2004年7月分


・本
 『さよならトロイメライ』/壱乗寺かるた(富士見書房)
 『家族狩り』/天童荒太(新潮社)
 『世界のすべての七月』/ティム・オブライエン(文藝春秋)
 『鎮魂歌』/グレアム・ジョイス(早川書房)
 『王国神話』/明日香々一(富士見書房)
 『冷たい校舎の時は止まる(上)』/辻村深月(講談社)
 『ギャングスター・レッスン』/垣根涼介(徳間書店)
 『三月、七日』/森橋ビンゴ(エンターブレイン)
 『王国神話 第二夜』/明日香々一(富士見書房)
 『ファウスト vol.3』(講談社)
 『新宿・夏の死』/船戸与一(文藝春秋)
 『ブラックランド・ファンタジア』/定金伸治(集英社)
 『君の名残を』/浅倉卓弥(宝島社)

・ゲーム
 『奥さまは巫女?R』(ぱじゃまソフト)
 『はるのあしおと』体験版(minori)
 『ひなたぼっこ』体験版(Tarte)
 『そらうた』体験版(Front Wing)


2004-07-30.

・今だ、『ハバナの男たち』ゲットォォォ──ならず。

 _| ̄|○入荷ガ遅レテイルソウデス……雨ニモザンザン降ラレテ、クタビレモウケ。

『神樹の館』、発売延期確定

 うー、あー。……のんびり待つとします。

・電撃文庫のメルマガが到着。10月の新刊は文庫が13冊、ハードカバーが1冊の計14冊だそうです。多すぎ。『Hyper Hybrid Organization 00-02』が思ったより早く来たのは嬉しい。まあ、中身は連載分だそうですけど。あとはシャナの8巻、9月の5巻と合わせて1つの物語になる『学校を出よう!6』、それと新人の作品あたりに注目しています。

 成田良悟の新刊が来なかったことは少し残念。でもここのところ頑張りすぎな感じですし、『バッカーノ!1933(下)』は年内に出てくれればいいかな。それよりも高野和の『七姫物語3』が来なかったことの方が・゚・(つД`)・゚・

・今は浅倉卓弥の『君の名残を』を読んでいます。まったく事前情報なしに読み出しましたが、思わず仰け反ってしまう内容。そう来たか。いやそこまで来るの? ええ、そんなとこまで来ちゃうッ!? と。まさしく度肝貫通。

 これは是非ともあらすじ紹介とか見ないで先入観ゼロのまま手に取ってもらいたい1冊。現在第2部の途中で、すごく面白いです。前作『四日間の奇蹟』は文章力が優れていたくせにストーリーとなると「うーん」な出来で評価しかねたけれど、今回はその「うーん」な空気が見事に払拭されています。とても新人とは窺えぬ地力だ。それと、さして厚くなさそうな外見に反して原稿用紙1000枚分は確実に超えてますね、これ。ありすぎるくらいの読み応え。途中なのにああだこうだと書くのは軽率な気もしますが、あえてこの段階でオススメしてしまいます。タイトルを見て「なんか、感動系のラブストーリー? 『世界の中心で、愛を叫ぶ』みたいな」とか思ってしまったあなた、予想を裏切られに行ってみてはいかが?


2004-07-28.

・明日2004年7月29日は『AKIRA』のデコ助野郎こと島鉄雄が生まれた日。マントとか機械腕とか未だに好きです。

『神樹の館』、発売延期?

 公式では「8月27日」のままですが……本当だとすればかなり_| ̄|○。

Front Wing『そらうた』体験版をプレー。

 タイトルからして『ゆきうた』に続く“うた”連作のソフトみたいだが、どうも話の繋がりはない模様。前回が冬だったのに対し今回は夏。と来れば“うた”連作の春編は『はなうた』で秋編は『いもうた』と読んだ。いや『いもうた』はありえねぇというかあってはならない。たとえどんなに響きが「妹」と似通っていようとも。

 オープニングで残り少ない夏休みを消費し、本編に差し掛かると新学期へ突入……という構成のようです。だから厳密には「夏が舞台」と言えないかも。まあ、『イリヤの空、UFOの夏』も夏休みが終わるところから始まってますし、あまり深く考えなくていいか。どっちみち体験版ではオープニングの範囲しかプレーできません。オープニングの範囲は夏休みなので自由というか解放というか、全体的にユルい。幼馴染みで「えへらえへら」と笑い方がややパープー気味の知夏、それと従姉ながら「たまねえ」と呼ばれ、強固な姉スタンスを築いている霊子──このふたりによってまったりと楽しい空間がイグジストされています。

 「幽霊と会話・接触できる」とかいった設定もありますが、基本はよくある青春恋愛学園モノのノリ。さりげなく(本当は結構露骨だが鈍感な主人公にとっては実にさりげなく)好意を寄せてくる知夏ボンに「えへえへ」と笑み崩れてみたり、過剰なくらい主人公の幸せを願って世話を焼くたまねえの姿に姉力を感じてみたり、味わい方はごくストレートな具合でイケます。ふたり以外のヒロインはあんまり出番がないのでそこらへんは製品版待ちですけど。とはいえ、まきいづみがボイスを務める澪には美味しいイベントが用意されているので見ておいて損でもなく。

 大雑把に言ってしまえば、プレーしている際に肌で感じる「雰囲気」で好悪が分かれてくるであろう一本。CGやテキストは一定の水準をクリアしていて危なげがないものの、アピールするべき絶妙なポイントってのがないから、どうにもインパクトを欠くように見受けられます。ゴースト・コミュニケーションな部分も、なんだか本編では中途半端な扱いになりそうな予感がしますし……オープニング(体験版の範囲)から本編にかけてのヒキも、いまひとつ具体的な印象を与えないため弱い。ちょっとユルくてまったり感の漂う日常シーンに馴染めないと、退屈の連続を余儀なくされる気が。

 当方は購入確定。『ゆきうた』は積んでますがね。構わず買います。アホの子になりすぎていない適度なヌけっぷりの知夏に惚れました。他のヒロインたちもなかなか悪くない。ゆえに8月の期待作。発売時期と作中期間がだいたい一致しているので延期とかされたら台無しですな。

中島らも、死去。

 今年は本当に知っている作家の訃報が多いなぁ……。

 『お父さんのバックドロップ』は読みやすくて面白かった。解説の夢枕獏を含めて熱い一冊でした。『ガダラの豚』は途中で読むのをやめてしまったが、いつか再挑戦したい。

 ご冥福を。


2004-07-26.

・やあやあ遂に10万ヒット。とりあえず目を疑ってみたりするけど間違いはない。昨日の夜に突然頭上の蛍光灯が燃えるような閃光を発した直後に滅灯してしまったのは祝福というよりは不吉テイスト満々ですが、この際(゚ε゚)キニシナイことにします。ビジターのみなさん、ありがとうございます。地球は元気です。当方自身もなんとか元気と思い込む方針で頑張ったり頑張らなかったりします。

ニトロプラス全面バックアップの新ブランド「CoreMoreco」がデビュー!

 「義母がょぅι゛ょ化してしまった!」という内容ですが、変化する前から充分ロリっぽく見えるのは気のせいですか? 気のせいにしておけということですか。気のせいにしておきます。

 「母が小さくなる」というネタでは西崎憲の『世界の果ての庭』にあった「寒い夏」というエピソードを思い出しますが、確かドラマか何かでもありませんでしたっけ、似たようなの。自他共に認めるロリ道家の当方ですが、この絵柄に関しては変化後よりも変化前の方が好みかなぁ。

 「義母」は直後に「愛子」と続けられても憤慨せず平然としていられるくらい愛着のない属性ゆえ、差し当たって心惹かれるものはなし。「ニトロプラス全面バックアップ」というからにはハロワみたいに「ひと皮むけば鉄火の鼓動」なストーリーかもしれないけど、ここはひとつ静観の姿勢で。

・定金伸治の『ブラックランド・ファンタジア』読了。

 19世紀末のロンドンが舞台で、主人公はチェスの真剣師である少年。魔法や超常現象といったものは一切絡まず、タイトルの割にファンタジー要素はほとんどない。代わりに主人公の「姉」でありながら、生まれて間もない頃より全身を矯正され続けてきたため人形のように小さく手足を動かすこともできない少女・ネムや、「世紀末のロンドンといったらあの人だよなー」と言わんばかりの有名キャラクターも登場し、そのうえ顔も知らない父親の影がちらつく陰謀劇へ突入していくとあれば、これはもうファンタジーというよりミステリのノリでしょう。

 本編は230ページ弱で、「次回へつづく」みたいな思わせぶりのヒキもなくてキッチリと話が終わってしまう分、ちょっと展開が早いがというか、あれこれ詰め込んだ内容となっています。特に終盤で明かされる真相。無理筋ってわけじゃないですけど、もう少しというところで盛り上がりに欠いている気がします。程好くまとまっていて、サクッと軽く読めて、変に尾を引くことがない。そういう意味では佳編と断じて差し支えない。でもなんか、一読して物足りなさを覚える。できれば続編が読みたいところ。

 で、読む前から分かっていたことですが、当方は運命的にネムたん(*´Д`)ハァハァです。両手に抱えられるロリーな「姉」というのが最高ですよ。一人称が「オレ」ってのもなかなかに乙だ。「数える」ことに特化した異才を持ち、頻繁に「クク……」と悪魔的嗤笑を漏らしながらも、精神的には未熟で時おり幼児めいた反応を見せる(噛み癖があったり寂しくなると火がついたみたいに泣きじゃくったり)あたりなど、割と露骨な「萌え」描写もある。主人公について「これはオレの乗り物なの!」と言い切るシーンで名状しがたき感情を覚えました。乗り物扱い……(*´Д`)ハァハァ。

 レーベルがレーベルだけに注目度が低いかもしれませんが、「ロリ姉を両手に抱えてみたい」というありえない欲望をお持ちの方には是非オススメしたい一品。それ以外の方が読んでもふつうに面白い出来映えなので、やはりオススメしておきます。レーベルが何であろうと、表紙に惹かれたら「買い」だ。


2004-07-24.

・日経夕刊で「奈須きのこが女性」という誤報があったそうな。「きのこ」を「きの子」とでも解釈したのか。竹箒の日記でもネタになっています。ところで『空の境界』は上下合わせて40万部に達したとか。近所の書店では7月20日付で5刷の上巻が置いていたり。

“されど罪人は竜と踊る”新刊『そして、楽園はあまりに永く』

 刊行が遅れていた5冊目。内容的には4巻の続き。表紙を飾るのは女の子で、色使いや雰囲気も明るいのに、どこか不吉さを感じるのは……やはりタイトルのせいだろうか。タイトルのせいだろうね。

 読者を凹ますことにかけてはそこらの鬱ゲーと比べても甲乙付けがたいくらいネガティヴでどんよりしたパワーを発揮する作者だけに、イヤァな期待と楽しい不安を感じずにはいられない。読み手たる我々の精神がどこまで耐えられるかどうか、アンチエンターテインメントすれすれのサイコ・チキンレース開催まであと一週間ほど。

『カラフルBOX』のファンディスク『空缶-KaRaKaN-』の発売が決定!

 『モエカす』といい、ファンディスクにネガティヴな字面を持ってくるのはアリなんだろうか。

・船戸与一の『新宿・夏の死』読了。

 「夏の新宿」をテーマにした100ページ前後の中編8つを収録した、オムニバス形式の作品集。舞台は共通しているものの、作品相互間でのストーリーの繋がりは一切ありません。みんなそれぞれ別々の話となっています。夏の暑さが嫌でも実感できる時期に読んだせいか、肌のセンサーが驚くくらい作中の雰囲気とシンクロしてかなりの生々しさを覚えてしまった次第。

 会社に追い詰められ自殺した息子の仇を討とうと新宿にやってきた猟師が主人公の「夏の黄昏」をはじめ、ほとんどの編に暗くねっとりとしたムードが絡み付いており、大抵後味の悪い結末を迎えて幕──となります。何せタイトルが「夏の死」ですから、暑気を吹き飛ばすような爽快エンターテインメントは期待できない。読めば一層夏のじめついた湿気が濃厚に感じられる仕儀。汗が流れ出てしょうがない環境の中で読むのもある意味乙ですが、なるべく風通しがよく適度に汗の引く状況で読むのが吉です。エアコンがんがんの冷房ドミニオン下で読むのはそれはそれで風情がない。

 一編ごとに趣向を変えて迫ってくるので、文庫にして700ページ以上という厚さながらまったく飽きが来ませんでしたね。少なくとも当方の目で見ればどれもハズレなし。全編必中。ハッピーエンド嗜好の方々にはとてもオススメする気がしませんが、当方のごときバッドエンド愛好者にはうってつけと断言可能な一冊です。値段は税込みで900円超えますが、ページ数と読み応えを鑑みればなかなかのコストパフォーマンスだったかと。

 実を言うと船戸作品はあまり読んでおらず、せいぜい5作程度で、しかもどれも代表作とは呼ばれていないものばかり。だからあまり船戸を嗜んでいるとは言えないんですが、これまで読んだ作品から「クセがなくて印象に残らない作風」という感想を得て敬遠しがちの姿勢をデフォとしていました。本書を読んでその感想をちょっと改めたくなった次第。少なくとも本書では「クセのなさ」が良い方向に働き、一編一編の趣向が異なっているにも関わらず、一つ読み終わったらすぐ次の編へとスムーズに移行できるようになっている。サラリと読みやすい文体がバラエティに富んだ内容と結託し、見事な面白さを引き出した。ようやく初めて船戸作品で「印象に残る」本と出会えましたよ。いえ、『緋色の時代』なんかも好きは好きなんですけどね……設定はいいのにどうもストーリーがグズグズで。今回は「オムニバス形式の作品集」というスタイルが充分に強みを発揮した気がします。


2004-07-22.

・あ、10万ヒット近い。いつの間に。

・ウナギは食べませんでしたが、それが何か?

 というか、ウナギは普通に苦手なので……皮のあたりが特に。子供のときから一度もおいしいと思ったことがない。代わりに「蒲焼さん太郎」(10円の駄菓子)は好きでした。安いな自分。

殊能将之の新作『キマイラの新しい城』、8月刊行予定「Mystery Laboratory」経由)

 一年に一度のお楽しみ。値段は798円(税込)なので結構薄いみたいだ。今回も今回で是非意表を衝いてほしい。いろいろと。

・さて、奥巫女Rなんかやってしまったせいで中途半端にゲーム攻略への意欲が湧いてしまった今日この頃。連休は終わってしまったからそう時間のかかるものを崩すわけにもいかず、折衷案として採択したのが「体験版崩し」。ソフトのリリースが増加するのに合わせて体験版の公開も増えつつある昨今は気を緩めていると体験版すら積んでしまう情報過多時代。

 今回崩したのは『はるのあしおと』および『ひなたぼっこ』。発売はもう今週に迫っています。どっちもひらがなタイトルで、どっちも季節感ゼロ。お前ら今何月か言ってみろ。これに『ホワイトブレス』を入れたらもう最強ですね。どういう最強かは知らない。

 まずは『はるのあしおと』。大学を卒業後、バイト生活を送っていた主人公・桜乃樹は、想いを寄せていた女性・白波瀬から「もうすぐ結婚する」と告げられ、あっさり失恋を味わった。やる気をなくし、故郷に帰って引き篭もりに近いネガティヴ・ライフへ突入するが、従妹の学園祭を見に行ったのがきっかけとなり、教職の道を歩み出すことに……といったストーリー。

 夏真っ盛りゆえ、もはや訪れどころか「過ぎ去った」と言うにもすっかり時期を逸してしまった「春」が目一杯に詰め込まれている季節ミス極まりないソフトですけれど、演出がなかなかスマートにつき目を奪われます。セリフと口パクがきちんと同期しているところなんか、実に細かい。イベントCGの使い方も結構効果的。テキストは特にクセがなくて読みやすく、声優さんの演技も巧くて耳にも聞きやすい。全体のまとまりから来る「雰囲気」がとても心地良くて楽しい。ヒロインはそれぞれキャラが立っているものの、少し地味だし、3人というのも正直言って少ない。話も「これから」ってところでデモが入ってブッツリ切れてしまう。期待を抱かせるには充分な魅力を持っていますが、「よし、買おう」と決心するにはちょっと足りないかな……これは様子見で。

 次いで『ひなたぼっこ』。住んでいるアパートの取り壊しが決まって、引っ越しを余儀なくされた主人公。妹を養っていかないといけない彼は、引っ越し先の家賃諸々を払うためアルバイトを始めようと考え出す。そこで偶然、かつての恩師が経営する喫茶店の存在を知り、なんだかんだの末に住み込みでアルバイトすることになって……と、こんな話。

 延期に延期に重ね、遂に「ひなたぼっこ」なんかしていたら死にかねない時期へ差し掛かってしまったので、こっちもこっちで季節違い。でも、そこに目をつむってプレーしたら割と楽しめました。『はるのあしおと』と違って演出は借りてきた猫みたいにおとなしい。至って従来通りで保守的なつくりに加え、平凡な遣り取りが積み重ねられていく展開はのんびりほのぼのまったりとして平和なものの、ちょっとダルくて眠気を誘われました。Tarteは「絵だけゲー」のブランドと認知されているところなだけに今回もCGだけが救いか……と思えばそうでもなく、眠気を堪えて進めていくとだんだんに面白くなっていく仕掛け。登場するキャラが多く、それぞれが微妙に関係し合っているところが興趣をそそります。当方は個々のキャラの魅力にも執着しますが、それぞれのキャラが相互にどういった人間関係を築くか──といった部分にも大いに興味を示します。個性のない地味なキャラたちばっかりでも、彼・彼女らの「関係」に魅力さえ伴えば付随して思い入れが出来てくるわけで。あと、なにげに妹キャラがたくさん出てくるのも隠れた(?)魅力か。ただ、キャラが多いことから非攻略が混じっていたりシナリオが中途半端だったりする恐れはありますね。この人数を過不足なく捌き切るとなるとプレー時間は優に30時間超えるんじゃないかと。

 刺激を感じたのは『はるのあしおと』の方でしたが、購入意欲が湧いたのは『ひなたぼっこ』の方という、少し変わった結果に落ち着きました。『はるのあしおと』はなんとなく博打の匂いがするんですよ……大きくアタリそうな気もすれば、不発に終わりそうな気もする。『ひなたぼっこ』は大きなアタリこそなさそうなものの、最低限ある程度のアタリは保証されているムード。どちらにしても急ぐ必要はないし、差し当たっては様子見するつもりですが。自分がチキンであることをためらわない方針で行きます。


2004-07-20.

・メールに「期待大」と打つつもりが「北偉大」となってしまい詰られた焼津です、こんばんは。アイ・ドント・マンセー。

『奥さまは巫女?R』、コンプリート。

 数時間でコンプ可能な分量の割に、全編に配されたパロネタは膨大な数に上るソフトでした。気づいただけでもかなりありましたし、気づかなかった分を含めれば尋常ならざるスケールと相成ること間違いなし。「昔の人達ありがとう。地球は元気です」というのも一瞬スルーしかけましたが、ステルヴィアでしたね、これ。

 完了したところで見直すとやはり、アキラの魅力が際立っていたかと。追加キャラなので全面的に新規CGとなっていますし、普段は言葉と拳の暴力で会話している幼馴染み、というツンデレめいた香気を放つお膳立てもグッド。足回りからして最高です。シナリオ展開も他と比べて特に目立つギミックのないシンプルな具合であり、ストレートに攻めるあたりが好感触でした。でも「恐竜好き」という設定の割に「が、がお……」とか言いませんでしたな。そこは少し意外。「奇跡は起こらないから奇跡」というネタもあったので、「鍵はNG」ってこともないんだろうし……。

 暇があったらパロディがどれだけあるか収集してみようかな。まず確実にその「暇」がないだろうけれど。

2chライトノベル大賞2004上半期、結果発表

 うーん、やっぱり成田良悟は2ch人気が強いなぁ。03年上半期に『バッカーノ!』が一票差で2位になったのを皮切りに、03年下半期と今回でV2を達成。2ヶ月に1冊くらいという週刊誌連載マンガ単行本並みの驚異の刊行スピードを誇りながらここまで評判を勝ち取っているあたり、実に大したものかと。9月の『バッカーノ!1932(上)』、刊行時期は未定ながら恐らく年内に出るであろう『バッカーノ!1932(下)』も注目株ですね。

 今回は前評判から「これが絶対にトップだ!」と確信できる作品がなかった分、なかなか結果が読みにくくて面白かった。同率票の作品も多いし、結構接戦したみたいだ。上位の作品では空鐘と9Sが積んでいる最中なので、このふたつは8月の新刊が出るまでに崩してしまうかと画策。特に空鐘は2巻の展開が面白かったので……渡瀬お得意の「幼馴染み」もいつもより威力を増している感じですよ?


2004-07-18.

・連休は奥巫女で極マリ。

 というわけでさりげなく積んでいた『奥さまは巫女?R』に着手しました。あまりにも落差の激しい旧CGと新規CGが混在するあたりは3980円(税抜)という低価格ぶりを果てしなく納得させますが、そこを脇に退ければなかなかに面白いドタバタコメディです。とにかくパロネタ、それも同業のネタが多い。「人類を無礼るな!」とか平気で言ってる。マリみてとサフィズムとウテナを同一直線上のものとして扱ったりもする。遂に商業パロディソフトもここまで来たか、という思いが湧く。アニメオタ、マンガオタを標的とするのみならず、エロゲーオタそのものを狙ったギャグの数々には良くも悪くも「行き過ぎ」のテイストが漂います。

 それはともかく、会話のテンポがサクサクとビスケットのように気持ちいい歯応えなので、パロディを抜きにしてもコメディゲームとしては合格。ただし、シナリオは飾りですが。偉くない人々には速攻で分かります。伏線張っていたりもしますけれど、ちょっと無理矢理な感は否めない。コメディ系のエロゲーって「笑い」を取り続けるだけじゃ起承転結や緩急がつかず、ある程度シリアス要素を注入しないとまとまらないのは一種のジレンマか。

 ヒロインの中では新キャラの河奈晶が非常にイイ味出してますね。出しすぎてますね。腐れ縁の幼馴染みで、普段はあれこれ言葉のボクシングを繰り広げているにも関わらず、ライバルっ娘が出現するや突如として空転気味の努力を開始するあたり、実に美味しいツンデレラ。オマヌケで使い物にならない家族たちまでもが微妙に萌えます。ちなみに当方、メイド服より私服が好み。

 もともとボリュームのないソフトなので、もう少しプレーすればコンプリートするものかと思われます。ボリュームがないとはいえ、適度な量として仕上がっているので、イイ意味で「値段相応」と断言できる内容かと。

青山ブックセンター閉店

 最近はあまり行ってなかった(2ヶ月に1度くらいの頻度)けれど、さすがに閉店となるとショック。ここで日本橋ヨヲコや黒田硫黄のマンガをまとめ買いしたなぁ……。

・『ファウスト vol.3』読了。

 うーん、「それなりに面白かったけど、物足りない」というのが率直な感想。「零崎軋識の人間ノック」はいいところで終わってしまったし、「駒月万紀子」は思ったより短かったし、「DDD」はシリーズの導入編って匂いが強くてハマり切れなかったし、「サウスベリィの下で」は長さの割にドーナツみたく中心のない話で読んでいてダレたし、「ワールドミーツワールド」は興味をそそる設定を持ち出しておきながら中途半端な方法でストーリーを畳んでしまったし……揃ってモヤモヤ感の残る作品ばかり。雑多な個性が犇き合ってこその「雑誌」ではあるけれど、むしろそれぞれの持ち味が出切っていない故の「ヌルい猥雑さ」が濃厚でした。

 キッチリとした完結性、統一性を好み、雑誌を苦手とする当方にしては楽しめた方だと思います。ただ、密かに期待していたような「感動を覚える要素」がなかったのは、半ば予想していたこととはいえ残念。「新伝綺」特集のパートを読んでも、どこらへんが競作になっているのか分からなかった。隔靴掻痒。号を重ねるごとに『ファウスト』に感じる「ズレ」はますます拡大していっている気がします。

・吉田直、死去(「篠田 真由美 DIARY」経由)

 『トリニティ・ブラッド』はいろいろ突っ込みどころの多い作品でしたが、それでも精力的なペースで展開していったおかげでシリーズとしての盛り上がりは着実に増してきているところだったし、アニメ化も決まり、正にこれからってところだったのに……34歳なんて若すぎる。

 振り返れば当方が吸血鬼ネタにハマったのも、『ヘルシング』『月姫』『ヴェドゴニア』を知る以前にこのトリブラと出会ったことが素地になっていた。「吸血鬼の血を吸う吸血鬼」という主人公の造型が、作品へのツッコミあれこれを脇に置いてとにかく好きだった。シリーズの完結がどうあっても望めなくなったと思うと辛い。若手が多いライトノベル作家の訃報を目にするなんて思いも寄らなかった。

 どうかご冥福を。


2004-07-16.

・郭春成、てっきり惨殺されるかと思ってましたが、意外にあっさり生き延びましたね。実は息子に甘いのか、郭海皇。

・『ファウスト vol.3』読中。佐藤友哉の「虹色ダイエットコカコーラレモン(短縮版)」まで読み終わり、やっとこさ「新伝綺」のパートへ突入。奈須きのこの「DDD」冒頭をチロッと読みましたが、結構真っ当に伝奇っぽい雰囲気。『月姫』や『Fate』よりも『空の境界』寄り。他のふたりも楽しみにしつつ読み進めます。

第131回芥川賞・直木賞受賞作決定

 今回も大した波乱はなく、「こう来るだろうな」と予想された形にほぼピッタリ収まる結果。

『サフィズムの舷窓〜an epic〜』、マスターアップ

 これで月末は安心、と。

『イエスタデイをうたって』特設ページ

 1巻が99年3月、2巻が00年4月、3巻が02年2月、4巻が今月……どんどん期間が長くなっています。それと『黒鉄』の方はもう3年近く新刊が出ていませんね……なんか新連載が始まったらしいんですが、既刊作品もなんとか早めにケリをつけてほしいものです。


2004-07-14.

・熱風に炙られ洗濯物がよく乾きました。脳のどこかも乾いていく気がしてならない焼津です、こんばんは。そろそろペプシブルーにも飽きてきました。最近はドデカミンを愛飲しています。名前もパッケージも味も「ファイトバクハツ」の謳い文句も、何から何まで実にユルい飲料。頭がユルくなってきている当方にはちょうどいい。もう気分はユルユル。ユルユルカ。

・『ファウスト vol.3』購入。なんだかんだで購読しています。「イラストーリー」とか「文芸コロシアム」とか、これもこれで相変わらずユルい。

 今回は750ページ超。西尾維新、舞城王太郎、佐藤友哉、滝本竜彦といったレギュラー陣の作品に加えて奈須きのこ、原田宇陀児、元長柾木の書き下ろしも掲載され、割と注目度が高まっている様子。「新伝綺」という呼称を「新本格」並みに流行らせたいみたいですが、「新伝綺」って変換しにくいなぁ。せめて「新伝奇」なら……あ、それだとトクマノベルスとカブるか。

 厚いのでまだ読み切れていませんが、とりあえず西尾の特集は読み終えました。「新本格魔法少女りすか」は主人公とりすかの遣り取りが少しダルいけれど、まあこれはこれで。でも単行本の刊行が遅れているのに「絶賛発売中!」となっているところはしょっぱい。戯言シリーズの番外編であり、『零崎双識の人間試験』に続く零崎シリーズ「零崎軋識の人間ノック」──こっちは当方の好みに合って順当に満遍なく面白かった。欲を言えばもうちょっと分量が欲しかったところだけど。あと扉にいきなり「零崎軋式」という誤植があるのはかなりしょっぱいんですが。

・久しぶりにゲームも購入しました。『Dear My Friend』『姉、ちゃんとしようよ!2』。DMFだけ買うつもりだったのが、不意に姉しょ2のパッケージが視界に入ってしまい、つい。もう巣ドラとデモベは積んでこっち2つに現を抜かしてしまおうかな……。


2004-07-12.

・全体的に説明不可能な物凄い夢を見てしまいました。あまりに凄すぎて夢日記が書けない。

 とりあえず特に凄かった部分を列挙するだけでも、従姉の家を訪ねてみたら一家全員がそれぞれ別々の部屋で土気色の肌をして冷たくなっていたり、「世界を支える四支神」とやらの核を創造主がうっかり壊してしまって地上が業火の海に沈んだり、中学・高校時代の七人の友達に押さえつけられ人差し指の爪でグリグリと股間を刺されて泣きそうになりながら「殺してやる!」と叫んだり、複数の男性と肉体関係を持っている女性のことを暗示するように蛸足配線の映像が執拗にカットインされたり、空中庭園に建設中の「小川一水殿」なるイベント会場で「飛丁 × 冲方浩隆」という謎の対談が予定されていたり、そこでもうじき開催される奈須きのこのトークショーを見るため脱走したインデックス(『とある魔術の禁書目録』)を巡って空目恭一(『Missing』)とアブデル(『天国に涙はいらない』)が激しい攻防を繰り広げたり……

 とてもまとめきれそうにありません。眠る直前まで『AKIRA』を見ていたのが妙な具合に作用したんでしょうか。初めて見たのは小学生のときでしたが、未だにカオリのアレは衝撃的。

HERMIT、OHPをリニューアル

 眼前でスピンターンかまされた気分です。リニューアル前の面影が幻のように消えている。新作のタイトルは近所の子供を焼却炉に放り込みそうな『ホームスイートホーム(仮題)』から『ままらぶ』に変更。タイトルがややこしいことで有名な『まほらば』『まぶらほ』『マブラヴ』の3作に新たな混乱が追加される気配が。しかしそれらよりも真っ先に『ママクラブ』を思い出してしまった当方の明日はどっちだ。

 えーと、シナリオライターが丸戸ということで変わりなければ購入意思にさしたる影響はありません。粛々と続報を待ちます。

・明日香々一の『王国神話 第二夜』読了。

 内容的に「え? 出るの?」って感じだった続編。当方が前巻を読んだときにはもう刊行されていましたけれど、もしリアルタイムで接していれば驚いていたことは間違いなく。それにしても「第二夜」という部分がほのかにエロい。そして帯文は露骨に凄い。

 続編なので当然のごとく前巻の話を引き継いでいます。今回は「神話」度がアップ。その代わりに「王国」は本格的にどうでも良くなってきている。王家の人間のくせして名前すら出番がなかったキャラもいますし……まぁそれを脇に置いて読めば、ごくごく真っ当な続編ものとして楽しいことは確か。富士ミスじゃないけど「L・O・V・E」の要素が一層濃くなって、あちこちで様々な恋愛模様が繰り広げられている。通常比1.5倍くらいの甘々加減です。

 既に前巻で「真相」の大部分が明かされているせいもあり、ストーリーの展開がだいたい読めてしまうのが難点か。淡々とした筆致も相変わらず。でも、今回はうまく起伏や緩急をつけられている箇所が多く、長さ(350ページ弱)の割に退屈することは少なかった。後半の盛り上がりも熱を増してます。

 ある種の「ヌルさ」、「ツッコミどころの多さ」を逆利用している点が特殊なファンタジーシリーズ。異世界云々といった設定に抵抗がなければ気軽にチャレンジしてみることをオススメします。斬新……とも言い切れませんが、「こういうのもたまにはいいね」と思える作品です。ただ奇を衒っているだけではない。

 にしても、さすがにこれ以上続編は出ないような気がしますが……出るんでしょうか?


2004-07-10.

・「奉納と放尿は響きが似てるなぁ」と思いつつ新明解で「放尿」を引いてみた。

(所構わず)小便をすること。

 アーヒャヒャヒャヒャヒャ(゚∀゚)ヒャヒャヒャヒャヒャ

 カッコの部分がツボに入って笑い転げてしまった焼津です、こんばんは。そうか、所構わないのが正道なのか。

・佐藤友哉の「色」シリーズ、単行本化(ファウストのメルマガより)

 タイトルとか発売時期とか版型とか触れられてないんですが、どうやら出ること自体は確かな模様。収録作は「灰色のダイエットコカコーラ」と「赤色のモスコミュール」と「黒色のポカリスエット」と「虹色のダイエットコカコーラレモン」の4編と思われます。この調子で鏡家サーガも再開してくれないかなぁ。エンターテインメント性重視で。いやアンチエンターテインメントでもいいけど。文学方面に色気を出した小説群はそろそろお腹いっぱい。

第131回芥川賞、直木賞の候補作

 お、芥川賞の候補に舞城王太郎が。「目指せ芥川賞。気楽にね」と書いていたけどいよいよ射程に入った模様。直木賞は伊坂幸太郎か熊谷達也あたりが来そうな予感。東野圭吾の『幻夜』は散々叩かれて受賞を逸した『白夜行』と同一構造の話なので難しい気がします。ちなみに当方は『白夜行』か『幻夜』かで言えば『白夜行』派。

・森橋ビンゴの『三月、七日。』読了。

 渋谷三月と宮島七日──ふたり合わせて三月七日。冗談みたいな邂逅を、彼と彼女は一つの運命と思った……といった塩梅の淡く切ない青春ラブストーリー。口語主体のあっさりした文章をベースに、七日視点、三月視点、交互に切り替えつつ淡々と物語を綴っていく。

 プロットは良く言えば単純明快、悪く言えば陳腐。まったくヒネリがないわけじゃないけれど、とにかくストレートな内容で攻めてきます。迷いがない構成。当方は安易と取らず、「潔い姿勢」と見ました。「グリーングリーン」の歌詞を背景に、少年少女のうっそりと仄暗い想いを静かに織り込んでは解いていく。

 ある種、他愛もない話です。孤独を支えにしながら孤独に傷つき、幸せを欲しがりながら幸せへ伸ばすべき手を引っ込めようとする。ためらうことを心のどこかで希望と等価のものと受け取っている、思春期特有の温度感に満ちた柔らかく息苦しい世界。その他愛のなさが琴線に触れました。

 そして密かに広島弁のヒロインに萌え。おとなしい気配を四方に発散する少女が「〜じゃけェ」と口にする姿を想像すると、どうしてこんなに胸が高鳴るのだろう。恋?


2004-07-08.

・あー、そういや昨日は七夕でしたっけ。忘れてたわけじゃないけどあんまり意識しませんでした。『水月』のヒロイン、牧野那波の誕生日ってことはさすがに忘れかかってましたが。ロング黒髪スキーとして失格か。

Tony、セイバーTOP絵

 『そらのいろ、みずのいろ』は割と毀誉褒貶が激しく、伝説(Tonyが手掛けたゲームは軒並みアレな出来映えになるというジンクス)から脱却できたかどうかは微妙な模様。もう少し様子を見ようかと。

『暗黒館の殺人』愛蔵版は画集付きで6195円「Mystery Laboratory」経由)

 京極の『姑獲鳥の夏』『魍魎の匣』、森の『四季』、奈須の『空の境界』と愛蔵版を連打している講談社、次なる対象は12年ぶりとなる館シリーズの最新作。しかし「画集」ってなんだろう?

・垣根涼介の『ギャングスター・レッスン』読了。

 4冊目の著書で、『ヒートアイランド』の続編。三冠達成(大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞)した『ワイルド・ソウル』のおかげで注目度が高まっている著者ですが、早くも8月に『サウダージ』という新作を予定しているとのこと。この『ギャングスター・レッスン』の続編です。

 前作『ヒートアイランド』でいろいろあったアキが19歳から20歳になり、本格的に「悪党」への道を歩みいく、その過程を5段階に分けて綴った連作長編。裏戸籍の入手や、足となる車の確保、銃の実射訓練など、ごくごく基本を押さえた堅実な内容となっている。各段階ごとにストーリーを完結させる方式だから、読んでいてダレなかった。

 文章の読みやすさ、脇役に至るまでのキャラクターの魅力と、エンターテインメントを盛り上げるためのツボを心得たスマートな仕上がり。「悪党を制す悪党」という設定ながら、全編に漂う雰囲気はカラッと明るく陽気。それでいてヌルくもない。青春要素は皆無なれど、アキの成長ストーリーとして充分面白いものに出来上がっています。

 ただ難を言えば、あくまで中身が「レッスン」の域を出ないレベルに留まっていること。『ヒートアイランド』や『ワイルド・ソウル』に匹敵する「熱さ」を期待してしまうとやや肩透かしになってしまう。「待望の新作」というよりは、「次作への助走」といった位置付け臭いですね。8月の『サウダージ』へ結びつくことで本書の意義が発揮されるものと予想します。


2004-07-06.

・「でも、ただ一つ違っていたのは……奥多摩は魔都だったのです」──『魔界都市 <奥多摩> 』

 仕事中でもろくなことを考えていなかった焼津です、こんばんは。

・放映開始直前になってようやく思い出した結果、ギリギリで視聴することができました、『蒼穹のファフナー』。危うく見逃すところだった……。

 冲方丁がスタッフに加わっているとのことで注目していたこともあり、「冲方書房」の小ネタに笑いつつ見てましたが──こっちが事情を呑み込む前にぽんぽんと話が進んでいくせいもあって、いまいちノり切れず。キャラたちの言動にもちょっと温度差を感じたり。眠かったせいで理解度が落ちていたのも一因だと思いますが、結局アニメの見所がどこなのかよく分からないまま終わってしまった。時間帯的にもキツイので、完結まで待って各所の評価を見定めてからレンタルなり何なりに頼るかどうか決める方針を採択。

・辻村深月の『冷たい校舎の時は止まる(上)』読了。

 第31回メフィスト賞受賞作。「(上)」とあるくらいなので当然分冊ですが、上下の2分冊ではなく、上中下の3分冊。中巻は今月なのでそろそろ刊行される頃合ですね。完結編に当たる下巻は来月。3冊に分かれているくらいなんだから、もちろん凄い分量なのだろうな……と思いきや、少なくとも上巻は薄い。230ページ強。中巻と下巻が同程度なら、全体でおよそ700ページの計算となります。清涼院流水の『コズミック』とほぼ一緒。講談社ノベルスなら2冊どころか1冊にまとめることだって可能なはずの量です。それを3冊に分けて3ヶ月連続刊行とは、文三、よほど自信のある内容なんでしょうか?

 学園祭の最終日にひとりの生徒が屋上から飛び降りて自殺したところが物語の発端となる。ある冬の朝、雪降る中登校してみれば教室には数えるほどのクラスメートしかおらず、教師はいつまで経っても現れない。不審に思って校舎を調べ回るが、自分たち以外の人影はなく、ただ無人の静けさが広がるばかり。人がいないのに、照明やヒーターは点いている。状況の不自然さが、「校舎の外に出られない」という事項で頂点を極めた。昇降口のドアも、窓も、何もかもが退去を拒む。あまりにも度を越していて、人為的な悪戯とは考えられない。「ひょっとして、閉じ込められた……?」。呆然とする8人の高校生。そのひとりが、不意に思い出した。自分たちが8人も揃っているのはおかしい──だって、学園祭のあのときに、ひとりを失ったはずなのに……。

 『11人いる!』みたいなシチュエーションの閉鎖環境サスペンス。閉じ込められた生徒たちはディスカッションを重ねた結果、「我々は自殺した友人の精神に取り込まれた」という仮説で見解の一致を示します。『レベルE』に似た話がありましたね、野球部の。怪奇現象の元凶たる「自殺した友人」が誰なのか、記憶にジャミングが掛かったかのように思い出せない中、必死に推理して突き止めようとしますが……何分上巻なので、いいところでヒキが入って「中巻に続く」となります。

 クローズド・サークル(ミステリ用語。嵐の山荘、絶海の孤島、地下の迷宮など、外部との行き来を著しく制限された閉鎖環境を描く物語形式)を愛好する当方ですが、分けても「学校に閉じ込められる」タイプのものは狂おしくラヴ。『明日の夜明け』はマイ・フェイバリットたる1冊です。クローズド・サークルものは外部の助けが期待できない分、内部の人間たちが相互に協力し合う共闘譚となるわけですが、こと陰惨な事件が絡めば「こいつを本当に信用していいのか」という懐疑が底に敷かれてしまう、何とも言えない不安定さが二重三重に緊迫感を高めてく美味しい構成となっている。疑心暗鬼でナンボの閉鎖環境。

 事件の黒幕である「ホスト」が、「自殺したのは誰なのか、思い出せ」と強要するあたりが『そして扉は閉ざされた』を彷彿とさせる。まだ上巻なので作品の評価は下せませんが、閉鎖環境スキーなら期待して構わない一品だと思います。文章は平易で、キャラの造型も平凡と、設定面を脇に置けばとても地味〜なノリ。反面、青春ミステリとしては堅実な雰囲気が漂っている。さて、上巻で提示した材料をどう調理してくれるのか。続きが楽しみ。


2004-07-04.

いとうのいぢのHPにてアル・アジフ絵

 そういえばそろそろシャナの7巻が出る時期。6巻で絶妙なヒキをつくったまま5ヶ月も待たせてくれおったので内心ジリジリしてました。とはいえ間に2年ぶりとなるA/B3巻の『アプラクサスの夢』が出て、それがまたブランクを感じさせないブラボーな面白さだったおかげもあり、「内心ジリジリ」という状態を楽しんでいた面もあるんですが。

・法月綸太郎の『生首に聞いてみろ』が8月に発売との噂。余裕で5年は待ったと思いますが、やっとか……『ノーカット版 密閉教室』で補給したノリヅキ分もそろそろ切れ掛かってきた頃合ですし、久々に彼の作風を味わいたいところです。

・新刊といえば成田良悟が9月に『バッカーノ!』の新作を出す模様。「1933」の上巻。今年5冊目。10月には『デュラララ!!』の続編も出るかもしれないとの話ですし、もはや去年デビューしたばかりの新人とは思えない刊行ペースですねぇ。

Project-μ、無期活動休止

 シナリオと原画の人が抜けたみたいなので遠からず……とは思っていましたが、やはり実際に決定となると残念。『銀の蛇 黒の月』、不満点はいろいろあるものの、好きなゲームの一つです。

・明日香々一の『王国神話』読了。

 第15回ファンタジア長編小説大賞最終候補作。副題「空から降る天使の夢」。『さよならトロイメライ2』の口絵にあった「お嬢様は空から降ってきた天使だ」はこれが元ネタとの噂。

 ある日ベランダにちっちゃなおにゃのこが! という、今更「ベタ」と呼ぶのも飽き飽きなくらいにベタベタの導入でストーリーが幕を開けます。まー、おにゃのこを見つける方もちっちゃいショタなんで、本編が始まる頃にはふたりとも成長しているわけですが。要するに至って王道で鉄板のボーイ・ミーツ・ガール。当方大好きですよ? BMG。

 異世界を舞台にしたファンタジーで、タイトルに「王国」とあるくらいですから王様がいます。主人公はその息子。つまり王子様。正直、あんまり王子様らしいことはせんのですけども、一応肩書きは「王子」で通っています、はい。で、そのうえ「神話」なんだから神様とかそのへんも絡んできます。詳しいこと書くとネタバレになりかねないので省きますが、ええと、概要はそんな感じ。

 タイトル地味だし、筆致は終始淡々として起伏に乏しいし、ネタバレしない程度の設定を明かしてもピンと来ない話なので、感想書きにくいことこのうえない。お茶を濁すような書き方をすれば、なんというか、読む人によって微妙に好悪が分かれそうな作品。少し「仕掛け」があります。

 と、そんなひと通りの内容はともかく。本書が「問題作」と呼ばれている所以であろう終盤こそ、最大の見所であることは確かです。ぶっちゃければ、孕ませ。ライトノベルにあるまじき勢いで孕み孕ませています。こんなに孕んで孕んで孕みまくるヒロインなんてそうそうお目にかかれない。帯の「ぼく(♀)、産んじゃう!」は良くも悪くも伊達じゃなかった。というか最近のファンタジアの帯、地でイヤ展を行ってますね。さすがに店頭で目にするのはキツイ。

 個人的嗜好を脇にどければ「まあまあ」、個人的嗜好を上座に置けば「やってくれる!」な一冊。イラストが好みで良かった良かった。既に刊行されている続編ではこのネタをどう調理しているのか、是非とも確認したい。


2004-07-02.

・併行して読んでいる『家族狩り』『世界のすべての七月』『鎮魂歌』に揃って「トム」というキャラが出ているせいでちょっと混乱した焼津です、こんばんは。併行読みも控え目に、ということでしょうか。

 『家族狩り』は文庫化に際してかなり手を入れたらしく、あとがきによれば全体でハードカバー版より900枚くらい多いとか。まだ2巻が読み終わったところで、ストーリーの核心はこれからといった雰囲気。『世界のすべての七月』は連作形式の群像ストーリーで、60年代の終わりとともに大学を卒業した面々にスポットを当てていく。幕間として描かれる「同窓会」、そしてすべての物語の舞台となる「七月」のふたつがエピソード群を綜合します。村上春樹の翻訳ということで読み出しましたが、なかなか面白いです。するするとテンポ良く読める。『鎮魂歌』は「そうだ、エルサレムに行こう」なファンタジー。聖地の煤けた空気が異郷ムードを濃厚に醸しだすなか、現実と幻想が交錯していく。これも面白い。「血を流す薔薇」のビジョンに酔い痴れています。

『機神咆吼デモンベイン』購入。

 通常版です。DXパックにこれといってそそられる特典がなかったので。今週は無理としても今月中には崩したいなぁ。

『巣作りドラゴン』、プレー中。

 あのー、ギュンギュスカー商会のメイドたちが素で可愛いんですが? メイド属性のない当方がすっかりヤラレちゃってます。エロイベントよりもむしろ彼女たちの日常イベントに(*´Д`)ハァハァ

 作業度が薄いとはいえ、やっぱり何周もしているとコツを掴んでしまってプレーが作業的になってしまいますね。うーん、設備投資や部下の配備といった巣回りのことに比べ、「街攻撃」のコマンドがいまひとつ単調。あまり攻略性を感じない。

 しかし、精強なモンスターをぞろぞろ育てつつ、「侵入者いっぱいキタ━━(゚∀゚)━━!!」などと喜びながらプレーしているのが現状ですし、まだまだ飽きてはいません。当方みたいなヌルゲーマーにはちょうどいい難易度なのかもしれない。

ニトロの新作『塵骸魔京(仮)』をピュアガがスクープ「MOON PHASE」経由)

 さすがにペプシブルーを噴きそうになりました。人力オーシャンブルー・ファウンテン。どうも偶然の一致?みたいですが、犬江氏との関連を想像してしまったのは当方だけじゃないはず。

 情報公開の順からして発売は『天使ノ二挺拳銃』の後かしらん。その天挺の方も「夏発売」ってだけで、明確なスケジュールが出てないんですけれど。情報の公開もまだチラッとしている程度だし。

 ともあれにしー絵が『機神咆吼』に引き続き拝めるようなので、期待して続報を待ちます。


2004-07-01.

『機神咆吼デモンベイン』は今日発売。巣作り中なのですぐには着手できませんが、とりあえず買っておきます。積みを恐れない焼津です、こんばんは。

『サフィズムの舷窓〜an epic〜』、7月30日に発売延期

 そもそも発売日が一度16日に延びていたことさえ知らなかったので、なんというか青天の霹靂です。月の初めから一気に月末へ跳躍された気分。

『巣作りドラゴン』、プレー中。

 やはり「引き継ぎシステム」のおかげでプレーすればするほど楽になっていく。チマチマとモンスターを育てる愉しみがなんとも言えずグッド。イベントも散発的にあれこれ起こって飽きさせない。全編を味わい尽くそうとするには骨が折れそうだけど、時間を決めてタラタラ遊ぶ分には持って来いの仕上がり。

 キャラはリュミスが最高。容姿もさることながら「殺す」と言ったらマジで殺しにかかるその本気度に惚れた。ヤバイ。素直じゃないとか、そういう次元じゃない。容赦がないうえ物分りが悪い。損得勘定で動いてない。「退かぬ、媚びぬ、省みぬ」が常態という有様。後退のネジが外れまくり。自負心もここまで来ると「漢」の領域ですね。自分にも他人にも厳しすぎる。

RUNEの新作『Fifth Aile』、情報公開

 麗しのクウィンテセンス。遂に帰還なるか。エイプリルフールのときは「なんだ、ネタかよ……」と苦杯を舐めたが、「『嘘』というのが嘘だった」というオチ。御大も人が悪い。しかしこれで心は安らかにひたすら安らかに待ち望む姿勢が整った。我が湖面は凪ぎ、4人のヒロインを迎え入るに足る。迷う道理なし。突っ込みます。秋が楽しみだ。

・壱乗寺かるたの『さよならトロイメライ2』読了。

 「クセが強い」「人を選ぶ」と言われ続けて4ヶ月。昨今のライトノベル界からすればそれほど早いペースではありませんが、何はともあれ刊行にまで漕ぎついた続編。3巻は9月刊行を予定しているとの噂です。

 えーと、今回は短いです。手に取っただけで「薄い」と即座に分かります。あとがきを含めても222ページ。値段は同じなのに60ページくらい減ってます。キリは良くても読者として不安を感じる分量。それに加えてプロローグの文章はあまりクセがないので、「まさか路線変更?」と疑ってしまいました。前巻のノリが大好きだった人間としてはすごくショック。でも本編が始まってみれば相変わらず勢い任せで思考垂れ流しの「クセが強い」文章だったからホッと胸を撫で下ろした。

 でもやっぱり、分量の少なさが祟っている内容です。ストーリーの展開が急で、あれよあれよという間に話が進み、気が付けば決着してしまっている次第。前回も前回で粗くハイスピードでしたけど、それを魅力にするだけのパワーがあった。今回は普通に「忙しく、慌しい」と思います。前の巻では出番の少なかった都が目立つ構成についてはお嬢さまスキーとして素直に喜ばしく、「楽しめたか」or「楽しめなかったか」の二択を迫られたら断然前者。「萌え」の視点で見ればそれなりに満足のいく仕上がりです。

 いろいろ問題があるとはいえ密かに且つ僅かにミステリとしての面白さを内包していた前作に対し、推理する暇もないくらいの急進行でだいぶ謎解き興味が薄らいでしまったけれど、それでも「このノリが好きだ」ということを再確認しました。しばらくは追っていきます、このシリーズ。

 ちなみに。1巻を読んでいなければいろいろな意味不明な部分が多いので、この巻からトロイメライを読み出すのはやめた方が吉です。1巻のノリに馴染むことができて、「都(*´Д`)ハァハァ」となった方にのみオススメいたします。


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