2006年2月分


・本
 『B・D・T 掟の街』/大沢在昌(双葉社)
 『王妃の離婚』/佐藤賢一(集英社)
 『隠し剣孤影抄』/藤沢周平(文藝春秋)
 『木島日記』/大塚英治(角川書店)
 『アトポス』/島田荘司(講談社)
 『戦線スパイクヒルズ(2)』/原作:原田宗典、漫画:井田ヒロト(スクウェア・エニックス)
 『たそがれ清兵衛』/藤沢周平(新潮社)
 『狼と香辛料』/支倉凍砂(メディアワークス)
 『火目の巫女』/杉井光(メディアワークス)
 『哀しみキメラ』/来楽零(メディアワークス)
 『お留守バンシー』/小河正岳(メディアワークス)
 『漂泊の牙』/熊谷達也(集英社)
 『魔王』/伊坂幸太郎(講談社)
 『海の底』/有川浩(メディアワークス)

・ゲーム
 『雪影』体験版(Silver Bullet)


2006-02-28.

・夜になると本を読む集中力の高まる焼津です、こんばんは。音楽を鳴らすよりも静穏な状態の方がページが進むせいもあり、寂々とした空気が馴染む様子。ただあまり熱中しすぎると翌日に差し支える諸刃の剣。平然と徹夜できた若い頃に戻りたいぜよ、と泣き言をほざきつつそろそろ栞を挟む頃合。

早川書房の4月刊行予定にイアン・ランキンの『影と陰』が。順番からいって"Hide & Seek"の翻訳でしょうか。ややこしい……

・拍手レスります。

 『竜†恋』が内容少なめでボイス無しなのが本当に残念。面白くて萌えるだけに……っ!
 逆に考えましょう。脳内でボイス当て放題、話補完し放題だと! ……素直に新作待ちましょうか。

 鬼畜秀行、まさに魔界都市の作り手に相応しい称号ですね。秋せつらも驚きです。
 「うつくしいは正義!」なところからすると「美畜」の方が合うやもしれません。

 針山さんに続き、番シーも読みたくなったジャマイカ。
 バンシーいいですよ。見た目貴婦人なのに誘惑スキルが小学生以下のサキュバスとか。

 小説の続きを読もうとクリックしすぎて、気づいたらコメントが送れなくなっていた罠(笑
 実はコメント打ち止め機能を知らずにループ構造つくろうとして失敗した罠。


2006-02-26.

『しまいま。』と読書を並行する路線でGOな焼津です、こんばんは。

 やはり無料DLの反響は凄いようで、『アリスの館7』を持ってない人の間では「太っ腹」と持て囃す向きがある一方、既に所有しているユーザーからは「面白くない」といった意見がある様子。完全版商法と違って新たな出費を要求されないから金銭面での実害はないにしても、「『しまいま。』の部分には○円払ったつもり」みたいな感覚があるせいで、1年越しとはいえプライスレスにされたことが腑に落ちないってところでしょうか。プリっちみたいに前作付きの豪華初回版を用意するくらいだったら既存のファンと新規のユーザーが折り合える妥協点を築けたのかも。

 ちなみにまだ1時間程度ですが、個人的には姉より妹の方が好み。BGMや差分CGが少ないしパートボイスだし普段変化するのはフェイスウィンドウだけで立ち絵は一枚きりだしと全体的に安っぽいつくりではあるものの、ラブコメの要件はひと通り揃えられており、姉妹間の可愛らしい修羅場が到来する予感に(*´Д`)ハァハァさせられてグッド。本当にばりサボを買いたくなってきた次第。

『機神飛翔デモンベイン』、発売予定日が5月26日に決定

 まだもうちょっと先ですか。ゆるりと待ちます。

・有川浩の『海の底』読了。

 『塩の街』『空の中』に続く自衛隊3部作の完結編。「3部作」とは言っても単に自衛隊を題材にしているって点で共通しているだけで、作品世界に繋がりはありません。あと内容も福井晴敏の国防シリーズみたいなのを想像すると「なんじゃこりゃ」になります。人間が塩の塊に変わってしまう奇妙なクライシスを描いた『塩の街』。高度二万メートルに潜む知性体とのファーストコンタクトを描いた『空の中』。そして本作は、怪獣映画の流れを汲むパニック・スリラー。しかも閉鎖空間でのギスギスした青春劇や淡い恋愛模様までが絡んでくる。概要だけを説明すると何とも珍妙な作品に聞こえますが、実際に読んでみればライトノベルと一般小説のそれぞれいいところを抽出するのに成功した話だと判明するのだからなんとも面白い。

 春、花見客で賑わう横須賀に突如上陸した人間大の甲殻類たち。後に「レガリス」と呼ばれることになるそれは、大群を成し、ザリガニじみたハサミを振るって人々を殺傷し──貪り食った。レガリスの猛威を食い止めるため出動した機動隊は尽力の結果、多数の負傷者を出しながらも奴らを食い止めることができた。しかし、警察の装備でどうにかできる連中じゃないことぱ分かりきっている。豊富な武装を持つ自衛隊が進撃しなければ、騒動が解決に向かうはずもない。なのに閣議は踊るばかりでいつまで経っても決定が下されない。焦れる面々。一方、レガリスに囲まれて基地からの避難が不可能になった子供たちが自衛官2名とともに潜水艦に立て篭もり、救助を待っていた。閉塞的な環境下、日が進むにつれて軋み出す空気。米軍が爆撃を開始するまでに、日本政府は事態を収拾できるのか……。

 レガリスに関する情報を収集しつつ対処に当たる「外」のパートと、潜水艦の中で十数名の子供たちと自衛官がともに生活する「内」のパート、大きく分けてこの2つの視点で紡がれています。序盤では「内」のパートがやや流れに沿わないような違和感があり、「外」パートの方が熱中させられるんですけれど、後半あたりになればしっくり馴染んで「内」と「外」との区別が気にならなくなりました。さて、怪獣モノという点では前作と同じですが、知性体が相手ということでコミュニケーションが成立してファースト・コンタクトな物語として楽しめたあれに対し、今回は知性が(というより人類とのコミュニケーション能力が)ない怪獣が一方的に襲ってくるので、割合普通の展開になっています。いろいろと奇抜な要素を仕込んでSFとしても評価されるほどだった『空の中』に比べれば、あまりにストレートすぎるかもしれません。けれどストレートな分だけ単純に引き込まれるパワーがあります。おどろおどろしいホラー的描写を控えつつ、大局を見据えて理性的に綴られていくストーリーはインパクトに欠きこそすれ、「続きが気になる」という読者の欲求をいささかも損なうことがない。シャープな速球です。自衛隊が出張ってくるまで時間が掛かるもどかしさには『宣戦布告』が頭を過ぎった。

 「内」と「外」、どちらかと言えば、食わせ者の明石警部や烏丸警視正が登場する「外」パートの方が個人的にはツボだったけれど、読了後に残る何とも爽快な余韻は「内」パートなくしてはありえないので、この構成で結局は良かったのかな、と思ったり。終盤がサクサクと進むせいかいまひとつスペクタクル興味が盛り上がらなかったのは少し残念。ともあれ話題性では『空の中』に負けるにしても、読み応えでは劣るところのない一冊でした。

 ちなみに、量的には通常の電撃文庫1.5〜2冊分程度ですね。


2006-02-24.

『マブラヴ・オルタネイティヴ』が発売し、『ロスト・チャイルド』がマスターアップする……ようやく負債が解消されたような塩梅で、何はともあれホッとしてみる焼津です、こんばんは。でも最近は読書ばかりでエロゲーを崩してなかったり。そろそろやりかけの分を片付けるかな。

アリスソフト、『しまいま。』の丸ごとダウンロードサービスを開始

 ちょっ、このソフトだけが目当てで『アリスの館7』を買いそうになったこともあるのに。結局単品で出るのを待とうと思って買い控えましたが、まさかフリー化に踏み切るとは。流れで『よくばりサボテン』にも興味が湧いてきた当方は見事に釣られている気もするけれど、これはこれで安いし、いいか。

小学生限定の小説賞(読売)

 ここまで来ると末期な気も。

村主章枝と荒川静香(毎日)

 肩から生えているみたいというか、スタンドを出してるような絵面に。これとかも。

・伊坂幸太郎の『魔王』読了。

 タイトルの由来、最初はトゥルニエの方かな、と思いましたが単にシューベルトで正解の模様です。前々からジャンル分けがしにくいというか、明確な分野を意識せずに書かれている節がある伊坂作品の中でも一番「これこれこういう内容ですよ」と説明しにくい話。表題作の「魔王」と続編の「呼吸」が収録されていて、ある兄弟を巡る物語になっているのですが、絡んでくる要素は超能力ありファシズムあり気の抜けた遣り取りありと実にごった煮だ。おまけに従来の作品群とも微妙に姿勢を異にしていて、たとえ作者のファン相手でも内容が伝えづらい。面白いかどうかで言えば、面白いんですが。

 「魔王」は、ある日ふとした拍子に他人の口を借りて好き勝手なセリフを喋らせることができるようになった安藤兄が主人公。彼はこの能力を「腹話術」と呼び、どれだけ有用なのか実験したりもしますが、基本的に乱用することはなく淡々とそれまで通りの生活を送ります。エンターテインメントの文脈に逆らうような展開で、普通なら退屈を覚えて然るべきだけど、それをテンポ良く楽しく読ませてしまうのが作者ならではといったところ。元から歯切れの良い作風をしていた伊坂ではありますが、最近は書き慣れてきたせいかいっそう磨きが掛かっている気がしますね。大筋だけ取り出せば2、30年前のサイキックSFみたいな代物なのに、現代で違和感なく馴染ませている。「呼吸」は「魔王」のストーリーを継ぎ、安藤弟が焦点になります。こっちも超能力めいた要素は関わってくる。が、「魔王」よりもファンタジー色が減っていて、続編とはいえまた毛色の違った仕上がり。全体的に見て緩やかな曲線で構成された話になっています。具体的すぎず、かと言って抽象的すぎず、率直に書けば「説明しにくいけど分かりやすい」って作品。洒脱感とともに何かしらのヌルさを覚える部分もあります。ある意味で伊坂幸太郎の到達点なのかもしれませんが、これで終わって良かったのだろうかという思いもあり。あとのことは「考えろ考えろ」ってことでしょうか。

 安藤弟の彼女、詩織が電灯のスイッチを切るたびに言う口癖「消灯ですよー」がやけに印象的でした。もちろん「印象的に受け取らせよう」という作者の意図も掛かっているのは分かりますし、これがあるとないとでは「魔王」の評価自体が変わっていたかもしれないと思いますけど、別段中身のない一言が響いてくるのは面白いなと。


2006-02-22.

・未だに『キャッチャー・イン・ザ・ライ』がハリウッドのサスペンス映画みたいなタイトルだと思っている焼津です、こんばんは。村上春樹の訳しか読んだことないから野崎孝訳も読みたくなってきた今日この頃。

・熊谷達也の『漂泊の牙』読了。

 第19回新田次郎文学賞受賞作。著者にとって第2長編に当たります。クマ、それも「山の神(キムンカムイ)」として讃えられるものの逆、人肉の味を知って手が付けられなくなった悪神(ウエンカムイ)の姿を描いたデビュー作『ウエンカムイの爪』に対し、今回の題材はニホンオオカミ。とっくに絶滅したと目されている獣の事件を、ややサスペンスタッチで語っている。野生の迫力を綴りつつも分量が少なくて不満を残した前作に対し、倍近いボリュームで送られる本作は読み応え充分。

 妻を喰い殺したのは、野犬なんかじゃない──オオカミの研究で類希なる才能を発揮した動物学者・城島は直感した。残された一人娘・彩佳を構うことも放棄して「犯人」の追跡に熱を上げる彼は、次第に「犯人」が絶滅したはずのニホンオオカミなのではないかという疑惑を強めていく。ドキュメンタリー制作のために近づいてきたテレビ局員を味方につけ、なおも捜査を続ける城島。連続する殺人。執念の追跡を重ねた末、彼らはようやく二頭の「犯人」を見つけ出したが……。

 人間が、オオカミを追う。一種のチェイシングめいた趣向が読書意欲を駆り立てる力作です。東北の地を舞台に、「マタギには流派がある」などといった薀蓄も交えて展開していくあたり、グイグイと引き込まれずにはいられない魅力があります。ただ正直に言えば主人公の城島と娘の彩佳くらいにしか確固たるキャラクター性を感じられず、他の面々はどうも個人としてより役割としての色合いが意識されて仕方なかった。キャラに重きを置いて読もうとすれば少し辛いかも。あと、「現場には不審な状況が……」とミステリみたいな部分で興味を引っ張る点も、前半は良かったにしても後半で少し祟っている気がします。半分くらいまでは凄く面白かったし、「犯人」を追い詰めるまでの過程はかなりワクワクさせられましたが、そこがピークで以降の流れはパワーダウン。消化試合の雰囲気もあってちょい中だるみしました。文学賞を受賞しているのも頷ける力作だけに、前半と後半の繋がりでチグハグな印象を受けるところがあるのは残念。

 かつてあったオオカミの姿やその習性、絶滅に至る経緯、そして「サンカ」と呼ばれた人々……自然モノというか、野生モノというか、とにかくそういう「人間と動物と環境」を絡めた話としては興味深く、読んでいて退屈しません。前作と比べても着実な進歩と成長が窺えるので今後の作品も楽しみ。


2006-02-20.

・最近は体験版をやっていても気が急いて「早く終わらないかな……」とか思ってしまう焼津です、こんばんは。何事もやり始めというのはダルいものなんで、そこをどうにか凌いで楽しむ余裕を得たいところ。希望通り早く終わっても結局雰囲気が掴めなくて本末転倒になってしまいますし。

・小河正岳の『お留守バンシー』読了。

 「いくらなんでもこの題名はどうよー」と刊行前から思っていた第12回電撃小説大賞 <大賞> 受賞作。ケルト絡みのファンタジーによく出てくる「泣き女」の妖精バンシーと、「はじめての」「永遠となった」などの形容詞でよく知られるお留守番を掛けており、どう見ても駄洒落です、本当にあ(以下略)と言うより他にありません。しかしいざ読んでみればこれがクリーンヒット。見事にツボに入りました。

 アリアは是が非でも戦いを避けたかった。
「誰が傷つくのも見たくはないの!」
 などという殊勝な理由からではない。
 何よりも、オルレーユ城を荒らされるのが耐えられないのだった。
 アリアが五十年かけて美しくととのえた城である。注いだ愛情の分だけ愛着があった。ようやく構想していたとおりに仕上がったオルレーユ城が、一夜にして灰燼に帰すなど、考えただけでも発狂しそうになる。

 と、「バンシーがメイド」なんていう奇抜な設定ながら、留守を預かる身として奮闘し、「城の平和と調和と清潔はわたしが守る!」ってな具合に頑張るアリアが普通に愛らしい。他にも肌の露出が少ない服装を好み、殿方との接触もついつい控えがちで「もっとふしだらにならなければ」と嘆くおかたいサキュバスや、臆病なうえ格好も悪魔というよりペンギンにしか見えないガーゴイル、軽薄でお間抜けなデュラハンなど個性的な面子が揃っており、言うなればほのぼの系アダムス・ファミリー。スラップスティックな遣り取りも多く、読んでいて何度も噴き出してしまいました。テンポの軽快さが卓越していますね。アメリカのホームコメディなら合いの手で「HAHAHAHA!」と笑い声の入るような場面が盛り沢山です。

 同時刊行の受賞作に比べて薄く、明確なテーマ性も特に持っていないのだけれど、随所に笑えるポイントがあるせいで読後感はひどく爽やか。おまけに「続きが読みたい」と願わせるだけの魅力と余地を兼ね揃えているのだから大賞という座も頷ける。「一応の大賞を立てる」「どの作品でも良いというわけではない」「『お留守バンシー』などは」「ふさわしかろう」と選考でも満場一致だったことでしょう。ただ短いせいもあってアクションシーンやそれにまつわる小道具がやや浮いてしまっている印象もあり、今後シリーズを続行させるとするならそこらへんを馴染ませていってほしいところではあります。

 劇的なものはありませんが、正統派のコメディでありながら決して古臭くはない活きを保った一作。「いかにも深沢美潮が絶賛しそうだな」と思っていたら本当に激賞していて笑いました。個人的にもかなりのアタリです。シットコム好きにオススメ。電撃小説大賞、今回は受賞作のレベルが高く、巷の評判通り豊作でした。新人たちの次回作にも大期待。


2006-02-18.

 リア友に20代半ばなのに補導されそうになる擬似ロリっこがおります。萌えすぎます。
 リア友に小学生だったのに「こら、高校生にもなって! 大人の切符買いなさい!」と駅員と揉めたことのある老けメンがいます。萌えません。交換してください。

・書き出しのネタがなかったので拍手レスから始めてみる焼津です、こんばんは。

・来楽零の『哀しみキメラ』読了。

 「心を鬼にする」という慣用句があります。あえて非情や冷酷に徹する様を表しますが、「鬼」という言葉に付きまとう禍々しさはそこにない。だから、本作を「心まで鬼にならないよう足掻く話」と表現してもニュアンスが伝わらないかもしれません。鬼というものは「悪魔」とイメージを重ねられることもありますけど「心を悪魔にする」という言い回しが鬼の場合とは全然違って聞こえるように、反人間的というよりもどこか忌避しきれない要素を抱えている気がします。

 第12回電撃小説大賞 <金賞> 受賞作で、前回と前々回に取り上げたものより一つだけランクがアップしています。たまたま学習塾の裏口エレベーターに乗り合わせた四人の男女のところへ、手負いの化け物がやってくるところから話の幕は上がる。化け物は霊的な存在で、しかも弱りきっていた。おかげで襲ってきたときに取り憑いたのか、逆に力がなくて取れ込まれたのか、判別しがたい状況で四人と同化して不可分になってしまう……。

 そして、「人間のようで、そうじゃないモノ」になった彼らの変貌が始まります。重要な場面に限って軽く流したりとか、終始一貫して淡々たる筆致が守られており、どこか突き放したような距離感を築いたままストーリーは進行する。群像劇の様相が濃く、一応メインのキャラはいますが四人全員が主人公って感じ。いきなり出会って互いのことがよく分からないまま会話し、騒動が収まった後、一気に時間が流れる序盤をはじめ、全体的に駆け足気味です。ノリに馴染めないと置いていかれそうになります。「こうなったから、ああなる」「そうだから、こうする」と物事や行動の因果はハッキリしているものの、先にも述べた「距離感」が影響してどこか遠くの出来事みたいに見えてくる場面もありました。転がり落ちるような勢いで「人間じゃなくなる」ことに怯えながら歩むべき道を求めて足掻く主人公たちの懸命さが彫り出されていて面白かったけれど、もう一つ何かアクセントが欲しかった気もします。

 なんだかコミカルな雰囲気さえ漂うタイトルに対してあくまでシリアス一辺倒の内容。ネガティブのようでいて、四人揃って練炭を囲むような悲観はなく、それぞれがそれぞれの考え方で未来を目指そうとしています。キャラの存在感が足らないせいか群像ストーリーとしてはちょっと没入しづらいところもありましたが、いろいろと光る部分も見受けられました。うまくすればシリアス路線の新人として成長してくれるかもしれないって期待が湧いてきます。


2006-02-16.

・エロパロ板の「嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ」が凄まじく神懸かっていて毎日目の離せない焼津です、こんばんは。

 立った当時から密かにブックマークしていましたが、これだけ負の情念に満ちた小説が数多く連載開始して、更にどれもが素晴らしいクオリティを保つなんて予想だにしませんでした。もはや『日刊・修羅場』の世界。中でも特に続きを楽しみにしているのが「合鍵」と「優柔」ですね。主人公たちがさりげなく鬼のようなセリフを吐いて火に油を注ぐ様はたまらない。ドキドキします。まとめサイトの方にもSSのまとめあり。

Key『planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜』パッケージ版の発売日が決定

 待ち侘びておりました。というか待っていたことを半分くらい忘れていましたが。ともあれ購入予定。

・杉井光の『火目の巫女』読了。

 第12回電撃小説大賞 <銀賞> 受賞作。『狼と香辛料』と一緒です。が、カラー口絵を飾るのはほとんどが女性キャラ。しかもおまけに付いてる文章を読めば「女×女」の遣り取りばかり。すわ百合か。百合なのか。と慄きながらページを繰り続けたものの、本編における百合臭は「努力して嗅ぎ取ろうとすれば感じられないこともない」という程度。どちらかといえば百合展開が苦手な当方はホッと胸を撫で下ろしました。

 さて、題名を見ればだいたい分かりますが和風伝奇ファンタジーです。人を喰い殺し村を焼き滅ぼす「化生」、生半な攻撃は一向に通じない奴原を討つのが「火目」の役割。火目の候補生として選ばれた少女が、火目になるため鍛錬したり、他の候補生と仲良く過ごしたり、火目や化生にまつわる謎に近づいたりと、ひと通りの行動をする。良く言えば王道。ぶっちゃければ、「ありきたり」とも言えます。文章、キャラクター、ストーリー展開、世界設定……一つ一つを見ていけば特に斬新なものはなく、「おっ」と目を引く要素に乏しいし、野心的な試みが窺えない。その反面、個々に至るまで手抜きなしの工夫が施されており、「ありきたり」の中でも高い水準を保っています。必要以上にだらだらと背景設定を垂れ流さず、キャラ間のコミュニケーションに織り交ぜて自然と読者の理解が得られる配慮。決して才能に恵まれているわけではない主人公がそれでも頑張ろうとする姿。容赦を忘れて徹底的に畳み掛ける終盤。古い喩えですが「一本の矢は容易くとも三本の矢ならば」みたいな具合で、要素を総合したときのバランスが堅牢です。おかげで一気に読める。この作者、結構書き慣れているのでは。

 矢の喩えで思い出しましたが、主人公たちの武装は弓矢です。もちろん標的が化け物だけに破魔の力を発揮して射る。普通の弓モノなら当然ロングレンジを活かした戦い方になりますが、一旦破魔絡みになれば弓における神秘性が強調され、近距離で撃とうが遠距離で撃とうが超遠距離で撃とうが不自然ではなくなり、あらゆる距離から戦闘を意識した行動を取れるのが強みになっている。格別アクション描写で魅せるってタイプの作品ではありませんけど、あえて弓道に焦点を当てたのは成功だと思います。たぶん、剣とか槍とか、あるいは形のない炎撃や雷撃を採用していたらこんなふうに面白くはならなかったでしょう。射撃シーンの迫力が素晴らしかった。

 清新さに欠くから銀賞の位置付けもむべなるかな、と考えさせられるにせよ、肌に合ったおかげで楽しく一気読みできました。作者が2chのコテハンだとかで、あとがきにさりげなくネタを混ぜていたりするのはどうかと疑問ですが。何はともあれ、和風伝奇に飢えてるところでちょうど良かった。これも割とオススメ。


2006-02-15.

・「菊地秀行」をミスタイプして「鬼畜秀行」と書きかけた焼津です、こんばんは。いくらなんでもバイオレンスすぎる。

『処女はお姉さまに恋してる DVDフルボイスパッケージ』が4月28日に

 CD版を買い逃していた当方には好機。

・支倉凍砂の『狼と香辛料』読了。

 この村では、見事に実った麦穂が風に揺られることを狼が走るという。

 牧歌的とも言える冒頭の一節が目に浮かぶような第12回電撃小説大賞 <銀賞> 受賞作。「剣も魔法も活躍しない」と謳っている通りの内容で、流行りの路線と比べれば一見パッとしないふうに映るかもしれません。実際かなり地味っぽいです。けど、これはなかなかの一冊ですよ。行商人を営む青年が、自ら「神」と名乗る狼耳の少女を拾って……と出だしはありきたりながら、街から街へと渡り歩いては品を捌いて生計を立てる、定住なき行商人の寂しさに満ちた孤独が一人の少女によって埋められていく流れが実に心地良かった。一撃必殺を狙わず、コツコツと積み重ねる遣り口で話を盛り上げていきます。

 主人公が行商人という設定になっているのは記号でもなんでもなく、経済面での駆け引きがストーリーの眼目となってくる。注意深く、それでいて儲け話に敏感な主人公の商売人気質をサッパリアッサリと嫌味なしに表現する文章はイイ仕事してます。もうちょっと推敲の余地があるような気もする詰めの甘さは残っていますが、変な気負いはないから安心して読めますね。それで、こんな奴が主人公だとヒロインもいいように弄ばれるんじゃ……なんて心配は実のところ一向に湧いてこなかった。ヒロインのホロは「獣耳と尻尾持ちで何百年も生きている」という、造型だけなら手垢の付いたキャラクターなんですけれど、「何百年」を証明するかの如く主人公をいいように引っ掻き回して逆に弄ぶ。彼女も彼女でフェイント掛けまくりなところにまったく嫌味がない。ホロが次に何と言うか、どんな行動に出るか、主人公ともども予想しては外すのが面白かったです。更には腹いせに主人公がやり返して、概ね失敗しますがたまに成功したりとかも。そんなわけでふたりの遣り取りはなんというか、バカップルの心理戦? ほのぼのしすぎて微笑ましさよりも小憎らしさを覚えました。

 地味とは言ってもさすがに何も起こらない空っぽのストーリーではありませんし、読みどころもしっかり用意されています。良い意味で長さを感じさせない軽快な筆致もポイントが高い。読み返してみればいろいろ伏線が張られていて抜かりのない構成になっていると気づく。丁寧というか、几帳面というか。斬新さや奇抜さはないにしても、手堅く楽しめる作品です。荒削りではない、至って真面目な新人って印象。「わっち」「ありんす」みたいなヒロインの口調も最初は面喰らいますが、しばらくすれば馴染みます。割とオススメ。


2006-02-13.

・いつの間にか『冬の巨人(仮)』及び『Op.ローズダスト』が3月に延期していて膝をつく焼津です、こんばんは。今月は延期ラッシュだなおい。

・藤沢周平の『たそがれ清兵衛』読了。

 映画の方は知ってましたが原作がフジシューだったとは知らなんだです。表題作含む8編を収録した短編集で、話と話の間に直接的な繋がりはないものの概ねパターン化された内容になっており、一種のオムニバスとして読むことができます。不名誉なあだ名を授かっている男たちが、半ば巻き込まれる形で騒ぎに加わり、剣術の腕が優れているからと厄介な仕事を押し付けられる。といった調子で、政争だったり単なる強請りだったり騒ぎの違いはあれど基本的に「巻き込まれ型」のストーリーになっています。

 あごがしゃくれてヘチマみたいだから「うらなり与右衛門」、見苦しいくらいに媚びへつらうから「ごますり甚内」、耄碌して倅や嫁の名前もたまに思い出せなくなるから「ど忘れ万六」など、ユーモラスと言えば聞こえはいいですが誰も彼もが周りから嘲られ軽んじられるキャラクター性を与えられていて、素直に笑ってしまうのもどうかと躊躇われる。みんながみんな凄い剣の使い手でいざ決闘となればメチャ強くなるんですけれど、普段は滑稽な位置付けに当てはめられている彼らが、隠し持った技量のせいで却って誰もやりたがらないような難業をやらされるハメになるっていう流れにカタルシスよりもむしろ物悲しさに似た雰囲気を察してしまいます。「芸は身を助く」となる展開もあるにせよ技に秀でていなかった方が余計な事態を招き寄せずに済んだ場面もあり、今回は人情話の様相が濃いとはいえ『隠し剣〜』同様の淡々とした虚しさが背後に漂っていることは変わりないような。日常に回帰して元通りになる部分があるから『隠し剣〜』より救いがあるにしても。

 剣術<人情といった具合でチャンバラ描写自体は希薄でしたけど、「抜かざるをえないときは抜くまで」といった覚悟が、作品に通底する虚しさも超えて目の前に立ちはだかる者を打ち倒していく力強さに惚れ惚れとしました。シーンで言えば「ごますり甚内」の殺陣が良かったし、話で言えば「だんまり弥助」がもっとも効果的にフジシュー節を表していたと思います。最初はどうにもマヌケに見えて手控えを余儀なくされたタイトルですが、読み終わってみれば不思議と愛着が湧く。まあ、表題作そのものは予想以上に呆気ない内容で感想に困りましたが。


2006-02-11.

・連休だから、ってことで一念発起し、途中まで読んだまま挫折しかかっていた島田荘司の『アトポス』をなんとか読み切った焼津です、こんばんは。

 いえ、面白かったことは面白かったんですよ『アトポス』。トランシルヴァニアの吸血鬼伝説を綴った序章、魔都香港の腐敗臭を漂わす断章、死海のほとりを舞台に『サロメ』の映画撮影が惨劇と怪事に彩られていく本編と盛りだくさんの内容。しかし何せ文庫で1000ページ近くありますから、勢いがないとなかなか最後までモチベーションが続かない。サスペンス溢れる序章が下手に面白かった分、以降の展開がやや退屈というかダレ気味に映ったのも痛かった。

 『暗闇坂の人喰いの木』以降、大長編志向の路線が顕著になった御手洗潔シリーズの到達点とも言える代物で、これだけ中身を詰めておいてまとめられる力量はさすがに島荘といったところ。個人的にこの大長編御手洗シリーズはやっぱり拷問処刑万歳な第1弾の『暗闇坂〜』が好きなんですけれど、エリザベス・バートリ伯爵夫人の血祭り乱行を描いた序章に関してはそれと比べても屈指の出来だと思います。同系統で中世ヨーロッパもののホラーとか書いてくれないかなぁ。すごく読みたい。

・あと井田ヒロトの『戦線スパイクヒルズ(2)』も読了。

 原田宗典の小説『平成トム・ソーヤー』が原作となっているマンガ。主人公がスリの才能を持った少年という設定で、スる場面の描写が効果的な演出でかっこいい。1巻は「不正流出する大学入試の問題を更に横合いからスる」という目的でチーム結成していくまでの流れがメインで、話そのものは大して動き出していなかったが、2巻から本格的に面白くなってまいりました。さすがヤングガンガン。てっきり寸止めだと思っていたシーンをしっかり遂行してくれて痺れる憧れる。もどかしいラブコメも好きですが「いきなりバカップル化」もなかなかどうして乙なシチュエーション。青春要素が一気に強まっていく中で物語も始動し、すっかり続刊が楽しみになった。

・締め括りに『雪影』の体験版をプレー。

 田中ロミオ企画原案の伝奇(?)エロゲー。「また原案だけか、ロミオ」と思いつつやってみましたが、割と良さげな感触。幼い頃に両親を失った主人公が、「いるはずのない姉」を得て云々ってストーリーです。テキスト面に関しては「四方を山中異界に囲まれたこの場所」とか、部分的に妙な言い回しもありましたけど、大まかなところでは特に問題なかった。しっとりとした音楽も雰囲気に合致していて心地良い。絵も、最初はちょっとどうかな、って不安でしたがしばらくするとそんなに気にならなくなりました。

 過去の描写が丁寧で、歳を重ねて変化していく主人公の心情や「姉」との関係がキッチリ浮き彫りにされています。結局体験版の範囲は回想のみで終わってしまったから本編がどんな具合か伝わってこなかったにせよ、この調子で進むんなら悪くはなさそうだ。ヒロインのうち「姉」の深雪と友人の紫子は良かったものの、親戚の子は出番がほとんどないせいもあっていまいちキャラが掴めなかった。あの子はツンデレというよりヤンデレというか邪悪っ娘になりそうな予感がするのですがどんなもんでしょう。

 地味だけど雰囲気はいいし、続きも気になるってな塩梅です。ただ伝奇なら伝奇でもうちょっと謎や薀蓄やギミックが欲しかったところではある。ひとまず注目&監視態勢でいきます。


2006-02-09.

『よつのは』『サバト鍋』が着弾。『よつのは』の方は予約特典だからと諦めていた創刊『幼なじみ』もなぜか付いてきて喜ばしい限りの焼津です、こんばんは。それにしても公表されたのんさんの抱き枕、絵柄が凶悪ですのぅ……前頭葉が溶けること溶けること。のんさんがただのロリなら当方もここまで狂うことはなかった。

・大塚英志の『木島日記』読了。

 『北神伝綺』を読んだところ、猛烈にこっちも読みたくなったので着手。歴史上の有名人たちが多く絡む『北神伝綺』と概ね一緒のノリだし、ネタも一部クロスしているが、民俗学の要素が濃かったあっちに対してどちらかと言うより伝奇性が高い中身となっている。本編でも触れられている通り、話と話の繋がりに齟齬があって意図的に矛盾を引き起こしている箇所もあり、「怪しさ」「胡散臭さ」がより強調されています。

 主人公は民俗学者・折口信夫……なんですが、直接そうなっているわけではありません。本文の語り手である人物(名前とか一切不明)が見つけた古い日記の執筆者がどうも折口信夫っぽい、まあ内容にいろいろ辻褄が合わないところはあるけどそういう前提で話していくよ、というスタイルで紡がれているため説明するのが少々ややこしい。ただ、いざ読んでみれば感覚的にはそれほど入り組んでいなくてスッと馴染んでくるし、迂遠な構成がもたらす幻惑感・眩暈感も楽しい。テーマは「軍部とオカルティズム」。戦争へ向かうかつての日本がオカルトに興味を示していたというネタを元にして明かされていく裏面昭和の偽史は怪しくていかがわしく、大塚イズムの真骨頂。

 タイトルにもなっているキーマン・木島平八郎は名前がどうも『鉄拳』のV字髪型親父を連想させて仕方ありませんでしたが、ジェイソンみたいなマスクを被っている異様な風貌に反した案外真っ当なキャラクター性を持っていて面白い。この表紙からすると到底人語を喋るとは思えないし平然と鉈や斧を使って人を殺しそうなのに、ある女性のことが忘れられなくて折口の同情を買ってしまったりする愚直さは微笑ましいばかり。

 巷に蠢く怪異の中から「あってはならぬもの」を仕分ける──っていう部分が本書最大の見所になると思いきや、意外にあっさり片付けられるシーンが多くて、そこらへんはちょっと肩透かしでした。どう見ても木島の判断は非情と言いがたい。とは言えその甘さもまた彼の面白さなんですが。なんであれ、流暢に進む語り口は読んでいて心地良かった。これだから大塚はやめられぬ。


2006-02-07.

・最近、昼下がりがすんげぇ眠くて虎眼先生並みに曖昧な焼津です、こんばんは。後になって自分の書いた文書を見て仰天しましたよ。これは正気の人間が紡いだのか?って代物でしたから。

・来月に平坂読の新作が刊行予定とのこと。blogの内容を見るに作者本人も知らなかったみたいですが……。

・少し前まで藤沢周と藤沢周平の区別も付かなかった当方が『隠し剣孤影抄』を読了。いえ、藤沢周平の方が時代小説家だってことは知ってましたが、たとえば『蝉しぐれ』がどっちの作品だとかいったことになると途端に認識が曖昧になる有り様だったわけでして。

 一子相伝の技、放たれしときに喚ぶものは生か死か──追い詰められ決闘を余儀なくされた剣法家たち。彼らが秘めおいた奥儀を解く際に湧き上がる想いとは……。一子相伝とか言われると無条件に北斗神拳を連想しますがそれはともかく孤影抄、「邪剣竜尾返し」を始めとした秘剣にまつわるストーリー8編を収録した連作集です。エピソードごとに主要人物が変わっていきます。「隠し剣」とまで断っているくらいですからどれも剣術描写が大半を占めるかと思いきや、意外とそうした方面には筆を割いていなかった。もっと詳細に剣術関連の薀蓄を読めるものと期待していただけに、いささか呆気なく感じたほど。基本的に人情や恋情、友情、親子の情といった「情」モノの時代小説。

 しかし、一つ一つの話が浅からぬ哀愁を帯びていて「隠し剣=必殺技」みたいな単純にカタルシスを生む装置になっていなかったのは良かった。秘剣なんてのは隠したまま使わないのが一番であって、抜くことを決意する時点で既に「どうしようもない事態」に陥っているのです。そして、「どうしようもない事態」に直面してなおも諦めない心があってこそ、初めて隠し剣が形を為す。無敵の剣豪、みたいな主人公は一人もいなくて誰もが人間臭い弱さを抱えているのが特徴かと。弱さゆえに必殺の剣を隠し、いざというときに頼る。それでも報われるとはかぎらない。弱さの中で抗うように輝き、輝いたからといって必ずしも意味を持つわけじゃない孤独さが抑制の利いた筆致で綴られています。

 終わりの方に収録されている「悲運剣芦刈り」と「宿命剣鬼走り」が特に良かった。個人的にこの二つは別格。

・拍手レス。

 たたいてくだく!しかしサバエノオウってすごいゲームなんですねー。めっさ欲すぃわ〜。おもにダイス。
 冷静に考えるとパソコンの周りがゴチャゴチャしていてダイス振るスペースがない……整理しなきゃ。

 ゴア・スクリーミング・ショウが意外面白い。が万人受けはしない。でもそこがいい。
 そうだね。そうだよ。ソウダトモ

 ユカよりもゴアの存在に胸がキュンとなります。トラック野郎(*´Д`)ハァハァ。

 「北神伝綺」と直で繋がっているのだと「木島日記」っすね。
 『木島日記』、今読んでいます。小説版の方。ネタもクロスしていて面白い。

 『サバト鍋』買いましたが、スペランカーもかくやというぐらいのゲームバランスガ。シナリオはよかった。
 別の意味で絶妙ということですか。とりあえずシナリオが良いなら安心。


2006-02-05.

・結局今月は『サバト鍋』『よつのは』の2本を購入することに決めた焼津です、こんばんは。仕方ありません、人体というものは詰まるところのんさんに逆らうようにはできてないんですから。買うより他なし。

・佐藤賢一の『王妃の離婚』読了。

 フランソワは立ち上がった。熱血の弁護士に、やっと火が宿っていた。それが敵を焼き尽くすより、我が身を滅ぼす火だとしても、魂を突き動かす霊感さえ得られたなら、それで男は雄々しく戦うことができるのだ。

 直木賞受賞作です。しかしながら、ここまで熱い代物とは想像だにしなかった。何せタイトルがタイトルだけに「かったるい情景描写とか、もどかしいロマンスとか、そんなのが延々と最後まで続くんじゃないか」なんていう心配をしていたわけでして。いえ、まったくの杞憂でした。猥雑で戯画的な佐藤節は健在ながら、今回は比較的抑え気味でエンターテインメントと文芸要素との併走を試みている。冒頭からして興味を惹きつける力は強いんですが、本編に入って物語が動き出し、大まかな構図が見えてくると俄然面白くなります。「ッ〜〜〜〜! キタ(゚∀゚)コレ!!」な展開の連続でワクテカすることしきりでしたよ。

 パリが抱える学生街、カルチェ・ラタン──血気盛んで議論好きな学生たちが集うこの場所から、フランソワ・ベトゥーラスは逃げ出した。18歳の若さでマギステルの称号を手に入れ、「喧嘩議論の王者」と恐れられながらも一個の知性として注目を浴びていた彼の敗走は、他でもなく「暴君」フランス王ルイ11世によって齎されたものだった。インテリは権力に屈してはならない、意味がなくとも常に逆らわねばならない……反骨の言葉も虚しく20年の月日が流れ、フランソワは田舎弁護士に落ち着いていた。1498年、彼は任地であるナントから離れ、ある裁判を傍聴するためにトゥールへ足を運ぶ。原告、ルイ12世。被告、ジャンヌ・ドゥ・フランス。それはフランス王が新たな妃を迎える手続きの第一歩、即ち離婚裁判だった。既に亡きルイ11世の娘であるジャンヌが見るも無惨に敗訴する様を目に焼き付けて腹いせにする。そういう目的だったはずなのに、傍聴しているフランソワの気は晴れない。あまりにも一方的過ぎる裁判。法の精神が死んだとしか思えない茶番劇に、弁護士たる矜持が舌打ちする。やがて孤立無援、四面楚歌の状況に陥ったジャンヌがフランソワに救いを求めたとき、彼の中に湧き上がった感情とは……。

 中世の歴史ロマンにリーガル・サスペンスの妙味をドッキング。発想の時点からして既に「勝ち」と言える内容です。とにかく盛り上がること盛り上がること。さすがにここまでやると卑怯なんじゃないかとさえ思ってしまう。単なる法廷モノとして読めばそれほどうねりのあるストーリーじゃなく、逆転裁判的な展開を期待するとちょっと肩透かしなんですけれど、「夢破れて故郷で燻っていた田舎弁護士が『もう失うものは何もない、今はただ言葉を尽くす時だ』と立ち上がって奮起する」という一種の再生物語に中世フランスの背景とリーガル系の緊張感が加わって凶悪な面白さを演出しています。読者の喜ぶ「お約束」がどんなものであるかを熟知した手つき。ひたすら翻弄されて寝る間も惜しんで読み耽っちゃいました。

 攻勢に向かうインテリの姿を清々しく描きつつ、伏せたカードを開示する形で少しずつ浮かび上がってくる全体像。頭と指先が忙しく働いてくれました。なんというか、佐藤賢一の「いいとこ取り」に成功した一冊ですね。大長編をいくつも物しているだけに、400ページというそれなりに読み応えのある分量すら短く見えてきますが、物足りなさを──さすがに「全然」とまでは行きませんが──ほとんど感じさせない。確かにこれなら直木賞を獲得したのも頷けるかな。

 いよいよ本格的に佐藤小説にハマってきました。そろそろストックも尽きそうだし、全小説を制覇する勢いで追加購入してこようかと。しかし『二人のガスコン』は先に『三銃士』を読んでから取り掛かった方がいいんだろうかな……。

「ストーカーと呼ばないで」の歌詞に心がときめく。どこにも笑う余地のない完成されたラブソングかと。

・っと、更新した後ですごいムービーを発見。『エルフオールスターズ脱衣雀3』のデモムービーです。「脱衣雀」なのに脱衣シーンが一つも出てこない。というかキャラクター自体が登場しない。なのに見ていて感動してしまう。いえ、そもそも脱衣麻雀の宣伝で感動させてどうするんだって疑問もありますけど、ついつい繰り返し再生してしまった。いた雀Rといい、麻雀ゲームのムービーは一味違うなぁ。


2006-02-03.

ろすくりの日記にあった「これからはオタクシニアの時代が来る」という一節を「オクシタニア」と読んでしまい、「カタリ派の時代……?」と本気で首を傾げてしまった焼津です、こんばんは。

『北神伝綺』がなかなか面白いです。説明文が付かずにポンポンと進むシーンもあるので状況を把握しにくくなることもときたまありますが、実在の人物を交えて「裏面昭和」という偽史を描く試みは大塚英志の民俗学魂本領発揮といった塩梅。妖しくて繊細な絵柄も好み。ただコマによって顔が変わるからキャラの識別が難しいこともあります。

 ちなみに柳田國男は大塚の他作品にも出てきましたけど、あっちとはだいぶイメージが違うような。名前とモデルが一緒の別キャラかな? 大塚ワールドって繋がっているようで繋がってなかったりするのかしら。

・拍手レス。

 『ネクラ〜』良さ気でしたよね? 財布忘れて昨日買えませんでしたが。オチは想像ではアレですが。
 こうしてweb拍手に迷台詞が表示されると平坂読を思い出します。『ネクラ〜』もそうでしたが。
 懺悔を。平坂読HPで「サイトが楽しいから本を買っています」と書きました。悪気無く本音でした。
 こう続く迷台詞に何か返さねばと思い正直に書いてしまいました……。
 あれがサイトをやめる切欠となるとは……。焼津様の今後の定期更新を期待しております。
 逆襲の魔王、書評読んで買いに行ったら売り切れでした。ガッデム。
 ネタ、切れました。最後まで読みたいので以降拍手のみです。

 ネクラ〜はまだ読んでませんが、平坂読の旧HPはやたらと面白かったですね。今はブログで生存報告していますけど、早く新刊を出してほしいものです。あと、うちの拍手ネタはあまりにもくだらない代物ですみません。

 蜜と唾がエンドレスで流れる素敵空間から応援の拍手をさせていただきました。
 蜜と唾、ぐぐった後に逆さ読みしてビックリ。今まで一度も気づかなかったです。


2006-02-01.

・なんか『蠅声の王』がまた延びてるんですけど。トホホな気分の焼津です、こんばんは。しかしデモムービーの感触は良いなぁ。

・大沢在昌の『B・D・T 掟の街』読了。

 タイトルの「B・D・T」はBOIL DOWN(煮つめる)とDOWN TOWNを引っ掛けているとのこと。『新宿鮫』がヒットして人気を高めつつあった頃の長編であり、中期における代表作の一つとしてよく数え上げられる。近未来を舞台にしたストーリーは大沢版「魔界都市」といった趣で、SF要素こそ希薄だが殺伐たる雰囲気と王道ハードボイルド的な痛快さが特徴。

 204X年、爆発的に増加した諸外国の混血児「ホープレス・チャイルド」は東京中を席巻し、東側を完全なスラムに変えてしまった。ヤクザと警察を締め出し、銃やドラッグが公然と横行する東側の治安は最悪で凶悪犯罪が絶えない。そこで私立探偵を営むケン・代々木は自らがホープレスであることを活かし、敵を作りながらも住人たちの信頼を得てAランクの仕事ぶりを見せていた。誘拐事件の身代金運びを終えた翌日、彼のもとに人捜しの依頼が舞い込む。クライアントは西側の若手作家ヨシオ・石丸。失踪した恋人を捜し出してほしいという願いに応え、早速情報収集を開始した。しかし、調べれば調べるほどにキナ臭いムードが漂ってくる。背後に見え隠れするイラスム武装集団、覆面のスイーパー、そして「日本人」の影。何度となく窮地に陥りながらも真相を求めて嗅ぎ回り続けるケンだったが……。

 携帯電話の代わりに自動車電話を使っているあたりとか、執筆当時の年代が偲ばれますね。ともあれ、スラム化した東京、うろつくヤク中、激しい銃撃戦って具合で古いコミックに描かれる近未来ハードボイルドのノリを忠実に再現した内容です。それでも読んでいてあまりチープな感じがせずぐいぐいと引き込まれるのは脂が乗った時期に書かれた作品だからでしょうか。大沢在昌の作風はどことなく湿っぽいうえにセンチメンタルな要素をちりばめがちだから、話が煤けている割にあまり暗さや重さがなくて、ハードボイルドとしてはややヌルい印象があります。今回も別に主人公がお人よしの甘ちゃんってわけじゃないのになんだかまったりしている。良くも悪くも大沢らしい味わいが全編に染み渡っている仕儀。

 「失踪した女を捜しているうちに陰謀劇へ巻き込まれていく」という典型的な人捜しモノのパターン展開で、新鮮味は特にありませんが、過剰なバイオレンスに頼らずそれでいて淡々と流暢にスペクタクルやドラマを提示できるあたり、完成度の高さを窺わせます。ホープレスとして生まれついた主人公の苦悩や怒りや問いかけが、ハードボイルドとしては抑制を欠いた風に見えて「大沢の筆先 やや熱いか…」と牛股スマイルを誘うにしても、ケン・代々木が持つタフさは清々しいのでエンターテインメントとして読めば充分に盛り上がれること請け合い。シリーズものっぽいタイトルのくせして一冊完結であり、キリの良いところで終わっています。「日本ハードボイルド史上に残る傑作」とか「大沢ファンならば必読の書」とか、そういった大仰な謳い文句は似合わないですけれど、まだ大沢作品を読んだことのない方には『新宿鮫』よりもこっちをオススメしたい。

 ちなみに当方の好きな大沢作品は『氷の森』『屍蘭』。『氷の森』は現段階での大沢作品ベスト、『屍蘭』は新宿鮫シリーズのベストだと思っています。最近の分では『闇先案内人』『砂の狩人』『パンドラ・アイランド』あたりも面白かった。闇先〜はバランスが良いタイプで一気に読める。『砂の狩人』は後半の失速がなければベスト作品の座を奪っていたかもしれない。パンドラ〜は大沢のまったり感が最大限に引き出されているせいで初読には向かないかもしれませんが、地味系ハードボイルドとしては結構な収穫。日本の離れ島で保安官モノをやろうとする根性が実にグッドです。

・今月の予定。

(本)

 『DEATH NOTE(10)』/大場つぐみ(集英社)
 『冬の巨人(仮)』/古橋秀之(徳間書店)
 『灼眼のシャナ12』/高橋弥七郎(メディアワークス)
 『お留守バンシー』/小河正岳(メディアワークス)
 『哀しみキメラ』/来楽零(メディアワークス)
 『狼と香辛料』/支倉凍砂(メディアワークス)
 『火目の巫女』/杉井光(メディアワークス)
 『図書館戦争』/有川浩(メディアワークス)
 『遠く6マイルの彼女』/ヤマグチノボル(富士見書房)
 『殺×愛2』/風見周(富士見書房)
 『BLACK BLOOD BROTHERS 5』/あざの耕平(富士見書房)
 『煉獄のエスクード3』/貴子潤一郎(富士見書房)
 『ヴァンパイア十字界(6)』/城平京、木村有里(スクウェア・エニックス)
 『蟲師(7)』/漆原友紀(講談社)
 『塵骸魔京 ファンタスティカ・オブ・ナイン』/海法紀光(エンターブレイン)
 『特ダネ三面キャプターズ(1)』/海藍(芳文社)
 『Op. ローズダスト(上・下)』/福井晴敏(文藝春秋)

 ほとんどライトノベル。ここのところずっとこんな調子ですね。デスノはそろそろ切ろうか切るまいか惰性の迷いが入ってきた。そもそもここまで長引くような話とは思っていなかったし。冬の巨人は一フルハシスキーとして購入確定なんですけど、本当に今月出るのかなぁ……未だに(仮)が付いたままなので怪しんでます。電撃の新刊はシャナと新人一通り、あとハードカバーにも挑戦してみたく。先月は好みの新人を二人引き当てたので己のヒキ力を信じてみます。ノボルの新刊は以前に連載されていたという『海沿いのサマータイム』を改題したものとか。ゼロも好きですが単発作品も結構イイので期待。きるらぶ、BBB、エスクードと富士見で注目のシリーズが一気にドッと新刊を出すのには嬉しい悲鳴。十字界はそろそろ新展開に移行しような予感。『蟲師』、先月の『もっけ』に続いて出てくれるとはニクい真似を。塵骸魔京のノベライズは割と素で楽しみにしている。特ダネ三面キャプターズ、新刊リストで見て初めて知ったタイトルですが、作者が海藍なので。で、『トリコ○』は? ローズダストは待ちに待った福井晴敏の大長編。といってもローレライはついこの間読んだばかりですが。差し当たって今月最大の注目品。

(ゲーム)

 『サバト鍋』(ニトロプラス)

 「サバ」仲間の『蠅声の王』と一緒にどこかで注文しようと画策していましたが逃亡されてしまったので宙に浮いた状態。これだけ頼むというのもなんだか味気ない。他のソフトと合わせたいところなのに、これといって注目しているものもない。いっそもう先月発売の『よつのは』を買おうかな……体験版をプレーしたのなんてずっと前なのに、ふとした拍子にのんさんのボイスが甦ってくる奇病に罹患しています。ヒト種は所詮ののが放つ魅力に抗えないということだろうか。


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