2006年9月分


・本
 『向日葵の咲かない夏』/道尾秀介(新潮社)
 『カラスヤサトシ』/カラスヤサトシ(講談社)
 『怪盗グリフィン、絶体絶命』/法月綸太郎(講談社)
 『サウンドトラック』/古川日出男(集英社)
 『Sweet Blue Age』/アンソロジー(角川書店)
 『容疑者の夜行列車』/多和田葉子(青土社)
 『TOY JOY POP』/浅井ラボ(ホビージャパン)
 『会長はメイド様!(1)』/藤原ヒロ(白泉社)
 『死のバースデイ』/ラング・ルイス(論創社)
 『赤い竪琴』/津原泰水(集英社)
 『江利子と絶対』/本谷江利子(講談社)
 『処刑御使』/荒山徹(幻冬舎)
 『ユグドラジルの覇者』/桂木希(角川書店)
 『少女は踊る暗い腹の中踊る』/岡崎隼人(講談社)

・ゲーム
 『ひぐらしのなく頃に』&『ひぐらしのなく頃に解』(07th Expansion)
 『Chanter−キミの歌がとどいたら−』体験版(テリオス)
 『おたく☆まっしぐら』体験版(銀時計)


2006-09-30.

・最近の珍しいリファー。検索ワード「全裸処刑」。どうやら『処刑御使』の感想で引っ掛かったみたいです。冒頭で全裸のお姫様が降ってきますからね、あれ。

ニトロプラスの『サバト鍋』、プレー開始。

 危うく存在そのものを忘却しかかっていましたが、ふと「そういえばまだやってなかったっけ」と思い出して着手。ニトロのソフトでは他に『"Hello, world."』が積み状態。あ、『鬼哭街』のドラマCDもまだ聞いてなかった……が、それはさておき。『サバト鍋』は今年の2月に一般発売されたアミューズメントディスク。いわゆるファンディスク(FD)と呼ばれる類のものです。ニトロってサントラCDなんかはじゃかすかと出してる割に、こうしたFD系のソフトはつくった試しがなかった。なのでFD自体はファン待望と言えなくもないんですけれど、内容が直球ではなく明らかに変化球なのでニトロファンのすべてが喜んだかと言えば微妙。収録しているのが「竜†恋」という鋼屋ジン&津路参汰のオリジナルADV、「戒厳聖都」というある意味で『刃鳴散らす』の続編みたいなRPG、そしてニトロソフトのオールキャストが参戦するSTG「ニトロウォーズ」の3本。虚淵玄シナリオ作品の番外編だとか、デモベ関連のゲームとか、『塵骸魔京』で削られたシナリオの補完とか、メーカーファンが期待するようなものを見事に迂回したラインナップ。ぶっちゃけ出る前からあんまり売れそうにないオーラを放ってました。最近のニトロは商業主義に走っているのかいないのかよう分からんです。

 さて、まずはオリジナルADVの「竜†恋」から始めました。街をブッ壊す巨大で凶悪なドラゴンが可愛いおにゃのこになって、「死ね」が口癖な主人公の日常を引っ掻き回す。ライトノベルによくあるドタバタ現代青春ファンタジーのノリですが、CGやサウンドを駆使した演出のもたらすテンポの良さとエロ方面解禁によるシモさを止め処なく発揮することで、紙媒体かつ18禁的表現のためらわれるライトノベルには不可能な楽しさを生み出していてグッド。ヒロインの爬虫類っぽい瞳に(*´Д`)ハァハァします。あとおっぱい。

 非常にテキストが絞り込まれていて読みやすく、デモベではなんとなく滑っているところのあったギャグやコメディも巧い具合に摩擦が利いてる。普通に笑いました。なかなか最高な軽妙さだ。ノリとしては鋼屋シナリオ作品の中で一番好きかも。夢中になるあまり一時間くらい経ってからキャラたちが喋っていない――つまりボイスレスゲーなのだという事実に気づくほどで、声なしという点に関しては別段瑕疵とも思わなかったです。まだ終わってないけれど、少なくともこの「竜†恋」だけで2000円分くらいは元が取れてるかな。とセコい発言をしてみる。ヒロインもさることながら、イカレたちびママこと主人公の母親がステキですね。誤った方向に息子を溺愛していて、なるほど、これなら主人公の性格が歪むのも無理はなかろうと納得。

・岡崎隼人の『少女は踊る暗い腹の中踊る』読了。

 彼女からのプレゼント――
 それは両足のちぎれた赤ん坊……。

 定期的にB級感覚溢れる小説なり映画なり漫画なりを摂取しないと徐々に息苦しくなってくる嗜好の持ち主には割とうってつけだった一冊。第34回メフィスト賞受賞作です。いっとき熱心にチェックしていた賞ではありますが、最近はめっきり注目度が落ちてしまった。なので当初はこの本もほぼスルーしていた次第。ただ、「ノリが舞城っぽい」「勢いはある」「悪趣味」といった評から微妙に内容が気になって、本屋で現物を確認しに行ったら指先にビビッと来るものがあり即購入。見た目は厚いけれど一段組なせいもあって分量はそれほどでもありません。改行多いし、文章は平易で読みやすいし、勢いはあるしでサッと目を通すことができる。だいたい2時間くらいで読み終えました。

 岡山市内――大学にも行かず、父から継いだコインランドリーの管理人を務めながら、日々だらだらと過ごしている北原結平。そんな彼の日常が一変したのは、ある夜のこと。立ち寄ったコンビニの駐車場、ふと外を見ると見知らぬ少女が彼の原付バイクのメットインに手を突っ込んでいた。店から出てきた結平の姿を見て、少女は逃げ去る。何か盗られたのか、と覗き込んだメットインの中。そこにあったものは、両足を切り取られた赤ん坊の死体。市内では嬰児誘拐事件が頻発していた。まさか、この子がその被害者? 否応なく崩れ去ってしまった日常へ追い討ちを掛けるように、「ウサガワ」と名乗る殺人鬼が結平に接触してきて……。

 ノンストップで奔騰するサイコ系バイオレンス青春ノベル。主人公にトラウマがあって、過去の光景が頻繁にフラッシュバックするのは、もはやこの手のストーリーにおけるお約束か。とにかく、途切れなく暴れ回る小説でした。いえ、バイオレンス描写自体は結構あっさりしていてグロ要素とかは案外と薄めです。文章も淡々としていてしつこくなく、精神的な粘着性も低いから、ドロドロの暗黒を期待するとやや物足りないかもしれない。しかしこの「途切れなさ」は尋常じゃない。普通、上記したような筋だと死体を発見した直後に場面が変わり、現場に刑事たちが駆けつける……という流れを迎え、話が一旦途切れてしまうものです。ところがどっこい、主人公は警察に通報しません。「赤ん坊の死体を遺棄した少女を自力で見つけ出してやる」と決心し、なんと死体を自宅の納屋に隠してしまう。ハナっから常軌を逸した行動を取る主人公に読んでるこちらは唖然。更に、仕留めた獲物の生首を白昼堂々見せ付けておきながら平然としている殺人鬼が登場するもんですから、開いた口が塞がりません。こんな調子でひたすら狂った展開を連打し、話を一向に途切れさせない異常なスピード感は戸梶圭太とかあのへんに通じるものがあります。

 作者は刊行した時点でまだ20歳と若い。が、若い割にあんまりギラギラした雰囲気が希薄で、むしろ恬淡とした気配さえあります。メフィスト賞で同じく20歳前後のときにデビューした浦賀和宏や佐藤友哉に見られた「執拗さ」とは異なる、投げやりスレスレの脱力感。暴力はためらいもなく振るわれるし、禍々しい情念もあるし、悪趣味なテイストは横溢することしきりで、異常者ばっかりが跋扈する壊れた世界観も全編に渉って貫かれているが、どうにも「毒」を欠く。各々の異常者が特殊な事情を抱えていて、他人を傷つけたり殺したりするのはそれ自体が目的だからではなく、別の理由を叶えるための手段に過ぎない――といった背景を用意したおかげで、ミステリっぽい空気は醸成された反面、B級バイオレンスやノワールとしてはいささか煮え切らない物語になってしまったきらいがある。手段でしかない殺傷行為と、徹底した被害者への無関心。つまりそこには、あらゆる意味で「絶望」というものが存在しません。ゆえに少々物足りなかったです。

 じっくり読めばいろいろと粗さが目につくものの、一気読みするつもりで疾走感に身を委ねてバシバシとページをめくっていれば細かいことは気にならない。文章とストーリー展開のリズムは良く、異常者のオンパレードっていう無茶な事態を受け容れさせる素地は充分。クライマックスでちょっと盛り下がりましたが、総じて期待以上に面白かった作品です。ただ、さすがにトラウマの使い方は安易かなー。けど主人公がぐじぐじ悩んだりせず、「あくまで行動あるのみ」という姿勢を終始保つ点では(その行動が異常極まりないにしても)読んでいて気持ちよかった。妙に爽やかな手触りもあるし、内容に反して「陰惨」という印象のない小説でした。

・拍手レス。

 PS2版は成長したしゅうげんくんでご飯三杯はいけますね!!あ、もちろんほーにゃんとのからみも
 あれはかなりニヤけました。伯母との確執まで想像すると更に箸が進みます。

 Gとの熱い戦いに思わず拍手。
 ありがとうございます。しかしあれが最後のGとは思えない、いずれ第二、第三の(以下略)。

 拍手レス見て気づいた、ホントにMethod of Erikoになってるww
 全体的に勢い任せのサイトですから。

 バッグバグのフラグがたがたで、少し待った方が良いかもです<おた☆ぐら 前科持ちで修正なしかも…
 やっぱりブランドの根がアレですからねぇ……。


2006-09-28.

「GF団」の日記で初めて存在を知った『わくわく南北戦争』、不謹慎である以上にひどく気の抜けるタイトルが胸を締め付けてやまない今日この頃な焼津です、こんばんは。

 さて、それはそれとして。昨夜、「そろそろ寝ようかな」と思ってトイレへ行ったわけです。すると、視界の端をサササッと素早く横切る小さな黒い虫が。

 言わなくても分かると思いますけどゴキブリです。ファーック。ブーシット。とりあえず一旦退避して心を落ち着かせました。しばらくの後、慌てず騒がす殺虫剤(キ○チョール)を手に取って戻る。スリッパを履いていざ出陣。ドォン、ドォン(脳内陣太鼓)。

 しかし、数秒の間に敵影は消失。どこかに潜みやがったらしいですよ。当たりをつけてテキトーに殺虫剤を噴霧してみますが反応なし。んー、なんだ、当方の見間違いでしたか。あーバカらしい寝よ寝よ……と苦笑しつつ頭を掻き掻き、そそくさと出

たのはフェイントに決まってんだろうがよォ! ゴキブリ野郎がァァァッ!!

 背中を見せたことで安堵したのか、物陰から姿を現したゴキ公――そいつへ向かってミランダ警告の一節も唱えることなく噴霧噴霧噴霧。敷物の僅かな隙間に隠れ込むが容赦なく引っぺがして噴霧噴霧噴霧。視界が殺虫剤の煙で白く染まる――

 って、あれ?

 いかん……殺虫剤の撒きすぎで対象(G)をロストしてしまった!

 奴め、いったい何処へ……?

 海外ドラマなんかに出てくる、銃を構えて慎重に歩く熟練刑事ばりの緊張感をパジャマ姿で漲らせるアホ丸出しな当方はそのとき、足元に違和感を覚えた。

 もぞもぞ

 ん……? なに? 深く考えずスリッパを脱ぐ。

 ぽろん

 探し求めていた敵がそこからまろび出た。

 げぇーっ!?

 さ、さっきの一瞬の隙を衝いてッ! こんなところにッ! 潜り込んだのかッ!

 てめぇどこの忍者だよ! と内心で激しくツッコみつつ噴霧噴霧噴霧。さすがに敵も弱ってきたらしく動きが鈍り、よろよろと体力ゲージの低そうな挙動を示し始める。なおも手を休めず噴霧噴霧噴霧。もうもうと白い煙が立ち込め、トイレの中が再度バルサンを焚いたみたいになってきた。

 あんまりにもしぶといので根負けし、最後はビクビク痙攣しているゴの字をトイレットペーパーで包んでゴートゥザ下水。流しました。厚めに包んだつもりでしたが殺虫剤を浴びて湿っていたせいかペーパー越しにぬるっとした感触がありましたよ。おへえ。

 まあ、そんなこんなで快眠とは行きませんでした。トイレのゴキぐらい無視して寝りゃいいじゃん、という向きもありましょうが、えーと、ほら、あれです。「熊の場所には戻らないと行けない」みたいな感覚。見かけた以上はたとえ一度撤退しても必ず直々に駆除しに行かなくては精神の平穏を得られません。やれやれですね。

『あやかしびと―幻妖異聞録―』、逢難ルートクリア。

 のんびりチマチマとやっていたせいで発売からはや一ヶ月近くも経っていますが、ともあれ新規追加であるほーにゃんこと逢難のシナリオを鑑賞し終えました。ほーにゃんほーにゃんと呼びすぎたせいで本来の名前が「逢難」であることを忘れかかったりしましたが、逢難ルートは刀子ルートから分岐する支流なのに、意外なことに最初から……つまり刀子ルートを先に攻略せずとも行ける仕様になっているんですね。既にPC版をプレー済で追加要素が目当ての身にはありがたかった。

 内容は「もし逢難に個別シナリオがあったら……」って感じで語られてきた願望を叶えるに足る代物。人間と妖怪の共生関係(と呼ぶには人間側の条件が圧倒的に不利だが)という、PC版の4つのシナリオでは死角になっていた部分を突いていて作品世界をまた一つ掘り下げた印象があります。ただ、主人公と逢難の会話がシナリオの大部分を占め、他のキャラの出番が少なかった(出なくていいようなシナリオまでマメに出張っていたあの連中が影も形もない……)こと、戦闘要素が希薄でバトル描写が全シナリオ中もっとも地味だったことは残念と言えば残念かも。クライマックスは「ほう、こう来るか!」と実に燃える展開で大好物でしたが。

 あと、執筆を急いだのか、こまごまとした誤字も結構目立ちました。「歩けることができる」なる謎の言い回しを始めとして、「。!」という恐らく「。」の消し忘れ、「一変」が「一片」な誤変換。それとこれは声優さんの方ですが、「堪えた」を「こらえた」と読んでるところは文脈的に「こたえた」な気がします。重箱の隅とはいえ、開始時点からしてシリアスで割と重めなシナリオだけに、細かい誤字が没入を削がれるのはいかにも惜しい。

 なんだかんだ書いてもほーにゃんのキャラクターはやっぱりツボでした。金髪に狐耳で傲岸不羈な性格のくせして寂しがり屋で妙に面倒見のいいところがあってしかもけしからんおっぱい持ちと、ホントもうなんでこの子がPC版の時点で出てこなかったのかと切歯扼腕。加えて特殊な事情から主人公以外の他のキャラとコミュニケーションが取れない状態になっており、『あやかしびと』の魅力の一つ「多彩な登場人物が交流する」にブレーキが掛かってしまっているのはしきりに惜しまれる。刀子さんとほーにゃんの修羅場、俗称して最強おっぱい対決は是非とも目撃したかった……せいぜい脳内補完するとします。

 他のルートもちょこちょこ追加要素がありそうだから、今後ものんびりチマチマとやっていく所存。終わったらコンプ報告をするつもりですが何ヶ月後になるやら。

・桂木希の『ユグドラジルの覇者』読了。

「今のあんたじゃなく、あんたのこれからが必要なんだ」

 横溝正史ミステリ大賞を獲った作品――ではありますけれど、なんだか評判はいまいち振るわない模様。要約すれば「超巨大な規模のネット経済が成立した近未来。国境を越え、全世界が群雄割拠の戦国時代と化した電子ワールドの秒単位で推移する壮絶極まりないディール――そいつを制して覇者の座に就くのは誰か?」という、非常にスケールの大きい話です。激しい頭脳戦あり、巧妙な駆け引きあり、裏で進行する陰謀ありと、要素的には盛り沢山のコンゲームものですが……蓋を開けてみるとバトルロイヤルではなくトーナメント戦だった、みたいな。各キャラ順々に経済バトルが行われていく感じで、思ったより派手な内容ではなかった。

 執拗に綴られる説明文が「途方もないストーリー」にある程度説得力を与えている点では成功しておりますけど、全体的に粗いです。まず文章からして細かい引っ掛かりを覚える部分が多く、それはひとつの味と受け容れる(「兵站」が「兵帖」になっているのはどうかと思いましたが)にしても、構成にかなりの難が見受けられます。最終決戦が全編を通じて一番ヘボいってのはさすがにちょっと……オチに当たる部分が唐突極まりなかったし、その中身も微妙でした。

 キャラクターに関しては割かし良かった。「商取引? ネット経済? わけわかんね('Д`)」となりそうなところを救ってくれたのは人物造型の魅力だったかと。大沢在昌も誉めているハンナ・ベルカンツあたりは特に際立っていた。ストリートチルドレンから身を起こし、獣の体臭を放つ養父に見初められて立身出世。口から飛び出すのは常に下町言葉。若干安っぽいながらも巧くハッタリの利いた話運びで、エンターテインメントとしては上手に盛り上げてくれた印象があります。……最終決戦に差し掛かるまでは。

 熱意は伝わってきますけれど、なんというか、「3/4くらいまでが面白い粗削りな小説」ってのがしっくり来る。得体の知れない主人公(?)が結局得体の知れないままだったり、「こいつ死亡フラグ立てやがった!」な行動取った某キャラクターが直後にマジで即死したり、何度も書きますがクライマックスがヘボかったり……ツッコミどころは多いものの、粗削りで勢いのあるエンターテインメントとして結構楽しめました。新人漁りの面白さを充分に堪能できた次第。数作と重ねるうちに化けてくる作家かもしれない。それ以前に二作目を出す予定があるのかどうかもまだ不明ではありますけれど。

・拍手レス。

 ゾンビ大好き有象さんに軽く吹きました<おたく☆まっしぐら
 「ぜんいん☆ビョーキ」は伊達に非ず、かも。

 えっと…シスアリって新たなるジャンルの開拓ですか?
 「システィナ礼拝堂でアリーヴェデルチ」の略です。嘘。直しときました。

 今気づいた。Method of Erikoになってるwww
 誰も気づかなかったらどうしようと思ってました。飽きるまでは続けるつもり。


2006-09-26.

・ファブニールとファブリーズを混同する焼津です、こんばんは。ジークフリードは全身に満遍なくファブリーズを浴びた……が背中に一枚の葉っぱがついていたせいでそこだけ臭(ry

 そんなことより待望の『マルドゥック・ヴェロシティ』が11月に発売されるみたいですよ。ソースは「ラノベの杜〜新刊案内〜」。予定は大幅にズレましたが「三週連続刊行」という企画は生きているみたいで、7日、14日、21日の三回に渡って全三冊が出るとか。よし、狂喜乱舞しよう。

銀時計の『おたく☆まっしぐら』、体験版をプレー。

 もう発売が3日後に迫っている新作。注目した理由は言うまでもなくシナリオが田中ロミオだからです。コンセプトはどうあれライター次第でソフトを買いたくなるのは活中の悲しい性。主人公がオタクで舞台が秋葉原という既に類例もいくつかある話です。一週間ごとに主人公のスケジュールを組んでパラメータ管理を行う、なんだかとっても昔の記憶を刺激されるSLG仕立てのシステム。テキストは一節一節が短めでテンポ良く進み、内容的にもセンスが迸っているんですが、やってることが正直作業で面白味は少ないし、発生するイベントもぶつ切れで集中力を維持させづらい。慣れるまでがひと苦労か。

 主要キャラクターはブッ飛びすぎない程度に個性が滲んでいていいです。上京して早々野宿し、半端に生々しい貧乏食を取る幼なじみをはじめ、虚栄心の強そうな黒髪とか就活をポイ捨てするニートゲーマーとか、なんかみんながみんなダメな方向にのみ活き活きとしている生ぬるさが心地良くもあり痛痒くもあり。あと脇役はさも平然と人外が登場するくらい、ネジ一つ二つブッ飛んでます。ティッシュの妖精が「ネピあ」とか……ホントぎりぎりなネタばかり。個人的には敬意の欠片もないS系のメイドが急所へヒット。これからはメイドが主人にオシオキする下克上の時代ですね。

 けれどこれパートボイスだったり、そもそもサブキャラに声なかったり、服装が立ち絵とテキストの描写で食い違っていたり、全体的に「時間なくて急拵えデース」なムードがぷんぷんと強く匂っています。いくら体験版ったって発売目前のこの時期に出た以上、製品版の仕様もだいたいは一緒でしょうし……脳内ハザードランプが点灯してやまない。終わりにチラッと出てきた虚ろな目をしたヒロインのCGからしてシリアス展開もありそうですが、それが吉と出るのやら凶と出るのやら。

 システムの前時代臭などに不安が募るものの、微妙に楽しそうな雰囲気が漂っていて心惹かれるものはあります。少なくとも最低ラインとして覚悟していた想像上の内容よりは良かった。でも確定ラインには届かず躊躇。いっそ後先考えず突撃してみるってのも一つの手だけど、もうちょっとで発売ですし。今更慌てないでゆっくり様子見してようかな。

・荒山徹の『処刑御使』読了。

 伊藤博文がまだ少年であった幕末――彼が明治の大人物となる前に抹殺すべく、時空を超えて五十一年後の朝鮮から七人の刺客が放たれた! 奴らの名は処刑御使! 朝鮮の歴史の節目において必ず過去へ遡行し、不都合の芽を摘むように幼き要人たちを葬り去ってきた超特殊暗殺集団! 朝鮮で培われた無敵チックな妖術を駆使する連中の暴挙を誰も留め得ない! 積み上げられる屍の山! 危うし伊藤博文! 彼は処刑御使どもを退け、無事に歴史を修復させることができるのか……!

 想像以上に無茶苦茶な話でした。荒山作品を読むのはこれが初めてだけど、他もこんな調子なのか。一種の歴史改変モノですが、歴史を変えようとするのではなく、変えまいとする伊藤少年側の視点で描かれるのが特徴。最初のうちはおとなしかった。てっきりヒロインになるのかと思っていたお姫さまが全裸で瞬殺されちゃったりしてるけど、まだ序の口。処刑御使の面々が本格始動したあたりから「やりすぎ臭」が漂い始める。いくら妖術だからって何でもありにもほどがありますよ。石像を巨大化させ、目からサーチライトを照射しながら山中を練り歩いたりとか、発想が山田風太郎とかより古橋秀之寄りになってないかこりゃ。

 あと「処刑御使たちを全員返り討ちにすれば、彼らの引き起こした惨事は『なかったこと』になり、歴史は正しい流れに戻る」っつー設定を免罪符にサクッと有名人を惨死させてみるなど、とにかく好き勝手の極地。死体がごろごろ転がる無法地帯。最終決戦で待ち受ける一大スペクタクルといい、真面目にやってるのかギャグなのかひたすら判別つきがたい。

 伝奇は伝奇でもかなりキてる部類の伝奇小説。ただ、大雑把な展開が目立つとはいえ決して細部が疎かにされているわけではなく時代小説としての結構は保たれているし、幕切れの印象が鮮やかで、好き放題やった割には綺麗にまとまっていました。却って複雑な読後感。荒山作品は本書の後に『柳生薔薇剣』も読んでみましたが、こちらは小粒ながら端整な出来。朝鮮妖術師とかが登場するのは相変わらずだけど、さほど無茶が過ぎる内容でもなかった。十兵衛の姉がヒロインで、女剣士モノとしても充分面白い。というか十兵衛がシスコンやんちゃ坊主になってるのは笑った。小笠原源信斎が魔剣「八寸ノ延矩」との対決は必見。

・拍手レス。

 更新待ってました。
 中身はアレですが。

 少女漫画だったら、同じ出版社の「親指からロマンス」というの面白いですよ。マッサージが題材になっていて
 あー、見覚えのあるタイトル。今度チェックしてみます。

 ダメ可愛いヒロイン愛好会のほうが幅広くカバーできません?
 「江利子」って名前の字面と響きが好きなのであえて狭く。


2006-09-24.

・すみませんがうちのサイト名、「ぬるすぎる江利子を前向きに愛する会」と変更しても構いませんか? こんばんは、一時の激情で突っ走ってみたい焼津です。江利子に関しては下記の感想を参照されたし。恐ろしいほど当方の好みにジャストフィット。

・本谷有希子の『江利子と絶対』読了。

 しかし文化祭の当日。あたしと母親の見守る中、屋上に用意された台の上に立った江利子は大きな半透明のゴミ袋を取り出すと、
「エリをあんまり苦しめるな! 死ぬぞ!」
 と叫び、呆気に取られる生徒や教師の目の前でその袋の中に自らの体を入れ始めた。
「お前らはただ世間から見捨てられることばかり気にしてる馬鹿ばっかりだけど、エリは違う。こうやって自分から世間を見離すことが出来る。ちゃんと強制終了する権利を持ってる。エリは世間と対等なんだ」
 江利子はそんな危ない感じの発言をし、このまま飛び降りれば後片付けも楽だから安心して見てればいいよ、と頭を引っ込めて袋の口を器用に中から縛ってしまった。ズッズッと跳ねるようにして袋が前に移動し始めた時、ようやく屋上を見上げていた全員が我に返り、それまで静かだった校庭は電気が走ったように騒然となった。

 「本谷有希子文学大全集」と銘打たれた短編集。作者にとって一冊目の著書です。「大全集」とは言うものの一段組で200ページ足らず、収録作も「江利子と絶対」「生垣の女」「暗狩」の3編とかなりコンパクトです。短い中にも本谷有希子のエッセンスがちりばめられており、若干のバラエティに富んだ内容とともにゆっくり味わえる。ざっくばらんというか非常に分かりやすい例え話を比喩に持ってきたり、一見どうでもいいような、それでいてツボを心得たディテールによって読者の目を引きつけたりする鮮やかなセンスが特徴的。

 表題作「江利子と絶対」は、二年生のときに高校を中退して引きこもりになった江利子が「前向きに生きよう。ポジティヴな引きこもりになろう」と決心して一進一退な日常生活を送る様子を、姉の視点から描いています。拾ってきた猫に「絶対」という名前をつける(江利子曰く「絶対にエリの味方って意味」)件がタイトルに繋がっている。なんというかもう、江利子のダメっぷりと必死さに胸を締めつけられます。上に引用した部分は紛れもなく屈指の名場面。何度読み返してもヤバいくらいに面白い。必死さが空回りして何も生み出さないほろ苦青春ぶりが笑いを誘う。どうせならこの調子で連作化してほしかった。

 「生垣の女」はかなり砕けた筆致で綴る、軽妙なのに救いがないカオスな一編。高さ一メートル弱、幅二十センチほど。生垣の超狭いスペースに中国雑技団並みの軟体で潜り込んでいた般若系のヒロインと、植毛の失敗で常に頭皮から血を滲み出させて「赤帽」の異名を取る喪男な主人公が出会い、ドタバタする。古今東西ストーカー女は強烈な印象を残すキャラとして使われてきましたが、このアキ子も凄まじい。ストーキング対象が主人公ではないため恐怖の矛先は明後日に向いてますが、巻き込まれただけでもビビらされる存在感が充満。結局デマだったと言われる荒技「電子レンジに生きた猫」をあっさり実践する精神には痺れた。そして「喪男が(何かの間違いで)愛に目覚めたとき」の悲惨さを切り抜くラストはなかなかひどい。

 最後の「暗狩」。これは他の短編の3、4倍に匹敵する分量があり、本書の中で一番長い。広場で野球をしていてボールが隣家の敷地に入ってしまい、取りに行こうと忍び込んだら……という展開で、まっすぐにサスペンス・ホラーの世界へ踏み込んでいきます。これだけなんか角川ホラー文庫みたいなノリでした。独創的な要素こそないものの、異常者の家に閉じ込められてしまった小学生たちが悲鳴を上げながら生還を目指して足掻く、生々しい閉鎖空間サスペンスとしての盛り上がりは始終衰えない。最後の決着はちょっとジョジョっぽかった。

 ちょっと前に読んだ『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』と似通った箇所もあるにはあるけれど、どことなくジメついて粘着質だったあっちに比べ、こっちは淡白なくらいサラリと乾いた手触り。好みは分かれるところでしょうけれど、読みやすさで言えばこっちに軍配が上がるかな。とにかく「江利子と絶対」が非常にツボでした。こんなにダメ可愛いヒロイン、なかなかお目に掛かれないと思います。


2006-09-22.

・長年放置状態だったリンクページを改装した焼津です、こんばんは。これですっきり見やすく。できれば一個一個にコメントを付けたいところでしたが、力尽きたからしばらくは現行のままで……というのもなんだから、いくつか紹介してみるテスト。

 「この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ」は作家・森見登美彦の日記。作品も方の面白いですけれど、日記も日記で面白くてたまりません。「UNCHARTED SPACE」は国内ミステリを主としてレビューするサイトで、もう何年も見ているところ。作品の良い所を的確に探り出して解説してくれます。「ラノベの杜〜新刊案内〜」はその名の通り各種ライトノベル・レーベルの新刊情報を取り扱っています。作家やイラストレーターのリンク集も重宝。「2ch 「嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ」まとめサイト」、そのまんま嫉妬・三角関係・修羅場スレのまとめサイトですが、圧巻は「SSまとめ」。設立からまだ1年も立たないにも関らず膨大な量が投稿されている2chエロパロ板の修羅場SSスレ、その精髄をまとめあげたリストはチラッと見るだけでも眩暈が……物凄く大雑把な計算をすると、文庫本二十数冊分に匹敵するボリューム。

・津原泰水の『赤い竪琴』読了。

 粉々の玻璃――大群衆の眼のやうな漣、
 無限に分裂せし生命球の、
 永劫なる音楽にしばられ、
 未だ南方を彷徨つてゐる。

 祖母の遺品を整理している最中に見つかった一冊のノート。「南洋日記」と題され、戦前の南洋を行く船で日々のつれづれを綴っているそれは、どうやら無名の詩人「寒川玄児」の手によるものらしかった。祖母がなぜ所有していたのか事情は分からなかったが、とりあえず寒川の遺族に渡した方が良いだろう、と考えた暁子は玄児の孫・耿介にノートを譲る。祖母・祖父の代を越えて巡り合ったふたりの男女は、自然と惹かれ合ってゆくが……。

 恋愛小説です。作者が津原泰水だけに、日常の狭間に潜むひび割れにも似た微かな幻想がところどころで顔を覗かせている。が、ホラー要素はなく、あくまで幻想的な味付けの施された恋愛小説として読める内容。詩人の孫が楽器職人をやっているおかげで頻繁に音楽描写があります。文章で書くとしつこくなりがちな「音楽」を、あっさりと淡白な味付けでうまく料理してくれるところはテクニシャンの面目躍如。

 タイトルにある「赤い竪琴」、ふたりを結びつけるキーパーソンとなった寒川玄児、そしてうたうクジラ。詩と音楽が溶け合って、すべてが「海」という共通項により一直線に連なっていく。

 背に腕をまわして抱き寄せると、彼は私が想像していたよりも遥かに痩せていた。私が寒川耿介だと信じていたのは、その多くが気力だったことを知った。

 「怪奇と幻想」の泰水ズムを求めると圧倒的に物足りない一冊ではあるものの、むしろこれぐらい加減された方が話として読みやすいことは確か。「加減」とはいえ、寒川耿介の頑なで不器用な体温までもが伝わってくるような臨場感は充分にある。するりと喉越しの良い佳編です。


2006-09-20.

・藤原ヒロの『会長はメイド様!(1)』を読んだところ見事なアタリでホクホク顔な焼津です、こんばんは。

 「DAIさん帝国」で紹介されていたのをキッカケに知った少女マンガ。小説漁りをメインに据えた読書スタイルのせいか、どうにもマンガ方面のアンテナは低くなる一方で、定期的に良作を紹介してくれる「DAIさん帝国」はひっそり重宝しております。しかし、発売時期が少し前だったせいか平台の新刊コーナーには置いてなくて、棚から探してこなくちゃいけなかった。棚の前に他のお客さんがいないタイミングを見計らってサッと駆け寄り目当ての少女マンガを引き出してくるドキドキ感は歳を経るごとにいっそう強まっていく。ぶっちゃけエロマンガを買うより恥ずかしい。

 さすがにもうメイドものは食傷気味だし、プッシュされちゃいるけどどんなもんかな……と買った当初こそ気乗りが薄かったものの、いざ読み出してみれば難なくハマりました。タイトルはギャグっぽいけど、内容は元気なコメディ。男子校から共学になったばかりなので圧倒的に男子生徒比が高い学園の中、女子の権利を守護すべく獅子奮迅の活躍を見せる女子生徒会長――というヒロイン像がなんともカッコ可愛い。表情変化も豊かで見ていて飽きない。困ったときに出てきてサポートしてくれる碓氷がやや便利キャラ的な位置づけになっちゃってる気もしますが、そういう部分の含めて軽快で勢いがあって、楽しく読ませてくれる作品になっていますね。

 「こっそりメイド喫茶でバイトしてる」という設定がギャップを生み出すためのものであって、メイドそのものが力点にはなっていない(むしろ学園モノとしての印象が濃い)から、「いやメイドものはちょっとな……」と腰が引けていた当方にもバッチリでした。まだ話に明確な目的がなく、今後の展開でストーリー性が高まってくるのかもしれませんが、しばらくはこの調子で会長と碓氷が微妙な距離を保ったままドタバタしてほしいところ。

・ラング・ルイスの『死のバースデイ』読了。

 原題 "THE BIRTHDAY MURDER" 。本邦初訳。この作品が、ではなく、作者の本自体がです。原書は1945年発刊ともう60年以上前なので、黄金期からはズレますが、海外古典本格の範疇に入りますね。記念すべき誕生日の朝、売れっ子脚本家のヴィクトリアは物言わぬ死体と化した夫を発見する……というストーリーで、200ページちょっとと分量は短め。

 夫の死因は毒――砂糖壺の中には、蟻の殺虫剤として使われる粉が混入していた。自殺する動機はなく、事故か殺人の線で捜査が開始される。容疑者は妻であるヴィクトリアの他に、家政婦のヘイゼル、ヴィクトリアの友人・バーニス、女優のモイラ、ヴィクトリアの別れた前夫・ソーン。彼ら全員に毒を盛る機会はあったが、決め手となる動機や証拠はなかった。長身刑事のタック警部補はまず、同じ方法で妻が夫を殺す脚本を書いたヴィクトリアに疑いの矛先を向けるが……。

 登場する連中みんなが怪しい。けれど「こいつだ!」と確信するまでには至らない。そういう絶妙な雰囲気に包まれていて、ジャンルとしてはフーダニットに当たるでしょうか。奇抜なトリックは用いられず、あくまで地味なロジックを駆使して納得の行く結末に落ち着かせる。予測不能ってわけじゃないけれど、こう、滑らかにストンと着地する感じで喉越しがいい。少し退屈なところもありますが、いかにも本格ミステリ愛好家向けといった端整な香り漂う一作でした。

 初読では意図を汲み取れず、もう一回パラパラと読み返してようやく「あっ、そういうことか!」と理解した当方はここ最近読解力が低空飛行中。

・いい加減そろそろ変えなきゃ、と思いつつ放置していたweb拍手のネタをようやく変更。タイトルは「フィーヴァードリーム」です。ある意味前よりも恥晒しな代物ですけど、極力気にしない方針で一つ。


2006-09-18.

・富士見の新刊でファンタジア長編小説大賞の受賞作品が3冊ほど出たみたいですが、どうやらカバーがリバーシブルになっているようで、裏面にもイラストが印刷されているとのこと。こっちの地方じゃまだ発売されていないので実物は確認しておりません。なんとなく『ヒトクイマジカル』を思い出して懐かしくなった焼津です、こんばんは。あれからもう3年ですか。

テリオスの『Chanter−キミの歌がとどいたら−』、体験版をプレー。

 「チャンター」ではなく「シャンテ」と読ませる模様。田中ロミオがシナリオに参加している(複数ライター制)ソフトで、タイトルといい絵柄といい概要といい、王道的で少し古めかしい「ありがちな学園エロゲー」の雰囲気を放っています。両親の事情で一人暮らしをしている主人公が、幼なじみの少女とかクラスメイトとか教師の娘とか諸々の女の子と送る夏休み――といった感じで何の変哲もない青春恋愛モノです。開始時点で既にヒロインたちの主人公に対する好感度は高いし、ひたすら平和な日常が続くし、体験版の範囲だとストーリーに関しては特記事項なし。見るべきところはヒロインの魅力やテキスト、ネタの面白さといったところでしょう。

 ヒロインは良かった。一人を除いて。……もっとも人気出そうないキャラをメインヒロインに据えるって、これいったいどういうバクチですか? 幼なじみの千歳、いわゆる暴力系のガールなんですが、もうキャラデザの時点で勘弁してくださいって泣きを入れたくなります。他は割とケレン味のないデザインをしているのに、なぜ彼女だけ間違った方向に気合を発揮しているのですか? あの髪型、あの口元、それに付け加えてあの言動。ホント、勘弁してください。しばらくやってると次第に慣れてくるにしても、慣れないうちはなかなかキツかった。ロリ妹系の桜、ロミオお得意の黒髪ロングな伊吹、寡黙で清楚のショートの雪希、明るくぺったんこな琴子と、他のヒロインが手堅くミリキ的に仕上がっている分、千歳の落差がとにかく目立ってしょうがない。苦手なヒロインが一人でも混じっていると購入意欲をなくす当方にとって彼女の存在は実に難所だ。

 テキストやネタについては良かったです。いかにも田中ロミオらしい言い回しが横溢している。なかんずく先生は際立っていた。いくら娘を溺愛する親バカ教師だからって、ちょっと帰りが遅いくらいで本当に警察へ通報するそのバカっぷりはガチすぎ。大人キャラと悪友キャラの両方を満遍なく兼ねる見事な濃い口野郎ですよ。あと、寝ぼけた主人公が街中で目を覚まして「ここどこ?」「日本」「マジかよ! 敗戦国じゃねぇか!」と遣り取りする件には噴いた。

 斬新どころかむしろ古臭いとさえ言えるノリの学園モノなれど、割合サクサクとしたテンポで楽しめる。学園モノと言っても期間は夏休みだし、行動の幅が広く、のんびりした気持ちでプレーできます。ただ、千歳がなぁ……もう慣れたから「嫌い」ってことはありませんが、どう反転しても他の子たちほどには好意を抱けそうにはありませぬ。何度見ても、つくづく不思議……いったいどういう経緯で彼女だけこんな胃にもたれるキャラデザになったのやら。

・浅井ラボの『TOY JOY POP』読了。

 ラボやんはなにげなく呟いた。「読者に向かって唾を吐く(プゥーッ)」 すると、鮮やかな虹が架かって……

 一行で表現するとそんなノリの青春群像小説。と書いて伝わる人がいたらその方は超人認定してもいいと思う。デブで眼鏡で死ぬほどウザいが無駄に自信満々で、脚本のセンスはデタラメなのに巧い大学七年生・福沢礼一を中心に、ただ平凡な地方都市のファミレスに集まって駄弁るだけの6人――男女比1:5という羨ましそうで実際の様子を見るとあまり大して羨ましくない彼らの集会はダラダラと進行し、いっときの退屈を紛らわせてから、それぞれの人生に戻っていく。語り手複数の方式で綴られていて、頻繁に視点が変わります。一人称が変化するおかげで峻別は容易だけど、ダルくて冷めていてどこか投げたような調子のある文体は徹頭徹尾そのまま。「群像」を手段として取っておきながら、敢えてセオリーを外しに来た感のある一冊です。「ダルい」というのがテーマなのか前半は本当にダルかったですが、半分くらいに差し掛かったあたりを境にして徐々にあったまってきます。

 集まりの中心にいる福沢はとにかく毎日の生活に退屈していて、少しでも人生を面白がろうと無茶も強引も平気で行って足掻きまくる。なんてことを書くとハルヒを連想してしまいそうになりますが、別に彼は「集まりの中心」であって「物語の中心」ではありません。蔑ろにされているようでいてそれなりの人望を持っているキャラクターなものの、役割としては脇役に近い。アクションありミステリあり若干のエログロありと、エンターテインメントのお約束をいろいろブチ込んでいるくせして、それらが一向に混じり合わない。すべて独立したまま進み、福沢はさして関与する余地ナシ。全能でも無能でもない、ただの求心力として真ん中に位置し続ける。

 ストーリーは水増し臭いネタテキストに紛れて「関節ババァ」などの都市伝説が絡んできて、「意外な真相」が明かされるサプライズ展開もありますが、複数の流れがあまりにも淡々と個別に転換を迎えるため「意外な真相」が並列化しちゃうといいますか……まとめてカタログにでも載せる塩梅で処理されて、みんな等価値で無価値でどうでもいいことみたいに扱われてしまう。あと明かされざる真相とかもあるっぽい。「メタ」という言葉を持ち出して語れば却ってドツボにハマりそうな雰囲気のある罠めいた構造です。

 群像モノや集会モノなのに、みんなが一丸になって事態をどうにかするわけじゃなく、個人が個別に自分の問題を咀嚼して嚥下して解決する――ってのは変なようで、しかし至って当たり前なのかも。「苦しいときには支えてくれる仲間がいる!」という熱血友情物語においても、「あ、俺の代わりにトイレ行ってきて」と頼むことには何の意味もない。自分の用は自分で足す。排泄行為がたとえの人生のように味気ないとしても、とりあえずトイレには行かなきゃならない。「どう生きたって小便は溜まるんだからさ、無闇に連れションしないで夜中も一人でトイレに行こうぜ」というメッセージが伝わってきました。明らかに誤読していると思います。

 400ページ超と、予想よりも多い分量のおかげで、しこため楽しめました。退屈でダルい日常からの脱却を図って足掻く福沢の姿を「脱獄不可能の堅牢な監獄の奥で食事のときに盗んだ先割れスプーンを土剥き出しな独房の床に突き立てる」ことに見立てれば劇的に映ったりするのかもしれない。それこそどうでもいいことですが。


2006-09-16.

『とらドラ3!』を読み返すにつけ、みのりん(櫛枝実乃梨)のアンチェインぶりが目に眩しい焼津です、こんばんは。1巻はまだ比較的おとなしくしていた彼女ですが、2巻からこっちはいろんなものから解き放たれております。「暴走」というほどではないんですが……メインじゃないにしても、一応のヒロインであるはずなのに作中で一番はっちゃけている気がする。あまりのはっちゃけぶりに、読んでるこちらは「〜〜〜ッ!」と板垣マンガの負け犬キャラみたくこめかみに汗を浮かべる状態となることしきり。

 あと個人的には恋ヶ窪ゆり(29歳)も好きですが何か。独身教師ネタは学園コメディのお約束ですけれど、描写の端々から醸される鬱屈のオーラが非常に生々しくてステキ。「お一人様だよ、文句あんのかよ」とか「……どうなったあ、じゃないんだよ。どうもなってないから言わないんだろうがよ」とか。

西尾維新の新刊『零崎軌識の人間ノック』、10月20日刊行予定

 そういえば先月デスノとxxxHOLiCの小説版を出したみたいだけど未だに現物見てないや。四六版や新書の新刊コーナーで見かけなかったところからしてノベライズのコーナーにでも置かれているのかな。ともあれ零崎一賊モノは割と好きなので購入予定に組み込み。

・多和田葉子の『容疑者の夜行列車』読了。

 鋼鉄の摩擦音が月を蝕み、駅が暗黒宇宙の真ん中にぽっかりと浮かびあがる。どちらが上、どちらが東。あなたは、平均台の上を歩くように、腕でバランスを取りながら、停まっている汽車の方へ近付いていく。(略)道端に地蔵のように並んでいるのは、靴磨きの少年たちだ。物売りの裸電球の光が薄闇に滲む。濡れた紙に墨の滲むように。

 伊藤整文学賞および谷崎潤一郎賞受賞作。「夜行列車」をテーマにしたオムニバス形式の短編集です。主人公は名称不明のダンサー。常に「あなた」という二人称で綴られてゆく。「容疑者」というタイトルや二人称形式の叙述からして何やら凝ったトリックの仕掛けられたミステリに思えますが、別にそんなことはなく、ノリとしては幻想味を絡めた旅行記風の小説。不可思議な乗客と会話を交わし、摩訶不思議な出来事と遭遇する夢うつつな内容を二人称で紡ぐものですから、まるで読んでいる自分が狭いコンパートメントの中に閉じ込められている気分に陥ってきます。

 一つ一つのエピソードは一貫した流れを保っているものの、全体としてはバラバラで脈絡を欠き、繋がりのない話になっています。どこかズレているんだけどキレのいい脱力した文章と、濃やかな伏線、投げっぱなしにされる謎が混在し、どれも煮え切らぬまましかし何かを得て、旅の途上で幕切れを迎える。走り続ける鉄道の上が舞台だけに、出発した場所や通過しているところの地名を書かれてもしっくり来ず、「パリへ」「北京へ」「アムステルダムへ」などと敢えて「辿り着かない目的地」をタイトルに据えているあたりは巧いと思いました。

 我慢というのは、紐の形をしているに違いない。その紐が切れそうになっていた。
 あの振り付け師とこれ以上顔を合わせていたら、殴ってしまうか、惚れてしまうか、どちらかだ。

 こういう言い回しがさらりと出てくるセンスは心憎い。総計して約160ページ。全13編ですから、一つあたりの平均は12ページほど。本としては短い方に当たりますが、短いながらにギュッと圧縮された文章の密度が心地良く、実頁数以上に味わった気さえしてくる。結局何が何なのか、腑に落ちないところも多かったけれど、「小説を読む」という行為の楽しさを再確認させてくれる一冊でした。

 読んでいて連想したのが、どこかの文学作品ではなくライアーソフトの『SEVEN BRIDGE』……ってところがいかにも自分らしい。


2006-09-14.

・秋になってもまだ眠い。こんばんは、眠くない季節なんてものがないオールタイムで曖昧気味の焼津です。どうでもいいけど母が今頃になってハリポタにハマり始めました。ハリポタは版型がデカくて場所を取るからとっくに処分しちゃったのに……もっと早くにハマってくれれば既刊を譲り渡せたものを。

・アンソロジーの『Sweet Blue Age』読了。

 雑誌“野性時代”に掲載された6編を収録。アンソロジーのテーマは、Blue Ageだけに「青春」。まんまの直球です。作家は角田光代、有川浩、日向蓬、三羽省吾、坂木司、桜庭一樹、森見登美彦。一番有名なのは直木賞を獲った角田光代でしょうか。個人的には有川浩と森見登美彦の作品が目当てだったんですけれど、せっかくなので他のものも読んでみました。ただし桜庭一樹の「辻斬りのように」はこの前買った『少女七竈と七人の可愛そうな大人』に収録されていたので飛ばした次第。

 角田光代の「あの八月の、」。30歳を迎える女性ふたりが夜の大学に侵入し、サークル「キネマ友の会」の部室で十年くらい前のフィルムを漁り、ゆっくりだらだらと追憶に耽る。「それだけ」と言ってしまえば本当にそれだけの、ささやかな短編です。当時のサークルで繰り広げられたしっちゃかめっちゃかな恋愛模様が微笑ましくも切ない。「そうだね、ちいさな部室に同数の男女をぶちこんだら、それだけの理由で人って大恋愛できるよね」とふたりの所感がまた身も蓋もない。一言の引用で要約すれば「全員、運命だと思っているその恋に、あんまり忠誠を誓わなかった」という青春の話。短いのでさっくりと読めます。文章も丁寧でクセがなく、程良い生々しさ。

 有川浩の「クジラの彼」。『海の底』の番外編。夏冬コンビのうち、夏の恋愛に触れたのが『海の底』であり、こっちは冬の恋愛を描いている。自衛隊の潜水艦に乗り込む仕事の関係上、メールの遣り取りすら月単位の時間が掛かってしまうカップルの遠距離恋愛。潜水艦を「クジラ」と喩える主人公の気持ちが切々と織り込まれていて、すっと内容に入っていける。遠距離モノの王道を踏破する、非常に明快で爽やかなラブストーリーに仕上がっています。青春要素よりも若干、恋愛要素の方が強いですね。『海の底』と関連する部分もあるので併せて読めば吉ですが、あっちはパニック系のスリラーなんでノリはだいぶ違う。

 日向蓬の「涙の匂い」。本書の中で唯一名前を知らない作家の方。東北の田舎村に越してきた少女が、同級生の男の子にドキドキして胸を締め付けられる話。要するに初恋。友人たちとおしゃべりをしながら村を歩くシーンもあって、楽しい日常を切り取って重ねていくタイプの少女マンガみたいなノリ。タイトルがタイトルだけにあまり明るい方向へは進みません。とっちらかった印象で少しスッキリしない結末だったものの、随所に「切なさ」の片鱗を窺わせてくれるあたりは良かった。

 三羽省吾の「ニート・ニート・ニート」。特に理由もなく突発的に会社を辞めてしまった主人公が引っ越しの準備をしていると、無駄に行動力がある腐れ縁の友人(職業:住所不定のヒモ)に寮のドアを蹴破られ、「北海道行こうぜ!」と誘われて出てきてみれば、なぜか外にはブルーバードと――手足を縛られ目隠しをされ猿轡まで噛まされて後部座席に転がされた旧友の姿があった。勢いはあるが淡々としたテンポで進んでいく軽妙なダメ青春ストーリー。恋愛要素は一ミリもないんでこれまでの作品とはかなり毛色が違う。レンチ(腐れ縁の友人)のひたすらイイ加減な性格が強烈で引き込まれるが、話そのものはやや中途半端に終わりました。全六話くらいの物語の一話目だけを見せられた感じです。キノブー(拉致された旧友)がヒッキーとかいう設定も絡みがよく分からない。続きがあれば読みたいところ。

 坂木司の「ホテルジューシー」。「引きこもり探偵」の三部作で話題になった作家の短編。といっても『引籠世界の探偵事件簿』のことではないのであしからず。幼い弟妹の面倒をひたすら忙しなく看続けることが日課だった主人公は、「もうあの子たちも大きくなったから今年の夏休みは好きなように過ごしていいよ」と言われても咄嗟に何をしたいのかが思いつかなかった。仕方なくバイトの予定を詰め込み、いざ沖縄のホテルへ働きに行く。最初は石垣島でテキパキと仕事をこなしていたが、応援要請が入って那覇のホテルへ移る。そこにいた従業員は変な人ばかりで……。これも恋愛要素は全然ないけど、「ニート・ニート・ニート」とは一八○度異なるハート・ウォーミングもの。本書の中でもっとも主人公の成長に焦点を置いた作品です。これも連作形式にできそうなので、続きがあったら読みたい。

 森見登美彦は「夜は短し歩けよ乙女」。読んでる間、何度も吹いた。とにかく文章センスが当方の好みに直撃コースで、相変わらず鈍りがないどころかより一層磨きが掛かっています。こいつは抜き身の刃か。始めはまだ真っ当な展開をしていたのに、だんだんファンタジーがかってくるもんだから、他と比較してとにかく浮きまくり。

「よろしいですか。女たるもの、のべつまくなし鉄拳をふるってはいけません。けれどもこの広い世の中、聖人君子などはほんの一握り、残るは腐れ外道かド阿呆か、そうでなければ腐れ外道でありかつド阿呆です。ですから、ふるいたくない鉄拳を敢えてふるわねばならぬときもある。そんなときは私の教えたおともだちパンチをお使いなさい。堅く握った拳には愛がないけれども、おともだちパンチには愛がある。愛に満ちたおともだちパンチを駆使して優雅に世を渡ってこそ、美しく調和のある人生が開けるのです」

 こんなことを妹に教え込むお姉ちゃんが出てきてしかも「おともだちパンチ」なんて称するネーミングセンスを兼ね揃えているようではシャッポを脱ぐしかありますまい。青春小説や恋愛小説を期待して読んだ読者の大半が「なにこれ」と思いかねない代物ですが、むしろこれを一番に推したい所存。

 正直言ってあまり統一感のないアンソロジーでしたが、個人的に見て目立ったハズレはなく、そこそこ元は取れました。三羽省吾あたりは他の作品も読んでみようかな。

・拍手レス。

 ウエ紙です、ヒツジコは萌えキャラだと思う連盟の結成に伺いました(消防署の方から)
 愉快に参加するのです(感染済みの虚ろな目をしながら)。

 僕はいつだって『罪穢』じゃなくてトミプリをプレイする貴方を信じています
 うわ。『トミタケ・プリンセス』、ジョークじゃなしに本気で配布開始したんですか……。


2006-09-12.

・今日は仕事が暇だったので本を読んでサボっていた焼津です、こんばんは。勤務時間中に貪る活字は蜜の味よ喃。

・古川日出男の『サウンドトラック』読了。

「あたしのアッパーを見切ったのはあなたがはじめてだわ」
 フーッと息を吐いて、幕切れの形のままにしていた拳を下ろして、さらに続ける。
「あなたも、ボクサー?」
「ダンサーよ」
 ユーコが答える。それから、固めていた拳を開く。その掌を、指先をするっと下方(した)に向けてカナに示す。ただの自然な動作の流れで、ある種の仏像のポーズのように。そこに舞踊譜の断片が書かれている。まるで聖痕のように、それはある。

 音楽は死んでいた。二十一世紀へ踏み入った東京はヒートアイランド現象によって冬を失い、熱帯と化した。ソメイヨシノは一つ残らず枯れて死に、伐り倒される。イスラム系住人たちがコミュニティを形成した神楽坂は「レバノン」と俗称されるようになり、新宿の街にアザーンが流れる。鷹匠(サッカール)の血を引く両性具有のレニは、ハシブトガラスのクロイとともにモトマチの傾斜人へ「聖戦」を挑む。東京の遥か南に位置する東京、小笠原諸島から放たれたふたりの刺客――トウタとヒツジコは、それぞれ別々の時期に北上して上陸し、それぞれ別々の方法で戦いを繰り広げる。サウンドトラックを必要とせず。至ってサイレントに。ファシスト化した西荻窪、感染するダンス、現実を犯す映画、熱帯病の蔓延、福音を受け容れる鴉。音楽を殺されたピッグダム(豚の王国)はただ静かに喘いで滅ぶ……。

 さすがに氏の代表作『アラビアの夜の種族』よりは短いが、それでも結構長大な近未来小説。「アザーンの流れる新宿」というイメージがなにげに強烈でした。主要人物を大まかに挙げればトウタ、ヒツジコ、レニと、この三人。ただしレニの登場はちょっと遅くて、序盤は小笠原を舞台にトウタのヒツジコのふたりへ焦点が絞られる。このふたりが南の島でともに危うく逞しく生き延びる幼年期はそれこそ正に「一心同体」の分かちがたい気配を漂わせますけど、都内へ別々に上陸してからは接触する機会がなくなり、それぞれのパートが独立して進行していく。住む場所も職もろくに決まらない状態で過ごすハメに陥った割に一向に慌てないしたたかなトウタもさることながら……「踊って滅ぼす」を合言葉に、肉体一つで文字通りの革命を引き起こすヒツジコがまとう存在感はぶっちぎりです。「あなた散弾銃みたい」と評されるのもむべなるかな。ゲリラ的に継続される破壊工作ダンス。伝統ある女子校があえなく崩壊に向かう一連の描写は圧巻。

 登場は遅いながらレニのキャラクターも良かったです。鷹匠ならぬ鴉匠。地域に準じてほぼ自動的に性別を切り替えられる彼/彼女は後半に差し掛かるとエロ・テロリスト(AVのカメラマン)からカメラの手ほどきを受け、現実を十全にshoot(撮影/射殺)する技術を獲得します。その際に手段として選んだのがトーキーではなくサイレント。ここがタイトルである「サウンドトラック」に繋がり、またもう一人の主人公であるトウタにも繋がっている。

 他のふたりに比べればいまひとつ影の薄いトウタなれど、自らの名前を「淘汰」と規定しているのは伊達じゃない。彼は音の流れや重なりを理解できず、音楽を嫌悪しており、レニに不要と認定された「サウンドトラック」なるものをもっと不要であると淘汰して退ける位置に佇んでいます。タイトルである「サウンドトラック」が作中において一顧だにされず、ただただ黙殺の象徴とされているあたりは面白い。

 ともすれば支離滅裂になりかねないストーリーを卓越した言語感覚のハンドル捌きでドライブし切った長編であり、単純明快な「近未来モノ」を想像して読むと溢れんばかりの洒落っ気に戸惑うこと間違いなし。一番カッコいいシーンで幕切れとなるため「続き読ませろ!」と叫びたくなりますが、現状でも充分な読み応えはあってうっかり一気読みすればゲップが出る。もはや個性が武器というより兵器。この疾走感、感想で『コインロッカーベイビーズ』がやたらと引き合いに出されるのもうべなるかな。結構評価が割れている作品みたいなので不安もありましたものの、一読するやますます古川日出男に惚れる結果となりました。

 あと、そろそろ文庫版が出る頃合ですね。確か20日あたりだったかと。

・拍手レス。

 イスラム教徒と熊>どういう流れで?!
 明らかに『サウンドトラック』の影響です。

 はるはろはこのまま延期を続けてタイトル通りの季節に合わせる気なんだよっ!!  Ω ΩΩ<な、n
 そんな試みは『サマーデイズ』を連想させて不吉だからノーサンキューです。


2006-09-10.

・十数名のイスラム教徒が飛騨山中に分け入り、アザーンを唱えながら一匹の熊を包囲していくという謎の白昼夢を見ていたら、濡れた路面に足を取られて滑って転んだ焼津です、こんばんは。神罰ですか。

『ひぐらしのなく頃に解』、「祭囃し編」終了。コンプリート。

 というわけでコンプリート。長かった……ひぐらし自体が長いストーリーだったけど、「祭囃し編」はひと際長かったです。他のシナリオの倍くらいはあるんじゃないだろうか。とはいえそれは時間を計って比べてみたらの結果であって、実際にやってみると「倍っつーことはないだろう」ってくらいの量にしか感じられない。「長かった」という感想とは反しますが、なんかあっという間に終わってしまった気もします。不思議な気分。

 さて、『ひぐらしのなく頃に』と『ひぐらしのなく頃に解』、つまり出題編の4話と解答編の4話、全8話のプレー時間は累計でだいたい50時間ほどでした。声なしのノベルゲームで50時間というのは、Fateくらいしか記憶にありません。まあ、ソフトとしてはあっちが1本でこっちは2本ですが。ともあれ、潤沢な時間がなければ到底最後まではやり通せない話です。当方も読書に割く時間をガンガン削ってやり込みました。ようやく終わったので本格的に読書を再開できる、という喜びもあったり。

 始めの「鬼隠し編」や「綿流し編」では伝奇やホラー、ミステリの様相が濃く、以降もずっとその調子で続いていくのかと思いきや、大胆な遣り口で手を変え品を変え、先の展開を読ませないうねりに満ちた構成に仕上がっている。長大さのみならず、多彩さも兼ね揃えているところが『ひぐらし』の魅力であると、これはプレーした人が自然に気づくことのはず。ただ、謎と伏線をバラ撒く出題編が奔放であるのに対し、それらを拾い集めて組み立ててねばならない解答編はどうしても制約が多くなり、最終的には一つの路線に束ねざるをえない苦境を強いられる。特にラストを飾る「祭囃し編」はこれまでの各編に散らばっていた意思を統一するシナリオでもあるので、謎が謎のままであることを許されていた他のシナリオと違って、どうしても窮屈な印象を受けてしまう。テーマ性の強い内容となっているから貫通力は高いんですが、超絶対御都合主義につき被弾面積が小さく、直撃せずに掠ったり外れたりすると威力が激減するリスクを大き目に抱えています。腹蔵なく言ってしまえば、面白かったことは面白かったけれど、多彩さで魅せてくれた『ひぐらし』の総決算としてはチト物足りない……。

 意味は違いますけれど、「俺たちの戦いはこれからだ!」みたいな、まだまだ後日談が山ほどある状況で閉幕となっている部分に惜しむ気持ちが強いのかもしれません。確かに本編はきっちり終わっているんです。「悪役」の意義やその功罪も含めて物語の輪の中に溶かし込んでいる。でも、読んでいるこちらとしては腹に余裕があって、「お代わり持ってこい!」な心境なのです。石川賢のマンガのエンディングを見せられて血が滾ったまま悶える感覚と言いますか。「面白い」とか「つまらない」とかいう以前に、「物足りない」って欲望が先立つ。実に罪作りな作品だこと。

 そんなこんなで不満はいろいろ燻ってますが、とにかくここ三週間くらいはひぐらし漬けで、ひたすらに楽しかった。最高にハイって奴です。拡大フォントの演出が高橋メソッドにしか見えなくて結構シリアスな場面なのについ笑ってしまったりとか、そういうことも膨大な「楽」の中にあってはほとんど気になれない。極めて好みの分かれる結末になりましたが、当方としちゃこれはこれで充分オッケーです。物足りなさが残るというだけで。

 ちなみに。やっぱり好きなキャラは梨花ちゃま。可愛い立ち絵と男前な立ち絵が混在している、リリカルなカオスが非常にツボ。「OYASHIROせよ! OYASHIROせよ!」な展開がなかったのは密かに残念でした。っていうかそれがどんな展開なのか、書いてて自分でもよく分かっていません。男キャラは葛西あたりも好きでしたが、なぜか一番気に入ったのは鳳1の人。彼が主人公の外伝すら読みたい心地。そして、全8話中どのシナリオがフェイバリットかと申せば……もう「全部」と書きたいところではありますものの、敢えて選ぶなら出題編では「祟殺し編」、解答編では「皆殺し編」。このセットですか。総じて『ひぐらし』は物語の特性上バッドエンド成分の高い代物になっているから、BEスキーにはうってつけの一品でした。「罪滅し編」なんかも、ラスト付近ではゾクゾクと来ました。

 こうして本編も終わったことだし、やっと安心して派生作品に手が出せるなぁ。まずは『ひぐらしデイブレイク』『罪穢』あたりに手を付けてみようかと。


2006-09-08.

ハイクオソフトの『幼なじみとの暮らし方』がマスターアップした件でホッと胸を撫で下ろしている焼津です、こんばんは。『よつのは』の執拗な延期があっただけに、懸念はなかなか拭えないでいました。当の『よつのは』が依然として未プレーなので15日に発売されたところで着手しようもないのですが、とりあえず安心感だけは確保しておきたいもの。

・しかし代わりに、と言ってはなんですが、propellerの『はるはろ!』が発売延期(10月27日→11月24日)に。

 ああ、タクミンさまの祟りで発売日が月流しされてしまった……とはいうものの充分に予測の範囲内だから深い落胆はナシ。けど、おかげで11月あたりに注目のソフトが固まってきてスケジュール的には大変な気配がします。まあどうせまた延び(ry

 それから夏コミ配布のディスクに収録されていたミニAVGが公開。あとでやっとこうっと。

『ひぐらしのなく頃に解』、プレー中。「祭囃し編」スタート。

 いよいよラストシナリオ。歯応えのありそうな面構えにワクテカしております。んー、けどこれに関しては途中報告ナシで最後までやってから感想書こうかな。割と何に触れてもネタバレになりそうな雰囲気があるし。

・法月綸太郎の『怪盗グリフィン、絶体絶命』読了。

 「自分たちが子どもの頃に読んでいた児童書ミステリの復権」という名目のため、子ども向けでありながら同時に大人向けでもあるレーベル“ミステリーランド”の1冊。そうは言っても麻耶の『神様ゲーム』あたりを子どもに読ませたいかと聞かれれば迷うところですが。さて、本書は遅筆で有名な法月綸太郎の新作であるだけに、ファンから待望されていた一冊です。内容はタイトル通りの怪盗モノ。「怪盗」なんてのは「名探偵」に比べてあんまり認知されていない役どころで、ミステリにおいては既に廃れたジャンルとなっていますが、ルパンの冒険に心躍らせた世代としては懐かしさと期待が込み上げてくる路線でありましょう。

 話は二部構成です。「メトロポリタン美術館にあるゴッホの自画像は実のところ贋作なので、本物のこれとこっそりすり替えてほしい」と依頼されたジャック・グリフィン。「あるべき物を、あるべき場所に」を信条とする彼は依頼を受けて、警備厳重なメットにてあっと驚く作戦を実行するのだが……というのが第一部。第二部は「カリブ海のくすり指」と称されるボコノン島へ赴き、独裁政権を打ち倒した立役者のひとりであるパストラミ将軍所有の「呪いの土偶」を盗み出そうとするエピソード。繋がりはあるので、両部を合わせて読めば一貫した楽しみが味わえます。怪盗だけに虚々実々のコンゲームじみた遣り取りが多く、法月らしいロジック展開も健在で飽きさせない。また、スリルとアクションに満ちた冒険ストーリーとしても堅実。子ども向けだからといって手抜きのない仕事をしており、ついつい細かいところにまで引き込まれてしまう。

 懐かしい、けれど決して古臭くない。子ども向けを考えてユーモラスにしたとおぼしき箇所もあるが、容易に「子どもっぽい」と切り捨てることのできない愉快な軽妙さが感じられる。丁々発止の騙し合いとさりげない活劇描写、丹念に紡がれるボコノン島の歴史がスマートにまとまっていて、これは法月の上澄みが見事に汲み取られていますね。あらゆる年齢層に薦められる手堅い一作となってます。是非とも続編を希望したいところだけど、なにぶん遅筆な作家だし、グリフィンにリソースを割くとなるとただでさえ停滞しがちな「探偵・法月綸太郎」シリーズが余計に足踏みしそうで複雑な心持ち。

・拍手レス。

 あやかしFDはたぶん無いです。ドラマCDのコメントであやかしびとの作業はコレで終わりって言ってた
 それは残念……非常に残念……ならば新作に期待を馳せるのみ。

 こんなの見つけました。皆殺し編までのネタバレがあるので、ご注意を→
 → http://imihu.blog30.fc2.com/blog-entry-1558.html

 最初はこれ(ひぐらしのネタバレあり)と同じくネタスレの類かと思っていたら、予想外に巧緻な構成をしていて驚歎。紹介ありがとうございます。


2006-09-06.

・ようやく涼しくなってきたおかげで曖昧な状態でいる時間が減りつつある焼津です、こんばんは。暑さ寒さで言えば暑さの方が苦手。

『ひぐらしのなく頃に解』、プレー中。「皆殺し編」終了。

 このシナリオは結構長かった。位置づけとしてはひと通りすべての謎や秘密を解説するものだし、また、あるシナリオのリベンジというか、不完全燃焼で終わっていた要素を解消しに行く内容にもなっています。他のシナリオの2倍……というのは大袈裟ですが、少なくとも1.5倍は読み応えがある次第。反面、「あれはこうじゃないか、これはああじゃないか」と推理・想像する余地のあったこれまでと違い、完全に『ひぐらし』の真相を決定する代物に仕上がっていますから、プレーする人によって明確に好みが分かれるところでしょう。正直に申してしまえば、当方も個人的にガッカリする箇所はあったし、「期待していた路線とは違う」という思いはなくもない。が、問題編から間を置かずに解答編へ手をつけたおかげか、そういう幻滅感は薄く、「これもこれでヨシ」と割り切る気持ちが強いです。なんであれ作者が力を篭めてライティングしたという気迫は伝わってきますし、起伏に満ちた筋立ても単純に面白かった。伏線の収拾と事態の収束といった制約がある以上、「『解』に入った途端がくんとグレードダウンしてしまうんじゃ……」という不安は常にあって、「目明し編」「罪滅し編」ともどもハラハラしながらプレーしていましたけど――どうも杞憂っぽい。満遍なく楽しめているので、ラストの「祭囃し編」も支障なく堪能できそうです。

 で、そろそろネタバレなしで書くのがキツくなってきたので反転してチラッと。(ここから→)「皆殺し」の意味がせいぜい「部活グループ全員」程度の意味と思い込んでいて、錯乱した梨花ちゃまが鍬を担いで「OYASHIROせよ! OYASHIROせよ!」と暴れ回るオチを想像していましたが、まさかあそこまでとは……ちょっと震えが来るくらいのバッドエンドぶりにつき、当方個人史における歴代BEリストのランクが塗り替わりました。「祟殺し編」と二方向で重ねて見るにつけ、相当エゲツない絵図を引いてますね。(←ここまで)

 あと一息。ここまできたらもうキッチリと楽しみ尽くすことにだけ専心したい。

成田良悟のHPで紹介されていたのがキッカケとなって知った『カラスヤサトシ』を読む。

 アフタヌーンの埋め草に使われたという四コマをまとめて一冊にしたもの。毎回お題が提示され、それに添った経験談や知人の体験したエピソードを描く。四コマだけに基本はギャグ。また自分自身が中心となるために、自虐ネタや奇行ネタも多いが、全体的に明るくてカラッとしている。キモいんだけど、しつこくない。そういう妙なテイストでした。

 引き合いに出される話題の時期がバラバラなんで日記とは違いますが、ノリとしては日記マンガに近いところがあるように思えます。桜玉吉とか田丸浩史なんかみたいな。あとマンガじゃないけど荒川工とか。「変わったことに感極まって泣く」とか「ガチャポン使って一人遊びをするのが好き」とかいったネタが繰り返し使われたりするせいもあって、通読するとなお面白い。四コママンガで、しかもネーム量が多いから意外と長時間に渡って楽しめる。

 いくつか笑いどころが分からない(つまんないとかおもんないとかいうより、「え? これでオチてるの?」と首を傾げるような)ネタも混じっていましたが、ともあれ、大判サイズではないコミックスで手軽に味わえる四コマものという点では貴重ですね。たっぷり笑い転げました。

 デフォルメされていますけど、女性キャラクターが結構可愛く見えて密かにツボだったり。


2006-09-03.

早川書房のHPを見ていたら、「刊行予定−これから出る本−」のところに「廃園の天使2」の表記。

 キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!!!

 痺れを切らすほど待った『空の園丁』が遂に……って、あれ?

 よく見たらタイトルは『ラギッドガール』。これ、SFマガジンに載った中編の題名ですね。ということは雑誌掲載した中編とか短編集をまとめたものなんでしょうか? せ、せめて書下ろしがあることを祈る……そんな焼津です、こんばんは。1巻の『グラン・ヴァカンス』もそろそろ文庫化。

アリスソフト、『鬼畜王ランス』をフリー化

 『戦国ランス』の情報を発表されたこともあって不意にやりたくなった鬼畜王が、狙い澄ましたかのようなタイミングで来ましたよ。ただまあ、フリー化が宣言されただけで、『しまいま。』みたいにDL配布を行うわけではありませんから、どこで入手するのかという問題はありますが。そのへんに関しては詳しくないのでしばらく待ち姿勢。

『ひぐらしのなく頃に解』、プレー中。「罪滅し編」終了。

「ひゃあああああああああッ!!!一撃で叩き割ってあげるよおおおおおおおッツ!!!!! 」

 方向性の違いはあれど、ここまで「無茶苦茶だ!」と思ったシナリオは「祟殺し編」以来です。全体的に予測不可能。まさかこう来て、ああなって、終いにはどう転がるか、あらかじめ読めるものではない。その無茶苦茶さが悪いわけではなく、むしろここまで壮絶にやってくれると却って清々しい心地がしますね。理不尽な惨劇に立ち向かうのに正気では務まらない。正直ちょっとやりすぎなところもあった気がしますけど、個人的な好みにはバッチリ合致するもので満足しました。

 にしてもどんどん梨花ちゃまの立ち絵が凛々しくなっていくというか、男前になってきているというか、ぶっちゃけこの子って本当に♀なの? 実は♂でしたー、とか脅威のどんでん返しが来るんじゃないの? 当方はそれで一向に構わないどころか大歓迎したいのですが。と、くだらないことも考えていたり。

 さて、残るところあと2話。「皆殺し編」と「祭囃し編」だけです。読み尽くしてしまうのがもったいない気もしますが、構わず突き進んでいこうかと。いざとなれば他にもいろいろと手をつけられるひぐらし関連作品はありますからね。

・道尾秀介の『向日葵の咲かない夏』読了。

 ねえ、生まれ変わりって信じる?
 部屋に戻ったら、自殺したはずのS君が来てたんだ。
 ただ、その姿ってのが……。

 2冊目の著書。現在は3冊目である『骸の爪』が最新作で、また来月に創元からミステリ・フロンティアのレーベルにて『シャドウ』という新刊を出す予定になっています。デビュー作『背の眼』はいま一歩注目されなかった道尾秀介ですが、受賞後第一作に当たる本書で若干の話題を集めました。

 キーワードは上記した「生まれ変わり」。首を吊って死んでいた友人――その死体が消失するところから物語は動き出す。S君の「生まれ変わり」に、「ぼくの死体を見つけて」と頼まれた主人公は素人捜査を始めるのだが……。んー、一言でまとめると「なんじゃこりゃあ!」な話です。ミステリに超常的な要素を加味した作品というのは既にいくつも先例がありますけれど、これは超常ミステリというより異常ミステリでしょう。惹句は「不条理ミステリ」と来てます。文章そのものは平易でとっつきにくいところはなく、スラスラと読めるものの、何かが狂っている、何かがこじれている……という違和感が常に付きまとい、薄気味の悪い雰囲気が絶えない。「生まれ変わり」云々といった異常要素を除けば「死体の消失」をメインに据えたミステリであり、前半に関して言えば「S君の死体を捜しながら事件の裏を探るストーリー」ってふうに受け取ることは可能なんです。そこらへんは別にややこしくありません。淡々としたテンポで進んでいくため少し物足りないところはありますが、「ひと夏の冒険」として充分に楽しめる。

 が、最後に待ち受ける結末。これは本当に「なんじゃこりゃあ!」の世界であります。受容できるか、拒否反応が出るか、読む人によって差が表れそう。ミステリが孕む「異常さ」をへし折って逆手に取り、ブスッと突き刺す凶器に変えてくるような反則技。もっと平たく書けばバッファローマンの角をブチ折ってそいつを顔面に叩き込むノリです。萎れた向日葵が不気味な表紙に違わぬ薄ら寒さに襲われ、背筋もすっかり涼しくなりました。時期的にもちょいどいい頃に読めたと思います。ヒグラシとか出てきますし。

・拍手レス。

 み、皆殺し編をやっちゃ…!  …皆殺しまでのみ、推理と謎と恐怖に酔いしれる余地があります。そこがミソ
 「武将は『碧巖録』の十巻まで読んではいけない。八巻まででやめておけ」って言葉もありますが、やらねば各所の「祭囃し編ネタバレ漫画」とかが読めませんから……!


2006-09-01.

propeller、PS2版『あやかしびと』発売記念に「あやかさんとしゅうげんくん」「テンプテーション・オブ・フレグランス」を公開

 てっきりファンディスクか何かに再収録するのかと思っていただけに、無料公開とは予想を裏切られた。じゃあFDは「あやかしばん」のアシストがいらないくらいの内容になると期待してもいいのか、そもそもFDは出るのか――眠る頭取に願いを託しつつ、注文したPS2版『あやかしびと』はまだ届かないのかと運送会社に矢の催促をしたい気持ちをぐっと堪える。

『ひぐらしのなく頃に解』、プレー中。現在「罪滅し編」。

 今までとは違ったパターンで展開しますが、惨劇ぶりは相変わらず。詳細が判明すれば判明するほどに根の深い話だってことが分かってきました。ホラー性は希薄になっても、サスペンスのボルテージは依然最高潮といった気配。随分な時間やり続けてきましたけど、まだまだ飽きません。惨劇に心を鷲掴みにされています。

 ただ、ようやく希望とおぼしき光も見えてきて、このシナリオを境に状況も好転するのでは……という期待もあり。ただまあ、この次のシナリオって「皆殺し編」なんですよね。タイトルを見る限りでは絶望的って感じが否めないんですけれど、さてはて。

・今月の予定。

(本)

 『TOY JOY POP』/浅井ラボ(ホビージャパン)
 『とらドラ3!』/竹宮ゆゆこ(メディアワークス)
 『超・超・大魔法峠』/大和田秀樹(角川書店)
 『邪魅の雫』/京極夏彦(講談社)
 『天地人(上・下)』/火坂雅志(NHK出版)

 TJP、「され竜はどうなってるんだろう」な浅井ラボの新刊。これまでの異世界ファンタジーと違って現代青春モノっぽいですが、癖は強くとも器用な作家なのであまり心配しておりません。とらドラの3巻、前回がいいところで終わっていたので待ちくたびれた気分。今月の電撃文庫は他にもシャナと七姫とうえお久光の新刊が集中して濃度の高いラインナップになっています。大魔法峠、あのアルティメット魔法少女が何のヒネリもないタイトルで帰ってきた。大和田秀樹のギャグセンス自体が好きなので待望の一冊です。『邪魅の雫』は前回も触れましたな。今度こそ延期しないでおくれ。天地人は最近ハマってきている火坂雅志の新刊。主役は直江兼続らしい。上下2冊ならたっぷり読み応えがありそうだ。あと、元長柾木の『ヤクザガール・ロケットハート(仮)』、『ゼロの使い魔』の新刊、『グラン・ヴァカンス』の文庫版、深見真の新作、SBR、ハチクロ、宵闇、ナポレオン、竹本健治の『ウロボロスの純正音律』、浅田次郎の中国大河小説『中原の虹』の1巻、ディーヴァーのリンカーン・ライムものなど、今月は注目作がいっぱいです。特にディーヴァーの『12番目のカード』、「単純な女子高生強姦未遂事件が、実は米国憲法の根底をゆるがす140年前の陰謀に結びついていた」というあらすじがとっても気になります。そして『天帝のはしたなき果実』は結局出るのか、出ないのか。

(ゲーム)

 『幼なじみとの暮らし方』

 のんさんの可愛らしさは異常。喜んで狂おうじゃないか。


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