2008年5月分


・本
 『GIANT KILLING(1〜5)』/原作:綱本将也、漫画:ツジトモ(講談社)
 『雨に祈りを』/デニス・レヘイン(角川書店)
 『Story Seller』(新潮社)
 『吉原手引草』/松井今朝子(幻冬舎)
 『ラジオ・キラー』/セバスチャン・フィツェック(柏書房)
 『GAMBLE FISH(1〜5)』/原作:青山広美、漫画:山根和俊(秋田書店)
 『治療島』/セバスチャン・フィツェック(柏書房)
 『灼熱の真紅の翼』/水月郁見(徳間書店)
 『遠まわりする雛』/米澤穂信(角川書店)

・ゲーム
 『彼女×彼女×彼女』体験版(ωstar)
 『夢幻廻廊』体験版(Black Cyc)


2008-05-30.

・たまたま教室に持ち込んだ本を見つけられ、嬉々たる表情の女子に「あ、わたしもそれ読んだことあるよー」と話しかけられる……そういうイベントが、高校時代の当方にもありました。しかし肝心の書籍が村上龍の『イビサ』(ネタバレすると、主人公の女性が最終的に四肢切断される話)だったためロマンスもクソもなかった焼津です、こんばんは。『星の王子さま』で意気投合? そんな青春知るかよ。

「ジンガイマキョウ」TOP絵に禁書の元女教皇

 フ・ン・ド・シ……見事な。と脳内から間欠的に湧いてくるバキネタを吐き出しつつ、ディスプレイへ組み付いて尻に見惚れる晩春の宵。

セブンアンドワイでスティーヴン・ハンターの新作『四十七人目の男』予約受付開始

 父アールが硫黄島から持ち帰った日本刀を持主に返還すべく成田に降立ったボブ・リー。銃を捨て剣を取ることになった名スナイパーが、日本を舞台に大立ち回りを披露する!

 こんなあらすじ読まされて胸を高鳴らさずにいられようか。

一人暮らし男性の押し入れの天袋に、見知らぬ女が住んでた…福岡(痛いニュース(ノ∀`))

 『屋根裏の散歩者』『暗いところで待ち合わせ』『押入れのちよ』か、はたまた『ラブやん』か。何にせよ、想像しただけでゾッと背筋が凍り産毛のそそけ立つリアルホラーにございます。こっちの事件はスラップスティックですが。そしてトリビアを一つ。「屋根裏の散歩者」のパロディとして『天井裏の散歩者』っつー紛らわしいタイトルのミステリが実在する。

主人公が自分の名前と同じだとなんか微妙な気がしないか?(VIPPERな俺)

 同じ名前ってのはあんまり記憶にないけど、普段の呼び名とカブることはたまに。主人公どころかヒロインと一緒のこともあって心中複雑。でもまー、よくある音なので割り切れます。

・米澤穂信の『遠まわりする雛』読了。

 去年の末あたりから人気に火が点き始めた“古典部”シリーズの第1短編集。『氷菓』『愚者のエンドロール』『クドリャフカの順番』と来てコレですからシリーズ通算4冊目ですね。表題作含む7編を収録しており、うち6編は雑誌掲載作品。一番古いのなんか2002年の“ザ・スニーカー”で、もともとはライトノベルとして出発した事実がしみじみと偲ばれる。表題作の「遠まわりする雛」は書き下ろしだけど、タイトルを決めるのに難航したのか「雛様は帷の向こう」という仮題が表示されていた時期もありました。基本的に一話完結方式ですけれど、順番通りに読み進めないとネタバレを被ることもありますので、摘み食いせず収録順に沿ってお読みください。既刊もあらかじめ目を通しておいた方がベターながら長編作品に関する致命的なネタバレはなかった(……筈)だし、まずはここから古典部に入門してみるというのも一つの手ではあります。

 古典部シリーズは人が死んだりするような殺伐とした事件や凶悪犯罪が起こらない、比較的穏やかな路線のミステリ――いわゆる「日常の謎」に属する作品群であり、ドロドロとした愛憎劇やら何やらに疲れた人にうってつけの清涼剤として機能します。ハッとするような衝撃には乏しいものの、気分転換にはもってこいの内容。毎度趣向を凝らし、あれこれ工夫して読者の興味を惹くよう頑張っていますからなかなか飽きが来ません。気が付けばいつの間にか読み終わっていること請け合い。ただ、事件の規模が小さい割に語り手の口調がギャグでも何でもなく素で重々しくて妙に深刻なムードを醸すなど、ミスマッチに戸惑う場面もいくつかあって、その辺は好みが分かれるところかも。米澤穂信恒例の遣り口であり持ち味とも言える作風ですから、慣れるより他ない。

 「やらなくてもいいことはやらない、やらなければならないことはなるべく手短に」をモットーにする省エネ主義の折木奉太郎が、古典部の仲間である千反田えるの「わたし、気になります」という言葉に操られるかの如く渋々行った数々の探偵活動を淡々と描いており、派手なトリックこそないものの地道なロジック展開とキャラクターの魅力でスイスイと読ませるのが古典部シリーズ人気の秘訣にございます。各編の紹介と感想をザッと書いていきましょう。

 「やるべきことなら手短に」 ―― 古典部のメンバー・福部里志が持ち寄った「神山高校の怪談」に、案の定興味を示した千反田える。省エネ主義の権化たる奉太郎は「やるべきことなら手短に」というモットーを果たすため、怪談にまつわる謎を可能な限り速攻で解決しようと勤しむが……。巻頭に収録されていますが、実は雑誌掲載された6編の中でもっとも新しい作品です。高校入学一ヶ月後が作中の時期となっており、どうやら発表順ではなく時系列を重視する構成とした模様。如何にも古典部らしく、また如何にも米澤らしい一作でした。良くも悪くも、他の作家ならこうは書かない。ラストの解説を小賢しいと感じるか否かで評価も変わってきそう。

 「大罪を犯す」 ―― キリスト教に伝わる「七つの大罪」は「憤怒」「傲慢」「大食」「強欲」「嫉妬」「色欲」「怠惰」、いつも穏やかで清楚な雰囲気を崩さない千反田えるはどの罪とも無縁に思えたが、ある日の授業で珍しく教師に食って掛かった。彼女の「憤怒」を喚び起こす原因となったものは一体なんなのか……。仰々しいタイトルに反し、もっともこぢんまりとした話でした。七つの大罪というとミステリでは『セブン』が即座に連想されるところですが、ポピュラーな題材ですから割とあちこちで見掛けますね。挙げていったらキリがない。話としては特に印象に残らなかったけど、一つだけ作中のネタがツボにハマりました。今書くと脱線しそうなので後述することにします。

 「正体見たり」 ―― 幽霊の正体なんて、所詮は枯れ尾花。と嘯く奉太郎に、「じゃあ枯れ尾花の正体を突き止めてみなさいよ」と言わんばかりの勢いで迫る伊原摩耶花。彼女は旅館に泊まった夜、向かいの部屋で「首吊り死体の影」が揺れているのを目撃したと云う。「わたしも見たんですよ」と追い討ちを掛けるのはご存知、大きな瞳と旺盛な好奇心がトレードマークの千反田える。成り行きからゴーストハンティングをするハメになった奉太郎だったが……。これが一番古い短編ですね。改題されていて、元のタイトルは「影法師は独白する」。謎の提示から調査活動を経て解決に至る道筋がまっすぐであり、もっとも衒いのない作品。ミステリっぽいスタイルを堅持しています。初期作だけあって心なしか筆致が若々しく、まだ成熟していない感じ。しかし、結末がやけに暗くて「そこまで落ち込むようなものか?」と首を傾げずにはいられないあたり、米澤の本領発揮。

 「心あたりのある者は」 ―― 放課後、持論を証明するため急遽行われることになった推理実験。それはたった一文に過ぎぬ校内放送から、その放送が流れるに至った経緯を推察するというものだった。手元にある限りの材料だけで思考を積み重ねていく奉太郎。アームチェア・ディテクティブの末、彼は無事持論を証明することが出来るだろうか……。『九マイルは遠すぎる』式推理法でストーリーを展開する、もっともマニア好みな作品。日本推理作家協会賞の候補作にも選ばれました。残念ながら受賞は逸しましたが。念のため解説しておきますと、「九マイルは遠すぎる」は主人公がふと耳にした「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、ましてや雨の中となるとなおさらだ」というセリフから推理を重ねた探偵役が思いも寄らぬ真相を手繰り寄せる海外ミステリの名作短編です。アームチェア・ディテクティブ、つまり現場に赴かず椅子に座ったまま推論だけで事件を解決するというジャンルの中でも至高とされている一編ですけれど、如何せん古いこともあって歴史的な意義はともかく現在読んでも感銘を得られるかどうかは保証しがたいところ。そこに来るとこの「心あたりのある者は」は良質なオマージュであり、是非とも「九マイルは遠すぎる」の予習用としてオススメしておきたい。

 「あきましておめでとう」 ―― すべてはきっと、「凶」と出たおみくじのせいだ。新年早々、厄介事に巻き込まれた奉太郎。神社の狭い納屋に、着物姿の千反田えると二人っきりで閉じ込められてしまったのだ。助けを求めようにも、この状況では「納屋の中で怪しいことに耽っていたのではないか」と疑われかねない。刻一刻と忍び寄る寒さに耐えながら、必死で脱出の策を練る二人だったが……。若い男女が二人っきり・イン・暗くて狭い納屋。それなんてリタフニコウソクイイタ? というわけで、もっともミステリとはかけ離れているのについワクワクしてしまう密室暗闘劇にございます。省エネ主義の奉太郎に「千反田えるとよからぬことに耽る」という選択肢は最初からなく、ドキドキ感とかあんまり漂わないけれど、シチュがシチュだけに舌なめずりしてしまう。納屋に閉じ込められるまでの日常シーンも面白く描けており、青春小説的なポテンシャルの高さも余すところなく見せ付けます。

 「手作りチョコレート事件」 ―― 気にしないフリする男の子、計算なんて度外視する女の子。去年のリベンジだ、と伊原摩耶花はチョコづくりに無限の意欲を燃やす。選びに選び抜いた極上の素材を用い、彼女が持てるすべての技術を注ぎ込んだ最高傑作は、しかし千反田えるがほんの少し目を離した隙に消え失せてしまった。重く責任を感じた千反田えるは、何としても紛失したチョコレートを探し出そうと躍起になるが……。タイトルは『愚者のエンドロール』のモチーフでもある『毒入りチョコレート事件』のパロディだろうか。それにしても、渡す気満々だった本命チョコがあらぬ方へヴァニッシュだなんて……いろんな意味で不遇な位置付けに収まっている伊原摩耶花、ますます悲哀を深めてここまで来ると不遇ってより不憫です。もはやただの解決など生温い、今必要なのはパニッシュメントだ! と血気盛んになって辿り着いた結末は、うーん……賛否両論だろうなぁ。当方はどちらかと言えば「否」で、こりゃないよ、って気分。語りたいけどまとまらないしネタバレなので割愛致します。

 「遠まわりする雛」 ―― 旧暦の桃の節句に合わせて執り行われる雛祭り。行進する「生き雛」の一人に加えられた奉太郎は、思わぬ不手際から「遠まわり」を要求されて慌てる関係者を他人事のように傍観していたが……。書き下ろしという事情も絡んでか、巻末を飾って締め括るに相応しい内容の話となっています。「えると奉太郎」の関係がもっとも如実に現れている一作と言えましょう。恋愛方面での進展はないに等しい古典部シリーズながら、今回ちょっとだけ彼らの気持ちが覗いているようで微笑ましい。気持ち良く読了できました。

 一編一編に読み応えがあり、またバラエティにも富んでいたので、予想以上に古典部の世界を堪能することができました。実に満足。読んでも読んでも飽きが来ないというか、読めば読むほど好きになっていきます、米澤作品。もちろん、これから出る新作は古典部シリーズのものもそうじゃないものも、みーんなとっても気になります。ちなみに「大罪を犯す」で後述すると言っていたネタは、64ページのコレです。福部里志と伊原摩耶花が千反田えるを誉めそやすシーン。

「もう、聖エルって感じよね」
「チタンダエルって、なんか天使にいそうじゃない」
「ウリエル、ガブリエル、チタンダエルって? あはは」

 くだらないけどメチャクチャ笑いのツボに入っちゃって抱腹絶倒した次第。「気になります」が口癖の天使なんて、いたら絶対周りが厄介事に巻き込まれるだろうな。好奇心天使をも迷惑す。


2008-05-28.

・林トモアキの『ミスマルカ興国物語2』を一言で要約すれば「ウブなサムライガールを剥き出しの股間で撃退する話」になると確信して疑わない焼津です、こんばんは。名付けて「股銃流、モザイク流れ」。まさしく裸の銃(ガン)を持つ男。正直、あそこは斬り飛ばされたりスライスソーセージにされていてもおかしくなかった。そんなわけで結構楽しみましたが、帝国三番姫ルナスの出番がゼロだったことに関しては「しょんぼり」の一言に尽きます。謹慎中かよ……ほとんど彼女目当てで買ったようなものなのに……。

畳業界「畳売れねえ!そうだ、メード使えばヲタが飛びつくんじゃね?畳メイドとか言って」(ニュース超速報!)

 達人を招聘して奥義「畳返し」講座とか開いた方がまだしも効果的じゃないかしら。畳といえば、業界を去った瀬戸なんとかさんの『CARNIVAL』。「祖父母の家で畳に転がって頬をつけるあの感触が好きだった」という些細な描写で過去の情景をくっきりと切り出しているのが印象的だったなぁ……。

カバの群れで混雑する川を背中伝いに走り抜けようと挑戦するワニ「GF団」経由)

 なんという因幡の白兎……。

コードギアスって一休さんのリメイクだったの?(ギアスR2最新話のネタバレ有り、注意)

「一休が命ずる!将軍、この屏風から虎を追い出せ!」

 噎せた。

・水月郁見の『灼熱の真紅の翼』読んだー。

 “護樹騎士団物語”シリーズの[。[と言ってもZである『白銀の闘う姫』が上下巻だったため、通しの巻数で考えると9冊目に当たります。ややこしい。作者の水月郁見は「夏見正隆」の別名義なんですけど、そこらへんを説明すると長くなりますので割愛。“護樹騎士団物語”の1冊目はEdge創刊ラインナップの1つでもあり開始から既に3年が経過していて、ライトノベル全般における知名度こそまだ低いものの『ヤングガン・カルナバル』と並ぶEdgeの看板として徐々に売上を伸ばしてきています。帯には「続々と重版中」とありますし、そろそろブレイクしそうな気配も漂う。

 内容は一種の異世界ファンタジーで、「貴族と平民」という階級意識が根付いているあたりは中世っぽいけど、更に「真貴族」という謎のエイリアンみたいな存在が絡んできたり、「守護騎」と呼ばれるパイロット搭乗式のロボットや「翔空艦」「翔空艇」なんてものが出るあたりはややSF掛かっています。こういうチャンポンなノリはマンガやライトノベル、それにアニメでは結構ありがちな設定で、別に目新しさはない。しかし、作者が別名義で航空ロマン系の小説を書いていることもあってか操縦描写がやたらと細かいです。正直、説明の半分くらいは「?」ですけれど、噛み砕いてざっくばらんに言ってくれるから「分かんねー」と投げ出さずに済みます。ざっくばらんすぎて「バガガガッ!」みたいな擬音表現がモロに出てきたり「ぐわぁ!」「うわぁ!」「わははは!」といった単調なセリフが連発されたりしますけど、それはもう作者の持ち味ってことで。

 甲冑をイメージしたとおぼしき「守護騎」のデザインは『ファイブスター物語』のモーターヘッド、『天空のエスカフローネ』のガイメレフを彷彿とさせ、どちらかと言えば巨大ロボットが苦手な当方でもワクワクしてしまう。ビジュアル的に格好イイってのもありますが、こういう騎士風のロボットって動きが生々しい感じで結構ツボ。守護騎vs守護騎というロボットバトルが本シリーズの見所の一つであり、最新刊たる『灼熱の真紅の翼』もそこらへん外すことなくキッチリ押さえています。何せ今回は物語の核心に位置する守護騎「エール・アルブラッゼ(真紅の翼)」がようやっと駆動開始しますからねぇ……トントン拍子で進めることを嫌い、とにかく話を引き延ばすことでファンには有名な作者のこと、ラスト5ページくらいまで掛けて「う、動いた……!」となってもおかしくなかったわけですが、今回は比較的テンポ良く進行していくんだから驚かされます。普通のライトノベルに比べればまだまだ展開の遅い方ですけれど、既刊に比べれば爆速ですよ。終盤がちょっと慌しくて如何にも枚数が足りなくなってきたような恒例の状態に陥るにせよ、ひと通り話をまとめて幕を下ろし、エピローグでちゃんと後日談を盛り込む手際にジーンと来た。『紅〜醜悪祭〜』を巡る悶着があった後だけに感動もひとしお。正直、かなり癒された心地です。

 「これ下巻じゃないよ、中巻だよ!」と叫んだ4ヶ月前がもはや懐かしい。イイ具合にひと区切りつきましたので、巨大ロボットものが好きな人もそうじゃない人もこれを機会に如何? 少しでも気を緩めればあっさり死人の転がる容赦ないストーリーだし、「民族浄化」などという少しどころではないヤバめのネタも絡んでくるものの、「先が気になる!」と夢中になって読み耽るだろうことは保証致します。主人公がヘタレ気味なのはどうにも許せないとか、そういった信条をお持ちの方にはあえてオススメしませんが。当方も主人公に関して最初はイライラしていましたけど、この頃は「ヘタレでこそリジュー、ヘタレじゃないリジューなんてリジューじゃない」と思う次第。ちなみに、表紙見返しの作者コメントを読むと「シュエット」の文字列が。そろそろシュエット様の出番来るー?

ゆずソフトの『夏空カナタ』、由比子ルート進行中。

 某ラジオで耳にした推奨攻略順が「ちはや→ゆいこ→ささら」だったので、それに従い元気な従妹の由比子に照準を据えてカチカチとマウスを鳴らしましたが……気のせいか、テキストのテンポがえらく変わっているような。よもや別ライター? 『夏空カナタ』が複数ライター制であることは最初から知っていましたし驚くには値しませんが、気になり出すと違和感を消臭するのに苦労します。Diesからこっち、変なところで神経が過敏になって困るわ。

 ともあれ、三好由比子。従妹だけあって幼馴染みで主人公とは軽口を叩き合う仲なんだけど、生意気そうに見えて根っこの部分がお人よしというか、健気でいじらしい感じの娘です。妹の双葉が天真爛漫で細かいことに斟酌せずフリーダムな振る舞いを示すことから、苦労人属性の姉キャラとしても個性を確立している。そのへんは「妹よりも身長が低い」という設定からして明らか。ネタ的にも弄りやすかったらしく、カウントダウンでは散々な目に遭ってました。そこはかとなく漂う報われなさ、微妙に付き纏う薄倖ムードこそが由比子であり、絶えず庇護欲を刺激する様はまさしく「魔性の従妹」。元気な従妹ってのはウザキャラになりやすいポジションでもありますけど、由比子は出過ぎず引き際を弁えた態度で己に合った立ち位置をうまく確保しております。

 そんなこんなでキャラとしてはツボだったにも関わらず、どうもシナリオが肌に合わなかったらしくて、しばらくは眠気を堪えながらのプレーとなりました。「主人公に好感が持てる」と述べておいて前言を翻すのも恥ずかしいというか心苦しいのですが……由比子ルートの主人公については、残念ながら好感を維持しにくい。ニブチン属性が止め処なく加速していて無闇にヒロインを心配させるあたりがニンともカンとも。

「……ねえねえ、そー太。あたしのこと、避けてる?」
「うおっ、な、なんだよ? べ、別に避けてねぇよ」
「じゃあもしかして緊張してる?」
「そ、それは……なんでそんなこと訊くんだよ!」

 こういうヌルい遣り取りには欠伸が出ると申しますか、いいからもうさっさとくっつけよ、と急かしたくなる気持ちが湧いてくる。勢いで「ずっと前から好きだった」と告白したヒロインも主人公の反応が芳しくないことを見て取るや「さっきのはからかっただけ」と打ち消して告白をなかったことにし、単なるいとこ同士という元の関係へ逃げ込もうとする件も「えーっ」って感じで呆れました。以降もこの調子でずっとダラダラ引き延ばすようならブン投げてやろうかと思案しましたが、さすがにここまで来てなおもグズグズと尻込みする主人公じゃなかったらしく、告白不発イベントから間もなくしてすんなりと恋愛モードに入ります。想いを伝え合うふたりの姿にホッと胸を撫で下ろした次第。付き合い出してからが問題だった茅羽耶ルートと違い、付き合い出すまでがネックですね。

 恋人同士の関係にステップアップしてからは由比子の可愛らしさが遺憾なく発揮され、恐ろしいほど蕩けます。頬を染めた低身長の子が背伸びして接吻をせがむ姿に胸を締め付けられぬ人間などよもやおるまいて。華奢な体つきをした純情小悪魔の繰り出す妙技に顔面筋肉は破断寸前。由比子かわいいよ由比子。彼女の笑顔を見ていると日々の疲れがフワ〜っと抜けていきます。宿題やってるときの横顔――薄い唇、髪の間から覗く耳、憂いを帯びた睫毛――もつい見詰めてしまう。すっかり骨抜きにされ、脳裏に『いとこどうしですることぜんぶ』という架空のFDが矢の如く去来する始末。その威力に当方もたまらず屈服致しました。主人公はときどきヘタレた部分や察しの悪いところを晒すものの、怒髪天を衝くほどヒドくはないし許容範囲。「もし強引に迫って由比子を傷つけたりしたら……」とか言ってウジウジ悩む主人公を問答無用で殴りつけて「それができないなら、最初から付き合うんじゃねぇよ!」と叱り飛ばした五郎もGJ。エッチシーンも、描写は濃くないがラブラブな風情が漂ってて心地良い。服の上から慎ましげな胸を鷲掴んで揉みしだくCGが個人的にヒットでした。ない胸を寄せて揉む、その行為に宿るロマンは決して巨乳なんかに負けないはずだ。

 このまま勢いに乗って最後まで攻略する……つもりでしたが、予想外に早く『G線上の魔王』が届いてしまったので一旦中断し、G線が終わり次第夏カナを再開することに致します。積むつもりはない。積むつもりはないのですが、同じ要領で『ドラクリウス』も最終章クライマックス直前にて停止しており、当方の計画性が如何に乏しいか、どんどん露呈していっている仕儀。並行して読んでいる本も依然30冊くらいで一向に減りません。読み終わりもしないうちに新しい本のページ開くから……。

・拍手レス。

 忘れたころに回避ageはやってくる…………………………Y・r・r! Y・r・r!
 今年中にはなんとか。たぶん。

 紅ファの最後の「終」って字を見て紅そのものが終わってしまったのかという収束っぷりに
 一連の騒動で紅はもちろん電波まで不安になってきました……。

 紅ファンブックはジュウ様が見れたからいいと思うんだ
 ジュウ様……まことにお懐かしゅうございました。


2008-05-25.

「ルルーシュだから『ルル』なんだよな。じゃあ、『ロロ』って何の短縮なんだろうか」
「……ロンブローゾ?」

 割と素で答えていた焼津です、こんばんは。正解は短縮でも何でもなくそのまんま「ロロ」みたいです。『コードギアス』はルルーシュやロロの他にもナナリー、クルルギ、それにカレン・紅蓮・オレンジってな具合で音の重複や「C.C.」「V.V.」「11」といった字面の重複があって何らかの意図を感じたり感じなかったり。

ゆずソフトの『夏空カナタ』、茅羽耶ルートクリア。

 上坂茅羽耶――陽光を浴びる白のワンピース、麦わら帽子からこぼれる長い黒髪……触手の如き幾多もの房が心をくすぐる、ガッチガチに王道かつ鉄板な容貌を完備したメインヒロインにございます。これで脇役だったりなんかしたらそりゃ嘘ってもの、「さあ彼女のシナリオを制作する作業に戻るんだ、ASAP(可及的速やかに)!」という声が殺到することでしょう。ひと目でメインと知れる、その分かり易さは紛うことなき武器。ですます口調をベースにした喋りといい、おっとりしているようで案外と意志が強い、けれどそれなりに脆いところもある性格といい、造型自体はごくありふれた子です。微妙にズレてるあたりが味ながら別段際立ったところがなく、手堅くまとまっているタイプのキャラですね。シナリオも「友好的な出逢い→ほのぼのとした日常を重ねて深まる仲→思わず『フラグが立った! フラグが立ったわ!』と快哉を叫ぶイベント」と順調に進行するものの、途中でお約束の「悲劇」っつー障害が立ちはだかって主人公とヒロイン、二人の恋路を妨げる実にスタンダードなパターン。十年立ってもこのへんの基本は変わりませんな。

 茅羽耶ルートをやっていてまず最初に意識させられたのは、主人公。昨今のエロゲーにしては珍しいくらい好感が持てました。あまりにも飲み込みが悪いことから「さっぱりくん」とまで言われた前作主人公の汚名を返上するに充分な奴です。任された仕事もキチンとこなし、ヒロインに会いに行くときもちゃんと始末をつけてから向かうなど、自分勝手な振る舞いがほとんどなくて不快感を抱くこともない。それでいて苦境に直面しても尻尾を巻いて逃げ出さず、前を向いて対峙しようとする。もちろん時として悩み、立ち止まることもありますが、ウジウジした思考を弄んだり堂々巡りを繰り返したりといったありがちな枚数稼ぎはオミットされていてストレスも溜まりにくい。この点だけを取っても「プレーして良かった」と思えます。そんな主人公の難儀に満ちた恋愛をフォローする幼馴染み・六角五郎もかなりのグッドボーイで、毎回ここぞ、というタイミングに限って絶妙なサポートが入る。咄嗟に「ああ……こいつになら掘られてもええわ」と失言してしまうほどナイスな野郎です。ぶっちゃけヒロインよりも主人公と男友達の組み合わせが魅力的だ……なるほど、カウントダウンflashで執拗に反復されたBL講座の真意はここにあったのか、と得心した次第。

 ただ、ストーリーに関しちゃ手放しで賞賛することは致しかねる……かな。ネタバレを回避するため詳細には触れませんけど、「悲劇」の内容がなかなか込み入っていて前半は結構引き込まれます。プレーしているこっちも主人公と同じ気分に陥るといいますか、「アイタタタタ」ってな感じで地味に心を刻まれる。主人公の行動にストレスを覚えない人でも、展開にはズッシリと来るものがあるかもしれません。しかし、いろいろな事情が判明してからの流れは……うーん、どう言及すればいいものやら。超展開、とも断じ切れないんですよね。伏線は割と丁寧に張られていて、ある程度は先が見通せますし……でも、やはり後半の展開が急なことと、ところどころで説明臭いのが気になります。なんかこう、作品の設定そのものを直接キャラクターに喋らせているような雰囲気で、感情移入は阻害されるわ聞いてるのが億劫になるわで置いてけ堀状態になってしまう。エンターテインメントの観点からすると少々退屈でした。

 なまじ主人公の性格がジェントルなせいで激しい情動を窺わせる部分が少なく、盛り上がりが乏しくなっているのも皮肉と言えば皮肉。プレーヤーに不快感を与えない点にかけては優良な主人公なれど、この手の終盤で突然スケールが大きくなる物語とは相性が悪かったみたい。ゆったりと伸びやかで悠揚迫らぬ穏やかな筆致も足早なラストを前にして仇となってしまいます。最終的に奇跡云々が絡んで「なんでもあり」になってくる事態も乖離感に拍車を掛け、素直に「感動した」とは言いがたい。シナリオ重視で行くなら構成を含めてもっと練り込みが必要だし、キャラ重視路線だったら逆に説明を簡略化して細部を省略し、可能な限りシンプルに風呂敷を畳むべきだったんじゃないだろうか。まだ一ルートを終えただけですから判断を下すのは早計かもしれませんけれど、今のところ「変に重くて変に軽い」というどっちつかずの印象。

 エロシーンは至ってテンプレ的で可もなく不可もなく。軽くベッドヤクザ入った主人公と、初めてなのに抵抗もなくへらちおするヒロイン。ヌキゲーじゃないことを考えれば、まぁこんなものかなって感想。あと、「ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!」というヒロインの嬌声がうっかり一瞬「ぶるぁぁぁぁっ!」(若本御大)に見えて萎えたりしました。

 シリアスパートについては誉めにくい箇所もあるにせよ、日常パートは感触良好でサクサクと気持ちよく読み進められますので少なくとも現時点で地雷だスワスチカだと騒ぐ気は毛頭なし。まだ2ルート残っているし、依然として明かされていない謎もゴロゴロ転がっていますゆえ粛々と進めて行きたい。

『紅 公式ファンブック』を読む。

 既に実態をご存知の方もおられるでしょうし、多くは語るまい。「馬鹿にしてっ…!」の一言に尽きます。

・拍手レス。

 ケッカイシ、いささか幼女分が足りません。鬼使いの子のほうが小さくなればよかったのにね?
 主要陣を幼女に挿げ替えた『絶対可憐ケッカイシ』をスピンオフさせれば万事解決。

 醜悪祭【完】も読み終わって一言。 アニメと相成って弥生さんがすげぇ可愛く見える
 「犬です」の頃からずっと胸キュンが止まりません。

 先生! ヒロイン達よりミホさんしか眼中にないボクはおかしいんでしょうかっ!
 当方も娘姉妹を差し置いてミホさんに熱視線を送ってしまうことが……食卓CGの豊かに突き出した双丘がヤバい。


2008-05-23.

・すっかり溜まっていた『結界師』の8巻から18巻までをようやく消化した焼津です、こんばんは。

 少年マンガは刊行ペースが早いから、ちょっと放っておくだけであっという間に10冊くらい積んじゃいますね。『結界師』は絵柄がシンプルで話運びにも安定感があり、一つの話を引っ張りすぎず適度なところで区切るあたりが好印象。ただ、ストーリーが本格的に面白くなってくるのは14巻あたりから。「影宮(*´Д`)ハァハァ」とか言いつつ、話に引き込まれて熱中し始めたのは「箱」編以降だったし、結構スロースターターなコミックです。「箱」編から「ラブ・ギャング」編、一旦小休止を挿んでから「無道」編と繋げる16巻前後が最高潮でした。18巻でまた話がスローダウンしてきているものの、肝心の影宮が再登場してくれるおかげで個人的なwktk感は依然継続。正ヒロインの時音も捨てがたいが、影宮の浮かべる微笑みには太刀打ちできていない。閃ちゃんかわいいよ閃ちゃん。これ以上積読が増えないよう19巻以降の購入は止めていたけど、サッサと買ってこなきゃな。

CUFFS、竜胆愛シナリオ含む『Garden』の修正パッチを配布開始

 5月16日と予告しておきながらあまりにも音沙汰がなかったため「夜逃げしたんじゃないか」とまで悲観された愛ちゃんパッチ――未明に予告を発し、それからさして間を置かずに配布開始。ブリッツクリークなプレゼントに当該スレの住人たちも狂喜乱舞している模様です。適用すると以前のセーブデータが使えなくなるらしいので、まだクリアしていない当方はもう少しのんびりと構えるつもり。

ゆずソフトの新作『夏空カナタ』、本日発売

 2ヶ月も前からカウントダウンを行ってきたあのソフトがやっと店頭に並びます。カウントダウンflashには「発売まであと○日!」みたいな普通の予告もあったけど、ヴェルタースオリジナルやケフィアなどのCMネタ、デスノやエヴァやアカギやポートピア連続殺人事件などのパロディ、ヒロイン主導による本編とはまったく関係のないBL講座、果ては涼宮哈爾濱ならぬ上坂ちはるびん(オリジナルは上坂茅羽耶、「ちはや」と読む)が例のポーズを取って『青空カナタ』というパチモン臭いソフトのパッケージを飾ったりと実に好き放題かましていて、誰か止める奴はいなかったのかと少し心配になったものでした。

 『夏空カナタ』は沖縄と変わらない緯度に存在する架空の島、「塔弦島」を舞台とするエロゲーです。常夏の島で冬休みを過ごす、という設定こそ変わっているものの、幼馴染みの従妹たちが登場したり、仲の良い男友達が出てきたり、初めて会う少女と心を通わせたり、謎めいた女の子に遭遇したりと、概要は「よくあるエロゲー」を地で行っています。いくつかのイベントを経てメインヒロインの茅羽耶と親密になり、「海岸でキス」というお約束も済ませて、さあ本番は近いぞ……と逸った矢先にプレーヤーを襲う衝撃。事前情報まったくなしにやった体験版で呆然となった人は当方だけじゃないはず。何も知らずにやった方が自然な感じでポルナレフれると思いますので「衝撃」の詳細は割愛します。

 「衝撃」の他にも島には何か秘密があるみたいだし、茅羽耶の包丁ワークは『鬼麿斬人剣』並みだし、由比子の可愛さは不意に喰らえば心停止級だし、これは是非とも製品版をやらねば、と決意した次第です。沙々羅は体験版で大した出番がなかったため何とも言えませんが、少なくとも外見は好みだからマイナス材料にはならなかった。設立当初から注目していたにも関わらず『ぶらばん!』『E×E』の前2作をスルーしていた当方は到底ファンとは呼びがたいものの、『E×E』は青山ゆかりボイスが極上なメインヒロイン・野宮悠に釣られてもうちょっとで購入に走るところでした。シナリオの評判がいまひとつで結局回避したけれど、体験版で確認したテキストは思った以上に読みやすかったため、「いずれこのメーカーのソフトを買う日が来るだろう」と予感したものです。そして正に今、時至れり。バタバタしていたせいでまだインストールしか終了しておりませんが、体験版の範囲を足早にスキップさせてから喜び勇んでマウスをカチカチさせることに致します。

 しかし、茅羽耶ルートに入ってから浮気などしようものなら、料理方面は初心者だというのに刃物の取り回しにかけては練達者クラスな彼女のこと、スプラッシュファーント並みの滅多刺しは覚悟せねばなるまい。あるいは雁金(相手がバンザイした状態で胸を両断するとこんな具合に)みたく上半身を飛ばされるとか……I can fly!!

・拍手レス。

 新刊のタイトル、学園物(仮)から一気に邪気眼へ。やはりロミオはロミオだった……!!
 タイトルだけ見れば壮大な負け戦としか思えないがそれでもロミオなら、ロミオならなんとかしてくれ……!

 一迅社の文庫で、朱門優氏・魁氏の小説が出てましたね。
 その2冊+杉井光の新作を購入。黒史郎のも評判いいんで買っとこうかな。

 あやかしびとは九鬼先生の倒錯した復讐観が好みでした。相手がしょぼすぎて膨らみませんでしたが。あとは
 虎太郎先生。クロノベルトには出てきてくれないんでしょうか…

 声優陣が豪華すぎると後々響いてしまうようです。

 焼津さんちに人外ロリが来ればいいですね。
 脳内にいますからだいじょうぶだいじょうぶ、へいきへいき。

 バスト召喚、1巻はどうかなって感じだけど2巻以降特に3巻は最高っした
 一分ほど何の略称かと頭を捻りました。個人的には1巻が一番好きですが、3巻が最高なことには同意。

 ヴィルヘルム兄さん、いいコト言った!
 2章と3章だけ何度もやり直しているからすぐ改変ネタが思い浮かぶ罠。


2008-05-21.

・ネット書店で予約して今月末か来月初めに届くはずだった『バカとテストと召喚獣4』――送料無料にするため一緒に頼んだ本が延期したせいで待ちぼうけを喰らうことが確定事項となった焼津です、こんばんは。今の心境を一言で表すと「あばばばばばばばば」。よりによって注文したところが「原則キャンセル不可」のbk1だけに予定の組み直しもできやしません。鬼のごたるヒキだった3巻から9ヶ月も待たされて、更に焦らされる運命だったのかよ。

 延期と言ってもせいぜい二週間程度であって痺れを切らすほどじゃないのが不幸中の幸いか。恐らく月末〜月初めは『G線上の魔王』を必死こいてプレーしているはずですし、おとなしく一日千秋の気分を味わうことに致します。

小学館のヤングサンデーが「休刊を検討」(毎日jp)

 単行本派なもんでいまいちビッグコミックと区別付かないんですが、調べてみたら継続的に購入しているシリーズは『クロサギ』『とめはねっ!』『アオイホノオ』『イキガミ』の4つがありました。『タナトス』というボクシング漫画も気になっていて近々まとめ買いしようかな、と目論んでおりましたけど、もうしばらく様子を見た方が良さそうか。

最近のエロゲって「着衣H」増えてませんか?「独り言以外の何か」経由)

「それとも、くくく……全裸主義ってやつなのか? 相変わらずコスプレAVはワケ分かんねえなぁ。服脱ぐって知ってりゃあ、おれらDVD借りてねえよ」

 と嘯くほど半裸・着衣エチーが好きな人間にとって誠にありがたいことです。半脱ぎは美学。チラリズム感やアブノーマル感が作用する点も重要ながら、当方は「服の皺フェチ」なので、濡れ場における衣類の振る舞いを見るだけでかなり滾りまする。「うっわ、この皺の寄り方すげぇエロいな」と思ったことは皆様もあるはず。神は細部に宿り、エロスもまた些細な皺にこそ宿り給うのです。無論、当方内部では「髪フェチ」という属性の方が上位に来ますから頭髪の振る舞いには勝てませんがね! 「半脱ぎ理論を用いて剥き出しにした肩、そこへ掛かる髪の流れ具合」を思考するだけでご飯六杯はイケます。顔や視線はあらぬ方へ向いていればなお良し。更に服の皺と裾と襟を駆使して鎖骨や太腿の輝きを強調することができればベニッシモ(上等だぜ)。

ゲーメスト誤植伝説に新たな一ページ(ニュース速報++)

 新声社亡き後も誤植エリートの血は受け継がれていたか……。

・セバスチャン・フィツェックの『治療島』読了。

「知ってるか、ヴィクトル? 希望ってのは足に刺さったガラスの破片みたいなもんだ。肉に刺さってる間は、歩くたびに痛む。だが、足に刺さった破片を抜けば、ちょっとの間血は出るし、傷が治るまでにはしばらくかかるが、しまいにはまた歩けるようになる。このプロセスを悲しみとも言う。もういいかげん、あんたもそれに取りかかるべきだと思うんだ。もうほとんど四年だよ。自分から精神病院に入院した女の言うことなんかほっとけよ」

 原題は "Die Therapie" 、「治療」だけで「島」の意味はありません。著者のデビュー作であり、日本では比較的マイナーな出版社から刊行されたにも関わらず割と話題になった一冊です。当方もそれを聞いて気に掛けてはいましたが、タイトルやストーリーに見るにつけ、またぞろ精神を病んだ人が登場する話か……と若干ウンザリする気持ちが湧いてくるもので、手を伸ばすのも後回しにしておりました。ちょっと前に読んだ『ラジオ・キラー』が大した傑作だったから慌てて着手しましたけど、もし『ラジオ・キラー』がなければたとえ読むにしても数年後のことになっていたかもしれません。

 ヨーズィはいったい何処に消えたんだ――有名な精神科医だったヴィクトル・ラーレンツは、病弱な愛娘が不可解極まりない失踪を遂げたことによって現実と向き合う気力を失っていった。仕事をやめ、希望と絶望に苛まれながら4年が経過した。小さな島パルクムの別荘に赴き、雑誌社のインタビューに答えるべく原稿を書いていた彼のもとに、一人の女性が訪ねてくる。アンナ・シュピーゲル、職業は児童書作家。そう名乗ったうえ、彼女は自ら「統合失調症を患っている」と告白し、ヴィクトルに治療を懇願してきた。主な症状は幻覚。自分の書いたストーリーに登場する人物が、現実世界にも姿を現す。綴った通りのセリフを言い、筋書き通りの行動を取る。興味を惹かれながら聞き入っていたヴィクトルは、アンナが「シャルロッテ」という少女に出会った件を耳にして身を強張らせる。原因不明の病気に苦しめられ、自分で治すために家を飛び出した女の子。細かい相違はもちろんあったが、細部のいくつかがヨーズィ――ヴィクトルの娘であるヨゼフィーネと符合していた。ただの偶然か? それとも必然? あるいは作為? 異例のセラピーを通じて、娘の行方を暴き出そうと躍起になるヴィクトルだったが、島に嵐が近づき、体調も日を追うごとに悪化していく。やがて彼は一つの真実に気づき始めるが……。

 サイコ・スリラーっていうか、ここまで来るとサイコ・ホラーじゃね? 『ラジオ・キラー』の感想で「『デスノート』『コードギアス』みたいにグイグイと話の中へ引き込まれる面白さがあった」と書きましたけど、『治療島』はさながら『ひぐらしのなく頃に』の趣。章の幕切れごとにゾッとするような描写が出てきて、終始肌が粟立ちます。直截的なグロシーンは一切ないけれども、精神にクる恐怖は事欠かない。たとえば、森の別荘に空き巣が入ったようだ、という私立探偵からの報告があったシーン。盗まれたものがないか別荘を点検してもらっていると、探偵は「やっぱり警察を呼んだ方がいいと思う」と言い出す。

「バスルームに誰かが入った形跡がある。ほんの数時間前だ。生々しい跡が残っているから」
「いったい何なんだ、カイ。何の形跡だ?」
「血痕だよ。タイルにも洗面台にも、トイレにも」
 カイは息を切らしていた。
「バスルーム一面、血まみれなんだ」

 電話越しに伝えられる異様な光景。想像を掻き立てられてゾクっとします。こんな調子で虚を衝く展開が目白押し。主人公同様、読者自身も「追い詰められている」感覚が味わえます。これだけやりたい放題やっておいてオチがつかなかったら噴飯モノですがご安心を、最終的には真相が明かされて幕も下りる。好悪や賛否の分かれる結末であるにせよ、「サプライズだけが売り」という一回こっきりのびっくり箱みたいな作品ではありませんので、そこだけ切り取って云々すれば誤解の生じる元となりましょう。むしろ一周目よりも二周目の方が面白いタイプです。インパクトの度合いで比べると『ラジオ・キラー』に劣るが、味わい深さではこちらに軍配が上がる。是非とも「これはいったい何の物語であるのか」という問いを噛み締めて欲しい。

 サイコ・スリラーやサイコ・ホラーという手垢にまみれた印象の強いジャンルでも、まだまだエンターテインメントを繰り広げる余地はある……と訴えかけてくる好編です。読んでいて脳裏にある映画のタイトルが二つほど浮かびましたが、どう考えてもネタバレになりますので泣く泣く封印。おとなしくフィツェックの3冊目が翻訳される日を今や遅しと待つことにします。

・拍手レス。

 5周年おめでとう、って打とうとしたら5執念って出ちまった。 焼津さん、5執念おめでとうっ!
 ありがとうございます。そして「周年」→「執念」は講談社ノベルスがだいぶ前に通過した場所だッ!

 ここの誕生日って7月じゃなかったかしら?
 いいえ、ケフィ……5月です。開設当初はログを残さない方針でしたので、記録は散逸しておりますが。

 なるほど、つまりは「おめでとう!」と言うわけですね。
 かつてここに居た若者と、今ここに居る1人の書痴、そしてさらに5年後の、まだ姿も知れぬ偉大な書痴に。

 書痴度で言えば5年前の方がひどかった気も……あの頃は年間に500冊読んでいたような。

 もうこれ以上年をとることはお兄ちゃん許さないからな
 「0歳の誕生日」が発生する時空でもなきゃそんなの_。


2008-05-18.

・不要本の処分を開始して以来、箸にも棒にもかからない本に行き当たると「これは心置きなく捨てられるな」とネガティブな喜びを覚えてほくそ笑むようになった焼津です、こんばんは。

 貯蔵とも浪費とも異なる「廃棄」の快感を知り、書痴の業もますます深まった気がします。「つまらなかったら古本屋にでも売り払えばいい」という精神的な後ろ盾を得て、書籍購入に一層歯止めが利かなくなりましたし。買ったけど読む気がしない、読んだけど面白くなかった、面白かったけど飽きた――そんな感じで不良蔵書化していた一群の整理も進み、現時点での己の趣味がより明確に反映されるラインナップとなってきました。読まずに捨てるのは忍びないから一応すべての本には目を通しますけど、だんだん心理が倒錯してきて「捨てるために読んでいる」ような気分に陥ることがしばしば。読書それ自体が目的ではなく、「捨てる」という行動に至るためのプロセスとして「読む」わけです。どうしようもない出来なら「不要本の処分」を達成するフラグが立ってスッキリするし、案に相違して面白かったらそれはそれで収穫と受け取ればいい。どっちに転んでも損はない。けれど、いささか後ろ向きすぎるきらいがあるから、こういう読み方は程々に留めておかないとな……ただ、「捨てる」という意識を念頭に置けば食指の動かなかった本も読むことができ、積読解消のみならず場合によっては食わず嫌いを治すことにも繋がりますので、それなりに有用な思考法であるとは考えております。つーか、頭を切り替えてサクサク処分していかないと部屋がヤバいですよ。年々居住限界に近づいている次第。

犬江さんの「ジンガイマキョウ」が5周年を迎えました。

 昨夜はめでたき日にござる……めでたき日にござる……。気づけば自サイトも5周年の間合いにいた。というわけで、「ジンガイマキョウ」に後追いする形で始まったウチもそろそろ5年が経過って寸法です。開設したのは詳しく書けば確か20日、だったような……もう記憶がおぼろげ。ともあれ、おめでとうございます。これからもお互いのんびり楽しくやって参りましょう。って書くとなんだか偉そうで何様な感じがしますので、もっとこう、卑屈な表情で額を地面に擦り付けてザリザリ言わせながら「うへへへへ……アニキぃぃ、どこまでも付いていきやすぜぇぇぇ」と下っ端らしいセリフを吐くことに致します。

 PCクラッシュの影響で開設当時の記録はほとんど残っていないけれど、僅かに存在する資料をよすがにして思い出しますと埴谷雄高の『死霊』に挑んで100ページくらいで早くも挫折したりしていました。デモンベインのSSもあの頃書いていましたけど、実はデモベって発売した4月に一度やったきりで、その後全然再プレーしてなかったんですよね……不確かな記憶を頼りに書いたせいでアル・アジフの言葉遣いを間違えてツッコまれたのも今となっては愉快な思い出。昔の自分も今と変わらずいい加減なものです。今後も同じ調子で頑張ったり頑張らなかったりしますので、閲覧者の皆様もなるたけ生温かく見守ってくださいませ。

虚淵玄、ガガガ文庫にて『BLACK LAGOON』のノベライズを手掛ける(ラノベの杜)

 そう来るか。驚くべきニュースなのに、ひどく納得してしまいます。どうせならブラクラは船戸与一にノベライズしてもらいたかったですけど、ウロブチなら確実に成功してくれるでしょう。不安なしに待つ次第。あとロミオの新作のタイトルがちょっと浅井ラボっぽくて噎せた。

今野敏の『果断 隠蔽捜査2』、山本周五郎賞に引き続き日本推理作家協会賞受賞

 『隠蔽捜査』シリーズの評価は急上昇というか凄まじいものがありますね。これまでがいささか不遇気味だっただけに、追い風の激しさに少し慄く。今野敏は格闘小説の『虎の道 龍の門』も地味に面白いですよ、と便乗で薦めてみる。

十津川警部 vs. オタク三銃士、『十津川警部 アキバ戦争』

 十津川シリーズは長らくノーチェックだったけど、いつの間にこんなものが……『消えたタンカー』とか、あの頃の十津川シリーズは結構好きでした。

 ところでさっき「三銃士」を誤変換して「オタク三十四」と打ってしまいました。オタク(34)――言い知れぬ生々しさを感じます。

矢口敦子の『償い』、53万部突破

 ソースは今日の新聞広告。いくら公称とはいえ、これはすごい。映画化されそうな勢いです。「なぜ今更この本が……?」と思わなくもないが、貫井の『慟哭』と同じパターンだろうか。ただ、持ち上げられているのは作品だけで作家はあまり話題になってない様子。

 作者は91年に谷口敦子名義(これも「やぐちあつこ」と読む)でデビュー。しかし、「たにぐち」と誤読されることを嫌ってか2作目以降から「矢口」に改める。ライトノベルで言ったらあざの耕平(デビュー時は字野耕平)みたいなものか。その後ポツポツと新作を発表したものの、ミステリ界での位置付けはハッキリ言って「売れていないマイナー作家」でした。9冊目の『償い』で地味に好評を集め、再評価の気運が高まったかと思いきや、しばらくするとそれも有耶無耶になってしまいふたたび「売れていないマイナー作家」へ逆戻り。去年などまた名義を変更して『本格ミステリ館焼失』という新作を出した(しかも経緯が「メフィスト賞に応募」というからこれまた……)くらいだってのに、急に過去の作品が絶賛されてバカ売れするとは、人生ってわからないなぁ。

・原作:青山広美、漫画:山根和俊の『GAMBLE FISH(1〜5)』読んだー。

 絵に描いたようなエリート養成学園へやってきた謎の転校生「白鷺杜夢」が種々様々なギャンブルに挑み、ひと癖もふた癖もある生徒たちと丁々発止の遣り取りを繰り広げる、少年漫画版『嘘喰い』とも言うべき博打コミック。1巻はまだ導入編とあって比較的大人しく、ヌルいマッチや高慢ちきな令嬢ヒロインで読者を易々と迎え入れる。だが、2巻以降はどんどん話が過激になり、付いていける読者とそうでない読者を篩に掛けるかのような暴れっぷりを見せ付けます。アクは相当強いものの、迫力のある絵柄とスピード感溢れる展開で一気にグイッと引き込む。今月から7月まで3ヶ月の連続刊行企画が始まることだし、今を逃すと巻数が増えて読み出すキッカケを得るのが難しくなりそうだから、一か八かの心境で手に取ってみたけど無事アタリを掴むことができました。

 とはいえ3巻あたりからの展開は『嘘喰い』というより、もはや『魁!!男塾』の世界ですね。2巻でいきなり「指を賭ける!」という流れになったことも驚いたが、あれよあれよという間にエスカレートしていき、最新刊では遂に命を賭け始めましたよ。こいつら本当に中学生か。「相手に見抜かれなければイカサマもOK」というルールなので本当に手段を選ばず戦い、「これはムチャじゃないか?」ってツッコミたくなるトリックや戦術も飛び出してくるにせよ、強引に突っ切って勝利をもぎ取る勢いの良さは爽快。男塾みたいな直接バトルはなく、あくまでギャンブル勝負に徹しているから頭脳戦の余地が残ってインフレ感も漂わない。けれど、この調子で行けば次は何を賭けることになるのやら……とりあえず核ミサイルは出てくるだろうな。

 現時点における悪役の代表格・阿鼻谷(アビダニ)が放つオーラは凄まじく、男塾臭がそこかしこに滲んでいるのは主に彼が原因かと思われます。しっかしなんでエリート学園にこんなエゲツない舎監がいるんだ? 舎監でこれなら、そのうち大豪院邪鬼みたいな体躯の黒幕とか出てきそうで怖い。濃い絵柄でやたらと野郎が目立つ反面、女性キャラも案外と可愛く描けており、「脱衣対決」等の露骨なお色気サービスもあって抜かりなし。それでもなお終始異様な迫力が漲っているのは、ほら、なにせチャンピオンの作品ですから……仕方がありません。個人的にはナインボール編に出てきた五木島が好きです。容貌魁偉っつーかぶっちゃけブサイクな顔立ちなんですけれど、少しもコンプレックスを抱いておらず、それどころか己の必殺技を「ゴキブリスペシャル」と自信満々に名付けるふてぶてしさに惚れた。是非とも再登場……はしなくていいか、別に。

・拍手レス。

 作品に関しては「あえてネタバレする」というやり方もあるんじゃないかな、と思います。
 一見では理解し辛いもの、懐が深いものであることが前提ですけど。
 例え同じ言葉でも見る角度によってまるで意味が変わる、なんてのはよくあることですし。

 「これは○○の物語である」と本質を言い当てるのもネタバレっちゃネタバレですが、普通は「切り口」として容認される。興を削がず、むしろ興が乗るよう配慮することが肝心ですね。

 片山さんはもうガガガあたりに移籍して欲しい
 浅井ラボ+片山憲太郎……漂う瘴気が尋常じゃなくなりそう。


2008-05-16.

・噛み締めるように『フルセット!』の最終巻を読み切った焼津です、こんばんは。

 少年たちの成長を描くバレー漫画なのにたった5冊で幕を引いたことから察するに、やっぱり打ち切りだったんでしょうか。最終巻たる5巻はほとんど試合描写がなく、ラストも足早に回想シーンを流した後で先制点を取得し、「どんな事だって やりとげてみせる “ゼッタイ”…!」という言葉で締め括っています。まさしく絵に描いた「ぼくたちの戦いはこれからだ!」エンド。最終巻なのに新ヒロインが登場したりで、結構バタバタしています。ああ、こういう結末ってばほんの少し前に見た覚えがある。『P2!』だ……あれも地味に面白いスポーツ・コミックだったのになぁ。エクスクラメーションマークが悪いのかしら。

 しかし今回、バレーのシーンをバッサリ省いてストーリーを詰め込んだのは英断というか、たぶん他に方法がなかったのだろうけれど……おかげで割り切って堪能することができたし、個人的にはそんなに悪くない読み心地でした。正直、市総体を2巻から4巻までにかけてみっちり描いたのはちょっと引っ張りすぎだったように感じる。あれで展開が単調に映ってしまったことを考えれば、5巻くらいがちょうどいいペースだったのかもしれません。にしても、泥臭いほど不屈の精神を保ち、倒れても倒れても立ち上がる主人公の姿には胸が熱くなったが、結局ヒロインとのロマンスは皆無なままFinとなったことを思うにつけ泣けてくる。脇にはフラグ立ってるカップルもいるのにぃ。残念。

新潮社、第21回山本周五郎賞受賞作を発表

 久々に予想通りというか期待通りの結果に落ち着きました。いざ当たってみると書くことないな……。

あかべぇそふとつぅの『G線上の魔王』、マスターアップ

 スタッフ日記で「15日前後にマスターアップする予定だ」みたいなことが書かれていたものの、いまひとつ信じ切れないでいた不実なファンがここに一人。ところで福井晴敏の文章って「不実」と「隠微」がやけに多いですよね。

逆に「全くネタバレをしない」方法ってどういうものだろう?「独り言以外の何か」経由)

 歴史小説のオチをバラしてしまう日本史や世界史の授業は規制すべきですね、わかります。さておき、伝統的に「これはひどい、もうちょっとどうにかした方がいいだろう」と言われ続けているのが富士見ファンタジア文庫の巻頭カラーイラスト。いわゆる「口絵」です。書店で手に取って「買おうかな、どうしようかな」と迷いつつパラパラめくっている読者を引き込むために本編の見せ場を抽出しているわけですが、時には「本文を読まずとも口絵だけ見れば充分」と言いたくなることこの上ないダイジェスト効果を発揮することが……たとえば「一枚目、淡い光に包まれし謎めいた少女との出逢い → 二枚目、少女を狙って襲来する五、六人ほどの敵たち(見開き) → 三枚目、ボロボロに傷ついてぐったりしているヒロインを抱えた主人公が雄叫びとともに秘められた力を開放」とか、こんな感じで。アレはもう表紙のデザインと同じくらい刷新する必要に迫られていると思います。

『紅 公式ファンブック』に書き下ろし小説「祭の後」

 もしや……とは思ったけど、本当にやりよったか。「編集部から」の言葉を引用しますと、醜悪祭(下)のあとでどうなったかが「なるほど、そうだったのか!」とジーンと来ました。(原文ママ) 微妙におかしな文章であることはともかく、これは「書き下ろし」じゃなくて「ファンブック買わせるための原稿分割」なんじゃ……?

 書き下ろし自体の分量も13、4ページしかないらしく、「書き下ろし短編」というより「エピローグ」に近い雰囲気です。たったそれだけのボリュームであのブッタ切りを収拾するつもりなのか。それとも、当方の感知しえぬ別銀河では「そこまでだ」以降が綴られた完全版『醜悪祭』が発売されているのだろうか。なにせ『醜悪祭』の上巻と下巻の本編部分とファンブックの書き下ろしを全部足したところで350ページになるかならないかって次元ですから、全一冊の完本が存在していても不思議じゃないわけです。存在確率はネクロノミコンのオリジナルと同程度やもしまれせぬけど。

 ほとんどファンブックそのものに近かった『醜悪祭(下)』に引き続きコレを買わされるファンの心境は如何ばかりでしょう。気分的には「祭の後」より「後の祭り」かも。いっそタイトルは「とにかく買ってくだ祭!」に変更した方が宜しい気もします。というか、もういい加減にして紅?

・セバスチャン・フィツェックの『ラジオ・キラー』読了。

「いいえ。あの子の言葉は本当だった。間違いはわたしの側にあったの。窓の敷居に腰掛けていた自殺志願者の有名な話は知ってるでしょ?」
 それは実話だった。飛び降り自殺しようとしていた人をある警察官が一時間にわたって説得し、その人との間に信頼関係を築くことに成功した。しかしそれから、警察官は重大な過ちを犯した。彼はこう言ったのだ。「じゃあいいね、もう終わりにしよう。こっちに下りてきてくれるかな」自殺志願者は、言われたとおり下りてきた。歩道にいた警察官の足元に真っ直ぐ落ちてきたのだ。

 ドイツの作家による長編小説です。原題 "Amokspiel" 。spielが「ゲーム」の意味で、Amokはこれのことかな? デビュー作の『治療島』が話題になっていたのでフィツェックという名前は聞き及んでいましたが、『治療島』はジャンルがサイコスリラーとあって「もうそういうのは食傷気味だよ……」と敬遠しておりました。本書『ラジオ・キラー』も分類上はサイコスリラーになっていますけど、「ラジオ局に武装知能犯が立て篭もり、生放送中の番組を通じて殺人ゲームを執り行う」というストーリーに惹かれ、物は試しと手を伸ばしてみた次第。いくらサイコものには飽きたからって、この設定にワクワクしないでいられるかと。

 まず、無作為に選んだ番号へ電話を掛ける。そして相手が受話器を取り、開口一番に合言葉(キャッシュパスワード)を放つことができたら賞金5万ユーロをプレゼント――ラジオ番組「101.5(ワンゼロワン・ポイントファイブ)」で人気の懸賞コーナー「キャッシュコール」に課せられたルールは、ザッとそんなところだった。体中にプラスチック爆弾を巻き、銃器を持ってスタジオに乗り込み、司会者や見学者を人質に取って101.5をジャックした男は「キャッシュコールは継続する、ただし今からそのルールを変更しよう」と告げる。無作為に電話を掛け、最初のひとことに合言葉を要求するところまでは一緒。変わるのは褒美と代償。もし電話に出た人が正しく回答できれば、人質を一名だけ解放する。逆に間違った回答……たとえば「もしもし」だの「はい、○○です」だのと言ってしまえば、人質を一名射殺する。公共電波を利用した気狂い沙汰のゲームを止めるために駆り出されたネゴシエーターは、犯罪心理学者イーラ・ザミーン。彼女はアルコール依存症のうえ、娘の死が原因でトラウマを負っており、つい今朝も自殺をしようと目論んでいたところだった。徐々に忍び寄る禁断症状や自殺衝動と戦いながら番組占領犯との交渉を続けるイーラだが、次々と予想を上回る事態が発生して翻弄されることに……。

 徹頭徹尾、ひたすら予測不能な展開が繰り広げられるジェットコースター式ノンストップ・サスペンス。「ラジオ番組を利用(悪用)したデスゲーム」に付け加えて「精神状態がボロボロのネゴシエーター」と、しょっぱなからフルアクセルで飛ばしていてハラハラする材料に事欠きませんが、こんなものはまだまだ序の口です。500ページ近い結構な分量を、ほとんどの読者が最初から最後まで口を開けっぱなしにしたまま読み耽るだろうこと間違いなし。いや、そこまで書くと言い過ぎですけども、『デスノート』『コードギアス』みたいにグイグイと話の中へ引き込まれる面白さがあったことは確かですよ。

 犯人がクレバーで一筋縄じゃいかないのはもちろんのこと、ゲームの合間に警察側へ突きつけた要求がまた振るっています。「僕の婚約者を見つけてほしい」と、これだけならまぁ普通の要求です。しかし、調べてみるとこの女性、既に事故死している。この野郎、死人を甦らせて連れて来いってのか!? 犯人は説得に応じず、あくまで「彼女は生きている」と主張して要求を撤回しない。かくして物語は「幻の女」探しの様相を帯びることになります。固唾を飲んで事件の推移に耳を澄ませているだろう作品世界のリスナーたちへ思いを馳せる暇もあればこそ、目まぐるしく変転する状況に適応するためあちらこちらへ飛ぶ視点。読者が混乱しないよう整理しつつ、それでいて単調にならぬよう配慮し、我々の興味を終わりまでしっかりと牽引してくれます。

 ちょっと唐突かな……と感じる部分もいくつかあるにせよ、ほとんどは事前に丹念な手つきで伏線を張っており、クライマックスに来て「急展開すぎる」「こりゃ超展開だろ」と落胆する心配はありません。ぶっちゃけ露骨なほど全編に伏線が張られていて、「ここ、怪しいな」とチェックする場面も少なくなかったのに、それらをうまく綜合できず尿意にも似たもどかしい気分を味わいました。一つ一つキッチリと伏線を拾い、読者の充分な納得を叶えた後も、物語は一向に鎮まることがない。手綱を失った暴れ馬の如く奔騰していく終盤に刮目せよ。思う存分跳ね回りながら、決して乗り手を振り落とすことなく走り切る。こいつはロデオに見せかけた精妙極まりない乗馬術だ。

 サプライズのあまりの多さに感覚が麻痺してしまい、だんだん衝撃が衝撃として伝わらなくなってくるのが難点と言えば難点かな。「驚き疲れる」という珍しい体験のできる一冊です。海外モノに馴染みのない人でも、この圧倒的なスピード感を味わったら虜になること請け合い。食わず嫌いしていた『治療島』も是非読まなきゃな……。

・拍手レス。

 ぎゃあ、送信ミスってる!11eyes、「聖槍十三騎士団」とか妙に既視感のある単語が作中でちらほらと…
 オカルトでネタが被ることはよくあるにしても、想像するだけで目に涙が浮かびそうな光景……。

 yrr読了しました。内容よりであの厚さを読もうと思った人が200万人いるドイツすげー。
 『徳川家康』を読み継いでる日本人もなにげにすごい。

 バキは「だったらイケるぜ!」の解説を読むために本編読んでます。私の場合、完全に主客転倒してますね……
 本編の続きよりも解説の続きが気になるのはガチ。

 「わっち」などの〜ことばって読むんですか?
 すみません、よく分かりませんが廓詞(くるわことば)のことですか?

 だったらイケるぜ!を読む準備として、チャンピオンを手に取る毎週木曜日
 当方は単行本派ですので、新刊を見るたび「これで『だったらイケるぜ!』の続きが読めるな」と微笑。

 マスターアップとりあえずホッと一息ですな。
 私は発売まで様子見。Diesでこりました。
 ……Dies付属の画集、一枚目のカラーイラストを見るだけで未だにイライラですし。

 最近は火中に栗を拾うのが楽しくなってまいりました。

 「登場人物のリストアップ」かつ「意外な犯人」といえば『安楽椅子探偵 ON AIR』が反則スレスレ
 『安楽椅子探偵』は一度も見たことないです。ただ、『どんどん橋、落ちた』にも「意外な犯人」って短編がありましたっけ。

・つい先ほどキャッチした情報ですが、R・D・ウィングフィールドのフロスト警部シリーズ4作目の邦訳版がやっと発売決定になったそうな。タイトルは『フロスト気質』で上下巻の二分冊、刊行は7月以降とのこと。今月はヘニング・マンケルとフェイ・ケラーマンの新刊が出て、来月はスティーヴン・ハンターの「珍作」と名高い“The 47th Samurai”が翻訳される予定。今年の夏は海外ミステリから目が離せません。


2008-05-13.

・高遠るいの『CYNTHIA_THE_MISSION』が相も変わらずやりたい放題な展開で恍惚(ウットリ)している焼津です、こんばんは。どれだけ読み手の顎部を壊せば気が済むのか。溢れんばかりの格闘愛および板垣愛は据え置きのままですんで、『範馬刃牙』の箸休めにはもってこい。それにしても最近のバキは……率直に申して「だったらイケるぜ!」の各話解説がなければもうとっくに読むのやめていると思います。

浅井ラボの『されど罪人は竜と踊る』、特設ページオープン

 「100冊100殺組み手」で被っているのは15冊だけでした。さておき、amazonではもう予約が始まっているのですけれど、分量が450ページ超とな。某書店刊の1巻は350ページ程度だったから、単純に考えて100ページ分の加筆があるわけか。インタビューによると諸事情につき一から書き直したらしいのですが……純粋な新作ではないとはいえ、ひとまず楽しみに待つとしよう。

あかべぇそふとつぅの『こんぼく麻雀〜こんな麻雀があったら僕はロン!〜』、『こんな娘がいたら僕はもう…!!』同梱版発売決定

 『propeller燃焼系3本パック』に比べるとそんなに割安感のあるセットでもないなぁ……バラで買うよりはお得って程度ですか。当方個人は格別麻雀が好きなわけでもないし、それに今回ライターが衣笠彰梧じゃないので『こんぼく麻雀』は迷いなくスルー。

・松井今朝子の『吉原手引草』読了。

「わちきゃ、おまはんの心がなんとのう、わかるような気が致しんす。人の心は深き井戸。身を乗りだして覗いても、暗うて底は見えぬものざます」と仰言った。ちょっとかすれて艶っぽい声が今も耳に残ってる。
(中略)
 葛城花魁がいなくなってから、あの声をよく想いだすんだ。わっちよりもうんと若い葛城さんは、身を乗りだして人の深い井戸の底を見ちまったのかねえ。

 「消えた花魁」の謎を巡る第137回直木賞受賞作。この回は桜庭一樹や森見登美彦、万城目学に北村薫と錚々たる面子が揃っていました。なのに栄冠を獲得したのは比較的マイナーな時代作家とあって「ほぉ」と唸った記憶があります。タイトルに「吉原」とあるくらいだから当然、幕府お墨付きの遊郭街を舞台にした小説であり、様々な人物が主人公相手に語る「証言」を寄せ集めて構成されている。さほど珍しいスタイルではありませんが、終始徹底して「証言のみ」となると間を持たせられるかどうか、作者の技量が問われることになります。直木賞を獲るまであまり注目されていなかった作家とはいえ、キャリアが長いだけにそうした関門も悠々と潜り抜ける手腕は持ちあわせている。軽妙でいて丹念、口語を基調としながらも細かい言葉遣いまでしっかりと気を配った文章であり、テンポの良さも相俟ってするすると引き込まれます。

 葛城――女人にとって、入ることは簡単でも出て行くことが甚だ難しい吉原から、ある日忽然と姿を消した花魁。吉原でも五指に入る格の遊女だったからか、謎に包まれた失踪は注目の的となった。自らの意志で去ったのか? それとも、誰かに拐かされたのか? 働いていた妓楼を中心に地道な聞き込みを重ねるうち、彼女の横顔とその生涯が少しずつ明かされていく。曰く、聡明であった。曰く、大きな瞳が特徴的だった。曰く、稀代の嘘吐きだった。積もり積もった話の数々から、おぼろげに見えてくるものとは……。

 吉原版「藪の中」。始まった時点では主人公が吉原へ遊びに来て雑談に興じているかのように見えるだけだが、次第に彼が葛城という「消えた花魁」の存在にこだわり、隙あらば話を訊き出すべく虎視眈々と構えていることが分かってきます。しかし、物語の進行は必ずしも直線的ではなく、葛城が失踪するまでの詳しい経緯はなかなか掴めません。何度も何度も外縁をなぞり、回り道を繰り返して徐々に核心へ切り込んでいく。回りくどいとも思える構成ながら、読み口の快さと「回り道」そのものが面白いせいで救われております。存分に吉原の風情を味わい、「迂遠さ」そのものを楽しめるあたりは実に心憎い。全体像がどんなだか気掛かりだってのに、ついつい枝葉のエピソードに関心が向いてしまうこと頻繁。

 吉原の苦界っぷりは花村萬月の『私の庭 浅草篇』で触れられていたことが印象的で、花魁道中のきらびやかさと背中合わせで生き地獄の蓋が開きっぱなしというイメージを抱いていたけれど、年季が明けた後も外のお江戸へ出ずに吉原に留まって働き続ける遊女もいる――という部分をクローズアップしているせいか、生き地獄というよりも単に一つの「世界」だな、と割り切った視点が持てます。徒に悲惨さを訴えるでもなく、かと言って全く目を逸らすでもなく、常に淡々とした調子を保つ。そのドライな雰囲気が程好い脱力を誘ってくれますね。で、吉原と言えば何より「わっち」「ありんす」に代表される廓言葉。もちろん本書も全編に渡ってわっちわっちと連打し、思わず『狼と香辛料』のホロを連想してほんのり胸が温かくなりますが……衝撃的だったのは、「よく読むとこの『わっち』とか言ってる奴、男じゃん!」なシーンが度々あったこと。てっきり遊女オンリーの一人称と信じ込んでいましたが、そうか、男でも「わっち」を使うのか……新発見ではありますが複雑な心境。

 最後まで証言の中にしか現れない花魁はまさしく「幻の女」といった風情で、宮部みゆきの『火車』をちょっと思い出したりしました。直球のミステリというわけじゃないにせよ、クライマックスは「おおっ」と膝を叩きたくなる鮮やかな手つきで風呂敷を畳んでくれます。物凄い傑作ってわけじゃなく地味と言えば地味ですけれど、文章回しが巧みで引き込まれるし、キレイにまとまった一冊とは思う。さすがに並み居る作家たちを押しのけて直木賞を制した腕は伊達じゃありません。清々しい気分で読み終えられる快作でした。

・拍手レス。

 このUSHIDOROBOUめ!
 なんだったっけ……ああ、3巻のアレですね。

 ここがヴァルハラか!!
 801好きのワルキューレたちが温かく見守っているイメージで。

 以前紹介されてた11eyes,
 『12RIVEN』を『11RAVEN』と間違って記憶した時期があるせいで未だに『11eyes』と混同します。

 焼津さんともあろう方が、ヴィンランド・サガ未読だったとは!幸村誠作品は、大真面目に「愛とは何ぞや?
 (すみません、ミス)「愛とは何ぞや?」とかやってくれるのがたまらなく好きです。
 ヴィンランド・サガには初物の林檎のような素敵さがあると思うのですよ。

 実はプラネテスが個人的に合わなかったので敬遠しておりました。食わず嫌いはダメですね。

 ツン読回避アゲ。 Y・r・r! Y・r・r!
 今並行して読んでいる『指し手の顔(上・下)』『リベルタスの寓話』『国境事変』『ラジオ・キラー』と電撃の新刊が片付いたら再開させようかな。


2008-05-11.

・来月に新刊も出ることだし……となにげなく崩してみた『ヴィンランド・サガ』が思った以上に面白く、1巻だけを読むつもりがブレーキ利かなくて5巻まで読み尽くしてしまった焼津です、こんばんは。

 11世紀の北欧を舞台としたヴァイキングもので、ストーリーの目標は「父親の仇を討つこと」が一つ、そしてもう一つが「幻の地ヴィンランドへと辿り着くこと」かな? 『プラネテス』の作者がわんさか海賊の出てくる血腥ぇ話を描けるのかな、とも危惧していましたが杞憂もいいところ、派手派手しくもカッコいいアクションシーンの数々をこれでもかとハッタリの篭もった画でたっぷりと魅せてくれる。トルフィンのジェイルハンド(盗賊持ち)がたまんねぇ。男臭いマンガの割にちょこちょこと登場する女キャラが可愛くてグッド。「汝カンインするなかれ」のコマが妙に健全エロっぽくて笑った。まあ、一番の美貌を持ち合わせているのはデンマークの王子様なんですが。あんなムサい野郎どもの中に可憐な一輪が混ざっちゃって、そのうち掘られるんじゃないかと心配になります。やめろ! そこはヴァルハラじゃない!

「ソ連って何?」「ナチスって何?」“若者の活字離れ&知的レベル低下”で映画字幕業界が四苦八苦(痛いニュース(ノ∀`))

 アメリカの小説を読んでいるとキャラクターたちの所属がFBIやらCIAやらNSAやらATFやらDEAやらでごっちゃになって何が何だか分からなくなることが……兎角、軍モノや警察モノは頭がこんがらがりますね。でもそういう特殊機関とか、SWATやSEALみたいな特殊部隊が解説されるたびついワクワクしてしまうのは男の子のSa-Gaか。略語の見た目や響きで一番好きなのはSAS

タイトルだけで購入決定したゲームを教えて!「GF団」経由)

 『腐り姫』。「姫」と「腐る」のギャップに痺れました。今やると腐女子の変種と思われそうですけれど。「貴腐人」みたいな。それと、まだ発売していませんが『水平線まで何マイル?』もタイトルに惹かれています。元ネタは恐らく英国童謡(ナーサリー・ライム)の「バビロンまでは何マイル?」なんでしょうが、ミステリ好きだったせいかケメルマンの『九マイルは遠すぎる』とユースティスの『水平線の男』を連想してしまう罠。

・新潮社の『Story Seller』読了。

 “小説新潮”5月号別冊、という扱いですが、位置付けとしては「雑誌の形態を借りた小説アンソロジー」ってところでしょうか。小説作品と挿絵代わりのフォトグラフによって構成され、それ以外のコラムやエッセイといった読み物は掲載されていません。せいぜい編集前記と編集後記、各作家の略歴と著作リスト、そしてほんの僅かな「筆者コメント」だけ。広告も表紙見返しと裏表紙、裏表紙見返しの三点しかなく、かなりストイックな造りをしています。表紙からしてシンプル極まりないし、本当に「物語を売る」ことに徹している印象が強い。伊坂幸太郎、近藤史恵、有川浩、米澤穂信、佐藤友哉、道尾秀介、本多孝好と錚々たる面子が書き下ろし――控え目に言っても「興味をそそるラインナップ」です。

 「読み応えは長篇並、読みやすさは短篇並」はさすがに誇張が過ぎますけど、それでも全部合わせたら500ページを越える分量はなかなかの読み応えがある。一段組とはいえ45×20ですので、ライトノベル2冊分以上のボリュームは優に詰まっています。何より、名前を見て「読みたい」と思う作家の小説ばかり収録されていることが夢のよう。普段こういうアンソロジーや雑誌は買わない当方でもつい手が伸びてしまいました。この前に読み終わった『サクリファイス』の外伝が載っている、ってのも大きな理由の一つでしたが。

 巻頭一発目は伊坂幸太郎の「首折り男の周辺」。「最近はマンネリ」「質が落ちてきた」という意見もありますし、「そもそも語彙が少なくて単調」と批判する向きもありますが、それでも安定して楽しく且つ読みやすい作風を持った伊坂の新作だけあって堪能できました。「首折り男」というシリアルキラーが出没していて、その手配書に描かれた似顔とそっくりの男がいた。彼は「首折り男」じゃなかった。しかし、あんまりにも似ていたせいで間違われてしまい……といった調子で進む。複数の視点を入れ替えてテンポ良く進む、良く出来た短編映画みたいな内容。伊坂としては可もなく不可もなく、模範的な仕上がりか。キレイにオチはつくものの、ひとつ謎が残ったまま終わるのでちょっと腑に落ちなかったかな。そこを除けば、出だしとして悪くない一作です。

 次鋒は近藤史恵の「プロトンの中の孤独」。『サクリファイス』の外伝ですが、今回収録されている中で一番短く、40ページくらいで幕が降りる。出来は良かったものの、これが主目的だったこともあって少し寂しかった。赤城というサブキャラを主人公に据えたストーリーで本編以前の頃が舞台となっており、本編の主人公はまったく登場しません。そういう意味ではやや肩透かしでしたけれど、確実に本編へ繋がる内容でしたし、間を空けずに読むことができたのは良かったと思う。あと、本編のネタバレはありません。『サクリファイス』が未読の方も安心して目が通せます。著者紹介の欄によれば今年後半に『サクリファイス』の続編が連載開始されるそうで、とっても楽しみ。

 続く三番手、有川浩の「ストーリー・セラー」は今回で一、二を争う大ボリューム。原稿依頼が来た際、雑誌の題名を耳にして思いついたんだそうな。普通の子と比べて語彙が深い――と注目していた彼女は、小説の執筆を趣味としていた。勝手に読んだテキストがきっかけになって付き合い出し、結婚後「新人賞に応募してみないか?」と誘いかけたら、なんと見事に大賞を射止めて作家デビューを果たした。喜びと戸惑いを両手に抱えながら専業作家の生活に移る妻だったが、やがて彼女が奇妙な病に罹っていることが明らかになって……。いかにも有川らしい、「エゴイスティック」と揶揄されそうなほど強烈な押しの強さを持ったキャラクターが登場します。これを許容できるかどうかが一つの別れ目となるでしょう。それにもう一つ。これは不治の病系と申しますか、つまりは難病モノで、しかも現実には存在しない特殊な病気が出てきますから「露骨なお涙頂戴」と受け取ってしまえば途端に冷めてしまうかもしれません。が、その二つを乗り越えることが出来れば後は怒涛の勢いでラストまで掻っ攫われること間違いなし。なんだかんだでパワーのある作家に育ってきたと思います。今年は新刊の予定がたくさんあるみたいで、追うのが大変だ。

 折り返し地点、剣道で言うと中堅に当たるポイントを占めているのが米澤穂信の「玉野五十鈴の誉れ」。「身内に不幸がありまして」「北の館の罪人」「山荘秘聞」につづく“バベルの会”連作の4作目らしい。これまでのシリーズを読んでいないのではきとは分かりませんが、話の中に出てくる「バベルの会」の役割はそんなに大きくないし、たぶんこれだけ読んでも問題ないかと。具体的な時代は明記されていないにせよ、「女が学問なんて」「使用人ごときに教育をつけさせて、いったい何になるというのですか」といった端々のセリフを見るに時代設定は戦前の昭和期だろうか。作中で読んでいるバタイユの『眼球譚』は原書が1928年刊行だから、それ以降とお見受けするが……。跡継ぎたる男子が望まれる小栗家で、唯一生まれた女子――純香の地位は、脆い薄氷の上に成り立っているようなものだった。祖母の隠然たる力が働いて近しい友達をつくることもできず、覇気のない父や魂を抜かれた母とともに過ごす日々。彼女は十五の誕生日を迎えたとき、玉野五十鈴と名乗る付き人を贈られる。同じ年頃の、良く頭が回る少女。「お嬢様と使用人」の関係ながら、密かに五十鈴を友として慕う気持ちが募っていく。祖母を説き伏せ、大学に進学し、五十鈴と一緒に「バベルの会」へ入る純香だったが、やがて運命は彼女たちに大きな試練を与える……。今回で一番のお気に入り。文章のテンポからして心地良く、すっかり没入してしまった。割合ストレートで特にヒネリのないオチとも受け取れるが、「歌」の解釈に背筋が凍ること請け合い。米澤も成長著しい作家というか、『氷菓』からここまで伸びるとは予想だにしておりませんでした。どちらかと言えば当方、『氷菓』はさして評価してなかったんですよね。ただただ不明を羞じるばかり。

 五人目、そろそろ読者も疲れてくる頃に待ち受けている奴こそがユヤタン(あるいはユヤタソ)こと佐藤友哉。作品は「333のテッペン」。結婚して幸せ絶頂な時期に差しかかったせいか「最近のユヤはヌルい」と見る向きも多く、ぶっちゃけ当方もここのところ新作とかあまりチェックしてない。東京タワーの天辺で殺人事件が発生――お茶の間を騒がせる椿事に、タワーの売店で働いている「オレ」も関心を引き寄せられた。殺人の動機はどうでもいい。ただ、単純に、どう殺ったのか? 手法だけが、手段だけが、手口だけが気に掛かる。タワーのお偉いさんが雇った探偵とやらが現場をうろつき回り、警察は何をしているんだと呆れそうになった頃、またしても殺人が起こって……。「三流作家が二日で考えて十日で書いたようなストーリー」と自虐するだけあって東京タワー云々はあまり面白くなかったし、会話の遣り取りや言い回しの中へ如何にも言葉遊び臭いニュアンスを混ぜ込むのも大して効果を上げていないように思えたが、枠内にきっちりと話を収めて小奇麗にまとめる手際は過去に比べて随分と上達している。良くも悪くも角が落ちて、丸くなりましたね。延々と主人公の「壮絶な過去」を仄めかしておいて最後までまったく開示しようとしないあたりはありがちなエンターテインメント作品における皮肉とも捉えられるが、効を奏しているかどうかで見れば、そんなに……うーん、過去のユヤが好きなだけにこれは少し誉めにくい。あと著者紹介の「エンターテインメントと純文学の境界を薙ぎ払い、ジャンルの概念を無意味にするかの如き縦横無尽な独自の作風で、熱狂的ファンを持つ」はいくらなんでも筆の滑りすぎな気がします。

 終わりも近い6作目に位置するのは道尾秀介の「光の箱」。今はなきホラーサスペンス大賞からデビューしたものの、サスペンスやホラーといった要素よりもトリック部分で綾辻行人に誉められ、徐々に足場を新本格方面へ移していった人です。文体は地味だけど、毎度仕掛けに凝る作風で読者を飽きさせません。クリスマス・ソングが流れる時期になって、卯月圭介はひっそりと追憶に耽った。「赤鼻のトナカイ」をモチーフにして書いた、最初の童話。今は童話作家としてそれなりの地位を築いたが、詰まっている思い出の量で言えばあれに勝るものはない。そう、あれには初恋の少女――弥生――が絵を描いてくれて、ふたりで一緒に絵本をつくったのだった。絵本はもう一つ、共同でつくった記憶がある。そのタイトルは、「光の箱」……。ノスタルジックな色合いを帯びた青春小説です。過去と現在が交錯する構成でサラッと一気に読ませる。インパクトに溢れた作品ってわけじゃないけれど、道尾らしい丁寧な伏線の張り方で「あー、なるほど」と頷かせてくれます。

 ラストが本多孝好の「ここじゃない場所」。トリを飾る作品ゆえか、90ページくらいあって結構長い。あとがきによればここに登場する面々を使った作品を構想しているとのことで、言ってみれば「先行掲載された番外編」みたいな感じになるんだろうか? 繰り返される日常に飽き飽きしていて、普通の人にも興味がなく、付き合い出した先輩もたった三回のデートで自然消滅させてしまった郷谷利奈。彼女はある日偶然、クラスメイトの秋山が「テレポーテーション」する瞬間を目撃してしまった。あいつってば超能力者だったのか!? かくして「ここじゃない場所」に飢えている利奈は秋山を有用な観察対象に選び、「リナってば、秋山のことじっと見つめちゃって〜」と勘違いされてからかわれつつも、彼が「消える」瞬間を今か今かと待ち望むが……。発作的にハ○ヒを連想してしまった当方を誰が責められようか! すみません、自分で責めておきます。自責の念を発動させながら書くとしまして、まあ、そういう調子でちょっとライトノベルっぽいボーイ・ミーツ・ガール譚なのですよ。ハ○ヒ・ミーツ・DI○。目の前でザ・ワールド行使されて「あ……ありのまま今起こった事を話すわ!」と動揺しているハ○ヒを想像してもらいたい。いえ、やっぱりしなくていいです。自責継続。秋山に無理矢理テレポートをやらせようと強肩駆使して硬球投げつけたりとか、ヒロインが香ばしいほどアレなキャラクターにつき、男性読者の人気を得るのは相当難しいでしょうな。シリーズの番外編であり、まだ始まっていない以上感覚としてはプロローグみたいなもので、「連続する殺人事件」などと風呂敷を広げたくせに「その話はまた次回」とばかりにあっさりスルーしちゃう。なまじストーリーテリングに長け、読者をぐいぐいと引っ張ってゆく力強い腕を持っているだけに拍子抜けな結末ではあった。しんがりに置かれた話にしては若干物足りない読後感。

 「こりゃ年間ベスト級だな」と唸るような作品はなかったし、「期待したほどではない」と落胆する作品もあったが、総じて「つまんねー、読む気失せるわ」というものはなくて最後までそれなりに楽しんでページをめくることができました。寄せ集めのアンソロジー、読み捨て可能な雑誌としてはまずまずのクオリティ。値段分はしっかり面白がらせてくれた。全編書き下ろしにしては破格といっていい価格設定であり、「暇潰しにパラパラと読む本が欲しい」という方にはひとまずオススメしておきたい。なにぶん雑誌なので時間が経つと入手しにくくなるかもしれず、気になる方はなるべくお早めに確保なされるよう推奨致します。

・拍手レス。

 ドラクリウスはどうなっちゃったんでしょう?面白くなかったですか
 今やっと最終章に突入。面白いんですが思ったより長くてなかなか終わりません。

 むげんかいろうはいろいろとめざめますよね 何気に三女からの扱いが一番ひどいですよね
 サドい次女が実は主人公を一番人間扱いしている節もあり、凄まじく印象が変容していきまますね。

 痕が再度リメイクで今度はフルボイス化だという話、葉もそろそろやばいのかなぁ
 またリメイクするとは……うたわれで遂げた再起も今となっては過去の話か。

 今年はどうやら業界の厄年っぽいですね・・・
 好きな作家さんから、逮捕者や死人が出ない事を祈るばかりですorz

 吉報も多いですし、一概に厄年とも言えませんけどね。

 文学少女の5巻はけっこう修羅場だからアンタは気に入るはずなんだぜ?
 だからせめて3巻と5巻は読もうよー。 他の巻はいいから。

 たぶん完結する頃には読み出すかと。

 焼津さんの中では森博嗣はどういう扱いなんでしょう。
 言い回しが好みな作家。「その一番美しいものこそ、お前の敵だ」とか。

 ハルヒの性転換が流行ってる?みたいですけど、どうです?
 キョン子とかのアレですか。ハルヒは途中で飽きましたからあんまり興味が……。


2008-05-09.

・ようやっと『オイレンシュピーゲル肆』を読み終わって一段落ついた焼津です、こんばんは。

 先に『スプライトシュピーゲルIV』を読んでいたから大まかなストーリー展開は知っていたけれど、それで楽しめなくなるかと言えばさにあらず、400ページたっぷり楽しませてくれました。挿絵のガンバイクがなぜか左腕だったことと、千々石や蜘蛛の巣フランツ、沈黙のオーギュストといった面々が鳴りを潜めていたことは残念だけど、最初から最後までアクション尽くめで読み手を飽きさせない筆致に忘我致しましたのでヨシとする。ご満悦なり。しかし今更ぐぐって知りましたが、千々石の名前の元ネタって天正少年使節の一員かよ! 『クワトロ・ラガッツィ』はいずれそのうち読もうと思っていたのに……これじゃ千々石ミゲルの名前が出てくるたびこっちの千々石を連想しちゃうじゃないですか。あと『黒い季節』に登場したキャラと同じ名前の新キャラが出てきましたが、言われるまで気づかなかった当方は冲方ファン失格。

普通にネタバレされるより「衝撃的な結末」とか書かれるほうがネタバレ度が高いのはなぜなんだぜ?「独り言以外の何か」経由)

 しかし、最良かつ最も確実なカムフラージュは、常に、むき出しの真実であるとわたしは思う。奇妙なことだが、誰もそれを信じないからだ。

 今読んでる本の一つから孫引用。「結末は誰にも言うな」系のキャッチコピーで有名なのは『シックスセンス』ですが、あれも是非を巡って議論になった覚えが……「最後の最後に待ち受けるドンデン返し」とか、書きたくてウズウズしていてもネタバレになりかねないから泣く泣く触れずに済ませるってことはしばしばあります。ただ、ジェフリー・ディーヴァーあたりになるとあまりにも頻々とドンデン返しを繰り返すせいで却って気兼ねしなくなるけども。言っても言わなくても同じというか、短編集なんか収録作全部がドンデン返しだったような。あと、中西智明が書いた『消失!』のラストには新本格ミステリでも一、二を争う威力のサプライズが待ち受けていますが、んなことをバラした程度であの驚愕が薄らぐなどとてもとても……かつて当方も評判を耳にして「ほほう、お手並み拝見といこうじゃないの」と余裕の笑みを浮かべつつページを繰りましたが、最終的にはドタマ吹っ飛ばされましたし。ありゃスズツキーの徹甲鉄拳(パンツァーファウスト)と一緒。来るのが分かっていても防御しようがない。泡坂妻夫が物した奇作『しあわせの書』も絶句必至の一冊っつーか、あれはむしろそう書かないと仕掛けに気づかない人も出てきますから……乾くるみの『イニシエーション・ラブ』も「二回読め」ってコピー打たないとただの恋愛小説と思われかねず、警鐘的な意味合いとして「衝撃的な結末」を使うのはアリかな、というのが当方の意見。

 それとはちょっと話題がズレるんですが、ミステリで犯人候補のリストを挙げることってよくありますよね。あれで「リスト外に犯人がいた」というパターンはぶっちゃけフーダニット(犯人捜し)としてアリなのだろうか? 死んだと思っていた奴が犯人とか、この場にいないと思われていた奴が犯人とか、出番が一度か二度くらいで名前も出てこない奴が犯人とか。この手の「リスト外」系をやるとアンフェアに思われることもあるし、キッチリとリストをつくってその中にちゃんと犯人がいる――という形式にすることが望ましいのかもしれないけれど、実際に「死んだことになっている爺さん」「海外旅行へ行っているはずの男」「主人公を屋敷まで送ったタクシーの運転手(本名不詳)」がリストアップされているとネタにしか見えません。本当に犯人だったとしても白けます。厳密なリスト化が行われればわざわざ反則スレスレのサプライズを仕込む意義も希薄になり、「意外な犯人」を設定しようってチャレンジする精神も掻き立てられなくなるでしょう。「リスト外」が認められないならば、フーダニットは本質的に「意外な犯人」が封じられているんじゃないか? いくらフーダニットとはいえ「リスト外があるかもしれない」と疑う余地を残さないと、面白みに欠くのでは? かと言って、厳密なリストアップができない状況ではネタ臭い犯人が頻出しかねず、フェアプレイの線引きが難しくなる……といったようなことを昔は大真面目に考えて悩んでおりました。当時の文章読み返すとこんなんばかりで、我がことながらさすがに辟易します。

Black Cycの『夢幻廻廊』、体験版をプレー。

 愛情たっぷり残飯たっぷり。客の食べ残しをリサイクルしていた高級?料亭でふとこのゲームを思い出し、だいぶ前にDLしていた体験版を起動させました。記憶をなくし、大きな屋敷の前で行き倒れていた美少年が主人公。行くあてもない彼は、屋敷の女主人に「ここに置いてください」と懇願する。かくして少年は「たろ」という名前を与えられ、ヒトにして家畜の如き「かとる」へと身を窶してゆく……エロゲー版『家畜人ヤプー』とも言うべき真性ラブレスマゾゲーです。象徴的な小道具が「靴下と残飯」であることから察してください。本作のみならずBlack Cycがリリースするソフトは癖の強いキワモノが多く、当方も評判だけ聞いて敬遠しておりましたが、いざやってみると見た目ほどキツくはなかったです。

 館モノということもあって随所におどろおどろしいホラーチックな装飾も施されていますが、ノンケのプレーヤーをあまりビビらせないようコミカルな要素を仕込んだりと、それなりの配慮も敷かれている。M属性が欠片もない人にとっては理解も共感も拒まれ、何が面白いのかまるで掴めない世界でありましょうが……少しなりとも「綺麗な女性や可憐な少女から一方的に虐げられたい欲望」を持ち合わせている人ならば堕ちるところまで堕ちていくこのプライド廃棄奈落に魅せられるはず。ヒューマンディグニティ、フォーリンダウン♪ ですます文体を基調としたテキストは読みやすく、隷属と盲従の特殊嗜好ゲーでありながらスイスイと読み手を引き込んでいきます。無邪気な幼女3名に玩弄されるシーンでも、

 今までのお2人は、不慣れでぎこちない手の動き。
 だけど、今度は全然違います!
 今度のは、まるで天使の手のひら。
 僕のちん○んだけを天国に連れていくために下りてきて手こきする天使のような……。
 そんな、高度な技術を持ったお手こきでした……。

 などとユーモラスな描写があって笑みがこぼれました。逆に、普段は温厚そうな長女の薫子がムカっ腹を立て「おしおき」する段になると存分に残酷性を発揮するあたりとか、シナリオにちゃんと緩急・強弱が付いていて飽きさせません。「かとる」「いっぷ」といった独自用語もムードづくりに貢献してる。ちなみに「いっぷ」は「躾」の意で、「いっぷする」というふうに使います。「セックスする際に必ず靴下の臭いを思い出すよう条件付ける」パブロフの犬めいたフェチ調教――いわゆる「くつしたおいしいかおるこさまだいすき」や、ペット用の皿にてんこ盛りされた生ゴミ+ヒロインの吐いた痰まじりの唾を犬食いさせられる食事シーンはさすがにヒキかけましたけど、『夢幻廻廊』の持つ異様な雰囲気に慣れてくる(ってか呑まれる)と不思議なほど許容する心が湧いてきて、最終的には軽々と受け入れてしまった。眠っていたモノを目覚めさせる、という意味で結構あぶないゲームかもしれない。

 やりすぎてギャグみたいになっている部分もあるにせよ、根底に位置する「支配する側/される側」という意識の断絶は終始一貫しており、支配者たる姉妹たちの善悪を超えた無頓着な行動と被支配者たる主人公の誇りを失い麻痺してゆく感覚は「プレイが終わった後はみんな仲良し」のなんちゃってSMを突破した領域に差し掛かっている。「身分違いの恋」だなんて生温い、本当の「階級差」を貴様らの脳髄に叩き込んでやんよ……というスタッフの囁きが聞こえてきそう。人体改造みたく極端なシチュエーションに走らずともここまでやれるのだな。思わず唸りました。

 形式としては同じ話が何度も繰り返されるループ系のシナリオですけれど、周回を重ねることで細部が明らかとなる構成には鳥肌が立つ。虫食いされていたテキストの穴が少しずつ埋め直され、「なんか辻褄が合わないな、端折られている箇所でもあるのか?」って疑問も徐々に解けていきます。最初に感じていた姉妹の美しさが、スイッチを切り替えるようにグロテスクな異物へ変貌する過程に酔う。あと体験版の収録範囲ではありませんが、聞くところによれば館モノのお約束として「炎上」もしっかりあるらしい。

 亀頭に薬を塗られ、散々焦らされたうえで「おぺにすいじり」を解禁してもらい、感謝と感激の余り喜悦を交えて漏らすセリフが印象深かった。「おぺにすさん、きもちいいです! おなにー、ありがとうございます!」……サドマゾ云々以前に、我々にはこうした日々のオナニーを感謝する気持ちが欠けているのではないか、と痛感することしきり。射精後の興奮から冷めてふと我に返る瞬間を「賢者タイム」と呼ぶそうですが、賢者化して己の所業をディスる暇があったら男性諸君はもっと懇切丁寧におぺにすさんを敬い、共に居る幸福をソウルフルに噛み締めて誠心誠意リスペクトするべきではなかろうか。当方は以後毎日、食前と食後の祈りの如く「おぺにす、しあわせですぅ!」を唱える所存にございます。まぁ、嘘ですが。

・拍手レス。

 お行儀のいい業界かっつー話ですよ>その論理で次に何かやらかしたら、問答無用で実刑ですが
 行儀良くしてなさい。次は執行猶予は無いですよ>タイホされた人へ

 狭い業界の論理が世間様に通用するなんて、そんな甘ったるい考え方はやめようね>業界の人へ

 「業界の行儀」論については語り得ないので沈黙するしかない。

 Y・r・r! Y・r・r!
 結局プロローグすら読み終わらなかった……。

 レヘインが好きなら、Dハンドラーのホーギーシリーズもお勧めですよ。
 しかし、海外ミステリ市場の冷え込みはきつい。年々店の陳列スペースが少なくなり、古典しかおいてない。

 森博嗣がハンドラー好きということで集めてみたけど見事に積んでます。そして海外ミステリ市場はマジにヤバそう。うちの近所なんか最新刊すら棚差しになってる。

 コムロードの悪い冗談とG線新スレのテンプレに嫌な未来しか見えませぬ
 まさか、流出位階?

 そういえばミスマルカのニ巻出ましたが、買われました?
 次の日曜にでも買ってこようかな、と画策中。

 ライアーに大型爆弾がセットされた模様です…!
 ここに来て姉妹ブランド設立とは……むしろ今までなかったことの方が不思議か。

 そろそろ皆、りすかのことを思い出すんだ。
 りすかは大風呂敷を広げるんだか広げないんだかハッキリしないあたりがちょっと。


2008-05-06.

・ラーメン屋でうっかりニンニクを潰さずにそのまま食べてしまった焼津です、こんばんは。目の前にマッシャーがあったのに、なぜ気づかなかったんだろう……あれですね、ニンニクってこう、生で丸齧りしたら「ゆっくり苦しんでいってね!!!」とばかりに結構な刺激が口腔へ広がりますわ。魔除け扱いされるのも伊達じゃねぇ威力。たぶん吸血鬼の野郎も丸ごと一個咀嚼しちゃって苦しんでるところをフルボッコされたに違いない。この現象をひとまず「ガーリック・スーサイド」と呼ぶことにします。きっと二度と呼ぶ機会はないでしょう。

・デニス・レヘインの『雨に祈りを』読了。

「どうして自分が笑ってるのか、わかんないわ」
「おれもだ」
「いやなやつ」
「ばか女」
 アンジーは笑い声をあげ、グラスを持ったままこちらを向いた。「わたしに会いたかった?」
 きみが想像もつかないほどね。
「ぜんぜん」わたしは言った。

 個人的にとっても愛好している“パット&アンジー”シリーズの5冊目。現時点での最新刊であり、続編はまだ原書すら出ていない模様です。訳者あとがきによれば『ミスティック・リバー』ともう一つノン・シリーズ作品を書き上げてから着手する予定とのことで、「もう一つノン・シリーズ作品」に当たる『シャッター・アイランド』は2003年に原書が出ていますから直後に取り掛かったとすればそろそろ上梓されていても良い頃だと思いますけど、ザッと検索して情報を掻き集めてみても分かったことは2006年に“Coronado ”という第一短編集を出していて、近々“The Given Day”という歴史小説の発売を控えているらしい……ということぐらい。検索で見つけた訳者インタビューによるとあと1、2作は書くつもりとの話だが、いつになることやら。ちなみに“パット&アンジー”という名称はあんまり使われていなくて、“ケンジー&ジェナーロ”が一般的みたいだ。

 裕福な家庭に生まれ、美しく育ち、下世話なものとは無縁で物静かな女性――依頼人カレン・ニコルズに対する第一印象はそんなところだった。度重なる惨劇と悲劇、そして事件の結果を巡り、相棒にして恋人たるアンジェラ・ジェナーロと袂を分かつ羽目に陥ったパトリック・ケンジーは探偵稼業に心底嫌気が差していたが、「しつこく付きまとってくるストーカー男をなんとかしてほしい」と懇願し涙まで浮かべる妙齢の婦人には抗えず、幼友達にして“歩く武器庫”の異名を取るブッバとともに胸糞悪いストーカー野郎をとっちめてやった。それから半年後。カレンはカスタム・ハウスの展望台から全裸で身を投げ、この世を去った。恋人の青年は自動車に撥ねられ植物状態、仕事はクビになりアパートから追い出され、亡くなるまでの二ヶ月間どこに住んでいたかは警察でさえ探り出すことができなかった。依頼された仕事を終えて数週間経った頃、事務所の電話に残された伝言――今となっては彼女が発したSOSであることが明々白々な留守録メッセージ――をくだらない理由で聞き流してしまったパトリックは、身を焦がすほど強い自責の念に苛まれ、誰のためでもなくただ衝き動かされるようにカレンの死の真相を突き止めようと決意する。やがて彼はカレンを自殺に追いやった途方もない「悪意」の一端を掴み始めるが……。

 「幸せの根拠」とでも言うのか、「これとこれとこれがあるから私はハッピー、もしなくなったらとても生きてはいられない」というエッセンシャルな要素を一つ一つ、丹念に潰されていったら人はどうなるのだろう? 単純に暴力を振るって脅すのではなく、じわじわと真綿で締め付けるように人生の土台を削り取っていく執拗な「悪意」が今回の対決相手です。ファンの人気が高く、既に映画化もしている前作『愛しき者はすべて去りゆく』のラストで意見の相違により「別離」という結論を迎えたパトリックとアンジー。ふたりの掛け合いが大好きだっただけに、前半はかなり寂しい思いをしました。その分“歩く武器庫”ブッバ・ロゴウスキーの出番が増えたから、収支トントンかな。今回はブッバ大活躍な巻でした。読み書きができず、犬好きで、住居には不法侵入者を撃退すべく地雷を仕掛けていて、古くからの友人に「発狂した二歳児の顔」とまで言われるような面相を持っており、違法武器売買を生業とする……言うまでもなく、シリーズ随一の強烈な個性を有したキャラクターです。知性は乏しいもののバカではなく、野生的な勘であらゆる危地を凌ぐスーパータフガイ。彼が主人公になれば、たちまちこのシリーズはハードボイルドを廃業してハリウッド映画ばりのアクション大作に変わり果てるでしょう。今回も結構派手だったけど、ブッバの経歴に比べればまだまだヌルい。

 「面白いけど初期の傑作ほどではない」といった評価が下るのはシリーズもののさだめであり、避けられぬ宿命ってなところですが、本書もその例に漏れない。小説的な技巧はひたすら階梯を駆け上がる一方で非常に読みやすく、もはや練達の域に差し掛かっていると評しても過言ではありませんが、反面で新鮮味や荒削りな勢いが減って良くも悪くも安定し切ったムードが漂う。「ファンなら寛いで楽しめる」と言えば聞こえはいいけど、「マンネリだ」という謗りも免れない。結局はコネの力でどうにかするというか、困ったときの知り合い頼みが多く、主人公自身が奔走している印象は薄かった。犯人側も人脈を駆使して圧力を掛けてくるので、「嫌な奴」とは思えど「怖い奴」とまで感じなかった。amazonのレビューにあった「人脈合戦」が言い得て妙。あくまで一定の水準は保っていて「劣化」と呼ぶ次元にまで落ちていないことは救いながら、毎度毎度主人公たちが大変な目に遭うせいで今後ちょっとやそっと事件が起こっても驚かないと申しますか、累積的にハードルが高くなってしまっており、傍観しているこちらからしても「どうやって飛び越えるんだろう……」と途方に暮れる部分があります。大好きなシリーズではありますが、たとえ新作がリリースされたとしても生半な出来であっては満足することなど叶わない。しかし、放り出さないでほしい、やっぱり続きは読みたい、と願う気持ちがあることも確か。

 最近の海外ミステリ市場はすっかり冷え込んでいるみたいで、新作が出ても無事に翻訳されるかどうか危ぶまれるところですが、完結まで付き合えることを祈ってただただ待つことにします。シリーズを布教しつつ。この“パット&アンジー”は『スコッチに涙を託して』が一作目で、邦訳版のタイトルがダサいことを除けば自信を持ってオススメできる内容です。別に主人公が飲んだくれなわけでもありませんし。二作目の『闇よ、我が手を取りたまえ』『愛しき者はすべて去りゆく』と並ぶ代表作であり、一作目がピンと来なかった方にも是非に推したい本。三作目の『穢れしものに祝福を』はもっとも評判の芳しくない一冊ながら、当方としてはこれが案外気に入っていたり。全体の出来はともかくとして、個々のシーンにおける言い回しや登場キャラのインパクトはシリーズ一、二を争うと確信している。さて、シリーズ作品を全部読み終わった以上はノン・シリーズのミスリバや閉鎖島にも手を伸ばさなきゃ。特にミスリバはレヘイン(早川ではルヘイン)の最高傑作と名高いので期待しております。

・拍手レス。

 タユタマといえば声優が無駄に豪華でビビリました。釣られざるをえない。
 ヒロインが設子さんだったり男友達が置鮎だったり。一番噴いたのは親父ですが。

 例え何があろうと毒めぐは毒めぐですよ。罪を犯したならばその相手に償うこと。それが何よりも大事。
 ていうか、条例の一つや二つでビビるほどお行儀のいい業界かっつー話ですよ。
 まったく。

 息災を祈るばかりです。

 CROSSNETの『彼女×彼女×彼女』、「とある魔術の〜」の挿絵の人の絵に見えるのは気のせいですか…
 塗りを含めると石恵っぽいかな、とは思いましたが灰村キヨタカは……うーん。


2008-05-03.

・分厚い本大好きっ子ってこともあり、出版社の謳い文句に易々と引っ掛かって『深海のYrr』全3巻を衝動買いしてしまった焼津です、こんばんは。フランク・シェッツィングというドイツの作家が書いた海洋SF。同作者による『知られざる宇宙』というノンフィクションも去年に邦訳が出ています。『深海のYrr』は原題が "The Schwarm" (群れ)で、様々な文学賞を獲得し、ドイツ国内では200万部を超える売上だとか。翻訳版は1冊あたり約550ページ、総計して1650ページほど。最近のハヤカワは字が大きくなって嵩が張るようになってきたけど、それを勘案してなお瞠目に値する分量です。黄金週間の残りで読み切ろう、といった感じで一応チャレンジしてみる心づもりですが、まぁ十中八九討ち死にでしょうな。

 厚いといえば『ダブルブリッド』の最終巻もなかなかの厚さになるみたいで心のカイゼル髭がビンビン震えるぞ。

新潮社、第21回山本周五郎賞候補作を発表

 いい加減そろそろ伊坂幸太郎が獲るんじゃないかなぁ、と予想しつつも個人的には今野敏の『果断』を応援したかったり。『隠蔽捜査』の結末から所轄署に飛ばされた警察官僚(キャリア)の竜崎伸也が、「管轄内で銃を持った強盗犯による立て篭もり事件発生」の報を受け、SAT(Special Assault Team=特殊急襲部隊)を現場へ突入させるか否かの判断を強いられて……というサスペンス色の配された警察小説です。『隠蔽捜査』を読んでいまひとつハマり切れなかった当方が今現在竜崎シリーズに熱中しているのも『果断』があったればこそ。一気に読める話なので前作を知らない人にもオススメしたい。

ぼとむれす、遂に『おまかせ! とらぶる天使』の体験版第2弾を公開

 天変地異の前触れかーっ!?

 これならひょっとするとひょっとして製品版の年内発売も……いやいやいやいや。

CROSSNETの『彼女×彼女×彼女』体験版をプレー。

 正確には「ωstar」というブランドから出るみたいですが、CROSSNETと書いた方が分かりやすいかと。タイトルは「かのじょかのじょかのじょ」と読むみたいだけど、面倒だから「かのきゅー」と略す。故郷の島で火山が噴火し、避難を余儀なくされた主人公が親戚の三姉妹が住む家に転がり込んでドタバタとラブコメる、ごくごくありふれた同居系エロゲー。いや、オラが島のボルケーノが火を噴くぜ! なプロローグはそうそうないですが。

 厳密に言えば、ラブコメというよりエロコメかもしれません。原画はBOINシリーズの八宝備仁、塗りが変わったせいか印象もガラリと別物に。グラフィック面はかなり華やか。雑誌で見かければ思わず目に止まるレベルです。それだけなら「絵だけゲー」「パッケージイラストに騙される奴が後を絶たないタイプ」で片付けるのですけれど、ところがどっこい、かったるい恋愛描写をうっちゃって展開するシナリオは米粒を噴きかねない代物。「朝だよー、遅刻するよー」と起こしにきたヒロイン、抗う主人公、掛け布団を剥いだら朝勃ちしたムスコが「おっはー」でヒロイン赤面――と、これならまだ「ラブコメ」の範囲に収まるでしょう。

 しかし、かのきゅーは違う。「バタバタやってるうちに、アクシデントでムスコがヒロインのショーツの中に入ってしまった」。もう一度、言い方を変えて書きます。「誤ってショーツがチ○コを挟んでしまった」。はい、説明されても分かりませんよね。公式サイトのギャラリーにある先頭のCGをご参照ください。何をどうすればこんな事態が発生しうるのだ。この条理を覆すアホアホしさ、まさしくハイレベルの「エロコメ」と見たり。頭の悪さ絶頂というか、違う方向で天才性を発揮しています。ここまで後退のネジが外れているといっそ清々しい。

 変なところで常識とか、良識とか、何より照れが混じってしまうとエロコメはたちまち破綻する。どんなにバカだろうとどれだけ無茶だろうと、ひたすらエロのエロさを信じて恥ずかしげもなく邁進する者だけがエロコメ道を極めうるのです。必要なのは、迷いのない足取り。体験版の範囲以降もずっとこの調子でお手軽エロをベースにしながら進むというなら、まことに楽しいソフトとなるでしょう。八宝備仁の絵は鉄板ですし、たまにはこういうゲームにも手を伸ばしてみるか……。

 最近はこれの他、某所の評判に釣られて『タユタマ』『夏空カナタ』の体験版もやりました。食わず嫌いしかけていましたが、実際プレーしてみると両方ともなかなか良さげ。どれも基本は昔と変わらぬ電脳紙芝居ながら、個々の要素が細部に至るまでえらく豪華になっていて思わず遠い目をしそうになる。エロゲーなんつー至極マイナーなジャンルを地道に盛り上げてくれていってる人たちのことを想うにつけ「ありがてぇ、ありがてぇだ!」という気持ちでパンパンに張り詰めて腹腔がはち切れそうになります。なんだかんだでエロゲーは大好きだ。

・原作:綱本将也、漫画:ツジトモの『GIANT KILLING(1〜5)』読んだー。

 エースストライカーではなく、「監督」を主役に据えた少々珍しいサッカー漫画です。マイク・ハマーのシリーズに『大いなる殺人』(原題 "The Big Kill" )という作品がありましたがもちろん無関係。原作の綱本将也は他にもサッカーものを手掛けているみたいですが、そっちに関してはタイトルしか知らず、読むのはこれが初めてとなります。スポーツ系の漫画は新刊が出るごとにサッと読むよりも、ある程度溜めてガーッと一気呵成に味わった方が楽しいので、これも「5巻くらい溜まってから読もう」と至ってノンビリ積んでおりました。先月に5巻が刊行されたのでそろそろ頃合と睨み、買ったまま剥がしていなかったシュリンクを破っていざ読み始めたら……本当に面白いでやんの。またたく間に1巻を読み終え、その後も2巻、3巻、4巻……と立て続けに読み耽り、最新刊である5巻までアッサリと消化し切ってしまった。5巻はちょうどいい幕切れでホッとした次第。

 この漫画のストーリーはだらだらとあらすじを紹介するまでもなく、「かつて日本代表だった選手が海外から帰国し、かつて所属していた――そして今はスッカリ弱小化した――チームを、今度は監督として鍛え直す」程度で事足ります。連戦連敗、「最弱」の汚名を拭うことができず、存続すら危ぶまれている落ちこぼれ集団。そんな「弱い奴ら」を発奮させ、強い連中(ジャイアント)をやっつける(キリング)……非常にストレートな熱さを孕んだ作品です。

 幾度となく衝突を繰り返し、徐々に深まっていく個々のキャラクター。変わらなければ勝てない、変わったつもりで同じことを繰り返していちゃ意味がない……「前に向く」ことに懸命で、死に物狂いの活躍を見せる選手たち。横溢する爽快感がたまりません。くだくだしい解説は一切必要ナシ、単純明快な面白さに魅了されて「つづきまだー?」と言いたくなる。特にサッカーが好きというわけでもないけれど、思わず熱中してページをめくってしまうようなパワーが紙面のそこここに篭もってますね。あと、個人的には黒田が気に入っています。煙たいキャラと思いきや、どうしてどうして、なかなか憎めない野郎だ。王子といい、普通ならウザくなりそうな奴をうまく扱っている点がグッドです。

・拍手レス。

 『護樹騎士団物語[』今月発売だったのですか。知らなかった。今度こそ生殺しはよしてほしいと
 予想できる現実から目を背けながら粛々と発売日を待つ所存。そうそう、紅は延期だそうです来月に

 水月(というか夏見)は戯れのできぬ男よ。紅の延期(5/2→6/4)はあらら、ですね。

 (同容量のノベルスと比べて)ムダに高い価格と外で開く事を想定していない装丁がムカついて、
 BOX系の本は買っていないのですけれど。「語」系それなりにおもしろいのなら買ってみようかしら。
 (正直に言えば戯言シリーズの最後の真人間っぽいいの字に萎えたというのもある)

 BOX自体は大っ嫌いですしネコソギの下巻にも萎えたので最初はスルーしていましたが、いざ読み出したら速攻で夢中になった次第。至ってベタベタな青春ラブコメですけれど、「くっつきそうでくっつかない二人のもどかしい関係」でダラダラと引き延ばすことなく2話目でアッサリ付き合い出すあたりが好き。

 美鈴川かわいいよ美鈴。意地張って一人だけ仲間はずれになって落ち着き無くチラチラ見るシーンがもうっ!
 みりん先輩は本編でちゃんと活躍できたのかなぁ。微妙にヤムチャ臭い感じがして不安。

 Meteorといえば神樹の館やClover Pointの良作を出してたとこなんですけどねぇ…。
 何の前触れもなかったのに……諸行無常ですねぇ。

 追送検されたそうですよ>例の逮捕された人
 産経のサイトで見ました。

 淫行の「毒めぐ」って・・・orz
 今年はショックな出来事が絶えません。

 ダブルブリッドXまであと僅か、この時を待っていた。あきらめていた空想が現実に。
 そろそろ8巻と9巻の積みを解消しなきゃ。


2008-05-01.

Meteor、解散

 なん……だと……?

 つい先日に『Clover Point』の体験版やって「よるよる(小鳥遊夜々)の出番たっぷりなFDが発売したら本編と併せて買っちゃおっかなー」と思ったのに、そんな淡い欲望は文字通り隕石となってぬばたまの夜々の森に降り注ぎ、燦然と燃えて露と消えました。ロミオがシナリオ書いた『神樹の館』を出したのもここだったっけなぁ。無念。

・今月の購買予定を。

(本)

 『傷物語』/西尾維新(講談社)
 『紅 kure−nai(1)』/山本ヤマト(集英社)
 『護樹騎士団物語[』/水月郁見(徳間書店)
 『ふおんコネクト!(2)』/ざら(芳文社)
 『バカとテストと召喚獣4』/井上堅二(エンターブレイン)

 文庫化情報。恒川光太郎の『夜市』が出ます。表題作が日本ホラー小説大賞受賞作。また初の単行本でありながら直木賞にもノミネートされました。キレの良いリズムを持った文章がスッと肌に忍び込んでくる、実に目を通しやすい作風です。個人的には併録されている「風の古道」の方をオススメしたい。そして古川日出男の『ベルカ、吠えないのか?』、こいつも来ます。同じく直木賞候補作。さる軍用犬の血統を追うことで世界各地の戦争史を紐解いていく「イヌのクロニクル」。作者本人が「自意識過剰」と認める文体だけに、合う人と合わない人とで大きく評価に差が生じそう。古川の本としては長すぎず短すぎず、評価も割と安定している一冊なのでリトマス試験紙として使うにはちょうど良いでしょう。内容的に『ロックンロール七部作』も続けて読むと更にグッド。

 『傷物語』はアニメ化が決定した『化物語』の続編。とは言っても時系列で言えば本編よりも過去で、いわゆる「前日譚」に当たる。雑誌“パンドラ”に掲載された分を既に読んでいますし、書き下ろしもなさそうだから買う必要はないんですけど、この阿良々木暦シリーズは大好きなんであえて購入。『紅』は片山憲太郎原作の同題ライトノベルにて挿絵を手掛けている山本ヤマト自身がコミカライズしたもの。原作の新刊はアレでしたが、そこは割り切るとします。マンガ版は山本ヤマト以外にもいろんな人が制作に加わっているらしいが詳しいことは知りません。気になる方はぐぐってくださいませ。イラストレーター本人によるコミカライズと言えば『鋼殻のレギオス』がオリジナルの外伝やってて結構イイ線行ってましたね。護樹騎士団の8巻は待ちに待った新刊。7巻は上下2分冊で読み応えたっぷりであったにも関わらず、すんごく気になるところで終わっていて生殺し状態でした。なので喉から貞子が出るほど待ち遠しかった次第。まあ、8巻もきっと生殺しエンドだろうけどな。このシリーズを読むことは陵遅(レンツェ)を受けるも同然。

 『ふおんコネクト!』、遂にあの超高密度4コマの2巻がお目見え。タイトルの割にふおんよりも三姉妹がストーリーの中心になってきましたが、それは些細な問題です。「実は三姉妹の全員が血縁関係じゃない、名字の違う人もいる」といった複雑な設定をベースにして展開したりと、とにかく一度読んだだけでは把握しきれません。ネタにしろ背景にしろ、とにかく描き込みが濃厚で細かすぎる。仕掛けたギミックの数々が間口を狭めて新規読者の流入を阻みつつ、コアなファンの四肢をガッチリとホールドして蟻地獄の底へと誘う。囚われたら最後、ひたすら再読するしかない。二度、三度と繰り返し丹念に読み込むことでふたたび世界は動き出す。それがZARAワールド。バカテスは3巻の衝撃的な結末から9ヶ月も待たせてくれちゃって……お前は高橋弥七郎か! とツッコミたくなる待望の修羅場巻。シャナにおける876の凶悪極まりない話の止め方は今更言及するまでもありませんね。とまれかくまれ本格的な三角関係が開幕とあって心躍らせるより他なし。あと秀吉にも期待。

(ゲーム)

 『クロノベルト』(propeller)
 『G線上の魔王』(あかべぇそふとつぅ)

 某クルくるが延期したため、今月はこの2本に絞られた。『クロノベルト』はあやかしと弾丸執事のクロスオーバー・ファンディクス。合同なのではなく、交錯しちゃうのです。びとはともかくBBはまだ攻略してないので、購ったところで積むことは確実ですが、まー買うだけ買っておこうかと。G線はかれこれ半年越しの「確定」か……先々月に『車輪の国』連作をやってなければあるいは回避を検討致したかもしれませんが、今やその道は閉ざされた。もはや怯むことなく勇んで足を前に繰り出すのみ。たとえ踏み抜いた先がスワスチカだとしても、なぁに、却って免疫……不全を起こしそうなのでやっぱやめてください。延期も勘弁な。

・拍手レス。

 >彼女が主役 その発想はなかった。あなたとはいい酒が飲めそうだ!!
 夕乃さんは「待つ女」というスタンスでありながら異様にアグレッシヴなのがたまんねぇです。

 Meteor〜!!! 焼津師匠、タイミング良すぎです。
 我が勘は呪われしか。全然そんな予兆なかったのに、一昨日リンクしたクロポのページも消えてますね……。

 meteor潰れちまったい。なんというタイミング……
 めておが復活したかと思えばMeteorが墜ちて。今年は本当に目まぐるしいなぁ。


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