買い占めて核弾頭の制御装置に使おうとしている悪の帝王に、国連から派遣された天才ゲームプレーヤーの少年たちが挑む。基本はゲーム対決なくせして負けると血を吐いたり、対戦中にパイロキネンシスで焼き殺されそうになったりなどやりたい放題)とか、クソゲーに関するアトラクションを集めたテーマパーク「クソゲーパラダイスランド」(デス様やスペランカーはもちろんのこと、マインドシーカーやプラネットジョーカーまで)とか。ムチャクチャ濃いってノリじゃなくて、むしろネタ選びの基準としてはマイナーメジャー路線と言いますか、現在30歳前後で小学生の頃からゲームやっていた世代なら「あーあー、分かる分かる」と頷けるレベルに留まっています。マニアというほどではないにせよ、ゲーム自体は長くやっている……ってな層がターゲットでしょうか。マンガとしてもキレのいいテンポで進行し、ダルさを覚えることなく最後まで読み続けることができました。

 あんまりゲームとは関係ないネタや展開もあって、全体の雰囲気としてはユルめ。真性のゲームオタクなら「ヌルすぎる」と不平を漏らすかもしれませんが、オタクと名乗る自信がないゲーム好きにはこれぐらいがちょうどいい。少なくとも、聖学ほど「ちょっと付いていけねぇ」と感じるディープな部分はなかったです。オススメは最終話「切なさの距離」。「切なさ」という言葉だけでどんなネタか読めてしまうアナタは是非読むといい。

・そして『されど罪人は竜と踊る3』も読み終わった。

 待望の完全新規ストーリー丸ごと書き下ろし、しかも前編なのに600ページという超ボリューム。分厚い本スキーの一人として涎を垂らさんばかりに慶びましたが、今回は話が見えてくるまでが長く、序盤については少々退屈でした。今回の主な敵となる「古き巨人(エノルム)」が登場するまで100ページ以上掛かりますし。本格的に盛り上がるのもそれ以降です。ただ、「古き巨人」は異貌のものども――平たく言えばRPGのモンスターみたいなもの――に属する連中でも「長命竜(アルター)」や「大禍つ式(アイオーン)」と並ぶ強大さを誇るだけに、舞台に上がってからの暴れぶりは凄いというか、もう戦いの次元が違うレベルになってきている気がします。血肉が弾け飛び攻守が目まぐるしく入れ替わる戦闘シーンの激しさは読み手のテンションを容易く狂熱まみれのゾーンへ叩き込んでくれる。更に、散々苦戦して倒したかと思えば「○○がやられたか……」「所詮あやつは我らの中で一番の小者よ……」「ククク……人間どもめ、今はせいぜい浮かれるがいい……」「我らの計画が動き出せば人間どもなど塵芥に過ぎぬ……」「すぐに消し去ってくれるわ……」みたいなテラバイト級のインフレ展開が来るんだから徒労感と絶望感が底なし。剣戟と咒式戦の裏で政治的な駆け引きが繰り広げられ、怪しげな策謀が蠢動する国家レベルのスケールにも酩酊させられます。下巻は上巻よりも厚くなるという話ですが、そりゃそうだ、こんだけ風呂敷を広げまくったら倍越す分量がないと収まらない。

 と、そんな具合でたっぷり楽しませてもらったわけですが……ニート野郎のカスペルは何度か顔を出す割にまったく本筋に絡んで来ないので、この巻に関しては登場する意義が毛ほども見出せぬ。いったいあいつにはどんな役割が振られるのやら。他にもいろいろと伏線らしき要素が散見され、後編たる4巻が発売する頃までどれだけ覚えていられるだろうか心配です。というか、本当にここからスニーカー文庫でやった方のエピソードに繋げられるのかな? それとも繋げずにまったく新しい航路へ向けて舵を切るつもりなのか。

・拍手レス。

 カルタグラとか、ハハハ……。思い出したくもねえクソでした。あれを推理小説が好きな人におすすめー、とか言っているやつをぶん殴りたい。
 CGや雰囲気は良かったけれど、主人公の存在感が希薄すぎて……。


2008-09-22.

・表紙に釣られて買った『彼女は戦争妖精』がなかなかの人外ロリ小説につき、存分に舌鼓を打った焼津です、こんばんは。

「判んない……でも、もしイオリが死にそうになったら何度もちゅーしろって、クスコがゆってたから――」
 そういいながら、クリスは何度も伊織にキスを繰り返した。

 具体的にはこんなノリ。眼鏡を掛けたぶっきらぼう少年がゆるふわパツキン幼女をお風呂に入れたり一緒のベッドでくっついて寝たりと、迷いのないロリ描写尽くしです。まぁ主人公本人にソッチ属性はありませんが……ストーリーは至ってありがちで、平穏な日常を送っていた主人公が「戦争妖精」と関わったせいで人外異能バトルロイヤルに巻き込まれていく、ってな代物。作者が既に何十冊もライトノベルを手掛けているベテランなので文章が読みやすく展開にもブレがない反面、どうも全体的に「お約束」で流しすぎと申しますか、「この作品ならでは」といった新鮮味や迫力には欠けるきらいがあります。

 けどもヒロインであるクリスタベルの幼女幼女しい言動の数々に触れるにつれ、そんなことはどーでもよくなってくる。甘えておなかにグリグリと頭を押しつける金髪ロリータ、腹に直接響いてくる蕩け声――疼く、臍のあたりがむずむずと。膝によじのぼろうとする光景やら「おなかすいたー」と訴える声やらを想像するにつけ、胸がスキトキメキトキス。結局、魂は「かわいい=正義」「人外ロリ=超サイコー」の呪縛から逃れられないようです。話の続きはさほど気にならないのに、クリス目当てで2巻を購入する未来の自分がありありと見える。逃れえぬか、一度踏み入れた人外ロリ魔境からは……ちなみにイラスト、カラーは素晴らしいがモノクロはもうひとつかなー。

おや、Littlewitchのトップ絵が……

 恒例のカウントダウンにつき明日はまた違う絵柄になっているでしょうが、一瞬別のサイトに来たかと思いました。なるほど、タイトルの『ピリオド』にはこんな意味があったのか。参加ライターの一人が『カルタグラ』のシナリオを書いた経緯があるだけに不思議と納得してしまいますけど、無論ただのネタ。本編は至って甘々しいそうなので、変な期待を寄せれば脱魂清浄されること請け合いです。

・霧恵マサノブの“海”三部作読んだー。

「…堀畑君とやら」
「誰とやろうがなにをしようが …どこまでいっても」
「SEXはSEXなんですよ」

 18禁の表示も眩い成年コミック群です。『海神』『海贄』『海宴』の3冊から成り、連作形式ながら各エピソードに様々な伏線が仕込まれている。読めば読むほど話の繋がりが理解できて「ああ!」と膝を打ちたくなる、エロマンガにしては珍しいというか完っ璧異色な位置付けに佇むシリーズです。エロマンガは雑誌掲載が基本であり、「毎回必ずSEXシーンを入れなくてはならない」という制約がある以上、ハッキリと連続したストーリーを紡ぐことは難しいので、ほとんどは一話完結を旨としています。もちろん、長編のエロマンガも類例としてはいくつかある。平野耕太初の単行本である『コヨーテ』(続編の『エンジェルダスト』は未刊行)然り、アヘ顔のエロさが臨界点を突破している月野定規の『♭37℃』及び『♭38℃』然り、昨年ブレイクを果たしたゴージャス宝田の『キャノン先生トばしすぎ』然り、完結するまで3冊に跨って展開した『初犬』のアレ然り……エロマンガに詳しくないせいで候補があまり思い浮かびませんが、探せばまだまだいくらでもあるでしょう。

 ただ、「エロマンガでストーリーものをやる」となるとどうしてもネックになってくるのが先述した「毎回必ずSEXシーンを入れなくてはならない」という制約。「ストーリーに凝ればSEXがおざなり、SEXに凝ればストーリーがなおざり」ってジレンマが自然と生じ、あらゆる長編エロマンガに不安な影として付きまといます。両立させようとして虻蜂取らずになったりしたら目も当てられない。結局、収拾がつかなくて有耶無耶なエンドを迎えてしまうこともしばしば。斯様にしてエロマンガ界は長編作品が根付きにくい土壌となっています。

 が、時として「エロマンガに長編は向かない」というセオリーを突破してしまう怪物が出現するものです。怪物……そう、その名も貴きレヴィアたん! この三部作は「Leviathan→レヴィアたん」なる、思いついてもまずやらない発想でズンズン突き進み、すべてのシリアスとギャグを一つに混ざり合わせる「それは海からやってきた」系ファンタジーなのであります。最初の『海神』時点ではまだ繋がりが甘くて「普通のエロマンガだなー」って少し舐めてかかった感想を抱いたものですけれど、第2部に当たる『海贄』で早くも数々の伏線が励起し、諸要素がガッチリと噛み合い始める。ラストに鎮座まします『海宴』を一読すれば誰しも「霧恵エレイソン!(霧恵よ憐れみ給え)」と叫び出すこと請け合い。複雑に絡み合うストーリーの妙もさることながら、激しく貪欲に求め合う性交の迫力も凄まじく、それはまるで終わりなき快楽、果てしなき欲望を掘り下げていく潜水行のよう。男は女に向かって深く静かに穿孔し、女は男の向こうへ熱く滑らかに先行する。人知を超えた存在「海神」を描く物語であるのと同時に、どこまでも卑近で人知に寄り添ったネバーエンディングSEXストーリーでもあるのだなぁ……と読了後しばし呆けました。

 濡れ場が多いせいで3冊掛けた割にはストーリー密度が少々薄いようにも感じられますが、あえて細部を端折ることで読者の想像力を刺激し喚起する部分もあり、読み終わった後も反芻と考察を重ねるごとに面白くなってくる。そしてストーリー云々とは別に、随所で発揮される脱力気味だってのに鋭くイカれてネジれたセンスも見所となっております。さすがamazonで何気なく「平野耕太」と検索したときに引っ掛かったマンガ。「レ研」(レイプ研究会という大学サークルを描いたキワモノ。読んだことはないが、ぐぐったら「古代レイプ文明」とか出てきて噎せた)みたいな「轟姦部」もあって、無軌道の限りを尽くしています。いや、そもそも海神たるヒロインの名前が「レヴィアたん」で、見た目は幼女、格好が旧スク水という――作者の趣味迸りすぎ。これで最後には感動が待ち受けているんだから、エロマンガはホント見かけによらない。まぁその感動もカバー裏のオマケマンガで素晴らしく台無しになりますが。

 神と人が織り成す肉体の連環を悠々と力強く描き抜いた、雄渾なる佳編。amazonで偶然目にするまでまったく存在を知らなかった作品だけに「ひょっとしてアマ公に釣られているのでは……」という不安はあったものの、いざ衝動買いして読んでみればなかなかの収穫でした。検索してみればそんなにマイナーなようでもなく、結構人気があるんですね。ちなみに、個人的な絵柄の好みで言えば……実はどっちかっつーと「合わない」方だったり。でも、オマケマンガの絵柄にはとってもLOVE。うーん、作者が力を入れて描いている本編よりも力を抜いて描いている臭いオマケマンガの方が好みに「合う」んだから皮肉なものだ。

・修理に出していたPCが無事ご帰還あそばれました。ああ、麗しき縦置きのかんばせ……諸設定を済ませたそいつで今このテキストを弄くってますが、やっぱり慣れた機だと落ち着く喃。

・拍手レス。

 いつも通りでつい違和感なく読んでしまいましたが、よくよく考えるとこんなにボキャブラリーに満ちたエロマンガのレビューは始めて見た気がします。…あと、lainに萌える人はかなりガチでロリコンだと思う。レイン可愛いよ玲音
 lainはカウボーイビバップと並び、高校時代に見たアニメの中で一際印象的でした。最初は安倍吉俊の絵を村田蓮爾と混同していましたけど……。

 それ散る完全版には興味ないですかね?
 どうにも二学期臭が濃いので様子見に徹します。

 今まで焼津さんのことロリコンだと思っていたけどねーちんへの反応見てたらロリコンでもあるの間違いだと気付いたよ
 入江紗綾よりも「みそじのさあやはいきおくれ」に百倍激しく興奮する、死角ゼロのとしまえん属性です。


2008-09-19.

・通販で華麗に入手した犬江さんの新刊『とある衣装と女教皇様』を優雅に読み終えた焼津です、こんばんは。現在のところ、通販は虎もメロンも品切れ中みたいですね……。

 前評判が高かっただけのことはあり、ねーちんの愛と汁と肉で満ち溢れた濃厚極まりない一冊に仕上がっています。が、上条さんの暴走により、事態は我慢大会の様相を見せ始める。ええ、「そげぶ」のシーンでどうしても「だ…駄目だ、まだ笑うな…こらえるんだ…し…しかし…」と顔が痙攣してなかなかエロスに集中できませんでした。いきなりK点越えのジャンプかまされた気分。一方で「だよっ」が致死的に可愛くて悶えた次第です。一周目はただ笑うがまま笑い、二周目以降でじっくり味わうのが乙女の嗜み。「誰が乙女か」というツッコミはツキの声でお願いします。

 ただ、インデックスと五和の出番は最初にちょこっとある程度で、もう少し絡んでほしかった(卑猥な意味でなく)気もしますが、神裂本なんですから贅沢言っても仕方がないか。まえがきにイラストがあっただけでも満足。ああそれにつけても神裂肉は見れば見るほどに犯罪級のムッチリーニ感ぢゃ喃。

・御免なさいの『おませで御免!』読んだー。

 妄念が すごい。この一言に尽きます。エロマンガ耐性なき者が迂闊に読めばトラウマすら負いかねない、ある種凄絶とも呼べる迫力に満ち溢れた処女単行本です。2006年から2008年の3年間に発表された作品+幕間の描き下ろし、計11編(描き下ろしは全5話だけど、一つ一つが短いのでまとめて1編とした)を収録している。うち3編は一貫したストーリー性があり、前編・中編・後編それぞれで相手役の幼女が変わる構成となっています。――そう、幼女。表紙イラストを見れば丸分かりですが、この本でヒロインを演じるのは「こども」の女の子しかいません。全体的なカラーとしては和姦が基調となっているため、陵辱色はそんなにないけれど半端なロリ趣味で手を伸ばせば弾き飛ばされること間違いなし。ペ道を極めし者だけが心の反撥を一切覚えずに端然と座して目を通すことができる。これ一冊さえあれば真性ロリコニア帝国を勃興させることなど、きっと幼女のパンツを下ろすことよりも簡単でしょう。

 とにかく作者が冷静に狂っています。シリアルキラーの分類に倣って表現すれば「秩序型」に属する作風。冒頭を飾る「いもうとロリボ」の一ページ目からしてキマってる。両頬を手で押さえアヒル座りした前髪パッツン幼女(表紙イラストの左側の子)が「大スキなおにーちゃんになら犯されてもいいと思ってます」とかキてるセリフを吐くんですよ、それもハートマーク付きで。表情は困り眉気味の赤らんだ笑顔。つづくカラーの2ページで妹型ロボット、正式名「妹ロリボ」の“実戦対応”した機能紹介を行い、滝涙と鼻水を垂れ流して幼女が「せっくす最高ぉぉぉ!」と叫んだ次のページ。主人公は至ってクールに「よし帰れ」と言い置き、玄関の扉をパタン……と閉めるのです。もちろん、その後はあれやこれやで涎と涙に縁取られた壮絶なアヘ顔が乱舞する怒涛のエロシーンに突入するわけですが、出だしにおける「間」の取り方一つを見ても作者の計算高さが窺い知れます。それでいてエロシーンに用いられる描き文字は脅迫状じみた刺々しさを有しており、初見では確実にビビる。「本物」とは聞いてましたけど、こりゃ予想以上にホンモノですよ。ペドなるもの・ロリなるものへの異常な執着心をヒシヒシと感じます。だいにっほんで刊行されたら「近代文学の至高」扱いされること間違いなし。

 正直、ここ数年はだいぶ幼女に飽きてきてもっぱら巨乳崇拝に傾いていた当方なんですが、本書が放つ影取(カゲトリ)の如き握力に足を掴まれ、易々と稚けなき魔の淵へ引きずりこまれました。白鳥の曳く小舟に乗って現れた騎士ローエングリンも略せば「ロリ」になる。それは本書とまったく関係のない与太であるけれど、「今 先生なぁ無性にオシッコ的なモノ出したいんだけど せっかく桜井がキレイにした便器汚したくないんだよぉ ピカピカだもんなぁ…」「そういうワケだからお前が代わりに便器になりなさい」みたいなネームを平然と切れる感性の神々しさにはさしものローエングリンも跪くでしょう。きっと小舟に引き返し、そのまま黙って退場するはず。もじもじする妹に向かって「どうした? オシッコか? 漏らしたら犯すぞ?」なんて言葉を掛ける相手と決闘したって勝ち目はありません。そういったストロングスタイルに畏怖する一方で、不出来なロリボをゴミ捨て場に廃棄するシーンだとか、時折挟まれる静寂の威力にも打ちのめされる。二重三重の意味で脱帽することしきりなエロマンガでした。あと作者のサイトに言ったら『serial experiments lain』の4コマがあってちょっと嬉しくなった。

・ネット書店で予約していた『されど罪人は竜と踊る』の最新刊(3巻)が届いた。ガガガの本は他に2冊注文していましたが……イラストやタイトルの表記を確認するまでもなく、どれがされ竜かほんの一瞬で分かった。何せ、異様に分厚い文庫本が素知らぬ顔で一冊だけ堂々と紛れ込んでいやがりましたから。

 確認したら600ページ。わお。『境界線上のホライゾンT(上)』(約550ページ)の驚きも未だ覚めやらぬというのに、やってくれる。内容も今回は続きもので前後編の「前編」に当たり、もう一つの「後編」に当たる4巻は来月発売とのことで、しかも次は更に分厚くなるとかいう話です。奇しくも境ホラと張り合う形。新され竜4巻と境ホラ1の下巻、いったいどっちがよりぶあっつくなるのか。想像するだに嬉しさが込み上げ、舞い踊りたい気分になってきます。そんなクソ戯けた気分を柔靭に往なしつつ、さあ、読むぞっと。

・拍手レス。

 川上さんといえばついこの前電撃のWEBラジオに出てましたね。ホラの設定も大量にw
 スレで盛り上がっていて見に行ったらニコニコで涙目。

 「ソリッドファイター」の言葉が出た瞬間、光の速さでリンクをクリックしました。泣いた。信じられない。ショックで冗談抜きに呆然とした。古橋、愛してる。
 「なん……だと……?」はネタでも何でもなく本気で口を衝いて出ました。古橋に栄光あれ。

 川上稔の新シリーズっ…焼津さん、本棚の空きは十分か?電撃文庫板『戦争と平和』というか山岡徳川家康というか、本棚がまた埋め尽くされまするな
 川上稔の本だけで軽く一段埋まりますが、幸い蔵書の整理中ですから空きスペースは潤沢。

 影女…元ネタ的には「私があの人を忘れさせてあげます」ときそうな感じですね。
 ってか影女という妖怪が存在すること自体知らなかった……。


2008-09-16.

『とっぱら』の体験版をプレーするや否や、メインヒロインの美影が放つ芬々たる嫁フラグランスに魅惑され、大脳辺縁系と視床下部を壊滅状態においやられた焼津です、こんばんは。

 と言いましてもプレーしたのは10日ほど前で、その翌日くらいに一旦感想を書いたのですが、翌々日のHDD奈落堕ちに巻き込まれて消失しちゃったんですよね。要約すると「美影が好きすぎて他のキャラを攻略する気が湧かないわ……」って内容でした。この『とっぱら』、両親を喪って無気力状態に陥っていた主人公(先天性の見鬼)が、独身で一人暮らしを送っている男性のもとに現れる妖怪「影女」と出会って同じ屋根の下で暮らすことに……という、ストーリー自体はごくありふれた人外妻綺譚であります。他にもいろいろと妖怪ヒロインが登場するものの、当方の目は美影さんを視界に収めることでいっぱいいっぱい。おっぱいおっぱい。と、その艶めかしくて悩ましいスタイルもさることながら、どんよりと腰まで伸びたウゼェくらい長い髪が……心底たまりません。派手さがなく控え目というか、どことなく陰気というか、あんまりメインヒロインっぽくない容姿なんですよね、美影。性格的にも「尽くす女」タイプで、既存のキャラを引き合いに出して言うなら「雪さん」こと琴乃宮雪のポジションかな。外見および配置では、当方のツボを突きまくっている。

 が、話の設定がひたすら王道的で捻りがなかったため、「はいはいJud.Jud.、またぞろ押しかけ女房で来ましたか」と気のない素振りで冒頭をプレーした次第であります。最初は本当に「単なる押しかけ人外妻」だと思っていました。そしたら、なに、あれ。「え…うそ……今…美影の体からものすごいヨメオーラが!」としか形容しようがない温もりと労りの嵐(中心の妻圧は945wPa=ワイフパスカル)に吹き曝されて全面降伏しちゃいましたよ? 甲斐甲斐しく世話を焼く程度はほんの序の口、ヒジキは食べたくない、と断固言い張る主人公に「好き嫌いはいけません」とやんわり叱り、且つ手練手管を駆使してヒジキを美味しく食べさせようとするなど、「賢い不服従」機能を搭載したアデプトクラス。もう「和む」や「癒される」の域を超えて泣いた。主人公への羨望と嫉妬が入り混じり、傍から見れば「顔真っ赤にして涙目でプレーwww」と嘲られても仕方ない状態でぷるぷる震えていました。視点一つの違いで下手な悲劇ゲーよりも鬱と化す。嫁こそは最愁兵器なり。

 落ち込みながらも買わずにはいられないのがヲタの定めであり、ひとまず購入確定。発売される頃にはメインPCも直っていることでしょう、たぶん。『とっぱら』、ドタバタしすぎない賑やか妖怪コメディといった風情で、とりあえずオススメです。

『ソリッドファイター』の完全版、イベントで先行発売(10月5日)

 なん……だと……?

 2巻以降に相当する原稿は既に書き上がっているが発表する目処が立たない、というのは以前聞きましたけど、遂に目処が立ったのか。全体が700ページで未発表分が500ページですから、文庫版の2.5倍にもなる追加原稿。ソリファイは対戦格闘ゲームにハマった少年たちが、一切非日常に突入することなくひらすら日常の中で格ゲーに淫する青春を描いた話で、ゲーム小説(ゲームそのものを題材にした小説)としては傑作の一つに数え上げてもいい内容です。『連射王』『スラムオンライン』『ブレイク−エイジ』あたりが好きな人なら、読んでハズレってことはまずないでしょう。

 「イベント先行発売」ではあるものの、やはり一般発売の目処は立たないのか、「基本的にグッズの扱い」とのことで会場以外では通販くらいしか入手する手段がなさそうな気配。おとなしく通販の開始を待つとします。

・川上稔の『境界線上のホライゾンT(上)』読了。

 前作『連射王』から数えても1年半、京極本並みの弁当箱と畏怖された『終わりのクロニクル』最終巻を起点として計上すれば3年近いブランクを経て刊行された、著者の最新シリーズ第1巻であります。「1巻の上巻」という文庫版『指輪物語』の如き表記をしながらも優に500ページを超える異常なボリュームに「相変わらずだなぁ!」と喜悦することしきり。来月に予定されている下巻は本書よりも高価な値段設定をされており、500ページどころじゃない分量になるだろうことは容易に察せられる。アレですよ、下手すると2の上巻以降はずっと定価1000円クラスの鬼厚文庫が続くかもしれんのですよ。そうなったらダメな大人たちは確実に狂喜乱舞しますが、お小遣いの限られた中高生には厳しい戦いとなること必至。

 さて、初手の第1話から上下併せて1000ページを軽く超えることが決定事項となったこのシリーズ、ファンならいちいち事細かに解説する必要もありませんが、終わクロ完結からだいぶ経ったことだし改めておさらいしましょう。まず、川上稔の作品には一貫した世界観があり、時系列的に「FORTH」「AHEAD」「EDGE」「GENESIS」「OBSTACLE」「CITY」という6つの段階に分かれています。それぞれを詳しく説明すると長くなってしまいますし、あれこれボロが出て当方が川上ワールドにさほど通暁していないことがバレそうなので割愛しますが、終わクロのステージである「AHEAD」から境ホラの「GENESIS」に至るまでの流れだけは押さえておきます。AHEADはその名の通り「前に進む」ことを重視した世界であり、異世界の技術や概念を取り入れて消化する近未来ファンタジーっぽいノリ。ここから人類はどんどん前へ前へと進み、次のステージである「EDGE」に移って宇宙進出という大業まで果たすのですけれど、銀英伝チックな宇宙戦争でも起こったのか、疲弊し切って星々の大海を諦め、再び地上に降りてくる。そこからがGENESISとなります。

 企画書がA4サイズで780ページにも及ぶという膨大な代物だけあって、まだまだ全容は見えてこないものの、GENESISの要は「もう一度宇宙(そら)に昇るという悲願」を達成させること。そのために、かつて手にした技術の大半を失った人々は「歴史を再現することで、もっぺん最初からやり直す」という荒業めいた挙に出る。んな無茶な、とツッコミたいところだけどつい先日にHDDが吹っ飛んでパソコンの設定を最初からやり直した当方としては若干の共感を覚えてしまう罠。歴史をなぞり、「ブルータス、またお前か!」なことを繰り返し、神州はまたもや群雄割拠の戦国時代に突入する。それもそんじょそこらの戦国時代じゃない、上杉家が露西亜に支配された結果「帝釈天かつ雷帝な頭領」が現れるなどという相当に無茶苦茶かました戦国時代です。戦国マニアが読んだら頭がフットーしちゃうこと請け合いです。AHEADの後なので当然機竜や武神、自動人形は出てくるし、どことなく既視感を誘う「エロゲーを買いに走る忍者」すら現れる始末。ってか、技術の大半を失った割にエロゲー製作のノウハウはキッチリ残ってるんだな……煩悩マジ強ぇ。

 10や20では利かぬ圧倒的な数の登場人物がドッと押し寄せ、これでもかとばかりに説明ゼリフで以って延々と設定や背景を語り続ける構成もあって、序盤は結構読みにくかった。眠くなってきたところでネジが外れた連中の天晴イカレ漫才をブチ込み、速やかに叩き起こしてくれたから寝落ちせずに済みましたが……こりゃ前半がネックになるかもです。今回、終わクロ以上に群像劇の様相が濃く、あっちこっちに視点が切り替わるため、話の動きがかなり遅くなっています。何度もページをバックして「これなんだったっけ?」と用語集を見返し、「こいつ誰だっけ?」とキャラを確認するもんだから、亀の歩みにも似た読書。しかし溜めに溜めた分、後半は一気に大解放。気がつけばクライマックスのさなかに立たされています。挿絵どころか正式名称さえない一般兵士の戦闘シーンを異様にアツく書き上げるあたり、ああ、いかにも川上稔。鹿角やダっちゃんといった準メイン級の面々も主人公たちのお株を奪う勢いで獅子奮迅しちゃってる。少年少女を差し置いて渋いオヤジが見せ場を取ってしまうのは電撃文庫の対象読者層を考えれば間違いなんだが、それはもう全力で誤ってラストは爺の独演ランドを開園して締め括るもんだからいっそ清々しい。ホント作者は爺好きだなぁ。

 500ページを超える本を用意されて、「おいおいこれだけかよ、続き読ませてくれよ」と愚痴りたくなる心境に陥るとは、よもや思わなかった。ひとえにエンジンが掛かって本格始動するまでが長く、従って盛り上がり出してからが短いせいではないかと考えられます。「よっしゃ、あったまってきた」という頃にはもう400ページくらい経っている。賭博でアツくなって「ははは、やっとツキが回ってきた」と笑いながら財布を覗いたら金子が尽きかけていて愕然、みたいな。なにはともあれ、下巻の発売が来月で良かった、来年とか言われたら泣き死ぬところだった。しかし始まって早々絶望的な危機に直面したけど、無能を絵に描いたような主人公がどうやって切り抜けるんだろう。『のぼうの城』みたいに周りが頑張るのか? そもそも本当に切り抜けられるのか? まさかいきなりヒロインがカレンデバイス状態なんて展開になることはあるまいよな……あ、それからカバー裏にはちょっとしたオマケが仕込まれていますので確認をお忘れなく。

・拍手レス。

 千石撫子の消去法主義が、恋敵消去に移らないか心配且つ楽しみ。ありゃりゃ木さんはもう八八寺しか安心出来る相手がいないっ・・・
 ハチクロさんは激アツ昇天予告に入りかけている気がして、そっちがちょい心配。

 今後の展開次第では正純も化けそうですな。
 下巻の表紙で早くも化けそうに。ああ――「清純」の逆読みか。

 BOXは絶対買わねーと決めてるんですが。焼津さんがそこまでお勧めしてるとムガガガガガ
 あれ、箱が邪魔で本棚にキッチリ収まらない(撓みがあるせいで膨らんでしまう)のが嫌なんですよねー。

 “あの”焼津さんが、貴重な人外ロリ要員である忍にノータッチとは…。
 素で忘れていました。人外ロリと言えば今『彼女は戦争妖精』読んでます。

 今のルル山陣営は色んな意味で素敵すぎると思う。
 セシルさんがルルのそばで普通にオペレーターやってたり、ニーナが逆転の鍵を握っていたり、前期からは到底考えられない光景だわ。


2008-09-12.

・マンガを読み終わった後に小説本を読み出すと、直前まで目にしていた絵柄で映像が再生される焼津です、こんばんは。『ナポレオン 獅子の時代』を通読してから即座にドタバタ学園ラブコメへ手を伸ばし、往生したこともあります。ドアを開けたら半裸のヒロインとバッタリ遭遇……なんていう、本来なら読者サービスであるべきシーンが、ともすればオージュローの姿で浮かぶんですよ。いらない、そんな半裸はいらない。

 これを逆手にとって「○○の絵柄で楽しみたい」という作品を見つけた時、事前に○○のマンガを読んで然る後おもむろに取り掛かれば楽勝じゃん、って話なんですけれども……不思議と面倒臭いと申しますか、そういう場合って大抵両者の作風が似通っていたりして、「この傾向はもういいや」という気持ちになってしまう。ある本を読み終わると無性に違う路線の作品が堪能したくなり、濃い劇画マンガ→甘酸っぱい青春小説などという戯けたコンボを考えなしに組み、結果想起される絵柄のエラーに苦しむって寸法です。もっと頭の切り替えがうまくならなければ。

「ジンガイマキョウ」の同人誌『とある衣装と女教皇様』、とらのあな及びメロンブックスにて委託販売開始

 メロンブックスでは特設ページまで用意されているVIP待遇。まだ発売初日なので余裕はあると思いますが、欲しい人はお早めにどうぞ。当方? とっくの昔に注文済じゃよ。そりゃ己の分も確保せずにむざむざ紹介するなんてこと、しやしません。

Navelの『俺たちに翼はない』、発売延期(11/28→01/30)

 思わず「翼がないと言いつつ翼生やしまくりのトップ絵はなんなんだよ!」と筋違いなイチャモンで怒鳴り込みたくなるほど深い衝撃のあまり精神が古老と化し、「かつてNavelは俺翼の発売日をカウントダウンで予告しおった……7ヶ月にも及ぶ、それはそれは壮大なカウントダウンじゃった……じゃが、気づけばカウントダウンの内容はすげ替えられ、発売されたのはPreludeなるもの……本編の発売日は5ヶ月も引き延ばされ、そして今もまた日延べされようとしておる……カウントダウンは、もはや跡形もなくなったのぅ……」ってな具合に経緯を語りたくなる始末。いやもう大概にしてくれ。お願ぇしますだ。

・西尾維新の『偽物語(上)』読了。

 わざと間違った名前で呼ぶことが非礼どころかもはや通例となっている主人公、ありゃりゃぎさんこと阿良々木暦の活躍するシリーズ4冊目でございます。1、2冊目が『化物語(上・下)』、3冊目が『傷物語』という塩梅なんですけども、ストーリーは刊行順に進んでいるわけじゃなくて、『傷物語』は『化物語』以前の出来事を綴る、言わば過去ネタの話でした。おかげで『化物語』から登場するキャラの出番はもちろんナッシング、多くのファンが寂しい思いをした次第。そこに来て『偽物語』、今回は『化物語』以降の出来事を綴る、言わば後日談。待ちに待った、待望どころか渇望と呼ぶべき「直接の続編」なんです。戦場ヶ原ひたぎが、八九寺真宵が、神原駿河が、千石撫子が、羽川翼が、再びアララトさんと激しい漫才を繰り広げる――のみならず、各話エピローグでゲスト出演するに留まっていた実妹コンビ、阿良々木火憐と阿良々木月火、通称「ファイヤーシスターズ」へとスポットが当てられる豪華仕様。さっき誤変換で「業火使用」となりましたが、あながち間違いでもありません。

 さて、このシリーズのストーリーを掻い摘んで説明しますと……開始時点、つまり『傷物語』の冒頭では主人公はまだ普通の少年でした。どれくらい普通かと申せば、それはもう生パンチラに興奮して眠れぬ深夜こっそり家を抜け出し、チャリ漕いでエロ本買いに走るほどフトゥー。超フトゥーに性欲が滾っている青少年。このシリーズは下ネタやエロネタが割と無節操というか無制限状態で、変態境と化している趣があります。そっち方面が好物な人は是非読むといい。んで、このまま何ごとも起こらなければアラライさんがただエロい書籍で独りイタすだけの話で終わっていたでしょうが、無論そんなわけがない、彼は強大な「怪異」と遭遇して「傷物」になってしまうのです。以降、怪異と出遭いやすい体質になってしまった彼は、『化物語』で様々な怪異に取り憑かれた少女たちと巡り逢う。そしてすったもんだの末に「阿良々木ハーレム」を築き上げる。西尾小説の主人公とは思えないほどのお人好しなんで、知らず知らずに関わった女の子たちを引き寄せちゃうわけだ。『偽物語』は実妹たちがヒロインである以上、ハーレム人口が増えるはずはないんだけれど……あぶり木さんを舐めてもらっては困る、とばかりに作者の筆が好き勝手やらかしてくれます。とりあえず「近親相姦」というワードは最後の方に出てきましたよ。あべし木さん本人の口から。

 表記では「上」、つまり上巻となっていますが、これ一冊に第6話「かれんビー」が頭から尻まで完全収録されてますんで、エピソードとしては一応区切りが付いてます。要するに上巻で「でっかい方の妹」、下巻で「ちっちゃい方の妹」を扱うって構成。なにかと個性の強い面子が揃っている阿良々木ハーレムに、たかだが妹ばらが対抗できるのか……なんて不安は杞憂ですよ、杞憂。歳を省みず中三にもなって公道で逆立ち歩きする実戦担当の火憐、眉一つ動かさずに文化包丁を持ってくる参謀役の月火、ふたりとも名前に冠された「火」の字がまったく伊達じゃねぇ。一人いるだけでも方々に引火しそうな存在感――それが二倍というか二乗で「炎」になって燃え盛り、今にも爆発しそうな勢いを見せ付ける。アパラッギさんも負けてはおらず、終盤で存分に兄貴オーラを発散してくれるから心憎い。今回は彼の違った側面が見れて面白かったです。なにげにオキュロリンクタス(眼球舐め)嗜好まで明らかになったりしますが。男を上げた以上に人格を落としている気がしないでもない。

 でもやっぱり読んでいて非常に楽しくニマニマと頬が緩んで仕方ないのは『化物語』ヒロインズ、つまり阿良々木ハーレムの面々が登場するシーンだ。しょっぱなから○○○○をかますガハラさんを始め、みんなやりたい放題浮遊砲台、野放図に魅力を撒き散らして愉快に遊撃爆撃。笑いのクレーターを穿ちまくり、我々の理性を塹壕の底から叩き出してくれる。特に際立っているのが千石撫子。『化物語』では比較的出番が遅く、下巻まで登場する幕がなかったせいか、もっとも影の薄い子と相成っておりました。負けが込んでおりました。それが今回倍プッシュ。異様な畳み掛けで追い上げてきます。拙いながらも己なりの手練手管を尽くして篭絡せんとする情熱がヤバい。いささかアツすぎて怯む。主人公を部屋に招じ入れるや否や即座に鍵閉めるとか怖っ。退路塞いで出口なしの状況に追い込む気満々じゃないっスか。ようこそ殺し間ってか、センゴクだけに。彼女のエピソード「なでこスネイク」をよくよく振り返ってみれば、なるほど、こういう行為も頷ける気性であり、読者はもっと早く「撫子……恐ろしい子!」と悟るべきでありました。当方の目は節穴でした。他の人物から「真のラスボス」というお墨付きを得た以上、きっと下巻では「最終兵器撫子」っぷりを全開にしてくれるでしょう。つーか、マララギさんの恋人(本妻?)であるガハラさんとはまだ面識ないんですよね、ゴックさん。最愛の彼氏でも容赦しない文房具ソルジャーと天性のスネークイーター、ふたりが出会えばラブ紛争勃発は必定の理。そして隙に乗じた羽川さんあたりが漁夫の利を得る、と。

 焦点となる怪異自体はすこぶるショボくて腰砕けであり、本筋そのものが実は添え物に過ぎず、枝葉末節と思っていた部分が逆に眼目であったという奇怪な事態に陥っていますが、そのへんは既に『化物語』で通過した道。割り切って堪能するが吉です。なんだかんだで面白い。ページを繰り始めたが最後、あっという間に読み切ってしまった。個人的に講談社BOXは「蛇蠍の如き嫌うもの」だってのに、このシリーズは買わずにいられません。悔しい……でも下巻が待ち遠しい。発売は来年の3月だそうです。

 それにしても、「炎」という字を眺めていると、月火を肩車している火憐の姿が連想されてすごく微笑ましいわー。こう、腕を組んで余裕綽々・威風堂々の佇まいを示す姉。対するに、至って平静な顔して乗っている妹。手には文化包丁。和む。

・拍手レス。

 いやだ!俺…俺、焼津さんと離れたくない!(ひしっ
 PCから離れるのは嫌だ! と一時は禁断症状も出ました。今は割と安定。

 焼津さんがいなくなってしまうと、私の毎月の新刊物色に支障が〜。
 こっちはPC触れる時間が減ったおかげで積読の消化が捗る捗る。なんとなく読まないでいた木村紺の『巨娘』を暇に飽かして手に取ったところ、意外に面白くて夢中になったり。コマ割りが細かくて密度が濃く、一冊で二冊分くらいは楽しめるオトク仕様です。想いを寄せている男に他の女が近づくとメヂューサ化してスーパー嫉妬人モードへ入るサチさんに惚れ惚れ。

 鹿角をせんとくんに脳内変換してしまう自分は何か間違っている気分。PC復旧、お待ちしております。
 奈良は今すぐ鹿角(抱っこ機能付き)をマスコット化すべき。命名「抱っちゃん人形」。夜用は「抱っちゃんワイフ」。

 なんか、民主主義が始まってるらしい>ギアス
 スレの流れに噴いた。

 民主主義凄ぇwww
 「民主主義というやつはなにも、それをつくる人たち以上によいものではないのだよ」の一節を思い出しました。

 全く同じものを読んでてちょっとびっくり。偽物語、なんか今まで雰囲気が違って微妙に自虐的というか批判的だったような気がします。アニメ化のせいかな?
 『傷物語』で「アニメ化なんてしない」と書いたことに対するフォローも混ざっているのかも。


2008-09-09.

・なんか文字化けしているので慌てて再更新。FTPソフトが使えず、ファイルマネージャから直接弄ったせいでしょうか。

 インターネットがまったく……とは行かずとも、随時利用できる状態じゃなくなったせいか、昨日から皮肉なほど読書が捗ります。『偽物語(上)』『境界線上のホライゾンT(上)』、ふたつとも期待に違わぬ面白さでした。「倍プッシュだ……!」とばかりにスネークイーターぶりを見せ付ける千石撫子、口が悪くてちっとも素直じゃない自動人形・鹿角。それぞれがHDDクラッシュのショックを補って余りある。

 いっそこのままネットから離れてひたすら読書に耽ろうか……という誘惑に駆られています。家族とはいえ他人のパソコンはどうにも使いづらいですし。ともあれ、もうちょっと落ち着くまで更新は控える方針で。

・拍手レス。

 Omegaの視界、って同人ゲームは焼津さん的にはどんな感じですか?趣味が合う焼津さんの意見を参考にしたく
 そういう名前のソフトがあることは聞き及んでいますが、プレーしたことはないです。役に立たなくてすみません……。

 1.SF、ということですが…J・P・ホーガンの「星を継ぐもの」、とても面白いですよ。
 2.私もSF初心者なのですが、知人に薦められるまま読んでみて大満足でした。

 『星を継ぐもの』はミステリ読者からの評判もいいですねー。

 何故か今日サイト見たら物凄い文字化けになってますorz何か設定を変えたとか?
 自分で見てビックリしました。

 大多数は消えても問題のないデータのはずなのに何故か途方もなく悲しい、それがメインHDDクラッシュ・・・
 前回もそうでしたが、決まって食欲がなくなります。まさに「お前のしたことは無駄だったのだ」といわれた気分。

 お疲れ様です。HDDクラッシュは冗談抜きに血の気が引きますよね。私も数ヶ月前にやらかして、80Gほどエロ系と音楽が吹っ飛んでマジ凹みでした。
 プレー途中だったエロゲーのデータが消えたのが地味に痛い。インストし直せばいいけど、もっぺん最初からやるのは億劫。

 なんだか画面がすごく文字化けするのですが・・・
 うーん、これで直っているかしら……。


2008-09-08.

・パソコンが壊れてにっちもさっちも、な焼津です、こんばんは。

 いえ、実のところかなりヤバい状態です。ハードディスクが壊れたらしく、まともに起動すらしません。今も家族のPCを借りて更新している状況。修理に出そうと思いますが、直るまでどの程度掛かるかさっぱり見当がつきませんので、しばらく更新をお休みさせていただきます。HDDクラッシュはこれで二度目であり、前回に比べればまだショックは小さい方ながら、割と凹んでいる次第。もうこれでPC中毒な生活から脱せよ、という神のお告げなのかしら。

 ではしばしのお別れを……。


2008-09-06.

・今月は海外ミステリを中心に読み込もう……と決意したにも関わらず、気づけば「施川ユウキおもすれー」とマンガ方面に転んでいた焼津です、こんばんは。

 絵柄は至って簡素ながら、諧謔と箴言、ナンセンスとノスタルジーが入り混じるごった煮めいた作風に呑まれた。『がんばれ酢めし疑獄!』での尖ったギャグの印象が強かっただけに、『サナギさん』において仲良し少女達が育む淡くも暖かい友情や『もずく、ウォーキング!』において穏やかな日々が織り成す無邪気な楽しさは意外極まりなくて単に面白いと言うより、いっそいとおしい。しかも重箱の隅を抉って貫く鋭いセンスはそのまま据え置きなんだから実に最高。フィロソフィスト気取りの飼い犬を語り手とするもずく〜は全3巻で既に完結してしまっているのが残念だけど、サナギさんはいついつまでも続いてほしいものだ。天衣無縫で感情表現が豊か……というかむしろ熾烈なサナギさんと、クールな毒舌家のくせして根っこの部分では友人たるサナギさんへの真摯な態度を崩さないフユちゃん。ふたりの絆は永劫保存版――って書いた直後に調べたらもう完結していて来月に最終巻が出るってなんじゃそりゃー。

SF初心者これだけは読んどけ!「独り言以外の何か」経由)

 さすが苦手科目のSF、挙げられている中で読んだことのある作品は20作もなかったぜ。個人的に「初心者にオススメしたい」と思うSFを5つ挙げるとしたら、殺人容疑の掛かった異星人をアメリカの法廷で裁く『イリーガル・エイリアン』、がっ○ゃんみたいに鉄を啖らう「アパッチ族」が人類と敵対する『日本アパッチ族』、虐殺扇動家を抹殺せんと主人公たちがひたすらスネーク行為を繰り返す『虐殺器官』、誰もが知っている「あの時代」にタイムスリップしてしまった男が思いも寄らぬ生涯を送る『この人を見よ』、自由を謳歌したくてサイボーグ猫に憑依したまでは良かったが何の因果かマフィアの手先となり果てる『ペロー・ザ・キャット全仕事』あたりでしょうか。つーか当方自身がもっと開拓せねば。

Frontwing、『ゆきうた』のVista対応版を10月24日に発売

 さっき「Frostwing」と書いてしまって慌てて消した。いくらフロスト警部シリーズが面白すぎるからってメーカー名を間違えていい道理などない。自重せねば。さて、『ゆきうた』と言えばシナリオライター藤崎竜太の名が巷間に流布する契機となったソフトであり、更にもう一人の参加ライターが今やゼロ魔で売れに売れているヤマグチノボルと、実に豪華ラインナップ。メインヒロインの藤見雪那は往生キャラ、いやお嬢キャラとしてほぼ理想の存在でした。一方、長谷川菜乃は妹キャラとしてほぼ理想の存在どころか、もっとおぞましい何かでした。

 上記したふたりは藤崎担当で、ヤマグチ担当では盲目少女の今井由紀が典型的なツンデレキャラながら愛らしくて素晴らしいというかもはや裏ヒロインとも言うべき存在感を発していたこの『ゆきうた』、好調なセールスの反動で一時中古屋の店頭に山積みとなった瞬間もありましたけれど、いつの間にか品薄に転じてプチプレミア化していた次第。これで安心して薦められるナァ……とページを眺めていたがハテ、価格がどこにも書いてませんよ? 一体いくらで再販するつもりなんだろう。よもやフルプライスなんてことは……。

・ジョナサン・レセムの『孤独の要塞』読了。

 ディランはアーサー・ロムのいうことすべてを理解した。なお悪いことに、ディランは自分の感受性がアーサーのそれに侵食されるのを感じた。自分の将来の感心が吸収されるのを感じた。
 二人は友情を結ぶように運命づけられていたのだ。

 原題 "The Fortress of Solitude" 、著者6番目の長編であり、ブルックリン育ちの経歴を活かした半自伝的小説でもあります。タイトルはスーパーマンが使っていた秘密基地の名前から来ているとのこと。800ページにも達する大長編だけあってページを開き始めた当初は「果たして本当に読み終わる日が来るんだろうか」と軽く慄いたりもしたけれど、なんとか根性で読み切りました。とにかくいろんなネタをこれでもかと注ぎ込んでいる。明らかに過重積載。短期間で集中的に読み進めたからちょっと疲れたものの、序盤で提示した伏線が後々になって発動するという遠大な仕掛けも組み込まれていたし、一気読みして正解だったとは思います。

 話としては黒人の少年少女が多数を占める街で「白人」という浮いた存在のまま思春期を過ごしてきた主人公ディラン・エブダスの成長――というよりも精神の変遷を描くもので、彼の父親(引き篭もり)や母親(途中で男つくって家を出る)、友人(白人と黒人の混血児)とその父親(ヤク中の歌手)、同じ白人の少年(引用文の「アーサー」がそいつ)やいじめっ子の黒人など、様々なサブキャラクターに関する脇道エピソードが乱雑に詰め込まれています。時系列でさえもが必ずしも一直線に進行するとは限らず、ポンッと十年単位で盛大に時代が飛んだかと思えばしばらく行ったところで巻き戻して空白期間を埋めに掛かったりする。無造作に見えて繊細な手つきをしたストーリーテリングであり、一度引き込まれたら濃密な世界に連れ去られること確実。が、そういうガッツリと魅了される領域に至るまでが結構長いので、序盤は正直何度か挫折しそうになりました。

 掻い摘んで説明してしまいますと、パッとしない少年だったディランはある日黒人の浮浪者から「魔法の指輪」を譲り受ける。それを指に嵌めたら、なんとスーパーマンみたいに空を飛ぶことができた――SFというかファンタジーじみた展開でなかなかワクワクさせられる要素ながら、肝心の指輪が出てくるまで200ページも掛かるんですよ、これが。しかも指輪が使用されるシーンは全体からするとごく僅かであって、物語の重要な位置を占めるキーアイテムではあるにせよ、あくまで小道具に過ぎない。もしエアロマン(主人公が考えたオリジナルのアメリカンヒーロー)だけにストーリーを絞れば現行の1/3程度でまとめられたことでしょうが、そうしないで「単なるネタの一つ」に分類し膨大なエピソード群の中へ埋没させたことが本書の特徴と言えます。空を飛んだり姿を消したりする描写があまりにも淡々としているせいで、「エアロマン」の存在は特に目立ちません。肩透かしと言えばひどい肩透かし。でも、おかげで「強盗を倒そうとして返り討ちに遭ったバットマンのコスプレ野郎」あるいは「悪人に正義の鉄槌を下そうとして逮捕された現代の忍者」のようなチグハグ感、居たたまれない空気が巧みに強調されている。「やっぱヒーローにゃマントでしょ!」と見た目に拘ったりするから裾が絡まって墜落するハメになる。ギャグにもならないお粗末さ加減。すこぶる付きのアメリカンヒーローキラーズ。

 路上で繰り広げられる子供の遊びを出発点にして、アメコミやグラフィティ、パンクロックにヒップホップ、そしてドラッグと、著者が実際に受けたのであろう数々の洗礼を通じて主人公が成長し、同時に失敗を重ねていく。「魔法の指輪」を持っている程度では対処できない事態に直面して「どう足掻いてもアメリカンヒーローになれない自分」を痛感し、物語は最後までヒーロー不在のままダラダラと垂れ流される。無用なまでの堅固さを誇る孤独の要塞。終始徹底して主人公の一人称だったなら、きっと気が滅入ったことでしょう。三人称で多視点、気紛れにカメラが切り換わる「開かれた」構成だからこそ沈鬱な心境に陥らず読み進めることができました。冒頭で顔を見せるソルヴィー姉妹が小説上はほぼ出番なしというか、「憧れの象徴」みたいな扱いに留まったことが個人的には残念。狙いを考えれば仕方がないことではありますが……。

・拍手レス。

 とっぱらがナイス人外というか妖怪
 タイトルが「とっぱらい」を連想させ、どうしても日雇いで働いている妖怪のイメージが……。

 電波>ウエハースの用に薄い新刊と、ファンブックですの分かります
 よく見ると作者名が「片山憲犬郎」だったりするのかもしれません。


2008-09-04.

『電波的な彼女』のアニメ化企画が進行している、という噂を目にしても嫌な予感しか沸かない焼津です、こんばんは。

 明らかに話数足りてないし、えぐり魔(子供ばかりを狙って、殺さずに眼球だけ摘出する凶悪犯)とか映像化できるの? って不安がありますし……とりあえず耐ショック姿勢の練習だけしておこう。

・榎本ナリコの『世界制服(1)』読んだー。

 universal reform、略して「ユニ・フォーム」がサブタイトル。作者の名前になんか見覚えあるなー、とぐぐってみたら『センチメントの季節』でデビューした人でした。ああ、道理で……って、ぅええ!? いやー、マジで驚きましたよ。だって本書はタイトルからしてバリバリのギャグマンガだってのに、『センチメントの季節』にはギャグの「ギ」の字もなかったんですから。恐らくほとんどの人にとって榎本ナリコに「ギャグマンガ」のイメージはなかったと思います。センチメント〜は好みに合わなかった作品であり、個人的に「表紙に騙されたマンガ」(2巻のスカートに桜を溜める少女がエロすぐる)の筆頭でしたけれど、あれからもう実に10年近くが経つわけだし、過去の遺恨は水に流して再び騙されるつもりで最新刊たるコレを買ってみようじゃないか! と清水の舞台からスパイラルマタイしてみました。

 そしたら意外に、と書いては失礼か。でも実際、思ってもみなかったほど面白かったです。内容はオムニバス形式の短編集で、ストーリーどころか話の設定が毎回変わります。共通点らしきものは超能力だとか宇宙人だとかいったSFっぽいネタが毎回絡むことと、必ず制服姿の女の子がヒロインとして登場することぐらい。あと世界が結構気楽に滅亡します。やり方次第では「奇妙な味」になったかもしれないストレンジかつブラックなワールドを「笑い」の皮膜で包み切る。ギャグの系統としては若干パロディが混ざったドタバタもの。3話目の題名が「最終兵器彼氏」だったりすることからお察しください。ギャグの切れ味は抜群だし、マンガとしてのテンポも整っていて読みやすいし、毎回ネタが凝っているしで過不足なくキッチリと楽しませてくれます。意想外の収穫でした。

 さすがに10年もすれば絵柄が変わったり画力が上達したりするものだ。さあ、当方みたくかつて『センチメントの季節』や何やで表紙に釣られて買ってしまい「あーあ……」となってしまった経験のある同士諸君よ、本書のカバーイラストもなかなか魅惑的ゆえ若き日の思い出を掘り返し、あの頃の情熱を取り戻すために敢えて騙される覚悟で臨めよ。つまり、もっぺん釣られてみては如何? しかしこれ、榎本ナリコのファンにとってはどういう評価なんでしょうね。「新境地」として受け入れられているのかしら。

・拍手レス。

 ジェレミア卿をさしおいてナイトオブゼロとかねーよ
 ジェレミア卿は立場が微妙……マリアンヌがしぶとく生き残っていたら敵対する可能性とてなきにしもあらず。

 「技師」…主人公が俺は悪くないを貫いている点は格好いいですよね。しかしあの年代のイタリアはチェーサ゛レ様といい、戦争しまくり。西ヨーロッパの戦争の中心地ですからね。
 『墨攻』…こっちは城を枕に〜ですか。それにしても秦漢の平和期に墨家みたいな戦闘集団がいたら物騒でしようがないから、焚書以前に潰されるのは当然と思いますよねー

 そういえば少し前に読んだ『青侠(ブルーフッド)』は墨家教団こそ青幇の祖であり、彼らの思想は今もなお組織に受け継がれている……というトンデモ設定(しかも始皇帝が紅幇側に所属していたから墨家を潰したという解釈)で面白かったです。ってか、商鞅(BC338没)と韓非(BC280頃〜BC233)の会話シーンがあるって……歴史のガン無視が凄すぎる。

 ウザクはどうあれ、皇帝はシス(コン)の人には違いないw
 老耄の境地へ差し掛かった暁には「儂ンとこにニャニャリーを連れてきゃあ!」ギアスを乱発。

 たぶん、まっしぐらに谷底まで墜ちるのではないかとw>ギアス
 スの字は「生きろ」ギアスで結局ルの字を見捨てそう。


2008-09-01.

ベビプリの十三女「綿雪」の名前を咄嗟に思い出せず、ついうっかり「雪風」と言ってしまった焼津です、こんばんは。

 確かにぃ、戦闘機化してしまえば病弱属性なんて忘却の彼方、あっさり克服可能である。降り積もる運命などソニックブームで吹き散らせ、綿雪風! ただ、川上稔あたりが書くと度重なる超音速飛行と被弾に双翼が耐えかね、パイロットである兄を下ろした後、己が名を遡行するかの如く「雪の源」に向かってまっすぐ飛翔し、音すら届かぬ高高度で爆発、遙か天の極みに輝くポーラースターとなり、燃える破片が降りしきる雪に混じって夜を埋めそうだ。

 しかし「十三女」って何度見ても『十三妹』を連想してしまう罠。

お金を借りた覚えはない!神に誓う!と言った男性にカミナリが直撃。「厳選!駆け流し」経由)

 『誰でもない男の裁判』を思い出した。無神論者が「もし神がいるのなら、おれを殺してみろ!」と叫んだ直後、心臓に銃弾をブチ込まれて即死する話。

エロゲタイトルの略称について「独り言以外の何か」経由)

 この前も「ぼるしち」とかいう略称が出てきて「なんのことだ?」とぐぐってみたら『Volume7』のことだった。「Vol7」→「ぼるしち」なんでしょうね、たぶん。語感の良さと識別性の高さがポイントなわけで、中には最初からタイトルを略しに掛かっているパターンもある。『スマガ』(STAR MINE GIRL)とか、『うそ×モテ』(うそんこモテモテーション)とか、ライトノベルだけど『かのこん』(彼女はこん、とかわいく咳をして)とか。個人的にもっとも旨いと唸った略称は「≒3」。パッと見では意味不明なこの表記、訳せば「ほぼ3と一緒」……つまり『保母さんといっしょ!』です。発音上の長さが変わらないため、呼び方としては使えないという難点を抱えているものの、機転においてこれを超える奴はちょっと思いつかないな。

・今月の購買予定ですだ。

(本)

 『偽物語(上)』/西尾維新(講談社)
 『境界線上のホライゾンT(上)』/川上稔(アスキー・メディアワークス)
 『聖家族』/古川日出男(集英社)
 『スリーピング・ドール』/ジェフリー・ディーヴァー(文藝春秋)
 『ブロッケンブラッドV』/塩野干支郎次(少年画報社)

 文庫化情報。今更ー、という感じも少しするけど、伊坂幸太郎の『魔王』が文庫化します。サンデーでコミカライズされて単行本が5巻くらい出ていますが、あれは「ジュブナイルリミックス」と銘打たれているだけあってかなりアレンジが利いており、『魔王』のみならず同作者の長編『グラスホッパー』ともクロスオーバーしています。原作の「魔王」はマンガに比べて主人公や犬養の年齢設定がやや高めだし、話自体あんなに大きくない。そもそもが中編で、200ページにも満たないボリュームですから。「マンガの原作」と期待して読めば肩透かしでしょう。マンガ版にハマった人は『グラスホッパー』も併せて買った方が吉。

 先月は購入を控え目にするつもりだったのに達成できず、それどころかむしろ増えてエロゲー購入用の積立金を食い潰すほどの上昇曲線を描きました。今月は開き直って資金が続くかぎり買いたいように買うとします。『偽物語』は意外なほど早く来たありゃりゃぎさんシリーズの最新刊。年内に出ればいい方、と睨んでいただけに朗報です。しかも上下巻で二ヶ月連続刊行なんて……夢? アニメ化企画が進行中なので、放映時期に合わせてまた新刊が出るかも。『境界線上のホライゾン』は待ってました、カワカミン120パーセント(を期待している)GENESISシリーズ第1弾の一冊目。「T(上)」という表記が相変わらず狂気めいているがもう慣れました。そして公開されている紹介ムービーを視聴。キャラ多すぎで覚え切れません。これも上下巻で二ヶ月連続刊行……やっぱり夢じゃないの? そういえば先月から延期していた『されど罪人は竜と踊る』の3巻も今月発売で、内容的には前編らしく後編に当たる4巻は来月発売予定とのこと。つまり、またしても二ヶ月連続刊行。ホントつくづく夢じゃないのかこの状況。

 『聖家族』は古川日出男渾身の一作。内容云々以前に「2000枚」というボリュームが既に破格です。普通、その半分でも売り文句として成立しますよ。2000枚というのは、同じ集英社だと佐藤賢一の『傭兵ピエール』や『オクシタニア』をも凌駕する。文庫化すればきっと1000ページ超えるでしょう。値段も凄いことになっています。3000円近く。ただでさえ分厚い本スキーなのに古川日出男のファンでもあるんですから、もうチビる寸前の心境で待望するしかありません。『スリーピング・ドール』は『ウォッチメイカー』に登場したサブキャラが主役を務めるスピンオフ作品とのことですが、すみません、『ウォッチメイカー』読んでないから分かりません。ってか、こっちはまだ『12番目のカード』の途中ですよ。出るペース早くね? それと文春の新刊と言えば、ジェイムズ・カルロス・ブレイクの『ハンサム・ハリー』改め『掠奪の群れ』も刊行される模様。『ブロッケンブラッドV』は女装少年主人公熱烈愛好者にとって必携のシリーズ、遂に3冊目。まだネタが尽きないのか、と割合素で愕いてます。大好きなシリーズではあるけど、これ以上続けるとマンネリズムに陥るのでは……と若干心配。マンネリだろうと買うことには変わりありませんがね、そこにノイシュヴァンシュタイン桜子がいるかぎり。あと『ユーベルブラット』の8巻も同時刊行です。恒例になってきましたね、このブロブラ・ユーブラ同時刊行パターン。

 そういえば奈須きのこが竹箒で出した『空の境界』番外編『未来福音』の委託も今月中頃の予定……amazonあたりが扱ってくれたら入手が非常に楽なんですが、TYPE-MOON名義ではないから難しかったりするのだろうか。それから横山秀夫の『64(ロクヨン)』が今月出るという噂も耳にしたけど、真偽のほどは如何に。あとは野尻抱介の『素数の呼び声』、大沢在昌の『黒の狩人(上・下)』、雫井脩介の『犯罪小説家』あたりですかね、気になっている新刊は。電撃MAGAZINEの増刊号『とらドラ!vs禁書目録』も購入しようかどうか迷うわー。

(ゲーム)

 『ティンクルくるせいだーす』(Lillian)
 『ピリオド−SWEET DROPS−』(Littlewitch)

 クルくる、もうそろそろハザードランプが点滅しそうな頃合です。これ以上延期されたら痺れを切らす。ピリオドSDはファンディスクなのにフルプライス(税込9240円)なんですってよ、奥さん。んまあ、TH2ADの売上を見て強気になったのかしら。しかし当方のツボにハマった高坂初実が攻略できるとあっては回避不能。他は『さかあがりハリケーン』『スマガ』が体験版好感触につき「要注目ソフト」とメモ帳に記していますが、どう足掻いても費用を捻出できそうにないので様子見。書籍購入の額によってはクルくるやピリオドSDの金を賄えるかどうかすらも怪しいけれど。

・拍手レス。

 のぼうの城・・・大河に出来ない武将選択ですからねwそれにしても忍城堅すぎwwパネェwとか当時も思われてたんでしょうねぇ。
 普通なら「城を枕に討ち死に」だよなぁ。同じ籠城モノでは『墨攻』や「技師」(『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』所収)も面白いです。

 ユキメのあの髪の色がなんとも…っ!!
 巻末のオマケがこれまた最高でした。

 とうとう、暗黒卿と化しましたね〜w>皇帝とウザクの人
 これは尋常のアニメではない。見えぬ……着地点がまったく……。


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